特許第6030835号(P6030835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030835
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】肥料又は薬剤用散布機の散布量調整装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20161114BHJP
   A01M 9/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   A01C15/00 G
   A01M9/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-1575(P2012-1575)
(22)【出願日】2012年1月6日
(65)【公開番号】特開2013-141417(P2013-141417A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年10月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591137156
【氏名又は名称】株式会社ジョーニシ
(74)【代理人】
【識別番号】100101568
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 真一
(72)【発明者】
【氏名】村井 栄介
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−187558(JP,A)
【文献】 特開2005−312351(JP,A)
【文献】 特開2004−329067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00−23/02
A01M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーの下部散布口の直上にモータの駆動で回転する散布ロールを設け、前記モータの回転数を、無線電波発信源を利用した既知の車速検出方法によって農機の車速を検出して電気的に制御することにより、前記散布ロールから落とされる肥料又は薬剤の散布量を車速に連動して調整するようにした肥料又は薬剤用の散布機の散布量調整装置であって、
前記散布機の前記ホッパーは左右に二台配置されており、
前記散布機を制御するためのコントロールボックスに右側ホッパー用と左側ホッパー用の二つの制御ボリュームが設けられており、
2台のホッパーのモータを、それぞれの制御ボリュームで電気的回路を介して設定した際の左右各々のボリューム値と、
ルックアップテーブルに記憶されている、車速の増大に応じて回転数が増大する対応関係を定める、検出された車速と各モータの回転数との相関関係
に基づいて
2台のホッパーの各々のモータの回転数の増大量又は減少量を定めて、
定められた当該回転数の増大量又は減少量のデータに応じてパルス幅変調を行うことにより当該モータの回転数の増減を制御することで、
左右ホッパーの肥料又は薬剤の散布量を個々に車速に連動して適切に制御して、左右ホッパー各々の散布精度を向上することができるようにした
ことを特徴とする肥料又は薬剤用の散布機の散布量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクター又は耕運機等の農業機械(以下「自走式車両」という。)に取付けられる肥料及び薬剤用の散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自走式車両用の肥料散布機は、例えば特許文献1に開示された構成を備える。即ち、肥料散布機は、自走式車両の進行方向に対して右側用及び左側用の2つのホッパーを備える。各ホッパーには、同種類の肥料又は異種類の肥料が収納される。そして、肥料散布機は、左右のホッパーの各々について、田畑等の農機作業を行う用地に肥料を散布する際の肥料の放出の開閉を自在に行えるシャッターの直下と、ホッパーの下部散布口の直上との間のホッパー内の空間に配設された散布ロール、及び、当該散布ロールの回転を駆動するモータを有する。従って、各ホッパーから農作業用地に散布される肥料の散布量は、当該ホッパー用の上記モータの回転数によって決定される。
【0003】
そのために、肥料散布機は、農機作業者が左右のホッパーの各々のモータに流す電流を左右用の各可変抵抗器の設定値を左右個別に可変して設定することで、各々のモータの回転数を調整することが出来るコントロールボックスを具備している。このコントロールボックスは、その様な機能を呈するために、各ホッパー用の可変抵抗器の値を手作業により調整するための摘みを、そのパネル面に備えている。そして、農機作業を行う者は、上記左右ホッパー用の摘みを手で回してボリューム値を設定することで、左右ホッパーの各々の上記モータの回転数をそれぞれ独立して適切な値に設定する。
【0004】
従来の肥料散布機は、以上の通り、各ホッパーのモータの回転数を個々にアナログ的に調整出来る機能を有するコントロールボックスを具備しているので、以下の問題点を解決することが出来る。
【0005】
先ず、同種類の肥料の散布を行うに当たり、左右のホッパーの両モータの性能の製造上の誤差に起因して生じる各モータの回転数の相違によって、左右それぞれの肥料の散布量の相違が生じる。この問題点は、農機作業者がコントロールボックスの各摘みを別個に回して各々のボリューム値を個別に設置することにより、左右のモータの回転数を一致させることにより、解決される。
【0006】
次に、粒の大きさが互いに異なる異種類の肥料を用地の左右側にそれぞれ散布する場合には、肥料の種類毎によって左右の散布量を相違させなければならないという課題がある。この問題点に対しては、農機作業者は、左右のホッパーの各モータの回転数を、上記コントロールボックスのパネル面上の各摘みを別個に回して適切値に設定することにより、左右の散布量を相違させて解決することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−312351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実際の肥料散布作業に於いては、(1)肥料散布対象の用地が平坦な土地ばかりではなく、時としては傾斜のある土地に対して肥料を散布する場合もあり、この場合には自走式車両の作業速度が平坦地の場合の作業速度と比較して遅くなる可能性がある。或いは、(2)農機作業者の自走式車両の操作次第では、肥料散布中の自走式車両の作業速度は、常に一定の速度に保たれているとは限られない。
【0009】
この様な場合(1)又は/及び(2)の発生に於いても、従来の肥料散布機では、自走式車両の作業速度が作業中に変化しているにも拘わらず、左右ホッパーの各モータの回転数は一定値に保たれている。そのため、作業速度が速くなると、肥料の散布量は減少化に転じ、他方、作業速度が遅くなると、肥料の散布量は増大化に転ずる。その結果として、農機作業対象の土地の全体に亘って、肥料の散布量が均一に保持され得ないという問題点が生じる。この様な問題点は、薬剤を土地に散布する場合にも生じる問題点である。
【0010】
この発明は、この様な問題点の認識に基づいて提案されるものであり、その目的は、上記(1)又は/及び(2)の場合に於いても、農機作業対象の土地の全体に亘って肥料又は薬剤の散布量を均一に保持することが可能な肥料及び薬剤用の散布機を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の主題に係る肥料又は薬剤用の散布機の散布量調整装置は、ホッパーの下部散布口の直上にモータの駆動で回転する散布ロールを設け、前記モータの回転数を、無線電波発信源を利用した既知の車速検出方法によって農機の車速を検出して電気的に制御することにより、前記散布ロールから落とされる肥料又は薬剤の散布量を車速に連動して調整するようにした肥料又は薬剤用の散布機の散布量調整装置であって、前記散布機の前記ホッパーは左右に二台配置されており、前記散布機を制御するためのコントロールボックスに右側ホッパー用と左側ホッパー用の二つの制御ボリュームが設けられており、2台のホッパーのモータを、それぞれの制御ボリュームで電気的回路を介して設定した際の左右各々のボリューム値と、ルックアップテーブルに記憶されている、車速の増大に応じて回転数が増大する対応関係を定める、検出された車速と各モータの回転数との相関関係に基づいて2台のホッパーの各々のモータの回転数の増大量又は減少量を定めて、定められた当該回転数の増大量又は減少量のデータに応じてパルス幅変調を行うことにより当該モータの回転数の増減を制御することで、左右ホッパーの肥料又は薬剤の散布量を個々に車速に連動して適切に制御して、左右ホッパー各々の散布精度を向上することができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の主題によれば、肥料又は薬剤の散布時に、一方のホッパーのモータの回転数を、或いは、左右両方のホッパーの各モータの回転数を、自走式車両の作業速度の変動に追従して増減させることが出来、以って、単位時間当りの肥料又は薬剤の散布量を作業速度の変化に追従して適切な量に自動的に制御することが出来る。その結果、本発明の主題の成果として、肥料又は薬剤の散布作業の終了後に於いて、肥料又は薬剤の散布対象の土地に散布された肥料又は薬剤の散布量を当該対象土地の全体に亘って均一化することが可能となる。
【0013】
以下、本発明の様々な具体化された実施の形態を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る肥料散布機の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】構成を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る肥料散布機の散布ロールを示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る肥料散布機のコントロールボックスを模式的に示す上面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る肥料散布機のコントロールボックス内のコントローラの構成を模式的に示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る肥料散布機に於ける作業速度とロール回転数との対応関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る肥料又は薬剤用の散布機の特徴点を大要記載すれば、次の通りである。即ち、散布機の特徴点は、ホッパーの下部散布口の直上にモータの駆動で回転する散布ロールを設け、当該モータの回転数を、無線電波発信源を利用した既知の車速検出方法によって農機の車速を検出して電気的に制御することにより、当該散布ロールから落とされる肥料又は薬剤の散布量を車速に連動して調整するようにした肥料又は薬剤用の散布機の散布量調整装置(コントロールボックスに該当。)である。しかも、当該散布機の散布量調整装置に於いて、当該散布機のホッパーは左右に二台配置されており、散布機を制御するためのコントロールボックスには、右側ホッパー用と左側ホッパー用の二つの制御ボリュームが設けられている。その上で、2台のホッパーの各モータに関して、それぞれの制御ボリュームで電気的回路を介して設定された左右各々のボリューム値と、検出された車速と各モータの回転数との相関関係とに基づいて、2台のホッパーの各々のモータの回転数を制御することで、左右ホッパーの肥料又は薬剤の散布量を個々に車速に連動して適切に制御している。その結果、左右ホッパーの各々の散布精度を飛躍的に向上させることができるようになる。
【0016】
<肥料散布機の構成>
図1は、本実施の形態に係る肥料散布機1の機械的構成を模式的に示す斜視図である。又、図2は、図1の矢印ARから図1の肥料散布機1を眺めた際の正面図である。尚、図2に於いて、本来的には視覚的に見え無い位置に配設されている後述の散布ロール4(右側用の第1散布ロール4A,左側用の第2散布ロール4B)は、記載の便宜上、破線で以って表示されている。
【0017】
図1及び図2に示す様に、トラクター等の自走式車両(図示せず。)の進行方向に対して右側の被散布土地に第1肥料を散布するためのホッパーとして、第1ホッパー5Aが、自走式車両に取付けられている。第1ホッパー5Aの上部から中央部にまで亘る第1開口部5AP内には、第1肥料が収納される。この場合の「肥料の被散布土地」とは、例えば、各種の植物の栽培地である。
【0018】
他方、自走式車両の進行方向に対して左側の被散布土地に第2肥料を散布するためのホッパーとして、第2ホッパー5Bが、自走式車両に取付けられている。この第2ホッパー5Bの上部から中央部にまで亘る第2開口部5BP内には、第2肥料が収納される。第2肥料は第1肥料と同種類の肥料であっても良いし、又は、第2肥料はその粒径が互いに異なる第1肥料とは異種類の肥料であっても良い。
【0019】
又、第1ホッパー5Aの最下部には、そこから、自走式車両の進行方向に対して右側の被散布土地に対して第1肥料を散布するための3つの第1下部散布口2Aが設けられている。この第1下部散布口2Aの数は任意数である。同様に、第2ホッパー5Bの最下部には、そこから左側の被散布土地に対して第2肥料を散布するための3つの第2下部散布口2Bが設けられている。この第2下部散布口2Bの数も任意数である。
【0020】
又、第1ホッパー5Aの中央部には、第1下部散布口2Aに対応して、同数の開閉自在の第1シャッター8Aが、配設されている。同様に、第2ホッパー5Bの中央部には、第2下部散布口2Bに対応して、同数の開閉自在の第2シャッター8Bが、配設されている。
【0021】
そして、第1ホッパー5Aの内で、第1下部散布口2Aの直上位置にあって、且つ、第1ホッパー5Aの第1シャッター8Aの直下位置に該当する空間内には、第1散布ロール4Aが配設されている。この第1シャッター8Aの数は、第1下部散布口2Aの数と同じである。同様に、第2ホッパー5Bの内で、第2下部散布口2Bの直上位置にあって、且つ、第2ホッパー5Bの第2シャッター8Bの直下位置に該当する空間内には、第2散布ロール4Bが配設されている。当該第2シャッター8Bの数も、第2下部散布口2Bの数と同じである。
【0022】
第1散布ロール4Aは、図3の斜視図に示される様に、自走式車両の進行方向に直交する左右方向に対して延在した円柱形状を有している。そして、第1散布ロール4Aは、その中心軸方向に関しては第1シャッター8Aの各々に対応して3つの溝がその表面上に等間隔で形成されており、且つ、その回転方向に関しては複数個の溝部が等間隔で当該表面上に形成されて成る第1溝部4Rを、有する。そして、第1散布ロール4Aの第1溝部4Rの内で中心軸方向に沿って分散配置された3つの溝の各々は、対応する第1シャッター8Aが開状態にある場合に下方へ放出されて落下する第1肥料を受け取る機能を有する。
【0023】
同様に、第2散布ロール4Bも、図3の斜視図に示される様に、自走式車両の進行方向に直交する左右方向に対して延在した円柱形状を有している。そして、第2散布ロール4Bは、その中心軸方向に関しては第2シャッター8Bの各々に対応して3つの溝がその表面上に等間隔で形成されており、且つ、その回転方向に関しては複数個の溝部が等間隔で当該表面上に形成されて成る第2溝部4Rを、有する。そして、第2散布ロール4Bの第2溝部4Rの内で中心軸方向に沿って分散配置された3つの溝の各々は、対応する第2シャッター8Bが開状態にある場合に下方へ放出されて落下する第2肥料を受け取る機能を有する。
【0024】
又、第1モータ3Aは、対応する第1散布ロール4Aを所定の方向へ回転可能に駆動する、連続回転を成すモータである。同様に、第2モータ3Bは、対応する第2散布ロール4Bを所定の方向へ回転可能に駆動する、連続回転を成すモータである。
【0025】
そして、互いに同一の回転数で又は互いに相違する回転数で以って第1モータ3A及び第2モータ3Bの各々の回転を電気的に制御する機能部分が、コントロールボックスCRBXである。コントロールボックスCRBXの一方の出力端子6Tと第1モータ3Aとの間に設けられた第1モータ配線6は、第1モータ3Aを駆動・回転させるための、例えば直流の電気信号を伝送する。他方、コントロールボックスCRBXの他方の出力端子7Tと第2モータ3Bとの間に設けられた第2モータ配線7は、第2モータ3Bを駆動・回転させるための、例えば直流の電気信号を伝送する。
【0026】
図4は、コントロールボックスCRBXの上面に該当するパネル面の配置構成を模式的に示す平面図である。図4に例示される様に、コントロールボックスCRBXのパネル面は、4個の摘み部VA,VB,BA,BBを、少なくとも有する。参照符号PSは、コントロールボックスCRBXの各部に共通する電源であり、電源PSが「オン」状態にされると、コントロールボックスCRBX内部の後述するコントローラCR(図5参照。)にも電源PSの電圧が印可される。
【0027】
それらの内で、自動回転制御摘み部BAは、コントロールボックスCRBXの内部に設けられたコントローラCR(図5参照。)の動作をON/OFFさせるための摘み部である。即ち、農機作業者が自動回転制御摘み部BAを「GPA」側に向けた場合には、上記のコントローラCRがSETされて作動状態となり、逆に自動回転制御摘み部BAを「AC」側に向けた場合には、上記のコントローラCRはRESETされて作動しなくなる。
【0028】
又、肥料散布方向制御摘み部BBは、左右の片方又は両方の被散布土地に第1及び第2肥料の内で対応する肥料を散布するために、第1及び第2モータ3A,3Bの内で対応するモータの回転の制御を指令する摘み部である。即ち、当該摘み部BBを「R側」に向けると、右側の第1ホッパー5A側の既述した各構成要素のみが作動して右側の被散布土地に対してのみ第1肥料を散布するための指令信号が出力される。逆に、左側の被散布土地に対してのみ第2肥料を散布するための指令信号を出力する場合には、農機作業者は当該摘み部BBを「L側」に向ければ良い。これらの指令に対して、右側及び左側の両方の被散布土地に対して第1肥料及び第2肥料を散布する場合には、農機作業者は当該摘み部BBを中央部「・」に位置させれば良い。
【0029】
又、右側ボリューム設定摘み部VAは、自動回転制御摘み部BAが「AC」側に向けられている場合に於いて、手動で当該摘み部VAを回して右側用の可変抵抗器(図示せず。)の抵抗値を設定することで、右側の第1モータ3Aの回転数を設定するための摘み部である。同様に、左側ボリューム設定摘み部VBは、自動回転制御摘み部BAが「AC」側に向けられている場合に於いて、手動で当該摘み部VBを回して左側用の可変抵抗器(図示せず。)の抵抗値を設定することで、左側の第2モータ3Bの回転数を設定するための摘み部である。
【0030】
図5は、第1モータ3A又は/及び第2モータ3Bの回転数(単位は1分間当たりの回転数を示す「rpmで」ある。)を自走式車両の作業速度の変化に応じて自動制御するためのコントローラCRの構成を、アンテナ9と共に、模式的に示すブロック図である。既述した通り、本コントローラCRは、既述のコントロールボックスCRBXの内部に設けられている。
【0031】
図5に於いて、アンテナ9は、遠方の4つの無線電波発信源の各々から出射された各無線電波を受信するアンテナであり、当該アンテナ9の出力線はコントローラCRに接続されている。尚、アンテナ9は、4つの無線電波発信源の各々から出射された各無線電波を確実に受信するために、障害物が無い場所に設置される。
【0032】
図5に例示されるコントローラCRは、LSIチップ(マイクロコンピュータ:図示せず。)とその他の電子部品(メモリ素子及びアナログ電子部品)とが搭載された電子回路基板(図示せず。)により構成される電子回路(PWM(パルス幅変調)方式の回路を含む。)として機能する部分である。即ち、コントローラCRは、3つの機能部CRA,CRB,CRCを有している。
【0033】
それらの機能部CRA,CRB,CRCの内で、自走式車両速度検出部CRAは、アンテナ9により受信された4つの無線電波の信号に基づいて、周知の物理学の原理に依拠した既知の検出方法により、自走式車両の現在の速度(単位はkm/時間。)を検出する。
【0034】
尚、図4の自動回転制御摘み部BAが「GPA」側に向けられた場合に当該摘み部BAより出力される第1切り替え信号SAの第1レベル(例えばHレベル)によって、自走式車両速度検出部CRAはSETされて作動状態に移行する。逆に、自動回転制御摘み部BAが「AC」側に向けられた場合に当該摘み部BAより出力される第1切り替え信号SAの第2レベル(例えばLレベル)によって、自走式車両速度検出部CRAはRESETされて初期状態に戻り、同部CRAは非作動状態となる。「RESET」の場合には、農機作業者は、両摘み部VA,VBの調整・設定によって、第1及び第2モータ3A,3Bの回転数(単位はrpm。)を、自走式車両の速度変化とは無関係に、個別に固定値に設定することになる。
【0035】
又、第1・第2モータ回転数算出部CRBは、自走式車両速度検出部CRAが検出した自走式車両の速度データの電気信号に基づいて、第1モータ3A及び第2モータ3Bの内の少なくとも一方のモータの回転数(単位はrpm。)のデータを算出する。即ち、図4の肥料散布方向制御摘み部BBが「R側」に設定されている場合には、同部BBから出力される第2切り替え信号SBの第1レベルに応じて、第1・第2モータ回転数算出部CRBは右側の第1モータ3Aの回転数のデータのみを算出する。逆に、肥料散布方向制御摘み部BBが「L側」に設定されている場合には、第2切り替え信号SBの第2レベルに応じて、第1・第2モータ回転数算出部CRBは左側の第2モータ3Bの回転数のデータのみを算出する。これに対して、肥料散布方向制御摘み部BBが中央の「・」位置に設定されている場合には、第2切り替え信号SBの第3レベルに応じて、第1・第2モータ回転数算出部CRBは左右の第1モータ3A及び第2モータ3Bの各々の回転数のデータを算出する。
【0036】
そして、第1・第2モータ回転数算出部CRBは、第1及び第2モータ3A,3Bの各々の回転数のデータを算出する際に用いるルックアップテーブル(図示せず。)を備えている。即ち、上記のルックアップテーブルは、自走式車両の速度がX1(km/h)である場合のモータの回転数はY1(rpm)、自走式車両の速度がX2(km/h)(>X1(km/h))の場合のモータの回転数はY2(rpm)(>Y1(rpm))、・・・と言う様に、自走式車両の速度とモータの回転数との対応関係を定めているデータ群を記憶するメモリである。そして、第1・第2モータ回転数算出部CRBは、入力された自走式車両の現在の速度と上記のルックアップテーブルのデータとに基づいて、現在の自走式車両の速度に対応した適切なモータの回転数のデータを算出し、当該算出結果より当該モータの回転数の増大量又は減少量を定めて出力する。
【0037】
第1・第2モータ制御部CRCは、その動作がPWM方式の適用により実現される機能部である。即ち、同部CRCは、第1及び第2モータ3A,3Bの内で、第2切り替え信号SBのレベルにより定まる回転数増減制御対象のモータについて、上記算出部CRBより受信した当該モータの回転数の増減データに応じてパルス幅変調を行い、変調後に生成される電気信号SCA,SCBを当該モータに流して当該モータの回転数の増減を制御する。一方の直流の電気信号SCAは、第1モータ3Aの回転数の増減の制御を行う第1モータ駆動信号である。他方の直流の電気信号SCBは、第2モータ3Bの回転数の増減の制御を行う第2モータ駆動信号である。
【0038】
<肥料散布機の作用>
本実施の形態に係る肥料散布機1は、自走式車両の速度の変化(増減)に応じて、第1及び第2散布ロール4A,4Bの回転数(rpm)の増減を、従って、第1肥料及び第2肥料の散布量率(=散布量/単位時間)の増減を制御する肥料散布機である。
【0039】
即ち、自走式車両の速度が増大すれば、そのままの肥料の散布量率を維持したのでは被散布土地に散布される肥料の散布量が少なくなってしまうので、肥料散布機1は、コントローラCRの制御によるモータ3A,3Bの回転数の増大化により肥料の散布量率を増大化させる。
【0040】
他方、自走式車両の速度が減少に転じれば、そのままの肥料の散布量率の維持では被散布土地に散布される肥料の散布量が多すぎることになってしまうので、肥料散布機1は、コントローラCRの制御によるモータ3A,3Bの回転数の減少化により肥料の散布量率を減少化させる。斯かるコントローラCRによる散布ロール4A,4Bの回転数の制御により、作業速度が変化しても、被散布土地に散布される肥料の散布量は均一化される。
【0041】
この点の制御例を従来の場合と対比して模式的に示すタイミングチャートが、図6である。
【0042】
図6に示される様に、時間軸に対する作業速度の増大(t1〜t2)又は減少(t3〜t4)という変化に応じて、第1及び第2散布ロール4A,4Bの回転数(rpm)が増大化(t1〜t2)又は減少化(t3〜t4)する様に、コントローラCRは、第1及び第2モータ3A,3Bの回転数(rpm)を制御する。その結果、作業速度(=自走式車両の速度)の変化に、散布すべき肥料の散布量を追従させることが可能となる。
【0043】
(付記)
(1) 実施の形態1では、散布機により土地に散布される「散布資材」が肥料である場合が記載されているが、この発明に係る散布機は、肥料の散布のみならず、薬剤の散布の場合にも適用可能であり、その場合の構成・散布方法も肥料の場合と同一である。従って、本発明では、肥料又は薬剤のことを「散布資材」と定義する。
(2) 実施の形態1では、第1及び第2散布ロールを回転させるための第1及び第2モータはDCモータであったが、DCモータに代えて、ACモータ(例えば三相交流モータ)を第1及び第2モータとして適用しても良い。この場合には、マイコン制御によるPWM方式でのインバータ回路が、コントローラ内の電子回路の一つとして付加されることに成る。
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正及び/又は変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明に係る肥料及び薬剤用の散布機は、トラクター等の自走式車両(農業機械)による肥料又は薬剤の一方の散布作業に適用されて好適なものである。
【符号の説明】
【0045】
1 肥料散布機
2A 第1下部散布口
2B 第2下部散布口
3A 第1モータ
3B 第2モータ
4 散布ロール
4A 第1散布ロール
4B 第2散布ロール
4R 溝部
5A 第1ホッパー
5B 第2ホッパー
6 第1モータ配線
7 第2モータ配線
8A 第1シャッター
8B 第2シャッター
9 アンテナ
CRB コントロールボックス
CR コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6