特許第6030895号(P6030895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030895
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】潤滑システム
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/16 20060101AFI20161114BHJP
   F01M 1/02 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   F01M1/16 A
   F01M1/02 E
   F01M1/16 E
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-202286(P2012-202286)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2013-68218(P2013-68218A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】10 2011 083 278.5
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティャン リヒター
(72)【発明者】
【氏名】マルク テプラー
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−089035(JP,A)
【文献】 特開平10−187246(JP,A)
【文献】 米国特許第03266426(US,A)
【文献】 特表2007−510082(JP,A)
【文献】 特開2010−164056(JP,A)
【文献】 特開2005−133716(JP,A)
【文献】 特開2005−042675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/16
F01M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油の流れを圧送するためのポンプ(2)と、
潤滑油タンク(3)と、
潤滑されるべき構成要素(4)と、
上記潤滑油の流れの量を制限するために、上記ポンプ(2)と上記潤滑されるべき構成要素(4)との間で且つ上記ポンプ(2)の下流に置かれる隔膜(5)と、
上記隔膜(5)の上流に広がっている潤滑油圧力に応じて開閉し、それによって上記隔膜(5)の前に広がっている潤滑油圧力を調整する調整弁(6)と、
を備え
上記調整弁(6)は、入力側で上記ポンプ(2)の出力側に接続されるとともに、出力側で上記潤滑油タンク(3)を介さず上記ポンプ(2)の入力側に直接的に接続されていることを特徴とする潤滑システム。
【請求項2】
潤滑油の流れを圧送するためのポンプ(2)と、
潤滑油タンク(3)と、
潤滑されるべき構成要素(4)と、
上記潤滑油の流れの量を制限するために、上記ポンプ(2)と上記潤滑されるべき構成要素(4)との間で且つ上記ポンプ(2)の下流に置かれる隔膜(5)と、
上記隔膜(5)の上流に広がっている潤滑油圧力に応じて開閉し、それによって上記隔膜(5)の前に広がっている潤滑油圧力を調整する調整弁(6)と、
を備え、
上記調整弁(6)は、閉じた調整弁(6)の場合には、第1入力側で上記ポンプ(2)の出力側に接続され、第2入力側で上記ポンプ(2)の調整室(10)に接続されるとともに、出力側で上記潤滑油タンク(3)に接続されていて、これにより、上記調整室(10)を空にでき、及び/又は
上記調整弁(6)は、少なくとも部分的に開いた調整弁(6)の場合には、入力側で上記ポンプ(2)の出力側に接続されるとともに、出力側で上記ポンプ(2)の調整室(10)に接続され、それによって上記ポンプ(2)の圧送量が調整されることを特徴とする潤滑システム。
【請求項3】
請求項1〜のいずれか1つに記載の潤滑システムにおいて、
上記ポンプ(2)は、ベーンポンプとして又は振り子スライダーポンプとして構成されていることを特徴とする潤滑システム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1つに記載の潤滑システムにおいて、
上記隔膜(5)は、潤滑油の一定量の通過を可能にすることを特徴とする潤滑システム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1つに記載の潤滑システムにおいて、
上記隔膜(5)は、通過させる量に関して調整可能であることを特徴とする潤滑システム。
【請求項6】
請求項記載の潤滑システムにおいて、
上記調整弁(6)は、バネで力を加えられ、それによってその閉方向に圧縮力が加えられる弁スライダ(8)を有していることを特徴とする潤滑システム。
【請求項7】
請求項記載の潤滑システムにおいて、
上記弁スライダ(8)は、一方では上記隔膜(5)の上流で、また、他方では上記隔膜(5)の下流で、上記潤滑システム(1)に組み込まれていることを特徴とする潤滑システム。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1つに記載の潤滑システム(1)を備える、内燃機関または歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油の流れを圧送するためのポンプを備える潤滑システムに関するものである。本発明はまた、かかる潤滑システムを備える、内燃機関または歯車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潤滑システムは、今日ではあらゆる自動車で用いられているとともに、例えば内燃機関または歯車装置といった潤滑されるべき構成要素に、潤滑油を供給するのに役立っている。ここで、最適な潤滑効果を得ることができるようにするためには、一方では連続的な注油がとても重要であり、のみならず他方では要求に応じた注油がとても重要である。仮に、例えば高過ぎる圧力で潤滑油の流れが潤滑システムに送り出されると、潤滑効果が犠牲になる。このため、例えばベーンポンプ又は振り子スライダーポンプといった制御可能な潤滑油ポンプがしばしば用いられる。しかしながら、制御可能な潤滑油ポンプの制御は、別個の圧力センサー及び制御装置によって、それ故に比較的面倒且つ費用のかかる態様で、しばしば行われる。
【0003】
特許文献1から、体積流量調整式一工程ベーンポンプが知られており、かかるベーンポンプでは、カムリングとハウジングの側壁との間の絞り間隙断面によって、カムリングの両側の調整室において圧力の増加が発生する。これによって、反応が早い調整および重大でない振動を伴う、構造的に簡単なポンプ構造が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ出願公開DE102005050216A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、構造的に簡単且つ好ましい価格で体積流量調節が行われる、潤滑システムのための改善された実施形態を提供するという課題に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、潤滑油の流れを圧送するためのポンプと、潤滑油タンクと、少なくとも1つの潤滑構成要素とを備え、隔膜が制限された体積流量(すなわち潤滑油の流れ)だけを通過させることを可能にするとともに、ポンプによって圧送された体積流量がこれを超えて上昇した場合には、隔膜の上流に広がっている潤滑油圧力に応じて調整弁が駆動され、これにより、隔膜の前に広がっている潤滑油圧力が自動的に調整される、潤滑システムを提供するという概念に基づいている。ここで、潤滑されるべき構成要素は、特に内燃機関または歯車装置とすることができ、そこにおいて、通常、潤滑システムを流体システムとして指定することができる。例えばサーボ補助装置付きの舵取り装置の分野においても、潤滑システムを流体システムとして指定することができ、この場合には、潤滑油は油圧油に置き換えられる。隔膜は、ポンプと潤滑されるべき構成要素との間で且つ同時にポンプの下流に設けられるとともに、例えば30l/minといった正確に予め定められた量だけを通過させるように、潤滑油の流れの量を制限する働きをする。より多い潤滑油の流れが圧送されると、隔膜の上流の潤滑油圧力の上昇がもたらされるとともに、それ故に調整弁の少なくとも部分的な開放がもたらされ、それによって隔膜の上流に広がっている潤滑油圧力を、減少させるとともに特に調整することができる。これまでの面倒なポンプの圧送量の電子調整処理と比較して、本発明は、一方では構造的に簡単な、且つ、他方では好ましい価格に設定された体積流量調整を構成する。
【0008】
本発明に係る解決法の有利なさらなる発展では、調整弁は、入力側でポンプの出力側に接続されるとともに、出力側でポンプの入力側に接続されている。それ故に、調整弁の閉鎖状態では、隔膜の上流に広がっている潤滑油圧力は、調整弁の入力側にかかるとともに、その際、バネで力を加えられた弁スライダにかかる。広がっている潤滑油圧力のおかげで、この弁スライダがその開位置へ移動した場合のみ、ポンプ出力側をポンプ入力側に接続するとともに、それによってポンプ出力側およびそれ故に隔膜の上流で広がっている潤滑油圧力を減少させ又は個々に調整するバイパスが生じる。かかる調整弁は、構造的に簡単に且つそれ故に非常に好ましいコストで構成することができる。
【0009】
本発明に係る解決法の別の実施形態では、調整弁は、閉じた調整弁の場合には、第1入力側でポンプの出力側に接続され、第2入力側でポンプの調整室に接続されるとともに、出力側で潤滑油タンクに接続されており、これにより、調整室を空にすることができる。閉じた調整弁の場合には、調整弁によって調整室が直接に潤滑油タンクに接続され且つそれによって調整室を空にでき又は調整室が各々常圧になるように、弁スライダを移動させる。仮に、ポンプによって圧送される潤滑油の流れが、隔膜を浸透することができる潤滑油の流れを上回ると、隔膜の前で潤滑油圧力が増大し、弁スライダがその開位置へ移動すると直ぐに、調整弁が出力側でポンプの調整室に接続される。このことは、潤滑油圧力に応じて、圧送量の減少をもたらす。
【0010】
ポンプの圧送量を減少させることによって、ポンプの出力側およびそれ故に隔膜の上流に広がっている潤滑油圧力が下がり、それによって弁スライダがその閉位置の方向に再び後退させられるとともに、それによって調整室における圧力が減少し、それによってポンプの圧送量が再び増大する。それ故に、システムが安定する。それ故に、この実施形態では、隔膜の上流に広がっている潤滑油圧力に応じて、ポンプの圧送量が調整される。
【0011】
本発明に係る解決法のさらなる有利な実施形態では、隔膜は、通過させる量に関して、すなわち、その浸透することができる体積流量に関して調整可能である。このことは、全体の潤滑システムが再調整可能であるとともに、潤滑されるべき構成要素に供給される潤滑油の量もまた調整することができるという特別な利点を与える。勿論、その代わりに、例えば30l/minというように、潤滑油の通過量が予め定められた固定隔膜を用いることもまた考えられる。
【0012】
本発明のさらなる重要な特徴および利点は、従属請求項から、図面から、及び、図面を用いた図の関連する説明から明らかになる。
【0013】
先に述べた及び以下でさらに詳細に説明される特徴は、個々に示された組合せのみならず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、他の組合せにおいて又は単独でも用いることができることが分かる。
【0014】
本発明の好ましい一例としての実施形態は、図面で示されるとともに、以下の説明に置いてさらに詳細に説明され、そこにおいて、同一の参照番号は、同一の又は同様の又は機能的に同一の構成要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る潤滑システムの第1の可能な実施形態を示す図である。
図2】ポンプの供給量が隔膜の最大通過量を超えていることを除けば、図1と同様の図である。
図3】本発明に係る潤滑システムのさらなる代替案を示す図である。
図4】同様に、ポンプの供給量が隔膜の最大通過量を超えていることを除けば、図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4に示すように、本発明に係る潤滑システム1は、潤滑油の流れを圧送するためのポンプ2、潤滑油タンク3、及び、特に内燃機関または歯車装置である、少なくとも1つの潤滑されるべき構成要素4を備えている。以下では、常に潤滑システム1に関して言及する。勿論、潤滑システム1を流体システムとして構成することができるとともに、それに応じて他の流体を収容することもできる。ここで、ポンプ2と潤滑されるべき構成要素4との間で且つ同時にポンプ2の下流には、潤滑油の流れの量を制限するために、隔膜(diaphragm)5が設けられている。隔膜5の上流に広がっている潤滑油圧力に応じて開閉する、調整弁6もまた設けられている。調整弁6において、好ましい中間の開位置も勿論考えられるとともに、それによって、隔膜5の前に広がっている潤滑油圧力を減少させ又は個々に調整する。調整弁6は、バネ7によってその閉方向に圧縮力が加えられた、バネで力を加えられた弁スライダ8を備えることができる。隔膜5によって、構成要素4の潤滑に必要な体積流量が設定され、例えば30l/minとすることができる。この場合は、30l/minの体積流量に至るまで、潤滑システム1における圧力は、隔膜5の上流および下流と少なくともほぼ等しい。図1によれば、ポンプ2によって圧送される体積流量は、隔膜5を通って最大限浸透することができる体積流量よりも少ないか、又は、最大限でも同程度であり、これにより、調整弁6はその閉位置にある。これに対して、図2によれば、ポンプ2によって圧送される体積流量は、隔膜5を通過することができる体積流量よりも多く、それによって弁スライダ8がバネ7の弾性力に反して移動するとともに、それによって出力側をポンプ2の入力側に接続し、それによって隔膜5の上流の圧力が、減少されるとともに特に調整される。弁スライダ8の移動は、ここでは、隔膜5の上流に広がっている潤滑油圧力によって行われる。
【0017】
ここで、弁スライダ8は、一方がポンプ2の出力側に接続され、他方が隔膜5の下流の潤滑システム1に接続されている。それ故に、仮に、隔膜5の上流の圧力が、隔膜5の下流に広がっている圧力よりも小さい圧力か又は最大限でも同程度に大きい圧力であれば、弁スライダ8はその閉位置にとどまる一方、隔膜5の上流の潤滑油圧力が隔膜5の下流に広がっている潤滑油圧力を超えて上昇するにつれて、弁スライダ8の緩慢な移動が起こり、それによって弁スライダ8が図2で例示されるその開位置へ移動する。その浸透することができる体積流量に関しては、通常、隔膜5を不変のものとすることができる。勿論、通過させることができる量に関して隔膜5を調整可能とすることも考えられる。
【0018】
図1及び図2に示す、本発明に係る潤滑システム1によれば、その際にポンプ2の圧送量を直接に調整する必要なく、圧送されるべき潤滑油の流れの比較的簡単な調整を達成することができる。それ故に、示される実施形態では、ポンプ2を継続的に同じ性能で運転させることができる。ポンプ2と潤滑油タンク3との間には、勿論、フィルタ9を設けることが可能である。
【0019】
本発明に係る潤滑システム1の別の実施形態が図3及び図4に示されており、ここにおいては、調整弁6によってバイパスは作られず、寧ろポンプ2の圧送量が、隔膜5の上流に広がっている潤滑油圧力に応じて調整される。ここで、図3では、隔膜5の上流に広がっている潤滑油圧力は、隔膜5の下流に広がっている潤滑油圧力よりも小さいか、又は、最大でも同程度であり、これにより、調整弁6が閉じられるとともに、それによってポンプ2の調整室10と特に常圧潤滑油タンク3との間を接続する。ポンプ2によって圧送される潤滑油の量が増大するとともに、それによってポンプ2によって圧送される体積流量が隔膜5を浸透することができる体積流量を超えて増大すると、隔膜5の上流に広がっている潤滑油圧力が増大するとともに、図4に示す位置への弁スライダ8の移動をもたらす。この位置では、圧力調整室10は潤滑油タンク3にもはや接続されず、この場合は寧ろ、圧力調整室10はポンプ出力側に接続され、ポンプ出力側すなわち隔膜5の上流で潤滑油圧力が激しく増加する場合には、調整室10における圧力もまた上昇するとともに、それによってポンプ2の圧送量が、減少されるとともに特に調整される。それ故に、図4によれば、調整弁6は、開位置に描かれているとともに、ポンプ2の出力側に接続され且つ出力側でポンプ2の調整室10に接続されており、それによってポンプ2の圧送量が調整される。これに対して、図3によれば、調整弁6は、閉位置に描かれているとともに、それによって入力側でポンプ2の出力側に接続されている。同時に、調整弁6のもう一つの入力側がポンプ2の調整室10に接続されるとともに、出力側が潤滑油タンク3に接続され、これにより、図3に描かれたケースでは、調整室10を空にすることができる。
【0020】
ポンプ2は、例えばベーンポンプとして又は振り子スライダーポンプとして構成することができ、その場合には、調整室10は、ローターの偏心を調整し、それ故に圧送量を調整する。
【0021】
それ故に、図1図4に示す潤滑システム1によれば、隔膜5による独立した且つ比較的簡単な体積流量の調整が可能になり、図3及び図4に示す潤滑システム1とは対照的に、図1及び図2に示す潤滑システム1では、ポンプ2の圧送量は影響を受けないままである。
図1
図2
図3
図4