特許第6030821号(P6030821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030821
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】天井貫通パイプの施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20161114BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   F16L5/00 N
   F16L3/08 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-91875(P2011-91875)
(22)【出願日】2011年4月18日
(65)【公開番号】特開2012-225382(P2012-225382A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150567
【氏名又は名称】株式会社朝日工業社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小澤 信
(72)【発明者】
【氏名】磯野 一智
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野口 久志
(72)【発明者】
【氏名】柳田 俊英
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−240853(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137141(WO,A1)
【文献】 特開平7−42184(JP,A)
【文献】 実開昭63−125270(JP,U)
【文献】 特開2008−19970(JP,A)
【文献】 実開平5−96669(JP,U)
【文献】 特開2009−2407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内に設置された製造装置にパイプを接続し、そのパイプを、クリーンルームの天井パネルに形成した貫通穴に貫通させ、そのパイプと上記貫通穴をシールするための天井貫通パイプの施工方法において、
治具本体に上記貫通穴を塞ぐフランジを形成し、そのフランジに、上記貫通穴に挿入されるパイプ支持筒を一体に形成すると共にそのフランジとパイプ支持筒で形成される挿入穴を上記パイプを挿脱自在に嵌合する内径に形成し、その挿入穴の内周面にリング溝を形成すると共にそのリング溝にOリングを装着して支持治具を構成し、
上記パイプを上記製造装置に接続する際に、上記支持治具の上記挿入穴に挿通した状態で、上記パイプを上記貫通穴に貫通させた後、上記パイプ支持筒を、上記クリーンルーム側から上記貫通穴に挿入した後、上記プランジを上記天井パネルにネジにて固定し、上記天井パネルの給気チャンバー側から上記パイプ支持筒と貫通穴間に、シール材を充填することを特徴とする天井貫通パイプの施工方法
【請求項2】
上記支持治具のリング溝は、上記挿入穴の内周に上下二段に形成される請求項1記載の天井貫通パイプの施工方法
【請求項3】
上記フランジは、上記貫通穴の下部周囲に延びる円環状のリング部と、そのリング部に一体に形成され、上記貫通穴の下部周縁と係合する係合溝を有する段部とからなり、その段部に上記パイプ支持が一体に形成される請求項1又は2記載の天井貫通パイプの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームの天井を貫通して設けられるパイプを支持するための天井貫通パイプの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内に設置された半導体製造装置、医薬品製造装置、食料品の生産設備などに、純水や各種液体を給排する場合、クリーンルームの外部にポンプ等の流体供給装置が設置され、その間を接続するパイプは、クリーンルームの天井パネルを貫通するよう施工される(特許文献1)。
【0003】
図6は、この天井パネルにパイプを貫通させる際のシール構造を示したものである。
【0004】
先ず、クリーンルーム10は、その上下が天井パネル11とグレーチングなどで形成されたフロア12で区画形成され、天井パネル11にファンフィルタユニット13が設けられて形成される。このクリーンルーム10においては、天井パネル11上の給気チャンバー14の空調空気がファンフィルタユニット13によりクリーンルーム10内に清浄空気として吹き出され、クリーンルーム10内をダウンフローで流れた後、フロア12を通してフロア12下の還気チャンバー15に排気され、空調機で設定温度にされた後、再度給気チャンバー14からファンフィルタユニット13で吹き出されて循環され、クリーンルーム10内を、設定温度と設定の清浄度に保たれるようになっている。
【0005】
クリーンルーム10内のフロア12上には製造装置16が設置され、その製造装置16に接続されたパイプ17が、クリーンルーム10内で垂直に立ち上げられて、天井パネル11に形成した貫通穴18を貫通して給気チャンバー14に延出された後、図示しない流体供給装置に接続される。
【0006】
貫通穴18とパイプ17のシール構造は、貫通穴18とパイプ17間にバックアップ材40を設け、貫通穴18の下部からコーキング材41を、バックアップ材40の下方の貫通穴18に充填した後、円環状プレート42をパイプ17に嵌め込んで、これを天井パネル11にネジ止めすることで形成される。
【0007】
しかし、このシール構造は、現場作業で行うため、施工性が悪く、またバックアップ材40は、貫通穴18に挿入されるだけで固定されていないため、パイプ17が動いた場合には、バックアップ材40やコーキング材41とパイプ17の間に隙間が生じやすく、シール機能を発揮できない問題がある。
【0008】
特許文献2では、図7に示すように、天井パネル11に取り付ける円環状の座部42とその座部42に一体に設けられた円筒状の挟持部43とで支持治具44を形成し、この支持治具44の円筒状の挟持部43にパイプ17を貫通させ、そのパイプ17と円筒状の挟持部43間に円環状のバックアップ材45を設けると共にシール材46を充填し、さらに座部44と天井パネル11間にも円環状のバックアップ材47とシール材48を用いてシールすることが提案されている。
【0009】
この支持治具44を用いたシールは、貫通穴18に対しては、座部44と天井パネル11間のバックアップ材47とシール材48でシールし、パイプ17は、挟持部43内に設けたバックアップ材45とシール材46でシールするために、パイプ17が動いてもシール性が損なわれないものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−281038号公報
【特許文献2】特開2000−240853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この図7の支持治具44は、円筒状の挟持部43とパイプ17との隙間をシールするもので、パイプ17自体を拘束していないため、パイプ17が、ポンプの脈動などで繰り返し振動した場合、その振動による経年劣化で、バックアップ材45とシール材46のシール機能が十分に発揮できなくなる問題がある。
【0012】
またシール材46,48としては、シリコンやウレタンが使用されるが、これらは、クリーンルーム10内に暴露した状態であり、しかも劣化により、クリーンルーム10内に粉塵として飛散しやすく汚染源となる問題がある。この点では、図6に示したシール構造の方が優れている。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、クリーンルームの天井パネルにパイプを貫通させる際に、パイプを確実に支持してシールできると共に、シール材の劣化による汚染の心配もない天井貫通パイプの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、クリーンルーム内に設置された製造装置にパイプを接続し、そのパイプを、クリーンルームの天井パネルに形成した貫通穴に貫通させ、そのパイプと上記貫通穴をシールするための天井貫通パイプシール構造において、治具本体に上記貫通穴を塞ぐフランジを形成し、そのフランジに、上記貫通穴に挿入されるパイプ支持筒を一体に形成すると共にそのフランジとパイプ支持筒で形成される挿入穴を上記パイプを挿脱自在に嵌合する内径に形成し、その挿入穴の内周面にリング溝を形成すると共にそのリング溝にOリングを装着して支持治具を構成し、上記パイプを上記製造装置に接続する際に、上記支持治具の上記挿入穴に挿通した状態で、上記パイプを上記貫通穴に貫通させた後、上記パイプ支持筒を、上記クリーンルーム側から上記貫通穴に挿入した後、上記プランジを上記天井パネルにネジにて固定し、上記天井パネルの給気チャンバー側から上記パイプ支持筒と貫通穴間に、シール材を充填することを特徴とする天井貫通パイプの施工方法である。
【0015】
請求項2の発明は、上記支持治具のリング溝は、上記挿入穴の内周に上下二段に形成される請求項1記載の天井貫通パイプの施工方法である。
【0016】
請求項3の発明は、上記フランジは、上記貫通穴の下部周囲に延びる円環状のリング部と、そのリング部に一体に形成され、上記貫通穴の下部周縁と係合する係合溝を有する段部とからなり、その段部に上記パイプ支持が一体に形成される請求項1又は2記載の天井貫通パイプの施工方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、治具本体に貫通穴を塞ぐフランジと貫通穴に挿入するパイプ支持筒を形成すると共にそのフランジと支持筒に形成した挿入穴にパイプを挿脱自在に挿入すると共にその間をOリングでシールすることで、パイプを拘束しつつシールできるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態を示す断面図である。
図2図1の底面図である。
図3図1の平面図である。
図4】本発明において支持治具にパイプを挿入した状態の斜視図である。
図5】本発明の天井貫通パイプシール構造をクリーンルームに適用した全体図である。
図6】従来の天井貫通パイプシール構造をクリーンルームに適用した全体図である。
図7】従来の他の天井貫通パイプシール構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0021】
先ず図5は、本発明の天井貫通パイプシール構造をクリーンルームに適用した全体図であり、クリーンルーム10の全体構成及び製造装置16とパイプ17の構成は図6で説明した従来例と同じであり、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0022】
このクリーンルーム10の天井パネル11は、その厚さが40mmに形成される。また製造装置16に接続されるパイプ17は、SUS管、ポリエチレンや塩化ビニルなどの樹脂パイプ、或いは樹脂とアルミなどの金属を複合させた複合パイプなどで形成され、その径は、10A〜100Aの範囲が適用される。また、貫通穴18は、そのパイプ17の外径に対して十分に大きな内径に形成される。
【0023】
本発明においては、このパイプ17を貫通穴18に貫通させて天井パネル11に支持させる支持治具20として、パイプ17を確実に支持しかつその間のシールを良好にするようにしたものであり、これを図1図4により説明する。
【0024】
図1図4において、治具本体21は、アルミ合金やSUSで形成されてなり、その治具本体21に、貫通穴18を塞ぐフランジ22が形成され、そのフランジ22に一体に貫通穴18に挿入されるパイプ支持筒23が形成される。この治具本体21には、フランジ22とパイプ支持筒23にて挿入穴24が形成される。
【0025】
フランジ22は、貫通穴18の下部周囲に延び、貫通穴18の穴径より十分大きな径に形成された円環状のリング部25と、そのリング部25に一体に形成され、貫通穴18の下部周縁と係合する係合溝26を有する段部27とからなる。このリング部25には、天井パネル11にネジ28で治具本体21を固定するためのネジ穴29が形成される。また段部27は、貫通穴18の内径より大きく形成された下部段30と、貫通穴18の内径と同じ外径に形成された上部段31からなり、下部段30と上部段31間に係合溝26が形成される。下部段30の上面は天井パネル11の下面に当接するよう、またその上部段31の外周面が貫通穴18に嵌合するように形成される。
【0026】
挿入穴24は、挿入するパイプ17の外径に対して僅かに大きくなるよう、例えばパイプ17の径が25mmであれば、25.3mmとなるように形成される。この挿入穴24の上部には、拡径部24aが形成され、下端縁はアール状に面取が施され、その拡径部24aと下縁間の内周面には、上下二段にリング溝32、32が形成され、このリング溝32、32にOリング33、33が装着される。Oリング33、33は、その内周径がパイプ17の外径より僅かに小さく、装着後に、その内周面が挿入穴24の内面から突出するように形成される。
【0027】
以上において、治具本体21の挿入穴24にパイプ17を挿通した状態で、天井パネル11の貫通穴18に、そのパイプ支持筒23を挿入すると共に段部27の係合溝26を貫通穴18に係合させる。これにより段部27の上部段31が貫通穴18に嵌め込まれ、下部段30の上面が貫通穴18の周囲の天井パネル11の面に接触した状態となる。
【0028】
この状態で、フランジ22のネジ穴29にネジ28を挿入すると共にそのネジ28を天井パネル11にねじ込むことで治具本体21を取り付ける。
【0029】
このようにパイプ17を治具本体21を介して貫通穴18に挿入し、治具本体21を介して天井パネル11に固定したのち、給気チャンバー14側から貫通穴18内にシール材34を充填してシール構造とする。
【0030】
また、上述の説明は、治具本体21の挿入穴24にパイプ17を挿通した状態で、天井パネル11の貫通穴18に取り付ける例で説明したが、治具本体21のみを貫通穴18に挿入して天井パネル11に固定し、その後治具本体21の挿入穴24にパイプ17を挿入するようにしてもよい。この場合、パイプ17は、給気チャンバー14側から挿入しても、クリーンルーム10側から挿入してもいずれでもよく、施工状態に応じて適宜選択することができる。またパイプ17を挿入後は、貫通穴18にシール材34を充填してシール構造とする。
【0031】
次に本実施の形態の作用を説明する。
【0032】
パイプ17は、予め治具本体21の挿入穴24に挿通した状態で天井パネル11の貫通穴18を通した後、その治具本体21を天井パネル11にネジ28にて固定することで、或いは治具本体21を天井パネル11にネジ28にて固定した後、その挿通穴24に挿入することで貫通穴18に固定することで、施工が容易となる。
【0033】
この際、パイプ17は、従来のようにシールのみの構造と違って、フランジ22とパイプ支持筒23にて形成される挿入穴24に挿入されることで、その動きが拘束され、ポンプ等の脈動でパイプ17が振動しても、パイプ17の振動を抑えることができる。またパイプ支持筒23とパイプ17間はOリング33、33でシールされるため、パイプ17は、軸方向に移動が可能であり、取付施工の際の位置調整が容易となると共に施工後でも移動が可能となる。
【0034】
またパイプ支持筒23と貫通穴18とのシールは、貫通穴18に充填したシール材34でシールされる。このシール材34は、給気チャンバー14側の貫通穴18から充填するため、シール材34が劣化してもクリーンルーム10内の汚染源になることもない。
【符号の説明】
【0035】
10 クリーンルーム
11 天井パネル
17 パイプ
18 貫通穴
20 支持治具
21 治具本体
22 フランジ
23 パイプ支持筒
24 挿入穴
32 リング溝
33 Oリング
図2
図3
図4
図1
図5
図6
図7