特許第6030910号(P6030910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030910
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ゴム部材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/10 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   B29D30/10
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-220775(P2012-220775)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-73590(P2014-73590A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】鬼松 博幸
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−126497(JP,A)
【文献】 特表2010−508172(JP,A)
【文献】 特開2011−194737(JP,A)
【文献】 特開2012−158166(JP,A)
【文献】 特開2000−043158(JP,A)
【文献】 特開2003−266555(JP,A)
【文献】 特開2009−051415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被巻付体の外側に、未加硫ゴムからなるテープ状のゴムストリップを供給しかつ巻き付けて空気入りタイヤ用の環状のゴム部材を製造するための装置であって、
未加硫ゴムを吐出口に向かって混練りしながら押進するスクリュ軸を有するゴム押出機本体と、前記ゴム押出機本体の前記吐出口に接続されたギヤポンプとを具えたゴム押出装置、
前記ゴム押出装置から押し出された前記ゴム成形体を予め定めた断面形状に圧延してゴムストリップを得るカレンダーヘッド、及び
前記ゴムストリップを前記カレンダーヘッドから受け取って前記被巻付体に供給して貼り付けるゴムアプリケータを具え、
前記ゴムアプリケータは、前記カレンダーヘッドから、フェスツーンを介することなく前記ゴムストリップを受け取り、
前記カレンダーヘッドは、ギャップを有して上下に配された一対のカレンダロールと、
前記ギヤポンプ及び前記カレンダロールの回転の停止に伴い、前記上下のカレンダロールをゴム成形体から離間させるギャップ調節手段とを具えていることを特徴とするゴム部材の製造装置。
【請求項2】
前記ゴムアプリケータは、前記ゴムストリップを搬送するコンベヤ部を有し、
前記コンベヤ部は、複数の下側案内ローラにより周回可能に案内される搬送ベルトを有する下側コンベヤ部と、
複数の上側案内ローラにより周回可能に案内された押付けベルトを有しかつ前記下側コンベヤ部の上部に設けられている上側コンベヤ部とを有し、
前記搬送ベルトと前記押付けベルトとの間で前記ゴムストリップを挟んで搬送する請求項1記載のゴム部材の製造装置。
【請求項3】
前記上側コンベヤ部は、上流側の上側コンベヤ部と、その下流側に配された下流側の上側コンベヤ部とが隙間を有して設けられている請求項2記載のゴム部材の製造装置。
【請求項4】
前記被巻付体は、仕上がりタイヤの内面形状に一致する外表面を有する中子である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被巻付体の外側に、未加硫ゴムからなるテープ状のゴムストリップを供給して巻き付けて環状のゴム部材を製造しうるゴム部材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの生カバー(生タイヤ)に用いられるゴム部材を形成する方法として、ストリップワインド工法が知られている。ストリップワインド工法では、図8に示されるように、ゴム押出装置aから連続的に押し出されるテープ状をなす未加硫のゴムストリップbを、ゴムアプリケータcを用いて、円筒状の被巻付体dに連続的に巻き重ねることにより、環状のゴム部材(例えば、トレッドゴムやサイドウォールゴム等)が形成される。このようなストリップワインド工法は、ゴムストリップの巻き付けピッチを変えることで、種々の断面形状を得ることができ汎用性が高い。また、ストリップワインド工法では、ゴム部材の在庫が不要となるため、生産性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−43908号公報
【特許文献2】特開2006−82277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゴム押出装置aには、通常、スクリュー式のものが採用される。このものは、安定したゴムの出力を得るためには、初期の予備運転時間が必要である。このため、スクリュー式のゴム押出装置aでは、頻繁に停止、軌道が繰り返えされると、安定したゴムの出力を得ることができず、歩留まりが悪い。
【0005】
このため、従来のストリップワインド工法においては、被巻付体dからゴム部材を取り外す際(又は被巻付体自体を交換する際)、ゴム押出装置aの運転を止めず、連続してゴムストリップbを押出させていた。このため、ゴム押出装置aとゴムアプリケータcとの間には、ゴムストリップbの需要と供給とのバランスを保つためのフェスツーンeが設けられていた。
【0006】
フェスツーンeは、本体fと、ゴムストリップbの長手方向と直角かつ水平な軸心を有する複数のローラgとを含んで構成されている。複数のローラgは、本体部fの上部側に回転自在に軸支された上ローラg1と、本体部fの下部側に回転自在に軸支されかつ上下に同期して移動可能な複数の下ローラg2とを含んでいる。ゴムストリップbは、これらの上下のローラg1、g2にジグザグ状に巻き掛けされている。フェスツーンeは、下ローラg2が下方に移動することにより、ゴムストリップbを一時的に滞留させることができる。
【0007】
しかしながら、上述のフェスツーンeを含むゴム部材の製造装置では、製造ラインがゴムの押出方向Aに大型化するという問題があった。また、フェスツーンfで滞留しているゴムストリップbは、空気に長時間晒されると、粘度等の物性が変化するおそれもあり、巻き付け時の特性が変化するという問題もあった。
【0008】
本発明は、以上のような問題等を解決しうるゴム部材の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、被巻付体の外側に、未加硫ゴムからなるテープ状のゴムストリップを供給しかつ巻き付けて空気入りタイヤ用の環状のゴム部材を製造するための装置であって、未加硫ゴムを吐出口に向かって混練りしながら押進するスクリュ軸を有するゴム押出機本体と、前記ゴム押出機本体の前記吐出口に接続されたギヤポンプとを具えたゴム押出装置、前記ゴム押出装置から押し出された前記ゴム成形体を予め定めた断面形状に圧延してゴムストリップを得るカレンダーヘッド、及び前記ゴムストリップを前記カレンダーヘッドから受け取って前記被巻付体に供給して貼り付けるゴムアプリケータを具え、前記ゴムアプリケータは、前記カレンダーヘッドから、フェスツーンを介することなく前記ゴムストリップを受け取り、前記カレンダーヘッドは、ギャップを有して上下に配された一対のカレンダロールと、前記ギヤポンプ及び前記カレンダロールの回転の停止に伴い、前記上下のカレンダロールをゴム成形体から離間させるギャップ調節手段とを具えていることを特徴とする。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記ゴムアプリケータは、前記ゴムストリップを搬送するコンベヤ部を有し、前記コンベヤ部は、複数の下側案内ローラにより周回可能に案内される搬送ベルトを有する下側コンベヤ部と、複数の上側案内ローラにより周回可能に案内された押付けベルトを有しかつ前記下側コンベヤ部の上部に設けられている上側コンベヤ部とを有し、前記搬送ベルトと前記押付けベルトとの間で前記ゴムストリップを挟んで搬送する請求項1記載のゴム部材の製造装置である。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記上側コンベヤ部は、上流側の上側コンベヤ部と、その下流側に配された下流側の上側コンベヤ部とが隙間を有して設けられている請求項2記載のゴム部材の製造装置である。
【0012】
また請求項4記載の発明は、前記被巻付体は、仕上がりタイヤの内面形状に一致する外表面を有する中子である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム部材の製造装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴム部材の製造装置は、ゴム押出装置を具えており、該ゴム押出装置は、スクリュ軸を有するゴム押出機本体と、このゴム押出機本体の吐出口に接続されたギヤポンプとを具えている。ギヤポンプは、スクリュー式の押出機に比べて、ゴムを安定して定量吐出することができる。従って、本発明では、ゴム押出装置の運転が頻繁に停止及び再開された場合でも、安定してゴムストリップが供給され得る。このため、ゴムアプリケータとカレンダーヘッドとの間には、フェスツーンを設ける必要がない。従って、本発明によれば、ゴム部材の製造装置を小さく構成することができる。また、フェスツーンでゴムスリップを滞留させる必要がないため、ゴムストリップが長時間空気に晒され、その物性が変化するのも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示すゴム部材の製造装置の全体側面図である。
図2図1のゴム押出装置の部分断面図である。
図3】(A)は図2のA−A断面図、(B)は図2のB−B断面図である。
図4】ゴムアプリケータを説明する部分拡大図である。
図5図4の下部側コンベヤ部の断面図である。
図6図4の上部側コンベヤ部の断面図である。
図7】切断部の拡大図である。
図8】従来のゴム部材の製造装置の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態のゴム部材の製造装置1は、回転可能な略円筒状の被巻付体2の外側に、未加硫ゴムからなるテープ状のゴムストリップG2を供給しかつ巻き付けて空気入りタイヤ用の環状のゴム部材を製造するものである。ゴム部材としては、特に限定されるものではなく、インナーライナー、トレッドゴム又はサイドウォールゴムなどが少なくとも含まれる。
【0016】
本実施形態の製造装置1は、ゴム押出装置3と、カレンダーヘッド4と、ゴムアプリケータ5とを具えている。
【0017】
図2には、ゴム押出装置3の部分断面図が示されている。ゴム押出装置3は、ゴム押出機本体6と、その吐出口6dに接続されたギヤポンプ7とを含んで構成されている。
【0018】
ゴム押出機本体6は、未加硫のゴム材料や各種の配合剤が投入される投入口6aが一端に設けられた略円筒状のシリンダ6bと、シリンダ6bの中に収納されかつ電動機M1(図1に示す)で回転駆動されるスクリュー軸6cと、スクリュー軸6cにて押し進められた未加硫ゴムを吐出する吐出口6dを有する押出ヘッド6eとを含んで構成されている。
【0019】
ギヤポンプ7は、ケーシング7aと、その内部に形成された未加硫ゴムが流れるゴムチャンバー7bと、ゴムチャンバー7b内に配されかつ互いに噛み合う一対の押出しギヤ7cとを含んだ定容積型の押出しポンプである。
【0020】
ゴムチャンバー7bは、ゴム押出方向xの上流側(以下、単に「上流側」ということがある。)に位置する入口7biと、ゴム押出方向xの下流側(以下、単に「下流側」ということがある。)に位置する出口7boと、これらの間に位置しかつ押出しギヤ7cを収容するギヤ収納空間7bmとを有する。
【0021】
ゴムチャンバー7bの入口7biは、ゴム押出機本体6の吐出口6dと連通されている。従って、ゴム押出機本体6で圧送されてきた未加硫ゴムは、ゴムチャンバー7b内へと供給される。
【0022】
押出しギヤ7cは、電動機M2により回転駆動される。これにより、入口7biからゴムチャンバー7b内に流入したゴム材料は、回転する押出しギヤ7cの歯溝内に満たされ、出口7bo側へと定量的に圧送される。
【0023】
ゴムチャンバー7bの出口7boには、押出しヘッド8が接続されている。押出しヘッド8は、ギヤポンプ7のケーシング7aの下流側に交換可能に固着されたブロック状のヘッド本体8aと、ヘッド本体8aに交換自在に取り付けられかつ開口8cを有する口金8bとを具える。従って、ゴムチャンバー7bの出口7boから圧送されるゴム材料は、押出しヘッド8の開口8cによって、予備成形されたテープ状のゴム成形体G1として押し出される。
【0024】
図3(A)には、図2のA−A断面図が示されている。図3(A)に示されるように、本実施形態の口金8bは、横長矩形をなす開口8cを有する。ゴム押出装置3は、口金8cとほぼ同じ断面形状のゴム成形体(プレストリップ)G1を連続して押し出すことができる。
【0025】
ゴム成形体G1の厚さt1及び幅w1が小さい場合、成形精度が悪化するおそれがある。逆に、ゴム成形体G1の厚さt1及び幅w1が大きい場合、ゴム部材の断面形状を精度よく形成できない傾向がある。このような観点より、ゴム成形体G1の厚さt1は、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.6mm以上であり、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。同様に、ゴム成形体G1の幅w1は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下である。ただし、ゴム成形体G1の寸法や断面形状は、上記の範囲に限定されるものではない。
【0026】
図2に示されるように、ゴム押出装置3により連続して押し出されたゴム成形体G1は、カレンダーヘッド4へと送られる。カレンダーヘッド4は、押出しヘッド8の下流側に配されてている。このカレンダーヘッド4は、ギャップを有して上下に配された一対のカレンダロール4a、4bと、一対のカレンダロール4a、4bを接近又は離間する向きに移動させるギャップ調節手段10とを具えている。
【0027】
カレンダーロール4a、4bは、それぞれフレーム本体4cに回転自在に支持されている。カレンダーロール4a、4bの回転軸は、実質的に平行である。本実施形態において、上側のカレンダーロール4aは、フレーム本体4cに昇降自在に設けられている。カレンダロール4a、4bの少なくとも一方は、電動機M3によって回転駆動される。
【0028】
ギャップ調手段10は、例えば、シリンダ等の直線動作用のアクチュエータS1を含み、フレーム本体8cの上部に固着されている。アクチュエータS1のロッドには、上側のカレンダロール4aが接続されている。従って、アクチュエータS1のロッドを伸縮させることにより、上のカレンダロール4aがフレーム本体4cに対して上下に昇降移動する。これにより、上下のカレンダロール4a、4bは、予め定められたギャップでゴム成形体G1を圧延成形を行う圧延状態と、それよりも大きいギャップとされることによりゴム成形体G1を圧延し得ない離間状態とに選択的に切り替えが可能である。本実施形態のアクチュエータは、例えば、図示しない電磁弁や電空比例弁等の少なくとも1つからなるレギュレータを使用して流体圧により制御される。
【0029】
図3(B)には、圧延状態にある図2のカレンダーヘッド4のB−B断面図が示されている。カレンダーロール4a、4b間のギャップDは、ゴム成形体G1の厚さt1よりも小さく設定されている。これにより、ゴム成形体G1は圧延され、幅w2(>w1)と厚さt2(<t1)とを有するゴムストリップG2へと成形される。
【0030】
ゴムストリップG2の厚さt2は、ゴム部材の断面形状の精度を高めるために、安定的に圧延可能な範囲で極力小さくすることが望ましい。このような観点では、ゴムストリップG2の厚さt2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上であり、また、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。ゴムストリップG2の幅w2は、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上であり、また、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下、さらに好ましくは50mmである。本実施形態のゴムストリップは、厚さt2が0.5mm、幅w2が25mmに成形されている。
【0031】
図1に示されるように、カレンダーヘッド4の下流側には、剥離ローラ12が設けられている。剥離ローラ12は、カレンダーヘッド4から押出成形されたゴムストリップG2をカレンダーロール4a、4bから剥離させ、ゴムアプリケータ5へ引き渡すものである。この剥離ローラ12は、カレンダーロール4a、4bと略等しい周速度で駆動される。また、安定した剥離効果を維持するために、剥離ローラ12は、同一形状のものが直列に2つ並べて設けられている。
【0032】
剥離ローラ12とゴムアプリケータ5との間には、ゴムストリップG2がU字に巻掛けされている回転自在なダンサローラー13が配される。このダンサローラー13は、その自重とゴムストリップG2の張力に応じて自由に昇降移動する。これにより、ゴムアプリケータ5とダンサローラー13との間をのびるゴムストリップG2には、一定の張力が与えられ、弛みが防止される。
【0033】
ゴムアプリケータ5は、ゴム押出方向xに沿ってのびる支持レール15と、支持レール15に沿って移動可能に設けられた本体16と、本体16に沿って上下に移動可能な昇降部17と、昇降部17に支柱18を介して固着されたサイドフレーム21とを含んでいる。このゴムアプリケータ5は、ダンサローラ13に接近して配置されており、ゴムアプリケータ5とダンサローラ13との間には、フェスツーンが設けられていない。また、
【0034】
図4に拡大して示されるように、サイドフレーム21には、上流側に配されたガイドローラ20と、その下流側に配されたコンベヤ部22と、コンベヤ部22の下流側に配された貼付部23と、コンベヤ部22の途中に設けられた切断部24とを含んで構成されている。
【0035】
ガイドローラ20は、水平な軸を有する回転自在なローラであり、サイドフレーム21に軸支されている。このガイドローラ20には、ゴムストリップG2が巻き掛けされている。ガイドローラ20とダンサローラ13との間には、ゴムストリップG2を受ける他のローラは設けられていない。
【0036】
ガイドローラ20の外径は、例えば、軸方向の中央部が最も大きく、かつ、軸方向の外側に向かって漸減するいわゆるクラウンローラが好ましい。このようなクラウンローラは、ゴムストリップG2の位置ズレや蛇行を自動調整し、常にローラの大径部の位置でゴムストリップG2を案内することができる。従って、ローラの大径部の位置を調節することにより、簡単な構成で、ガイドローラ20の下流側のコンベヤ部22にセンタリングしてゴムストリップG2を供給できる。
【0037】
本実施形態のコンベヤ部22は、例えば、下側コンベヤ部26と上側コンベヤ部28とを含んでいる。
【0038】
下側コンベヤ部26は、図5に単独で示されるように、サイドフレーム21に軸支された複数の下側案内ローラ30a、30b…(これらを総称するときには符号30が用いられる。)と、下側案内ローラ30により周回可能に案内される搬送ベルト31とを有している。
【0039】
下側案内ローラ30は、搬送方向の最も上流側に配される最上流ローラ30aと、搬送方向の最も下流側に配される最下流ローラ30bと、その間に配される多数のローラ30c乃至20kとを少なくとも含む。
【0040】
搬送ベルト31は、ゴムストリップG2を最上流ローラ30aの位置から最下流ローラ30bの位置まで搬送して被巻付体2へと供給する往路側領域31Fを走行する。往路側領域31Fは、搬送ベルト31では下流側の先端部を除いてほぼ平坦とされる。また、搬送ベルト31は、往路側領域31Fを走行した後、最下流ローラ30bで折り返され、再び最上流ローラ30aまで走行する帰路側領域31Rを走行する。
【0041】
本実施形態において、サイドフレーム21には、往路側領域31Fにおいて、搬送ベルト31の下面を受ける受け板部33、34及び35が設けられている。これらの受け板部33乃至35は、搬送ベルト31の下方への撓みを抑制し、搬送ベルト31を真っ直ぐに維持するのに役立つ。受け板部33と受け板部34の間には、隙間が設けられており、この隙間に、ゴムストリップG2を切断する前記切断部24が設けられている。これについては、後述する。
【0042】
上側コンベヤ部28は、図6に単独で示されるように、複数の上側案内ローラ38a、38b…(これらを総称するときには符号38が用いられる。)によって周回可能に案内される押付けベルト39を具える。本実施形態では、上流側の上側コンベヤ部28Aと、その下流側に配された下流側の上側コンベヤ部28Bとが隙間を有して設けられている。
【0043】
各上側コンベヤ部28A、28Bにおいて、複数の上側案内ローラ38は、搬送方向の最上流側ローラ38aと、搬送方向の最下流側ローラ38bと、それらの間のローラ38cとを含んでいる。各押付ベルト39は、最上流側ローラ38aと、最下流側ローラ38bとに巻き掛けされて連続周回運動を行う。また、各上側コンベヤ部28A、28Bには、押付ベルト39の内周面側を下方へ押さえ付ける押し付けローラ38dがそれぞれ設けられている。
【0044】
搬送ベルト31と押付ベルト39とは、互いに同一の速度で移動する。このために、本実施形態では、図4に示されるように、連結手段40が設けられている。連結手段40は、例えばチェーン、ベルト、スプロケット又はギヤー等を用いた周知の回転力伝達手段であり、ともに同一の外径を有する下側案内ローラ30のうちの1つのローラと、上側案内ローラ38の一つのローラとを同期させている。これにより、搬送ベルト31と押付けベルト39とは互いに同期し、同じ速度で駆動される。
【0045】
以上のように構成されたコンベヤ部22において、ゴムストリップG2の先端は、下側コンベヤ部26と上流側の上側コンベヤ部28Aとの間に挿入される。コンベヤ部22は、下側コンベヤ部26の搬送ベルト31と、上側コンベヤ部28の押付けベルト39との間でゴムストリップG2を挟み、それらの摩擦力を利用してゴムストリップG2を搬送することができる。このようなサンドウィッチ搬送方式のコンベヤ部3bは、ゴムストリップG2の粘着性を特に必要としないため、ゴムストリップG2の物性に影響を受けることなく安定して搬送することができる。
【0046】
なお、コンベヤ部22によるゴムストリップの搬送速度V2は、カレンダーヘッド4からのゴムストリップG2の供給速度V1の70〜100%の範囲が望ましい。また、ゴムストリップG2は、ダンサローラー13とコンベヤ部22との間で弛むことなく搬送される。
【0047】
貼付部23は、図4に示されるように、例えば、コンベヤ部22から送り出されたゴムストリップG2を、回転する被巻付体2に押し付ける押し付け手段である。該貼付部23は、サイドフレーム21に設けられたフレーム42を介してコンベヤ部22よりも下流側に配されたシリンダ44と、シリンダ44の伸縮するロッド先端に取り付けられた回転自在な押付ローラ46とを具えている。押付ローラ46は、シリンダ44のロッドの伸縮により、被巻付体2に対して接近および離間することができる。
【0048】
図7に拡大して示されるように、切断部24は、サイドフレーム21から上方に突出したブラケット50と、ブラケット50に設けられた例えばステッピングモータ(図示省略)によって回転駆動可能に設けられた回転軸52と、回転軸52に固着された切刃51とを含んで構成されている。
【0049】
切断部24は、上流側の上側コンベヤ部28Aと、下流側の上側コンベヤ部28B(図7では示されていない)との間に設けられている。切刃51は、例えばゴムストリップG2の幅方向にのびる平刃でも良いし、回転軸52の回りを螺旋状にのびる螺旋刃でも良い(図示省略)。好ましくは、下側案内ローラ30(30h)は、切刃51によって押し下げられた搬送ベルト31を下側から支え、その撓みや衝撃を吸収する。
【0050】
図1に示されるように、被巻付体2は、本実施形態では、円筒状のフォーマー60として構成されている。フォーマー60は、外面が、成形しようとする仕上がりタイヤの内周面形状を持っている剛性を有する中子からなる。この中子は、扇状のセグメント60aを連ねて環状に構成されており、組立式とされる。この円筒状のフォーマ60aは、フォーマ支持装置62で支持され、かつ、回転駆動される。
【0051】
フォーマ支持装置62は、ゴム押出方向xと直交する向きにのびる水平なレール64と、このレール64に沿って移動しうるスライド部66と、このスライド部66に対して垂直なz軸周りに傾動可能に支持されている本体部68と、この本体部68から上方にのびフォーマ60を片持ち状に支持するチャック部を具えた支持部69とを含んで構成されている。
【0052】
以上のように構成されたゴム部材の製造装置1の作用について述べる。ゴム押出装置3から押出しされたゴム成形体G1は、カレンダーヘッド4で圧延される。この圧延により、予め定められた寸法の薄いゴムストリップG2が連続して得られる。ゴムストリップG2は、剥離ローラ12、ダンサローラ13を経て、フェスツーンなどを介在させることなく、直接、ゴムアプリケータ5へと供給される。
【0053】
ゴムアプリケータ5では、コンベヤ部22によってゴムストリップG2が被巻付体2まで搬送される。ゴムストリップG2の一端は、被巻付体2に固着され、該被巻付体2の回転により、順次、螺旋状に巻き付けられていく。必要により、フォーマー60を適宜移動させることにより、ゴムストリップG2の巻き付けピッチなどを変化させ、種々の断面形状のゴム部材を形成することができる。
【0054】
フォーマー60上へのゴムストリップG2の巻き付けが終わると、切断部24は、図7で示したように、回転軸52を、ゴムストリップG2の搬送方向に同期する向きで1回転させる。これにより、切刃51は、回転し、ゴムストリップG2を押圧する。切刃51の周速度は、コンベヤ部22を搬送されているゴムストリップG2の速度と等しいことが望ましい。そして、切刃51により押圧されたゴムストリップG2及び搬送ベルト31は、切刃51と下側案内ローラ30とで挟まれる。これにより、ゴムストリップG2が切断される。ゴムストリップG2を切断するタイミングは、予め制御装置で制御される。
【0055】
切断24によるゴムストリップG2の切断の後、直ちに、コンベヤ部22の搬送、ギヤポンプ7の運転、及び、カレンダーロール4a、4bの回転それぞれが停止される。これにより、ゴム押出装置3と、ゴムアプリケータ5との間で、ゴムストリップG2の需要と供給のバランスも一致する。
【0056】
一方、ゴム押出機本体6(スクリュー軸6c)は、運転を停止させることなく、連続運転させておく。ギヤポンプ7は運転を停止させているため、ゴムはシリンダ内を適宜循環し、シリンダ6b内のゴム圧力を高く維持することができる。これは、ギヤポンプ7の運転再開時、直ちにゴムを定量で吐出させるのに役立つ。
【0057】
また、カレンダーロール4a、4bは、回転の停止に伴い、離間状態とされるのが好ましい。ゴムの圧延成形時、ゴムを圧延した状態でカレンダロール4a、4bの回転を停止させると、それらに挟まれているゴムはクリープが生じ、厚さが次第に薄くなり、運転再開時にこの部分でゴムが切断され易い。特に、運転再開時には、カレンダーヘッド4とゴム押出装置3との起動タイミングの微妙なずれによっても、ゴム成形体G1は、大きな引張り応力を受けて切断しやすい。
【0058】
これに対して、本実施形態のように、カレンダロール4a、4bの停止状態において、上下のカレンダロール4a、4bを離間状態とすることにより、これらの間に存在しているゴム成形体G1は、上下のカレンダロール4a、4bからの押圧力から解放される。このため、クリープ等によるゴム成形体G1の厚さの減少が抑えられる。従って、この実施態様によれば、運転停止時、ゴム成形体G1又はゴムストリップG2の切断を抑制でき、安定して断続的なゴムストリップの供給が可能である。
【0059】
本実施形態において、ゴム部材が成形されたフォーマ60は、他のフォーマ60と交換される。フォーマ60の交換を終えると、カレンダーロール4a、4bのギャップが圧延状態に調整され、直ちに、コンベヤ部22の搬送、ギヤポンプ7の運転、及び、カレンダーロール4a、4bの回転それぞれが再開される。ゴム押出機本体6は連続運転をしているため、ギヤポンプ7のゴムチャンバー7b内にゴムが満たされている。従って、ギヤポンプ7は、運転の再開と同時に、安定してゴム成形体G1を出力することができる。
【0060】
以上、本発明によれば、ゴム押出装置3を断続的に運転させつつも、フェスツーンといった大型の設備を省略することができる。従って、装置スペースを小さくでき、かつ、安価になる。
【0061】
本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【符号の説明】
【0062】
1 ゴム部材の製造装置
2 被巻付体
3 ゴム押出装置
4 カレンダーヘッド
5 ゴムアプリケータ
6 ゴム押出機本体
6b スクリュー軸
7 ギヤポンプ
G1 ゴム成形体
G2 ゴムストリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8