(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族ポリエステル(a)と、タッキファイヤー(b)と、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物(c)と、極性基を有するポリオレフィン(d)とを含有するポリエステル系成型用樹脂組成物のペレタイズ加工方法であって、
前記成型用樹脂組成物のストランドを押出成形する工程;
前記ストランドを冷却する工程;
滴点100℃以上かつ平均粒子径80μm以下のポリオレフィン系樹脂の微粒子を前記ストランドの表面に付着させる工程;および
前記ストランドをカットしてペレット化する工程
を含む、ペレタイズ加工方法。
前記ポリオレフィン(d)を、前記芳香族ポリエステル(a)および前記ポリオレフィン(d)の合計質量に対して、5〜40質量%含有する、請求項1または2に記載のペレタイズ加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.ポリエステル系成型用樹脂組成物のペレタイズ加工方法
(1)ポリエステル系成型用樹脂組成物
ポリエステル系成型用樹脂組成物は、芳香族ポリエステル(a)と、タッキファイヤー(b)と、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物と、極性基を有するポリオレフィン(d)とを含有するものであれば、特に限定されない。
【0020】
〈芳香族ポリエステル(a)〉
上記芳香族ポリエステル(a)は、特に限定されず公知の芳香族ポリエステルを特に制限なく用いることができ、中でも、脂肪酸とグリコールとの縮合反応から得られる芳香族ポリエステルであることが好ましい。
上記芳香族ポリエステル(a)としては、具体的には、例えば、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を含有する酸成分と、エチレングリコール(以下、EGと略す)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略す)および1,4−ブタンジオール(以下、1,4−BDと略す)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するヒドロキシ基成分とを反応させて得られるポリエステルを含有する芳香族ポリエステルが挙げられ、より具体的には、下記に示すポリエステルA〜Dを含有する芳香族ポリエステルが好適に例示される。
【0021】
上記ポリエステルAは、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸との混合物を用い、ヒドロキシ基成分としてPTMGと1,4−BDとの混合物を用いて、縮合反応により得られるポリエステルである。
上記PTMGは、1,4−BDを重合させて得られる重合体であれば特に限定されないが、数平均分子量が2000以上であることが好ましい。
上記ポリエステルAとしては、具体的には、例えば、ハイトレル4057(東レ・デュポン社製)等を用いることができる。
【0022】
上記ポリエステルBは、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とε−カプロラクトンとの混合物を用い、ヒドロキシ基成分として1,4−BDを用いて、縮合反応により得られるポリエステルである。
上記ポリエステルBとしては、具体的には、例えば、エリーテルUE3800(ユニチカ社製)等を用いることができる。
【0023】
上記ポリエステルCは、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸との混合物を用い、ヒドロキシ基成分として1,4−BDとNPGとEGとを用いて、縮合反応により得られるポリエステルである。
上記ポリエステルCとしては、具体的には、例えば、エリーテルUE3510(ユニチカ社製)等を用いることができる。
【0024】
上記ポリエステルDは、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸との混合物を用い、ヒドロキシ基成分としてNPGとEGとの混合物を用いて、縮合反応により得られるポリエステルである。
【0025】
上記芳香族ポリエステル(a)は、上記ポリエステルA、B、CおよびDからなる群より選択させる少なくとも2種を含有していることが好ましく、上記ポリエステルAと上記ポリエステルDとを含有していることがより好ましい。これは、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐油性および延伸性に優れたポリエステルAと、低粘度で成型性に優れているポリエステルDとを含有させることにより、得られる成型用樹脂組成物の成型時における粘度を低く保ち、更に成型後の固化物に柔軟性を与えるという理由からである。また、同様の理由から、上記芳香族ポリエステル(a)は、上記ポリエステルAおよびポリエステルDと、ポリエステルCおよび/またはポリエステルBとを含有していることが好ましい。
【0026】
上記芳香族ポリエステル(a)における上記ポリエステルA、B、CおよびDの含有割合は、上記芳香族ポリエステル(a)の総質量に対して、上記ポリエステルAを10〜50質量%、上記ポリエステルBを0〜30質量%、上記ポリエステルCを0〜30質量%、上記ポリエステルDを10〜50質量%含有していることが好ましく、上記ポリエステルAを20〜40質量%、上記ポリエステルBを0〜25質量%、上記ポリエステルDを25〜45質量%、上記ポリエステルCを0〜20質量%含有していることがより好ましく、上記ポリエステルAを25〜35質量%、上記ポリエステルBを0〜20質量%、上記ポリエステルDを30〜40質量%、上記ポリエステルCを0〜15質量%含有していることが更に好ましい。
【0027】
上記ポリエステルA、B、CおよびDの含有割合がこの範囲内であると、得られる成型用樹脂組成物の成型時の粘度を低く保ちながら成型後の固化物に柔軟性を与えることが可能であり、成型後の固化物が耐油性、耐ガソリン性に優れるため好ましい。更に、成型後の硬化時間が短く、養生の必要性がないことからも好ましい。また、このような性質を有する上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、耐ヒートショック性に優れ、ヒートサイクル時の被着体の膨張収縮に追従することが可能であるため成型用ホットメルト材として用いることが好ましい。
【0028】
〈タッキファイヤー(b)〉
上記タッキファイヤー(b)は、従来公知のタッキファイヤー(粘着付与剤)を用いることができ、具体的には、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー、石油樹脂系タッキファイヤーが例示される。
【0029】
上記ロジン系タッキファイヤーとしては、松ヤニや松根油中のアビエチン酸を主成分とするロジン酸とグリセリンやペンタエリスリトールとのエステル、および、それらの水添物、不均化物が挙げられ、具体的には、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジン、ロジンエステル(ロジンジオール)等が好適に例示される。
【0030】
上記テルペン系タッキファイヤーとしては、松に含まれるテルペン油やオレンジの皮等に含まれる天然のテルペンを重合したものが挙げられ、具体的には、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等が好適に例示される。
【0031】
上記石油樹脂系タッキファイヤーとしては、石油を原料とした脂肪族、脂環族、芳香族系の樹脂が挙げられ、具体的には、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、スチレン系石油樹脂等が好適に例示される。
【0032】
これらのうち、タッキファイヤー(b)としては、得られる組成物が低粘度になり成形しやすくなる点から上記ロジン系タッキファイヤーを用いることが好ましい。
得られる成型性樹脂組成物の延伸性、ポリオレフィン、金属およびPVCに対する接着性が向上し、更に耐熱性と柔軟性のバランス、耐ガソリン性が良好となる理由から、上記ロジン系タッキファイヤーとしては、ロジンエステルであるロジンジオールを用いることが好ましい。
上記ロジンジオールとしては、具体的には、例えば、パインクリスタルD−6011、KE−615−3、D−6240(いずれも荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0033】
また、上記タッキファイヤー(b)の含有量は、上記芳香族ポリエステル(a)および上記ポリオレフィン(d)の合計100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。この範囲内であると、得られる成型性樹脂組成物の延伸性、ポリオレフィン、金属およびPVCに対する接着性が向上し、更に耐熱性と柔軟性のバランス、耐ガソリン性が良好となる。
【0034】
〈1分子中にヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物(c)〉
上記1分子中にヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物(c)(以下、単に「ポリオール化合物(c)」という場合がある。)は、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物であって、上記芳香族ポリエステル(a)と上記タッキファイヤー(b)とを相溶させる相溶化剤として働くものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトン、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、更に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタンジエンポリオール、ポリイソプレングリコール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;ひまし油等のポリエステル系ポリオール等の多価アルコール類;レゾルシン、ピスフェノール等の多価フェノール類が使用可能である。これらの各ポリオールは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらのうち、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンを用いることが、少量で相溶化剤としての効果が得られるため好ましく、更に、ポリカーボネートジオールを用いることが、耐高温高湿性に優れるためより好ましい。
【0036】
また、各ポリオールの平均分子量は、500〜10000が好ましく、1000〜10000がより好ましく、2000〜10000が更に好ましい。
【0037】
上記ポリオール化合物(c)の含有量は、上記芳香族ポリエステル(a)および上記ポリオレフィン(d)の合計100質量部に対して、0.5〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部が更に好ましい。この範囲であると、上記芳香族ポリエステル(a)と上記タッキファイヤー(b)とを十分に相溶させ、ポリエステルの物性(耐熱性、柔軟性、耐ガソリン性)を低下させない。
【0038】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、上記タッキファイヤー(b)とポリオール化合物(c)とを含有するため、上述したように、延伸性ならびにポリオレフィン、金属およびPVCに対する接着性が向上し、耐熱性と柔軟性のバランス、更に、溶融時に起こる芳香族ポリエステル(a)とタッキファイヤー(b)との分離が防止され、タッキファイヤー(b)を単独で添加する場合では低下する耐油性、特に耐ガソリン性が良好となる。これは、ポリオール化合物(c)を添加することで、タッキファイヤー(b)が芳香族ポリエステル(a)の非結晶部分に優先的にとり込まれるためであると考えられる。
【0039】
〈極性基を有するポリオレフィン(d)〉
上記極性基を有するポリオレフィン(d)(以下、単に「ポリオレフィン(d)」という場合がある。)は、特に限定されないが、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体、これらのα−オレフィンの2種以上からなる共重合体、またはこれらのα−オレフィンと他の共重合性単量体との共重合体からなるポリオレフィン樹脂をベースとして、その主鎖および/または側鎖に極性基を導入したものが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記α−オレフィンの単独重合体としては、ポリエチレンが耐ガソリン性により優れる点から好ましい。
【0040】
また、上記極性基は、特に限定されず、具体的には、例えば、エポキシ基(グリシジル基を含む)、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、ニトロ基、スルフォン基等が挙げられる。上記ポリオレフィン(d)は、これらの官能基の1種のみを有していてもよく、複数種類の官能基を有していてもよい。
【0041】
上記極性基としては、極性物との接着性に優れる点から、エポキシ基(グリシジル基を含む)、カルボキシ基、酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
また、上記ポリオレフィン(d)は、エポキシ基と、カルボキシ基および/または酸無水物基とを有するのが好ましい。
また、上記カルボキシ基がマレイン酸に由来するカルボキシ基であり、上記酸無水物基が無水マレイン酸基であるのが好ましい。
【0042】
一般的にポリオレフィンは低極性であるため、極性が高い芳香族ポリエステルとの相溶性が悪く、これらを含む組成物の製造時または製造後において長時間溶融させた状態にすると、芳香族ポリエステルとポリオレフィンとが分離し、再度撹拌しても十分に混合できず、接着性が低下する場合がある。しかし、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、芳香族ポリエステル(a)と、極性基を有するポリオレフィン(d)とを用いるため、長時間溶融後にも分離せず、接着性を維持できる。
また、ポリオレフィン(d)を含むため、ペレットにポリオレフィン系樹脂の微粒子からなる防着剤を付着させても、接着性を維持できる。
【0043】
上記ポリオレフィン(d)は、例えば、オレフィン(例えば、エチレン)と、極性基を有する重合性単量体(例えば、グリシジルメタクリレート)とを共重合する方法等により得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0044】
上記ポリオレフィン(d)としては、具体的には、例えば、ボンドファースト 2C、E(以上、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体)、2B、7B(以上、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル)、7L、7M(以上、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル)等(いずれも、住友化学社製)を用いることが好ましい。
【0045】
上記ポリオレフィン(d)の含有量は、特に限定されないが、上記芳香族ポリエステル(a)および上記ポリオレフィン(d)の合計100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましい。ポリオレフィン(d)をこの範囲で含有すると、ポリオレフィンに対する接着性と、金属およびPVCに対する接着性とのバランスがさらに優れ、耐ガソリン性にも優れる。
これらの特性により優れる点から、上記ポリオレフィン(d)の含有量は、上記芳香族ポリエステル(a)および上記ポリオレフィン(d)の合計100質量部に対して10〜40質量部がより好ましく、20〜40質量部がさらに好ましい。
【0046】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、上記ポリオレフィン(d)を特定の割合で含有するので、金属やPVCに対する接着性や耐ガソリン性等の優れた特性を維持しつつ、ポリオレフィンに対する接着性を向上することができる。しかも、長時間溶融後にも分離せず、接着性を維持できる。
【0047】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、必要に応じて補強剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の他滑剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤、補強繊維等の各種添加剤を配合してもよい。
【0048】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、上記芳香族ポリエステル(a)、上記タッキファイヤー(b)、上記ポリオール化合物(c)および上記ポリオレフィン(d)ならびに必要に応じて各種添加剤を、例えばロール、ニーダ、押出し機、万能攪拌機等により混合し製造することができる。
【0049】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、成形性に優れる点から、190℃における粘度が10〜500Pa・sであるのが好ましく、10〜100Pa・sであるのがより好ましい。また、圧力が5MPa未満、好ましくは0.2〜1.0MPa、より好ましくは0.3〜0.5MPaである条件で、吐出成型が可能な成型用樹脂組成物であることが好ましい。ここで、上記吐出成型は、120〜230℃の範囲で行われることが好ましく、180〜210℃の範囲で行われることがより好ましい。この温度範囲であれば、上記吐出成型に用いる成型用樹脂組成物の安定性が向上し、更に溶融時の粘度が上述した範囲内となる理由から好ましい。また、圧力とは、上記吐出成型時において、吐出口から上記成型用樹脂組成物を吐出させる際の圧力のことである。
【0050】
(2)ペレタイズ加工方法
本発明のペレタイズ加工方法は、以下の各工程を含む。
イ)押出成型工程
溶融状態の上記ポリエステル系成型用樹脂組成物を押出成型し、ポリエステル系成型用樹脂組成物のストランドを製造する工程である。
押出成型の方法は、特に限定されず、従来実施されている方法を使用することができる。
【0051】
ロ)冷却工程
押出成型により製造された上記ストランドを冷却する工程である。
冷却の方法は、特に限定されず、従来実施されている方法を使用することができる。
冷却の方法は、空冷でも、液冷でもよいが、例えば、ストランドを、冷却水が入った水槽(冷却水槽)内の冷却水に潜らせて連続的に冷却することが好ましい。
【0052】
ハ)付着工程
冷却した上記ストランドの表面にオレフィン系樹脂の微粒子を付着させる工程である。
付着の方法は、特に限定されず、当業者が実施することができる種々の方法を用いることができる。例えば、ストランドを、ポリオレフィン系樹脂の微粒子が入った離型剤槽に通し、ストランドの表面にポリオレフィン系樹脂の微粒子を付着させてもよい。
【0053】
上記ポリオレフィン系樹脂の微粒子(以下、単に「微粒子」という場合がある。)は、ポリオレフィン系樹脂の微粒子であって、滴点100℃以上かつ平均粒子径80μm以下のものであれば特に限定されない。
【0054】
上記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体、これらのα−オレフィンの2種以上からなる共重合体、またはこれらのα−オレフィンと他の共重合性単量体との共重合体からなるポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのポリオレフィンの中でも、ポリエチレンが耐ガソリン性により優れる点から好ましい。
【0055】
また、上記ポリオレフィン系樹脂は、極性基を有してもよい。上記極性基は、特に限定されず、上記ポリオレフィン(d)の項目に記載したもの等が挙げられる。上記ポリオレフィン(d)は、これらの官能基の1種のみを有していてもよく、複数種類の官能基を有していてもよい。
【0056】
また、上記微粒子は、上記ポリオレフィン系樹脂に加えて、所望により、補強剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の他滑剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤、補強繊維等の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0057】
上記微粒子の滴点は、上記ポリオレフィン系樹脂の微粒子の滴点をいい、100℃以上であるが、100〜200℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。
ここで、滴点は、上記ポリオレフィン系樹脂の微粒子の試料を規定の条件で加熱したとき、試料が半固体状から液体となり、試料カップから滴下する温度をいい、例えば、ASTM D3945規格に従った滴点測定試験によって測定することができる。なお、滴点は融点とは異なる概念である。
【0058】
上記微粒子の平均粒子径は、80μm以下であるが、1〜80μmの範囲内が好ましく、1〜60μmの範囲内がより好ましく、1〜50μmの範囲内がさらに好ましく、1〜20μmの範囲内がいっそう好ましい。
本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回析・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径をいい、例えば、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置を用いて計測することができる。
平均粒子径の測定方法は、レーザー回析・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を求めるものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ガラス製三角フラスコ(500mL容量)等の容器に一定量(10mg〜5g程度、試料により適宜変更する。)の微粒子をいれ、2〜3滴の乳化剤(ARKOPAL
(R) N 090、クラリアント社製;CAS#9062−77−5)水溶液を加え、よく撹拌した後、水を一定量(約200mL程度)加え、5分間程度のソニケーション処理を行い、微粒子を分散させ、得られた分散液を試料として用いて、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−920など)により測定することができる。
【0059】
ニ)カット工程
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物のストランドをカットし、ペレットとする工程である。
ストランドは従来公知の方法によってカットし、ペレット化することができる。例えば、ペレタイザーを用いて、ストランドを所望の長さでカッターで切断することにより、ペレット化することができる。カッターは特に限定されないが、生産性の観点からは、ロータリーカッター、ファンカッター等の回転カッターが好ましい。
【0060】
本発明の方法によれば、ストランド表面にポリオレフィン系樹脂の微粒子を付着させ、ペレット化するので、カット面にもポリオレフィン系樹脂の微粒子が付着し、カッターへの粘着とブロッキングを防ぐことができ、生産性を損なうこともない。
【0061】
本発明のペレタイズ加工方法は、所望により、以下の工程を含んでもよい。
ホ)乾燥工程
ペレットを乾燥する工程である。乾燥方法は特に限定されず、当業者が実施しうる種々の方法を用いることができるが、例えば、40℃未満の温風で乾燥してもよい。
【0062】
2.ポリエステル系成型用樹脂組成物のペレット
本発明のペレタイズ加工方法によって製造されるペレットは、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物に、上記押出成型工程、上記冷却工程、上記付着工程および上記カット工程を適用することによって製造されるペレットである。
【0063】
3.ホットメルト成型された封止部を有する部品
本発明のペレタイズ加工方法によって製造されるペレットは、ブロッキングが防止されているため、保存時容器内でペレット同士が接着して取り出すのに困難を来したり、ホッパ内で固着せず、アプリケータへの移動が困難になったりすることもなく、使い勝手が良い。
【0064】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、ポリオレフィン、金属およびPVCに対する接着性、耐ガソリン性、延伸性ならびに柔軟性等に優れる。また、低粘度で成型性にも優れている。特に、極性基を有するポリオレフィンを用いているので、本発明の成形用樹脂組成物を長時間溶融した後でも芳香族ポリエステルとポリオレフィンとが分離せず、接着性を維持できる。
【0065】
また、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物は、上述したような優れた特性を有していることから、コネクタ・ハーネス等の端部の封止剤・防水保護剤として有用であり、また、ポッティング材(電気回路を衝撃、振動もしくは湿気等から守るために、電気回路全体に埋め込まれる充填材)としても有用である。
【0066】
上記ポリエステル系成型用樹脂組成物を用いた防水保護被覆の製造方法は、上述した本発明の成型用樹脂組成物を用いて電子機器端部に防水保護被覆を形成する防水保護被覆の製造方法であって、上記本発明の成型用樹脂組成物を溶融する溶融工程と、上記溶融工程後の溶融した成型用樹脂組成物を電子機器端部に5MPa未満の圧力で吐出成型または塗布する吐出成型・塗布工程とを具備することを特徴とする防水保護被覆の製造方法である。ここで、上記吐出成型時または塗布時の圧力は、0.2〜1.0MPaであることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることがより好ましい。
【0067】
上記溶融工程は、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物を溶融する工程であり、具体的には、上記成型性樹脂組成物を160〜230℃、好ましくは180〜210℃に加熱して溶融させる工程である。
【0068】
上記吐出成型・塗布工程は、上記溶融工程により溶融した成型用樹脂組成物を電子機器端部に5MPa未満の圧力で吐出成型または塗布する工程である。具体的には、上記吐出成型は、溶融した成型用樹脂組成物を、電子機器端部を入れたモールド内に、5MPa未満、好ましくは1〜4MPaの圧力で、ホットメルトガン、ホットメルトアプリケータ等を用いて吐出し、上記モールド内で成型する工程である。またはホットメルトガン、ホットメルトアプリケータで吐出し、ポッティングする工程である。また、上記塗布は溶融した成型用樹脂組成物を、電子機器端部に、5MPa未満、好ましくは1〜4MPaの圧力で、ホットメルトガンスプレー等を用いて塗布する工程である。一般的な射出成型では、圧力が40〜120MPa、溶融温度が250〜300℃と高いのに対し、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物を用いた防水保護被覆の製造方法を用いれば、圧力が0.3〜0.5MPa、溶融温度が180〜230℃で使用できるため非常に優れている。したがって、上述した製造方法を用いれば、このような低温・低圧力での成型が可能であるため、成型上のコストダウンも図られるため好ましい。具体的には、基板全体を防水することができ、かつ、一液型のシリコーン樹脂組成物等のように基板および電子部品をケースで覆う必要がないため、製品のコストダウンも図られるため好ましい。
【0069】
また、2液型のウレタンやエポキシの成型は加熱等を要し、さらに硬化には15〜120分程かかるのに対し、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物を用いれば、成型後の硬化時間が自然冷却で数秒〜数十秒で終了し、数分以内にモールドより脱型することが可能であるため好ましい。具体的には、上記ポリエステル系成型用樹脂組成物を用いれば、成型するためのHM材料の注入時間が10秒で終了し、自然冷却で1分以内にモールドより脱型することが可能であるため好ましい。さらに、脱型後の変形がなく、養生の必要がないことから生産性にも優れている。上記電子機器端部としては、具体的には、例えば、コネクタ・ハーネス等の端部、コードとコードの接続部、電子機器の基板等が挙げられ、その材料は金属、PVC、ポリオレフィン等を使用している物が多い。したがって、上記電子機器端部に形成される防水保護被覆は、金属、PVCおよびポリオレフィンとの密着性に優れていることが、上記したコネクタ・ハーネス等の端部、コードとコードの接続部、電子機器の基板等に用いることが可能となる理由から好ましい。特に、アース部分等から水分が浸入してくるような自動車に用いられているハーネスにおいては、上述した方法により製造される防水保護被覆を用いれば、従来のように導線を途中で切断したり大気開放部等を設けたりする必要性がないため、デザイン等の規制も受けず、低コストで量産性に優れているため好ましい。
【実施例】
【0070】
[成型用樹脂組成物の製造]
各実施例および各比較例について、各成分を第1表に示す配合量(質量部)で混合し、成型用樹脂組成物を製造した。
【0071】
【表1】
【0072】
第1表において、各成分は、以下に示すものである。
(1)ポリエステルA〜D
・ポリエステルA:ハイトレル4057(東レ・デュポン社製)
・ポリエステルC:エリーテルUE−3510(ユニチカ社製)
・ポリエステルD:エリーテルUE−3320(ユニチカ社製)
(2)ロジン系タッキファイヤー
パインクリスタル KE−6011(荒川化学工業社製)
(3)ポリカーボネートジオール
プラクセル CD220(ダイセル化学社製)
(4)エポキシ基を有するポリエチレン
ボンドファースト 7L(住友化学社製)
(5)低密度ポリエチレン
スミカセン G807(住友化学社製)
(6)ヒンダードフェノール系老化防止剤
イルガノックス 1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)
2.防着剤
・PO1:ポリオレフィン系樹脂の微粒子(滴点 145℃,平均粒子径 20μm;セリダスト6050M,クラリアント社製)
・PO2:ポリオレフィン系樹脂の微粒子(滴点 125℃,平均粒子径 15μm;セリダスト130,クラリアント社製)
・PO3:ポリオレフィン系樹脂の微粒子(滴点 110℃,平均粒子径 10μm;セリダスト3715,クラリアント社製)
・PO4:ポリオレフィン系樹脂の微粒子(滴点 73℃,平均粒子径 10μm;セリダスト8020,クラリアント社製)
製品名 )
・滑石1:タルクの粉末(平均粒子径 5μm;マイクロエース P−3,日本タルク社製)
・Em1:ポリエステル系樹脂エマルジョン(樹脂固形分含有率30質量%,Tg=67℃,Mw=8500;エリーテル KA−5071S,ユニチカ社製)
・油脂1:油脂系離型剤(モールド E50,一方社油脂工業社製)
【0073】
[ペレットの製造]
(1)実施例1〜6、比較例1〜5、10(
図1を参照)
成型用樹脂組成物のストランド1を押出成型し、冷却水槽2で冷却水に浸して冷却し、離型剤槽3でポリオレフィン系樹脂の微粒子4を付着させ、ペレタイザー7でカットしてペレット8を得た。
(2)比較例6(
図5を参照)
成型用樹脂組成物のストランド1を押出成型し、冷却水槽2で冷却水に浸して冷却し、ペレタイザー7でカットしてペレット8を得た。
(3)比較例7(
図6を参照)
成型用樹脂組成物のストランド1を押出成型し、冷却水槽2で冷却水に浸して冷却し、ペレタイザー7でカットしてペレット8とし、この表面に離型剤槽3でタルク微粉末5を付着させ、タルク微粉末で打粉をしたペレット9を得た。
(4)比較例8、9(
図7を参照)
成型用樹脂組成物のストランド1を押出成型し、冷却水槽2で冷却水に浸して冷却し、離型剤槽3でポリエステル系樹脂のエマルジョンまたは油脂系離型剤6を付着させ、ペレタイザー7でカットしてペレット8を得た。
【0074】
[溶融試験(溶融時の状態)]
製造したペレットを容器に入れ、200℃で72hr放置後冷却した。
冷却後、ホットメルトの塊を取り出し、半分に切断した。
切断面を観察し、成分が分離していれば「×」と、成分が分離していなければ「○」と評価した。
評価が「○」のものについてのみ、性能試験を行った。
評価が「×」のものについては、性能試験を行わず、第1表の評価の欄には「ND」と記載した。
【0075】
[性能試験の方法]
〈作業性〉
ストランドまたはペレットがカッターに粘着するか否かと、タルクの粉じんが舞い上がるか否かとによって工場での作業性を評価した。すなわち、以下の条件において、ストランドまたはペレットがカッターに粘着せず、かつ、タルクの粉じんが舞い上がらなかった場合を合格と評価し、この場合以外を不合格と評価した。合格を「○」、不合格を「×」として第1表に記載した。
条件は以下のとおりである。
《常温》気温(温度)20℃、湿度50%RH
《高温》気温(温度)35℃、湿度85%RH
【0076】
〈耐ブロッキング性〉
以下の条件の下で、ブロッキングが起きていなかった場合には、合格と評価し、起きていた場合には、不合格と評価した。合格を「○」、不合格を「×」として第1表に記載した。
《短期(室温)》製造したペレットを50℃で24時間乾燥した後、50gをカップに入れ、上部に14g/cm
2以上になるように重しを置き、室温で24時間経過時にブロッキングが起きていないか否かを観察した。
《長期(40℃)》製造したペレットを50℃で24時間乾燥した後、50gをカップに入れ、上部に約40g/cm
2以上になるように重しを置き、40℃で1カ月経過時にブロッキングが起きていないか否かを観察した。
《長期(80℃)》製造したペレットを50℃で24時間乾燥した後、100gをカップに入れ、その上部に約40g/cm
2になるように重しを置き、80℃で1カ月経過時にブロッキングが起きていないか否かを観察した。
【0077】
〈接着性〉
ポリオレフィン系樹脂に対する接着性を、JIS K 6256−2:2006(剛板との90°はく離強さ)に準拠して評価した。2mmの厚さのコロナ表面処理をしたポリプロピレンシート(コウベポリシート PP−N−BN、新神戸電機社製)を、25mm×150mmに切り出し、PP試験片とした。このPP試験片に、製造した成型用樹脂組成物を、モールドを用いて
図2のように成型し、PP試験片42から成型用樹脂組成物41をはく離するように、90°はく離試験を行い、PP試験片42と成型用樹脂組成物41とが剥がれだしたときの最大引張応力を測定した。引張速度は50mm/minとした。最大引張り応力が50N/25mm以上であるものを合格、その他のものを不合格と評価した。合格を「○」、不合格を「×」として第1表に記載した。
【0078】
〈物性伸び〉
JIS K 6251:2004に準拠して、破断時の最大伸び率を測定した。伸び率が300%以上のものを合格、その他のものを不合格と評価した。合格を「○」、不合格を「×」として第1表に記載した。
【0079】
〈表面の感触〉
溶融固化後の成型用樹脂組成物の表面を指で触って、べとつき、ぬめり等の変な感触がないものを合格、あるものを不合格とした。合格を「○」、不合格を「×」として第1表に記載した。
【0080】
〈判定〉
溶融試験の評価が「×」であるものは不合格と判定した。
溶融試験の評価が「○」であるものは、作業性、耐ブロッキング性、接着性、物性伸びおよび表面の感触について、すべて合格と評価されたものを合格、1つでも不合格があるものを不合格と判定した。
合格を「○」、不合格を「×」として第1表に記載した。