(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の杭基礎構造体の好ましい第1実施形態を備える支持対象物である建築物の基礎部100を示す断面図である。
図2は、
図1に示す基礎部100に設置されている本発明の第1実施形態の杭基礎構造体1を示す断面図である。
図3は、
図1と
図2に示す基礎部100における杭基礎構造体1の形状例を示す平面図である。
【0028】
本発明の第1実施形態の杭基礎構造体1は、一例として上部の支持対象物を免震支持する免震構造体である。この支持対象物は、例えば建築物の一例である大規模な物流施設で
ある。
図1と
図2に示す大規模な物流施設の基礎部100の1階の床101と1階のフーチング102は、杭基礎構造体1に対して積層ゴム等の免震装置5を挟むことで、免震支持されている。
【0029】
図2には、
図1に示す基礎部100に用いられている杭基礎構造体1の内の1か所の杭2とその周辺部分を代表例として示している。
【0030】
杭基礎構造体1は、基礎部100を支持している複数の杭2に渡って設置されている。この杭2は、例えば場所打ち鋼管コンクリート杭であり、杭2の直径は例えば2500mmである。しかし、杭2の形式、材質、そして大きさは特に限定されない。この杭2の杭頭部3の設置面には、プレート4が固定されている。1階のフーチング102の下面には、プレート103が固定されている。このプレート4とプレート103の間には、積層ゴム等の免震装置5が設置されている。免震装置5の直径の寸法例を挙げれば、例えば1500mmであるが、特に限定されない。
【0031】
図2に示すように、杭2の杭頭部3の付近の外周囲2Gには、キャピタル部6が固定されている。
図2に示すように、キャピタル部6は、杭2の杭頭部3の付近の外周囲2Gに対して、例えばスタッドボルト等により固定されている。
図3に示す例では、キャピタル部6は、杭2の杭頭部3を中心にしてX方向とY方向に沿って張り出すようにして設置され、上から見て正方形状を有し、X方向の寸法LとX方向と直交するY方向の寸法Lが同じである。キャピタル部6の2つの対向する側面部8は、X方向に沿っており、キャピタル部6の残りの2つの対向する側面部9は、Y方向に沿っている。キャピタル部6は、好ましくは鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造であるが、これに限定されない。キャピタル部6が鉄骨造であると、特に施工が容易であり、コスト低減が図れる。
【0032】
図2に戻ると、地盤110には、掘り下げ部分111が形成されている。この地盤110の掘り下げ部分111は、Z方向に下向きに掘り下げ寸法Sだけ掘り下げることで形成された直方体状の凹部119を有している。キャピタル部6のほぼ下半分の部分は、この掘り下げ部分111の凹部119内に配置されている。キャピタル部6の位置がX方向やY方向にずれない様に、地盤110の凹部119に固定されている。このキャピタル部6を杭2の杭頭部3に設置する際には、この掘り下げ部分111だけを地盤110に対して掘り下げて凹部119を形成するだけで済む。
【0033】
次に、
図2と
図3を参照して、杭間連結部10について説明する。
【0034】
図2と
図3に示すように、杭間連結部10は、隣接する杭2の杭頭部3のキャピタル部6同士を連結することで、隣接する杭2間の間隔を確実に保持するようになっている。この杭間連結部10は、複数の杭2の杭頭部3のキャピタル部6に渡って、X方向とY方向に沿って格子状に配置されている。
【0035】
杭間連結部10は、X方向に平行に配置された複数の第1連結部材11と、Y方向に平行に配置された複数の第2連結部材12から構成され、
図3に示すように、この杭間連結部10はX方向とY方向に沿って格子状に配置されている。第1連結部材11と第2連結部材12は、隣接する複数の杭頭部3のキャピタル部6相互を連結するための鉄骨造等の連結梁である。
【0036】
図2と
図3に示すように、第1連結部材11と第2連結部材12は、それぞれ1本または2本以上の本数を組として構成されている。
図2と
図3の図示例では、2本の第1連結部材11と2本の第2連結部材12が組になって配置されている。
図2に示すように、地
盤110の上には土間スラブ130が設けられており、土間スラブ130の厚みをtで示している。
図2に示すように、第1連結部材11と第2連結部材12は、各キャピタル部6の設置面(上面)7に、配置の高さを上げるためのスペーサや、プレート、モルタル等を付加した台座部7Rを介して固定されている。第1連結部材11と第2連結部材12は、この台座部7Rを用いてキャピタル部6の設置面7から離して配置され、第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130の上面から隙間Tだけ離して配置されている。この杭間連結部10が隣接する杭2の杭頭部3のキャピタル部6同士を強固に連結して、隣接する杭2間の間隔を確実に保持できる。これにより、地震発生時には、杭頭部3が回転を生じてその曲げモーメントが、杭頭部3からキャピタル部6に伝達された場合には、キャピタル部6は、このキャピタル部6に連結されている杭間連結部10によって曲げ戻されるような逆方向の曲げモーメントを受けることになるので、この杭間連結部10の剛性によって各杭2の杭頭部3の回転を抑制するようになっている。
【0037】
杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12としては、共に好ましくはH鋼の鉄骨梁を採用しており、この鉄骨梁を採用することで、鉄筋コンクリート造等の他の形式の梁を採用するのに比べて軽量で、安価であり、生コンクリート
を用いない乾式であるので、取り扱いが容易であり、施工期間が短くできるので、コストダウンが図れる。なお、第1連結部材11と第2連結部材12の梁の高さは、例えば400mmであり、梁の幅は200mmであるが、これに限定されない。第1連結部材11と第2連結部材12の材質は、鉄骨造に限らず、鉄筋コンクリート造の梁、鉄骨鉄筋コンクリート造の梁、各種コンクリート造例えば高じん性コンクリート造、プレストレストコンクリート(PC)等であっても良い。
【0038】
図2に示すように、第1連結部材11と第2連結部材12は、例えばボルトを用いて、キャピタル部6の設置面7に対して固定され、
図3に示すように杭2を中心として第1連結部材11と第2連結部材12は、井桁状になっている。
図3に示す第1連結部材11と第2連結部材12の交差する交差部分Gは、例えばキャピタル部6の設置面7においては例えば互いに突き合わせて溶接することで固定されている。第1連結部材11と第2連結部材12の交差部分Gは、1つのキャピタル部6の四隅の位置にそれぞれ固定されている。
【0039】
図2において、土間スラブ130は地盤110を覆っているコンクリートである。
図2に示す杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130の上面112からZ方向(上方)に隙間Tだけ離した状態で保持されている。第1連結部材11と第2連結部材12は、キャピタル部6の設置面7上に台座部7Rを介在して固定されていることで、土間スラブ130の上面112から、隙間Tだけ離した状態で確実に保持されている。
【0040】
このため、
図2に示すように、第1連結部材11と第2連結部材12は、免震ピット120の地盤110には埋め込まれてはいないし、土間スラブ130には隙間Tがあり接していない。すなわち、第1連結部材11と第2連結部材12は、隣接する杭2の杭頭部3のキャピタル部6相互を連結している連結梁であるが、この第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130の上面112から離れた位置にある。従って、本発明の実施形態では、従来とは異なり、第1連結部材11と第2連結部材12が免震ピット120において、X方向とY方向に沿って格子状に配置されているのにも関わらず、地盤110に第1連結部材11と第2連結部材12を埋めるために地盤110を長い距離に渡って掘削する作業は不要である。
【0041】
また、第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130の上面112から離れた位置にあるので、杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12は、地震に
より地盤が振動してたとえ液状化等の地盤の変状があっても、地盤の変状の影響を受けない。さらに、第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130の上面112から離れた位置にあるので、杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12が湧水をせき止めてしまうことが無い。免震ピット120には水が溜まることが無いので、溜まった水が鉄部の発錆やあるいは衛生上の問題が生じない。なお、
図2と
図3に示す杭基礎構造体1では、第1連結部材11と第2連結部材12の下に隙間Tがあるので、湧水は図示しないが一段低いバース側に流すことができる。
【0042】
なお、
図2と
図3に示すように、第1連結部材11と第2連結部材12は、それぞれ2本ずつを組として、各キャピタル部6の設置面7に固定されている。しかしこれに限らず、第1連結部材11と第2連結部材12は、それぞれ1本ずつで構成しても良いし、それぞれ3本以上で構成しても良い。
【0043】
また、第1連結部材11と第2連結部材12は、隣接する杭2の杭頭部3相互を連結しているが、地盤改良を行わず従来のように多数の扁平つなぎ梁が地盤に隣接している構造に比べて、地盤の変状の影響を受けにくいので、
図2に示す免震装置5を点検する際に、点検作業者が、免震装置5の付近に接近して点検し易い。
【0044】
すでに説明したように、従来における杭頭免震構造の扁平つなぎ梁は、鉄筋コンクリート造のもので、扁平つなぎ梁の側面上部には、地盤が隣接しているので、地盤を長い距離に渡って深く掘削する作業が必要で、排土量が多くなり、施工期間が長く、工事においてコストダウンが図れない。従来の杭頭免震構造の多数の扁平つなぎ梁の側面上部には土間スラブが隣接しているので、地震発生時に地盤の変状の影響を直接受けてしまう。しかも、格子状の扁平つなぎ梁のレベルを上げて逆梁とすると、水をせき止めてしまう。また、順梁であると、梁の距離が長いので梁の中央の下がった部分に水が溜まってしまう。このため、従来では免震ピットには水が溜まり、溜まった水が鉄部の発錆や衛生上の問題が生じるおそれがある。
【0045】
ところで、上述した
図1から
図3に示す本発明の第1実施形態では、杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130の上面112からZ方向(上方)に隙間Tだけ離した状態で保持されている。しかしこれに限らず、杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130上にあっても良い。すなわち、杭間連結部10の第1連結部材11と第2連結部材12は、土間スラブ130に接していても良い。
【0046】
また、キャピタル部は、杭の周囲から張り出す形態だけでなく、杭の頂部に設けて張り出す形態でも良い。
【0047】
(第2実施形態)
図4(A)は、本発明の杭基礎構造体の第2実施形態を示す平面図である。
【0048】
図4(A)に示す杭基礎構造体1Aでは、キャピタル部6が、杭2の杭頭部3を中心にしてX方向とY方向に沿って張り出すようにして配置され、キャピタル部6の2つの対向する側面部8は、X方向に沿っており、キャピタル部6の残りの2つの対向する側面部9は、Y方向に沿っている。このことは、
図2と
図3に示す本発明の第1実施形態の杭基礎構造体1の場合と同じである。
図4(A)に示す杭基礎構造体1Aの要素が、
図2と
図3に示す杭基礎構造体1の要素と同様である場合には、同じ符号を記してその説明を省略する。
【0049】
図4(A)に示す杭基礎構造体1Aが、
図2と
図3に示す杭基礎構造体1と異なるのは
、杭間連結部10Aの第1連結部材11Aの端部と第2連結部材12Aの端部が、各キャピタル部6の設置面7に、直接固定されていることである。第1連結部材11Aと第2連結部材12Aが土間スラブから間隔をおいて離してあるか、あるいは土間スラブ上にある、すなわち土間スラブから離してあるか接していることは、第1実施形態の場合と同じである。
【0050】
これにより、
図3に示す各キャピタル部6の設置面7では交差部分Gを省略することができ、さらにコストダウンが図れる。杭間連結部10Aの第1連結部材11Aと第2連結部材12Aは、隣接する杭2間の間隔を確実に保持でき、地震により地盤が振動してたとえ液状化等の地盤の変状があったとしても、地盤の変状の影響を受けない。また、杭間連結部10Aの第1連結部材11Aと第2連結部材12Aは、鉄骨梁等を採用することで、鉄筋コンクリート造等の他の形式の梁を採用するのに比べて軽量で、安価であり、生コンクリート用いない乾式であることから、施工を早くすることができるので、コストダウンが図れる。杭間連結部10Aの第1連結部材11Aと第2連結部材12Aの本数は、1本でも良いし、3本以上であっても良い。
【0051】
(第3実施形態)
図4(B)は、本発明の杭基礎構造体の第3実施形態を示す平面図である。
【0052】
図4(B)に示す杭基礎構造体1Bが、
図2と
図3に示す杭基礎構造体1と異なるのは、次の点である。すなわち、キャピタル部6の2つの対向する側面部8Bと2つの対向する側面部9BがX方向とY方向に対して45度傾いて配置されている。しかも、杭間連結部10Bの第1連結部材11Bの端部と第2連結部材12Bの端部は、キャピタル部6の設置面7の4つの角部に固定されている。
【0053】
図4(B)の杭間連結部10Bの第1連結部材11Bと第2連結部材12Bは、土間スラブから間隔をおいて離してあるか、あるいは土間スラブ上にある、すなわち土間スラブから離してあるか接していることは、第1実施形態の場合と同じである。これにより、
図3に示す各キャピタル部6の設置面7では交差部分Gを省略することができ、よりコストダウンが図れる。杭間連結部10Bの第1連結部材11Bと第2連結部材12Bは、隣接する杭2間の間隔を確実に保持でき、地震により地盤が振動してたとえ液状化等の地盤の変状が生じたとしても、地盤の変状の影響を受けない。また、杭間連結部10Bの第1連結部材11Bと第2連結部材12Bは、鉄骨梁等を採用することで、鉄筋コンクリート造等の他の形式の梁を採用するのに比べて格安であり、施工を早くすることができるので、コストダウンが図れる。杭間連結部10Bの第1連結部材11Bと第2連結部材12Bの本数は、1本でも良いし、3本以上であっても良い。
【0054】
(第4実施形態)
図5は、本発明の杭基礎構造体の第4実施形態を示す断面図である。
【0055】
図5に示す杭基礎構造体1Cの要素が、
図2に示す杭基礎構造体1の要素と同様である場合には、同じ符号を記してその説明を省略する。
図5に示す杭基礎構造体1Cの構造が、
図2に示す杭基礎構造体1の構造に比較して異なるのは、次の点である。
【0056】
図5に示す杭基礎構造体1Cでは、
図2に示すキャピタル部6を杭2の杭頭部3付近に固定するのを省略して、杭間連結部10Cの第1連結部材11Cと第2連結部材12Cは、杭2の外周部2Gのガセットプレート2Pに対して、ボルトとナットを用いて直接固定されている。杭2は例えば場所打ち鋼管コンクリート杭である。このガゼットプレート2Pは、杭2の外周部2Gに予め固定されてない。
【0057】
この構造を採用することにより、杭2の杭頭部3に対してキャピタル部6を設置することを省略することができ、構造が簡単になり、コストダウンが図れる。隣接する複数の杭2の杭頭部3間に連結される杭間連結部10Cの第1連結部材11Cと第2連結部材12Cの本数は、1本でも良いし、
図6に示すように2本以上であっても良い。
【0058】
(第5実施形態)
図7は、本発明の杭基礎構造体の第5実施形態を示し、
図7(A)は、杭2の外周部2Gに、着脱可能な取付け板40が取り付けられている状態を示している。
図7(B)は、
図7(A)のF−F線から見た杭2の外周部2Gと着脱可能な取付け板40の平面図である。
【0059】
図7に示す取り付け板40は、溝部41を有しており、杭2の外周部2Gはこの溝部41にはめ込まれることで、取付け板40は杭2の外周部2Gに固定されている。取付け板40の内側部分43は、複数の長ナット42を有しており、長ナット42はX方向(あるいはY方向)に向いている。取付け板40の外側部分44は、杭間連結部10Cの第1連結部材11Cの端部あるいは第2連結部材12Cの端部に対して、ボルトナットにより連結されている。定着板45は、杭2の内部に固定されており、例えば長ネジボルト(あるいはネジ付き異径鉄筋)47の一端部側が、この定着板45に対して、ナット46を用いて取り付けられている。長ネジボルト(あるいはネジ付き異径鉄筋)47の他端部側は、長ナット42にねじ込まれることにより、定着板45と取付け板40は長ネジ47により、緊張状態で連結されている。この取付け板40と定着板45と長ナット42とナット46と長ネジ47は、面外変形防止部70を構成している。この面外変形防止部70は、杭間連結部10Cにおいて矢印方向に引っ張り力SSが加わった際に、鋼管杭である杭2の外周部2Gが面外に膨らむことを防止する機能を有する。
【0060】
これにより、杭間連結部10Cの第1連結部材11Cあるいは第2連結部材12Cは、杭2の外周部2Gに対して、取付け板40を用いて直接固定されている。そして、杭間連結部10Cの第1連結部材11Cあるいは第2連結部材12Cが外側に向けて引っ張り力SSを受けても、面外変形防止部70は、杭2の外周部2Gが外側に向けて面外に変形してしまうことを防止でき、杭2の杭頭部3の形状を維持するとともに、隣接する杭間距離を保持することができる。杭2の鋼管内には、コンクリートを追加して打設する。
【0061】
(第6実施形態)
図8は、本発明の杭基礎構造体の第6実施形態を示している。
【0062】
図8では、杭2の外周部2Gには、対向する位置に貫通孔50が設けられている。この貫通孔50には、テンションを掛けるための棒状体51が通してある。この棒状体51は例えば(PC)鋼棒であり、両端部にはネジ52が形成されている。棒状体51のネジ52は、杭2の貫通孔50を通じて外周部2Gの外側に出ており、杭間連結部10Cの第1連結部材11Cの孔あるいは第2連結部材12Cの孔には、棒状体51のネジ52が通っている。第1連結部材11Cあるいは第2連結部材12Cは、ナット55をネジ52に取り付けて締め付けることで、杭2の外周部2Gに対して直接固定されている。棒状体51とナット55は、面外変形防止部170を構成している。棒状体51には、アスファルトや樹脂等の絶縁材料のコーティングや、別途設けたスリーブ材の中に棒状体を通すことにより、後から打設するコンクリートと絶縁できる状態にする。杭2の鋼管内には、コンクリートを追加して打設してから、緊張力を与える。
【0063】
これにより、第1連結部材11Cあるいは第2連結部材12Cが、外側に向けて引っ張り力SSを受けても、面外変形防止部170は、棒状体51は、引っ張り力SSに抗して圧縮力RSを発揮することで、杭2の外周部2Gが外側に向けて面外に変形してしまうこ
とを防止でき、杭2の杭頭部の形状を維持するとともに、隣接する杭間距離を保持することができる。
【0064】
(第7実施形態)
図9と
図10は、本発明の杭基礎構造体の第7実施形態を示しており、
図9(A)は、杭基礎構造体1Dの平面図であり、
図9(B)は、
図9(A)に示す杭基礎構造体1Dの側面図である。
図10は、
図9(B)の杭基礎構造体1Dの部分Mを代表例として示している。
【0065】
図9では、杭基礎構造体1Dは、一例として上部の支持対象物を免震支持する免震構造体である。この支持対象物は、例えば建築物の一例である大規模な物流施設である。
図9に示す大規模な物流施設の基礎部100Dの1階の床101Dと1階のフーチング102Dは、杭基礎構造体1Dに対して、回転機構付きすべり支承の免震装置105を挟むことで、免震支持されている。
【0066】
図9に示すように、杭基礎構造体1Dの複数の杭2は、例えば場所打ち鋼管コンクリート杭であり、この杭2の杭頭部3には、キャピタル部106が設けられている。このキャピタル部106と、1階のフーチング102Dとの間には、回転機構付きすべり支承の免震装置105が設置されている。キャピタル部106は、杭頭部キャピタルあるいはパイルキャップ部とも言うことができる。
【0067】
図10に例示するように、回転機構付きすべり支承の免震装置105は、例えば、凹部材105Rと、この凹部材105Rにはめ込まれる凸部材105Sと、凹部材105Rと凸部材105S間のクリアランスを充填する発泡材105Tと、すべり受材105F等を有する。すべり受材105Fは、フーチング102Dの下面に固定されている。凹部材105Rと凸部材105Sと発泡材105Tは、すべり受材105Fに対してスライダーの役割を果たす。この回転機構付きすべり支承の免震装置105は、
図2に示す積層ゴム製の免震装置5に比べて、高さ寸法を小さくすることができ、安価である。
【0068】
図9(A)に示すように、キャピタル部106は、杭2の杭頭部3を中心にしてX方向とY方向に沿って張り出すようにして配置され、上から見て正方形状を有し、X方向の寸法とX方向と直交するY方向の寸法が同じである。キャピタル部106の2つの対向する側面部8Dは、X方向に沿っており、キャピタル部106の残りの2つの対向する側面部9Dは、Y方向に沿っている。キャピタル部106は、例えば鉄筋コンクリート造である。
【0069】
次に、
図9(B)と
図10を参照して、杭間連結部10Dについて説明する。
【0070】
図9の杭間連結部10Dは、隣接する杭2の杭頭部3のキャピタル部106間を連結することで、X方向とY方向に沿って格子状に配置されている。この杭間連結部
10Dは、X方向に平行に配置された複数の第1連結部材11Dと、Y方向に平行に配置された複数の第2連結部材12Dから構成されている。第1連結部材11Dと第2連結部材12Dとしては、隣接する複数の杭頭部3のキャピタル部106相互を連結する。第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、それぞれ2本ずつを組として、各キャピタル部106に固定されている。2本の第1連結部材11Dは剛性を上げるために連結補助材で相互に連結され、2本の第2連結部材12Dは剛性を上げるために連結補助材で相互に連結されている。
【0071】
図9(A)に例示するように、第1連結部材11Dの一部分11Mと第2連結部材12Dの一部分12Mを、キャピタル部106に対して予め一体的に形成して、井桁状のユニ
ット200を形成して準備しておくことができる。
図10に示すように、第1連結部材11Dの一部分11Mと第2連結部材12Dの一部分12Mは、
免震装置105に対して、つなぎ鉄筋150を用いて固定されている。この井桁状のユニット200を予め用意しておき、免震工事の現場において、井桁状のユニット200は、杭2の杭頭部3に対して設置することができる。井桁状のユニット200は、X方向とY方向にそれぞれ幅の余裕がある。杭心が建物の柱心に対して偏心している場合には、井桁状のユニット200の範囲内では、免震装置の設置位置を調整することができる。
【0072】
第1連結部材11Dの一部分11Mには第1連結部材11Dの端部を連結し、第2連結部材12Dの一部分12Mには第2連結部材12Dの端部を連結することで、格子状の第1連結部材11Dと第2連結部材12Dが、隣接する複数の杭2の杭頭部3のキャピタル部106相互を連結できる。
【0073】
このように、杭間連結部10Dが隣接する杭2の杭頭部3のキャピタル部106同士を連結しているので、隣接する杭2間の間隔は確実に保持できる。これにより、地震発生時には、杭2の杭頭部3が回転を生じてその曲げモーメントが、杭頭部3からキャピタル部106に伝達された場合に、キャピタル部106は、このキャピタル部106に連結されている杭間連結部10Dによって曲げ戻されるような逆方向の曲げモーメントを受けることになるので、この杭間連結部10Dの剛性によって各杭2の杭頭部3の回転を抑制する。第1連結部材11Dと第2連結部材12Dとしては、共に好ましくはH鋼の鉄骨梁を採用しており、この鉄骨梁を採用することで、他の種類の材質を採用するのに比べて、施工時間が短くでき、施工が容易であるので、コストダウンが図れる。
【0074】
図9(B)と
図10に示すように、杭間連結部10Dの第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、土間スラブ110Dの上面112Dから間隔をおいて離しているかあるいは土間スラブ110Dの上面112D上にあり、すなわち土間スラブ110Dの上面112DからZ方向(上方)に離したあるいは接した状態で保持されている。このため、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、免震ピット120Dの地盤110には埋め込まれてはいない状態になっている。すなわち、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは隣接する杭頭部3のキャピタル部106相互を連結している連結梁である。
【0075】
杭2の上方には、杭間連結部10Dの一部を埋設したコンクリートからなる杭頭部3を有している。すなわち、杭間連結部10Dは、打設した場所打ちコンクリートと一体化されている。これにより、杭間連結部10Dをコンクリートに埋設するので、施工が容易であり、工期短縮と工事費抑制が図れる。
【0076】
このため、従来とは異なり、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dが免震ピット120Dにおいて、X方向とY方向に沿って格子状に配置されているのにも関わらず、地盤110には、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dを埋めるために、地盤110を長い距離に渡って掘削する作業は不要である。
【0077】
図10に示す例では、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは免震ピット120Dの土間スラブ110Dの上面112Dから土間スラブから離してまたは土間スラブ上に位置され、すなわち土間スラブから離れた位置にあるかあるいは接しているので、杭間連結部10Dの第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、隣接する杭2の間隔を確実に保持でき、地震により地盤が振動してたとえ液状化等の地盤の変状があっても、地盤の変状の影響を受けない。また、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは免震ピット120Dの土間スラブ110Dの上面112Dから土間スラブから離してまたは土間スラブ上に位置され、すなわち土間スラブから離れた位置にあるかあるいは接しているので、杭間連結部10Dの第1連結部材11Dと第2連結部材12Dが水をせき止めてしまうことが無
いので、免震ピット120Dには水が溜まることが無く、溜まった水が杭2等に発錆等の悪影響を与えるおそれが無くなるとともに、衛生上の問題が生じない。
【0078】
なお、
図10に例示するように、杭基礎構造体1Dを構築する場合には、例えば現場打ち杭2Wを打設した後、現場打ち杭2Wの上には、井桁状のユニット200を含むコンクリートユニット2Vを一体になるようにコンクリートを打設する。
図2と
図3に示すように、杭間連結部10Dの第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、それぞれ2本ずつを組にしている。しかしこれに限らず、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、それぞれ1本ずつで構成しても良いし、それぞれ3本以上で構成しても良い。
【0079】
また、第1連結部材11Dと第2連結部材12Dは、隣接する杭2の杭頭部3相互を連結しているが、地盤改良を行わない場合、従来のように多数の扁平つなぎ梁が地盤の凹部に一体化されている構造に比べて、
図2に示す免震装置105を点検する際に、地盤の変状の影響を受けにくいので、点検作業者が、免震装置105の付近に接近して点検し易い。
【0080】
上述した本発明の実施形態の杭基礎構造体は、杭の杭頭部に、上部の支持対象物を支持する杭基礎構造体であって、隣接する杭の杭頭部を連結する杭間連結部を備え、杭間連結部は、土間スラブから離してまたは土間スラブ上に保持されている。
【0081】
これにより、杭基礎構造体では、杭間連結部は、土間スラブから離してまたは土間スラブ上に保持されている。すなわち、杭間連結部は、土間スラブから離したまたは土間スラブに接した状態で保持されている。杭基礎構造体では、杭間の間隔を確実に保持でき、地震発生時に生じる地盤の変状の影響を受けにくく、工期短縮と工事費抑制を図ることができる。すなわち、隣接する杭の杭頭部を連結する杭間連結部は、杭間の間隔を確実に保持できる。杭間連結部は、土間スラブから離してまたは土間スラブ上に、すなわち土間スラブから離したまたは土間スラブに接した状態で保持されていることにより、地震発生時に生じる地盤の変状の影響を受けない。
【0082】
しかも、従来では扁平つなぎ梁の側面上部には土間スラブが隣接しているので、地盤を長い距離に渡って深く掘削する作業の必要があった。しかし、本発明の実施形態の杭間連結部は、土間スラブから離してまたは土間スラブ上に保持されていることにより、このような地盤の掘削作業が無いので、施工が容易であり、工期短縮と工事費抑制を図ることができる。本発明の実施形態では、従来用いられた扁平つなぎ梁が不要であるので、扁平つなぎにより水がせき止められて水が溜まってしまうことが無く、水が基礎部分の鉄部に発錆等の悪影響を与えないとともに、衛生上の問題が生じない。
【0083】
本発明の杭基礎構造体では、支持対象物は、好ましくは杭の杭頭部に設置された免震装置により免震支持される構造を採用することにより、地震発生時に生じる地盤の変状の影響を受けにくく、支持対象物の免震工事のコストダウンを図ることができる。
【0084】
また、杭基礎構造体では、杭の杭頭部には、好ましくはキャピタル部が固定されており、キャピタル部は地盤の凹部に配置され、杭間連結部は、各キャピタル部の上に固定されていることで、隣接する杭の杭頭部を連結している。これにより、杭の杭頭部にはキャピタル部が固定され、このキャピタル部を配置するために地盤の凹部を掘削する作業は必要となる。しかし、従来において扁平つなぎ梁の側面上部には土間スラブが一体化されているので地盤を長い距離に渡って深く掘削する作業が必要であるのに比べて、本発明の実施形態では、地盤を掘削する作業が少なくて済むので、工期の短縮が図れ、工事が容易になり、工事のコストダウンを図ることができる。
【0085】
杭基礎構造体は、好ましくは、杭は鋼管杭であり、杭間連結部の端部が各杭の杭頭部の外周部に対して直接固定されている。これにより、場所打ち鋼管コンクリート杭の杭頭部に対してキャピタル部を固定せずに、杭間連結部の端部は、杭の杭頭部の外周部に対して直接固定する。このため、キャピタル部を配置するために地盤を掘削する作業が不要となることから、さらに工事のコストダウンを図ることができる。
【0086】
杭基礎構造体では、杭は鋼管を有し、前記杭間連結部に引っ張り力が加わった際に前記鋼管の前記外周部が外側に面外変形を防止する面外変形防止部を有する。これにより、杭間連結部に引っ張り力が加わっても、鋼管の外周部が外側に膨らんでしまうのを防止できることから、鋼管の形状を維持できるとともに、隣接する杭間の距離を保持できる。
【0087】
杭基礎構造体では、好ましくは杭間連結部が鉄骨であるので、鉄筋コンクリート梁や鉄骨鉄筋コンクリート梁を用いるのに比べて、施工時の取り扱いが容易で工期が短くでき、コストダウンを図ることができる。
【0088】
本発明の実施形態の杭基礎構造体を用いることで、液状化防止のための地盤改良を無くすことができ、例えば免震装置の直下の杭の杭頭部同士をつなぐための地中にある鉄筋コンクリート造の扁平つなぎ梁を無くすことができるので、工期短縮が図れ、コストダウンができる。
【0089】
杭のキャピタル部は、プレキャスト化しても良く、キャピタル部をまたぐ長い鉄骨梁をキャピタル部に対して固定しても、キャピタル部間をつなぐ短い鉄骨梁をキャピタル部に対して連結して固定しても良い。
【0090】
本発明の実施形態の杭基礎構造体において免震装置を備える免震構造体とする場合には、この免震構造体は、建築物を支える基礎の全部の杭に対して適用しても、あるいは基礎の杭の内の選択された一部の杭のみに対して適用しても良い。
【0091】
杭間連結部を構成している鉄骨梁は、すでに説明したように土間スラブから離して(浮かせて)あるいは接しているので、水の移動を妨げないので、水が建築物の基礎にたまることが無いため、鉄部の発錆や衛生上の問題が生じない。仮に地震により地盤に液状化が発生したとしても、杭間連結部を構成している鉄骨梁は概ね健全であるので、免震装置等の点検等が行え、杭を含む杭基礎構造体および上部構造主フレームの健全性を担保できる。
【0092】
本発明の実施形態の杭基礎構造体では、免震装置が設置されていない場合であっても、設置されている場合であっても適用できる。建築物の基礎を杭頭部に対して固定した形式、建築物の基礎を杭頭部に対して半固定状態にした形式、あるいは建築物の基礎を杭頭部に対してピンで連結した形式が、建築物の基礎において混在させることが可能である。このため、建築物の新築あるいは既設の建築物の改良の際に、これらの3つの杭頭部の固定形式を適宜変更することができ、固定度の調整をした基礎の設計が、支持対象物の状況に応じて可能である。
【0093】
杭の例として、鋼管杭を挙げているが、これに限らず、現場打ちコンクリート杭、場所打ち鋼管コンクリート杭、鉄管杭、既製杭等を採用することもできる。
【0094】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の各実施形態は一例であり、本発明の特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【0095】
図示した本発明の各実施形態の杭基礎構造体は、杭の杭頭部と上部の支持対象物の基礎部との間に、免震装置を設置している免震構造体である。しかし、本発明の杭基礎構造体は、この免震構造体に限らず、免震装置を設置せずに、杭の杭頭部と上部の支持対象物の基礎部とを直接固定する構造であっても良い。
【0096】
また、例えば
図3に示す本発明の第1実施形態の杭基礎構造体1では、第1連結部材11の一部分と第2連結部材12の一部分と井桁状の交差部分Gは、キャピタル部6の上に予め固定しておき、井桁状の交差部分Gとキャピタル部6をユニット化して準備しておくことができる。これにより、杭2の杭頭部3のキャピタル部6の井桁状の交差部分Gに対しては、施工現場において、第1連結部材11の端部と第2連結部材12の端部を、ボルトナット等で連結することで、さらに簡単に施工することができ、施工期間が短く、工事のコストダウンが図れる。
【0097】
本発明の実施形態の杭基礎構造体を採用することで、扁平つなぎ梁の打設が不要であるのでコンクリート打設量を減らすことができ、扁平つなぎ梁が不要であるので地盤の掘削量を減らすことができるので、工事費の抑制が可能になり、工期短縮が図れるので、コストダウンが図れる。
【0098】
本発明の実施形態の杭基礎構造体が適用される支持対象物である建築物として、大規模な物流施設を一例に説明したが、この大規模な物流施設は、例えば軟弱地盤上に構築された、例えば2層以上の高層物流センター等の高層物であり、高さや規模は限定されない。しかし、これに限らず、本発明の実施形態の杭基礎構造体が適用される支持対象物としては、大規模な物流施設の他に例えば工場、事務所ビル、住宅等であっても良い。支持対象物としては、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の任意のものから選択できる。本発明の実施形態の杭基礎構造体は、新築の支持対象物の場合に限らず、既存の支持対象物の場合であっても適用することができる。鋼管杭は、その中が、中空またはコンクリートが打設さえた物を含み、更に出来上がった杭に鋼管を付加した物を含む。