特許第6030840号(P6030840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030840放射線画像診断装置の性能評価用測定器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030840
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】放射線画像診断装置の性能評価用測定器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   A61B6/00 390A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-56230(P2012-56230)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-188314(P2013-188314A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】512064686
【氏名又は名称】特定非営利活動法人日本乳がん検診精度管理中央機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 勝平
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−299736(JP,A)
【文献】 特開2004−357868(JP,A)
【文献】 特開2009−285056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線によって人体組織の検査を行う放射線画像診断装置の性能評価用測定器具であって、
前記放射線画像診断装置に配設されて用いられる本体の、前記放射線の照射方向に対向して配設される面である正面には被測定体が配設され、
該被測定体の外周縁の内側には、放射線の照射により撮像されて画像を形成することで前記放射線画像診断装置の性能評価に用いられる被測定部が配設され、
前記被測定体には、
前記本体が前記放射線画像診断装置に配設されて撮像され、さらに撮像された前記画像が仮想の座標平面に配設された際に
前記画像が正しく配設された場合には、前記仮想の座標平面上に設けられた第一の基準位置に一致するように配設されると共に、
前記画像のそれぞれの前記被測定部が前記性能評価を行うための前記座標平面上の所定位置からずれた位置に存在する場合には、前記本体の前記画像を前記座標平面上の垂直方向、及び/又は、水平方向への平行移動を行う座標変換、及び/又は、前記座標平面上の特定の地点を中心とした回転移動を行う座標変換を行うことで、前記仮想の座標平面上の位置を前記第一の基準位置に一致させてそれぞれの前記被測定体を前記仮想の座標平面上の正しい位置に配設させるために用いられる複数の第一の基準点と、
前記画像の特定の前記被測定部が正しく配設された場合には、前記仮想の座標平面上に設けられた第二の基準位置に一致するように配設されると共に、
それぞれの前記被測定部が撮像され、さらに撮像された前記画像が前記座標平面上に配設された際に、
特定の前記被測定部が前記性能評価を行うための前記座標平面上の所定位置からずれた位置に存在する場合、前記被測定部の前記画像を前記座標平面上の垂直方向、及び/又は、水平方向への平行移動を行う座標変換、及び/又は、前記座標平面上の特定の地点を中心とした回転移動を行う座標変換を行うことで、前記仮想の座標平面上の位置を前記第二の基準位置に一致させて特定の前記被測定体を前記仮想の座標平面上の正しい位置に配設させるために用いられる複数の第二の基準点
が設けられ
複数の前記第一の基準点とそれぞれの前記第一の基準点に対する前記第一の基準位置との前記仮想の座標平面上の位置の一致状況と、少なくとも一の前記第二の基準点と該第一の基準点に対する前記第二の基準位置との前記仮想の座標平面上の位置の一致状況とを用いて、前記本体と前記被測定体とを、前記放射線画像診断装置の性能評価を行える位置に配設するように構成されたことを特徴とする放射線画像診断装置の性能評価用測定器具。
【請求項2】
前記第二の基準点は、前記被測定体の正面における、一の前記被測定部に対して二つ以上、及び/又は、複数の前記被測定部が配設された部分配設領域に対して二つ以上設けられたことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像診断装置の性能評価用測定器具。
【請求項3】
前記第二の基準点は、前記被測定体の正面における、一の前記被測定部の両側、及び/又は、複数の前記被測定部が配設された部分配設領域の少なくとも両側に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の放射線画像診断装置の性能評価用測定器具。
【請求項4】
前記第一の基準点は、前記被測定体において、前記外周縁の内側と、内側に全ての前記被測定部が配設された全体配設領域の外側との間に複数設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の放射線画像診断装置の性能評価用測定器具。
【請求項5】
前記第一の基準点と複数の前記第二の基準点とが、一の仮想直線上に設けられたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の放射線画像診断装置の性能評価用測定器具。
【請求項6】
前記本体及び前記被測定体は、X線によって人体組織の検査を行う放射線画像診断装置の性能評価用に用いられることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の放射線画像診断装置の性能評価用測定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像診断装置の性能評価に用いる測定器具において、当該測定器具を用いた高精度の性能評価を実現させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線(X線,α線,β線,γ線,電子線,紫外線等)を人体に照射して放射線画像を取得し、人体組織の観察を行う医療方法に用いられる、放射線画像撮影装置の性能評価や品質管理(以下単に「性能評価」と称する。本明細書において同じ。)を行うための様々な装置、器具、方法が提案されている。X線を用いて乳房の検査を行う、いわゆるマンモグラフィにおいて用いられるX線画像診断装置等においても同様で、様々な装置、器具、方法が提案されている。なお、本明細書で言う「画像診断装置」には、ソフトウェアがインストールされたパーソナルコンピュータ等、装置単体で診断目的を達成するものも、複数のコンピュータ装置や各種機材の組合せによって診断目的を達成する「診断システム」のようなものも含まれる。
【0003】
従来、X線画像診断装置の性能評価においては、取得した人体の様々な関心組織やそれぞれの組織の重なりなどを模擬した一つ以上の対象物を内蔵した測定器具を診断装置に配設し、診断装置でこの測定器具のX線画像を撮像してX線データを取得・表示し、観察者が一つ以上の対象物の描出を目視で観察し評価する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、このような性能評価の方法に用いられる測定器具が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Digital Mammography QC for Technologists (P32,P33, P40-P42) (Walter L. Robinson and Associates http://www.walterrobinson.com/Digital_mammo_QC_for_technologists_2007.pdf)
【非特許文献2】Mammographic Accreditarion Phantom Model 015 (Computerized Imaging Reference Systems, Inc. Product Catarog http://www.cirsinc.com/products/modality/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献2に記載の器具を用いて非特許文献1に記載の測定を行う場合、観察者は、X線画像データに基づいて、測定器具とX線受像器との位置確認や、測定器具の位置決めや、X線画像データの検討に基づく方向性の評価を主に目視で行う。そのため、性能評価の結果は目視による誤差の割合が大きいという問題がある。また、非特許文献2に記載の器具で測定を行う際、その器具に設けられた、一つ以上の被測定部の測定する位置及びその領域を主に観察者の目視で決めていた。そのため、目視による誤差が測定結果に占める割合が大きいという問題がある。また、非特許文献1を用いた測定結果は各観察者の主観に大きく依存するため、観察者間の主観の相違による誤差が多く発生し、それが多くの台数のX線画像診断装置の測定結果の値に大きな変動を与えるという問題がある。また、取得されたX線画像は観察者の視覚に大きく依存して形成された個体差や誤差の大きいものであるため、画像解析ソフトウェア等を実装したコンピュータによる対比や解析が困難であるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、客観的かつ画一的な放射線画像診断装置の性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、放射線によって人体組織の検査を行う放射線画像診断装置の性能評価用測定器具であって、前記放射線画像診断装置に配設されて用いられる本体の、前記放射線の照射方向に対向して配設される面である正面には被測定体が配設され、該被測定体の外周縁の内側には、放射線の照射により撮像されて画像を形成することで前記放射線画像診断装置の性能評価に用いられる被測定部が配設され、前記被測定体には、前記本体が前記放射線画像診断装置に配設されて撮像され、さらに撮像された前記画像が仮想の座標平面に配設された際に、前記画像が正しく配設された場合には、前記仮想の座標平面上に設けられた第一の基準位置に一致するように配設されると共に、前記画像のそれぞれの前記被測定部が前記性能評価を行うための前記座標平面上の所定位置からずれた位置に存在する場合には、前記本体の前記画像を前記座標平面上の垂直方向、及び/又は、水平方向への平行移動を行う座標変換、及び/又は、前記座標平面上の特定の地点を中心とした回転移動を行う座標変換を行うことで、前記仮想の座標平面上の位置を前記第一の基準位置に一致させてそれぞれの前記被測定体を前記仮想の座標平面上の正しい位置に配設させるために用いられる複数の第一の基準点と、前記画像の特定の前記被測定部が正しく配設された場合には、前記仮想の座標平面上に設けられた第二の基準位置に一致するように配設されると共に、それぞれの前記被測定部が撮像され、さらに撮像された前記画像が前記座標平面上に配設された際に、特定の前記被測定部が前記性能評価を行うための前記座標平面上の所定位置からずれた位置に存在する場合、前記被測定部の前記画像を前記座標平面上の垂直方向、及び/又は、水平方向への平行移動を行う座標変換、及び/又は、前記座標平面上の特定の地点を中心とした回転移動を行う座標変換を行うことで、前記仮想の座標平面上の位置を前記第二の基準位置に一致させて特定の前記被測定体を前記仮想の座標平面上の正しい位置に配設させるために用いられる複数の第二の基準点が設けられ複数の前記第一の基準点とそれぞれの前記第一の基準点に対する前記第一の基準位置との前記仮想の座標平面上の位置の一致状況と、少なくとも一の前記第二の基準点と該第一の基準点に対する前記第二の基準位置との前記仮想の座標平面上の位置の一致状況とを用いて、前記本体と前記被測定体とを、前記放射線画像診断装置の性能評価を行える位置に配設するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記第二の基準点は、前記本体の正面における、一の前記被測定部に対して二つ以上、及び/又は、複数の前記被測定部が配設された部分配設領域に対して二つ以上設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記第二の基準点は、前記本体の正面における、一の前記被測定部の両側、及び/又は、複数の前記被測定部が配設された部分配設領域の少なくとも両側に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記第一の基準点は、前記被測定体において、前記外周縁の内側と、内側に全ての前記被測定部が配設された全体配設領域の外側との間に複数設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記第一の基準点と前記第二の基準点とが、一の仮想直線上に設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記本体及び前記被測定体は、X線によって人体組織の検査を行う放射線画像診断装置の性能評価用に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、被測定体には、本体が放射線画像診断装置に配設された際の本体の水平方向の基準位置として用いられる第一の基準点が複数設けられているので、仮に放射線画像診断装置における正規の向きや正規の配設位置とは異なる向きや位置に本体を配置して放射線画像を撮像しまった場合も、撮像された放射線画像において、本体の向きや配置位置のずれを迅速かつ的確に把握し、ずれを修正するための措置をとることができる。また、第一の基準点とは別に、被測定部の水平方向の基準位置として用いられる第二の基準点が少なくとも一つ設けられているので、本体が放射線画像診断装置に配設されて撮像された放射線画像において、第一の基準点と第二の基準点との相対的位置関係や、第二の基準点同士の相対的位置関係を特定することで、被測定部の配設位置を明確に特定できる。従って、本体の放射線画像診断装置に対する配設位置にずれが生じた状態でそれぞれ撮像された複数の放射線画像同士について、観察者の主観に起因する相違を抑止し、客観的かつ画一的な画像評価を行うことができる。これにより、客観的かつ画一的な放射線画像診断装置の性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第二の基準点は、被測定体の正面における、一の被測定部に対して二つ以上、及び/又は、複数の被測定部が配設された部分配設領域に対して二つ以上設けられていることにより、本体が放射線画像診断装置に配設されて撮像された放射線画像において、第二の基準点同士の相対的位置関係を特定することによって、一又は複数の被測定部の配設位置をより明確に特定できる。これにより、より客観的かつ画一的な放射線画像診断装置の性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第二の基準点は、被測定体の正面における、一の被測定部の両側、及び/又は、複数の被測定部が配設された部分配設領域の少なくとも両側に設けられたことにより、一又は複数の被測定部は常に二つ以上の第二の基準点の間に存在することになり、二つ以上の第二の基準点の間に存在する被測定部の位置を正確に特定できる。特に、面積の大きな被測定部の配設位置を高精度に特定できる。これにより、本体が放射線画像診断装置に配設されて撮像された放射線画像において、点形状や線形状の被測定部のみならず、面形状の被測定部も明確に特定でき、客観的かつ画一的な放射線画像診断装置の性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、第一の基準点は、被測定体において、外周縁の内側と、内側に全ての被測定部が配設された全体配設領域の外側との間に複数設けられたことにより、全ての被測定部は、被測定体において、常に複数の第一の基準点が配設された内側の領域に存在することになり、第一の基準点は、全ての被測定部よりも外側に位置することになる。このため、本体が放射線画像診断装置に配設されて撮像された放射線画像において、第一の基準点の位置を特定することにより、全ての被測定部の位置を正確に特定することが容易になる。これにより、一層客観的かつ画一的な放射線画像診断装置の性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、第一の基準点と複数の第二の基準点とが、一の仮想直線上に設けられたことにより、本体が放射線画像診断装置に配設されて撮像された放射線画像において、第一の基準点と少なくとも一つの第二の基準点同士の相対的位置関係を特定することによって、被測定部の配設位置を簡易かつ確実に特定できる。これにより、一層客観的かつ画一的な放射線画像診断装置の性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、X線によって人体組織の検査を行う放射線画像診断装置の性能評価において、客観的かつ画一的な性能評価を実現させる放射線画像診断装置の性能評価用測定器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の実施の形態1に係る測定器具の部分拡大図である。
図2】同上実施の形態1に係る測定器具の正面図である。
図3】同上実施の形態1に係る測定器具のA−A断面図である。
図4】同上実施の形態1に係る、乳房X線撮影装置によって取得された第一の性能評価用画像のイメージ図である。
図5】同上実施の形態1に係る、乳房X線撮影装置によって取得された第一の性能評価用画像から第一の基準点の画像以外を除去したイメージ図である。
図6】同上実施の形態1に係る、乳房X線撮影装置によって取得された第二の性能評価用画像、及び第一の性能評価用画像から第二の基準点の画像以外を除去したイメージ図である。
図7】同上実施の形態1に係る、乳房X線撮影装置への第一の配置状態を示す概略図であって、(a)平面図、(b)矢印B方向から見た部分拡大図である。
図8】同上実施の形態1に係る、乳房X線撮影装置への第二の配置状態を示す概略図であって、(a)平面図、(b)矢印D方向から見た部分拡大図である。
図9】この発明の実施の形態2に係る測定器具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<発明の実施の形態1>
図1乃至図8にこの発明の実施の形態1を示す。
【0021】
図2及び図3に示す、この実施の形態1の「放射線画像診断装置の性能評価用測定器具」としての測定器具1Aは、図7に概略図を示すような、「放射線画像診断装置」としての乳房X線撮影装置100の性能評価に用いられる。即ち、図2及び図3に示す測定器具1Aは、乳房X線撮影装置100の撮影台105上に配設され、正面にX線を照射されてX線画像が撮像されることで、乳房X線撮影装置100の性能評価が実現されるものである。
【0022】
図7に示す乳房X線撮影装置100は、放射線によって人体組織の画像診断を行う際、特にX線による女性の乳房の検査の際に用いられる。乳房X線撮影装置100は、支持体101の上部にX線を放射するX線管102が設けられ、支持体101の下部には乳房を圧迫する圧迫板103と、X線検出器104を備えた撮影台105とが設けられている。また、乳房X線撮影装置100は、少なくとも一つのCPUを備えた制御部106を有する。制御部106は、X線画像の取得を制御する機能手段、X線画像を画像処理する機能手段(例えば実装されたプログラム)、取得された複数のX線画像を比較対照して乳房X線撮影装置100の性能評価をする機能手段、等を有する。但し、X線画像の性能評価をする機能手段は、乳房X線撮影装置100以外の解析用コンピュータが備えていてもよい。あるいは、複数のX線画像の比較対照による乳房X線撮影装置100の性能評価を人間が視覚的に行ってもよい。
【0023】
測定器具1Aの本体1は、例えばアクリル等、剛性が高く、かつX線の透過性の高い樹脂によって、図2及び図3に示すような略箱型に形成されている。本体1の背面側には、図2及び図3に示す、略円柱状の位置決め部材2が突設されている。
【0024】
測定器具1Aの本体1の正面側の中央部には、図1に示すように被測定体3が配設されている。この被測定体3は、例えばシリコンゴム等、人体組織に近い組成や弾性を有し、X線の透過性の高い樹脂によって板状に形成されている。被測定体3は、本体1の正面側の凹部4に収容された状態で配設され、図3に示すように、本体1の正面の周辺部と凹部4に配設された被測定体3の正面とは略面一に形成されている。
【0025】
図1に示すように、被測定体3には、n個(n≧1、ここではn=8)の被測定部5,5,・・・5が設けられている。この被測定部5,5,・・・,5は、X線透過性の低い材質により、線、領域、幾何学模様のような形状に形成されている。なお、被測定部5,5,・・・,5は基本的に同じ構成を有するので、以下、特に区別の必要がある場合を除き被測定部5と記載する。
【0026】
図1に示すように、被測定体3には、二つの位置決め部材2,2から上側(図1における上側)に引かれた仮想直線10,10上に位置して、二つの第一の基準点6,6が配設されている。第一の基準点6,6は、X線透過性の低い材質により、略正方形に形成されている。第一の基準点6,6は、被測定体3の外周縁7(図4参照)の内側と、内側に全ての被測定部5が配設された略矩形の全体配設領域8(図1参照)の外側との間に設けられている。図1に示すように、全体配設領域8の下側(図1における下側)の一辺は、二つの位置決め部材2,2の上端点2a,2aを結ぶ位置に左右方向(図1における左右方向)に形成される仮想直線10以上の位置に形成される。この実施の形態においては、図1に示す通り、全体配設領域8の下側の一辺は、仮想直線10よりも上側に設けられている。なお、仮想直線10,10と仮想直線10とは直角に交わっている。
【0027】
なお、仮想直線10,10,10,10,10,10は仮想的なものであって、実際の被測定体3には、仮想直線10,10,10,10,10,10を示す点線や実線等は表示されていない。
【0028】
第一の基準点6,6は、後述するように、本体1が乳房X線撮影装置100に配設された際の本体1の水平方向(図2における紙面方向、図3における左右方向のこと。本明細書において同じ。)の基準位置として用いられる
【0029】
この実施の形態1では、被測定体3には第一の基準点6,6が2つ配設されているが、3つ以上配設されていてもよい。また、全体配設領域8は仮想的な領域である。図1において全体配設領域8は点線で表示されているが、実際の被測定体3には、全体配設領域8を示す点線や実線等は表示されていない。第一の基準点6,6は基本的に同じ構成を有するので、以下、特に区別の必要がある場合を除き第一の基準点6と記載する。
【0030】
図1に示すように、被測定体3には、m個(m≧1、ここではm=6)の第二の基準点9,9,・・・,9が設けられている。第二の基準点9,9,・・・,9は、X線透過性の低い材質で形成されている。第二の基準点9,9,・・・,9は、第一の基準点6より一辺の長さが小さい略正方形に形成されている。ただし、第二の基準点9,9,・・・,9は、制御部106や、解析用コンピュータ(図示せず)の画像解析において第一の基準点6との識別が可能であればどのような形状や大きさに形成されていてもよい。第二の基準点9,9,・・・,9は、被測定体3の全体配設領域8の内側に設けられている。第二の基準点9,9,・・・,9は、後述するように、被測定部5の水平方向の基準位置として用いられる。
【0031】
図1に示すように、第二の基準点9,9,・・・,9のうち2つの第二の基準点9,9は、図1に示す通り、一の被測定部たとえば被測定部5の線対称位置を示す仮想直線10上に配設されている。即ち、第二の基準点9,9は、被測定部5の両側に位置して、被測定部5を基準に略線対称に配設されている。なお、この第二の基準点9,9と、1つの第一の基準点6とは、仮想直線10上に形成されている。
【0032】
一方、2つの第二の基準点9,9は、複数たとえば3つの被測定部5,5,5が配設された部分配設領域11の線対称位置を示す仮想直線10上に配設されている。即ち、第二の基準点9,9は、部分配設領域11の両側に位置して、部分配設領域11を基準に略線対称に配設されている。
【0033】
また、2つの第二の基準点9,9は、1つの被測定部5、及び、この被測定部5を部分配設領域11としてその内側に配設された3つの被測定部5,5,5、の線対称位置を示す仮想直線10上に配設されている。即ち、第二の基準点9,9は、1つの被測定部5、及び、部分配設領域11の両側に位置して、被測定部5を基準に略線対称に配設されている。
【0034】
なお、第二の基準点9,9,・・・,9、仮想直線10,10,10、部分配設領域11,11は基本的に同じ構成を有するので、以下、特に区別の必要がある場合を除き第二の基準点9、仮想直線10、部分配設領域11と記載する。なお、第二の基準点9は、1つの被測定部5又は1つの部分配設領域11に対して1つだけ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。また、仮想直線10、及び部分配設領域11は仮想的なものであって、実際の被測定体3には、仮想直線10、及び部分配設領域11を示す点線や実線等は表示されていない。
【0035】
次に、この実施の形態1の測定器具1Aの使用方法について説明する。
【0036】
まず、図7の(a)に示すように、測定器具1Aの本体1を、正面を上側にして撮影台105上に配設する。即ち、本体1の正面が圧迫板103に向くようにして、撮影台105上に配設する。本体1の位置決め部材2を撮影台105の縁に当接させて、本体1を撮影台105上に位置決めする。そして、図7の(b)に示すように、測定器具1Aの本体1は、左右方向中心位置M1(図1参照)が撮影台105の左右方向中心位置M2に略一致するように撮影台105上に配設する。そして、乳房X線撮影装置100の圧迫板103を図8の矢印Cに示す方向に下降させ、本体1の正面に接するように配設する。この状態で、乳房X線撮影装置100のX線管102からX線を照射させ、撮影台105のX線検出器104で受けたX線により、測定器具1Aの本体1や被測定体3のX線画像を取得する。
【0037】
X線画像の取得方法の一例を説明する。例えば、本体1や被測定体3の撮影領域を、図1に例示する複数例えばk個(k>1)の微小領域12,12,・・・,12に区分し、それぞれの微小領域12,12,・・・,12毎に、内部を上から下にかけて一方向(例えば図1における左右方向)かつ平行に繰り返し走査する。走査によって得られたX線の微細画像を、乳房X線撮影装置100内の画像形成領域(図示せず)に写植して、X線画像を形成する。但し、この一例以外の如何なる方法で測定器具1AのX線画像が取得されてもよい。
【0038】
図4は、乳房X線撮影装置100によって取得された第一の性能評価用画像のイメージ図であり、測定器具1AのX線画像である。同図において、第一の性能評価用画像21は、X軸方向、Y軸方向の座標平面上に形成されている(なお、後述の図5図6のイメージ図も同じである。)。第一の性能評価用画像21には、被測定体3に配設された被測定部5、第一の基準点6、第二の基準点9が画像表示されている。
【0039】
取得された測定器具1AのX線画像が複数枚存在する場合、乳房X線撮影装置100の制御部106や、解析用コンピュータ(図示せず)、あるいは作業者の視覚によって複数の測定器具1AのX線画像を比較することで、乳房X線撮影装置100の性能評価を行うことができる。
【0040】
ここで、乳房X線撮影装置100の制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)によって複数のX線画像を比較して乳房X線撮影装置100の性能評価を行う場合を考える。
【0041】
図5は、図4に示す第一の性能評価用画像21から第一の基準点6の画像以外を除去したイメージ図である。説明の簡単のため、このイメージ図を用いて説明する。この第一の性能評価用画像21は、被測定体3の外周縁7の横辺と縦辺とが、画像上の基準X軸23や基準Y軸24にほぼ沿った状態で撮影されて取得されている。
【0042】
一方、図6は、第二の性能評価用画像22であり、第一の性能評価用画像21とは別に乳房X線撮影装置100で取得された性能評価用画像である。ただし図6においては、第二の性能評価用画像22から第一の基準点6の画像以外を除去したイメージを示しており、実際の第二の性能評価用画像22にはこの他に被測定部5、第二の基準点9が表示される。この第二の性能評価用画像22は、被測定体3の外周縁7の横辺と縦辺とが、画像上の基準X軸23や基準Y軸24に対して大きく傾斜した状態で撮影されて取得されている。
【0043】
この場合、図5の第一の性能評価用画像21、及び図6の第二の性能評価用画像22の対応する被測定部5(図4参照)の座標位置が一致した状態でなければ、第一の性能評価用画像21と第二の性能評価用画像22とを比較対照した性能評価は行えない。
【0044】
ここで、この実施の形態1の測定器具1Aの撮影で取得された第一の性能評価用画像21、及び第二の性能評価用画像22においては、第一の基準点6と第二の基準点9とが配設されている。そのため、第一の性能評価用画像21、及び第二の性能評価用画像22の、対応する被測定部5の座標位置を一致させる調製(例えば座標変換)を容易に行うことができる。
【0045】
例えば、図6のイメージ図に示すように、第二の性能評価用画像22を、第一の性能評価用画像21の座標位置に一致させる調製を行う場合を考える。
【0046】
第一の性能評価用画像21の一方の第一の基準点6は画像表示座表の(X1,Y1)の位置に表示される。また、第一の性能評価用画像21の他方の第一の基準点6は、測定器具1Aにおける第一の基準点6と6との間の定めた幾何学的な配置に対応する画像表示座表(X2,Y2)で表示される。
【0047】
ここで、図6に示す通り、第二の性能評価用画像22は、被測定体3が水平方向に傾斜した状態で撮影されているため、一方側の第一の基準点6は第一の性能評価用画像21の第一の基準点6とは異なった位置に存在する。しかし、第一の基準点6と6との幾何学的な配置は第一の性能評価用画像21、第二の性能評価用画像22とも変わらない。そのため、第二の性能評価用画像22において、一方の第一の基準点6に対応する他方の第一の基準点6の表示画像座標は、(X2,Y2)から(X3,Y3)に変化している。
【0048】
そして、図6に示すように、第二の性能評価用画像22を回転させる座標変換や、水平移動させる座標変換を行うことで、第一の性能評価用画像21、第二の性能評価用画像22の第一の基準点6と6との座標位置を一致させることができる。
【0049】
そして、一方の第一の基準点6の座標位置、及び一方の第一の基準点6に対する他方の第一の基準点6の座標位置の変化を、乳房X線撮影装置100の制御部106や、解析用コンピュータ(図示せず)で管理することによって、次の(事柄1)(事柄2)を自動的に行うことができる。
(事柄1)乳房X線撮影装置100の撮影台105の内部に配置された目で見えないX線受像器の配置(位置と方向)の確認。
(事柄2)測定器具1Aを撮影台105に繰り返して配置するときに、撮影台105上に配置する測定器具1AがX線受像器に対して所定の配置(位置と方向)であるかどうかの確認。
【0050】
一方、被測定部5の両側に配置した第二の基準点9は、それぞれの第一の基準点6,6を基準とした規定した幾何学的な配置である。そのため、それぞれの第二の基準点9,9,・・・,9は、図4で示すそれぞれの第一の基準点6,6が定まった画像座表で表示されるように、それぞれの第一の基準点6,6に対して定まった画像座表で表示される。例えば、図1に示す任意の被測定物たとえば被測定部5の大きさは、その両側に配置した2つの第二の基準点9,9を結ぶ仮想直線10を基準にして定めている。従って、第一の基準点6,6の表示画像座表、及び、2つの第二の基準点9,9の一方又は双方の表示画像座表を用いて、任意の被測定物たとえば被測定部5の測定位置及び測定領域を決めることができる。乳房X線撮影装置100の制御部106や、解析用コンピュータ(図示せず)は、表示画像座表(のテーブル等)と座標変換用プログラム等を用いて、任意の被測定物たとえば被測定部5の測定位置及び測定領域の特定と座標変換を自動的に行うことができる。上述と同様の方法により、上述の被測定部5以外の任意の被測定部5の測定位置及び測定領域の特定と座標変換も自動的に行うことができる。
【0051】
そして、乳房X線撮影装置100の制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、図5に示すように、第二の性能評価用画像22の2つの第一の基準点6,6を、図4に示す第一の性能評価用画像21の2つの第一の基準点6,6の座標位置にそれぞれ一致するように座標変換する。次に、制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、第二の性能評価用画像22のそれぞれの第二の基準点9,9,・・・,9の位置を、第一の性能評価用画像21の第二の基準点9,9,・・・,9の位置に一致しているかどうかを確認する。
【0052】
この場合、それぞれの第一の基準点6,6の座標位置の一致状況、及び、第二の基準点9,9,・・・,9の座標位置の一致状況は、以下の(方法1)(方法2)の何れかで行うことが考えられる。
(方法1)制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、2つの第一の基準点6と、被測定部5や部分配設領域11の両側に配置された2つの第二の基準点9のうちの一方の一致状況を確認する。例えば、任意の被測定部たとえば被測定部5に注目する場合、制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、それぞれの第一の基準点6,6の座標位置の一致状況と、被測定部5の両側の第二の基準点9,9のうちの一方の第二の基準点9の座標位置の一致状況とを確認する。この方法により、注目した被測定部5の一致状況を簡易な手順で確認することができる。
(方法2)制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、2つの第一の基準点6と、被測定部5や部分配設領域11の両側に配置された2つの第二の基準点9の双方の一致状況を確認する。例えば、一の被測定部たとえば被測定部5に注目する場合、制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、それぞれの第一の基準点6,6の座標位置の一致状況と、被測定部5の両側の第二の基準点9,9の座標位置の一致状況とを確認する。この方法により、2つの第二の基準点9の間に存在する、注目した被測定部5の座標位置の一致状況を高い精度で確認することができる。特に、被測定部5が点形状や線形状でなく、面積を有する面形状の場合(例えば図1に示す被測定部5や、部分配設領域11の内部に配設された3つの被測定部5,5,5全体)の座標位置を高い精度で確認できる。
【0053】
なお、制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、(方法1)(方法2)以外の如何なる方法で第一の基準点6や第二の基準点9の一致状況を確認してもよい。
【0054】
上述の説明は、第一、第二の性能評価用画像21,22の倍率が同一であることを前提とした。一方、第一、第二の性能評価用画像21,22の倍率が同一でない場合にも、上述の方法を用いて、それぞれの第一、第二の性能評価用画像21,22の倍率を一致させる調節も容易に行える。即ち、それぞれの第一の基準点6,6の座標位置と、注目する被測定部、たとえば被測定部5、両側の第二の基準点9,9のうちの一方又は双方が一致するように、一方の性能評価用画像、たとえば第二の性能評価用画像22、の倍率を、他方の性能評価用画像、たとえば第一の性能評価用画像21、の倍率に一致させる倍率調整を行うことで、被測定部5の座標位置を一致させることができる。
【0055】
このようにして、それぞれの被測定部5の座標位置を一致させたのち、制御部106や解析用コンピュータ(図示せず)は、それぞれの被測定部5の撮影状況を比較対照することで、乳房X線撮影装置100の性能評価を行う。
【0056】
なお、上述の説明は、コンピュータによる性能評価を行う場合を説明したが、観察者が視覚によって第一、第二の性能評価用画像21,22を比較対照する場合にもこの実施の形態1を活用できる。すなわち、第一、第二の性能評価用画像21,22の第一の基準点6や第二の基準点9の位置を合わせた状態で、視覚によって第一、第二の性能評価用画像21,22の比較対照を行うことができる。これにより、観察者に対し、客観的妥当性の高い視覚によるに性能評価を容易に行わせることができる。
【0057】
なお、測定器具1Aの使用にあたり、図7の(a)に示す態様に替えて、図8の(a)に示すように、測定器具1Aの本体1を、乳房X線撮影装置100の撮影台105上に、正面を下側にして配設してもよい。即ち、測定器具1Aの本体1の正面が、撮影台105の上面に当接するように配設される。この配設態様は、測定器具1Aを製品検査を行うために使用する場合、例えば位置決め部材2が測定器具1Aの本体1に正しく配設されているかを確認する場合等に有効である。
【0058】
図8の(a)に示す場合も、図8の(b)に示すように、測定器具1Aの本体1は、左右方向中心位置M1(図1参照)が撮影台105の左右方向中心位置M2に略一致するように撮影台105上に配設するのが望ましい。
【0059】
この状態で、乳房X線撮影装置100のX線管102からX線を照射させ、撮影台105のX線検出器104で受けたX線により、測定器具1Aの本体1や本体1の位置決め部材2のX線画像を取得する。このX線画像において、撮影台105上の任意の基準線(図示せず)や基準点(図示せず)が、図1に示す仮想直線10,10の線上や仮想直線10の線上に現れているかを確認することで、位置決め部材2が測定器具1Aの本体1に正しく配設されているか否かを確認できる。
【0060】
以上示した通り、この実施の形態1においては、被測定体3には、本体1が乳房X線撮影装置100に配設された際の本体1の水平方向の基準位置として用いられる第一の基準点6が複数設けられているので、仮に乳房X線撮影装置100における正規の向きや正規の配設位置とは異なる向きや位置に本体1を配置して放射線画像を撮像しまった場合も、撮像されたX線画像において、本体1の向きや配置位置のずれを迅速かつ的確に把握し、ずれを修正するための措置をとることができる。また、第一の基準点6とは別に、被測定部5の水平方向の基準位置として用いられる第二の基準点9が少なくとも一つ設けられているので、本体1が乳房X線撮影装置100に配設されて撮像されたX線画像において、第一の基準点6と第二の基準点9との相対的位置関係や、第二の基準点9同士の相対的位置関係を特定することで、被測定部5の配設位置を明確に特定できる。従って、本体1の乳房X線撮影装置100に対する配設位置にずれが生じた状態でそれぞれ撮像された複数のX線画像同士について、観察者の主観に起因する相違を抑止し、客観的かつ画一的な画像評価を行うことができる。これにより、客観的かつ画一的な乳房X線撮影装置100の性能評価を実現させる測定器具1Aを提供することができる。
【0061】
この実施の形態1においては、第二の基準点9は、被測定体3の正面における、一の被測定部5に対して二つ以上、及び/又は、複数の被測定部5が配設された部分配設領域11に対して二つ以上設けられていることにより、本体1が乳房X線撮影装置100に配設されて撮像されたX線画像にいて、第二の基準点9同士の相対的位置関係を特定することによって、一又は複数の被測定部5の配設位置をより明確に特定できる。これにより、より客観的かつ画一的な乳房X線撮影装置100の性能評価を実現させる測定器具1Aを提供することができる。
【0062】
この実施の形態1においては、第二の基準点9は、被測定体3の正面における、一の被測定部5の両側、及び/又は、複数の被測定部5が配設された部分配設領域11の少なくとも両側に設けられたことにより、一又は複数の被測定部5は常に二つ以上の第二の基準点9の間に存在することになり、二つ以上の第二の基準点9の間に存在する被測定部5の位置を正確に特定できる。特に、面積の大きな被測定部5の配設位置を高精度に特定できる。これにより、本体1が放射線画像診断装置1Aに配設されて撮像されたX線画像において、点形状や線形状の被測定部5のみならず、面形状の被測定部5も明確に特定でき、客観的かつ画一的な乳房X線撮影装置100の性能評価を実現させる測定器具1Aを提供することができる。
【0063】
この実施の形態1においては、第一の基準点6は、被測定体3において、外周縁7の内側と、内側に全ての被測定部5が配設された全体配設領域8の外側との間に複数設けられたことにより、全ての被測定部5は、被測定体3において、常に複数の第一の基準点6が配設された内側の領域に存在することになり、第一の基準点6は、全ての被測定部5よりも外側に位置することになる。このため、本体1が乳房X線撮影装置100に配設されて撮像されたX線画像において、第一の基準点6の位置を特定することにより、全ての被測定部5の位置を正確に特定することが容易になる。これにより、一層客観的かつ画一的な乳房X線撮影装置100の性能評価を実現させる測定器具1Aを提供することができる。
【0064】
この実施の形態1においては、第一の基準点6と複数の第二の基準点9とが、一の仮想直線10上に設けられたことにより、本体1が乳房X線撮影装置100に配設されて撮像されたX線画像において、第一の基準点6と少なくとも一つの第二の基準点9同士の相対的位置関係を特定することで、被測定部5の配設位置を簡易かつ確実に特定できる。これにより、一層客観的かつ画一的な乳房X線撮影装置100の性能評価を実現させる測定器具1Aを提供することができる。
【0065】
<発明の実施の形態2>
図9にこの発明の実施の形態2を示す。
【0066】
同図に示す、この実施の形態2の「放射線画像診断装置の性能評価用測定器具」としての測定器具1Bは、本体31が複数個例えば4個の本体部材31,31,31,31によって形成されている。それぞれの本体部材31,31,31,31同士は、嵌合凸部と嵌合凹部(いずれも図示せず)によって着脱自在に形成されている。それ以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0067】
この実施の形態の測定器具1Bによれば、乳房X線撮影装置100の撮影台105に配設して撮影する際、本体部材31,31,31,31の一部乃至全部を着脱させることで、本体31の高さ方向位置を容易に調節することができる。これにより、撮影の利便性を向上させることができる。
【0068】
なお、上記各実施の形態において、測定器具1A,1Bは、乳房X線撮影装置100の性能評価に用いたが、乳房X線撮影装置100以外のいかなるX線画像撮影装置の性能評価に用いることもできる。また、X線画像撮影装置以外の如何なる放射線(例えばα線,β線,γ線,電子線,紫外線等)を用いて人体組織の放射線画像を取得する放射線撮影装置の性能評価に用いることもできる。
【0069】
上記各実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記各実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1A,1B・・・測定器具(放射線画像診断装置の性能評価用測定器具)
1,31・・・本体
3・・・被測定体
5,5,5,・・・,5・・・被測定部
6,6,6・・・第一の基準点
7・・・・外周縁
8・・・全体配設領域
9,9,9,・・・,9・・・第二の基準点
10,10,10,10・・・仮想直線
11,11,11・・・部分配設領域
100・・・乳房X線撮影装置(放射線画像診断装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9