(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030921
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】水性インクジェットプリンタ用インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/326 20140101AFI20161114BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20161114BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
C09D11/326
B41M5/00 E
B41J2/01 501
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-241819(P2012-241819)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-91760(P2014-91760A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 史雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【審査官】
牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−292838(JP,A)
【文献】
特開2006−249393(JP,A)
【文献】
特開2010−159372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
B41J 2/01〜 2/21
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己分散型顔料と、
2−エチル−1,3 −ヘキサンジオールと、
1,6−ヘキサンジオールと、
メタクリル酸ステアリルまたはアクリル酸n−ヘキサデシル、メタクリル酸メチル、アクリル酸およびα−メチルスチレンの共重合体と、
を含有し、
前記2−エチル−1,3 −ヘキサンジオールの含有濃度が1〜10重量%、
前記1,6−ヘキサンジオールの含有濃度が2〜15重量%、
であることを特徴とする水性イクジェットプリンタ用インク。
【請求項2】
基材となる紙に請求項1記載の水性インクジェットプリンタ用インクを付着させてなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性のインクジェットプリンタ用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は本体が小型で価格が安く、低ランニングコスト、低騒音といった利点から近年急速に普及している。また、電子写真用転写紙、印刷用紙、タイプライター用紙、ワイヤードットプリンタ用紙、ワードプロセッサー用紙、レター用紙、レポート用紙等種々のノンコートな普通紙に印字可能なインクジェットプリンタも市場に投入されている。これらインクジェットプリンタにおいて、より高品位な画像が得られるようにインクの吸収性を改善した提案が種々されている。
【0003】
特許文献1には、インクの浸透性を高めることにより乾燥性を向上しようとする技術が開示されているが、界面活性剤の使用量が多いため、紙の種類により著しく滲んでしまう。
【0004】
また、特許文献2には水に分散または溶解する着色剤、水及び湿潤剤を含有し、さらに2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを含有することを特徴とする水性インクが開示され、インクジェットインクとして諸特性を満足し、浸透性、乾燥性に優れ、かつ画質劣化の改良された水性インク記録組成物を提供できるとしている。
【0005】
特許文献3には、色材と、20℃の水に対する溶解度が0.2重量%以上4.5重量%未満のポリオールの少なくとも一つと、11種の化合物の中から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする水性記録液が開示されている。 そこでは、近年のめまぐるしい技術の進歩により、インクジェットプリンタの出力速度の高速化が進む状況下で、インクはより一層の高速印字においても、カラーブリードを起こさず、出力後、こすっても手指を汚すことなく、即座に乾燥することが求められるが、乾燥性の高いインクは、紙への浸透性を向上させる一方で、着色剤が紙の厚み方向に侵入することにより、画像濃度低下、裏抜け濃度増大という欠点を有し、紙消費の点から両面印字が必須になる状況において、高乾燥性の一方で、両面印字を可能とする裏抜けの少ない水性インクが求められているとしている。
【0006】
特許文献4には、少なくとも、水と、水に溶解または分散する着色剤と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと、炭素数4以下のジオール誘導体と、水溶性有機溶剤とをインク組成物として含有することを特徴とする水性記録液が開示され、高速印字が可能なインクジェットプリンタにおいて特別な乾燥装置を使用しなくても実用上十分な乾燥性を有し、画像の裏抜けあるいは滲み等の画像劣化のない水性記録液およびこれを用いた記録方法を提供することができるとしている。
【0007】
なお、特許文献5には、「メタクリル酸メチル又はメタクリル酸エチルと、アクリル酸と、スチレンとのコポリマー」である有機高分子化合物(A)および「メタクリル酸ステアリルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸と、α−メチルスチレンとのコポリマー」である有機高分子化合物(B)を用いた保存安定性に優れたインクジェット用水性組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭55−29546号公報
【特許文献2】特開平6−157959号公報
【特許文献3】特開2001−254037号公報
【特許文献4】特開2004−182889号公報
【特許文献5】特開2003−292838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在では、さらなる高速印刷の要請に応えることのできるインクジェットプリンタ用インクが求められている。例えば、印刷物をグラビア印刷で高速印刷した後、続けてインクジェットプリンタで付加的情報を印字するような場合や、インクジェットプリンタで印字直後にオーバーコートするような場合、生産性の観点から印字品質を維持した上で、グラビア印刷の印刷速度と遜色ない印刷速度に対応できるインクジェットプリンタ用インクが必要とされる。
また、ラベル用紙、写真用紙、印画紙等のコート紙では溶剤の浸透性は良いが、水の浸透性は悪い。従って、その印刷に用いるインクジェットプリンタ用インクでは浸透乾燥性を上げるには溶剤を多く使用する必要があった。しかしながら、一方で、環境への影響を考慮してインクの水性化も求められている。
このような要請から、高速で印字可能で、環境への影響の少ない水性のインクジェットプリンタ用インクが求められている。
【0010】
従って、本発明は、上質紙、中質紙、コート紙等の紙の種類を問わず、グラビア印刷等の汎用印刷方法と同等程度の印刷速度でも印刷品質を落とすことなく印刷可能な水性のインクジェットプリンタ用インクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討した結果、紙の種類を問わず、乾燥性に優れ、裏抜けすることもなく、印字品質を落とすことなく、高速で印刷可能な水性のインクジェットプリンタ用インクを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) 自己分散型顔料
と、2−エチル−1,3 −ヘキサンジオール
と、1,6−ヘキサンジオール
と、メタクリル酸ステアリル
またはアクリル酸n−ヘキサデシル、メタクリル酸メチル、アクリル酸
およびα−メチルスチレンの共重合体
と、を含有
し、
前記2−エチル−1,3 −ヘキサンジオールの含有濃度が1〜10重量%、
前記1,6−ヘキサンジオールの含有濃度が2〜15重量%、
であることを特徴とする水性イクジェットプリンタ用インクンク、
(2) 基材となる紙に(1)記載の水性インクジェットプリンタ用インクを
付着させてなる印刷物、
である。
【0013】
ここで、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールは印刷用紙への浸透性を向上させることによって印刷物表面の乾燥性向上に寄与し、1,6-ヘキサンジオールはインク成分の相溶性向上に効果がある。また、メタクリル酸ステアリルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸と、α−メチルスチレンとの共重合体は、特許文献5の有機高分子化合物(B)に相当するものであるが、水性のインクジェットプリンタ用インクに定着安定性と耐水性とを与える効果を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性インクジェットプリンタ用インクは、乾燥性と定着安定性に優れるため上質紙、中質紙、コート紙等の紙の種類を問わずに、印字品質を落とすことなく、また、裏抜けせずに、高速で印刷できる。
従って、当該水性インクジェットプリンタ用インクは、印刷物をグラビア印刷で高速印刷した後、続けてインクジェットプリンタで付加的情報を印字する場合、インクジェットプリンタで印字直後にオーバーコートする場合など、グラビア印刷やオーバーコートの印刷速度と遜色ない印刷速度で印刷可能となる。また、その得られた印刷物は、高速で印刷してもカスレや滲みのない優れた印刷物となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0016】
本発明の水性インクジェットプリンタ用インクは、自己分散型顔料、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびメタクリル酸ステアリルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸と、α−メチルスチレンとの共重合体を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明で用いる着色剤としては、顔料の表面に少なくとも1種の親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合された自己分散型顔料が好適である。
分散剤が含有されたインクは、インクジェット記録に用いられた場合、分散剤を形成している樹脂が記録ヘッドのオリフィス等に付着すると、記録ヘッドに、目詰まりやインクの不吐出等の問題が発生する場合があるので好ましくない。
また、水溶性染料は、耐水性や耐光性などの堅牢性を考慮すると本発明で用いる着色剤としては不適である。
【0018】
本発明で用いられる自己分散型顔料としては、いずれもその表面を親水処理されたカーボンブラック、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が用いられる。
【0019】
親水処理により得られる親水性基として、アニオン性に帯電した顔料表面に結合されている例では、−COOM、−SO
3M、−PO
3HM、−PO
3M
2、−SO
2NH
2、−SO
3NHCOR等が挙げられる。なお、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。
【0020】
これらの中で、−COOM、−SO
3Mを親水性基として有するものを好ましく用いられる。上記親水性基中のMは、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等、有機アンモニウムとしては、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。また、カチオン性の親水性基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましく用いられる。
【0021】
これらの自己分散型顔料は通常、水分散体として入手でき、その使用量は要求される印字の濃度に依存するが、固形物としてインクの0.1〜5.0重量%である。5.0重量%を超えるとインクの保存安定性に問題が出ることがある。
【0022】
本発明で用いる2−エチル−1,3−ヘキサンジオールは、インクの吐出を安定させるために添加されるが、熱素子への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性及び周波数安定性を達成できるだけでなく、印字される紙への浸透乾燥性を増加させる効果を有する。従って、塗工量の多いコート紙においても浸透性がよいため結果として印字表面が乾燥状態となり色移りを防止する。
この2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの添加量はインクの1〜10重量%である。1%未満ではインクの浸透性が不十分で、10%を越えるとインクの安定性が悪くなるため好ましくない。
【0023】
本発明のインクジェット用インクには、湿潤剤として、低揮発性水溶性有機溶媒が用いられる。低揮発性水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等のグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリコール等の含硫黄化合物類;プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは、複数混合して用いられる。
【0024】
これらの中で、1,6-ヘキサンジオールは相溶化剤としても機能し、インクの保存安定性、噴射安定性を高めることができる。その使用量は、インクに対し2〜15重量%である。2%未満ではインクの相溶性が不十分で、15%を越えると乾燥性が不十分となるといった問題が生じる。
【0025】
他に、湿潤剤としてグリセリンおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等のグリコールエーテル類から選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。これらは、インクジェットプリンタ用インクの浸透乾燥性および相溶性に補助的な役割を果たすが、粘度を所望の範囲とするため添加量を適宜調整して添加される。
【0026】
さらに、本発明のインクジェット用インクは、印字したときそれに定着安定性と耐水性を付与するため、メタクリル酸ステアリルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸と、α−メチルスチレンとの共重合体(共重合体A)を含有する。
【0027】
共重合体Aは、重量平均分子量が10,000〜300,000の範囲が好ましく、20,000〜100,000の範囲であるのがより好ましい。重量平均分子量が10,000よりも小さいと、インクジェットプリンタ用インクを製造した際に経時安定性が悪く、他方、重量平均分子量が300,000よりも大きいと、水への溶解性が悪くなりかつ粘度が高くなり、インクジェットプリンタ用インクが吐出不良を起こすため、好ましくない。ここで、重量平均分子量は、GPC法(ポリスチレン換算)による測定値である。
【0028】
共重合体Aは、酸価が50〜200KOHmg/gが好ましく、80〜150KOHmg/gであるのがより好ましい。酸価が50よりも小さいと疎水性が強くなるため水への溶解度が低くなり、他方、酸価が200よりも大きいと親水性が強くなり、塗膜の耐水性が著しく低下するので、好ましくない。
【0029】
また、共重合体Aは、DSC法で測定したガラス転移点が50℃より高いことが好ましい。50℃以下ではベタつくためブロッキングが生じやすくなる。
【0030】
共重合体Aの使用量は、インクに対し0.2〜1重量%である。0.2%未満では印字の定着安定性および耐水性が劣り、1%を超えるとインクの粘度上昇のため好ましくない。
【0031】
なお、共重合体Aは、細かく粉砕して、中和量の水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン等の塩基性化合物を溶解した水に加え、撹拌混合しながら60〜100℃に加熱して溶解させたワニスとして使用するのが好ましい。このワニスには、保存安定性を付与するため適宜、エタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類を添加しても良い。
【0032】
本発明のインクジェットプリンタ用インクは、上記で説明してきた成分と水(好ましくは純水)とを混合することによって製造される。上記の説明に従って混合すれば均一となり、分離したり、沈殿物が生じたりすることはない。また、適宜、消泡剤、防錆剤、防黴剤等の添加物をインクの物性を損なわない範囲であれば添加しても良い。
【0033】
本発明のインクジェットプリンタ用インクは、その粘度を所望の値に調節する必要がある。ヘッドの吐出力に依存するものの、一般にインクの粘度は10mPa・s以下であることが好ましい。10mPa・s以下であることによりインクジェットにて十分な吐出が行え、印字が良好なものとなる。
【0034】
本発明のインクジェットプリンタ用インクで印刷する基材としては、紙質を選ばず上質紙、中質紙、コート紙等を好適に用いることができる。特に、低速ではもちろんであるが、印字速度が170m/min以上の高速印字においても印字がカスレたり、滲んだりすることがない。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0036】
<共重合体Aの製造>
撹拌機、還流冷却装置、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル400部を仕込み、80℃で、窒素ガスを導入しながら、表1の組成比率のモノマー混合物200部及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド1〜3部の混合物を2時間かけて滴下した。さらに、80℃に保ちながら、2時間反応させた後に、酢酸エチルを減圧下で除去して表1の共重合体A1〜A3を得た。
次いで、共重合体A1〜A3のそれぞれ150部を細かく粉砕して、中和量の水酸化カリウムを混合した純水350部に加え、撹拌混合しながら80℃に加熱して溶解させた後、濃度10%となるように純水を加えてそれぞれ共重合体A1〜A3のワニスA1〜A3を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
「実施例および比較例」
表2の組成で、実施例1〜5および比較例1〜5のインクを作製し、相溶性、粘度および保存安定性の下記3項目の評価試験を行った。
【0039】
【表2】
【0040】
<相溶性>
実施例および比較例のインクの成分を混合したとき濁りなく透明なものを相溶性あり(○)として評価した。なお、相溶性のないものおよび保存安定性の悪いもの(×)は実施不能として他の評価を中止した。
【0041】
<粘度>
実施例および比較例のインクについて、コーンプレート型粘度計TV−22(東機産業(株)製)を用いて、25℃における粘度を測定し、3〜10mPa・secを合格レベル○とした。
【0042】
<保存安定性>
表3記載の組成物を、5℃および45℃のオーブンに3日間保存し、粘度変化が初期粘度から±5%未満で、析出、沈降等がなければ合格○とし、それ以外を不合格×とした。
【0043】
印刷試験1
実施例および比較例のインクを用いて、印刷基材としてUFコート(王子製紙(株)製)を用い、トライテック(株)製 ロールジェット印刷試験機を用い170m/minで印刷し、得られた印刷物について、鮮明性、乾燥性(裏移り)および擦過性の評価試験を実施した。
【0044】
印刷試験2
さらに、印刷基材として金陵(三菱製紙(株)製)を用い、トライテック(株)製 ロールジェット印刷試験機を用い170m/minで印刷し、得られた印刷物について、鮮明性、乾燥性(裏移り)、擦過性および裏抜け性の評価試験を実施した。
【0045】
<鮮明性>
印字、乾燥後、2色重ね部境界の惨み、画像惨み、色調、濃度を目視および反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製) により総合的に判断し、良好なものを○、悪いものを×として評価した。
【0046】
<乾燥性(裏移り)>
印刷基材に170m/minでべタ印刷し、巻き取った紙の裏側が汚れてしまったものを×、汚れなかったものを○と判定した。
【0047】
<擦過性>
印刷画像を、印字30秒後に指、布、消しゴム、マーキングペンで擦過し、擦過後の様子を目視にて観察し擦過による画像の変化が発生した場合は×とし、発生がなければ○とした。
【0048】
<裏抜け性>
得られた印刷物の裏面を観察し裏側にインクが滲んでいるものを×、滲んでいないものを○として評価した。
【0049】
以上の評価試験結果を表3にまとめた。
【0050】
【表3】