(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を光量調整装置に適用した実施の形態について説明する。
図1に示すように、光量調整装置100は、第1基板組(地板組)1と、羽根組2と、駆動リング組3と、第2基板組4(押さえ板組)で構成されている。そして第1基板組1に羽根組2が組み込まれ、この羽根組2の上に駆動リング組3と第2基板組4が組み込まれている。このような構成によって羽根組2は第1基板組1と第2基板組4にサンドイッチ状に挟持され、第1基板組1と第2基板組4は固定ビスで一体化(不図示)されている。
【0020】
[第1基板組の構成]
図2に従って第1基板組1と羽根組2の構成について説明する。第1基板組1は地板11と第1摺動リング15とで構成され、羽根組2は複数の絞り羽根21a〜21iで構成されている。
【0021】
地板11は中央部に光路開口12が形成されており、撮像装置の鏡筒形状に応じた形状で構成されている。この地板11は、金属、樹脂などで装置に強靭性を持たせる材質・寸法に形成されており、薄型で小型軽量に構成するために、ガラス繊維などの強化繊維を混入した合成樹脂のモールド成形で形成されている。
【0022】
地板11は開口周縁に絞り羽根を支持する羽根支持面11x(平坦面若しくは凹凸面)を有しており、この支持面に絞り羽根21を開閉方向に案内(運動規制)するガイド溝13が形成されている。このガイド溝13の構成については後述する。図示14は押さえ板41を固定する連結突起であり、突起内部にネジ穴が形成してある。
【0023】
「第1摺動リング」
第1摺動リング15は、地板の羽根支持面11xと絞り羽根21との間に介在し、絞り羽根21が直接地板11と接触するのを避ける。このため摺動部材15はリング形状に形成され、以下これを摺動リングという。この第1摺動リング15は中央部に光路開口12を有するリング形状に形成されている。図示の第1摺動リング15は地板11と略々同一の平面形状に形成している。
【0024】
第1摺動リング15は、後述する絞り羽根21との摩擦係数が小さい樹脂フィルムで形成されている。図示の第1摺動リング15は、例えばポリエチレン樹脂フィルムの型抜き成形で形成されている。そして
図4(b)にその形状を示すように地板11のガイド溝13と一致するガイド溝16が形成されている。このガイド溝16については後述する。
【0025】
従って、地板11を樹脂のモールド成形で、第1摺動リング15を樹脂フィルムの型抜き成形で形成する場合には、地板11の形状精度に比べ摺動リング15の形状精度を高精細に形成することができる。
【0026】
図示の第1摺動リング15は地板11と略々同一形状に形成され、中央に位置する光路開口12の周縁に複数の絞り羽根21(21a〜21i)の基端部21xを支持し、先端部21yは光路開口内部に臨ませるように支持する(
図9(a)参照)。
【0027】
「絞り羽根」
羽根組2は、複数の絞り羽根21a〜21iで構成されている。図示の絞り羽根21は、9枚の絞り羽根で構成され、各絞り羽根21は同一形状に形成されている。
【0028】
図5(a)に示すように、各絞り羽根21は、羽根基板21wと、羽根基板21wの端面であって開口径を形成する部分の羽根端面21uとを有して構成されている。羽根基板21wは、一側(
図5(a)の左側)に上述した第1摺動リング15を介して地板11に支持される基端部21xと、他側(
図5(a)の右側)に光路開口12を開閉する先端部21yとを有している。なお、複数の絞り羽根21の先端部21xは互いに鱗状に重なり合って円形状の光路開口12を形成する形状になっている。
【0029】
「羽根端面の形状」
本発明の特色は羽根端面21uの形状にある。
図5(b)は
図5(a)のb−b線断面における羽根端面21uを模式的に示したものである。羽根端面21uの断面形状について一言すれば、光軸O(光路開口12の中心)に対して平行な面がない(若しくは平行な面の面積が極めて小さい)点にあるが、詳しくは、次のとおりである。
【0030】
すなわち、
図5(b)に示すように、羽根端面21uは、絞り羽根21の上面側から下面側に向けて、(1)光軸Oに対して湾曲して傾斜した第1傾斜部21pと、第1傾斜部21pの先端を形成する第1先端部21qと、光軸Oに対して第1傾斜部21qと重複(重畳)するように第1傾斜部21qと略同一方向に湾曲して傾斜した第2傾斜部21rと、第2傾斜部21rの先端を形成する第2先端部21sを有しており、(2)第1先端部21qは第2先端部21sよりも光軸O側に突出した断面構造を有している。なお、第1先端部21qと第2傾斜部21rとの間には湾曲した傾斜面が形成されている。絞り羽根21は、羽根端面21uがこのような断面構造を有するため、羽根端面21uに光軸Oに対して平行な面がない(若しくは平行な面の面積が極めて小さい)ので、羽根端面21uでのフレヤやゴースト等の発生を防止することができる。
【0031】
図6(a)は実施形態の絞り羽根21の羽根端面21uの表面のレーザ顕微鏡写真であり、
図6(b)は
図6(a)の羽根端面21u表面の高さ情報を元に画像処理を施した3次元画像の写真である。なお、
図6(a)の上三角と下三角とを結ぶ線は、
図5(a)のb−b線断面をVI側から見たときに対応している。
【0032】
「その他の絞り羽根の構造」
各絞り羽根21には、
図10(a)に示すように第1の突起(ガイドピン)22と第2の突起(作動ピン)23が表裏に植設されている。ガイドピン22は各絞り羽根21に地板11側に面する位置に配置され、作動ピン23はその反対面(後述する第2基板側)に配置されている。ガイドピン22は後述するように地板11のガイド溝13と、第1摺動リング15のガイド溝16に嵌合し、作動ピン23は後述する作動部材31の嵌合孔33に嵌合する。なお、図示24は絞り羽根21に第1の突起22および第2の突起23を植設(例えば溶融接着)する際の位置決め孔であり、羽根外形状と第1の突起22および第2の突起23の植設位置を設定する。
【0033】
「絞り羽根の製造方法」
次に、上述した羽根端面21uを有する絞り羽根21の製造方法について説明する。本実施形態に用いられる絞り羽根21は、(1)準備ステップ、(2)セットステップ、(3)加工ステップ、(4)端面形成ステップおよび(5)ピン植設ステップを経て製造される。以下、順に説明する。
【0034】
(1)準備ステップ
準備ステップでは、絞り羽根21の材料となる羽根部材を準備する。本実施形態では、羽根部材は、表面処理(サンドブラスト処理および導電、摺動処理)が施された所定厚(例えば、厚さ60μm)の樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートにカーボンブラックを添加した黒色PETの樹脂フィルム、本例ではソマール株式会社製のソマブラックシリーズのMDVDを使用、http://www.somar.co.jp/products/03_14.html参照)を抜き型で抜くことで製造される。このとき、上述した位置決め孔24も形成される。従って、準備される羽根部材は第1の突起22と第2の突起23が植設されておらず、上述した羽根端面21uが形成されていないものである。羽根部材に表面処理が施されているのは、絞り羽根21の摺動性、遮光性を向上させるためである。なお、本例では厚さ60μmの羽根部材を例示したが、本発明はこれに制限されることなく、厚さ80μm以下の羽根部材(絞り羽根21)に適用可能である。
【0035】
(2)セットステップ
次に、セットステップでは、端面形成装置のセット面に、準備ステップで準備した羽根部材をセットする。
【0036】
ここで、端面形成装置の一例について説明する。
図7(a)に示すように、端面形成装置300は、図示を省略した基台上に、上面に略水平なセット面351を有するダイプレート350と、ダイプレート350の上部一側(
図7(a)の左側)に配置され羽根部材Bの羽根端面以外の端面(
図5(a)も参照)を押さえるガイド360とを有している。ガイド360の上方には平板状のストリッパープレート340が配置されている。ストリッパープレート340の下面側(ガイド360に面する側)の中央部には、ガイド360の上部側と嵌合する嵌合溝が形成されている。ストリッパープレート340の上面側には第1のスプリング330の一側が固着されており、第1のスプリングの他側は平板状の加圧プレート310の下面側に固着されている。
【0037】
また、端面形成装置300は、ダイプレート350の他側(
図7(a)の右側)に配置され図示を省略した基台に一側が固着された第2のスプリング380を有している。第2のスプリング380の上には第2のスプリング380の他側が固着された平板状のプレートを介して潰しパンチ320からの圧力を受けるためのスライドノックアウト370が配置されている。スライドノックアウト370の上方には加圧プレート310の下面側に固定された潰しパンチ320が配置されている。潰しパンチ320は、セット面351に対して垂直な垂直面322と、垂直面322に対して所定角度(δ度)傾斜した傾斜面321を有している。本例の端面形成装置300では、垂直面322に対する傾斜面321の傾斜角δが65度に設定されている。なお、本発明者は、傾斜角δをさまざまな角度に設定し
図6に示したような断面形状を評価することで、光軸と平行な面をなくすためには、傾斜角δが62度〜68度の範囲内にあることが好ましいことを見出した。また、スライドノックアウト370もセット面351に対して垂直な垂直面371を有しており、潰しパンチ320から圧力を受ける際に、スライドノックアウト370の垂直面371と潰しパンチ320の垂直面322とが連続する垂直面となるように構成されている(
図7(b)参照)。
【0038】
例示した端面形成装置300は、加圧プレート310、第1のスプリング330、ストリッパープレート340および潰しパンチ320で構成される加圧ユニット部と、セット面351を有するダイプレート350、ガイド360、第2のスプリング380およびスライドノックアウト370で構成される受圧ユニット部とで構成されており、羽根部材Bをセット面351にセットし易くするとともに、セット面351から羽根部材Bを取り出し易くするために、加圧ユニット部は、加圧ユニット部が受圧ユニット部に対して近接した第1の位置(
図7(a)に示す位置)と、加圧ユニット部が受圧ユニット部に対して離間した第2の位置との間で移動可能に構成されている。
【0039】
このような端面形成装置300を用いる場合、セットステップでは、加圧ユニット部を第2の位置に移動させ、羽根部材Bの羽根端面以外の端面をガイド360に当接させてセット面351に羽根部材Bをセットし、加圧ユニット部を第1の位置に移動させる(
図7(a)に示す状態)。
【0040】
(3)加工ステップ
次いで、加工ステップでは、セット面351に対して垂直な垂直面322と該垂直面に対して傾斜した傾斜面321を有する潰しパンチ320よって羽根部材Bの羽根端面を潰すとともに、羽根端面がセット面351と垂直面322と傾斜面321によって密閉されるように潰し加工を行う。
【0041】
すなわち、
図7(b)に示すように、室温において(加熱せず)、加圧プレート310に所定パンチ圧(本例では0.6トン)を加圧する。本例では、パンチ速度は5mm/秒に設定されており、パンチ後直ちにパンチ圧を解除している。パンチ圧が加圧されると、先にストリッパープレート340の嵌合溝がガイド360の上部側に嵌合し羽根部材Bを押さえ、その後潰しパンチ320が羽根部材Bの羽根端面を押し潰す。潰しパンチ320の傾斜面321にのみパンチ圧が加わるため、羽根部材Bの羽根端面に沿って0.6トンの線圧が掛かる。また、潰しパンチ320にパンチ圧が加圧されたとき、羽根端面はセット面351、垂直面322、傾斜面321によって密閉されるように押し潰される。なお、
図7(b)は、羽根部材Bの羽根端面がセット面351および傾斜面321で密閉された状態を示している。このとき、第1先端部21qと第2先端部21sが重なるように押し潰されている。
【0042】
(4)端面形成ステップ
次の端面形成ステップは、(4−1)端面復帰サブステップと、(4−2)先端持ち上げサブステップとの2つのサブステップを含む。上述したように、潰しパンチ320によるパンチ後、パンチ圧は直ちに解除される。パンチ圧が解除されると、
図7(c)に示すように、スライドノックアウト370および潰しパンチ320は
図7(a)に示したパンチ圧加圧前の位置に戻る(パンチ圧の加圧方向と逆方向に移動する。)。その際、羽根部材Bの材質の特性により潰された面及び先端Dが加圧方向から戻る方向に盛り上がり、第1先端部21qと第2先端部21sが形成される(端面復帰サブステップ)。そしてそれと同時に、潰しパンチ320の垂直面322側の羽根部材Bの先端D(第1先端部21q及び第2先端部21s)は、潰しパンチ320の垂直面322およびこの垂直面322と連続したスライドノックアウト370の垂直面371と摺接し(本例では、主としてスライドノックアウト370の垂直面371と摺接し)
図7(c)及び
図8に示すように上方に持ち上げられる(先端持ち上げサブステップ)。この羽根部材Bの材質の特性による端面の復帰と潰しパンチ320及びスライドノックアウト370の垂直面322、371による持ち上げによって、羽根部材Bの羽根端面21uには上述した第1先端部21q及び第2先端部21sが形成される。なお、垂直面322、371で羽根部材Bの先端Dを持ち上げるときは、ストリッパープレート340が羽根部材Bを押さえているため、
図7(c)及び
図8に示すように羽根端面21uのみが反るように持ち上げられ、垂直面322、371に対して傾斜して第1先端部21qと第2先端部21sが接触する。本例の端面形成装置300では、先に潰しパンチ320の先端がスライドノックアウト370から離れ(
図7(c)の状態)、その後ストリッパープレート340が羽根部材Bから離れる。その後端面形成装置300を第2の位置に移動させて、羽根部材Bを端面形成装置300から取り出すと反った羽根端面21uが戻り、
図5(b)に示すように第1先端部21qが第2先端部21sよりも光軸O側に突出した形状になる。
【0043】
以上の工程によって、
図5(b)に示すような、羽根端面21uに、光軸Oに対して傾斜した第1傾斜部21pと、第1傾斜部21pの先端を形成する第1先端部21qと、光軸Oに対して第1傾斜部21pと重複するように第1傾斜部21pと略同一方向に傾斜した第2傾斜部21rと、第2傾斜部21rの先端を形成する第2先端部21sとを有し、第1先端部21qが第2先端部21sよりも光軸O側に突出した安定した形状が形成される。なお、本例では、スライドノックアウト370の垂直面371は潰しパンチ320の垂直面322より長く設定されているため、主として垂直面371により羽根端面21uを持ち上げる例を示したが、本発明はこれに限ることなく、垂直面322を長くして垂直面322で持ち上げてもよく、または、潰しパンチ320の垂直面322およびスライドノックアウト370の垂直面371のいずれか一方で持ち上げるようにしてもよい。
【0044】
(5)ピン植設ステップ
そして上述したように、羽根部材Bに、第1の突起22と第2の突起23を表裏に植設することで、絞り羽根21の製造が完了する(
図10(a)参照)。なお、ピン植設ステップはセットステップの前に行ってもよく、その場合は端面形成装置300のセット面351とストリッパープレート340に第1の突起22と第2の突起23を逃げるための凹部を設ければよい。
【0045】
[ガイド溝とカイドピンの関係]
次に、上述の地板11に形成されたガイド溝13と第1摺動リング15に形成されたガイド溝16と各絞り羽根21に形成されたガイドピン22の関係について説明する。
【0046】
地板11のガイド溝13は
図10(b)(c)に示すように凹陥溝で構成され地板外部(同図矢印方向)の光が透過されない盲穴形状に形成されている。また地板11をモールド成形で形成する関係から抜きテーパθが形成され、その平均内径はdcに設定されている。
【0047】
また第1摺動リング15のガイド溝16は、内径dbの貫通孔で形成されている。この貫通孔は樹脂フィルムの型抜き成形で均一径に形成されている。
【0048】
一方、各絞り羽根21a〜21iにはガイドピン22が植設され、その外径はdaに設定されている。そこで、このピン外径daとガイド溝内径dbとの関係は、da≦db<dcの関係に設定されている。つまり第1摺動リング15のガイド溝16は地板11のガイド溝13より狭小幅(db<dc)でガイドピン外径daと適合する寸法(da≦db)に設定されている。
【0049】
従って同図に示すように各絞り羽根21に植設されたガイドピン22は第1摺動リング15のガイド溝16と係合して運動規制され、地板11のガイド溝13とは接触しないこととなる。このためガイドピン22はテーパθを有する地板11のガイド溝13と不安定に係合することがない。これによって絞り羽根21が傾くことも、浮き上がることもない。
【0050】
[第2基板組の構成]
図3に従って第2基板組4と駆動リング組3について説明する。第2基板組4は押さえ板41と、補強板42と、押さえ板に固定した駆動ユニットMで構成されている。また駆動リング組3は、作動部材31と第2摺動リング36で構成される。以下各構成について説明する。
【0051】
「押さえ板」
押さえ板41は
図3に示すように中央部に開口43を有するリング形状に形成され、前述の地板11と略々同一形状に形成されている。図示の押さえ板41は樹脂のモールド成形で、外周の一部に駆動ユニットMの取付座46が設けられている。この取付座46に後述する駆動ユニットMがビスなどで固定される。図示45は押さえ板41を地板11の連結突起14にビス止めする連結孔である。
【0052】
「補強板」
補強板42は、
図3に示すように金属などの比較的強靭な板材で構成され、樹脂製の押さえ板41を補強する。従って押さえ板41に十分な強度が得られるときには補強板42を省くことが可能である。この補強板42は押さえ板41と略々同一形状に形成され、中央に開口44が形成されている。
【0053】
上記押さえ板41の開口43と補強板42の開口44は、いずれも光路開口12の開口径Dより大きく設定してあり、開口43の開口径D1と開口44の開口径D2と光路開口12の開口径Dとは、D2≧D1>Dに設定されている。
【0054】
駆動リング組3は駆動モータ(後述の駆動ユニット)Mの駆動を絞り羽根21に伝達する作動部材31と、第2摺動リング36で構成されている。
【0055】
「作動部材」
作動部材31は
図3に示すように例えば樹脂のモールド成形で中央部に光路開口12を有するリング形状(以下「駆動リング」という)に形成されている。この駆動リング31は、補強板42を介して押さえ板41に回動自在に取り付けられている。このため駆動リング31には光路開口12の周縁にフランジ32と係合突起34が形成されている。フランジ32は押さえ板41の開口43と補強板42の開口44に嵌合し、光路開口12の中心と一致する回動中心で回動する。また係合突起34は補強板42と摺接する面に形成され両者を円滑に摺動するのを補助している。
【0056】
駆動リング31は上述のように押さえ板41に回動自在に組み込まれ、その周縁の一部には受動歯35が形成してある。この受動歯35は押さえ板41の取付座46に取付けられた後述する駆動ユニットMの駆動歯車53と噛合する位置に設けられている。
【0057】
上記駆動リング31には、各絞り羽根21に植設された作動ピン23と嵌合する嵌合孔33が光路開口12の周縁に設けられている。この嵌合孔33は絞り羽根21の枚数に応じて光路開口12の周縁に複数(図示のものは9個所)配置されている。
【0058】
このような構成において駆動リング31は、押さえ基板41に回動自在に支持され、駆動ユニットMの駆動歯車53によって所定角度回転することとなる。そして駆動リング31の回転は各絞り羽根21a〜21iに伝達されることとなる。
【0059】
「第2摺動リング」
第2摺動リング36は
図3に示すように中央に光路開口12を有する樹脂フィルム(例えばポリエチレンなどの樹脂フィルム)で形成され、駆動リング31と絞り羽根21の間に介在される。これは絞り羽根21と駆動リング31が直接接触するのを避け、絞り羽根21の円滑な開閉運動を得るためである。このため第2摺動リング36は駆動リング31と同様なリング形状に形成されている。この第2摺動リング36には駆動リング31の嵌合孔33と合致する位置に嵌合孔37が設けられている。
【0060】
[駆動ユニットM]
図11に駆動ユニットMの一実施形態を示す。同図の駆動ユニットMはマグネットロータ50と、ステータコイル51と駆動回転軸52と、駆動歯車53と、ヨーク54で構成されている。マグネットロータ50は駆動回転軸52と永久磁石56を一体化して構成され、駆動回転軸52の両端部はコイル枠55に軸受け支持されている。永久磁石56は外周にNS2極が形成され、駆動回転軸52には駆動歯車53が取り付けられている。また、ステータコイル51はコイル枠55と、これに巻回されたコイル58で構成されている。このコイル枠55は内部にロータを内蔵するため、左右若しくは上下に2分割されている。このコイル枠55にはブラケット57が一体形成され、外周にヨーク54が嵌装されている。
【0061】
このような構成で、コイル58に通電するとマグネットロータ50は時計方向若しくは反時計方向に所定角度正逆転し、駆動歯車53を正逆転する。このように構成された駆動ユニットMは押さえ板41の取付座46にブラケット57をネジなどで固定する。そして駆動歯車53を駆動リング31の受動歯35に噛合する。これによって駆動リング31は、
図3時計方向と反時計方向に所定角度往復動し、絞り羽根21を開閉動する。
【0062】
[組立て状態の説明]
図1に従って光量調整装置100の組立手順を説明する。上述のように構成された地板11に第1摺動リング15を重ね合わせる。このとき地板11に設けた位置決めピン17が第一摺動リング15の位置決め孔18に嵌合して両者の位置決めがなされる。
【0063】
地板11と第1摺動リング15を重ね合わせて、摺動リング15上に第1〜第9絞り羽根21a〜21iを
図2に示すように重ね合わせる。このとき各絞り羽根21のガイドピン22をガイド溝13とガイド溝16に嵌合させる。
【0064】
次いで、
図3に示すように各絞り羽根21の上に第2摺動リング36を重ね合わせ、各絞り羽根21a〜21iの作動ピン23をリング側の嵌合孔37に嵌合する。そこで押さえ板41に補強板42を重ね合わせて第2摺動リング36上に重ね合わせる。このとき押さえ板41にマウントした駆動ユニットMの駆動歯車53を摺動リング31の受動歯35と噛合させる。
【0065】
そこで地板11と押さえ板41を固定ビスで固定する。これによって地板11、第1摺動リング15、絞り羽根21、第2摺動リング36、駆動リング31、補強板42、押さえ板41が順次上方に重ね合わせられ、一体化される。
【0066】
[羽根の開閉動作]
次に、
図9に従って絞り羽根の開閉動作について説明する。同図(a)は光路開口12の周囲に複数の絞り羽根を配置した状態を示し、(b)はこの複数の絞り羽根のうちの1枚の開閉動作状態を示す。同図(a)のように光路開口12の周囲には、光軸(光路中心)Oを基準に所定角度隔てた位置(図示のものは9枚の羽根を角度40度ずつ隔てた位置)に複数の絞り羽根21a〜21iが鱗状に配置されている。各絞り羽根21a〜21iは地板11に形成したガイド溝13に第1の突起(ガイドピン)22が嵌合されている。これと共に各絞り羽根21a〜21iに形成された第2の突起(作動ピン)23は、駆動リング31の嵌合孔33に嵌合されている。
【0067】
そして駆動リング31は光軸Oを中心に前述の駆動ユニットMによって所定角度範囲で時計方向と反時計方向に回転する。このときの羽根の開閉動作を同図(b)に従って説明する。作動ピン23は駆動リング31の回転で光軸Oから半径Lの円弧軌跡x−xで図示c点からd点に同図時計方向に回動移動する。またガイドピン22はガイド溝16に沿って図示y−y軌跡でa点からb点に移動する。
【0068】
この作動ピン23とガイドピン22の移動で絞り羽根21は同図実線(オープン状態)から同図破線(クローズ状態)に開閉動する。なお図示の装置はクローズ状態のとき光路開口12は小口径の小絞り状態に設定され、オープン状態のときには全開状態に設定されている。従って駆動ユニットMに供給する電流に応じて絞り羽根21は、小絞り状態から全開状態に任意の開口径で開閉し、光路を通過する光量を大小調整することとなる。つまり、光量調整装置100は、光軸を中心とする開口径を変えて光量を調整することとなる。このような光量調整装置100において、各絞り羽根21の羽根端面21uには、光軸Oに対して平行な面がないので、光量調整装置100は羽根端面21uでのフレヤやゴースト等の発生を防止することができる。
【0069】
[光学機器]
次に上述の光量調整装置100を用いた光学機器について、望遠レンズを例にとって説明する。
図12に示すように、この光学機器200は、鏡筒内に第1の光学系(レンズユニット)120と、第2の光学系(レンズユニット)140とを有しており、第1、第2の光学系の間に光軸Oを中心として光量調整装置100が配置されている。このとき、光量調整装置100の絞り羽根21は、外部の光が入射される側(レンズユニット120側)に第1傾斜部21pが配置されるように組み込まれることが望ましい。また、撮影光路には第2の光学系で被写体像を結像しその結像面に撮像手段が配置されていてもよい。撮像手段としてはCCDなどの固体撮像素子或いは感光フィルムなどを用いることができる。そしてその制御はCPU制御回路、露出制御回路、及びシャッタ駆動回路で実行することができる。このような光学機器は、メイン電源スイッチやシャッタレリーズスイッチを備えていてもよい。カメラ装置としての制御には、この他オートフォーカス回路などが用いられるが良く知られた構成であるので説明を省略する。
【0070】
光学機器200では、羽根端面21uに光軸Oに対して平行な面がない絞り羽根21を複数用いた光量調整装置100を備えているので、フレヤやゴースト等の発生を防止することができる。そして、光量調整装置100が適用可能な光学機器は、望遠レンズ、ビデオカメラ、スチールカメラ等に限られることなく、プロジェクタ等の投影装置にも適用可能である。
【0071】
なお、本実施形態の潰しパンチ320は傾斜面321が所定角度(δ度)傾斜した直線状である態様を示したが、
図14に示すように羽根部材Bの先端Dを潰す部分のみに所定角度(δ度)傾斜した直線状の傾斜面321を形成し、残りは段差面321aを形成するようにしてもよい。この態様の潰しパンチ320で潰し処理を行った羽根部材Bの羽根端面21uは
図15に示すような形状となる。
図15に示す羽根端面21uは
図5(b)に示す羽根端面21uと同様に第1傾斜部21p、第1先端部21q、第2傾斜部21r、第2先端部21sが形成されており、第1先端部21qは第2先端部21sよりも光軸O側にと出している。なお、第1傾斜部21pの羽根基板21w側は段差面321aによって段差状に押し潰され、羽根部材Bの材質の特性により加圧後に復帰して段差状に形成される。