特許第6030854号(P6030854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 興 幸子の特許一覧

<>
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000002
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000003
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000004
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000005
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000006
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000007
  • 特許6030854-ドーナツ型よだれかけ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030854
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ドーナツ型よだれかけ
(51)【国際特許分類】
   A41B 13/10 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   A41B13/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-125248(P2012-125248)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249557(P2013-249557A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512143464
【氏名又は名称】興 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(72)【発明者】
【氏名】興 幸子
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−73912(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3170106(JP,U)
【文献】 実開平7−1006(JP,U)
【文献】 実公昭3−6612(JP,Y1)
【文献】 実開昭51−113626(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0157357(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3115111(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3139303(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 13/10
A41D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環の一部を切り欠いた平面形状を有する本体と、
該本体の第1の切り欠き端部において、略半径方向に所定間隔離間して配置された第1内側結合部材及び第1外側結合部材と、
該本体の第2の切り欠き端部において、略半径方向に前記所定間隔離間して配置された、前記第1内側結合部材及び第1外側結合部材と係合する第2内側結合部材及び第2外側結合部材と、
該本体の第2の切り欠き端部において、前記第2内側結合部材から該本体の半径方向と角を成す方向に前記所定間隔離間して配置された、前記第1外側結合部材と係合する少なくとも1つの第2外側結合部材とを備えるよだれかけ。
【請求項2】
前記本体部の少なくとも外周縁部がヘム巻きされていることを特徴とする請求項1に記載のよだれかけ。
【請求項3】
前記第1内側結合部材と前記第2内側結合部材とは互いに雌雄嵌合するホック部材であり、
前記第1外側結合部材と前記第2外側結合部材とは互いに雌雄嵌合するホック部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のよだれかけ。
【請求項4】
前記本体の内周と外周の間の半径方向幅は略一定に構成された請求項1から3のいずれか1項に記載のよだれかけ。
【請求項5】
前記本体の切り欠き端部から円周方向に離れた部分における半径方向幅が、同本体の切り欠き端部付近における半径方向幅よりも広いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のよだれかけ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はよだれかけに関する。詳しくは、例えば、溢乳についても充分に対応することができる乳幼児等の使用に最適なよだれかけに係るものである。
【背景技術】
【0002】
乳幼児のよだれや溢乳で体や衣服、床などを汚さないようにするため、着衣としてよだれかけが使用される。
【0003】
従来のよだれかけは、首の裏側で結ばれる結び紐で、胸当て部が乳幼児の前方に位置するように吊り下げて使用される。このため、紐の結び方が緩いと、胸当て部が移動しやすく、汚れから使用者の体や衣服を適当に保護できない場合があった。
【0004】
また、紐をきつく結ぶことで胸当て部を固定した場合、きゅうくつになって使用者が嫌がることも考えられる。
【0005】
ここで、使用中に胸当て部の位置が移動せず、使用者がきゅうくつになることなく、着脱が容易なよだれかけが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1には、図7に示すような、よだれかけ100が記載されている。本体は、ほぼU字状の首当て部101が形成された胸当て部材102で構成される。また、着衣の内部へ挿入される位置ずれ防止片103と、一対の肩掛け用ゴム紐104を有する。位置ずれ防止片103を着衣の襟元で折り曲げ、一対の肩掛け用ゴム紐内へ両腕を通すことで肩掛け状態となり、よだれかけ100の移動を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−189786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のよだれかけの形状では、使用者の衣服を覆う部分が限られ、汚れから体や衣服を充分に保護することができないことがある。また、乳幼児が寝たままの状態で使用したときは、よだれや溢乳で吐き戻したものが首を伝わって流れ、頭部や背面、布団などが汚れてしまう場合もある。
【0009】
なお、溢乳については、長期間に渡って頻繁に起こるものであり(通常は生後3日目頃から、個人差はあるが、毎日10回程度起こる。1歳になるまで続くことも珍しくない。)、また、衣服や布団などに母乳やミルクが付着するとその汚れを落とすことが極めて困難であるため、特に、溢乳に充分に対応することができるよだれかけが強く求められている。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み創案されたものであり、よだれや溢乳で吐き戻したものなどの汚れから、体や衣服を充分に保護することができるよだれかけを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のよだれかけは、切れ目が形成された略ドーナツ型の形状で、内周と外周の間が所定の長さ以上に構成された本体と、該本体の切れ目を挟んで対向する両側に配置されると共に、同両側のうち少なくとも一方に、前記本体の外周側に複数設けられた結合部材とを備える。
【0012】
ここで、切れ目が形成された略ドーナツ型の形状を有することによって、よだれかけの本体が、使用者の首を中心に体の全方位を覆うことになり、よだれや溢乳で吐き戻したものから衣服を保護する。
【0013】
また、内周と外周の間が所定の長さ以上に構成された本体を備えることによって、首回りの部分だけでなく、胸や背中の部分まで充分に覆われることになる。また、使用者が寝た姿勢の状態でも、頭部周辺の領域まで、よだれかけ本体に覆われることになる。
【0014】
また、本体の切れ目を挟んで対向する両側に配置される結合部材を備えることによって、切れ目側の端部を繋ぎ合わせることが可能となり、使用者の全方位を隙間なく本体が覆うことになる。
【0015】
さらに、本体の切れ目を挟んで対向する両側に配置されると共に、両側のうち少なくとも一方に、本体の外周側に複数設けられた結合部材を備えることによって、本体の外周の径の長さが変更可能となり、使用者の姿勢に応じてよだれかけの形状を変えることができる。
【0016】
また、本体の切れ目を挟んで対向する両側の内周近傍に配置された第1の雌雄型ホック部と、前記本体の切れ目を挟んで対向する両側の外周近傍に配置されると共に、同本体の外周側に複数設けられた第2の雌雄型ホック部を有し、本体の切れ目を挟んで対向する両側のうち、一方側に配置された第1の雌雄型ホック部と第2の雌雄型ホック部の間の距離が、本体の切れ目を挟んで対向する両側のうち、他方側に配置された第1の雌雄型ホック部と第2の雌雄型ホック部の間の距離と略同じである場合には、内周と外周の両方で本体を固定することができる。つまり、使用者の体を隙間なく覆った状態を、より確実に保つことになる。また、本体の外周の径の長さが変更可能となり、使用者の姿勢に応じてよだれかけの形状を変えることができる。
【0017】
本体の切れ目を挟んで対向する両側のうち、一方側に配置された第1の雌雄型ホック部と第2の雌雄型ホック部の間の距離が、本体の切れ目を挟んで対向する両側のうち、他方側に配置された第1の雌雄型ホック部と第2の雌雄型ホック部の間の距離と略同じである場合には、ホックを留めたときに、本体にずれが生じず、しわができにくくなる。即ち、装着時に、よだれかけ本体と使用者の体の間における空間の形成が抑えられ、隙間なく体を覆うことになる。
【0018】
また、本体の切れ目を挟んで対向する両側の内周近傍に配置された第1の雌雄型ホック部と、前記本体の切れ目を挟んで対向する両側の外周近傍に配置されると共に、同本体の外周側に複数設けられた第2の雌雄型ホック部とを有する場合には、内周と外周の両方で本体を固定することができる。つまり、使用者の体を隙間なく覆った状態を、より確実に保つことになる。また、本体の外周の径の長さが変更可能となり、使用者の姿勢に応じてよだれかけの形状を変えることができる。
【0019】
ここで、本体の内周と外周の間の幅が一定となる様に構成した場合には、装着の向きを考慮する必要が無いといった利便性を高めることができる。このことは、前方、後方、側方といったあらゆる方位で区別無く溢乳等に対応することができると共に、本体を回転した場合であっても同様の使用感を実現することができることを意味する。
一方で、前記本体の切れ目側と逆側面における内周と外周の間の幅が、同本体の切れ目側における内周と外周の間の幅よりも長い場合には、一般的に切れ目を後方とすることが多いと考えられる。切れ目を後方に装着した場合に、使用者の前方のよだれや溢乳で吐き戻したものがかかりやすい部分を幅広く覆うことができる。
【0020】
さらに、本体がガーゼ部とガーゼ部に内包された脱脂綿部とを有する場合には、よだれかけ本体の吸水性と速乾性に優れ、汚れを吸収しやすくなる。即ち、水分を含む汚れが付いた場合にも、汚れは素早く吸収されることになり、よだれかけ本体の表面を伝って広がりにくくなる。
【0021】
また、上記の目的を達成するために、本発明のよだれかけは、切れ目が形成された略ドーナツ型の形状で、内周と外周の間が所定の長さ以上に構成された本体と、本体の外周が調節可能な結合部材とを備える。
【0022】
ここで、本体の外周が調節可能な結合部材を備えることによって、よだれかけを使用者の姿勢に応じた形状に変えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るよだれかけは、よだれや溢乳で吐き戻したものなどの汚れから、体や衣服を充分に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用したよだれかけの一例を示す概略図である。
図2図1のよだれかけを装着した場合の概略正面図である。
図3図2の概略背面図である。
図4】使用者が寝た姿勢で図1のよだれかけを装着した場合(a)と従来の形状のよだれかけを装着した場合(b)の概略側面図である。
図5図1のよだれかけの外周を立ち上げて使用した場合の概略側面図である。
図6】本発明を適用したよだれかけの一例の内部構造を示した図である。
図7】従来のよだれかけの形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。図1は、本発明を適用したよだれかけの一例を示す概略図である。図2は、図1のよだれかけを装着した場合の概略正面図である。図3は、図2の概略背面図である。図6は、本発明を適用したよだれかけの一例の内部構造を示した図である。
【0026】
図1に示すように、本発明を適用したよだれかけの一例であるよだれかけ1は、切れ目15が形成された略ドーナツ型の形状の本体2を有する。本体2の切れ目15側における内周と外周の間3の長さは、乳幼児の肩から上腕部にかけて覆うことのできる長さ以上に構成されている。また、本体2の外縁11は、ヘム巻仕上げがされている。
【0027】
また、本体2には、切れ目15を挟んで対向する両側に、雌雄型ホック4〜9が配置されている。なお、雌雄型ホック4〜9は本体2を貫通しており、雌型ホック4、8は、本体2の裏面側に結合部が設けられている。また、雄型ホック5〜7および9は、本体2の表面側に結合部が設けられている。
【0028】
また、本体2の切れ目15の外周側の一方に、外周の雌型ホック4が配置され、他方の外周側に外周の雄型ホック5〜7が配置されている。また、本体2の切れ目15の内周側には、一方に内周の雌型ホック8を、他方に内周の雄型ホック9が配置されている。つまり、本体2の切れ目15を挟んで、雌型ホック4と雌型ホック8が同じ側に配置されており、その逆側に雄型ホック5〜7と雄型ホック9が配置されている。なお、雌型ホック4の裏面と雄型ホック5〜7のいずれかの表面がくっつき、雌型ホック8の裏面と雄型ホック9の表面がくっつくことになる。
【0029】
さらに、雌型ホック4,8の間の距離L1は、雄型ホック5,9の間の距離L2と等しくなるように形成されている。雄型ホック6,9の間の距離L3及び雄型ホック7,9の間の距離L4も、雌型ホック4,8の間の距離L1と等しくなるように形成されている。また、各雌雄型のホック5〜9はプラスチックで形成されている。
【0030】
ここで、本体2の切れ目15側における内周と外周の間3の長さは、使用者の体や衣服を充分に覆うことができればよく、上記構成に限定されるものではない。
【0031】
また、本体2の外縁11は必ずしもヘム巻仕上げがなされる必要はないが、本体2の生地裁断部分のほつれが抑制される点から、ヘム巻仕上げがなされる方が好ましい。また、本体2の耐久性があがることも期待される。
【0032】
また、雌雄型ホックは、本体2の切れ目15を挟んで対向する両側のどちらか一方の外周側に複数設けられていればよく、雌雄のホックの組み合わせや設ける数が限定されるものではない。
【0033】
また、本体2の外周の径の長さが変更可能であれば充分であり、必ずしも本体2の内周側に雌雄型ホック部が設けられる必要はない。但し、内周と外周の両方で本体2を固定することで、使用者の体を隙間なく覆った状態をより確実に保つことができる点から、上記構成にすることが好ましい。
【0034】
また、雌型ホック4,8の間の距離L1、雄型ホック5,9の距離L2、雄型ホック6,9の間の距離L3、そして雄型ホック7,9の間の距離L4は、必ずしも等しくなるように形成される必要はない。但し、ホックを留めたときに本体にしわができにくく、使用者の体を隙間なく覆える点から、上記構成にすることが好ましい。
【0035】
また、雌雄型ホック4〜9の素材は限定されるものではないが、乳幼児が誤って舐めた場合の安全性や、ホックが柔らかく、装着時に痛くないという点から、雌雄型ホック4〜9はプラスチックで形成されることが好ましい。また、装着時にホックが肌に触れても冷たく感じないという点からも、上記構成にすることが好ましい。
【0036】
図1に示すように、本体の切れ目15側と逆側面における内周と外周の間10の幅が、同本体の切れ目15側における内周と外周の間3の幅よりも長くなっている。
【0037】
ここで、必ずしも本体の切れ目15側と逆側面における内周と外周の間10の幅がより長くなっている必要はなく、幅の長さが限定されるものではない。しかし、一般的に切れ目15を後方にして装着することが多いと考えられる。上記の様な構成にして、切れ目15を後方にして装着した場合は、使用者の前方へのよだれや溢乳で吐き戻したものがかかりやすい部分を幅広く覆うことができる点で好ましい。
ただし、本体2を装着した状態で回転させる場合を考慮し、回転の度合いによらず同様の使用感を保つといった観点を重視する場合には、本体2の内周と外周の間の幅は均一である方が望ましい。
【0038】
図6に示すように、本体2はガーゼ部12とガーゼ部に内包された脱脂綿部13から形成されている。
【0039】
ここで、本体2はガーゼ部12と脱脂綿部13で形成されたものに限定されるわけではない。但し、よだれかけ1が吸水性と速乾性に優れる点からは、ガーゼ部12と脱脂綿部13で形成されることが好ましい。
【0040】
以下、上記の様に構成されたよだれかけ1を装着させた使用例について図面を参照しながら説明する。図4は、使用者が寝た姿勢で図1のよだれかけを装着した場合(a)と従来の形状のよだれかけを装着した場合(b)の概略側面図である。図5は、図1のよだれかけの外周を立ち上げて使用した場合の概略側面図である。図6は、本発明を適用したよだれかけの一例の内部構造を示した図である。
【0041】
なお、乳幼児は、本発明を適用したよだれかけの使用者の一例であって、使用者は乳幼児に限定されるものではない。本体2の大きさを変えることで、新生児から幼児にかけてだけでなく、要介護者や老人等が使用するよだれかけとしても、本発明は適用することが可能である。
【0042】
まず、座った状態の乳幼児によだれかけ1を装着させた実施形態1を示す。よだれかけ1は、図2および図3に示すように、乳幼児の背中側で、内周の雌型ホック8と内周の雄型ホック9、外周の雌型ホック4と外周の第1の雄型ホック5で係止されている。内周と外周の両方で固定され、隙間なく、乳幼児の首を中心に全方位を覆うことができる。
【0043】
また、よだれや溢乳で吐き戻したもので、よだれかけ1の一部が汚れた場合にも、汚れていない領域で乳幼児の口元や首をふくことができる。さらに、よだれかけ1を回転させ、汚れやすい前面部に汚れていない領域を持ってくることで、すぐに取り外すことなく使用できる。
【0044】
また、本体2はガーゼ部12と脱脂綿部13で形成され、吸水性に優れるので、水分を含む汚れは本体2の上で広がりにくい。また本体2は素早く乾くため、菌の繁殖なども抑制でき、安全性にも優れている。
【0045】
次に、別の実施形態として、乳幼児が寝た状態で、本発明を適用したよだれかかけ1を装着した場合の実施形態2を図4(a)に示す。ここで、よだれかけ1は、本体2の外周と内周の長さが乳幼児の上半身以上になるように形成されている。
【0046】
図4(a)で示すように、よだれかけ1は乳幼児の頭部後方まで覆うことができている。溢乳で吐き戻したもの14が口元から首を伝って流れても、肩や布団を保護することができる。溢乳で吐き戻したもの14や嘔吐物が勢いよく出た場合にも、上半身の衣服や布団をよだれかけ1が保護する。
【0047】
一方、乳幼児が寝た状態で、従来の形状のよだれかけを装着した場合を、実施形態2の比較例として、図4(b)に示す。よだれかけが保護できる部分は、乳幼児の胸部分の周辺領域のみに限定される。寝た状態で乳幼児が溢乳や嘔吐した場合、溢乳で吐き戻したもの14や嘔吐物が首を伝って流れ、頭部や肩、そして布団も汚れてしまうおそれがある。
【0048】
このように、使用者が寝た状態で使用する実施形態2の別の例として、ウイルス性腸炎などの嘔吐を伴う病気に感染した乳幼児への装着が考えられる。嘔吐物による汚れから、乳幼児の体や衣服を保護し、衣服やシーツの洗濯回数が減らせることから、看病を行う人の負担を減らすことも期待できる。
【0049】
さらに別の実施形態3として、よだれかけ1の外周を短くして、漏斗状に立ち上げた形状での使用を図5に示す。本体2の外周側に設けられた外周の雄型ホック5〜7の留めるホックを、外周の第1の雄型ホック5から、外周の雄型ホック6,7へと変えることで、本体2の外周が短くなる。これにより、よだれかけ1を漏斗状の形状にすることができる。この形状では、乳幼児のよだれや溢乳で吐き戻したものに対して、よだれかけ1が受け皿となり、衣服や床などを保護しやすくなる。
【0050】
また、実施形態3の一例としては、食事時の使用も想定される。特に、離乳食を食べ始めたばかりの幼児で、食べこぼしが多い場合でも、よだれかけ1が受け皿となるので、通常の使用形態よりも、前面への汚れを受け止めやすい。本体2の汚れていない部分は手拭や口拭きとしても使用できる。取り外したよだれかけは、吸水性に優れた素材で作られているので、本体2の汚れていない部分を台拭きとして使用することもできる。
【0051】
また、実施形態3の他の例として、這い歩きで移動する乳幼児によだれかけ1を装着させた場合も考えられる。よだれかけ1の外周が立ち上がった形状は、乳幼児の前方へのよだれや溢乳で吐き戻したものを受け止めやすい。
【0052】
上記の実施形態の他、本発明を適用したよだれかけ1の使用が想定される場面を以下に示していく。
【0053】
まず、よだれかけ1を装着した乳幼児を抱っこする場面を実施形態4として示す。乳幼児を寝かせた状態で抱く場合は、乳幼児の首や頭部の汗と、抱いた側の人間の腕の汗で、乳幼児が滑りやすくなることがある。しかし、よだれかけ1を装着していれば、首や頭部と腕の間の汗を吸収し、滑りにくくなる。
【0054】
また、乳幼児を縦抱きで抱っこした場合は、乳幼児が装着したよだれかけ1を、抱いた側の人間の肩にかければ、よだれや溢乳で吐き戻したものから抱いた側の人間の衣服を保護しやすくなる。
【0055】
また、母親が乳幼児に授乳する場面を実施形態5として示す。乳幼児の中でも、特に新生児は、乳首をくわえるのに時間がかかるため、シャワーの様にあふれた母乳が、母親の衣服や新生児に大量にかかることがある。この際にも、よだれかけ1ですぐに拭くことができる。また、授乳後やミルクを飲ませた後に、乳幼児に曖気を促す際、げっぷとともに、飲んだ母乳を吐き戻す場合がある。ここでも、よだれかけ1ですぐに対応することができる。
【0056】
また、本発明を適用したよだれかけは、乳幼児の体温調節に役立てることもできる。実施形態6として示す。気温が低い場合は、よだれかけ1が肩を覆っているため、特に就寝時の防寒着としての役割が期待できる。一方、気温が高い場合は、よだれかけ1本体の一部を水で濡らして用いる。吸水力に優れるため、たっぷりと水分を吸収し、速乾性があるため、水分が蒸発するときの気化熱により乳幼児を涼しくさせることができる。
【0057】
また、本発明を適用したよだれかけ1の一例で、本体2がガーゼ部12とガーゼ部に内包された脱脂綿部13とを有するものがあるが、実施形態7として示す。この構造には、吸水性や速乾性に優れる点以外にも利点が存在する。
【0058】
まず、ガーゼ部12は表面にパイルがなく平坦なため、洗濯時に汚れが落ちやすい性質がある。よだれや溢乳で吐き戻したもの、嘔吐物、食べこぼしなど頻繁に想定される汚れに対して、洗濯するだけで清潔に使用することができる。
なお、素材としてタオル地を採用した場合には、吸水性は高いものの、パイルに固まった母乳や嘔吐物がこびり付いてしまい、汚れを落とすことが極めて困難になってしまう点を念のために付言する。
【0059】
また、洗濯するほど柔らかくなっていく性質がある。よって、繰り返しの使用に適した構造といえる。さらには、通気性が高いため、仮に、よだれかけ1が乳幼児の顔を覆ってしまった場合にも、乳幼児は窒息することはなく、安全性にも優れるといえる。そのため、就寝時には取り外される一般的なよだれかけと異なり、装着したままの状態で乳幼児を眠らせることができる。寝ているときに溢乳で吐き戻したものが衣服に付着すると、乳幼児を着替えさせるのに手間がかかる。しかし、本発明を適用したよだれかけ1であれば、乳幼児を起こすことなく、よだれかけの交換が容易にできる。
【0060】
以上のように、本発明を適用したよだれかけは、切れ目が形成された略ドーナツ型の形状を有することによって、よだれかけの本体が、使用者の首を中心に体の全方位を覆うことになり、よだれや溢乳で吐き戻したものから衣服を保護する。また、内周と外周の間が所定の長さ以上に構成された本体を備えることによって、首回りの部分だけでなく、胸や背中の部分まで充分に覆われることになる。
【0061】
また、本体の切れ目を挟んで対向する両側に配置される結合部材を備えることによって、切れ目側の端部を繋ぎ合わせることが可能となり、使用者の全方位を隙間なく本体が覆うことができる。
【0062】
さらに、本体の切れ目を挟んで対向する両側に配置されると共に、両側のうち少なくとも一方に、本体の外周側に複数設けられた結合部材を備えることによって、本体の外周の径の長さが変更可能となり、使用者の姿勢に応じてよだれかけの形状を変えることができる。
【0063】
また、本体の切れ目を挟んで対向する両側の内周近傍に配置された第1の雌雄型ホック部と、前記本体の切れ目を挟んで対向する両側の外周近傍に配置されると共に、同本体の外周側に複数設けられた第2の雌雄型ホック部とを有する場合には、内周と外周の両方で本体を固定することができる。また、本体の外周の径の長さが変更可能となり、使用者の姿勢に応じてよだれかけの形状を変えることができる。
【0064】
また、前記本体の切れ目側と逆側面における内周と外周の間の幅が、同本体の切れ目側における内周と外周の間の幅よりも長い場合には、切れ目を後方にして装着したとき、使用者の前方のよだれや溢乳で吐き戻したものがかかりやすい部分を幅広く覆うことができる。
【0065】
さらに、本体がガーゼ部とガーゼ部に内包された脱脂綿部とを有する場合には、よだれかけ本体の吸水性と速乾性に優れ、汚れを吸収しやすくなる。
【0066】
このように、本発明を適用したよだれかけは、よだれや溢乳で吐き戻したものなどの汚れから、使用者の体や衣服はもちろんのこと、母親や介護者の体や衣服も充分に保護することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 よだれかけ
2 本体
3 本体の切れ目側における内周と外周の間
4 外周の雌型ホック
5 外周の第1の雄型ホック
6 外周の第2の雄型ホック
7 外周の第3の雄型ホック
8 内周の雌型ホック
9 内周の雄型ホック
10 本体の切れ目側と逆側面における内周と外周の間
11 外縁
12 ガーゼ部
13 脱脂綿部
14 溢乳で吐き戻したもの
15 切れ目
L1 雌型ホック4,8の間の距離
L2 雄型ホック5,9の間の距離
L3 雌型ホック6,9の間の距離
L4 雌型ホック7,9の間の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7