特許第6030898号(P6030898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030898
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】電圧バランス回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20161114BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20161114BHJP
【FI】
   H02M7/06 A
   H02M7/48 Z
【請求項の数】1
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-204353(P2012-204353)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60852(P2014-60852A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】302038844
【氏名又は名称】東芝シュネデール・インバータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 真生
(72)【発明者】
【氏名】郷司 陽一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102510114(CN,A)
【文献】 特開2010−041858(JP,A)
【文献】 特開平10−295081(JP,A)
【文献】 特開平08−308124(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0077875(US,A1)
【文献】 特開2003−219555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を出力する第1及び第2の主端子間に高圧側の第1基準ノードから低圧側の第n+1基準ノードまでの間にn段(n≧3)直列接続されるn段の抵抗体と、
前記第1及び第2の主端子間において高圧側の第1出力ノードから低圧側の第n+1出力ノードまでの間にn段直列接続されるn段の主回路コンデンサと、
前記n段の抵抗体の第k(2≦k≦n)基準ノードと前記n段の主回路コンデンサの第k出力ノードとの間にそれぞれ構成され、それぞれ、互いに逆導電型で且つ基準入力端子及び出力端子がそれぞれ共通接続される第1および第2のトランジスタを備え、前記n段の抵抗体の第k基準ノードに前記基準入力端子が接続されると共に前記n段の主回路コンデンサの第k出力ノードに前記出力端子が接続され、前記基準入力端子の電圧が前記出力端子の電圧より高いときには前記第1のトランジスタを通じて通電元ノードから前記出力端子に通電すると共に前記基準入力端子の電圧が前記出力端子の電圧より低いときには前記出力端子から前記第2のトランジスタを通じて通電先ノードに通電することにより前記基準入力端子の電圧に前記出力端子の電圧を一致させるように安定化するn−1個の電圧安定化回路と、を備え、
前記k段目(2≦k≦n)の電圧安定化回路は、前記第1のトランジスタから第1抵抗を通じて前記通電元ノードとなる第k−a出力ノード(aは1≦a≦k−1を満たす何れか)に接続されると共に、前記第2のトランジスタから第2抵抗を通じて前記通電先ノードとなる第k+b出力ノード(bは1≦b≦n+1−kを満たす何れか)に接続され
前記第1抵抗は、前記n段の抵抗体のうちの前記a段数分の抵抗値に対応して比例する抵抗値に設定され、
前記第2抵抗は、前記n段の抵抗体のうちの前記b段数分の抵抗値に対応して比例する抵抗値に設定され、
前記電圧安定化回路は、a+bが3以上を満たすものを含むことを特徴とする電圧バランス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電圧バランス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインバータ装置などの回路は、整流器および主回路コンデンサにより交流電圧を直流電圧に変換した後、半導体スイッチを用いてPWMパルス電圧に応じて負荷(例えば電動機)を駆動する。主回路コンデンサは、直流電圧がより高い電圧でも耐えうる必要があるため主端子間に直列接続して使用される。
【0003】
このとき主回路コンデンサには漏れ電流が生じる。この主回路コンデンサの漏れ電流には個体差、温度に応じたバラつきがあり、時間経過に伴い複数の主回路コンデンサの電圧分担が変化し、主回路コンデンサの耐圧を超える虞がある。よって、一般にバランス抵抗が各主回路コンデンサの端子間に接続されている。これらのバランス抵抗には常に電流が流れるため、交流電圧が装置に供給されるだけで常に多くの電力損失を生じてしまう。そこで、供給される交流電圧に応じて、整流後の平滑用主回路コンデンサの直列接続個数を変化させることが望ましいが、主回路コンデンサの直列接続個数を2つではなく3以上とすることで耐圧をより高耐圧化できる。
【0004】
従来、電界コンデンサ直列体の中点にトランジスタコンプリメンタル接続体を接続すると共に、抵抗直列体の中点が当該トランジスタコンプリメンタル接続体の共通ベース端子に接続されており、これにより電圧バランスを図る手法が提案されている。
【0005】
しかしながら、従来技術においては、例えば4つ以上の偶数個の電界コンデンサ直列体を用いるときには、隣接して直列接続された電界コンデンサ直列体を1ペアとし、当該1ペア間で電圧バランスを図っているため、複数のペア同士の電圧バランスを図ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−295081号公報
【特許文献2】特許第3893103号公報
【特許文献3】特開平5−57808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、3段以上接続した主回路コンデンサの互いの端子電圧のアンバランスを極力解消できるようにした電圧バランス回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、直流電圧を出力する主端子間に高圧側の第1基準ノードから低圧側の第n+1基準ノードまでの間にn段直列接続されるn段の抵抗体を備える。また、主端子間において、高圧側の第1出力ノードから低圧側の第n+1出力ノードまでの間にn(n≧3)段直列接続されるn段の主回路コンデンサを備える。
【0009】
また、n段の抵抗体の第k(2≦k≦n)基準ノードとn段の主回路コンデンサの第k出力ノードとの間にn−1個構成され、それぞれ、互いに逆導電型で且つ基準入力端子及び出力端子がそれぞれ共通接続される第1および第2のトランジスタを備え、n段の抵抗体の第k基準ノードに基準入力端子が接続されると共にn段の主回路コンデンサの第k出力ノードに出力端子が接続され、基準入力端子の電圧が出力端子の電圧より高いときには第1トランジスタを通じて通電元ノードから出力端子に通電すると共に基準入力端子の電圧が出力端子の電圧より低いときには出力端子から第2トランジスタを通じて通電先ノードに通電することにより基準入力端子の電圧に出力端子の電圧を一致させるように安定化するn−1個の電圧安定化回路を備える。また、k段目(2≦k≦n)の電圧安定化回路は、第1のトランジスタから第1抵抗を通じて通電元ノードとなる第k−a出力ノードに接続されると共に、第2のトランジスタから第2抵抗を通じて通電先ノードとなる第k+b出力ノードに接続されている。また、第1抵抗は、n段の抵抗体のうちのa段数分の抵抗値に対応して比例する抵抗値に設定され、第2抵抗は、n段の抵抗体のうちのb段数分の抵抗値に対応して比例する抵抗値に設定され、電圧安定化回路は、a+bが3以上を満たすものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態について示すインバータ装置の電気的構成図
図2】第1の実施形態において、漏れ電流に応じた各主回路コンデンサの端子電圧特性図
図3】第1の実施形態において漏れ電流に応じて各抵抗に流れる電流特性図
図4】第2の実施形態について示す図1相当図
図5】第2の実施形態について示す図2相当図
図6】第2の実施形態について示す図3相当図
図7】第3の実施形態について示す図1相当図
図8】第3の実施形態について示す図2相当図
図9】第4の実施形態について示す図1相当図
図10】第4の実施形態について示す図2相当図
図11】第5の実施形態について示す図1相当図
図12】第5の実施形態について示す図2相当図
図13】第6の実施形態について示す図1相当図
図14】第6の実施形態について示す図2相当図
図15】全ての実施形態について示す電圧安定化回路の組合せ説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、電圧バランス回路のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する複数の実施形態間では、同一又は類似の構成部分には同一又は類似の符号を付して必要に応じて説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では特に入力交流電圧690Vクラスのインバータ装置を例示して説明する。なお、本実施形態は、(n,k,a,b)=(3,2,1,2)及び(3,3,2,1)の場合の電圧安定化回路を組み合わせた形態を示す。この(n,k,a,b)の意味は後述参照。
【0013】
インバータ装置1は、三相交流電源2を入力する端子R,S,Tを備え、端子R,S,Tには整流器3が接続されている。この整流器3は、端子R,S,Tに入力された三相交流電源2の交流電源を入力し整流する。この整流器3の出力は主電源線N1およびN2に与えられている。
【0014】
これらの主電源線N1(第1の主端子:ノードは第1基準ノード、第1出力ノード相当)と主電源線N2(第2の主端子:ノードは第n+1基準ノード、第n+1出力ノードに相当)との間には、3つの主回路コンデンサC1乃至C3が直列接続され、これらのコンデンサC1ないしC3は整流器3の整流出力を平滑化し主電源線N1およびN2間に直流電力を出力する。
【0015】
例えば400V程度の三相交流電源を入力交流電圧として用いるときには、例えば2つの主回路コンデンサC1およびC2を直列接続するだけでも良い場合もあるが、より高い電源電圧となる例えば実効値690Vの三相交流電源2を用いるときには、3つのコンデンサC1ないしC3を直列接続することで高耐圧化を実現しやすくなる。
【0016】
そこで、本実施形態では、3つのコンデンサC1ないしC3を主電源線N1およびN2間に直列接続している。コンデンサC1ないしC3は、それぞれアルミ電解コンデンサにより構成されているが、これらにはそれぞれ内部抵抗r1ないしr3が存在しそれぞれ漏れ電流が流れる。
【0017】
コンデンサC1ないしC3は漏れ電流特性、温度特性など特性値に個体差を生じるため、当該個体差に応じた電圧のアンバランスが生じやすい。複数のコンデンサC1ないしC3の静電容量値の比に応じて、通常動作時の端子電圧V1ないしV3がそれぞれ決定される。このため、コンデンサC1ないしC3を3段以上直列接続するときには、同一の静電容量値、同一の耐電圧のコンデンサが用いられる。以下では、コンデンサC1乃至C3のうち、隣接するコンデンサC1及びC2間、C2及びC3間の共通接続点をそれぞれノードN3、N4(第2出力ノード(k=2)、第3出力ノード(k=3)に相当)として説明を行う。
【0018】
これらのコンデンサC1乃至C3により平滑化された直流電力は、インバータ主回路4に与えられる。インバータ主回路4は、入力した直流電力について制御回路5の制御信号に基づいて交流変換し端子U,V,Wから出力する。端子U,V,Wは負荷となるモータ6に接続されており、インバータ装置1はこの端子U,V,Wを通じて三相交流電力をモータ6に供給する。なお、制御回路5は例えばマイクロコンピュータなどにより構成されている。
【0019】
さて、主電源線N1およびN2間には基準電圧生成用の抵抗R1ないしR3が3段(n=3)直列接続されている。これらの抵抗R1ないしR3には互いに同一抵抗値のものが用いられる。以下では、抵抗R1ないしR3のうち隣接する抵抗R1及びR2間、抵抗R2及びR3間の共通接続点をそれぞれノードN5、N6(それぞれ第2基準ノード、第3基準ノードに相当(k=2,3))として説明を行う。
【0020】
また、主電源線N1およびN2間には、2段目(k=2)及び3段目(k=3)に電圧安定化回路72及び73が構成されている。2段目(k=2)の電圧安定化回路72は、主電源線N1及びN2間に、抵抗R4、NPN形トランジスタTr1のコレクタエミッタ間、PNP形トランジスタTr2のエミッタコレクタ間、抵抗R5を直列接続して構成されている。
【0021】
これらのトランジスタTr1及びTr2の共通エミッタ(出力端子に相当)はコンデンサC1及びC2の共通接続ノードN3に接続されている。また、トランジスタTr1およびTr2のベースは互いに共通接続されると共にノードN5に接続され基準入力端子になる。抵抗R1およびR2の共通接続ノードN5とコンデンサC1およびC2の共通接続ノードN3との間には抵抗R8が接続されている。
【0022】
また、3段目(k=3)の電圧安定化回路73は、主電源線N1およびN2間に、抵抗R6、NPN形トランジスタTr3のコレクタエミッタ間、PNP形トランジスタTr4のエミッタコレクタ間、及び抵抗R7を直列接続して構成されている。
【0023】
これらのトランジスタTr3及びTr4の共通エミッタ(出力端子に相当)はコンデンサC2及びC3の共通接続ノードN4に接続されている。また、トランジスタTr3およびTr4のベースは互いに共通接続されると共にノードN6に接続され基準入力端子になる。抵抗R2およびR3の共通接続ノードN6とコンデンサC2およびC3の共通接続ノードN4との間には抵抗R9が接続されている。
【0024】
(n,k,a,b)は、n段(n=3)の基準電圧生成用の抵抗R1〜R3が接続されているときに、k段目(k=2、3)の電圧安定化回路72、73が、第1トランジスタTr1、Tr3からそれぞれ抵抗R4、R6を介してk−a(a=1、2)出力ノード(通電元ノード)に接続されると共に、第2トランジスタTr2、Tr4からそれぞれ抵抗R5、R7を介してk+b(b=2、1)出力ノード(通電先ノード)に接続されることを意味している。
【0025】
上記構成の作用について説明する。以下では、交流電源電圧の最大値(=690×√2)をインバータ主回路4に供給される直流電圧V0として定義して説明を行う。コンデンサC1ないしC3は、個体差、温度条件に応じた漏れ電流特性のバラつきがある。この漏れ電流特性の個体差に起因して、コンデンサC1ないしC3の漏れ電流が互いに異なる値となる。このため、コンデンサC1ないしC3の各端子電圧もまた互いに異なりアンバランスの原因となる。本実施形態では、コンデンサC1の漏れ電流が他のコンデンサC2及びC3の漏れ電流と異なり、端子電圧V1がコンデンサC2及びC3の端子電圧V2及びV3に比較して上昇又は下降している場合の作用説明を行う。
【0026】
コンデンサC1の漏れ電流が、他のコンデンサC2及びC3の漏れ電流よりも大きいと、コンデンサC1の端子電圧V1がコンデンサC2及びC3の端子電圧V2及びV3より低下する。すると、ノードN3が分圧電圧(2×V0/3)より上昇すると共に、ノードN4も分圧電圧(V0/3)より上昇する。
【0027】
ノードN5、N6の電圧はそれぞれ抵抗R1乃至R3の分圧電圧となっている。このため、ノードN5、N6の電圧はそれぞれ対応した分圧電圧(=2×V0/3,V0/3)となるが、ノードN5の電圧がノードN3の電圧より低くなるため、トランジスタTr2にベース電流が流れることでトランジスタTr2がオンする。
【0028】
このとき、抵抗R5は、3段分の抵抗R1乃至R3のうち2段分の抵抗(つまりR2及びR3)の抵抗値を加算した抵抗値に対応して比例する抵抗値に設定される。そして、抵抗R4は抵抗R1乃至R3のうち1段分の抵抗値に対応して比例する抵抗値に設定される。
【0029】
本実施形態において、基準電圧生成用の抵抗R1乃至R3がそれぞれ200[kΩ]に設定されるとき、抵抗R5は2段分の抵抗値に対応した抵抗値400[kΩ]に設定され、抵抗R4は1段分の抵抗値に対応した抵抗値200[kΩ]に設定される。また、その他の例を示すと、抵抗R5が2段分の抵抗値に対応した抵抗値100[kΩ]に設定されるときには、抵抗R4は1段分の抵抗値に対応した抵抗値50[kΩ]に設定される。すなわち、抵抗R4の抵抗値:抵抗R5の抵抗値=1:2となっており、これは、それぞれの段数分の抵抗値比になっている。これらの抵抗R4及びR5の抵抗値の比は、設計上、漏れ電流の補償量に応じて定められる比であるため、特に段数分の抵抗値比に定める必要はなく、その他の抵抗値に設定しても良い。
【0030】
このように、各トランジスタTr1〜Tr4のコレクタやエミッタに接続される抵抗R4〜R7が、それぞれ対応した段数分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定されていると、各コンデンサC1乃至C3にかかる電圧バランスを有効に保つことができる。このような場合、ノードN3の電圧をノードN5の電圧にほぼ一致させる方向にトランジスタTr2のエミッタコレクタ間に通電され、ノードN3の電圧をノードN5の電圧にほぼ一致させる方向に制御できる。
【0031】
逆に、コンデンサC1の漏れ電流が他のコンデンサC2及びC3の漏れ電流より小さいと、コンデンサC1の端子電圧V1がコンデンサC2及びC3の端子電圧V2及びV3より大きくなる。すると、ノードN3の電圧が標準値2×V0/3より下降する。ノードN5、N6の電圧は、それぞれ抵抗R1乃至R3の分圧電圧となるため、それぞれ、電圧=2×V0/3、V0/3となる。したがって、ノードN5の電圧がノードN3の電圧より高くなるため、トランジスタTr1にベース電流が流れトランジスタTr1がオンする。するとノードN1から抵抗R4を通じてノードN3に通電される。
【0032】
このとき、抵抗R4は3段分の抵抗R1乃至R3のうち1段分の抵抗(つまりR1)に対応して比例した抵抗値に設定されている。また、抵抗R5は2段分の抵抗(つまりR2及びR3)に対応して比例した抵抗値に設定されている。すなわち、抵抗R4が200[kΩ]に設定されているときには抵抗R5が400[kΩ]に設定されている。
【0033】
したがって、ノードN3の電圧がノードN5の電圧にほぼ一致するようにトランジスタTr1のコレクタエミッタ間に通電される。主回路コンデンサC1乃至C3のうち何れのコンデンサの漏れ電流が異なっていたとしても、各段(k=2、k=3)には電圧安定化回路72、73が設けられているため、前述説明と同様の作用に応じて電圧バランスを解消できる。
【0034】
発明者らは、コンデンサC1の漏れ電流が他のコンデンサC2及びC3の漏れ電流に比較して大きいときのコンデンサC1乃至C3の各端子電圧、漏れ電流I、抵抗R5に流れる電流特性(Tr2のON時)をシミュレーションしている。図2はコンデンサの端子電圧の漏れ電流に応じた特性を示し、図3は漏れ電流に応じて抵抗に流れる電流特性を示している。特に、図2は、その縦軸が各コンデンサの端子間電圧Vを示し、横軸はコンデンサC1で発生すると仮定した漏れ電流Iを示している。これらの図2及び図3では、コンデンサC2及びC3に流れる漏れ電流を0とした場合のシミュレーション結果を示している。
【0035】
図3に示すように、漏れ電流Iが大きくなると当該漏れ電流Iに比例した電流が抵抗R5に流れる。この作用によりノードN3の電圧が上昇し、分圧電圧の標準値2×V0/3に近づく。
【0036】
図2に示す例ではコンデンサC2及びC3の漏れ電流は0と仮定しているものの、コンデンサC1の漏れ電流Iが他のコンデンサC2及びC3の漏れ電流に比較して大きいと、図2に示すように、コンデンサC1の端子電圧V1は他のコンデンサC2及びC3の端子電圧V2及びV3より低下する。しかし、コンデンサC2及びC3の端子電圧V2及びV3をほぼ同一電圧にできるため電圧バランスを極力良好にできる。しかも、全てのコンデンサC1乃至C3の端子電圧V1乃至V3の最大値と最小値の偏差が、後述の第2の実施形態に比較して小さくなるため、後述の第2の実施形態に比較しても電圧のバランスを極力良好にできる。
【0037】
本実施形態によれば、電圧安定化回路72及び73の通電元ノードを共に第1の主電源線N1とすると共に、電圧安定化回路72及び73の通電先ノードを第2の主電源線N2としている。コンデンサC1乃至C3の共通接続ノードN3及びN4に接続される電圧安定化回路72及び73は、それぞれ、ノードN3及びN4の電圧を標準値(それぞれ2×V0/3、V0/3)に制御する。
【0038】
したがって、電圧安定化回路72はノードN3の電圧を標準値2×V0/3に近づけることができると共に、電圧安定化回路73はノードN4の電圧を標準値V0/3に近づけることができる。このため、全ての主回路コンデンサC1乃至C3の共通接続ノードN3及びN4の電圧を理想的な分圧電圧に近づけることができ、電圧のアンバランスを極力解消できる。
【0039】
また、電圧アンバランスを生じていないときには、各トランジスタTr1乃至Tr4のオフ状態が維持されるため、抵抗R4乃至R7による電力損失を生じることはなく、消費電力を抑制できる。これにより各コンデンサC1乃至C3間の漏れ電流差を補正できる。
【0040】
(第2の実施形態)
図4乃至図6は第2の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、電圧安定化回路72の通電先ノードを第3出力ノードN4とし、電圧安定化回路73の通電元ノードを第2出力ノードN3に変更したところにある。本実施形態は(n,k,a,b)=(3,2,1,1)及び(3,3,1,1)の場合の電圧安定化回路を組み合わせた一形態を示すものである。前述実施形態と同一又は類似部分については同一又は類似符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分のみ説明する。
【0041】
前述実施形態においては、電圧安定化回路72は、抵抗R5を通じて第2の主電源線N2(第n+1出力ノード)を通電先ノードとし、電圧安定化回路73は抵抗R6を通じて、第1の主電源線N1(第1出力ノード)を通電元ノードとしている。これに代わる本実施形態では図4に示すように、電圧安定化回路72の抵抗R5を通じた通電先ノードをノードN4(第3出力ノードに相当)とし、電圧安定化回路72の抵抗R6を通じた通電元ノードをノードN3(第2出力ノードに相当)としている。この回路構成では、隣接するコンデンサC1−C2間、C2−C3間で電圧のバランスを取っている点が前述実施形態の回路構成と異なっている。
【0042】
図5及び図6は、図2及び図3にそれぞれ対応した特性を示す。特に、図5は、その縦軸が各コンデンサの端子間電圧Vを示し、横軸はコンデンサC1で発生すると仮定した漏れ電流Iを示している。これらの図5及び図6では、コンデンサC2及びC3に流れる漏れ電流を0とした場合のシミュレーション結果を示している。
【0043】
図5に示す例ではコンデンサC2及びC3の漏れ電流は0と仮定しているものの、図5に示すように、コンデンサC1の漏れ電流が大きいと、コンデンサC1、C2、C3の端子電圧V1→V2→V3の順に大きくなる。コンデンサC1−C2間、C2−C3間の電圧バランスは良化するものの、コンデンサC1−C3間の電圧バランスは第1の実施形態の回路構成の方が良い。
【0044】
第1及び第2の主電源線N1及びN2間には整流及び平滑化された電圧V0が与えられるが、本実施形態ではこの電圧V0を3分割した電圧に余裕電圧を見込んだ電圧について、各トランジスタ(Tr1、Tr2、Tr3)の耐電圧とした素子を用いることができる。
【0045】
第1の実施形態では、トランジスタTr2、Tr3のエミッタコレクタ間耐圧は2段分の電圧(電圧V0の2/3)に余裕電圧を見込んだ電圧を耐電圧とすることになるものの、本実施形態では、1段分の電圧に余裕電圧を見込んだ電圧を耐電圧とすることができ、コンデンサC1乃至C3の耐電圧を極力低くした素子を採用できる。したがって、コスト面で有利な回路構成となる。
【0046】
また、図6に示すように前述実施形態に比較すると抵抗R7にも通電される。これはノードN4の電位が上昇しトランジスタTr4がオンするためである。前述実施形態では、図2に示すようにコンデンサC2及びC3の端子電圧V2及びV3がほぼ同一電圧となるものの、本実施形態の構成では、図5に示すようにコンデンサC3の端子電圧V3がコンデンサC2の端子電圧V2より高くなるため、ノードN4の電位が高くなりやすくなりトランジスタTr4もオンする。トランジスタTr4がオンすることで、ノードN4の電位を低下方向に制御できる。このように結線接続しても前述実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0047】
(第3の実施形態)
図7及び図8は第3の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、偶数個の主回路コンデンサC1乃至C4を直列接続し、直流最大電圧の1/2の電圧V0a(=V1+V2)、V0b(=V3+V4)を得られるようにしたところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分のみ説明する。
【0048】
本実施形態は(n,k,a,b)=(4,2,1,3)、(4,3,2,2)及び(4,4,3,1)の場合の電圧安定化回路72,73及び74を組み合わせた一形態を示している。なお、(n,k,a,b)の組合せ、特にa,bの組合せはこれに限定されるものではない。
【0049】
この種のインバータ装置1は、その種類に応じて直流電圧の中間電圧を得て利用することがある。このため、偶数個(例えば4個)のコンデンサC1乃至C4を直列接続し、高圧側の第1の主電源線N1と低圧側の第2の主電源線N2との間から互いに同数個のコンデンサC1及びC2と、C3及びC4との分圧電圧を得る。これにより、コンデンサC1及びC2の直列回路の電圧V0a(=V1+V2)、又は、コンデンサC3及びC4の直列回路の電圧V0b(=V3+V4)を取得することで、第1及び第2の主電源線N1及びN2間の直流電圧の1/2の電圧を出力できる。
【0050】
このような場合、図7に示すように、第1の主電源線N1及び第2の主電源線N2間には、偶数個(本実施形態では4個(=n))の抵抗R1乃至R3及びR14を直列接続すると共に、偶数個(本実施形態では4個)のコンデンサC1乃至C4を直列接続した構成を用いると良い。なお、図7にはコンデンサC1〜C4の内部抵抗をそれぞれ抵抗r1〜r4としている。
【0051】
本実施形態では図7に示すように、電圧安定化回路72、73、74が設けられている。電圧安定化回路72はトランジスタTr1及びTr2を備え、電圧安定化回路73はトランジスタTr3及びTr4を備えている。さらに電圧安定化回路74はNPN形のトランジスタTr5及びPNP形のトランジスタTr6をベース共通に接続すると共にエミッタ共通に接続して構成されている。
【0052】
トランジスタTr1のコレクタに接続される抵抗R4が通電元ノードとして第1の主電源線N1(第1出力ノード)に接続されている。トランジスタTr3のコレクタに接続される抵抗R6もまた通電元ノードとして第1の主電源線N1に接続されている。同様に、トランジスタTr5のコレクタには抵抗R10が接続されているが、この抵抗R10もまた通電元ノードとして第1の主電源線N1に接続されている。
【0053】
また、トランジスタTr2のコレクタに接続される抵抗R5が通電先ノードとして第2の主電源線N2(第5出力ノード)に接続されている。トランジスタTr4のコレクタに接続される抵抗R7もまた通電先ノードとして第2の主電源線N2に接続されている。さらに、トランジスタTr6のコレクタには抵抗R11が接続されているが、この抵抗R11もまた通電先ノードとして第2の主電源線N2に接続されている。なお、トランジスタTr5の共通ベースと共通エミッタとの間には抵抗R12が接続されている。
【0054】
抵抗R5は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14のうち3段分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定され、抵抗R4は1段分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定されている。すなわち、抵抗R4の抵抗値:抵抗R5の抵抗値=1:3に設定されている。
【0055】
抵抗R6は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14のうち2段分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定され、抵抗R7もまた2段分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定されている。すなわち、抵抗R6の抵抗値:抵抗R7の抵抗値=2:2=1:1に設定されている。
【0056】
抵抗R10は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14のうち3段分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定され、抵抗R11は1段分の抵抗値に対応して比例した抵抗値に設定されている。すなわち、抵抗R10の抵抗値:抵抗R11の抵抗値=3:1に設定されている。電圧安定化回路72は(n,k,a,b)=(4,2,1,3)の組合せに相当する構成を示す。電圧安定化回路73は(n,k,a,b)=(4,3,2,2)の組合せに相当する構成を示す。電圧安定化回路74は(n,k,a,b)=(4,4,3,1)の組合せに相当する構成を示す。
【0057】
図8に、(a)コンデンサC1の漏れ電流が多い場合、(b)コンデンサC2の漏れ電流が多い場合、(c)コンデンサC3の漏れ電流が多い場合、(d)コンデンサC4の漏れ電流が多い場合、の4パターンについて、発明者らが各コンデンサC1〜C4の端子電圧V1〜V4をシミュレーションによって検討した結果を示す。なお、各図8(a)〜図8(d)においては、漏れ電流が多い対象コンデンサ(図8(a)ではコンデンサC1)以外のコンデンサ(例えば図8(a)ではコンデンサC2乃至C4)は漏れ電流を0と仮定したシミュレーション結果を示している。
【0058】
これらの4パターンにおいて、(a)の場合には、コンデンサC1の端子電圧V1が特に低く、コンデンサC2乃至C4の端子電圧V2乃至V4はほぼ同等となっている。また(b)の場合には、端子電圧V2<V1<V3≒V4の順序で電圧の高低があることが判明している。また(c)の場合には、端子電圧V3<V1≒V2<V4の順序で電圧の高低があることが判明している。また(d)の場合には、端子電圧V4<V1≒V2≒V3の順序で電圧の高低があることが判明している。すなわち、漏れ電流の多いコンデンサの端子電圧が低くなり、その他のコンデンサの端子電圧は高くなることがわかる。
【0059】
ノードN3の電位がノードN5の電位より高いときには、トランジスTr2がオンすることでノードN3の電位がノードN5の電位にほぼ一致するように低く制御される。逆に、ノードN3の電位がノードN5の電位より低いときには、トランジスタTr1がオンすることでノードN3の電位がノードN5の電位にほぼ一致するように高く制御される。
【0060】
同様に、ノードN4の電位がノードN6の電位より高いときには、トランジスタTr4がオンすることでノードN4の電位がノードN6の電位にほぼ一致するように低く制御される。逆に、ノードN4の電位がノードN6の電位より低いときには、トランジスタTr3がオンすることでノードN4の電位がノードN6の電位にほぼ一致するように高く制御される。
【0061】
さらに同様に、コンデンサC3及びC4の共通接続ノードN7の電位が抵抗R3及びR14の共通接続ノードN8の電位より高いときには、トランジスタTr6がオンすることでノードN7の電位がノードN8の電位にほぼ一致するように低く制御される。逆に、ノードN7の電位がノードN8の電位より低いときには、トランジスタTr5がオンすることでノードN7の電位がノードN8の電位にほぼ一致するように高く制御される。このようにして前述実施形態と同様に電圧バランスを図ることができる。
【0062】
(第4の実施形態)
図9及び図10は第4の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、通電先ノード、通電元ノードを変更したところにある。
本実施形態は(n,k,a,b)=(4,2,1,1)、(4,3,2,2)及び(4,4,1,1)の場合の電圧安定化回路72,73及び74を組み合わせた一形態を示している。本実施形態では、図9に示すように、k=2の電圧安定化回路72は、トランジスタTr2のコレクタに接続される抵抗R5の通電先ノードをノードN4(第3出力ノード(b=1))としている。また、k=4の電圧安定化回路74は、トランジスタTr5のコレクタに接続される抵抗R10の通電元ノードをノードN4(第3出力ノード(a=1))としている。
【0063】
図10に、(a)コンデンサC1の漏れ電流が多い場合、(b)コンデンサC2の漏れ電流が多い場合、(c)コンデンサC3の漏れ電流が多い場合、(d)コンデンサC4の漏れ電流が多い場合、の4パターンについて発明者らが検討した結果を示す。なお、各図10(a)〜図10(d)では、漏れ電流が多い対象コンデンサ(図10(a)ではコンデンサC1)以外のコンデンサ(例えば図10(a)ではコンデンサC2乃至C4)は漏れ電流を0と仮定したシミュレーション結果を示している。
【0064】
これらの4パターンにおいて、(a)の場合にはコンデンサC1の端子電圧V1が特に低く、コンデンサC2の端子電圧V2が端子電圧V1より高くなり、コンデンサC3及びC4の端子電圧V3及びV4がほぼ同一電圧であり端子電圧V2より高くなっている。
【0065】
また(b)の場合には、端子電圧V2<V1<V3≒V4の順序で電圧の高低があることが判明している。また(c)の場合には、端子電圧V3<V1≒V2<V4の順序で電圧の高低があることが判明している。また、(d)の場合には、端子電圧V4<V3<V1≒V2の順序で電圧の高低があることが判明している。前述実施形態と同様に、漏れ電流の多いコンデンサの端子電圧が低くなり、その他のコンデンサの端子電圧が高くなっている。このような実施形態においても前述実施形態と同様の作用に応じて同様の効果が得られる。
【0066】
(第5の実施形態)
図11及び図12は第5の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、通電先ノード、通電元ノードを変更したところにある。
本実施形態は(n,k,a,b)=(4,2,1,2)、(4,3,1,1)及び(4,4,2,1)の場合の電圧安定化回路72,73、74を組み合わせた一形態を示している。本実施形態では、図11に示すように、電圧安定化回路72は、トランジスタTr1のコレクタに接続される抵抗R4の通電元ノードを第1の主電源線N1(第1出力ノード)とすると共に、トランジスタTr2のコレクタに接続される抵抗R5の通電先ノードをノードN7(第4出力ノード)としている。
【0067】
また、電圧安定化回路73は、トランジスタTr3のコレクタに接続される抵抗R6の通電元ノードをノードN3(第2出力ノード)とすると共に、トランジスタTr4のコレクタに接続される抵抗R7の通電先ノードをノードN7(第4出力ノード)としている。また、電圧安定化回路74は、トランジスタTr5のコレクタに接続される抵抗R10の通電元ノードをノードN3(第2出力ノード)とすると共に、トランジスタTr6のコレクタに接続される抵抗R11の通電先ノードを第2の主電源線N2(第5出力ノード)としている。
【0068】
図12に、(a)コンデンサC1の漏れ電流が多い場合、(b)コンデンサC2の漏れ電流が多い場合、(c)コンデンサC3の漏れ電流が多い場合、(d)コンデンサC4の漏れ電流が多い場合、の4パターンについて、発明者らが各コンデンサC1〜C4の端子電圧V1〜V4を検討した結果を示す。なお、各図12(a)〜図12(d)では、漏れ電流が多い対象コンデンサ(図12(a)ではコンデンサC1)以外のコンデンサ(例えば図12(a)ではコンデンサC2乃至C4)は漏れ電流を0と仮定したシミュレーション結果を示している。
【0069】
これらの4パターンにおいて、(a)の場合には、コンデンサC1の端子電圧V1が特に低く、コンデンサC3及びC2の端子電圧V3及びV2が端子電圧V1より高くなり、コンデンサC4の端子電圧V4が端子電圧V3及びV2より高くなっている。
【0070】
また(b)の場合には、端子電圧V2<V1≒V3<V4の順序で電圧の高低があることが判明している。また(c)の場合には、端子電圧V3<V2<V4<V1の順序で電圧の高低があることが判明している。また、(d)の場合には、端子電圧V4<V2≒V3<V1の順序で電圧の高低があることが判明している。前述実施形態と同様に、漏れ電流の多いコンデンサの端子電圧が低くなり、その他のコンデンサの端子電圧が高くなっている。このような実施形態においても前述実施形態と同様の作用に応じて同様の効果を得ることができる。
【0071】
(第6の実施形態)
図13及び図14は第6の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、通電先ノード、通電元ノードを変更したところにある。
本実施形態は(n,k,a,b)=(4,2,1,1)、(4,3,1,1)及び(4,4,1,1)の場合の電圧安定化回路72,73、74を組み合わせた一形態を示している。本実施形態では、図13に示すように、電圧安定化回路72は、トランジスタTr1のコレクタに接続される抵抗R4の通電元ノードを第1の主電源線N1(第1出力ノード)とすると共に、トランジスタTr2のコレクタに接続される抵抗R5の通電先ノードをノードN4(第3出力ノード)としている。
【0072】
また、電圧安定化回路73は、トランジスタTr3のコレクタに接続される抵抗R6の通電元ノードをノードN3(第2出力ノード)とすると共に、トランジスタTr4のコレクタに接続される抵抗R7の通電先ノードをノードN7(第4出力ノード)としている。また、電圧安定化回路74は、トランジスタTr5のコレクタに接続される抵抗R10の通電元ノードをノードN4(第3出力ノード)とすると共に、トランジスタTr6のコレクタに接続される抵抗R11の通電先ノードを第2の主電源線N2(第5出力ノード)としている。
【0073】
図14に、(a)コンデンサC1の漏れ電流が多い場合、(b)コンデンサC2の漏れ電流が多い場合、(c)コンデンサC3の漏れ電流が多い場合、(d)コンデンサC4の漏れ電流が多い場合、の4パターンについて、発明者らが各コンデンサC1〜C4の端子電圧V1〜V4をシミュレーションによって検討した結果を示す。なお、各図14(a)〜図14(d)では、漏れ電流が多い対象コンデンサ(図14(a)ではコンデンサC1)以外のコンデンサ(例えば図14(a)ではコンデンサC2乃至C4)は漏れ電流を0と仮定したシミュレーション結果を示している。
【0074】
これらの4パターンにおいて、(a)の場合には、コンデンサC1の端子電圧V1が特に低く、これに続き、コンデンサC2の端子電圧V2、コンデンサC3の端子電圧V3、コンデンサC4の端子電圧V4の順に高くなっている。
【0075】
また(b)の場合には、端子電圧V2<V1≒V3<V4の順序で電圧の高低があることが判明している。また(c)の場合には、端子電圧V3<V2<V4<V1の順序で電圧の高低があることが判明している。また、(d)の場合には、端子電圧V4<V3<V2<V1の順序で電圧の高低があることが判明している。前述実施形態と同様に、漏れ電流の多いコンデンサの端子電圧が低くなり、その他のコンデンサの端子電圧が高くなっている。このような実施形態においても、前述実施形態と同様の作用に応じて同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第3乃至第6の実施形態の相互比較)
以下、第3乃至第6の実施形態に示した回路構成の相互比較結果を説明する。各コンデンサC1〜C4の端子電圧V1〜V4のシミュレーション結果を比較して観察すると、漏れ電流に応じた電圧偏差(ある漏れ電流値に対応した端子電圧の最大値と最小値の差)は、第3の実施形態(図7図8)、第4の実施形態(図9図10)、第5の実施形態(図11図12)、第6の実施形態(図13図14)、の順に小さくなる傾向がある。すなわち、漏れ電流が大きくなったとしても、コンデンサC1〜C4の端子電圧V1〜V4の最大値−最小値の差が一番小さい回路構成は第3の実施形態(図7)であり、逆に一番大きい回路構成は第6の実施形態(図13)である。
【0077】
すなわち、第3乃至第6の実施形態に示した中では、第3の実施形態(図7)の回路構成は最も高い性能を示す回路構成であり、以下、第4の実施形態(図9)、第5の実施形態(図11)、第6の実施形態(図13)の順に高い性能を示す回路構成となる。
【0078】
他方、電圧安定化回路72、73、74を構成する各トランジスタTr1〜Tr6のコレクタエミッタ間耐圧は、通電元ノード又は通電先ノードまでの段数分の電圧に対応した耐圧に設定される。したがって、第3の実施形態(図7)では、トランジスタTr2は4段分の抵抗R1〜R3及びR14にかかる直流電圧の3段分の耐圧に設定される。
【0079】
同様に、トランジスタTr3、Tr4は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14にかかる直流電圧の2段分の耐圧に設定される。また、トランジスタTr5は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14にかかる直流電圧の3段分の耐圧に設定される。
【0080】
他方、第4の実施形態(図9)において、トランジスタTr3、Tr4は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14にかかる直流電圧の2段分の耐圧に設定される。第5の実施形態(図11)において、トランジスタTr2、Tr5は、4段分の抵抗R1〜R3及びR14にかかる直列電圧の2段分の耐圧に設定される。さらに、第6の実施形態(図13)では、トランジスタTr1〜Tr6の何れも抵抗R1〜R3及びR14にかかる直列電圧の1段分の耐圧しか必要としない。すなわち、第6の実施形態は、コレクタエミッタ間の耐電圧を低くしたトランジスタを用いて構成できる点で最も有利な回路構成となっている。
【0081】
すなわち、第3乃至第6の実施形態に示した中では、第6の実施形態(図13)の回路構成は最も耐圧性能の低いトランジスタを用いて構成できる回路であり、以下、第5の実施形態(図11)及び第4の実施形態(図9)、第3の実施形態(図7)の順に耐圧性能の低いトランジスタを用いて構成できる。耐圧性能の低いトランジスタを用いれば費用面で有利になる。すなわち、第6の実施形態(図13)の回路構成は、前述の第3乃至第6実施形態で詳細説明した回路構成の中ではコスト面で最も有利となる。前述の回路構成の何れを用いても良いが、電圧バランス性能とトランジスタの耐圧性能とをトレードオフで考慮し回路構成することが望ましい。
【0082】
(他の実施形態)
幾つかの実施形態を示したが前述説明した実施形態に限定されることはない。例えば、幾つかの電圧安定化回路72、73(、74)を備えた各実施形態を示したが、これらの電圧安定化回路における(n,k,a,b)の組合せは、前述実施形態に示した例に限られるものではない。例えば、図15に示すような(n,k,a,b)の組合せの電圧安定化回路を用いることができる。すなわち、第1実施形態、第2実施形態ではn=3の電圧安定化回路、第3乃至第6の実施形態ではn=4の電圧安定化回路を用いた例を示しているが、n≧5の場合にも適用できる。
【0083】
各トランジスタTr1−Tr2間、Tr3−Tr4間、Tr5−Tr6間の共通ベース及び共通エミッタ間に抵抗R8、R9、R12を接続した構成を示したが、これらの抵抗R8、R9、R12は必要に応じて設ければ良い。
【0084】
各トランジスタTr1〜Tr6のコレクタに接続される抵抗の抵抗値は抵抗R1〜R3、R14の各段数分に対応して比例する抵抗値に設定した形態を示しているが、各素子値のバラつき、設計値等を考慮すれば前述実施形態で示した抵抗値に厳密に設定する必要はなく適宜変更しても良い。
【0085】
(全実施形態に係る作用効果)
以上説明したように、全実施形態において次に示す作用効果を奏する。n段の抵抗体が主端子間の電圧を分圧し、n段の主回路コンデンサもまた主端子間の電圧を分圧するが、主回路コンデンサは漏れ電流を生じるため当該分圧電圧が変動する。n−1個の電圧安定化回路はそれぞれ第1および第2のトランジスタを備える。通電元ノードとなる第k−a出力ノードは、例えばa段数分に対応して比例する第1抵抗および第1のトランジスタを通じて第1および第2のトランジスタの出力端子に接続されている。
【0086】
このため、n段の抵抗体の第k基準ノードの電圧がn段の主回路コンデンサの第k出力ノードの電圧より高いときには、第k−a出力ノードから第1のトランジスタを通じてその出力端子側に通電されるようになり、該出力端子に接続される主回路コンデンサの第k出力ノードの電圧を上昇制御することができる。
【0087】
逆に、通電先ノードとなる第k+b出力ノードは、例えばb段数分の抵抗体に対応して比例する第2抵抗、および第2のトランジスタを通じて第1および第2のトランジスタの出力端子に接続されている。このため、n段の抵抗体の第k基準ノードの電圧がn段の主回路コンデンサの第k出力ノードの電圧より低いときには、出力端子から第2のトランジスタを通じて第k+b出力ノードに通電されるようになり、該出力端子に接続される主回路コンデンサの第k出力ノードの電圧を下降制御することができる。
【0088】
k(2≦k≦n)番目の電圧安定化回路は、k番目の第k出力ノードの電位を標準電圧に安定化させることができるので、全ての主回路コンデンサの共通接続ノードの電圧を標準値に近づけるように安定化させることができる。これにより、隣接した主回路コンデンサの1ペア間で電圧バランスを図りつつも、複数のペア同士で電圧バランスを図っていない従来技術に比較して、全ての主回路コンデンサの端子電圧のアンバランスを極力解消できる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、各実施形態に示した構成に限定されることはなく、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
図面中、1はインバータ装置、C1〜C4は主回路コンデンサ、R1〜R3、R14は抵抗(n段の抵抗体)、72〜74は電圧安定化回路(それぞれk段目の電圧安定化回路)、N1は第1の主電源線(第1の主端子、第1出力ノード)、N2は第2の主電源線(第2の主端子、第n+1出力ノード)、N3はノード(第2出力ノード)、N4はノード(第3出力ノード)、N7はノード(第4出力ノード)、Tr1〜Tr6はトランジスタ(Tr1,Tr3,Tr5は第1トランジスタ、Tr2,Tr4,Tr6は第2トランジスタ)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15