特許第6031019号(P6031019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6031019カメラ用フォーカルプレンシャッタ、及びそれを備えたデジタルカメラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031019
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】カメラ用フォーカルプレンシャッタ、及びそれを備えたデジタルカメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   G03B9/36 D
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-236210(P2013-236210)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-94935(P2015-94935A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】掛水 大介
【審査官】 小倉 宏之
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セットばねの付勢力によってセット方向に回転し、羽根を露光作動開始位置に戻り走行させる第1駆動部材と、駆動ばねの付勢力によってセット方向とは反対方向に回転し、前記セットばねの付勢力に抗して前記第1駆動部材を押動することで前記羽根を露光作動させる第2駆動部材とで構成された駆動手段を有するとともに、セット作動開始後の前記羽根へのチャージに対し前記第1駆動部材を係止して該羽根を露光作動終了時の状態に保持し、前記第1駆動部材への係止を解除することによって前記羽根を露光作動開始方向へ駆動させる係止機構を備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、
前記係止機構が、軸を中心として回転可能であって、一端に前記第1駆動部材に設けられている第1の被係止部を係止して前記第1駆動部材のセット方向への回転を抑止する第1の係止部を有するとともに他端に永久磁石を有する係止レバーと、片側方向への通電により前記永久磁石に対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石とを有し、前記係止レバー用電磁石への片側方向の通電と該通電の解除との切換えに応じて、前記係止レバーを前記第1の被係止部を係止する方向と該係止を解除する方向とに切換えて回転させ、さらに、
前記係止レバー用電磁石が、前記羽根が露光作動方向へ走行しているときに、前記永久磁石に対して反発する磁力を発する方向とは逆の第2の方向への通電により、前記永久磁石との吸着力を強める磁力を発することを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記係止レバーは、前記第1の係止部の外側に、前記第1駆動部材の前記第1の被係止部の外側に設けられている押動部に摺接しながら押される被押動部を有し、
前記第1の係止部が前記第1の被係止部を係止可能な位置にある状態で、前記第1駆動部材が露光作動方向に回転させられたときに、前記第1駆動部材の前記押動部が前記係止レバーの前記被押動部を押し退けて、前記第1の係止部による前記第1駆動部材の前記第1の被係止部の係止が掛かることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドを抑止するバウンド抑止機構を、前記係止機構に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
前記バウンド抑止機構は、前記係止レバーに設けられていて、前記第1駆動部材に設けられている第2の被係止部を係止する第2の係止部からなることを特徴とする請求項3に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項5】
前記バウンド抑止機構は、前記第2の係止部の外側に、前記第1駆動部材の前記第2の被係止部の外側に設けられている第2の押動部に摺接されながら押される第2の被押動部を有し、
前記第2の係止部が前記第2の被係止部を係止可能な位置にある状態で、前記第1駆動部材が露光作動開始方向に回転させられたときに、前記第1駆動部材の前記第2の押動部が前記バウンド抑止機構の前記第2の被押動部を摺接しながら押し退けて、前記第2係止部による前記第1駆動部材の前記第2の被係止部の係止が掛かることを特徴とする請求項4に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタを備えていることを特徴とするデジタルカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、先幕電子シャッタにおいて、羽根チャージ時におけるセンサへの露光防止のために、羽根チャージ中は幕を閉じておく機構を備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタ、及びそれを備えたデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カメラに使用されるフォーカルプレンシャッタには、例えば、本件出願人の提案による次の特許文献1に記載されるようなシャッタがある。
特許文献1に記載のフォーカルプレンシャッタは、撮影の待機状態において露光開口を開いた状態とすべく、先羽根の閉じ方向への移動を抑止し、撮影時に先羽根の閉じ方向への移動の抑止を解除するための抑止部材が、永久磁石回転子等の往復作動可能な可動子を備え、可動子に備わるコイルに対し二方向に通電することにより、可動子を先羽根の閉じ方向への移動を抑止する方向とその抑止を解除する方向とに移動させる電磁装置で構成されている。そして、セット作動時においては、後羽根の方は、露光開口を閉じた状態から開いた状態に作動させるが、先羽根の方は、露光開口を開いた状態から閉じた状態には作動させない、ノーマリーオープン方式での撮影を、このような電磁装置からなる抑止部材の往復作動可能な可動子のコイルへの通電方向の切り換えにより、先羽根用第1駆動部材の被抑止部の作動軌跡内への出入りを切り換えることで行っている。
【0003】
また、カメラに使用されるフォーカルプレンシャッタには、例えば、本件出願人の提案による次の特許文献2に記載されるような、後羽根チャージ時における、センサへの露光防止のため、後羽根チャージ中は後幕を閉じておく機構を備えたフォーカルプレンシャッタがある。
【0004】
特許文献2に記載のフォーカルプレンシャッタは、後羽根用駆動手段を、後羽根用セットばねの付勢力で回転したときには後羽根に露光開口を開かせる後羽根用第1駆動部材と、後羽根用駆動ばねの付勢力によって回転したときには後羽根用第1駆動部材を後羽根用セットばねの付勢力に抗して回転させ後羽根に露光開口を閉じさせる後羽根用第2駆動部材とで構成し、セット作動の開始時には係止部材によって後羽根用第1駆動部材の回転を係止して、後羽根用第2駆動部材だけを駆動ばねの付勢力に抗して回転させ、セット作動の最終段階でその係止を解除することにより後羽根用セットばねの付勢力による後羽根用第1駆動部材の回転を可能にしている。
また、特許文献2に記載のフォーカルプレンシャッタは、係止部材が、露光作動終了直前に後羽根用第1駆動部材に当接させられることによって後羽根用第1駆動部材の回転を制動すると共に、露光作動終了時に後羽根用第1駆動部材がストッパに当接したときの衝撃で発生するバウンドを抑止している。
このため、特許文献2に記載のフォーカルプレンシャッタによれば、撮像素子から記憶装置への撮像情報の転送時間を考慮せずにセット作動を開始させることができ、次の撮影を従来よりも早く行え、従来よりもシャッタチャンスを逸することがなくなるという利点がある。また、それによって、連写を行う場合には、より細分化されたコマ写真が得られるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−113060号公報
【特許文献2】特願2012−177765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のフォーカルプレンシャッタのように、永久磁石回転子等の往復作動可能な可動子に備わるコイルに対し、二方向に通電を切換えることにより、可動子を先羽根の閉じ方向への移動を抑止する方向とその抑止を解除する方向とに移動させるのでは、消費電力が大きくなってしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載されているような後羽根チャージ中に後幕を閉じておく機構を備えたフォーカルプレンシャッタの場合、後羽根へのチャージ完了時に後羽根をセット位置に戻すが、後羽根の戻り走行終了時の衝撃により、後羽根にバウンドが発生する。そして、この後羽根のバウンドが収まらないと、露光作動を行ったときの羽根の動きが不安定になってしまうため、後羽根のバウンドが収束するまで露光作動を待つ必要がある。
このため、特許文献2に記載されているような、従来の後羽根チャージ中に後幕を閉じておく機構を備えたフォーカルプレンシャッタにおいては、この後羽根の戻り走行終了時の衝撃により生ずる後羽根のバウンドが収束するまでの時間が、次の撮影可能となるまでのタイムラグや、連写における高コマ速化の妨げとなっていた。
【0008】
しかるに、本件出願人は、セット作動開始後の羽根へのチャージに対し第1駆動部材を係止して羽根を露光作動終了状態に保持し、第1駆動部材への係止を解除することによって羽根を露光作動開始方向へ駆動させる係止機構を備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、係止機構が、軸を中心として回転可能であって、一端に第1駆動部材に設けられている第1の被係止部を係止して第1駆動部材のセット方向への回転を抑止する第1の係止部を有するとともに他端に永久磁石を有する係止レバーと、片側方向への通電により前記永久磁石に対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石とを有し、係止レバー用電磁石への片側方向の通電と該通電の解除との切換えに応じて、係止レバーを第1の被係止部を係止する方向と該係止を解除する方向とに切換えて回転させるとともに、羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドを抑止するバウンド抑止機構を係止機構に備える構成を着想した。
【0009】
そして、本件出願人は、このような永久磁石を有する係止レバーと、片側方向の通電により永久磁石に対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石とを有し、係止レバー用電磁石への片側方向の通電と該通電の解除との切換えに応じて、係止レバーを第1の被係止部を係止する方向と該係止を解除する方向とに切換えて回転させる構成により、第1の係止部による第1の被係止部への係止時に通電を解除し、係止を解除する時のみ片側方向に通電するように通電を制御することで、特許文献1のような永久磁石回転子等の往復作動可能な可動子に備わるコイルに対し二方向に通電を切換える構成に比べて、通電時間を減らして消費電力を低減させることができ、しかも、戻り走行終了時バウンド防止機構を係止機構に備える構成により、構成部材の点数を簡略化し、省スペース化しながら、羽根が露光作動を開始する前の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドの収束時間を短縮でき、次の撮影可能となるまでの時間を短縮し、特に連写速度の向上が可能なカメラ用フォーカルプレンシャッタが得られることを見出した。
【0010】
さらに、本件出願人が上記係止機構の作用効果について検討したところ、係止機構における永久磁石を有する係止レバーと、通電により永久磁石に対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石とを有する構成において次のような課題が見つかった。
【0011】
本件出願人が着想した上記のバウンド抑止機構を備える係止機構においては、係止レバーの係止及び係止解除方向への回転は、通電することで係止レバーに備わる永久磁石に対し反発する磁力を発し、通電を解除することで係止レバーに備わる永久磁石の磁力を吸着力として作用させる係止レバー用電磁石によって行う。
そして、係止レバーは、露光作動終了直前に第1駆動部材に当接されて押されることによって一時的に係止解除方向へ所定量回転させられるが、第1駆動部材がさらに露光作動方向に回転して係止レバーから離れたときに、係止レバーに備わる永久磁石と通電を解除された係止レバー用電磁石との吸着力によって、再び係止方向に回転させられて、第1駆動部材がストッパに当接したときの衝撃で発生するバウンドを抑止する位置に戻る。
【0012】
しかるに、本件出願人が検討した結果、係止レバーに備わる永久磁石と通電を解除された係止レバー用電磁石との吸着力によって第1駆動部材のバウンドを抑止する位置に戻す構成では、永久磁石と係止レバー用電磁石との吸着力が弱いため、係止レバーの戻る速度が遅く、第1駆動部材がストッパに当接した際の衝撃により生ずるバウンドの抑止が間に合わず、羽根が露光開口から退いて開口部の一部が開いてしまう等、羽根が露光作動終了位置から戻って露光に悪影響を与えるおそれがあり、また、露光作動終了直前に第1駆動部材に押されて一時的に係止解除方向へ所定量回転させられることによる、第1駆動部材の回転を制動する力も弱いことが判明した。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、通電時間を減らして消費電力を低減させることができ、且つ、羽根へのチャージ中は幕を露光作動終了時の状態に保持し、羽根へのチャージが完了してから露光作動開始前までの間に羽根を露光作動開始位置に戻す機構を備えたタイプのカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、羽根の露光作動走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドを確実に抑止して、露光に悪影響を与える羽根の戻りを阻止でき、さらには、露光作動開始位置に戻る羽根の戻り走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドの収束時間を短縮でき、次の撮影可能となるまでの時間を短縮し、特に連写速度の向上が可能となるようにするための、羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドを抑止するバウンド抑止機構を係止機構に備えることの可能なカメラ用フォーカルプレンシャッタ、及びそれを備えたデジタルカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明によるカメラ用フォーカルプレンシャッタは、セットばねの付勢力によってセット方向に回転し、羽根を露光作動開始位置に戻り走行させる第1駆動部材と、駆動ばねの付勢力によってセット方向とは反対方向に回転し、前記セットばねの付勢力に抗して前記第1駆動部材を押動することで前記羽根を露光作動させる第2駆動部材とで構成された駆動手段を有するとともに、セット作動開始後の前記羽根へのチャージに対し前記第1駆動部材を係止して該羽根を露光作動終了時の状態に保持し、前記第1駆動部材への係止を解除することによって前記羽根を露光作動開始方向へ駆動させる係止機構を備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、前記係止機構が、軸を中心として回転可能であって、一端に前記第1駆動部材に設けられている第1の被係止部を係止して前記第1駆動部材のセット方向への回転を抑止する第1の係止部を有するとともに他端に永久磁石を有する係止レバーと、片側方向への通電により前記永久磁石に対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石とを有し、前記係止レバー用電磁石への片側方向の通電と該通電の解除との切換えに応じて、前記係止レバーを前記第1の被係止部を係止する方向と該係止を解除する方向とに切換えて回転させ、さらに、前記係止レバー用電磁石が、前記羽根が露光作動方向へ走行しているときに、前記永久磁石に対して反発する磁力を発する方向とは逆の第2の方向への通電により、前記永久磁石との吸着力を強める磁力を発することを特徴としている。
【0015】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記係止レバーは、前記第1の係止部の外側に、前記第1駆動部材の前記第1の被係止部の外側に設けられている押動部に摺接しながら押される被押動部を有し、前記第1の係止部が前記第1の被係止部を係止可能な位置にある状態で、前記第1駆動部材が露光作動方向に回転させられたときに、前記第1駆動部材の前記押動部が前記係止レバーの前記被押動部を押し退けて、前記第1の係止部による前記第1駆動部材の前記被係止部の係止が掛かるのが好ましい。
【0016】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドを抑止するバウンド抑止機構を、前記係止機構に備えるのが好ましい。
【0017】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記バウンド抑止機構は、前記係止レバーに設けられていて、前記第1駆動部材に設けられている第2の被係止部を係止する第2の係止部からなるのが好ましい。
【0018】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記バウンド抑止機構は、前記第2の係止部の外側に、前記第1駆動部材の前記第2の被係止部の外側に設けられている第2の押動部に摺接されながら押される第2の被押動部を有し、前記第2の係止部が前記第2の被係止部を係止可能な位置にある状態で、前記第1駆動部材が露光作動開始方向に回転させられたときに、前記第1駆動部材の前記第2の押動部が前記バウンド抑止機構の前記第2の被押動部を摺接しながら押し退けて、前記第2係止部による前記第1駆動部材の前記第2の被係止部の係止が掛かるのが好ましい。
【0019】
更に、本発明のデジタルカメラは、上記のような各カメラ用フォーカルプレンシャッタを備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタによれば、係止機構を、軸を中心として回転可能であって、一端に第1駆動部材に設けられている第1の被係止部を係止して第1駆動部材のセット方向への回転を抑止する第1の係止部を有するとともに他端に永久磁石を有する係止レバーと、片側方向の通電により永久磁石に対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石とを有し、係止レバー用電磁石への片側方向の通電と該通電の解除との切換えに応じて、係止レバーを前記第1の被係止部を係止する方向と該係止を解除する方向とに切換えて回転させるようにするとともに、さらに、係止レバー用電磁石が、羽根が露光作動方向へ走行しているときに、永久磁石に対して反発する磁力を発する方向とは逆の第2の方向への通電により、永久磁石との吸着力を強める磁力を発するようにしたので、第1の係止部による第1の被係止部への係止時に通電を解除し、係止を解除する時のみ片側方向に通電するように通電を制御することで、特許文献1のような永久磁石回転子等の往復作動可能な可動子に備わるコイルに対し二方向に通電を切換える構成に比べて、通電時間を減らして消費電力を低減させることができることに加えて、露光作動終了直前に第1駆動部材に当接され押されることによって係止解除方向へ回転させられた場合において、第1駆動部材がさらに露光作動方向に回転して係止レバーから離れたときに、係止レバーの第1駆動部材がストッパに当接したときの衝撃で発生するバウンドを抑止する位置へ戻る速度が速くなり、係止レバーの上記バウンドを抑止する位置への復帰を第1駆動部材がストッパに当接した際の衝撃でバウンドする前に完了することができるようになる。しかも、係止レバーの永久磁石と係止レバー用電磁石との吸着力が強くなることによって、羽根の露光作動終了直前において第1駆動部材が係止レバーに当接し係止レバーを係止解除方向へ押して係止レバー用電磁石から引き離すために必要な力が増大するため、羽根に対する制動力が強くなり、第1駆動部材によるストッパへの衝撃力を弱めて、第1駆動部材がストッパに当接した際の衝撃により生ずるバウンド量を減らすことができる。
その結果、羽根の露光作動走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドを確実に抑止して、羽根の戻りを阻止できる。
なお、本発明における係止レバー用電磁石への第2の方向への通電は、羽根が露光作動方向へ走行しているときに限定され、羽根が露光作動方向へ走行している時間は極めて短い。このため、通電時間を減らして消費電力を低減させる効果は維持できる。
【0021】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、係止レバーを、第1の係止部の外側に、第1駆動部材の第1の被係止部の外側に設けられている押動部に摺接しながら押される被押動部を有し、第1の係止部が第1の被係止部を係止可能な位置にある状態で、第1駆動部材が露光作動方向に回転させられたときに、第1駆動部材の押動部が係止レバーの被押動部を押し退けて、第1の係止部による第1駆動部材の第1の被係止部の係止が掛かるように構成すれば、露光作動走行時の第1駆動部材をより一層制動して、第1駆動部材がストッパに当接した際の衝撃により生ずるバウンドをより一層弱めることができる。このため、係止レバーによる羽根の露光作動終了時の衝撃により生ずるバウンドの抑止をより一層確実なものとすることができる。
【0022】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドを抑止するバウンド抑止機構を、係止機構に備えれば、羽根の露光作動走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドを確実に抑止して、羽開き等、露光に悪影響を与える羽根の戻りを阻止でき、且つ、羽根へのチャージ完了後に羽根の露光作動開始位置に戻る羽根の戻り走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドの収束時間を短縮でき、次の撮影可能となるまでの時間を短縮し、特に連写速度の向上が可能となるようにすることができる。また、羽根の露光作動走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドと、羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドとを抑止するための構成部材の点数を簡略化し、省スペース化できる。
【0023】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、バウンド抑止機構を、係止レバーに設けられていて、第1駆動部材に設けられている第2の被係止部を係止する第2の係止部で構成すれば、上記効果に加えて、係止レバー用電磁石に対する片側方向の通電時間を、係止レバーの第1駆動部材の露光作動開始方向への回転を抑止するための係止部が第1駆動部材の被係止部の係止を解除してから第1駆動部材の第2の被係止部が係止レバーの第2の係止部に係止されるまでの間に短縮でき、通電コストを抑えることができる。
【0024】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、バウンド抑止機構を、第2の係止部の外側に、第1駆動部材の第2の被係止部の外側に設けられている第2の押動部に摺接されながら押される第2の被押動部を有し、第2の係止部が第2の被係止部を係止可能な位置にある状態で、第1駆動部材が露光作動方向に回転させられたときに、第1駆動部材の第2の押動部がバウンド抑止機構の第2の被押動部を摺接しながら押し退けて、第2係止部による第1駆動部材の第2の被係止部の係止が掛かるようにすれば、上記効果に加えて、戻り方向走行時の第1駆動部材を制動して、羽根の戻り走行終了時のバウンドを弱めることができる。このため、バウンド抑止機構による羽根の露光作動開始位置への戻り走行終了時の衝撃により生ずるバウンドの抑止をより効果的なものとすることができ、羽根へのチャージ完了後に羽根の露光作動開始位置に戻る羽根の戻り走行終了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドの収束時間をより一層短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例にかかるカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける外観を地板側からみた平面図である。
図2】本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける、羽根のセット作動完了後の状態を示す平面図である。
図3】本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける、セット部材を駆動するセット駆動機構部の構成を示す図で、(a)は地板側からみた平面図、(b)は(a)の側面図である。
図4図2の状態からレリーズボタンを押した後、静止画撮影を開始するときの状態を示す平面図である。
図5図4の状態から露光作動を行っている途中で、第1駆動部材が係止レバーに摺接して制動されている状態を示す平面図である。
図6図5の状態から露光作動が終了し、第1駆動部材の第1の被係止部が係止レバーの第1の係止部に係止された状態を示す平面図である。
図7図6の状態から羽根のセット作動を開始し、第2駆動部材がセット方向に移動する一方、第1駆動部材の第1の被係止部が係止レバーの第1の係止部に係止され、羽根が露光開口を覆う状態が維持されている状態を示す平面図である。
図8図7の状態よりも羽根のセット作動が進んで、第1駆動部材の第1の被係止部が係止レバーの第1の係止部による係止を解除されて、羽根がセット方向への戻り走行を行っている途中で第1駆動部材が係止レバーに接触して制動されている状態を示す平面図である。
図9図8の状態から羽根がセット位置に到達し、第1駆動部材の第2の被係止部が係止レバーの第2の係止部に係止された状態を示す平面図である。
図10】本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける羽根のセット作動の完了状態からカメラのレリーズボタンの押下、露光作動、羽根のセット作動までの一連の作動シーケンスを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。本実施例は、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタの構成に本発明を適用したものであるが、係止タイプとして構成したものにも適用することが可能である。
【実施例】
【0027】
先ず、主に、図1図3を用いて、本発明の実施例の構成を説明するが、図1は、本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける外観を地板側からみた平面図、図2は本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける、羽根のセット作動完了後の状態を示す平面図、図3は本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおける、セット部材を駆動するセット駆動機構部の構成を示す図で、(a)は地板側からみた平面図、(b)は(a)の側面図である。尚、本実施例の説明においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタをカメラに組み込んだとき、図1図2の表面側(手前側)が被写体側(撮影レンズ側)であり、図1の背面側が撮像素子側であることを前提にして説明する。しかしながら、周知のように、デジタルカメラの場合には、図1図2の表面側を撮像素子側にし、図1図2の背面側を被写体側にすることもある。また、本発明の実施例の説明においては、先幕を電子シャッタとし、後幕のみを駆動部材を介して開閉する構成を用いることとする。
【0028】
図1において、シャッタ地板1の略右寄り中央部には、長方形を横長にした露光用の開口部1aが形成されている。また、周知のように、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、補助地板2が取り付けられており、シャッタ地板1と補助地板2との間に羽根室を構成している。そして、補助地板2にも、開口部1aの形状や大きさが略同様の開口部2aが形成されている。そして、被写体光を通過させるためのシャッタユニットとしての露光開口の形状は、それらの開口部1a,2aで形成されることもあるが、本実施例においては、開口部1aの形状だけで露光開口の形状が決められている。
【0029】
尚、本実施例のシャッタ地板1は合成樹脂製である。また、図1では、補助地板2の一部が見えるようにするために、シャッタ地板1の開口部1aに隣接する一部の領域を故意に破断して示している。なお、図2図4図9では、便宜上、図1に示す開口部1aの右側部分を省略して示してある。
【0030】
シャッタ地板1には、図2に示すように、開口部1aの左側の領域に、円弧状の長孔1bが形成されている。長孔1bの下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材3が取り付けられている。また、補助地板2は、薄い板部材であって、長孔1bを形成している領域と重なるため、実際には、長孔1bと重なるところに、略同じ形状をした図示していない長孔が形成されている。
【0031】
シャッタ地板1の表面側、即ち被写体側には、軸1c,1d,1eが立設されている。それらのうち、軸1eは、他の軸1c,1dよりも短い。また、シャッタ地板1の背面側、即ち撮像素子側には、軸1f,1gが立設されている。それらのうち、軸1fは、上記の軸1cと同心上に立設されている。また、シャッタ地板1の表面側には、矩形状の溝からなるストッパ部1iが設けられている。
【0032】
シャッタ地板1の表面側には、実際には、このほかにも、複数の柱が立設されており、それらの先端には、例えば、特開2007−298544号にも記載されているような支持板23とプリント配線板とが、支持板23をシャッタ地板1側にして取り付けられており、その支持板23のシャッタ地板1側には、略U字形をしていて二つの脚部の先端を磁極部とした鉄芯部材と、コイルと、コイルを巻回していて鉄芯部材の一方の脚部に嵌装されたボビンとで構成された、羽根用電磁石が取り付けられている。しかしながら、羽根用電磁石の構成や支持板への取付け構成は周知であり、且つ羽根用電磁石の構成の全てに符号を付けると、他の構成部材が分かりにくくなってしまうため、図2のほか図4図9において羽根用電磁石については鉄芯部材だけに符号4を付してある。
【0033】
シャッタ地板1の表面側に立設されている上記の軸1cには、駆動機構を構成していて、いずれも合成樹脂製である、第1駆動部材11と第2駆動部材12とが、第1駆動部材11の方をシャッタ地板1側にして、個々に回転可能に取り付けられている。
【0034】
先ず、第1駆動部材11は、被押動部11aと、駆動ピン11bと、第1の被係止部11cと、第1の押動部11fと、第2の被係止部11dと、第2の押動部11eを有している。被押動部11aと駆動ピン11bは、表面側と背面側とで重なるように形成されており、背面側に形成されている駆動ピン11bは、シャッタ地板1の長孔1bに挿入されている。そして、この駆動ピン11bは、根元側の部位の断面が円形をしている。また、先端側の部位の断面は砲弾形をしていて、後述のように羽根室内で羽根に連結されており、その最先端部を、補助地板2に形成されていて長孔1bと略同じ形状をした図示していない長孔に挿入している。尚、駆動ピン11bの根元側の部位の断面はD形であってもよい。また、駆動ピン11bの先端側の部位の断面形状は小判形であってもよい。
【0035】
他方、第2駆動部材12は、被写体側に部厚く形成した取付部12aと、取付部12aのシャッタ地板1側に形成した押動部12cと、被写体側に形成した被押動部12bを有している。そして、周知のように、この第2駆動部材12は、図示していない駆動ばねの付勢力によって時計方向(図2における軸1cを中心とした矢印A方向)へ回転するように付勢されているが、押動部12cは、その回転時に、上記の第1駆動部材11の被押動部11aを押す部位である。
【0036】
第2駆動部材12の取付部12aには、その内部に、鉄片部材13と図示していない圧縮ばねとが収容されている。そして、鉄片部材13は、軸部13aの一端に円盤状をした頭部13bを有していて、他端には鉄片部13cを取り付けている。また、この鉄片部材13は、取付部12a内で軸部13aに嵌装されている上記の図示していない圧縮ばねによって、鉄片部13cを取付部12a内から突き出すように付勢されているが、図2では、羽根用電磁石の鉄芯部材4の磁極部に接触し、鉄片部13cが上記の図示していない圧縮ばねの付勢力に抗して取付部12a内に押し込まれ、軸部13aの一部が出現し、頭部13bが取付部12aから離れた状態となっている。
【0037】
また、シャッタ地板1の軸1cには、図1に示すように、ラチェット部材24が回転可能に取付けられている。ラチェット部材24は、外周部にラチェット歯(図示していない)を備えており、支持板23に形成されたラチェット爪(図示していない)の先端をラチェット歯に噛合させられ、ラチェット部材24の時計方向への回転を阻止されるようになっている。
【0038】
駆動ばねは、周知のように、一端を第1駆動部材11の図示していないばね掛け部に掛け、他端をラチェット部材24の図示していないばね掛け部に掛けて、第2駆動部材12を時計方向へ回転させるように付勢しており、その付勢力は、ラチェット部材24を一時的に外し、ラチェット部材24の回転位置を変えることによって調整できるようになっている。尚、ラチェット部材24は、図1にだけ示してある。
【0039】
シャッタ地板1の表面側に立設されている上記の軸1dには、合成樹脂製のセット部材14が回転可能に取り付けられている。このセット部材14は、後述するセット駆動機構部50のリンクレバー51の第1レバー51a(図3参照)を回転可能に取り付けた取付部14aと、第2駆動部材12の被押動部12cを押す押動部14bとを有している。
【0040】
そして、このセット部材14は、図示していない復帰ばねによって反時計方向(図2における軸1dを中心とした矢印B方向)へ回転するように付勢されているが、図2は、後述するセット駆動機構部50(図3参照)によって復帰ばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられ、セット位置で停止させられている状態を示したものである。なお、図4では、そのような復帰ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、シャッタ地板1に設けられた図示していないストッパ部に当接して、停止させられている状態を示している。以下、セット部材14については、図4に示されている位置を初期位置ということにする。
【0041】
シャッタ地板1の表面側に立設されている上記の軸1eには、合成樹脂製の係止レバー15が回転可能に取り付けられている。係止レバー15は、係止レバー15の一端に設けられた第1の係止部15aと、第1の被押動部15fと、係止レバー15の他端に設けられた永久磁石15bと、第2の係止部15cと、第2の被押動部15dと、当接部15eを有している。係止レバー15は、後述する係止レバー用電磁石16とともに、本発明における係止機構を構成している。また、係止レバー15は、係止レバー用電磁石16の通電が解除されている(即ち、通電がOFFの)状態において、永久磁石15bより発する、係止レバー用電磁石16に吸着する磁力によって反時計方向(図2における軸1eを中心とした矢印C方向)へ回転するように付勢され、係止レバー用電磁石16が第1の方向に通電(例えば図10に示すように、正方向に通電ON)されている状態において、永久磁石15bより発する、係止レバー用電磁石16から発する磁力と反発する磁力によって時計方向へ回転するように付勢される。図2では、係止レバー用電磁石16の通電が解除されていて、係止レバー15は、永久磁石15bによる係止レバー用電磁石16への吸着力により反時計方向へ回転させられ、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16に当接して反時計方向への回転を停止させられている。
【0042】
第1の係止部15aは、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部に当接した状態に位置するときに、第1駆動部材11の第1の被係止部11cを係止することによって、第1駆動部材11のセット方向(反時計方向)への回転を抑止するように形成されている。また、第1の係止部15aは、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部に当接した状態に位置するときに、第1駆動部材11の露光方向への走行終了時における、長孔1bの下方端部に第1駆動部材11の駆動ピン11bが当接するときの衝撃により生じる羽根のバウンドを抑止する機能も備えている。
第1の被押動部15fは、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部16材aの磁極部に当接した状態に位置するときに、露光方向に走行する第1駆動部材11の被第1の押動部11fに摺接されながら押されるように形成されており、第1の押動部11fに摺接されながら押されることで、露光方向に走行する第1駆動部材11を制動する機能を備えている。
【0043】
第2の係止部15cは、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部から離れて、当接部15eが地板1のストッパ部1iに当接した状態に位置するときに、第1駆動部材11の第2の被係止部11dに係止することによって、第1駆動部材11の露光方向(図2における時計方向)への回転を抑止するように形成されている。そして、第2の係止部15cは、本発明のバウンド抑止機構を構成しており、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部から離れて、当接部15eが地板1のストッパ部1iに当接した状態に位置するときに、第1駆動部材11のセット方向への戻り走行終了時における長孔1bの上方端部に第1駆動部材11の駆動ピン11bが当接するときの衝撃により生じる羽根のバウンドを抑止する機能を備えている。
第2の被押動部15dは、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部から離れて、当接部15eが地板1のストッパ部1iに当接した状態に位置するときに、セット方向へ走行する第1駆動部材11の第2の押動部11eに摺接されながら押されるように構成されており、第2の押動部11eに摺接されながら押されることで、セット方向へ走行する第1駆動部材11を制動する機能を備えている。
当接部15eは、ストッパ部1iと当接することによって、係止レバー15の時計方向への回転を停止させるように形成されている。
【0044】
係止レバー用電磁石16は、略U字形をしていて二つの脚部の先端を磁極部とした鉄芯部材16aと、コイル16bと、コイル16bを巻回していて鉄芯部材の一方の脚部に嵌装されたボビン16cとで構成されていて、シャッタ地板1の被写体側に、鉄芯部材16aの磁極部がレバー部材15の永久磁石15bと当接しうるように取り付けられている。
そして、係止レバー用電磁石16は、コイル16bが第1の方向に通電されたときに、鉄芯部材16aの磁極部より係止レバー15の永久磁石15bに対して反発する磁力を発し、コイル16bへの通電が解除されたときに、鉄芯部材16aの磁極部が磁力を発さず、永久磁石15bが鉄芯部材16aの磁極部に吸着されるように構成されている。
さらに、本実施例では、係止レバー用電磁石16は、コイル16bが第2の方向に通電(例えば図10に示すように、負方向への通電ON)されたとき、鉄芯部材16aの磁極部より係止レバー15の永久磁石15bに対して吸着する磁力を発し、永久磁石15bと鉄芯部材16aの磁極部との吸着力が強まるように構成されている。
なお、図10に示す例では、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する通電の方向を、正方向を第1の方向、負方向を第2の方向としたが、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する通電の方向は、負方向を第1の方向、正方向を第2の方向としてもよい。
【0045】
また、シャッタ地板1の表面側には、このほかに、セット部材14を駆動するセット部材駆動機構50が設けられている。
セット部材駆動機構50は、図3(a)、図3(b)に示すように、リンクレバー51と、スライドレバー52と、カム53と、歯車列54と、ハウジング55と、モータ56を有している。
【0046】
リンクレバー51は、第1レバー51aと、第2レバー51bとで構成されている。第1レバー51aは、一端がセット部材14の取付部14aに回転可能に取り付けられ、他端が第2レバー51bに回転可能に取り付けられている。第2レバー51bは、一端がシャッタ地板1に立設された軸1xに対して回転可能に取り付けられている。また、第2レバー51bは、中央で第1レバー51aを回転可能に取り付けるとともに、他端にスライドレバー52の当接部52cと当接する当接部51b−1を備えている。
スライドレバー52は、一端に被押動部52a、一端と他端との間にピン52b、他端にリンクレバー51における第2レバー51bの当接部51b−1と当接する当接部52cを夫々備えている。被押動部52aは、カム53の押動部53aによって押動されうるように設けられている。当接部52cは、リンクレバー51の当接部51b−1と当接するように設けられている。ピン52bは、ハウジング55に設けられたガイド孔55aに沿ってガイド可能に設けられている。なお、便宜上、図3では図示を省略したが、ハウジング55の内部は、スライドレバー52をガイド孔55aの方向に沿って移動可能に収納するように構成されている。
【0047】
カム53は、ハウジング55の内部で、歯車列54の歯車54bと同軸上に回転可能に設けられていて、所定の回転角度範囲(図3(b)の例では約180度の範囲)にスライドレバー52の被押動部52aを押動可能な押動部53aを備えている。押動部53aは、軸からの距離が最大且つ一定の円弧状に形成された第1の曲面領域53a−1と、軸からの距離が第1の曲面領域53a−1から離れるにしたがって第1の曲面領域53a−1よりも短くなるように形成された第2の曲面領域53a−2を有している。
歯車列54は、ハウジング55の内部に設けられた、互いに噛合する歯車54a、54bで構成されている。
モータ56は、回転軸上にピニオン56aを備え、一方向(図3(b)では時計方向(モータ56の軸を中心とした矢印X方向))に回転軸を回転するように構成されている。ピニオン56aは、歯車列54の歯車54aに噛合している。
【0048】
そして、セット部材駆動機構50は、モータ56が回転軸を時計方向(図3(b)におけるモータ56の軸を中心とした矢印X方向)に回転し、ピニオン56a、歯車54a、歯車54bを介してカム53が時計方向(図3(b)におけるカム53の軸を中心とした矢印Z方向)に回転することにより、カム53の押動部53aがスライドレバー52の被押動部52aを押し、スライドレバー52がピン52bをハウジング55のガイド孔55aにガイドされながら矢印W方向に移動し、当接部52cがリンクレバー51の当接部51b−1を押すことで、第2レバー51bが反時計方向(図3(a)における軸1xを中心とした矢印U方向)に回転し、セット部材14を図示していない復帰ばねの付勢力に抗して時計方向(図2における軸1dを中心とした矢印B方向とは反対の方向)に回転させる。図3(a)はセット部材14がセット位置近くまで回転している状態を示している。なお、セット部材14がセット位置に到達したときには、カム53の押動部53aは、軸からの距離が最大且つ一定の第1の曲面領域53a−1がスライドレバー52の被押動部52aを押しており、第1の曲面領域53a−1がスライドレバー52の被押動部52aを押している間は、セット部材14はセット位置に保持されるようになっている。
【0049】
また、セット部材駆動機構50は、セット部材14がセット位置に到達した状態からモータ56が回転軸をさらに時計方向(図3(b)におけるモータ56の軸を中心とした矢印X方向)に回転し、ピニオン56a、歯車54a、歯車54bを介してカム53が時計方向(図3(b)におけるカム53の軸を中心とした矢印Z方向)に回転することにより、カム53の押動部53aがスライドレバー52の被押動部52aから離れたときに、セット部材14が、図示していない復帰ばねの付勢力によって反時計方向(図2における軸1dを中心とした矢印B方向)へ回転し、リンクレバー51の第2レバー51bが時計方向(図3(a)における軸1xを中心とした矢印U方向とは反対の方向)に回転し、当接部51b−1がスライドレバー52の当接部52aを押すことで、スライドレバー52がピン52bをハウジング55のガイド孔55aにガイドされながら矢印W方向とは反対の方向に移動する。そして、スライドレバー52のピン52bが、図3(a)におけるハウジング55のガイド孔55aの下端部に当接したときに、スライドレバー52が停止し、リンクレバー51、セット部材14の回転が停止する。そして、このセット部材14の停止位置が、上述した初期位置となるようになっている。
【0050】
次に、シャッタ地板1の背面側の構成を説明する。
シャッタ地板1と補助地板2との間に配置されている羽根は、シャッタ地板1の上記の軸1fに対して一端を回転可能に取り付けられたアーム17と、シャッタ地板1の上記の軸1gに対して一端を回転可能に取り付けられたアーム18と、それらの自由端である他端部に向けて順に枢支された4枚の羽根19,20,21,22とで構成されており、羽根22がスリット形成羽根となっている。そして、周知のように、第1駆動部材11の駆動ピン11bの先端部は、アーム17に形成された図示していない長孔に嵌合している。
【0051】
また、シャッタ地板1の軸1gには、ねじりコイルばねであるセットばね5が嵌装されていて、その一端をシャッタ地板1のばね掛け部1hに掛け、他端をアーム18の孔18aに掛けて、アーム18を反時計方向(図2における軸1gを中心とした矢印D方向)へ回転させるように付勢している。そのため、このセットばね5は、羽根を介して間接的に第1駆動部材11を反時計方向へ回転させるように付勢しているが、その付勢力は、第2駆動部材12に掛けられている上記の図示していない駆動ばねの付勢力よりも弱くなっている。そして、このセットばね5の場合、周知の羽根のガタ寄せばね(スリット形成羽根の露光作動開始位置での姿勢を一定にするためにアーム18に掛けられるばね)の役目を兼用させているが、第1駆動部材11に直接掛けるように構成しても差し支えない。なお、便宜上、矢印A〜Dは図2にのみ示してある。
【0052】
次に、上記の構成説明に用いた図2と、図4図10とを用いて本実施例の作動を説明する。なお、図10は、羽根のセット作動の完了状態からカメラのレリーズボタンの押下、露光作動、羽根のセット作動までの一連の作動シーケンスを示すタイミングチャートであり、図2図4図9の作動状態となるタイミングを夫々の図面の数字で示してある。
図2は、既に説明したように、羽根のセット作動完了後の状態を示したものである。このとき、第2駆動部材12は、セット部材14の時計方向の回転により、図示していない周知の駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向に回転させられ、鉄片部材13の鉄片部13cが羽根用電磁石の鉄芯部材4の磁極部に接触している。また、第1駆動部材1は、セットばね5の付勢力により第1駆動部材11を反時計方向へ回転させられているが、第1駆動部材11の駆動ピン11bが長孔1bの上方端部に当接しているため、この停止状態が維持されている。そして、このとき、4枚の羽根19,20,21,22は、折り畳み状態になって開口部1aから退いている。また、係止レバー用電磁石16の通電が解除されており、係止レバー15は、上述したように、永久磁石15bより発する、係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部に吸着する磁力によって反時計方向に回転させられ、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部に当接してその回転を停止させられている。
【0053】
また、このとき、セット部材14はセット位置にあり、押動部14bは、第2駆動部材12の被押動部12bと当接している。
【0054】
なお、本実施例のフォーカルプレンシャッタにおける電子シャッタを用いた方式の撮影は、電子ファインダを用いて撮影する場合であるので、図示していない可動ミラーを備えたカメラの場合には可動ミラーがアップ状態になっている。この状態は、ノーマリーオープン方式で撮影する構成のフォーカルプレンシャッタにおいても同様である。
【0055】
セット部材14は、次の撮影が行われるまで、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して、セット駆動機構部50(図3参照)によってこの状態を維持させられている。従って、この状態においては、開口部1aが全開になっているので、カメラの電源をオフにしない限り、被写体像を、電子ファインダで観察し、さらには動画撮影することが可能となっている。
【0056】
セット完了状態において、次の撮影が行われる場合を説明する。電子ファインダで被写体像を観察しながら、カメラのレリーズボタンを押すと、実際の撮影(露光作動)を開始する前に、羽根用電磁石が励磁状態になり、鉄片部材13の鉄片部13cが鉄芯部材4の磁極部に吸着保持される。また、これと殆ど時期を同じくして、係止レバー用電磁石16は、コイル16bが第2の方向に通電(負方向に通電ON)され、鉄芯部材16aの磁極部より係止レバー15の永久磁石15bに対して吸着する磁力を発し、永久磁石15bと鉄芯部材16aの磁極部との吸着力が強められる。
次に、セット駆動機構部50(図3参照)が、リンクレバー51を介してセット部材14に対する時計方向へ回転させる力を解くので、セット部材14は、図示していない復帰ばねの付勢力によって反時計方向へ回転し、初期位置へ復帰させられていく。
その復帰作動の初期段階において、セット部材14は、押動部14bが第2駆動部材12の被押動部12bから離れていくので、第2駆動部材12は、図示していない駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転するが、鉄片部材13が鉄芯部材4に吸着保持されているため、僅かに回転したところで、それらの取付部12aが鉄片部材13の頭部13bに当接して、停止させられる。
【0057】
このような第2駆動部材12の僅かな回転によって、第1駆動部材11も、その被押動部11aを第2駆動部材12の押動部12cに押され、セットばね5の付勢力に抗して僅かに回転させられるので、4枚の羽根19〜22も僅かに下方へ移動させられるが、開口部1aを覆い始める前には停止させられる。第1駆動部材11,羽根,第2駆動部材12にとっては、このようにして得られた位置が、露光作動開始位置である。図4はそのときの状態を示している。
【0058】
セット部材14が初期位置へ復帰後に、電子シャッタがONとなり、電子制御回路が撮像素子を制御することによって静止画像の撮影が開始される。そして、被写体の明るさに対応して決められた所定時間が経過すると、羽根用電磁石が消磁(図10におけるOFF)される。
羽根用電磁石が消磁すると、鉄片部材13に対する鉄芯部材4の吸引力が失われ、第2駆動部材12が、駆動ばねの付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。そのとき、第2駆動部材12は、押動部12cが第1駆動部材11の被押動部11aを押し、第1駆動部材11を、セットばね5の付勢力に抗して時計方向へ回転させるため、4枚の羽根19〜22は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら下方へ移動し、スリット形成羽根22の下端縁で開口部1aを閉じていく。また、第1駆動部材11が露光方向への回転の終了位置近傍にまで回転したとき、第1駆動部材11の第1の押動部11fが、係止レバー15の第1の被押動部15fを摺接しながら押し、係止レバー15を永久磁石15bによる鉄芯部材16aの磁極部に対する吸着力に抗して、係止レバー15を時計方向に僅かに回転させる。そのような露光作動の途中の状態が図5に示されている。
【0059】
図5の状態から、さらに、第1駆動部材11が、時計方向への回転を続ける。このとき、係止レバー15の第1の被押動部15fが第1駆動部材11の第1の押動部11fに摺接されながら押されて、係止レバー15が時計方向へ回転させられることによって、第1駆動部材11の時計方向の回転を制動する。このとき、係止レバー用電磁石16は、コイル16bが第2の方向に通電されて、鉄芯部材16aの磁極部より係止レバー15の永久磁石15bに対して吸着する磁力を発しており、永久磁石15bと鉄芯部材16aの磁極部との吸着力が強められている。これにより、羽根の露光作動終了直前において第1駆動部材11が係止レバー15に当接し係止レバー15を係止解除方向へ押して係止レバー用電磁石16から引き離すために必要な力が増大するため、羽根に対する制動力が強くなり、第1駆動部材11によるストッパへの衝撃力を弱めて、第1駆動部材11がストッパに当接した際の衝撃により生ずるバウンド量を減らすことができる。
【0060】
さらに、第1駆動部材11は、時計方向へ回転し、駆動ピン11bが長孔1bの下方端部に設けられた緩衝部材3に当接する。このとき、第1駆動部材11の第1の押動部11fによる係止レバー15の第1の被押動部15fへの摺接が解除される。このときも、係止レバー用電磁石16は、コイル16bが第2の方向に通電されて、鉄芯部材16aの磁極部より係止レバー15の永久磁石15bに対して吸着する磁力を発しており、永久磁石15bと鉄芯部材16aの磁極部との吸着力が強められている。このため、係止レバー15は、第1駆動部材11に押されることによって係止解除方向へ回転させられた位置から第1駆動部材11の駆動ピン11bが長孔1bの下方端部(に設けられた緩衝部材3)に当接したときの衝撃で発生するバウンドを抑止する位置へ戻る速度が速められて、再び反時計方向に回転させられ、永久磁石15bが係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部に吸着し、上記バウンドを抑止する位置への復帰を第1駆動部材11がストッパに当接した際の衝撃でバウンドする前に完了し、第1の係止部15aが、第1駆動部材11の第1の被係止部11aを係止しうるようになる。これにより、第1駆動部材11は、長孔1bの下方端部に当接したときの、緩衝部材3によっては解消しきれない衝撃によるバウンドを確実に抑止され、露光に悪影響を与える羽根の戻り(本実施例では開口部1aからの羽根開き)が阻止される。羽根用第1駆動部材11のバウンドが静止したときに、露光作動が終了し、羽根用の二つの駆動部材11,12と羽根の作動が停止する。また、これと殆ど時期を同じくして、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する通電が解除される。また、第1駆動部材11の駆動ピン11cの緩衝部材3への当接と殆ど時期を同じくして、電子シャッタがOFFとなる。そのときの状態が図6に示されている。
【0061】
撮影に際して羽根による露光作動が終了し、図6に示された状態になると、直ちに静止画像の撮像情報が撮像素子から情報処理回路を介して記憶装置に転送されるが、カメラに備えられている制御回路には、そのための転送可能時間が予め設定されている。
【0062】
本実施例のフォーカルプレンシャッタは、先幕電子シャッタ方式での撮影時において、静止画像の撮像情報転送可能時間中にセット部材14に羽根のセット作動を開始させても、羽根は開口部1aを覆ったままであって撮像素子には光が当たらないようにし、静止画像の撮像情報転送可能時間の経過後であって、セット部材14のセット作動が終了する直前になってから羽根に開き作動を行わせ、開口部1aを全開状態にさせるようにしている。そのため、撮影に際してカメラのレリーズボタンを押してから、撮影が終了し、次の撮影待機状態が得られるまでの一連の撮影サイクルが、かなり短くなって、次の撮影が早く行える。
【0063】
加えて、従来は、羽根へのチャージ完了後にセット位置に戻る羽根の戻り走行完了時の衝撃により羽根にバウンドが発生し、この羽根のバウンドが収まらないと、露光作動を行ったときの羽根の動きが不安定になってしまうため、羽根のバウンドが収束するまで露光作動を待つ必要があったが、本実施例のフォーカルプレンシャッタにおいては、羽根の露光開口からの退避作動時の衝撃により生ずる羽根のバウンドを抑えるバウンド抑止機構として係止レバー15に第2の係止部15cを備えたことにより、羽根へのチャージ完了後にセット位置に戻る羽根の戻り完了時の衝撃により生ずる羽根のバウンドの収束時間を短縮でき、その結果、連写速度を向上させることができる。
【0064】
しかも、本実施例のフォーカルプレンシャッタにおいては、係止機構を、軸を中心として回転可能であって、一端に第1駆動部材11に設けられている第1の被係止部11cを係止して第1駆動部材11のセット方向への回転を抑止する第1の係止部15aを有するとともに他端に永久磁石15bを有する係止レバー15と、片側方向(第1の方向、ここでは正方向)の通電により永久磁石15bに対して反発する磁力を発する係止レバー用電磁石16とを有し、係止レバー用電磁石16への片側方向の通電と該通電の解除との切換えに応じて、係止レバー15を第1の被係止部15aを係止する方向と該係止を解除する方向とに切換えて回転させるようにしたので、第1の係止部15aによる第1の被係止部11cへの係止時に通電を解除し、係止を解除する時のみ片側方向に通電するように通電を制御することで、特許文献1のような永久磁石回転子等の往復作動可能な可動子に備わるコイルに対し二方向に通電を切換える構成に比べて、通電時間を減らして、消費電力を低減させることができる。
なお、本実施例においては、係止レバー用電磁石16が、羽根が露光開口を閉じる方向へ走行しているときに、片側方向とは逆の第2の方向(ここでは負方向)への通電により、前記永久磁石との吸着力を強める磁力を発しているが、係止レバー用電磁石16の第2の方向への通電は、羽根が露光開口を閉じる方向へ走行しているときに限定され、羽根が露光開口を閉じる方向へ走行している時間は極めて短い。このため、通電時間を減らして消費電力を低減させる効果は維持できる。
そこで、以下においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタがそのような作動を好適に行えることを、具体的に説明する。
【0065】
露光作動が終了して図6の状態が得られると、本実施例の場合には、上記したように、直ちにセット作動が開始されるが、羽根へのセット作動は、セット駆動機構部50(図3参照)が、リンクレバー51を介して図示していない復帰ばねの付勢力に抗してセット部材14を時計方向へ回転させることによって行なわれる。
【0066】
羽根へのセット作動が開始されると、セット部材14の押動部14bが第2駆動部材12の被押動部12bを押し、第2駆動部材12を図示していない駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させ始める。このとき、第1駆動部材11には、セットばね5により、羽根を介して反時計方向へ回転する力が与えられているが、係止レバー15の第1の係止部15aが第1駆動部材11の第1の被係止部11cを係止することによって、反時計方向への回転を抑止させられる。
【0067】
その後も、セット部材14は時計方向への回転を続けるので、第2駆動部材12は、被押動部12bが押動部14bに押され、図示していない駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられるが、第1駆動部材11は、係止レバー15の第1の係止部15aに第1の被係止部11cを係止されているので、セットばね5の付勢力により反時計方向へ回転させることができない。そのため、4枚の羽根19〜22は、開口部1aを覆ったままの状態で、第2駆動部材12だけが反時計方向へ回転を続けることになる。
【0068】
その後、第2駆動部材12に取り付けられている鉄片部材13の鉄片部13cが、羽根用電磁石の鉄芯部材4の磁極部に接触するが、このころには既に、上記した記憶装置への静止画像の撮像情報の転送は終わっている。
セット部材14は、その後も僅かに回転し、セット位置で停止させられる。そのときの状態が図7に示されている。
【0069】
また、鉄片部材13の鉄片部13cが鉄芯部材4の磁極部に接触するころには、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する正方向への通電がONとなり、鉄芯部材16aの磁極部より係止レバー15の永久磁石15bに対して反発する磁力を発する。これにより、係止レバー15が時計方向に回転し、第1の係止部15aによる第1駆動部材11の第1の被係止部11cへの係止を解く。また、係止レバー15は、当接部15eがストッパ部1iと当接したときに、時計方向への回転を停止させる。
【0070】
第1駆動部材11は、係止レバー15の第1の係止部15aによる第1の被係止部11cへの係止を解かれると、セットばね5の付勢力によって反時計方向へ回転を開始する。そして、4枚の羽根19〜22は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしつつ上方へ移動し、開口部1aを開いていく。
【0071】
そして、第1駆動部材11の反時計方向の回転を伴った羽根のセット方向への戻り走行の途中で、第2の押動部11eが係止レバー15の第2の被押動部15dに摺接しながら押し、係止レバー15を永久磁石15bによる、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する正方向への通電時の鉄芯部材16aの磁極部から発する磁力に対する反発力に抗して、係止レバー15を反時計方向に僅かに回転させる。そのような第1駆動部材11のセット位置への戻り走行の途中の状態が図8に示されている。
【0072】
図8の状態から、さらに、第1駆動部材11が、反時計方向への回転を続ける。このとき、係止レバー15の第2の被押動部15dが第1駆動部材11の第2の押動部11eに摺接されながら押されて、係止レバー15が反時計方向に回転させられることによって、第1駆動部材11の反時計方向の回転を制動する。さらに、第1駆動部材11は、反時計方向へ回転し、駆動ピン11bが長孔1bの上方端部に当接する。このとき、第1駆動部材11の第2の押動部11eによる係止レバー15の第2の被押動部15dへの摺接が解除される。このため、係止レバー15は、永久磁石15bによる、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する正方向への通電時の鉄芯部材16aの磁極部から発する磁力に対する反発力により、再び時計方向に回転させられ、当接部15eがストッパ部1iと当接し、第2の係止部15cが、第1駆動部材11の第2の被係止部11dを係止しうるようになる。これにより、第1駆動部材11は、長孔1bの上方端部に当接したときの衝撃によるバウンドを抑止される。第1駆動部材11のバウンドが静止したとき、第1駆動部材11の反時計方向の回転を伴った羽根のセット方向への戻り作動が終了し、第1駆動部材11と羽根の作動が停止する。そのときの状態が図9に示されている。図9の状態においては、開口部1aが全開になっているので、カメラの電源をオフにしない限り、被写体像を、電子ファインダで観察することが可能となる。
【0073】
図9の状態の後、係止レバー用電磁石16のコイル16bに対する通電が解除され、鉄芯部材16aの磁極部より発していた永久磁石15bに対して反発する磁力を発しなくなる。すると、係止レバー15の永久磁石15bによる係止レバー用電磁石16の鉄芯部材16aの磁極部への吸着力により、係止レバー15が反時計方向に回転し、第2の係止部15cによる第1駆動部材11の第2の被係止部11dへの係止を解く。また、係止レバー15は、永久磁石15bが鉄芯部材16aの磁極部に吸着したときに、反時計方向への回転を停止させる。
【0074】
第1駆動部材11は、係止レバー15の第2の係止部15cによる第2の被係止部11dとの係止を解かれるが、セットばね5の付勢力によって、4枚の羽根19〜22は、開口部1aを開いた状態を保持される。
そのときの状態が図2に示されている。
【0075】
ところで、本実施例における係止レバー15の本来の役目は、セット作動が開始されてから、撮像情報が撮像素子から転送され終わるまで、開口部1aを4枚の羽根19〜22によって覆っているようにするために、第1駆動部材11を係止していることである。そのため、本発明の係止レバーは、本実施例のように構成せず、第1駆動部材11が上記のようにして停止し終わる直前には接触せず、停止し終わってから、例えばカメラ本体側の部材によって、第1駆動部材11の時計方向への回転を係止し得るようにしてもよいわけである。しかしながら、本実施例の場合には、専用の制動部材を備えなくてもよいようにするために、係止レバー15が上記のように構成されていて、露光作動の最終段階において二つの駆動部材11,12の回転を制動する役目も有するようにしている。
【0076】
また、羽根のセット方向への戻り走行終了時には、第1駆動部材11の駆動ピン11bが長孔1bの上方端部に当接したときの衝撃によって羽根がバウンドし、バウンドの収束までの時間が、次の撮影可能となるまでの時間短縮の妨げとなるが、羽根のセット方向への戻り走行終了時のバウンドを抑える部材を単独で備えると構成が複雑化し、装置が大型化する。しかるに、本実施例の場合には、係止レバー15の第2係止部15dが第1駆動部材11の第2の被係止部11dを係止するので、第1駆動部材11の駆動ピン11bが長孔1bの上方端部に当接したときの衝撃による羽根のバウンドを抑える部材を特別に備えなくてもよいようになっている。
【0077】
以上のようにして、二つの駆動部材11,12と羽根の停止した状態が、図2に示されているセット作動の終了直後の状態であるが、既に説明したように、本実施例の場合には、セット作動終了直前に行われる羽根のセット位置への戻り走行において、係止レバー15の第2の被押動部15dにより第1駆動部材11の回転が制動され、さらに第2の係止部15cにより第1駆動部材11がセット位置で係止されるため、セット位置に戻ったときの羽根のバウンドが抑えられ、羽根が静止するまでの時間が短くなる。その結果、本実施例のフォーカルプレンシャッタによれば、次の撮影を行えるようになるまでの時間がより一層短くなり、特に連写を行えるようにしたデジタルカメラに用いて有利になる。
【0078】
尚、本実施例のセット作動は、上記のように、セット部材14が、セット駆動機構部50のリンクレバー51を介して、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して回転させられることによって行われるが、本発明のフォーカルプレンシャッタは、そのような構成に限定されるものではない。周知のように、カメラ本体側の部材に直接押されて回転させられるように構成してもよい。また、セット部材14を初期位置へ復帰させるための復帰ばねは、本実施例のように、セット部材14に掛けてもよいが、セット駆動機構部50のリンクレバー51に掛けるようにしても構わない。
【0079】
ところで、既に述べたように、本発明は、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして実施することも可能であるが、上記の実施例は、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。そして、実施例の説明の中においては、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したときは、セット部材をセット作動終了後、直ちに初期位置へ復帰させることなく、実施例におけるセット部材の場合と同様に、撮影の初期段階であって露光作動が開始される前に、初期位置へ復帰させるようにする必要があることを説明した。そのため、その説明だけで、本発明を、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして実施することも可能であることが、充分に理解できると考えるが、念のため、実施例の構成を係止タイプのフォーカルプレンシャッタにする場合の構成を、簡単に説明しておく。
【0080】
先ず、第2駆動部材12には、本実施例のように鉄片部材13を取り付けず、それに代わって被係止部を形成しておく。そして、図9のセット完了状態においては、第2駆動部材12は、被係止部が係止レバーに係止される位置を越えるところまで回転されているようにしておき、カメラのレリーズボタンが押され、本実施例のようにセット部材14が初期位置へ復帰するときの初期段階で、係止レバーに係止されるようにする。そして、その後、セット部材14が初期位置へ復帰するまでの作動は、上記の実施例の場合と全く同じである。
【0081】
他方、上記の係止レバーの係止を解除するために設けられている係止解除部材は、セット部材14が、上記のようにして、初期位置へ復帰作動を開始する前に、ばねの付勢力に抗して、羽根用電磁石に吸着保持されるようにする。そして、その後、セット部材14が、上記のように作動して、図4に示された初期位置へ復帰すると、羽根用電磁石に対する通電を断つ。それにより、上記の係止解除部材は、上記のばねの付勢力で作動し、上記の係止レバーによる係止を解除するので、第2駆動部材12は、露光作動を開始する。そして、セット作動時には、セット部材14の作動に連動して、上記の係止解除部材が、羽根用電磁石に対して接触させられるようにする。尚、このような作動が得られるようにするための構成は種々知られているが、その一例が、特開2001−215555号公報にも記載されている。
【0082】
また、本実施例において説明した、片側通電により係止と係止解除を切換えることができ、さらに、係止レバー用電磁石が、後羽根が露光開口を閉じる方向へ走行しているときに、永久磁石に対して反発する磁力を発する方向とは逆の第2の方向への通電により、永久磁石との吸着力を強める磁力を発し、且つ、セット方向への戻り時の衝撃により生ずるバウンドを抑止するバウンド抑止機構を備えた、本発明の係止機構の構成は、先羽根用、後羽根用のいずれの駆動部材に対しても適用可能である。
また、本発明は、ノーマリーオープン方式を採用した、先羽根用駆動部材を介して先幕を開閉し、後羽根用駆動部材を介して後幕を開閉する構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 シャッタ地板
1a,2a 開口部
1b 長孔
1c,1d,1e,1f,1g,1x 軸
1h ばね掛け部
1i ストッパ部
2 補助地板
3 緩衝部材
4 鉄芯部材
11 第1駆動部材
11a 被押動部
11b 駆動ピン
11c 第1の被係止部
11d 第2の被係止部
11e 第2の押動部
11f 第1の押動部
12 第2駆動部材
12a 取付部
12b 被押動部
12c 押動部
13 鉄片部材
13a 軸部
13b 頭部
13c 鉄片部
14 セット部材
14a 取付部
14b 押動部
15 係止レバー
15a 第1の係止部
15b 永久磁石
15c 第2の係止部
15d 第2の被押動部
15e 当接部
15f 第1の被押動部
16 係止レバー用電磁石
16a 鉄芯部材
16b コイル
16c ボビン
17,18 アーム
18a 孔
19,20,21,22 羽根
23 支持板
24 ラチェット部材
50 セット駆動機構部
51 リンクレバー
51a 第1レバー
51b 第2レバー
51b−1 当接部
52 スライドレバー
52a 被押動部
52b ピン
52c 当接部
53 カム
53a 押動部
53a−1 第1の曲面領域
53a−2 第2の曲面領域
54 歯車列
54a,54b 歯車
55 ハウジング
55a ガイド孔
56 モータ
56a ピニオン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10