【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3に開示されている角形二次電池の発明によれば、電流遮断機構を備えているので安全性が高く、しかも、製造時に非水電解液や洗浄液等が電流遮断機構内に侵入し難いので、信頼性の高い接続端子を備えた角形非水電解質二次電池が得られるという優れた効果を奏する。
【0010】
しかしながら、振動・落下等により電池に衝撃が加わった場合、電極体が移動すること等により電流遮断機構74に衝撃が加わり、集電体73と反転板77との間の接続部が破断したり、クラックが生じたりする可能性がある。また、タブ部材78の筒状部の下端側に形成されたフランジ部78aと反転板77の溶接部が破断したり、クラックが生じたりする可能性がある。このように、電流遮断機構74を構成する各部が破損した場合、集電体73と接続端子72の間の導電経路が切断、あるいは電流遮断機構74が正常に作動しなくなる虞がある。例えば、反転板77とフランジ部78aとの間の溶接部に破断部やクラックが存在すると、電極体近傍で発生したガスが、破断部やクラックを通じてタブ部材78の筒状部の内部空間に侵入し、外装体内の圧力が上昇しても反転板77が封口体71側に変形せず、電流遮断機構74が正常に作動しなくなる虞がある。
【0011】
発明者等は、このような角形二次電池の電流遮断機構の破損を防止する構成について種々確認実験を行った結果、第2絶縁部材81にタブ部材78の筒状部の下端側に形成されているフランジ部78aに外周側から引っ掛け固定するための固定爪部を複数箇所に形成することにより、第2絶縁部材81とタブ部材78との間を強固に結合することができ、上記の問題点を解決し得ることを見出した。
【0012】
加えて、発明者らは、単に第2絶縁部材81形成された複数の固定爪部によってタブ部材78の筒状部の下端側に形成されているフランジ部78aに第2絶縁部材81を固定するのみでは、別途新たな問題点が生じることも見出した。すなわち、第2絶縁部材81は、固定爪部をタブ部材78のフランジ部78aに引っ掛け固定できるようにするために、絶縁性を有する変形可能な部材で形成されている必要があるので、通常は樹脂材料で形成される。そして、樹脂材料からなる第2絶縁部材81に固定爪部を形成する際には、その製造方法からして、固定爪部の根元の第2絶縁部材81の本体部に貫通孔が形成される。
【0013】
一方、電池内圧が上昇して、電流遮断機構74が作動し、反転板77が変形して反転板77と集電体73との間の電気的接続が切断した直後、第2絶縁部材81の固定爪部の根元に形成された貫通孔内に非水電解液が存在した状態で逆起電流が発生した場合、貫通孔内でスパークが生じ、その熱により第2絶縁部材81の固定爪部の根元に形成された貫通孔の周りの第2絶縁部材81が溶融・炭化することがある。この炭化した部分が導電性を有した場合、集電体73と集電タブ78ないし反転板77とが再導通する可能性があり、本来の機能が損なわれる可能性がある。
【0014】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、集電体と外部端子との間に電流遮断機構を備えた角形二次電池において、振動・落下等により電池に衝撃が加わっても電流遮断機構が破損し難く、信頼性の高い角形二次電池を提供することを目的とする。また、本発明は、電流遮断機構が動作した後に電流遮断機構が再導通する虞が抑制された角形二次電池を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の角形二次電池は、
開口を有する有底筒状の角形外装体と、
前記角形外装体内に収容された、正極極板及び負極極板を有する電極体と、
前記正極極板に電気的に接続された正極集電体と、
前記負極極板に電気的に接続された負極集電体と、
前記外装体の開口を封止する封口体と、
前記封口体に設けられた貫通孔に第1絶縁部材を介して前記封口体と電気的に絶縁された状態で挿通された少なくとも1つの外部端子と、
筒状部を有する導電部材と、
電池内部の圧力が予め定めた所定値よりも大きくなると変形する導電性材料からなる反転板と、
前記反転板と前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方との間に介在された第1の貫通孔が形成された第2絶縁部材と、
を具え、
前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方が前記第2絶縁部材に形成された第1の貫通孔を介して前記反転板に接続されており、
前記導電部材の筒状部は、一方の端部が前記外部端子に電気的に接続され、他方の端部が前記反転板によって封止されている角形二次電池において、
前記第2絶縁部材は、前記第2絶縁部材の本体部に対して垂直な方向に伸びる第1領域と、前記第1領域に形成され、前記第2絶縁部材の本体部に対して平行な方向に伸びる第2領域とを有する固定爪部を複数備え、前記複数の固定爪部が前記導電部材の外面側に形成された固定部に引っ掛け固定されて
おり、
前記反転板は前記導電部材に溶接接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の角形二次電池においては、筒状部を有する導電部材と、反転板と、第2の絶縁部材と、正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方とにより、安全手段としての圧力感応式電流遮断機構を形成している。すなわち、外装体内部の圧力が増大すると、反転板が変形するので、集電体と反転板との間の接続部あるいは集電体に設けた薄肉部や溝部等の脆弱部が破断するため、集電体と反転板との間の電気的接続が遮断され、角形二次電池と外部回路との間には電流が流れなくなる。これにより、信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0017】
しかも、本発明の角形二次電池においては、第2絶縁部材と導電部材とが固定されているため、たとえ電池に振動・落下等により衝撃が加わって電極体が移動しても、正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方と反転板との間の接続部にストレスが掛かり難くなっており、正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方と反転板との間の接続部等の破損が抑制される。これにより、振動・落下等により角形二次電池に衝撃が加わっても、電流遮断機構が破損し難い、信頼性の高い角形二次電池が得られる。
【0018】
なお、本発明の角形二次電池は、非水電解質二次電池に対しても、ニッケル−水素二次電池等のアルカリ二次電池に対しても適用可能である。さらに、電極体として正極極板と負極極板をセパレータを介して互いに絶縁した状態で偏平状に巻回した電極体や積層した電極体に対しても適用可能である。また、本発明は、正極側及び負極側の何れか一方に対して適用すれば所定の作用効果が奏されるが、両方側に対して適用してもよい。
【0019】
また、本発明の角形二次電池においては、前記導電部材の筒状部の外面側に形成された固定部は、フランジ部又は凹部であることが好ましい。
【0020】
このような構成を備えていると、導電部材の筒状部の外面側にフランジ部又は凹部を形成することは容易であるので、上記の本発明の効果を奏することができる角形二次電池を容易に製造することができるようになる。
【0021】
なお、本発明において、導電部材に設ける固定部の位置は、導電部材の外面側であれば特に限定されない。例えば、導電部材の筒状部上端を固定部とすることも考えられる。但し、フランジ部や凹部等の固定部は、導電部材の筒状部の外面側に設けることが好ましい。更に、フランジ部や凹部等の固定部は、導電部材の筒状部の他方の端部の外面側に、即ち、導電部材の筒状部の反転板が接続される側の端部の外側面に形成されることがより好ましい。
【0022】
また、本発明の角形二次電池においては、前記第2絶縁部材は、さらに前記第1絶縁部材との結合部を備えていることが好ましい。
【0023】
このような構成を備えていると、第2絶縁部材は、導電部材とだけでなく、第1絶縁部材とも固定されているので、上記の本発明の効果がより良好に奏されるようになる。
【0024】
また、本発明の角形二次電池においては、前記第2絶縁部材は樹脂材料製であり、前記第2絶縁部材の本体部には、前記第1領域の根元であって、前記第2領域の延在方向側には第2の貫通孔が形成されており、前記第2の貫通孔は絶縁部材によって塞がれていることが好ましい。
【0025】
第2絶縁部材は、固定爪部を導電部材に引っ掛け固定できるようにするために、絶縁性を有する変形可能な部材で形成されている必要があるので、樹脂材料で形成されている。そして、樹脂材料からなる第2絶縁部材に固定爪部を形成する際には、通常は液状の樹脂材料を型内に注入して固化させることにより、或いは、樹脂材料製の板をプレス成形すること等により形成されるが、注入型ないしプレス型等の特性上、固定爪部の根元の第2絶縁部材の本体部に別途貫通孔(第2の貫通孔)が形成される。本発明の角形二次電池では、この第2の貫通孔が絶縁部材で塞がれているので、電流遮断機構が作動した直後に、第2の貫通孔内でスパークが生じることがなく、第2の貫通孔の周りの第2絶縁部材が溶融・炭化することがなくなる。そのため、かかる構成を備える角形二次電池によれば、電流遮断機構が動作した後に、集電体と導電部材の筒状部ないし反転板とが再導通することが抑制され、信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0026】
また、本発明の角形二次電池においては、前記第2絶縁部材は樹脂材料製であり、前記第2絶縁部材の本体部には、前記第1領域の根元であって、前記第2領域の延在方向側に第2の貫通孔が形成されており、前記反転板に接続された前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方において前記第2の貫通孔と対向する領域には、絶縁層が形成されていることが好ましい。
【0027】
反転板に接続された集電体において第2の貫通孔と対向する領域に絶縁層が形成されていると、電流遮断機構が作動した直後に、第2の貫通孔内でスパークが生じ難くなり、第2の貫通孔の周りの第2絶縁部材が溶融・炭化することを抑制できる。したがって、かかる構成を備える角形二次電池であれば、電流遮断機構が作動した後に、集電体と導電部材の筒状部ないし反転板とが再導通することが抑制され、信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0028】
また、本発明の角形二次電池においては、前記第2絶縁部材は樹脂材料製であり、前記第2絶縁部材の本体部には、前記第1領域の根元であって、前記第2領域の延在方向側に第2の貫通孔が形成されており、前記反転板に接続された前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方において前記第2の貫通孔と対向する領域には、凹部又は貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0029】
反転板に接続された集電体において第2の貫通孔と対向する領域に、凹部又は貫通孔が形成されていると、電流遮断機構が作動した直後に、第2の貫通孔内でスパークが生じ難くなり、第2の貫通孔の周りの第2絶縁部材が溶融・炭化することを抑制できる。したがって、かかる構成を備える角形二次電池であれば、電流遮断機構が作動した後に、集電体と導電部材の筒状部ないし反転板とが再導通することが抑制され、信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0030】
また、本発明の角形二次電池においては、前記第2絶縁部材は樹脂材料製であり、前記第2絶縁部材の本体部には、前記第1領域の根元であって、前記第2領域の延在方向側に第2の貫通孔が形成されており、前記反転板に接続された前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方は、前記第2の貫通孔と対向する領域の近傍で前記第2絶縁部材から離れる方向に折り曲げられていることが好ましい。
【0031】
反転板に接続された集電体が、前記第2の貫通孔と対向する領域の近傍で前記第2絶縁部材から離れる方向に折り曲げられていると、前記第2の貫通孔と集電体との距離を長くすることができ、電流遮断機構が作動した直後に、第2の貫通孔内でスパークが生じ難くなり、第2の貫通孔の周りの第2絶縁部材が溶融・炭化することを抑制できる。したがって、かかる構成を備える角形二次電池であれば、電流遮断機構が作動した後に、集電体と導電部材の筒状部ないし反転板とが再導通することが抑制され、信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0032】
また、本発明の角形二次電池においては、前記第2絶縁部材は樹脂材料製であり、前記第2絶縁部材の本体部には、前記第1領域の根元であって、前記第2領域の延在方向側に第2の貫通孔が形成されており、前記反転板に接続された前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方は、前記第2の貫通孔と対向する領域に存在しないことが好ましい。
【0033】
反転板に接続された集電体が、前記第2の貫通孔と対向する領域に存在しないことにより、スパークが生じることを抑制でき、第2の貫通孔の周りの第2絶縁部材が溶融・炭化することを抑制できる。
【0034】
また、本発明の角形二次電池においては、前記
正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方の前記第2絶縁部材と対向する部分には少なくとも一つの開孔又は切り欠きが形成され、前記第2絶縁部材の前記
正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方に形成された少なくとも一つの開孔又は切り欠きに対向する部分には頂部に他の部分よりも径が大きい拡径部が形成されており、前記
正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方に形成された少なくとも一つの開孔又は切り欠きは前記第2絶縁
部材に形成された突起と係合されていることが好ましい。
【0035】
このような構成とすると、一度両者を一体化した後は、拡径部が抜け止めとして機能するので、両者が容易に離間しないようになる。これにより、電池に振動・落下等により衝撃が加わっても、より電流遮断機構が破損し難い、信頼性の高い角形二次電池が得られる。なお、突起の頂部の拡径部は、例えば単に突起を対応する正極集電体ないし負極集電体に形成されている開孔に挿入した後に突起の先端部を加熱ないし押圧して拡径することにより形成できる。また、突起の頂部の拡径部として、爪部等の係合部を設け、この係合部を開孔に挿入することにより、両者を強固に互いに一体することができる。
【0036】
なお、少なくとも1つの開孔又は切り欠きは、角形二次電池の短辺の幅が広い時は開孔とし、短辺の幅が狭い時は切り欠きとすればよく、何れの場合であっても正極集電体ないし負極集電体と第2絶縁部材との間の結合強度を強くできるようになる。また、切り欠きを採用する場合には、この切り欠きの中心は必ずしも正極集電体ないし負極集電体内に存在しなくてもよい。
【0037】
また、本発明の角形二次電池においては、前記
正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方は一枚の板材を折り曲げることにより形成されたものであることが好ましい。
【0038】
このような構成によると、集電体の形成が容易であり、かつ集電体の強度が高くなるので、強固な角形二次電池が得られる。
【0039】
また、本発明の角形二次電池においては、前記
正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方は剛性を有する導電性材料で形成されていることが好ましい。
【0040】
集電体が剛性を有する導電性材料で形成されていると、振動・落下等により電池に衝撃が加わっても、電極体が外装体内で移動することを抑制できるため好ましい。なお、剛性を有する導電性材料としては、厚さ0.3mm以上の金属材料が好ましく、厚さ0.5mm以上の金属材料がより好ましい。
【0041】
また、本発明の角形二次電池においては、前記正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方の前記反転板との接続部の周囲には、薄肉部及び溝の少なくとも一方が形成されているものとすることが好ましい。
【0042】
正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方の前記反転板との接続部の周囲に、薄肉部や溝等の脆弱部が形成されていれば、反転板が変形した際にこの脆弱部が容易に破断するので、電流遮断機構の動作の信頼性が向上する。また、この脆弱部の厚さや形成領域を適宜設定することにより、電流遮断機構の作動圧を所定値に設定することができるようになる。なお、正極集電体及び負極集電体の少なくとも一方の反転板との接続部の周囲に厚さの薄い薄肉部を設け、この薄肉部に接続部を囲むように環状の溝部を設けることがより好ましい。
【0043】
また、本発明の角形二次電池においては、前記外部端子には電池外部と前記導電部材の筒状部の内面側の空間との間を連通する貫通孔が形成されており、前記外部端子の前記貫通孔は封止部材によって封止されていることが好ましい。
【0044】
外部端子に形成されている貫通孔は組立途中で電流遮断機構のリーク検査を実施するためのものであるが、電解液の注液時や洗浄時に電解液や洗浄水が外部端子の貫通孔内に侵入してしまうことがある。貫通孔内に電解液や洗浄水が侵入すると、電流遮断機構が腐食されてしまうために電流遮断機構が正常に作動しなくなる可能性がある。本発明の角形二次電池によれば、貫通孔は封止部材によって封止されており、しかも、貫通孔と電流遮断機構との間の空間は密閉空間とされているため、貫通孔内に電解液や洗浄水が侵入することがなくなるので、電流遮断機構が腐食されて電流遮断機構が正常に作動しなくなることがなくなり、高信頼性の角形二次電池が得られる。なお、封止部材としては、弾性部材からなる封止栓を用いることができる。また、封止部材として金属部材を用い、金属部材を貫通孔に嵌合し、この嵌合部にレーザー等の高エネルギー線を照射し溶接することにより、貫通孔を封止することもできる。また、樹脂製の封止部材や、弾性部材及び金属部材からなる封止部材を用いることもできる。
【0045】
また、本発明の角形二次電池においては、前記電極体は、偏平形電極体であり、一方側の端部に複数枚積層された正極芯体露出部を有し、他方側の端部に複数枚積層された負極芯体露出部を有し、前記正極芯体露出部は前記角形外装体の一方側の側壁に対向し、前記負極芯体露出部は前記角形外装体の他方側の側壁に対向するように配置され、前記正極集電体は前記正極芯体露出部に接続され、前記負極集電体は前記負極芯体露出部に接続されているものとすることができる。
【0046】
角形外装体の両側端側にそれぞれ正極芯体露出部及び負極芯体露出部が配置されていると、正極集電体と負極集電体との間の距離を大きくすることができるので容量が大きい角形二次電池とすることができ、また角形二次電池の組立が容易となる。加えて、本発明の角形二次電池では、複数枚積層された芯体露出部に集電体を接続しているので、出力特性に優れた電池となる。