【実施例】
【0018】
(実施例1)
上記コンクリート鉄筋用ステンレス異形線条材1の実施例を、
図1〜
図3を用いて説明する。異形線条材1は、直径4.0mmのステンレス鋼製線条材に冷間圧延を施して形成されており、
図1に示すごとく、断面略円形状の本体部2と、本体部2の表面20から突出する凸部3とを有している。凸部3は、
図1及び
図3に示すごとく、本体部2の軸10の方向に連続的に延びる2本のリブ部30と、2本のリブ部30を連結するとともに軸方向において間隔をあけて配置された多数の節部31とを有している。また、節部31は、
図3に示すごとく、軸方向に対して斜め方向に延びるように配置されている。そして、
図3に示すごとく、軸方向のいずれの位置においても、軸方向に直交する断面の外周部に上記リブ部30と上記節部31とが存在している。なお、以下において、凸部3に取り囲まれ、本体部2の表面20が露出している部分を「凹部21」という。
【0019】
凸部3は、軸方向と直交する方向の断面において、本体部2の表面20から径方向に0.1mm〜0.2mm突出して形成されている。
【0020】
2本のリブ部30は、異形線条材1の中心軸10を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。また、リブ部30と、リブ部30に隣接する凹部21との間の段差部分が曲面状に形成されている。つまり、軸方向と直交する方向の断面において、リブ部30及び凹部21の周方向における各々の端縁の角部が略円弧状を呈している。
【0021】
節部31は、
図3に示すごとく、異形線条材1の周方向における展開図上において軸方向から45度傾くよう斜めに配置されており、リブ部30に対して一方側の節部31と、他方側の節部31とが同一方向を向いている。また、
図3に示すごとく、リブ部30に対して一方側の節部31の周方向における端縁が、他方側の凹部21の周方向における端縁とリブ部30を挟んで対向するように配置されている。ここで、周方向における展開図は、例えば異形線条材1を粘土等の上で転がし、上記粘土に表面形状を転写すること等により得ることができる。
【0022】
また、節部31の軸方向における端縁の角部は、丸みを帯びた形状に形成されている。つまり、
図2に示すごとく、径方向から見た節部31の端縁の角部が略円弧状を呈している。
【0023】
また、本例において、リブ部30の太さは1.0mmであり、節部31の軸方向に沿った幅寸法は2.1mmであり、隣接する節部31の間の軸方向の間隔は1.4mmである。異形線条材1は、凸部3の寸法を上述のごとく設定することにより、軸方向のいずれの位置においても、軸方向に直交する断面における凸部3の存在する範囲が、異形線条材1の軸を中心として凸部3に外接する仮想外接円の周長の30%以上となるよう構成されている。例えば、
図2及び
図3に示す軸方向の位置Aにおいて、凸部3の存在する範囲は仮想外接円の周長の約72%である。また、位置Bにおいては、凸部3の存在する範囲は仮想外接円の周長の約58%である。そして、軸方向のその他の位置における凸部3の存在する範囲は、58%〜72%の範囲内に設定される。
【0024】
次に、異形線条材1の製造方法について説明する。まず、直径4.0mmのSUS304製丸鉄線を準備し、冷間圧延により凸部3を形成する模様付け加工を施す。模様付け加工は、例えば、溝内部に凹部21に対応する凸形状を形成した溝付きロールを用いて行うことができる。この模様付け加工により得られた異形線条材1は、巻き取りコイルに巻き取られて一端保管される。その後、異形線条材1は必要量に応じて巻き取りコイルから引き出され、スピンナー矯正機等の矯正加工機に導入される。そして、矯正加工機により保管時等に生じた曲がりを矯正された後、所要の長さに切断される。
【0025】
次に、本例の作用効果を説明する。コンクリート鉄筋用ステンレス異形線条材1は、本体部2の軸方向に連続的に延びる2本のリブ部30と、2本のリブ部30を連結するとともに軸方向において間隔をあけて配置された多数の節部31とを有している。そのため、コンクリート鉄筋用ステンレス異形線条材1は、コンクリートとの接触面積が比較的大きくなるとともに、コンクリート内部において回転や引き抜きをされにくくなる。その結果、コンクリート鉄筋用ステンレス異形線条材1は、コンクリートとの付着強度に優れたものとなる。
【0026】
また、軸方向のいずれの位置においても、軸方向に直交する断面の外周部にリブ部30と節部31とが存在している。そのため、矯正加工機を用いて異形線条材1の曲がりを矯正する際に、矯正コマがリブ部30または節部31と接触しやすくなり、これらの凸部3と本体部2との間の段差部分に矯正コマが引っかかる頻度を低減することができる。その結果、異形線条材1は、矯正加工の際に生じる表面の傷等を低減し、耐食性に優れたものとなる。
【0027】
また、軸方向のいずれの位置においても、軸方向に直交する断面における凸部3の存在する範囲が、異形線条材1の軸を中心として凸部3に外接する仮想外接円の周長の30%以上に相当するよう構成されている。これにより、凸部3と本体部2との間の段差部分に矯正コマが引っかかる頻度をより低減することができる。その結果、異形線条材1は、矯正加工の際に生じる表面の傷等を低減し、より耐食性に優れたものとなる。また、隣り合う凸部3の間の軸方向の間隔を詰めて配置することにより、異形線条材1とコンクリートとの付着強度を大きくしやすくなる。
【0028】
また、節部31の軸方向に沿った幅寸法は、隣接する節部31の間の軸方向の間隔よりも大きい。これにより、凸部3と本体部2との間の段差部分に矯正コマが引っかかる頻度をより低減することができる。その結果、異形線条材1は、矯正加工の際に生じる表面の傷等を低減し、より耐食性に優れたものとなる。
【0029】
また、上記節部31は、軸方向に対して30°〜80°傾くよう斜めに配置されている。そのため、軸方向のいずれの位置においても、軸方向に直交する断面の外周部にリブ部30と節部31とが形成されるように節部31を配置することが容易となる。また、矯正加工の際に、異形線条材1の送り方向(軸方向)に対して節部31が斜めに配置されるため、異形線条材1を矯正加工機に通過させる際の抵抗を低減しやすくなる。これらの結果、異形線条材1は、矯正加工の際に生じる表面の傷等を低減し、より耐食性に優れたものとなる。
また、リブ部30と、リブ部30に隣接する本体部2の表面20(凹部21)の間の段差部分が曲面状に形成されている。これにより、リブ部30と本体部2との間の段差部分に矯正コマが引っかかりにくくなる。その結果、異形線条材1は、矯正加工の際に生じる表面の傷等を低減し、より耐食性に優れたものとなる。
【0030】
以上のごとく、上記態様によれば、耐食性に優れたコンクリート鉄筋用ステンレス異形線条材を提供することができる。
【0031】
(実施例2)
本例は、実施例1における異形線条材1の節部31の配置を変更した例である。本例の異形線条材1は、
図4及び
図5に示すごとく、節部31がらせん状になるように配置されている。つまり、
図5に示す展開図上において、リブ部30に対して一方側に配された節部31と他方側に配された節部31とが、軸方向に対して45°に傾いた直線L上に並ぶように配置されている。
【0032】
また、本例の異形線条材1における軸方向に直交する断面における凸部3の存在する範囲は、仮想外接円の周長の58%〜74%の範囲内に設定される。例えば、
図4及び
図5に示す軸方向の位置Cにおいて、凸部3の存在する範囲は仮想外接円の周長の約58%であり、位置Dにおいては、凸部3の存在する範囲は仮想外接円の周長の約74%である。なお、その他は実施例1と同様である。
【0033】
このように、リブ部30を挟んで互いに向かい合う節部31同士がどのような位置関係であってもよく、軸方向に直交する断面の外周部にリブ部30と節部31とが存在していれば実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0034】
(実施例3)
本例は、実施例1における異形線条材1の、軸方向に対する節部31の角度を変更した例である。本例の異形線条材1の節部31は、
図6及び
図7に示すごとく、周方向における展開図上において軸方向から40度傾くよう斜めに配置されている。
【0035】
また、本例の異形線条材1における軸方向に直交する断面における凸部3の存在する範囲は、仮想外接円の周長の65%〜68%の範囲内に設定される。例えば、
図6及び
図7に示す軸方向の位置Eにおいて、凸部3の存在する範囲は仮想外接円の周長の約65%である。また、位置Fにおいては、凸部3の存在する範囲は仮想外接円の周長の約68%である。なお、その他は実施例1と同様である。
【0036】
このように、節部31の寸法、つまり節部31の軸方向に沿った幅寸法や隣り合う節部31の間隔、あるいは軸方向に対する傾きの角度も限定されることはなく、軸方向に直交する断面の外周部にリブ部30と節部31とが配置されるように適宜調整することができる。