特許第6030897号(P6030897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030897ジャッキボルト及びそれを備えるエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030897
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ジャッキボルト及びそれを備えるエンジン
(51)【国際特許分類】
   F16M 7/00 20060101AFI20161114BHJP
   B66F 3/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   F16M7/00 W
   F16M7/00 B
   F16M7/00 K
   B66F3/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-203454(P2012-203454)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-59004(P2014-59004A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 洋志
(72)【発明者】
【氏名】石橋 薫
(72)【発明者】
【氏名】冨田 展久
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−061377(JP,U)
【文献】 特開2001−078845(JP,A)
【文献】 特開2004−160038(JP,A)
【文献】 特開2000−146085(JP,A)
【文献】 実開平06−081278(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 7/00
B66F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台床と床面との間に防振部材が介装され、前記台床を床面に対してジャッキアップする機能を備えたジャッキボルトにおいて、
前記台床に設けられたねじ孔にそのねじ込み量を調整可能に螺装されるねじ部と、前記ねじ部の下端に設けられ、ねじ部に対して拡径したストッパー部と、を有し、
前記ねじ部のねじ込み量が所定量に達した際には、前記ストッパー部が床面に当接することで、前記防振部材の交換が可能となり、
前記ねじ部のねじ込み量が所定量未満の際には、前記台床が床面に対し傾いた場合に前記ストッパー部材が床面に当接し、前記台床の床面に対する上下方向の変位の許容範囲を制限する
ことを特徴とするジャッキボルト。
【請求項2】
請求項1記載のジャッキボルトにおいて、
前記ジャッキボルトは、上から順に、操作部と、ねじ部と、ストッパー部と、を有し、 前記操作部は、ねじ部の上端に設けられ、ねじ部に対して縮径され、ジャッキボルトを周方向に回転させる操作部とし、
前記ストッパー部の上面には段付面が形成され、前記段付面が台床の下面に当接するように構成した
ことを特徴とするジャッキボルト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のジャッキボルトにおいて、前記ジャッキボルトのねじ部の上下長さは、前記台床のねじ孔の上下長さと、前記ストッパー部材の上下長さと、を足し合わせたものよりも短い寸法設定としたことを特徴とするジャッキボルト。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のジャッキボルトを備えることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキボルト及びそれを備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンや発電機等の被防振機器を船体の床面等の据付面に据付ける際、被防振機器を台床(共通台床)に載置し、当該台床と据付面との間に防振部材を介装する防振構造が公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の如き防振構造においては、防振部材は、多くの場合弾性体等によって実現されており、使用に伴って弾性力が低下する等の劣化が起こることがあった。そして、防振部材が劣化すると、被防振機器の据付面に対する振動が大きくなるため、これを交換する必要性が生ずる。そこで、特許文献1に記載の如き防振構造には、防振部材を交換するときに台床を据付面に対してジャッキアップするためのジャッキボルトが設けられている。当該ジャッキボルトは、台床に設けられたねじ孔にそのねじ込み量を調整可能に螺装され、そのねじ部の先端部が据付面に当接可能である。
【0004】
ところで、ジャッキボルトは、ジャッキアップ操作を行っていない間は、台床の据付面に対する変位を抑制するためのストッパーの代用にすることが多い。すなわち、船体等が揺れた場合においては、ジャッキボルトのねじ部の先端部が据付面に当接することにより、防振部材の過剰な変形が抑制され、台床の据付面に対する変位が抑制されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−341742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、船体等が激しく揺れた場合においては、ジャッキボルトのねじ部の先端部が据付面と激しく衝突し、ジャッキボルトに大きな応力がかかり、ジャッキボルトのねじ部が座屈したり、ねじ山が損傷してねじ孔から抜けなくなったりする虞があった。
【0007】
本発明は、上記を考慮して、ジャッキボルトのねじ部の座屈やねじ山の損傷を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
請求項1においては、台床と床面との間に防振部材が介装され、前記台床を床面に対してジャッキアップする機能を備えたジャッキボルトにおいて、前記台床に設けられたねじ孔にそのねじ込み量を調整可能に螺装されるねじ部と、前記ねじ部の下端に設けられ、ねじ部に対して拡径したストッパー部と、を有し、前記ねじ部のねじ込み量が所定量に達した際には、前記ストッパー部が床面に当接することで、前記防振部材の交換が可能となり、前記ねじ部のねじ込み量が所定量未満の際には、前記台床が床面に対し傾いた場合に前記ストッパー部材が床面に当接し、前記台床の床面に対する上下方向の変位の許容範囲を制限するものである。
【0010】
請求項2においては、請求項1記載のジャッキボルトにおいて、前記ジャッキボルトは、上から順に、操作部と、ねじ部と、ストッパー部と、を有し、前記操作部は、ねじ部の上端に設けられ、ねじ部に対して縮径され、ジャッキボルトを周方向に回転させる操作部とし、前記ストッパー部の上面には段付面が形成され、前記段付面が台床の下面に当接するように構成したものである。
【0011】
請求項3においては、請求項1又は請求項2に記載のジャッキボルトにおいて、前記ジャッキボルトのねじ部の上下長さは、前記台床のねじ孔の上下長さと、前記ストッパー部材の上下長さと、を足し合わせたものよりも短い寸法設定としたものである。
【0012】
請求項4においては、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のジャッキボルトを備えるエンジンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、ジャッキアップ操作を行っていない時は、ジャッキボルトのねじ部にストッパー部材を螺着しておくことができる。このように、ストッパー部材を従来からある既存のジャッキボルトに容易に後付けすることができる。そして、ストッパー部材を螺着することにより、台床が傾いた際、ストッパー部材が当接することによりストッパー部材が受圧する。ストッパー部材に加わった力はジャッキボルトのねじ部とストッパー部材上面を通して台床に伝達される。したがって、ストッパー部材を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルトが負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルトの座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0015】
請求項2においては、台床が傾いた際、ジャッキボルトのストッパー部と据付面とが当接することによりストッパー部が受圧する。ストッパー部に加わった力はジャッキボルトのねじ部を通して台床に伝達される。したがって、ストッパー部を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルトのねじ部が負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルトのねじ部の座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0016】
請求項3においては、ジャッキボルト及びストッパー部材を装着する際、ジャッキボルトのねじ部の下端がストッパー部材から下方(据付面側)に突出する虞がなくなり、組み付けミスを防止できる。
【0017】
請求項4においては、被防振機器であるエンジンを据付けている船体等が激しく揺れた際、ストッパー部材と据付面とが当接することにより、ジャッキボルトのねじ部と同時に段付面又はストッパー部材が応力を分担する。したがって、ストッパー部又はストッパー部材を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルトのねじ部が負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルトのねじ部の座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るジャッキボルトを備えるエンジンを搭載した船体を示す図である。
図2】本発明の実施の一形態に係るエンジンを示す図である。図中の二点鎖線の楕円で囲んだ箇所には、ジャッキボルトを含む部分の拡大断面図を示してある。
図3】被防振機器が台床に載置されている状態を示す図である。
図4】(a)第一実施形態に係るジャッキボルトを示す図である。(b)第一実施形態に係るジャッキボルトを用いてジャッキアップ操作を行っているときの状態を示す図である。
図5】第一実施形態に係るジャッキボルトが台床の据付面に対する変位を抑制するためのストッパーとして機能しているときの状態を示す図である。
図6】(a)第二実施形態に係るジャッキボルト及び当該ジャッキボルトに螺着されるストッパー部材を示す図である。(b)第二実施形態に係るジャッキボルトに螺着されるストッパー部材を緩めたときの状態を示す図である。
図7】(a)第二実施形態に係るジャッキボルトを用いてジャッキアップ操作を行っているときの状態を示す図である。(b)第二実施形態に係るストッパー部材が台床の据付面に対する変位を抑制するためのストッパーとして機能しているときの状態を示す図である。
図8】(a)第二実施形態に係るジャッキボルトの別実施例を示す側面図である。(b)第二実施形態に係るジャッキボルトの別実施例を示す側面図である。
図9】(a)間座の平面図である。(b)別実施例に係る間座の平面図である。(c)第二実施形態に係るジャッキボルトの別実施例を示す側面図である。
図10】(a)第三実施形態に係るジャッキボルト及び当該ジャッキボルトに螺着されるストッパー部材を示す図である。(b)第三実施形態に係るジャッキボルトを用いてジャッキアップ操作を行っているときの状態を示す図である。
図11】第三実施形態に係るストッパー部材が台床の据付面に対する変位を抑制するためのストッパーとして機能しているときの状態を示す図である。
図12】ストッパー部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面断面図、(c)は底面図である。
図13】ストッパー部材の別実施例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1及び図2に示すエンジン1は、本発明に係るエンジンの実施の一形態である。本実施形態に係るエンジン1は、船用のエンジンであり、船体7に搭載される。ただし、エンジン1は、船用のエンジンに限定されるものではなく、例えばこれに代えてコンバイン用のエンジン等であってもよい。
【0021】
図1及び図3に示すように、本発明に係るエンジン1は、発電機2とともに、共通台床である台床3に載置される。エンジン1は、主にシリンダブロックやクランク軸6(出力軸)等からなるエンジン本体部8、燃料を圧送するための燃料噴射ノズル等を具備するシリンダヘッド9、潤滑油を蓄えるオイルパン15等で構成されている。エンジン1は、支持フランジ16を介して台床3に固定される。詳細には、台床3には例えばボルト等の締結手段を用いてフランジ16が固定され、当該フランジ16には例えばボルト等の締結手段を用いてエンジン本体部8の下部が固定される。ただし、フランジ16は、台床3又はエンジン本体部8と一体的に形成されているものとしてもよい。本実施形態に係るエンジン1は、発電機2に動力を付与するために設けられる、いわゆる補機である。当該台床3は、据付面である船体7の床面4の上に、防振部材5を介して据付けられる。本実施形態における防振部材5は、図1〜3に示すように、両端部に取付部を有する防振ゴムにより構成される。ただし防振部材の構成はこれに限定するものではない。なお、図4以降においては、防振部材5を略図で示してある。また、図4以降においては、エンジン1のクランク軸6方向から見たジャッキボルト10と防振部材5とを模式的に示している。ここで、エンジン1及び発電機2は、被防振機器の実施の一形態であるが、当該被防振機器はこれに限定されるものではなく、例えば制御装置等を被防振機器としてさらに備える構成としてもよい。あるいは、被防振機器をエンジン1のみ(発電機2を被防振機器としない構成)とし、エンジン1が単独で台床3に載置されている構成としてもよい。また、船体7の床面4は、据付面の実施の一形態であるが、当該据付面はこれに限定されるものではなく、例えばこれに代えてコンバインのエンジンルームの底面等であってもよい。
【0022】
台床3と、船体7の床面4と、の間に介装される防振部材5は、例えばゴム等の弾性体により構成される。ただし、防振部材5は、公知の他の弾性体等により構成されるものであってもよい。防振部材5は、使用に伴って弾性力が低下する等の劣化が起こる。当該防振部材5が劣化すると、エンジン1や発電機2の船体7の床面4に対する振動が大きくなるため、これを交換する必要が生ずる。そこで、エンジン1には、防振部材5を交換するときに台床3を船体7の床面4に対してジャッキアップするためのジャッキボルト10が設けられている。当該ジャッキボルト10は、台床3に設けられたねじ孔3aにそのねじ込み量を調整可能に螺装され、その下端が船体7の床面4に当接可能とされる。このジャッキボルト10は、後に詳述するように、ジャッキアップ操作を行っていない間は、台床3の船体7の床面4に対する変位を抑制するためのストッパーとして機能する。
【0023】
<第一実施形態>
以下では、本発明の第一実施形態に係るジャッキボルト10について、図4及び図5を参照して詳述する。図4(a)に示すように、ジャッキボルト10は、ねじ部10aと、ストッパー部10bと、操作部10cと、を有する。
【0024】
ねじ部10aは、その外周面に雄ねじが形成された軸状の部分である。この雄ねじは、台床3のねじ孔3aの内周面に形成された雌ねじに対応している。なお、台床3のねじ孔3aは、台床3に直接設けられていてもよく、あるいは当該台床3にナットが取り付けられることにより当該ナットを介して台床3に設けられる構成であってもよい。ねじ部10aは、台床3に設けられたねじ孔3aにそのねじ込み量を調整可能に螺装される。
【0025】
ストッパー部10bは、ねじ部10aの下端に設けられる円柱形状の部分である。ストッパー部10bは、ねじ部10aに対して拡径されている。詳述すると、ストッパー部10bの軸線はねじ部10aの軸線と一直線であり、かつ、ストッパー部10bの径方向の寸法はねじ部10aの径方向の寸法よりも大きい。したがって、ストッパー部10bの上面には段付面10dが形成されている。当該段付面10dは、ねじ部10aの径方向の寸法に対して、十分に大きな面積となるように、かつ、1つの滑らかな平面となるように、設定されている。
【0026】
操作部10cは、ねじ部10aの上端に設けられる断面が正六角形状の軸状の部分である。本実施形態の操作部10cは、ねじ部10aに対して縮径されている。操作部10cは、ジャッキボルト10をスパナー等の工具を用いて周方向に回転させるときに、当該スパナー等で操作する部分である。ただし、操作部10cの形状は、断面が正六角形状のものに限定されるものではなく、スパナー等により操作可能なように、例えば1組の平行な面が形成されているものであってもよい。あるいは、ねじ部10aの上端部に当該ねじ部10aの軸線と垂直な貫通孔を設け、当該貫通孔に棒を横から差し込むことにより当該棒でジャッキボルト10を回転可能な構成としてもよい。
【0027】
以上のような構成のジャッキボルト10は、ジャッキアップ操作を行っていない時は、図4(a)に示すように、段付面10dが台床3の下面3bに当接している状態となるように、台床3に取り付けられる。このとき、ストッパー部10bの上下長さと、台床3の下面3bと船体7の床面4との間の距離と、の差が、台床3の船体7の床面4に対する上下方向変位の許容範囲となる。したがって、ストッパー部10bの上下長さを適宜の長さに設定することにより、この上下方向変位の許容範囲を適宜に変更することが可能である。
【0028】
そして、ジャッキアップ操作を行う時、作業者は、操作部10cにスパナー等を当て、ジャッキボルト10を周方向に回転させて当該ジャッキボルト10のねじ込み量を増加させる。つまり、ねじ部10aの台床3の下方への突出量を増加させていく。当該ねじ部10aの台床3の下方への突出量が所定量に達したとき、ストッパー部10bの下面が船体7の床面4に当接する。この状態でジャッキボルト10をさらに下方にねじ込むと、船体7の床面4と、台床3と、の間の距離が広がり、台床3が船体7の床面4に対してジャッキアップされる(図4(b)参照)。こうすることにより、防振部材5の交換が可能となる。
【0029】
一方、ジャッキアップ操作を行っていない時において、船体7が激しく揺れる等してエンジン1等を含む台床3が傾いた際、図5に示すように、ジャッキボルト10のストッパー部10bと、船体7の床面4と、が当接する。この時、段付面10dが台床3の下面3bに当接しているので、段付面10dを通して力が伝達する(図5中の矢印参照)。したがって、ストッパー部10bを設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルト10のねじ部10aが負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルト10のねじ部10aの座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0030】
以上の如く、本実施形態に係るジャッキボルト10は、エンジン1及び発電機2が載置される台床3と、船体7の床面4と、の間に介装される防振部材5を交換するときに、台床3を船体7の床面4に対してジャッキアップするためのジャッキボルト10である。そして、当該ジャッキボルト10は、台床3に設けられたねじ孔3aにそのねじ込み量を調整可能に螺装されるねじ部10aと、当該ねじ部10aの下端に設けられ、当該ねじ部10aに対して拡径したストッパー部10bと、を有し、当該ストッパー部10bの上面には段付面10dが形成され、ジャッキアップ操作を行っていない時は、段付面10dが台床3の下面3bに当接している状態とされるものである。
【0031】
このように構成することにより、エンジン1等を含む台床3が傾いた際、ジャッキボルト10のストッパー部10bと船体7の床面4とが当接して、段付面10dを通して力が伝達する。したがって、ストッパー部10bを設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルト10のねじ部10aが負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルト10のねじ部10aの座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0032】
<第二実施形態>
以下では、本発明の第二実施形態に係るジャッキボルト20について、図6及び図7を参照して詳述する。ジャッキボルト20は、ねじ部20aと、操作部20cと、を有する。そして、このジャッキボルト20のねじ部20aにはストッパー部材21が螺着される。
【0033】
ねじ部20aは、その外周面に雄ねじが形成された軸状の部分である。この雄ねじは、台床3のねじ孔3aの内周面に形成された雌ねじに対応している。ねじ部3aは、台床3に設けられたねじ孔3aにそのねじ込み量を調整可能に螺着される。
【0034】
操作部20cは、ねじ部20aの上端に設けられる断面が正六角形状の軸状の部分である。本実施形態の操作部20cは、ねじ部20aに対して拡径されている。操作部20cは、ジャッキボルト20をスパナー等の工具を用いて周方向に回転させるときに、当該スパナー等で操作する部分である。
【0035】
図6図7及び図12に示すストッパー部材21は、概ね円柱形状の部材であり、その中心軸部をねじ孔21aが貫通している。当該ねじ孔21aの内周面に形成される雌ねじは、ジャッキボルト20のねじ部20aの雄ねじに対応している。したがって、ストッパー部材21はジャッキボルト20のねじ部20aに着脱(螺着)可能である。ストッパー部材21の外径は、ねじ孔21aの内径に対して十分に大きい。ストッパー部材21の上面21dは、1つの滑らかな平面となっている。本実施形態においては、ストッパー部材21の下端部には面取り部21b・21bが形成される。当該面取り部21b・21bは1組の平行な面であり、ストッパー部材21をスパナー等の工具により操作可能とするためのものである。
【0036】
以上のような構成のジャッキボルト20は、ジャッキアップ操作を行っていない時は、図6(a)に示すように、操作部20cを上方に向けた状態でそのねじ部20aが台床3のねじ孔3aに螺装されている。そして、ジャッキボルト20のねじ部20aの下端部には、ストッパー部材21を螺着しておくことができる。詳述すると、作業者は、操作部20cにスパナー等を当ててジャッキボルト20の周方向への回転を阻止しながら、ストッパー部材21の面取り部21b・21bにスパナー等を当て、ストッパー部材21を周方向に回転させてストッパー部材21をジャッキボルト20のねじ部20aにねじ込む。そして、ストッパー部材21の上面21dが、台床3の下面3bに当接して密着した状態とされる。このとき、ねじ部20aの下端がストッパー部材21の下面21eから突出した状態とならないように、ジャッキボルト20のねじ込み量も調整される。ここで、ストッパー部材21の上下長さと、台床3の下面3bと船体7の床面4との間の距離と、の差が、台床3の船体7の床面4に対する上下方向変位の許容範囲となる。したがって、ストッパー部材21の上下長さを適宜の長さに設定することにより、この上下方向変位の許容範囲を適宜に変更することが可能である。
【0037】
そして、ジャッキアップ操作を行う時、作業者は、ストッパー部材21の面取り部21b・21bにスパナー等を当て、ストッパー部材21を周方向に回転させて当該ストッパー部材21をジャッキボルト20のねじ部20aに対して下方に移動させていく。つまり、ストッパー部材21の、ねじ部20aの下端からの突出量を増大させていく。当該ストッパー部材21の下方への突出量が所定量に達したとき、ストッパー部材21の下面21eが船体7の床面4に当接する。この状態でストッパー部材21をさらに下方に突出させると、船体7の床面4と、台床3と、の間の距離が広がり、台床3が船体7の床面4に対してジャッキアップされる(図7(a)参照)。こうすることにより、防振部材5の交換が可能となる。
【0038】
一方、ジャッキアップ操作を行っていない時において、船体7が激しく揺れる等して船体7の床面4が大きく傾いたら、ストッパー部材21と、船体7の床面4と、が当接する(図7(b)参照)。このとき、ジャッキボルト20のねじ部20aの下端は、ストッパー部材21の下面21eから突出していないので、ジャッキボルト20に直接的に応力はかからない。また、この時、ストッパー部材21の上面21dが台床3の下面3bに当接して密着しているので、ストッパー部材21の上面21dが受圧する(図7(b)の矢印参照)。したがって、ストッパー部材21を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルト20が負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルト20の座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0039】
本実施形態の場合、ストッパー部材21を従来からある既存のジャッキボルト20に容易に後付けすることができ、本発明を低コストで実現することができる。
【0040】
以上の如く、本実施形態に係るジャッキボルト20は、エンジン1及び発電機2が載置される台床3と、船体7の床面4と、の間に介装される防振部材5を交換するときに、台床3を船体7の床面4に対してジャッキアップするためのジャッキボルト20である。そして、当該ジャッキボルト20は、台床3に設けられたねじ孔3aにそのねじ込み量を調整可能に螺装されるねじ部20aを有し、当該ねじ部20aには、ストッパー部材21が着脱可能に螺着され、ジャッキアップ操作を行っていない時は、前記ストッパー部材21の上面21dが台床3の下面3bに当接している状態で、かつ、ねじ部20aの下端がストッパー部材21の下面21eから突出していない状態とされるものである。
【0041】
このように構成することにより、ジャッキアップ操作を行っていない時は、ジャッキボルト20のねじ部20aにストッパー部材21を螺着しておくことができる。このように、ストッパー部材21を従来からある既存のジャッキボルト20に容易に後付けすることができる。そして、ストッパー部材21を螺着することにより、エンジン1等を含む台床3が傾いた際、ストッパー部材21と、船体7の床面4と、が当接して、ストッパー部材21の上面21dを通して力が伝達する。したがって、ストッパー部材21を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルト20が負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルト20の座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、ねじ孔21aはストッパー部材21の中心軸部を貫通するように設けられているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ねじ孔21aに代えて、ストッパー部材21の下面21eが閉塞したねじ穴を設ける構成としてもよい。このようにした場合、ジャッキボルト20にストッパー部材21を螺着した際、ジャッキボルト20のねじ部20aの下端がストッパー部材21から下方(据付面側)に突出する虞がなくなり、組み付けミスを防止できる。
【0043】
なお、本実施形態においては、ストッパー部材21の上面21dが台床3の下面3bに直接当接しているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばこれに代えて、図8(a)に示すように、ストッパー部材21と台床3の間に間座22を配置し、ストッパー部材21の上面21dが間座22を介して台床3の下面3bに間接的に当接している構成としてもよい。具体的な例を示した図8(a)では、間座22はジャッキボルト20のねじ部20aに嵌装され、その上面22aが台床3の下面3bと、その下面22bがストッパー部材21の上面21dと、当接して密着している。
【0044】
また、図8(b)に示すように、ジャッキボルト20の操作部20cと、台床3と、の間に更なる間座23が介装される構成としてもよい。具体的な例を示した図8(b)では、間座23はジャッキボルト20のねじ部20aに嵌装され、その上面23aが操作部20cの下面と、その下面23bが台床3の上面3cと、当接して密着している。
【0045】
なお、間座22・23は、図9(a)に示すような、平面視中央にジャッキボルト20のねじ部20aが貫装される孔22c・23cが形成される形状であってもよいが、これに限定されるものではなく、例えば図9(b)に示す間座24のように、ジャッキボルト20のねじ部20aの直径よりも大きい切欠き24aを持った断面形状(平面形状)を有するものとしてもよい。このように構成した場合、ジャッキボルト20をねじ孔3aから抜くことなく、間座24のねじ部20aからの取り外しが可能となる。また、図9(c)に示すように、間座25・25・・・を薄くし、複数枚に分割した構成とすることができる。ねじ部20aに取り付ける間座25・25・・・の枚数を変更することによって、ジャッキボルト20のねじ孔3aへのねじ込み量の調整や、ストッパー部材21の上下高さの調整を行うことが可能となる。また、間座22・23・24の平面形状は、図9(a)及び図9(b)に示すような円形状に限定されるものではなく、これに代えて多角形状(例えば四角形状)に構成してもよい。
【0046】
前記ストッパー部材21(図12参照)の下端部には、1組の平行な面から成る面取り部21b・21bが形成されるものとしたが、スパナー等の工具で操作可能とするために、少なくとも1組の平行な面を有していればよく、例えば、図13に示すストッパー部材26のように、当該ストッパー部材26の下端部の断面を正六角形状としてもよい。あるいは、ストッパー部材の上下方向の全域にわたって断面を多角形状としてもよい。
【0047】
また、ストッパー部材21・26が船体7の床面4と衝突する際に衝撃を低減する必要がある場合には、ストッパー部材21・26の底面にゴムやゲル状の緩衝材等を取り付けておくことが望ましい。
【0048】
<第三実施形態>
以下では、本発明の第三実施形態に係るジャッキボルト30について、図10及び図11を参照して詳述する。ジャッキボルト30は、ねじ部30aと、頭部30cと、を有する。そして、このジャッキボルト30のねじ部30aにはストッパー部材21が螺着される。
【0049】
ストッパー部材21は、第二実施形態に係るストッパー部材21と同様のものである。ストッパー部材21は、ジャッキボルト30のねじ部30aに螺着されている。
【0050】
ねじ部30aは、その外周面に雄ねじが形成された軸状の部分である。この雄ねじは、台床3のねじ孔3aの内周面に形成された雌ねじ、及び、ストッパー部材21のねじ孔21aの内周面に形成された雌ねじ、に対応している。ねじ部30aの長さは、第二実施形態に係るジャッキボルト20のねじ部20aの長さよりも短く構成されている。頭部30cは、ねじ部30aの上端に設けられる断面が正六角形状の軸状の部分である。頭部30cは、ねじ部30aに対して拡径されている。
【0051】
第三実施形態に係るジャッキボルト30が、第二実施形態に係るジャッキボルト20と異なる点は、第三実施形態に係るジャッキボルト30のねじ部30aの軸線方向の長さx(上下長さ)は、台床3のねじ孔3aの上下長さyと、ストッパー部材の上下長さz(厚み)と、を足し合わせたものよりも短く設定されている点にある(x<(y+z))。
【0052】
以上のような構成のジャッキボルト30は、ジャッキアップ操作を行っていない時は、頭部30cを上方に向けた状態でそのねじ部30aが台床3のねじ孔3aに螺装されている(図10(a)参照)。そして、ジャッキボルト30のねじ部30aの下端部には、ストッパー部材21が螺着されている。このとき、図10(a)に示すように、ストッパー部材21の上面21dが、台床3の下面3bに当接して密着した状態となるように、螺着される。ここで、ジャッキボルト30のねじ部30aの軸線方向の長さ(上下長さx)は、台床3のねじ孔3aの上下長さyと、ストッパー部材21の上下長さz(厚み)と、を足し合わせたものよりも短く設定されている(x<(y+z))ので、ジャッキボルト30をそのねじ込み量が最大となるまで台床3のねじ孔3aにねじ込んでも、ねじ部30aの下端がストッパー部材21の下面21eから突出した状態とはならない。すなわち、ジャッキボルト30のねじ込み量を、ねじ部30aの下端がストッパー部材21の下面21eから突出しないように、別途調整する必要がない。
【0053】
ここで、ストッパー部材21の上下長さzと、台床3の下面3bと船体7の床面4との間の距離と、の差が、台床3の船体7の床面4に対する上下方向変位の許容範囲となる。したがって、ストッパー部材21の上下長さzを適宜の長さに設定することにより、この上下方向変位の許容範囲を適宜に変更することが可能である。
【0054】
そして、ジャッキアップ操作を行う時、作業者は、ストッパー部材21の面取り部21b・21bにスパナー等を当て、ストッパー部材21を周方向に回転させて当該ストッパー部材21をジャッキボルト30のねじ部30aに対して下方に移動させていく。つまり、ストッパー部材21の、ねじ部30aの下端からの突出量を増大させていく。当該ストッパー部材21の下方への突出量が所定量に達したとき、ストッパー部材21の下面21eが船体7の床面4に当接する。この状態でストッパー部材21をさらに下方に突出させると、船体7の床面4と、台床3と、の間の距離が広がり、台床3が船体7の床面4に対してジャッキアップされる(図10(b)参照)。こうすることにより、防振部材5の交換が可能となる。
【0055】
一方、ジャッキアップ操作を行っていない時において、船体7が激しく揺れる等してエンジン1等を含む台床3が傾いた際、図11に示すように、ストッパー部材21と、船体7の床面4と、が当接する。このとき、ジャッキボルト30のねじ部30aの下端は、ストッパー部材21の下面21eから突出していないので、ジャッキボルト30に直接的に応力はかからない。また、この時、ストッパー部材21の上面21dが台床3の下面3bに当接して密着しているので、ストッパー部材21の上面21dを通して力が伝達する(図11の矢印参照)。したがって、ストッパー部材21を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルト30が負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルト30の座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【0056】
以上の如く、本実施形態に係るジャッキボルト30は、ジャッキボルト30のねじ部30aの上下長さxは、台床3のねじ孔3aの上下長さyと、ストッパー部材21の上下長さzと、を足し合わせたものよりも短いことを特徴とするものである(x<(y+z))。
【0057】
このように構成することにより、ジャッキボルト30及びストッパー部材21を装着する際、ジャッキボルト30のねじ部30aの下端がストッパー部材21から下方(据付面側)に突出する虞がなくなり、組み付けミスを防止できる。
【0058】
また、第一実施形態から第三実施形態までのいずれかに記載のジャッキボルト10(20・30)をエンジン1に備えることにより、エンジン1を据付けている船体7等が激しく揺れた際、段付面10d又はストッパー部材21の上面21dを通して力が伝達する。したがって、ストッパー部10b又はストッパー部材21を設けない構成とした場合と比べて、ジャッキボルト10(20・30)のねじ部10a(20a・30a)が負担する応力が軽減される。よって、ジャッキボルト10(20・30)のねじ部10a(20a・30a)の座屈やねじ山の損傷を防止することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン(被防振機器)
3 台床
3b 台床の下面
4 船体の床面(据付面)
5 防振部材
10 ジャッキボルト
10a ねじ部
10b ストッパー部
10d 段付面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図13