特許第6030823号(P6030823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030823
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ガスタービン用の熱交換器媒体パッド
(51)【国際特許分類】
   F28F 21/06 20060101AFI20161114BHJP
   F28F 13/06 20060101ALI20161114BHJP
   F28C 3/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   F28F21/06
   F28F13/06
   F28C3/08 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-171434(P2011-171434)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2012-37228(P2012-37228A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】12/852,783
(32)【優先日】2010年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー・アーロン・キッペル
(72)【発明者】
【氏名】チャンミン・ツァン
(72)【発明者】
【氏名】リサ・カムダー・アマン
【審査官】 藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−286698(JP,A)
【文献】 特開2004−092949(JP,A)
【文献】 特表平08−509422(JP,A)
【文献】 特開平03−165940(JP,A)
【文献】 特開昭61−037534(JP,A)
【文献】 特開平04−116383(JP,A)
【文献】 特開2003−326102(JP,A)
【文献】 特表2002−536522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0072503(US,A1)
【文献】 特開2009−108424(JP,A)
【文献】 特開2004−044927(JP,A)
【文献】 特開昭62−087798(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00657210(EP,A1)
【文献】 米国特許第04222434(US,A)
【文献】 特開2000−220473(JP,A)
【文献】 特開平02−207837(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0136885(US,A1)
【文献】 特開2006−322698(JP,A)
【文献】 特開平03−028688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 21/06
F28C 3/08
F28F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(30)用の媒体シート(50)であって、当該媒体シート(50)が、
第1の外表面(72)を有する第1の層(70)と、
第2の外表面(76)を有する第2の層(74)と、
第1の外表面(72)及び第2の外表面(76)によって画成される端縁に接続されるマウント(58)であって、媒体シート(50)を熱交換器(30)内に取付けるための複数のスロット(60)を含むマウント(58)と
を含んでおり、第1の層(70)及び第2の層(74)がそれらの間に延在する複数の通路(80)を画成しており、第1及び第2の外表面(72,76)の少なくとも一方が複数の陥凹部(90)を含んでいて、該複数の陥凹部(90)がそれらの間に上記複数の通路(80)をさらに画成していて第1の層(70)と第2の層(74)とが上記複数の陥凹部(90)の各々で接触するように第1の層(70)と第2の層(74)とを取付けることによって上記複数の通路(80)が形成されており、当該媒体シート(50)がポリマー繊維に基づくものであって濡れ性であり、吸気流れ(22)が熱交換媒体(32)と直接接触できるようにし、上記複数の通路(80)の少なくとも一部分が各々、第1の外表面(72)及び第2の外表面(76)によって画成される端縁に位置する入口開口部(84)であって熱交換媒体(32)を受けるように構成された入口開口部(84)を含んでいる、媒体シート(50)。
【請求項2】
前記ポリマー繊維がポリアミド又はポリエステルを含む、請求項1記載の媒体シート(50)。
【請求項3】
当該媒体シート(50)が複合材を含む、請求項1又は請求項2記載の媒体シート(50)。
【請求項4】
第1の外表面(72)及び第2の外表面(76)が共に前記複数の陥凹部(90)を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の媒体シート(50)。
【請求項5】
前記複数の通路(80)の少なくとも一部分が各々、少なくとも1つの絞り部分(82)を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の媒体シート(50)。
【請求項6】
前記複数の通路(80)の少なくとも一部分が流体連結される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の媒体シート(50)。
【請求項7】
第1及び第2の層(70,74)が媒体シート周辺部(78)をさらに画成しており、上記複数の陥凹部(90)が、入口陥凹部(92)及び出口陥凹部(94)を含み、上記入口陥凹部(92)及び出口陥凹部(94)が各々、当該媒体シート(50)の周辺部(78)に隣接して形成される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の媒体シート(50)。
【請求項8】
媒体パッド(38)を備える熱交換器(30)であって、
上記媒体パッド(38)が、複数のポリマー繊維系濡れ性媒体シート(50)を含んでおり、上記複数の媒体シート(50)が、互いに間隔を置いて配置されて、それらの間に複数の吸気流れ通路(52)を画成しており、上記複数の媒体シート(50)の各々が、第1の外表面(72)を有する第1の層(70)と第2の外表面(76)を有する第2の層(74)とを含んでおり、上記複数の媒体シート(50)の各々の第1の層(70)及び第2の層(74)がそれらの間に延在する複数の通路(80)を画成し、上記複数の媒体シート(50)の各々の第1及び第2の外表面(72,76)の少なくとも一方が複数の陥凹部(90)を含んでいて、上記複数の陥凹部(90)が、それらの間に上記複数の通路(80)をさらに画成していて第1の層(70)と第2の層(74)とが上記複数の陥凹部(90)の各々で接触するように第1の層(70)と第2の層(74)とを取付けることによって上記複数の通路(80)が形成されており、
上記媒体パッド(38)が、上記複数の媒体シート(50)の少なくとも1つの端縁に接続されるマウント(58)であって、媒体シート(50)を熱交換器(30)内に取付けるための複数のスロット(60)を含むマウント(58)をさらに含んでおり、
上記複数の媒体シート(50)が各々、それを通して熱交換媒体(32)を流すように構成され、かつ上記複数の吸気流れ通路(52)が各々、それを通して吸気流れ(22)を流すように構成されて、該吸気流れ(22)が該熱交換媒体(32)と直接接触できるようにしており、上記複数の媒体シート(50)の少なくとも1つの複数の通路(80)の少なくとも一部分が各々、その媒体シートの端縁に位置する入口開口部(84)であって熱交換媒体(32)を受けるように構成された入口開口部(84)を含んでいる、熱交換器(30)。
【請求項9】
複数のスペーサ(54)をさらに含み、前記スペーサ(54)が、前記吸気流れ通路(52)を少なくとも部分的に形成する、請求項記載の熱交換器(30)。
【請求項10】
前記ポリマー繊維がポリアミド又はポリエステルを含む、請求項又は請求項記載の熱交換器(30)。
【請求項11】
前記媒体シート(50)が複合材を含む、請求項乃至請求項10のいずれか1項記載の熱交換器(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は、総括的には熱交換器に関し、より具体的には、熱交換器における媒体パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、発電のような分野において広範に利用されている。従来型のガスタービンシステムは、周囲空気を加圧する圧縮機と、加圧空気を燃料と混合しかつその混合気を燃焼させるようになった燃焼器と、燃焼混合気によって駆動されて出力を生成しかつ排気ガスを発生するタービンとを含む。従来技術では、ガスタービンが生成することができる出力の量を増大させるための様々な方策が知られている。ガスタービンの出力を増大させる1つの方法は、圧縮機内で加圧する前に周囲空気を冷却することによるものである。冷却により、空気はより高い密度を有するようになり、それによって圧縮機内へのより大きい質量流量が形成される。圧縮機内への空気のより大きい質量流量により、より多くの空気を加圧することが可能になって、ガスタービンがより多くの出力を生成することが可能になる。加えて、周囲空気を冷却することは一般的に、ガスタービンの効率を高める。様々なシステム及び方法が、ガスタービンに流入する周囲空気を冷却するために利用される。例えば、熱交換器を利用して、潜熱冷却(latent cooling)又は顕熱冷却(sensible cooling)により周囲空気を冷却することができる。多くのそのような熱交換器は、媒体パッドを利用して周囲空気の冷却を可能にする。それらの媒体パッドは、周囲空気及び冷却媒体間の熱伝達及び/又は質量移動を可能にする。周囲空気は、媒体パッド内で該周囲空気を冷却する冷却媒体と相互作用する。
【0003】
熱交換器内で使用する公知の媒体パッドは、例えばセルロース繊維で形成される。セルロース繊維系の媒体パッドは一般的に、該媒体パッドを通して水のような冷却媒体を流した時に該媒体パッドの構造的一体性を維持するように設計された硬化剤を含む。しかしながら、セルロース繊維系の媒体パッドは一般的に、硬化剤を溶解しかつ媒体パッドを崩壊させる可能性がある大量の冷却媒体を必要とする状況には適していない。さらに、セルロース繊維系の媒体パッドは、それを通して流れる冷却媒体の性質に特に敏感である可能性があり、従って該媒体パッドを適切に機能させるためには清浄な冷却媒体よりも「清浄でない」冷却媒体の使用を必要とする可能性がある。
【0004】
その他の公知の媒体パッドは、無孔で中実のプラスチック材料で形成される。これらの媒体パッドは一般的に、該パッドの表面積全体にわたって均一にかつ充分に冷却媒体を分散させることができない。このことは、周囲空気の効率的な冷却を妨げるおそれがあり、幾つかのケースではガスタービン圧縮機の作動に有害なものとなるおそれがある空気のホットストリークを引起こすドライスポットを生じる可能性がある。加えて、比較的より高い空気流れ速度において、これらの媒体パッドは冷却媒体を保持できなくなる可能性があり、それどころか冷却媒体を発散させる傾向を有する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5143658号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当技術分野では、より効率的な冷却をもたらしかつ冷却媒体の性質に敏感でない媒体パッドが、望ましいと言える。加えて、それを通して多量の冷却媒体を流した時に構造的一体性を維持することになるような媒体パッドが、有利であると言える。さらに、ドライスポット及びその結果生じる高温ストリークを減少させるか又は防止する媒体パッドが、望ましいと言える。最後に、比較的より高い空気流れ速度において冷却媒体を保持する媒体パッドが、有利であると言える。
【0007】
本発明の態様及び利点は、その一部が以下の説明の中に記載されることになり、或いはそれら説明から自明なものとして理解することができ、或いは本発明の実施により学ぶことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、熱交換器用の媒体シートを開示する。本媒体シートは、第1の外表面を有する第1の層と第2の外表面を有する第2の層とを含む。第1及び第2の層は、それらの間で延在する複数の通路を画成する。第1及び第2の外表面の少なくとも1つは、複数の陥凹部を含む。複数の陥凹部はさらに、それらの間に該複数の通路を画成する。本媒体シートは、ポリマー繊維に基づくものであり、濡れ性である。
【0009】
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を参照することによってより良好に理解されるであろう。本明細書の一部として組入れられかつ本明細書の一部を構成した添付図面は、本発明の実施形態を示しており、詳細な説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0010】
当業者を対象に、本発明のその最良の形態を含む完全かつ有効な開示を、添付図を参照した本明細書において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガスタービンシステムの概略図。
図2】本開示の媒体パッドの一実施形態の斜視図。
図3】本開示の媒体シートの一実施形態の前面図。
図4】本開示の媒体シートの別の実施形態の前面図。
図5】本開示の媒体シートの別の実施形態の前面図。
図6】本開示の媒体シートの別の実施形態の前面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、その1つ又はそれ以上の実施例を図面に示している本発明の実施形態について詳細に説明する。各実施例は、本発明の限定ではなくて本発明の説明として示している。実際には、本発明においてその技術的範囲及び技術思想から逸脱せずに様々な修正及び変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示し又は説明した特徴要素は、別の実施形態で使用してさらに別の実施形態を生成することができる。従って、本発明は、そのような修正及び変更を特許請求の範囲及びその均等物の技術的範囲内に属するものとして保護することを意図している。
【0013】
図1は、ガスタービンシステム10の概略図である。システム10は、圧縮機12、燃焼器14及びタービン16を含むことができる。さらに、システム10は、それぞれ複数の圧縮機12、燃焼器14及びタービン16を含むことができる。圧縮機12及びタービン16は、シャフト18によって結合することができる。シャフト18は、単一のシャフト又は互いに結合されてシャフト18を形成した複数のシャフトセグメントとすることができる。
【0014】
システム10はさらに、ガスタービン入口20を含むことができる。入口20は、吸気流れ22を受けるように構成することができる。例えば、一実施形態では、入口20は、ガスタービン吸気ハウジングとすることができる。それに代えて、入口20は、吸気流れ22を受けることができる圧縮機12の部分又は圧縮機12の上流の装置のようなシステム10の部分とすることができる。例示的な実施形態では、吸気流れ22は、周囲空気とすることができ、この周囲空気は、調整した状態のもの又は調整していない状態のものとすることができる。それに代えて、吸気流れ22は、好適な流体とすることができ、好ましくは好適な気体とすることができる。
【0015】
システム10はさらに、排出出口24を含むことができる。出口24は、ガスタービン排気流れを吐出するように構成することができる。幾つかの実施形態では、排気流れ26は、熱回収蒸気発生器(図示せず)に導くことができる。それに代えて、排気流れ26は、例えば吸収式チラー(図示せず)に導くことができ、或いは周囲空気内に散逸させることができる。
【0016】
システム10はさらに、熱交換器30を含むことができる。本開示の熱交換器30はシステム10での使用に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、熱交換機能を必要とするシステムにおける熱交換器30の使用は、本開示の技術的範囲及び技術思想の範囲内にある。
【0017】
熱交換器30は、吸気流れ22が圧縮機12に流入する前に該吸気流れ22を冷却するように構成することができる。例えば、熱交換器30は、ガスタービン入口20内に配置することができ、或いはガスタービン入口20の上流又は下流に配置することができる。熱交換器30は、それを通って吸気流れ22及び熱交換媒体32が流れるのを可能にしかつ吸気流れ22及び熱交換媒体32の相互作用を可能にして、吸気流れ22が圧縮機12に流入する前に該吸気流れ22を冷却することができる。例示的な実施形態では、熱交換媒体32は、水とすることができる。それに代えて、熱交換媒体32は、好適な流体とすることができ、好ましくは好適な液体とすることができる。
【0018】
例示的な実施形態では、熱交換器30は、直接接触熱交換器30とすることができる。熱交換器30は、熱交換媒体入口34、熱交換媒体出口36及び媒体パッド38を含むことができる。入口34は、熱交換媒体32を媒体パッド38に流すことができる。例えば、一実施形態では、入口34は、1つ又は複数のノズルとすることができる。出口36は、媒体パッド38から排出された熱交換媒体32を受けることができる。例えば、一実施形態では、出口36は、熱交換媒体32の流れの方向において媒体パッド38の下流に配置されたサンプとすることができる。例示的な実施形態では、熱交換媒体32は、入口34から媒体パッド38を通してほぼ下向き方向に導くことができ、吸気流れ22は、熱交換器30を通して、熱交換媒体32の流れの方向に対してほぼ直角な方向に導くことができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、吸気流れ22の方向において媒体パッド38の上流に、フィルタ42を配置することができる。フィルタ42は、吸気流れ22が媒体パッド38に流入する前に該吸気流れ22から粒状物質を除去し、従って粒状物質がシステム10に流入するのを防止するように構成することができる。それに代えて又はそれに加えて、フィルタ42は、吸気流れ22の方向において媒体パッド38の下流に配置することができる。フィルタ42は、吸気流れ22がシステム10に流入する前に該吸気流れ22から粒状物質を除去するように構成することができる。
【0020】
幾つかの実施形態では、吸気流れ22の方向において媒体パッド38の下流に、ドリフト除去装置44を配置することができる。ドリフト除去装置44は、吸気流れ22がシステム10に流入する前に該吸気流れ22から熱交換媒体32の液滴を除去するように作用することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、熱交換器30は、潜熱つまり蒸発冷却により吸気流れ22を冷却するように構成することができる。潜熱冷却というのは、空気のような気体から熱を除去して、気体の水分含有量の変化を生じさせるような冷却方法を意味する。潜熱冷却には、気体を冷却するための周囲温度における液体の蒸発が含まれる。潜熱冷却は、気体をその湿球温度近くに冷却するために利用することができる。
【0022】
別の実施形態では、熱交換器30は、顕熱冷却により吸気流れ22を冷却するように構成することができる。顕熱冷却というのは、空気のような気体から熱を除去して、気体の乾球及び湿球温度の変化を生じさせるような冷却方法を意味する。顕熱冷却には、液体を冷却し、次に冷却した液体を使用して気体を冷却する方法が含まれる。顕熱冷却は、気体をその湿球温度以下に冷却するために利用することができる。
【0023】
潜熱冷却及び顕熱冷却は、相互排他的な冷却方法ではなく、独立してか又は組合せてかのいずれかで適用することができることを理解されたい。さらに、本開示の熱交換器30は、潜熱冷却及び顕熱冷却に限定されるものではなく、好適な冷却又は加熱方法により吸気流れ22を冷却又は加熱することができることを理解されたい。
【0024】
次に図2を参照すると、本開示の一実施形態による媒体パッド38を示している。媒体パッド38は、少なくとも1つの又は複数の媒体シート50を含むことができる。媒体シート50は、互いに間隔を置いて配置されて、それらの間に複数の吸気流れ通路52を画成することができる。従って、複数の吸気流れ通路52の各々は、それを通して吸気流れ22を流すように構成することができる。例えば、媒体パッド38に流入する吸気流れ22は、吸気流れ通路52を通って流れることができる。さらに、下記に説明するように、複数の媒体シート50の各々は、それを通して熱交換媒体32を流すように構成することができる。従って、複数の媒体シート50、従って媒体パッド38は、吸気流れ22が熱交換媒体32と相互作用して、該吸気流れ22を冷却又は加熱できるようにしてもよい。
【0025】
媒体パッド38はさらに、複数のスペーサ54を含むことができる。スペーサ54は、吸気流れ通路52を少なくとも部分的に形成することができる。例えば、スペーサ54の各々は、少なくとも1つの媒体シート50、幾つかの実施形態では複数の媒体シート50と組合せることができる。図2に示すような一実施形態では、スペーサ54は、媒体シート50内に形成されたアパーチャ56により該媒体シート50に締結することができる。それに加えて又はそれに代えて、スペーサ54は、下記に説明するように、接合により又は好適な締結装置により媒体シート50に締結することができる。スペーサ54は一般的に、関連する媒体シート50及び他の媒体シート50間で延在して、媒体シート50を互いに間隔を置いて配置させ、従って吸気流れ通路52を少なくとも部分的に形成することができる。
【0026】
媒体パッド38はさらに、複数のマウント58を含むことができる。一実施形態では、図2に示すように、マウント58の各々は、媒体シート50の1つと組合せることができる。一般的に、マウント58は、媒体シート50、従って媒体パッド38を熱交換器30内に取付けることができる。さらに、マウント58は、媒体シート50の簡単かつ効率的な現場での据付け及び交換できるようにする。図示するように、マウント58は各々、スロット60を含むことができる。スロット60は、上記に説明したように媒体シート50の取付けができるように設けることができる。それに加えて又はそれに代えて、マウント58は各々、熱交換器30内に媒体シート50を取付けることができる好適な取付け装置を含むことができる。
【0027】
スペーサ54及びマウント58はさらに、媒体シート50を熱交換器内でまた必要に応じて互いに調整可能にすることができる。例えば、夏季又は日中の間におけるような比較的より高温の期間の間におけるシステム10の運転時に、スペーサ54及びマウント58を利用して、吸気流れ22の最適な冷却又は加熱を行なうように媒体シート50、従って媒体パッド38を位置決めすることができる。しかしながら、冬季又は夜間の間におけるような比較的より低温の期間の間には、吸気流れ22の冷却又は加熱が必要でない可能性がある。これらの状況では、スペーサ54を取外しかつ/又はマウント58を利用して、吸気流れ22の流路から媒体シート50の位置を調整することができる。従って、媒体シート50及び媒体パッド38は、必要に応じてシステム10の最適かつ効率的な性能に合せて調整可能とすることができる。
【0028】
図3図6は、本開示の媒体シート50の様々な実施形態を示している。例えば、媒体シート50は、第1の外表面72を有する第1の層70と、第2の外表面76を有する第2の層74とを含むことができる。さらに、媒体シート50は、第1の層70及び第2の層74間に1つ又は複数の内側層(図示せず)を含むことができる。例示的な実施形態では、層70,74の各々は、媒体材料の別個のシートとすることができる。それに代えて、層70,74は、例えば折り畳んで様々な層70,74を形成することができる媒体材料の単一シートの一部分とすることができ、或いは層70,74は、シートの厚さにわたって該シートを切断することによるようなシートを層に分割して媒体シート50の様々な部分を形成し、従って該層70,74を形成することによって、媒体材料の単一シートから製作することができる。
【0029】
第1及び第2の層70,74は一般的に、媒体シート50の周辺部を画成することができる。例示的な実施形態では、媒体シート50は、ほぼ矩形とすることができる。しかしながら、それに代えて、媒体シート50は、例えば円形、長円形、三角形その他の好適な多角形とすることができる。
【0030】
媒体シート50は、一般的にポリマー繊維系の媒体シート50とすることができ、後述の通り濡れ性にすることができる。例えば、媒体シート50は、ポリアクリレート、ポリアミド(例えば、ナイロンのような)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリオレフィンその他の好適なポリマー繊維で形成することができる。さらに、媒体シート50は、例えば織布製品又は不織布製品とすることができ、例えばウェットレイイング、スピンレイイング、エアレイイング、スピンブローイング、メルトブローイング、ウィービング、ニッティング及び/又はソーイングを含む好適な方法を使用して形成することができる。従って、媒体パッド38は一般的に、多様な熱交換媒体32と共に利用することができまた熱交換媒体32の性質に敏感でないものとすることができる。例えば、一実施形態では、熱交換媒体32は純水とすることができまた純水は不純物を必要としないものとすることができる。言うまでもなく、清浄でない水或いはその他の好適な純粋又は清浄でない流体は、熱交換媒体32として利用することができることを理解されたい。従って、さらに媒体パッド38は一般的に、大量の熱交換媒体32が供給された時に、崩壊又は溶解を生じないでその構造的一体性を維持することができる。
【0031】
さらに、媒体シート50は、コポリマーで形成することができかつさらに複合材媒体シート50とすることができることを理解されたい。例えば、媒体シート50は、例えば鋼、アルミニウム、黄銅、或いはその他の1つ又は複数の金属合金のような好適な金属、若しくは例えばガラス或いはその他のセラミックス又はセラミック複合材のようなセラミックスを含むことができる。金属及び/又はセラミックスは、例えばポリマー繊維系の媒体シート50内に埋め込まれて有利な熱交換媒体32の分散特性又は強度特性をもたらすストランドとすることができる。
【0032】
第1及び第2の層70,74は、それらの間で延在する複数の通路80を画成することができる。例えば、通路80は、図2図6に示すように第1及び第2の層70,74の両方によって形成することができ、或いは第1及び第2の層70,74の1つ並びに内側層によって形成することができる。通路80は、それを通して熱交換媒体32を流すように構成することができる。さらに、通路80内の熱交換媒体32は、下記に説明するように該通路80を通って流れかつ媒体シート50の残りの部分に流れ、従って該媒体シート50の残りの部分を濡れさせることができる。
【0033】
通路80は、媒体シート50を通って多様な方向及びパターンで延在することができる。例えば、図2に示すような一実施形態では、通路80は、シャープ「ジグザグ」パターンで媒体シート50を通ってほぼ垂直方向に延在する。図3に示す別の実施形態では、通路80は、スムーズ「ジグザグ」パターンで媒体シート50を通ってほぼ垂直方向に延在する。図4は、通路80が角度αで媒体シート50を通ってほぼ対角線方向に延在する別の実施形態を示している。通路80は、例えば0°(ほぼ水平方向)〜90°(ほぼ垂直方向)の角度のような角度αで媒体シート50を通って延在することができることを理解されたい。
【0034】
図5は、通路80が媒体シート50を通ってほぼ対角線方向に延在しかつ様々な通路80が流体連結された別の実施形態を示す。例えば、媒体シート50を通ってほぼ対角線方向に延在する通路80は、媒体シート50上の様々なポイントで交差することができかつこれらのポイントにおいて流体連結することができる。図6は、通路80が媒体シート50を通ってほぼ垂直方向に延在しかつ様々な通路80が絞り部分82を含む別の実施形態を示している。絞り部分82は、通路80の残りの部分よりも一般的に小さい直径又は幅を有する通路80の一部分とすることができる。絞り部分82は、媒体シート50を通る熱交換媒体32の流れを調整するように設けることができる。
【0035】
通路80は、好適なパターンを有することができまたそれを通して熱交換媒体32を流すようになった好適な寸法のものとすることができる。加えて、通路80は、テーパ付きとすることができ通路80の長さに沿ってその他の修正及び変更を有することができることを理解されたい。さらに、通路80は、媒体シート50の周辺部78に延在することができ又は媒体シート50を通って部分的にのみ延在するが周辺部78に到達しないものとすることができることを理解されたい。最後に、各通路80は、他の様々な通路から変化させることができること、及び媒体シート50内に形成された通路80は、同一である必要がないことを理解されたい。
【0036】
例示的な実施形態では、複数の通路80の少なくとも一部分は各々、入口開口部84を含むことができる。入口開口部84は、熱交換媒体32を受けるように構成することができる。例えば、入口34から媒体パッド38に流れる熱交換媒体32の少なくとも一部分は様々な入口開口部84に導くことができる。熱交換媒体32は、入口開口部84によって受けて通路80を通して流すことができる。
【0037】
第1及び第2の外表面72,76の少なくとも1つ並びに例示的な実施形態では該第1及び第2の外表面72,76の両方は、複数の陥凹部90を含むことができる。陥凹部90は一般的に、それらの間に複数の通路80を画成することができる。例えば、例示的な実施形態では、陥凹部90は、接合、モールディング、成形又は引抜き、或いはその他の取付け又は製作方法により形成することができ、陥凹部90を画成しない得られた媒体シート50の部分は通路80を画成する。それに代えて、通路80は、例えば媒体シート50の厚さにわたって該媒体シート50内に通路80を切削することによって形成することができる。通路80を含まない媒体シート50の残りの部分は、陥凹部90を含むと考えることができる。
【0038】
上記に説明したように、陥凹部90は、接合、モールディング、成形又は引抜き、或いは第1の層70及び第2の層74を含む媒体シート50の様々な層を取付け又は製作するその他の好適な方法により形成することができる。例えば、接合には、熱接合、物理的又は機械的接合(圧接によるような)、超音波ボンディング、化学的接合、或いはウィービング、ニッティング、ニードリング又はソーイング、或いは接着剤の使用による接合を含むことができる。成形には、例えば冷間成形、ロール成形、真空成形、又は熱成形を含むことができる。接合、モールディング、成形又は引抜き、或いは媒体シート50の様々な層を取付け又は製作するその他の方法を使用して陥凹部90を形成することにより、それらの間に通路80を画成することができる。
【0039】
媒体シート50内に形成された複数の陥凹部90は、入口陥凹部92及び出口陥凹部94を含むことができる。入口及び出口陥凹部92、94は、媒体シート50の周辺部78に隣接して形成した陥凹部とすることができる。例えば、入口陥凹部92は、吸気流れ22が媒体シート50及び媒体パッド38と最初に相互作用する箇所のような、該吸気流れ22に対する該媒体シート50の上流端縁部において周辺部78に隣接して形成することができる。出口陥凹部94は、吸気流れ22が媒体シート50及び媒体パッド38から流出することができる箇所のような、該吸気流れ22に対する該媒体シート50の下流端縁部において周辺部78に隣接して形成することができる。入口及び出口陥凹部92、94は、吸気流れ22が媒体パッド38を通って移動する時に該吸気流れ22に関連する圧力降下を少なくすることができ、かつ/又は吸気流れ22に乱流を発生させるなどによって該吸気流れ22及び熱交換媒体32の熱伝達及び混合を助けるような形状とすることができる。ある例示的な実施形態では、出口チャネル94はさらに、熱交換媒体32が媒体パッド38から排出される前に、吸気流れ22が該熱交換媒体32を捕捉するように構成することができる。
【0040】
例示的な実施形態では、媒体シート50は濡れ性とすることができる。従って、媒体シート50は、熱交換媒体32が該媒体シート50と接触状態を維持することができ、さらに該媒体シート50全体に拡散できるように成形することができる。さらに、媒体シート50は、親水性かつ/又は多孔性とすることができる。従って、媒体シート50は一般的に、該媒体シート50の表面積全体にわたって熱交換媒体32を受け、吸着し、流しかつ分散させる。例えば、入口34によって供給されるなどのような、媒体シート50に供給された熱交換媒体32は、該媒体シート50を濡れさせかつ該媒体シート50を通って流れる。例示的な実施形態では、熱交換媒体32は、媒体シート50の表面積全体にわたって比較的均一に分散させて、熱交換媒体32におけるドライスポットを減少又は排除することができる。さらに、入口開口部84を通って通路80内に流れた熱交換媒体32は、通路80を通って流れ、陥凹部90内に流れかつ該陥凹部90を通って流れることができ、陥凹部90を通って流れた熱交換媒体32は、該陥凹部90から通路80内に流れることができる。
【0041】
一般的に、通路80は、陥凹部90と比較して媒体シート50の隆起部分とすることができる。例えば、通路80は、陥凹部90と比較して、第1の層70及び第1の外表面72の隆起部分とすることができ、かつ/又は第2の層74及び第2の外表面76の隆起部分とすることができる。従って、媒体シート50間の吸気流れ通路52はさらに、陥凹部90及び隆起通路80によって形成することができる。従って、吸気流れ通路52は、媒体パッド38を通る乱流吸気流れ22を促進して、吸気流れ22及び熱交換媒体32間の熱交換を強化する利点を有することができる。さらに、上記に説明したように、入口陥凹部92及び出口陥凹部94は、媒体パッド38を通る吸気流れ22に関連する圧力降下を少なくすることができる。
【0042】
従って、本開示の媒体パッド38は、吸気流れ22のより効率的な冷却及び加熱を行なうことができる。加えて、媒体パッド38は、多様な熱交換媒体32で利用することができ、かつ熱交換媒体32の性質に敏感でないものにすることができる。最後に、本開示の媒体パッド38は、大量の熱交換媒体32が供給された時にその構造的一体性を維持することができ、該媒体パッド38及びその中の媒体シート50の表面積全体にわたって熱交換媒体32を吸着し、流しかつ分散させ、従って危険なドライスポットの発生可能性を排除しかつ吸気流れ22の冷却及び加熱を促進する利点を有することができる。
【0043】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、当業者が、装置又はシステムを製作しかつ使用しまた組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行なうことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲により定めており、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を含むか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0044】
10 ガスタービンシステム
12 圧縮機
14 燃焼器
16 タービン
18 シャフト
20 ガスタービン入口
22 吸気流れ
24 排出出口
26 排気流れ
30 熱交換器
32 熱交換媒体
34 熱交換媒体入口
36 熱交換媒体出口
38 媒体パッド
42 フィルタ
44 ドリフト除去装置
50 媒体シート
52 吸気流れ通路
54 スペーサ
56 アパーチャ
58 マウント
60 スロット
70 第1の層
72 第1の外表面
74 第2の層
76 第2の外表面
78 周辺部
80 通路
82 絞り部分
84 入口開口部
90 陥凹部
92 入口陥凹部
94 出口陥凹部
α 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6