(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンやイソプレンのような共役ジエン単量体の重合体、または、共役ジエン単量体と、当該共役ジエン単量体と共重合可能なスチレンのようなビニル芳香族単量体と、の共重合体はエラストマーとして広く使用されている。
【0003】
このような共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とのブロック共重合体は加硫しない熱可塑性エラストマーであり、耐衝撃性透明樹脂またはポリオレフィンおよびポリスチレン樹脂の改質剤として使用される。しかし、オレフィン性不飽和二重結合を含有する重合体は二重結合の反応性のために耐熱性、耐酸化性および耐候性などの安定性の問題を引き起こす恐れがある。そのため、太陽光や高温に露出されない、制限された範囲内で使用されている。従って、重合体の耐久性と耐酸化性とを改善するために、重合体内の二重結合に水素を添加して部分的または完全に飽和させて使用している。
【0004】
一般的にオレフィン性二重結合を有する重合体を水素化させる方法については様々な方法が報告されており、大きく下記のような2種類の方法に分けられる。第一の方法は、白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属触媒をカーボンやシリカ、アルミナ等に担持した金属担持触媒のような不均一系触媒を使用する方法である。また、第二の方法は、ニッケル、コバルト類を使用したチーグラー触媒またはロジウムやチタンのような有機金属化合物の均一系触媒を使用する方法である。
【0005】
不均一触媒を使用する水素化反応は高温、高圧条件で水素化反応が行われ、反応後にはフィルターを利用して高価な触媒を回収して再使用しなければならないという短所がある。また、反応設備を備えるのに設備費用が高価であるという短所がある。一方、均一系触媒を使用する場合、触媒活性が高いので低温、低圧というマイルドな条件でも、少量で高収率の水素化反応を期待することができるという長所がある。また、設備費用が少ないという長所を持っている。しかし、その反面、反応後に均一系触媒を生成物から分離することが困難であるという短所がある。
【0006】
均一系触媒を利用した水素化反応は既に多くの方法が知られており、例えば、周期表第VIII族金属、特に、ニッケルまたはコバルトの化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用した水素化の方法が知られている。
【0007】
均一系触媒を利用した水素化反応は一般的に少量でも高水素化率と高再現性を見せるが、水素化反応後に重合体溶液中に残存する触媒残渣の除去が難しい。重合体溶液中に残った金属成分は空気や紫外線などにより反応して重合体の分解や、最終重合体の色相の悪化を引き起こし、商品価値を低下させる要因となるため、除去することが望ましい。一般的に均一系触媒は反応後に濾過による物理的な分離が難しく、化学反応による分離を行わなければならない。
【0008】
そこで、重合体溶液中に残存する均一系触媒の金属残渣を除去する方法として、いくつかの提案がなされている。例えば、ニッケルをはじめとする周期表第VIII族金属触媒の除去に関しては、特許文献1では、残渣を除去するため酸化剤とジカルボン酸とで処理する方法が開示されている。また、特許文献2では、酸化された金属をケイ酸塩に吸着して触媒を除去する方法が開示されている。さらに、特許文献3では、酸素と反応したニッケル触媒を活性炭に吸着させて除去する方法が開示されている。またさらに、特許文献4では、リン酸アルミニウムを用いてニッケル触媒を除去する方法が開示されている。
【0009】
これら特許文献1〜4に代表されるように、重合体溶液中に含まれる周期表第VIII族の金属元素の除去方法としては、殆どの場合、何らかの添加剤(酸化剤、有機酸、無機酸、吸着剤など)を添加する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0017】
〔重合体溶液の精製方法〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法は、周期表第VIII族の金属元素を含有する重合体溶液を撹拌強度(P/V値)100〜1,000,000(kW/m
3)で撹拌する工程1と、
前記撹拌後の重合体溶液から固体状の金属残渣を除去する工程2と、を含む。
【0018】
〔工程1〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程1は、周期表第VIII族の金属元素を含有する重合体溶液を撹拌強度(P/V値)100〜1,000,000(kW/m
3)で撹拌する工程である。
【0019】
(撹拌方法)
本実施形態においては、工程1において、重合体溶液に含まれる重合体と金属残渣との相互作用を分断できるだけのエネルギーを与えて、工程2での金属残渣除去を容易にするために、P/V値100〜1,000,000(kW/m
3)で撹拌を行う必要がある。ここでP(kW)とは撹拌に要する動力であり、混合時の消費電力を測定することで容易に求めることができる。また、V(m
3)は混合部の空間容積であり、溶液にせん断力を与える部分の空間容積である。
【0020】
通常、重合体溶液中に含まれる金属残渣を、酸化合物等の作用によって、水相やアルコール相中へ溶解させて抽出除去する場合には、こうした高い撹拌強度で混合を行うことによって、金属残渣と酸化合物や抽出相との接触効率が上昇し、金属除去率が向上する。それに対して、金属残渣を固体状態で除去する場合には、強力な撹拌を行うことによって、金属残渣が微細化されて重合体溶液中に分散してしまい、下流工程で金属残渣を除去し難くなることが容易に推測される。しかし、本実施形態では、特定の撹拌強度で重合体溶液を撹拌することで、工程2において固体状の金属残渣の除去が促進される。そのような特定の撹拌強度P/V値は、100〜1,000,000(kW/m
3)であり、1,000〜500,000(kW/m
3)が好ましく、5,000〜300,000(kW/m
3)がより好ましい。P/V値が上記範囲よりも小さいと、重合体溶液と金属残渣との相互作用が依然大きく、工程2で金属残渣が十分に除去できない。一方、P/V値が上記範囲よりも大きいと、強力な撹拌によって、金属残渣が微細化され、さらに重合体溶液中に微分散してしまうため、工程2で金属残渣が十分に除去できない。
【0021】
撹拌強度が上記範囲内であれば、撹拌方法は特に限定されないが、例えば、撹拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、あるいはポンプ等でせん断力を加える方法や、ボールミルあるいはロッドミル等のミル、あるいは高圧粉砕ロール等で衝突力、摩擦力を加える方法が挙げられる。
【0022】
中でも、特開平6−136034号公報に記載されているような、噛み合わせ構造を有する回転分散機を用いることで、P/V値1,000〜1,000,000(kW/m
3)の範囲における撹拌が可能となる。特に、回転分散機を用いて、撹拌強度3×10
4(kW/m
3)以上の撹拌を行うことが好ましく、10×10
4(kW/m
3)以上の撹拌を行うことがより好ましく、50×10
4(kW/m
3)以上の撹拌を行うことがさらに好ましい。このような撹拌強度の大きな撹拌方法を選択することで、短時間でも十分な金属除去効果が得られ、生産性の面から好ましい。
【0023】
その他、撹拌翼付きのタンクを用いてP/V値100〜10,000(kW/m
3)の範囲で撹拌することも可能である。このような撹拌翼付きのタンクとしては、通常用いられるものであれば特に制限されない。
【0024】
(周期表第VIII族の金属元素を含有する重合体溶液)
本実施形態において精製される重合体溶液は、周期表第VIII族の金属元素を含有する。なお、周期表第VIII族の金属元素とはIUPAC形式の長周期表の第8族〜第10族元素に該当するものである。
【0025】
本実施形態は、重合体溶液に含まれる周期表第VIII族の金属元素の除去に非常に有効である。精製される重合体溶液としては、周期表第VIII族の金属元素を金属残渣として含有する重合体溶液であれば特に制限されない。また、重合体溶液中の重合体の種類も、特に制限されず、水素添加前の重合体であっても、水素添加後の重合体であってもよい。この中でも、本実施形態は、ビニル芳香族単量体単位と、共役ジエン単量体単位とを構成単位として有する共重合体を、水素添加した重合体の溶液からニッケル残渣を除去する方法として適している。ニッケル残渣を含有する上記水素添加後の重合体は、例えば、上記特許文献1〜4に記載されている方法で製造することができる。
【0026】
重合体溶液に含まれる重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、具体的には、500〜1,000,000が好ましく、1,000〜850,000がより好ましく、5,000〜700,000がさらに好ましい。また、重合体溶液の濃度は特に限定されないが、5〜50質量%であることが好ましく、7〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。重合体の数平均分子量や重合体溶液の濃度が上記範囲であると、生産性が向上し、また、粘度の上昇が抑制されるため金属除去効率が向上する。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めることができる。
【0027】
(撹拌助剤)
以上説明したように、本実施形態の工程1においては、重合体溶液にP/V値100〜1,000,000(kW/m
3)の撹拌強度を付与するだけで、撹拌助剤を用いなくても、十分な金属残渣の除去を促進する効果がある。しかしながら、必要に応じて撹拌助剤を添加してもよい。撹拌助剤としては、特に限定されないが、P/V値100〜1,000,000(kW/m
3)で重合体溶液の撹拌を行う際に共存させることで、工程2における固体状の金属残渣の除去を更に促進するものであることが好ましい。このような撹拌助剤としては、例えば、有機酸若しくは無機酸のような酸性化合物、配位性化合物、凝集剤、又は吸着剤などが挙げられる。
【0028】
酸性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸などの無機酸;カルボン酸化合物誘導体、スルホン酸化合物誘導体、ヒドロキシ化合物誘導体、チオール化合物誘導体、エノール化合物誘導体、などの有機酸が挙げられ、これらを水溶液の状態で添加してもよい。
【0029】
配位性化合物としては、特に限定されないが、周期表第VIII族の金属元素に配位できるものが好ましく、具体的には、ピリジン、トリフェニルホスフィン、エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリン、BINAP、カテコラート、ターピリジン、エチレンジアミン四酢酸、ポルフィリン、サイクラム、クラウンエーテル類などが挙げられる。
【0030】
凝集剤としては、特に限定されないが、具体的には、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド、ポリ硫酸鉄、ポリシリカ鉄、塩化マグネシウム、ゼオライト等の無機凝集剤;ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリアミン系などの有機高分子からなり、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のイオン性を有する高分子凝集剤などが挙げられる。
【0031】
吸着剤としては、特に限定されないが、具体的には、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、ゼオライト、高分子系の合成吸着剤などが挙げられる。
【0032】
本実施形態で使用できる撹拌助剤は上記したものに限定されるものではなく、添加することによって重合体と金属残渣との相互作用を分断したり、撹拌助剤と金属残渣がより強固に相互作用することによって、重合体溶液から金属残渣が除去されやすくなるという効果を有するものが好ましい。本実施形態においては、これらの撹拌助剤を単独、もしくは数種類を併用して添加することもできる。
【0033】
上記撹拌助剤の添加量は、重合体溶液中の金属残渣の量、重合体溶液の粘度、撹拌時の温度など様々なファクターによって変わってくる。そのため、重合体溶液の状態、実施環境に応じて調整することが好ましい。例えば、撹拌助剤として酸性化合物を用いる場合は、金属残渣成分の溶解などが起こらない範囲の添加量であることが好ましい。
【0034】
また、上記撹拌助剤は、必要に応じて使用し、その添加量は必要最小限の添加に留めることが好ましい。これにより、撹拌助剤が重合体溶液中に残存することによる品質の低下を防ぐことができる。本実施形態の工程1では、重合体溶液にP/V値100〜1,000,000(kW/m
3)の撹拌強度を付与するだけで、十分な金属残渣の除去を促進する効果が得られる。そのため、撹拌助剤の必要最小限の使用量については目的とする金属残渣の除去の程度に併せて適宜決定することが好ましい。
【0035】
(非相溶性液体)
本実施形態の工程1においては、必要に応じて重合体溶液とは非相溶な液体を更に添加した状態で上記撹拌を実施してもよい。
【0036】
上記非相溶性液体の種類は、特に限定されないが、重合体溶液がヘキサンやシクロヘキサン等の一般的な炭化水素溶剤系である場合には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類などが挙げられる。これらは単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。
【0037】
上記水やアルコールのような非相溶な液体相の共存下で重合体溶液をP/V値100〜1,000,000(kW/m
3)の撹拌強度で撹拌することにより、重合体溶液中の金属残渣を非相溶性液体相に効率的に分散させることができ、金属残渣の除去効果を高めることができる。通常、重合体溶液相は粘度が高いために、重合体溶液から金属残渣を取り除くことが困難である。しかし、上記のように非相溶性液体相を共存させておくことにより、激しい撹拌によって重合体溶液から排出された金属残渣を、非相溶性液体相に溜めておくことができる。また、一度非相溶性液体相側に移行した金属残渣は、撹拌を継続していても、簡単には重合体溶液相に再移行しない。そのため、金属残渣の除去効果がより高められる。
【0038】
上記非相溶性液体の添加量は特に限定されないが、添加量が多いほど、金属除去効果が高められる。一方、添加量が少ないほど最終的な排液の量が少なく、プロセスとして好ましい。本実施形態においては、重合体溶液をP/V値100〜1,000,000(kW/m
3)の撹拌強度で撹拌するだけで、十分な金属残渣の除去を促進する効果が得られる。そのため、添加量は目的とする金属残渣の除去の程度、及びプロセスコストに応じて適宜決定することが好ましい。
【0039】
〔工程2〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程2は、工程1で撹拌した重合体溶液から固体状の金属残渣を除去する工程である。
【0040】
(固体状の金属残渣)
本実施形態においては、工程1で重合体溶液をP/V値100〜1,000,000(kW/m
3)の撹拌強度で撹拌することにより、撹拌後の重合体溶液から金属残渣が分離されやすい状態となる。
【0041】
(除去方法)
重合体溶液から固体状の金属残渣を除去する方法は特に限定されず、当分野において一般的に用いられる物理的な分離方法によって容易に分離することができる。例えば、遠心分離、濾過、沈降などの方法が挙げられる。この中でも、金属残渣の除去効率や、生産性の点から、固体状の金属残渣の除去を、遠心分離により行うことが好ましい。用いることのできる遠心分離機は、特に制限されないが、アルファラバル社などによって提供されるディスク型の遠心分離機が金属除去効率の点から好ましい。
【0042】
本実施形態においては、上述のように、工程1の撹拌時に、撹拌助剤や非相溶性液体を共存させる方法も含まれる。撹拌助剤として固体状のもの(例えば、凝集剤や吸着剤など)を使用した場合には、工程2で金属残渣とともに撹拌助剤を除去することができる。それに対し、液体状の撹拌助剤を使用した場合や、非相溶性液体を添加した場合には、工程2又はさらに下流工程で、これらを除去することが好ましい。特に、工程2において、固体状の金属残渣の除去方法に遠心分離機を使用する場合には、液体状の撹拌助剤や非相溶性液体などの余分な液状成分を固体状の金属残渣と共に除去することが可能となるので、生産性の面から好ましい。
【0043】
(精製後の重合体溶液)
上述したように、本実施形態の重合体溶液の精製方法により、金属残渣の少ない、且つ、添加剤の残留物も少ない、品質の良好な重合体溶液を得ることができる。また、金属残渣の除去率向上を意図した各種添加剤の添加量をゼロ、または大幅に削減することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
〔製造例〕
アニオン重合によって得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(スチレン含量30.0%、ブタジエン含量70.0%、数平均分子量50.000)400gを含むシクロヘキサン溶液2800gを5Lオートクレーブ反応器に入れ400rpmで70℃に加熱した。その後、2−エチル−ヘキサン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム触媒をニッケル成分が100ppmとなるように重合体溶液に添加し、水素圧力700psigで60分間水素添加反応を実施した後、溶液を90℃まで昇温し、さらの25分間保持することで、水素添加反応を行い、重合体溶液を得た。このように水素化された高分子をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%以上の二重結合の水素化を確認した。
【0046】
〔実施例1〕
製造例で得られた重合体溶液を、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値100(kW/m
3)で30分間激しく撹拌を行った後、重合体溶液をろ過することで固体状の金属残渣を除去し、重合体溶液を得た。重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た後、得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析法によりICPS−7510(株式会社島津製作所製)で測定した(以下、同じ。)。該測定結果を表1に示す。
【0047】
〔実施例2〕
製造例で得られた重合体溶液を、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)を用いて、撹拌強度P/V値1.0×10
6(kW/m
3)で、60℃、7600rpmで1秒間撹拌した。その後、得られた重合体溶液を、ディスク型遠心分離機(アルファラバル社製LAPX404、相対遠心加速度3000G、流量2.0T/hr)によって、固体状の金属残渣を除去した。得られた重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た後、得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0048】
〔実施例3〕
製造例で得られた重合体溶液を、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、Ni残渣に対して2倍モルのクエン酸を含んだ1%水溶液を添加し、撹拌強度P/V値100(kW/m
3)で30分間激しく撹拌を行った。その後、得られた重合体溶液を、ディスク型遠心分離機(アルファラバル社製LAPX404、相対遠心加速度3000G、流量2.0T/hr)によって、固体状の金属残渣を除去した。得られた重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た後、得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0049】
〔比較例1〕
製造例で得られた重合体溶液を、撹拌することなくそのままディスク型遠心分離機(アルファラバル社製LAPX404、相対遠心加速度3000G、流量2.0T/hr)によって処理した。重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た後、得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0050】
〔比較例2〕
製造例で得られた重合体溶液を、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)を用いて、撹拌強度P/V値1.5×10
6(kW/m
3)で、60℃、7600rpmで0.1秒間撹拌した。その後、得られた重合体溶液を、ディスク型遠心分離機(アルファラバル社製LAPX404、相対遠心加速度3000G、流量2.0T/hr)によって処理した。得られた重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た後、得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0051】
【表1】