(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体であって、
前記マーカーは、前記反射面と、前記反射面と反対側に位置し前記移動体に固着される固着面と、前記反射面と前記固着面とを継ぐ側面とを有し、
前記マーカーの前記側面は、前記反射面と直角な横断面において、前記固着面から前記反射面に向かってテーパ状となる向きに傾斜していることを特徴とする移動体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動体の姿勢が計算される際、撮影された画像から各マーカーの輪郭が抽出され、各マーカーの特定の位置(例えば図心)が計算される。
【0007】
しかしながら、移動体がゴルフクラブヘッド、バット、テニスラケット等のスポーツ用具である場合、ボールがマーカーに衝突することにより、マーカーの剥がれや位置ずれが生じるという問題があった。そのため、ユーザーは、頻繁に、マーカーを貼り替える必要があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、マーカーの剥がれや位置ずれを長期に亘って抑制しうる移動体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体であって、前記マーカーは、前記反射面と、前記反射面と反対側に位置し前記移動体に固着される固着面と、前記反射面と前記固着面とを継ぐ側面とを有し、前記マーカーの前記側面は、前記反射面と直角な横断面において、前記固着面から前記反射面に向かってテーパ状となる向きに傾斜していることを特徴とする。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記マーカーは、前記横断面において、前記反射面の長さと前記固着面の長さの差が0.2mm以上である請求項1記載の移動体である。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記マーカーは、前記横断面において、前記反射面の長さと前記固着面の長さの差が2〜4mmである請求項1又は2に記載の移動体である。
【0012】
また請求項4記載の発明は、前記移動体には、表面が凹まされた凹部が形成されており、前記マーカーは、前記凹部に固着されている請求項1乃至3のいずれかに記載の移動体である。
【0013】
また請求項5記載の発明は、前記凹部の輪郭形状は、前記マーカーの前記固着面の輪郭形状と一致している請求項4記載の移動体である。
【0014】
また請求項6記載の発明は、前記凹部の底面は、平面である請求項4又は5に記載の移動体である。
【0015】
また請求項7記載の発明は、前記移動体は、プレーヤーの操作によって移動するスポーツ用具である請求項1乃至6のいずれかに記載の移動体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、移動体に固着されたマーカーは、反射面と、前記反射面と反対側に位置し前記移動体に固着される固着面と、前記反射面と前記固着面とを継ぐ側面とを有する。前記マーカーの前記側面は、前記反射面と直角な横断面において、前記固着面から前記反射面に向かってテーパ状となる向きに傾斜している。このため、例えば、側面に反射面に沿った向きの外力を受けた場合でも、その一部は側面に沿って逃げ、マーカーを剥がす力が軽減される。従って、マーカーの剥がれや位置ずれ等が長期に亘って抑制される。また、マーカーを貼り替える回数が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明では、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程(撮像工程)と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程(計算工程)とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体が提供される。先ず、撮像工程及び計算工程が、簡単に説明される。
【0019】
図1には、撮像工程に用いられる計測装置10の全体構成図の一例が、
図2にはその正面図がそれぞれ示されている。この計測装置10は、移動体として、ゴルフクラブ1のクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)2を撮像する。ゴルフクラブ1のヘッド2は、それ自体では動かないが、ゴルファMのスイングによって移動体となり得る。移動体は、ヘッド2に限定されず、移動可能な物であれば、あらゆるものが対象となる。
【0020】
図1の実施形態では、右打ちのゴルファMが示されている。ゴルファMのスイングによって、ゴルフボール3は、
図1のアドレス姿勢にあるゴルファMの左向きに打ち出される。ただし、ゴルファMは、スイングロボット等で代用されても良い。
【0021】
計測装置10は、例えば、基台12、ゴルフクラブ1のヘッド2を撮影するための第1カメラ14、ゴルフボール3を撮影するための第2カメラ16、各カメラ14、16を制御する制御装置18、及び各カメラ14、16が撮像した情報を記録するコンピュータ20を含んで構成されている。
【0022】
基台12は、板状であり、例えば、計測室の床面に置かれている。本実施形態の基台12には、ゴルファMが立ってアドレスする床板21が置かれている。床板21には、ゴルフボール3を置くためのティー23が設けられている。
【0023】
基台12には、上方にのびる支柱24が設けられている。支柱24の上部には、ゴルフクラブ1のヘッド2に向けて発光するストロボ25が設けられている。
【0024】
なお、説明の便宜上、
図1及び
図2に示されるように、計測装置10に、X軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標が定義される。X軸は、地面に平行であり、かつ、打球前のボール3と目標方向とを結ぶ直線に平行である。Z軸は、鉛直方向である。Y軸は、X軸及びZにともに垂直である。
【0025】
基台12には、トリガーセンサー26が設けられている。トリガーセンサー26は、スイングをするゴルファMの前方(腹側)に設けられた投光器26aと、ゴルファMの後方(背中側)に設けられかつ投光器26aの光を受ける受光器26bとの組み合わせである。トリガーセンサー26は、ダウンスイング時のゴルフクラブ1の通過により、投光器26aからY軸方向に発せられる光が遮られるように位置合わせされている。
【0026】
基台12には、さらに第1センサー27が設けられている。第1センサー27は、スイングをするゴルファMの前方に設けられた投光器27aと、ゴルファMの後方に設けられかつ投光器27aの光を受ける受光器27bとを具えている。第1センサー27は、トリガーセンサー26よりもX軸方向において、スイング前方(打撃されたゴルフボール3の飛球方向)に設けられている。従って、ダウンスイング時、第1センサー27は、トリガーセンサー26よりもわずかに遅れてスイング中のゴルフクラブ1を検出することができる。
【0027】
基台12には、さらに第2センサー28が設けられている。第2センサー28も、スイングをするゴルファMの前方に設けられた投光器28aと、ゴルファMの後方に設けられかつ投光器28aの光を受ける受光器28bとを具えている。第2センサー28は、第1センサー27よりもX軸方向において、スイング前方に設けられている。従って、第2センサー28は、ダウンスイング時、第1センサー27よりもわずかに遅れてスイング中のゴルフクラブ1を検出することができる。
【0028】
第1カメラ14は、ゴルフクラブ1のヘッド2の打撃面であるフェースを撮影可能なように、ゴルファMの前方に設けられている。
【0029】
第2カメラ16は、打ち出されたゴルフボール3を側方から撮影可能なように、ティー23よりゴルファMの前方、かつ、X軸方向において、スイング前方に設けられている。第2カメラ16の周囲には、ストロボ29が設けられている。
【0030】
図3はクラブヘッド2の正面図、
図4はその平面図をそれぞれ示している。該ヘッド2は、ゴルフボールを打撃する面であるフェース2aを含んでいる。
【0031】
クラブヘッド2には、マーカー30が設けられている。マーカー30には、例えば、光を反射する反射テープが用いられている。ヘッド2には、複数のマーカー30、好ましくは、1撮影フレーム内に3個以上のマーカー30が設けられているのが望ましい。マーカー30は、例えば、フェース2aに設けられている。この実施形態では、4つのマーカー30a乃至30dが、ヘッド2のフェース2aに固着されている。マーカー30は、移動体としてのクラブヘッド2の姿勢等を計測するために、移動体に固着されるもので、本来的に移動体の一部を構成する部材とは異なっている。
【0032】
各マーカー30a乃至30dは、白い反射テープからなる。各マーカー30a乃至30dにおいて、その重心は、例えば、各マーカー30の特定の位置(代表点)として定義され得る。マーカー30のサイズ等は、任意に定められる。本実施形態のマーカー30a乃至30dは、いずれも円形の輪郭を持っている。ただし、マーカー30a乃至30dは、矩形状や三角形状の輪郭を持つものでも良い。
【0033】
制御装置18には、第1カメラ14、第2カメラ16、トリガーセンサー26、第1センサー27、第2センサー28、ストロボ25、ストロボ29及びコンピュータ20が接続されている。
【0034】
制御装置18の作用は次の通りである。ゴルファMによってゴルフスイングが開始されると、制御装置18には、トリガーセンサー26がダウンスイング中のゴルフクラブ1の検出したこと示す検出信号が入力される。この検出信号に基づき、制御装置18は、第1カメラ14及び第2カメラ16に撮影を開始させる撮影開始信号を出力する。
【0035】
この撮影開始信号に基づき、第1カメラ14のシャッターが、所定時間(例えば1/30秒)開かれる。シャッターが開いている間、制御装置18には、第1センサー27及び第2センサー28がゴルフクラブ1のヘッド2又はシャフトを検出したことを示す検出信号が順次入力される。制御装置18は、第1センサー27からの検出信号に基づいて、ストロボ25を発光させる信号を出力する。その後、制御装置18は、第2センサー28からの検出信号に基づき、ストロボ29を発光させる信号を出力する。
【0036】
従って、シャッターが開いている間に、ストロボ25及びストロボ29が順次発光する。これにより、第1カメラ14には、第1センサー27で検出されたときのクラブヘッド2と、第2センサー28で検出されたときのクラブヘッド2とが含まれる1枚の画像データを撮像しうる。従って、本実施形態では、移動体としてのクラブヘッド2は、1台のカメラで撮影される。また、第2カメラ16は、打撃されたゴルフボール3を撮影する。
【0037】
第1カメラ14及び第2カメラ16によって撮影された画像データは、コンピュータ20へと出力される。
【0038】
コンピュータ20には、プログラムが記憶されている。このプログラムは、撮像工程で得られた上記画像を処理し、ヘッド2の位置及び姿勢を計算する計算工程をコンピュータ20に実行させる。
【0039】
上記計算工程は、例えば、次のステップa乃至dを含む。
(a)得られたヘッド2の画像から各マーカー30を特定
(b)各マーカー30の三次元位置の算出
(c)上記三次元位置に基づき、ヘッド2の位置、姿勢等の計算
(d)計算結果の出力
【0040】
[ステップa]
ステップaは、手動又は自動で行われる。ステップaが手動で行われる場合、ユーザーは、画像の中からマーカー30を肉眼で判別し、マーカー30の位置情報等をコンピュータ20に入力する。ステップaが自動で行われる場合、一般的には、コンピュータ20が、画像の各画素に対して、輝度情報等を利用して周知のエッジ抽出処理等を行う。これにより、画像の中から各マーカー30が抽出される。
【0041】
[ステップb]
ステップbでは、各マーカー30の三次元の座標が計算される。この計算方法の一例として、上で述べたDLT法が知られている。DLT法は、異なる方向から見た複数の画像を用いて特定の位置の三次元の空間座標を得る方法である。DLT法では、三次元座標が既知である点(コントロールポイント)の画像に基づき、その三次元座標が再構築される。
【0042】
図5には、実空間(Object space)にある点Pをカメラで撮影した場合において、実空間での座標(X,Y,Z)と、カメラのフィルム面上(Digitizing plane)の座標(U,V)との関係が示されている。点Oはカメラのレンズ中心点である。座標系X’Y’Z’は、点Oを原点とし、フィルム面上座標系UVとX’軸及びY’軸とが平行な座標系である。距離Lは、点Oから点PまでのZ’軸上の距離である。距離Fは、点Oから点Q(点Pの写像)までのZ’軸上の距離である。点(U,V)はZ’軸を含む直線とフィルム面との交点である。この場合、以下の説明及び式(F1)が成立する。
【0044】
上記式(F1)の11個のカメラ定数を求めるには、先ず、実空間座標(X,Y,Z)とフィルム面上座標(U,V)が既知である6点以上がカメラで撮影される。次に、各点の(X,Y,Z)と(U,V)を式(F1)に代入し、合計12個以上の方程式が設定される。そして、これらの方程式を最小二乗法によって解くことにより、11個のカメラ定数が求められる(キャリブレーション)。11個のカメラ定数が求まれば、実空間座標(X,Y,Z)が既知の点について、そのフィルム面上座標(U,V)を求めることができる。
【0045】
反対に、フィルム面上座標(U,V)から、実空間座標(X,Y,Z)を求めるには、カメラ定数が既知の2台以上のカメラを用いて同じ点を撮影し、得られた(U1,V1),(U2,V2)…を上式に代入することで4個以上の方程式を設定し、最小二乗法で(X,Y,Z)が求められる。
【0046】
上記の方法では、空間上の独立した1点の座標を求めるにはカメラが2台必要である。しかしながら、大きさのある物体に固定された複数点の座標については、各点間の位置関係(即ち、物体座標系における各点の座標)が既知であれば、その関係式が空間座標(X,Y,Z)を求めるための方程式に加わるので、複数点の座標を求めることができる。
【0047】
[ステップc]
物体座標系(クラブヘッド2の座標系)における各マーカー30の座標は、例えば、物体を三次元形状測定することで得られる。以下、物体の代表点の空間座標(X,Y,Z)と物体の姿勢(α,β,γ)とを未知数として解く場合について述べる。
【0049】
なお、上記式(F3)において、R
i(x)はR
iのx成分、R
i(y)はR
iのy成分、R
i(z)はR
iのz成分をそれぞれ表している。
【0050】
未知数が6個でありかつ式の数が2n個である連立方程式(F3)は、ニュートンラフソン法(非線形連立方程式の解法)で解くことができる。これにより、6個の未知数、即ち、物体代表点の位置と物体の姿勢を求めることができる。なお、上記α、β及びγは、空間座標系から物体座標系への座標変換角度を示す。本実施形態では、空間座標系XYZを、そのZ軸回りにα°回転させて座標系Cs1が得られ、この座標系Cs1を、そのY軸回りにβ°回転させて座標系Cs2が得られ、この座標系Cs2を、そのX軸回りにγ°回転させて座標系Cs3が得られるとき、この座標系Cs3が、物体座標系に一致する。
【0051】
上述の2n個の連立方程式を式(F3)とする。式(F3)をニュートンラフソン法によって解く方法は、以下の通りである。
【0053】
以上の方法は、いわゆる勾配法の一例である。この勾配法は、例えば、上記特許文献3で用いられている遺伝的アルゴリズムと比較して計算が簡便である。このように、物体座標系における座標が既知である点同士の相対関係に基づいて、1つのヘッド画像から、そのヘッドの代表点の空間座標と、三次元姿勢(例えば、フェース角、ライ角など)とを算出することができる。そして、計算結果が出力される。
【0054】
図6(a)は、マーカー30(代表的にマーカー30aが示されている。)を含むフェース2aの部分正面図を示し、
図6(b)はそのA−A(又はB−B)断面図を示している。マーカー30は、任意の厚さtを有しており、反射面32と、反射面32と反対側に位置し移動体であるクラブヘッド2のフェース2aに固着される固着面34と、反射面32と固着面34との間を継ぐ側面36とを有している。本発明では、マーカー30の側面36は、反射面32と直角な横断面において、固着面34から反射面32に向かってテーパ状となる向きに傾斜していることを特徴としている。
【0055】
このようなマーカー30は、例えば、側面36に反射面32に沿った向きの外力を受けた場合でも、その一部は側面36に沿って逃げ、マーカー30を剥がす力(移動体の表面に平行な力の成分)が軽減される。従って、マーカー30の剥がれや位置ずれ等が長期に亘って抑制される。このため、ユーザーのマーカー30を貼り替える回数が低下し、計測作業が能率化される。好ましい態様として、マーカー30は、本実施形態のように、角がないため、より剥がれ難い円形の輪郭を有することが望ましい。なお、円形には、楕円形や長円形が含まれ得る。
【0056】
マーカー30は、前記横断面において、反射面32の長さL1と固着面34の長さL2の差L2−L1が例えば0.2mm以上、好ましくは2mm以上とされる。この長さの差が小さくなると、上述の効果が十分に期待できないおそれがある。逆に、反射面32の長さと固着面34の長さの差が大きくなると、反射面32が小さくなるので、好ましくは4mm以下とされるのが望ましい。
【0057】
マーカー30の厚さtは、例えば0.1〜1.0mm程度が望ましい。マーカー30の厚さtが大きくなると、ゴルフボールを打撃し難くなる。逆に、マーカー30の厚さtが小さいと、十分な耐久性が得られないおそれがある。
【0058】
一つのマーカー30の大きさについては、例えば、反射面32の面積が、7〜64mm
2程度であるのが望ましい。
【0059】
マーカー30は、例えば、柔軟性を有する反射テープから形成される。この反射テープは、例えば、反射面32側から、透明樹脂フィルム、レンズ部、空気層、膠着剤層及び接着剤層等を含んでいる。このため、マーカー30の接着剤層が、フェース2aに固着される。このような反射テープとしては、例えば住友3M(株)製のPV9100Nシリーズなどが好適に用いられる。
【0060】
本実施形態のマーカー30は、角錐状である。このため、マーカー30の平面視の各辺と直角な横断面であるA−A及びB−B断面は、いずれも側面36がテーパ状に傾斜している。ただし、本発明で用いられるマーカー30は、A−A断面又はB−B断面のいずれか一方の横断面において、側面36が、固着面34から反射面32に向かってテーパ状となる向きに傾斜していれば良い。そして、ボール等が頻繁に衝突しやすい向きに、傾斜した側面36を位置させることにより、上述の本発明の効果が期待され得る。
【0061】
本発明の他の実施形態では、
図7に示されるように、移動体であるクラブヘッド2には、表面が凹まされた凹部40が形成される。凹部40は、底面40aと、底面40aの縁から外方に略垂直にのびる内側面40bとを含んでいる。凹部40は、種々の方法で形成され、例えばNC加工によって形成される。マーカー30は、凹部40の底面40aに固着される。このような実施形態では、マーカー30の側面36が、凹部40の内側面40bで囲まれることにより、外力がマーカー30の側面36へと伝わり難くなる。従って、マーカー30は、より一層、長期に亘ってクラブヘッド2から剥がれ難くなる。
【0062】
図7の実施形態では、本実施形態の凹部40は、マーカー30に対応する円形の輪郭を有している。凹部40の輪郭形状は、マーカー30の固着面34の輪郭形状よりも大きく形成されている。これにより、凹部40へマーカー30を貼り付ける際の作業性が向上する。一方、凹部40の輪郭形状が過度に大きい場合、マーカー30の側面36は、外力を受けやすくなる。このため、凹部40の内側面40bから、マーカー30までの最短距離Wは、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下とされるのが望ましい。
【0063】
図8には、本発明のさらに他の実施形態が示されている。この実施形態では、
図7の実施形態に比べると、凹部40の輪郭形状は、マーカー30の固着面34の輪郭形状と一致している点で異なっている。即ち、マーカー30の固着面34の縁は、凹部40の内側面40bに接している。それ以外は
図7の実施形態と同一である。このような実施形態では、マーカー30は、外力を受け難いのみならず、凹部40の内側面40bによって拘束されるため、固着面34に沿って移動することができない。従って、マーカー30は、さらに、長期に亘ってクラブヘッド2から剥がれ難くなる。
【0064】
図6乃至8の実施形態において、マーカー30の固着面34が貼り付けられる移動体の表面は、平面であるのが望ましい。これにより、マーカー30がさらに剥がれにくくなるように、移動体であるクラブヘッド2とマーカー30との密着性がさらに向上する。
【0065】
図9(a)及びそのA−A端面図である(b)には、マーカー30を製造するための方法の一実施形態が示されている。この実施形態では、
図9(a)に示されるように、平らな面50aを有する加工台50上に、マーカー30の原材料となる反射シート52が置かれている。反射シート52には、上から切断具54が押圧される。
【0066】
切断具54は、
図9(b)に示されるように、マーカー30の輪郭に沿って連続する側枠部55を含んでいる。側枠部55の上部は、例えば蓋状の連結部56が設けられている。連結部56には、例えば、人力又はアクチューエータによって操作される軸部などが設けられる。側枠部55の下端部には、刃部55aが形成されている。この刃部55aは、側枠部55の外側面側が略垂直にのびる一方、内側面側がテーパ状の傾斜面とされている。このような切断具54が、反射シート52に上から押圧されることにより、側面36が固着面34から反射面32に向かってテーパ状となる向きに傾斜したマーカー30を簡単かつ能率的に製造することができる。
【0067】
以上本発明の実施形態が、詳細に説明されたが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施され得る。例えば、移動体としては、スポーツ用具に限定されることなく、様々な物品が用いられる。
【実施例】
【0068】
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいたマーカーが試作された。そして、各マーカーが、ウッド型ゴルフクラブヘッドのフェースに固着され、耐剥離性能がテストされた。実施例及び比較例のマーカーは、住友3M(株)製の反射シートPV9110Nから製造された。実施例のマーカーについては、
図9に示した方法で製造された。各マーカーは、円形状とされ、厚さtは0.4mmとされた。
【0069】
耐剥離性能は、テスター20名が、各々の爪を使用し、マーカーの側面に反射面に沿った横方向の力が加わるように擦り、マーカーが剥離するまでの擦り回数が測定された。結果は、20名の平均値が示されており、数値が大きいほど、耐剥離性能が高く良好であることを示している。
テストの結果は表1に示される。
【0070】
【表1】
【0071】
テストの結果から明らかなように、実施例のマーカーは、耐剥離性能を向上していることが確認された。