特許第6031093号(P6031093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6031093ゴム発泡体用組成物、及びこれを用いたゴム発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031093
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ゴム発泡体用組成物、及びこれを用いたゴム発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20161114BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C08J9/06
   C08L23/16
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-511177(P2014-511177)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2013060720
(87)【国際公開番号】WO2013157443
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-94442(P2012-94442)
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】阿知葉 功二
(72)【発明者】
【氏名】酒見 隆博
(72)【発明者】
【氏名】糸山 毅
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−223753(JP,A)
【文献】 特開2001−323096(JP,A)
【文献】 特開2006−63280(JP,A)
【文献】 特開2012−17452(JP,A)
【文献】 特開2005−219383(JP,A)
【文献】 特開2006−289678(JP,A)
【文献】 特開2009−202353(JP,A)
【文献】 特開2008−208256(JP,A)
【文献】 特開2002−206034(JP,A)
【文献】 特開2001−114920(JP,A)
【文献】 特開2000−159953(JP,A)
【文献】 国際公開第99/067323(WO,A1)
【文献】 特開昭61−143450(JP,A)
【文献】 特開平1−295818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/00− 47/96
C08J 3/00− 3/28, 9/00− 9/42,
99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
F16F 15/00− 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと炭素原子数が3個以上のα−オレフィンと非共役ジエンとの共重合体ゴムのみからなるゴム成分、加硫剤及び発泡剤を含むゴム発泡体用組成物であって、
前記加硫剤が、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、及びキノイド系加硫剤からなり、尿素系発泡助剤を実質的に含まず、
前記キノイド系加硫剤が、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムであり、
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドであることを特徴とするゴム発泡体用組成物。
【請求項2】
前記加硫剤の総含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜10質量部である請求項に記載のゴム発泡体用組成物。
【請求項3】
前記加硫剤における、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンの含有量(A)の、キノイド系加硫剤の含有量(B)に対する比(A/B)が、0.1〜2.4である請求項1又は2に記載のゴム発泡体用組成物。
【請求項4】
前記共重合体ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムである請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム発泡体用組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム発泡体用組成物の加硫発泡体からなるゴム発泡体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム発泡体用組成物を140〜200℃の温度で加熱する工程を含むゴム発泡体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材間に介在させてシールを行うためのシール材等に利用できるゴム発泡体に関し、特にエチレン−α−オレフィン−ジエン共重合系ゴム成分を含むゴム発泡体用組成物の加硫発泡体であって、低金属腐食、低フォギング性、低臭気性のゴム発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム発泡体は、建築物、車両及び電子機器などの構造物において、各部材間の隙間に充填するシール材として、止水、断熱、及び吸音など目的で用いられている。例えば、住宅の屋根瓦面戸、サッシ周辺、シャッター周辺、外壁目地、金属屋根接合部等、自動車のウインドウダム、サンルーフ周辺、ドア周辺、カウルトップシール等、エアコンの室内機の背部や、自動販売機の扉部、冷蔵庫の背部等に広く用いられている。ゴム発泡体は、適度な反発力(圧縮応力)を有することから、少ない圧縮変形を与えるだけで、被シール材表面の凹凸に追従密着することができ、優れたシール性を達成することができる。
【0003】
なかでも、優れた耐候性、耐熱性、シール性を有することから、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム等のゴム成分に、硫黄等の加硫剤、及びアゾジカルボンアミド等の発泡剤を配合したゴム発泡体用組成物を加硫発泡させることで得られるゴム発泡体が良く用いられている(例えば、特許文献1)。また、一般に、ゴム発泡体用組成物には、特許文献1に記載されているようにアゾジカルボンアミドの発泡温度を調整し、発泡を促進するために、尿素系発泡助剤が用いられている。
【0004】
一方、ゴム発泡体の問題点として、例えば、ガラスや金属を含む構造物にシール材として用いた場合、硫黄系加硫剤や尿素系発泡助剤等に由来する、金属の腐食、使用環境における臭気発生、ガラス板に生じる曇り(フォギングともいう)等が挙げられる。
【0005】
このような問題点を解決するために、様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1では、ゴム発泡体用組成物に特定のプロセスオイルを配合することにより、尿素がガラスに付着することを防止することで低フォギング性としたゴム発泡体が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、ゴム発泡体の加硫剤として過酸化物を用いるとともに、酸素による加硫阻害を防止するため、外面に酸素遮断層が形成されるようにゴム発泡体用組成物を成形し、熱空気加硫法により発泡加硫する方法が開示されている。更に、特許文献3では、所定の止水性を有し、金属腐食性がないエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体が、キノイド系架橋剤を用いることで得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−139715号公報
【特許文献2】特開平11−255933号公報
【特許文献3】特開2012−17452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のゴム発泡体では、フォギングの問題しか解決できず、特許文献2のゴム発泡体の製造方法は、酸素遮蔽層の成形に繁雑な工程が必要であり、過酸化物によっては臭気を発生する場合がある。また、酸素遮蔽層を設けない場合は、酸素による加硫阻害により、ゴム発泡体の表面がべたつく(表面のタックともいう)問題や、表面に析出物が発生する(ブルームともいう)といった問題が生じる。更に、特許文献3のゴム発泡体で用いられたキノイド系架橋剤は、本発明者らの検討によると、架橋密度が十分でなく、ゴム発泡体の発泡不良が生じる場合があることが分かった。
【0009】
従って、本発明の目的は、低金属腐食性、低フォギング性、及び低臭気性であり、且つゴム発泡体表面のタックやブルーム、及び発泡不良が生じないゴム発泡体が得られるゴム発泡体用組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、そのゴム発泡体用組成物を用いたゴム発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者らは、ゴム発泡体用組成物に、加硫剤として金属腐食の恐れがある硫黄系加硫剤を用いず、更に、上述のように、ゴム発泡体を、ガラスを含む構造物に使用すると、フォギングの原因となる上、使用環境に臭気が発生する問題がある尿素系発泡助剤を添加しない条件で、ゴム発泡体に、表面のタックやブルーム、及び発泡不良が生じないような組成物を種々検討した。その結果、加硫剤として特定の有機過酸化物、及びキノイド系加硫剤を用いることで、上記目的が達成できることを見出した。
【0012】
即ち、上記目的は、エチレンと炭素原子数が3個以上のα−オレフィンと非共役ジエンとの共重合体ゴムのみからなるゴム成分、加硫剤及び発泡剤を含むゴム発泡体用組成物であって、前記加硫剤が、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、及びキノイド系加硫剤からなり、尿素系発泡助剤を実質的に含まず、前記キノイド系加硫剤が、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムであり、前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドであることを特徴とするゴム発泡体用組成物によって達成される。
【0013】
本発明のゴム発泡体用組成物の好ましい態様は以下の通りである。
【0014】
(1)前記加硫剤の総含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜10質量部である。
)前記加硫剤における、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンの含有量(A)の、キノイド系加硫剤の含有量(B)に対する比(A/B)が、0.1〜2.4である
(3)前記共重合体ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムである。

【0015】
また、上記目的は、本発明のゴム発泡体用組成物の加硫発泡体からなるゴム発泡体によって達成される。本発明のゴム発泡体は、本発明のゴム発泡体用組成物を用いているので、低金属腐食性、低フォギング性、及び低臭気性であり、表面のタックやブルームがなく、発泡状態も良好なゴム発泡体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴム発泡体用組成物は、加硫剤として特定の有機過酸化物、及びキノイド系加硫剤を併用して用いることにより、硫黄系加硫剤、及び尿素系発泡助剤を添加せずに良好なゴム発泡体を得ることができる。これにより、低金属腐食性、低フォギング性、及び低臭気性で高品質のゴム発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム発泡体用組成物は、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合体ゴムを含むゴム成分、加硫剤及び発泡剤を含むゴム発泡体用組成物であって、前記加硫剤が、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、及びキノイド系加硫剤からなり、尿素系発泡助剤を実質的に含まないことを特徴とする。
【0018】
なお、本発明において、「加硫」は、硫黄による橋架けに限定されることなく、「架橋」と同義として用いられている。
【0019】
ゴム発泡体用組成物に、加硫剤として金属腐食の恐れがある硫黄系加硫剤を用いないことにより、得られるゴム発泡体を低金属腐食性とすることができる。また、尿素系発泡助剤を実質的に含まないことにより、低フォギング性とすることができ、尿素系発泡助剤に由来する臭気を抑えることができる。尿素系発泡助剤は、尿素又はその誘導体を主成分とし、発泡剤の発泡温度を調整し、発泡を促進するものであるが、本発明のゴム発泡体用組成物においては、後述の実施例に示す通り、尿素系発泡助剤を添加することなく良好な発泡状態が得られる。尿素系発泡助剤を実質的に含まないとは、ゴム発泡体用組成物の全質量に対して、0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、特に0質量%のことをいう。
【0020】
以下に、本発明のゴム発泡体用組成物の材料について、より詳細に説明する。
【0021】
[加硫剤]
加硫剤は、上述の通り、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、及びキノイド系加硫剤からなる。
【0022】
α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンは、臭気が低い有機過酸化物であり、得られるゴム発泡体の臭気を更に低下させることができる。そして、キノイド系加硫剤と併用することで、酸素による加硫阻害に起因する表面のタックやブルームを防止することができる。なお、後述する実施例に示すように、加硫剤をキノイド系加硫剤のみにした場合は、発泡状態に不良が生じる。
【0023】
α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンは、パラ異性体、メタ異性体、及びその混合物のいずれでも良く、市販のものを用いることができる。例えば、パーブチル(R)P(日油社製)、ペロキシモンF−40(日油社製)等が挙げられる。
【0024】
また、キノイド系加硫剤は、どのようなものでも良く、好ましくは、p−キノンジオキシムの誘導体を挙げることができる。具体的には、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、p−キノンジオキシム、p−ベンゾイルキノンジアミド等が挙げられる。特に、良好な発泡状態が得られる点で、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムが好ましい。
【0025】
本発明のゴム発泡体用組成物において、加硫剤の総含有量は、特に制限はなく、製造するゴム発泡体の用途に応じ、発泡剤の配合量に合わせて適宜調節することができる。加硫剤の配合量が多過ぎても、少な過ぎても発泡状態が不良となる場合があるので、加硫剤の総含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、2〜8質量部がより好ましく、3〜6質量部が更に好ましい。加硫剤が少ない場合には加硫が不十分になり、発泡剤のガスをトラップできず密度が大きくなってしまう場合がある。
【0026】
加硫剤が多い場合には加硫が強すぎるため十分膨らまずに密度が大きくなる場合がある。
【0027】
また、2種の加硫剤の配合比は、特に制限はないが、両者の作用を十分に発揮させるため、加硫剤におけるα,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンの含有量(A)の、キノイド系加硫剤の含有量(B)に対する質量比(A/B)は、0.1〜2.4が好ましく、0.2〜1.2がより好ましい。質量比が0.1以下の場合には、加硫が不十分になり、ガスのトラップが不十分で密度が大きくなってしまう場合があり。2.4以上の場合には、発泡体表面の加硫が不十分になりベタツキが生じる場合がある。
【0028】
[発泡剤]
発泡剤は、発泡のためのガス発生のために使用される化合物である。特に限定されるものではないが、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ系化合物、4、4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のヒドラジン系化合物、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化合物等が挙げられる。これらを1種又は2種以上組合せて用いることができる。特に、良好な発泡性、安全性、無毒性の点でアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。
【0029】
本発明において、発泡剤の含有量は特に制限はなく、製造するゴム発泡体の用途に応じ、加硫剤の配合量に合わせて適宜調節することができる。多く配合しすぎると、ゴム発泡体が割れる恐れもあるため、例えば、ADCAを発泡剤とする場合、ゴム成分100質量部に対して、10〜40質量部が好ましく、15〜30質量部が好ましい。
【0030】
[ゴム成分]
ゴム成分は、上述の通り、エチレン、炭素原子数が3個以上のα−オレフィン、及び非共役ジエンの共重合体(エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム)を少なくとも含む。
【0031】
α−オレフィンは、炭素原子数が3〜20個のα−オレフィンが好ましい。具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、特にプロピレンが好ましく用いられる。
【0032】
非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニル−2−ノルボルネン(ビニルノルボルネン)、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。特に、5−エチリデン−2−ノルボルネンを含むことが好ましい。
【0033】
エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴムは、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDMともいう)であるのが好ましい。
【0034】
エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴムは、ゴム発泡体用組成物に対して、15質量%以上、特に20質量%以上含まれるのが好ましい。
【0035】
本発明においては、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴムの他に副次的に他のゴム成分を用いても良い。他のゴム成分としては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)の他、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエン(RB)、アクリルゴム(ACM、ANM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、クロロプレンゴム(CR)、シリコンゴム等が上げられる。なかでも、EPM、IIRが好ましい。
【0036】
[その他]
本発明のゴム発泡体用組成物は、必要に応じて、他の添加剤を更に含んでいても良い。
【0037】
例えば、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、ケイ酸ないしその塩類やタルク、クレーや雲母粉、ベントナイト、カーボンブラックやシリカ、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、アルミナやアルミニウムシリケート、アセチレンブラックやアルミニウム粉、セラミック、ガラス繊維、木粉、繊維くず等の充填剤;加硫を促進させるために、チアゾール系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、ジチオホスファイト系、チウラム系の加硫促進剤、酸化亜鉛(活性亜鉛華)等の加硫促進助剤;発泡により生じる気泡径を制御するステアリン酸等の脂肪酸やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩を含む気泡制御剤;パラフィンオイル、プロセスオイル、ブローアスファルト、ポリブテン、ロジン、ロジンエステルなどの樹脂軟化剤;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂;酸化カルシウム等の脱水剤;その他、老化防止剤や酸化防止剤、顔料や着色剤、防カビ剤等が用いられる。これらの添加剤を1種又は2種以上を必要に応じて添加することができる。添加量は特に制限はなく、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0038】
[ゴム発泡体の製造方法]
本発明のゴム発泡体は、本発明のゴム発泡体用組成物を加硫発泡させて製造すれば良い。具体的には、例えば、以下のような工程で行うことができる。
【0039】
まず、発泡剤、加硫剤、必要に応じて用いる加硫促進剤、気泡制御剤等を除く材料を配合し混練する。混練は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスなどの密閉式混合機を用いて行うことができる。混練は、80〜170℃、特に90〜140℃の温度で、2〜20分間行うのが好ましい。その後、混練物に、発泡剤、加硫助剤、加硫剤、気泡径制御剤等を追加し混練する。この混練は、40〜90℃、特に50〜80℃で、5〜30分間行うのが好ましい。これにより得られた混練物は、カレンダー成形機、押出成形機などにより、シート状など所望の形状に成形する。
【0040】
混練物は、所望の形状に成形した後、加硫装置内に導入し、130〜270℃、特に140〜200℃で、1〜30分間加熱することにより、加硫及び発泡させる(加硫発泡工程)。これにより独立気泡構造を有するゴム発泡体が得られる。加硫槽における加熱方法としては、熱空気加硫槽(HAV)、ガラスビーズ流動床、マイクロ波加硫装置(UHF)、スチーム等の加熱手段を用いることができる。なお、加硫及び発泡は、同時に行っても、異なる温度条件下で順次おこなってもよい。
【0041】
本発明のゴム発泡体を製造する場合、ゴム発泡体用組成物の加硫発泡工程後に、更に、破泡処理工程を行っても良い。破泡処理工程は、少なくとも一部の独立気泡を破泡させて連通化させることにより、ゴム発泡体に連続気泡構造を付与するために行われる。破泡処理は、通常の方法を用いて行われ、一対の回転ロール間でゴム発泡体を挟圧する方法(ロールクラッシュ法)、ゴム発泡体を真空下に設置して圧縮させる方法(真空クラッシュ法)、ニードルパンチなどを用いて無数の針でパンチングする方法)(ニードルパンチ法)、一対の平板間でゴム発泡体を挟圧する方法(平板挟圧法)等を用いて行うことができる。
【0042】
本発明の方法により得られるゴム発泡体の密度(質量/体積)は特に制限は無いが、好ましくは0.3g/cm以下、より好ましくは0.2g/cm以下、更に好ましくは0.15g/cm以下である。このような範囲の密度であれば、十分に低密度化されたゴム発泡体ということができる。密度は、JIS K6268A法に規定される方法に準じて測定された値とする。
【0043】
本発明のゴム発泡体は、本発明のゴム発泡体用組成物を用いているので、低金属腐食性、低フォギング性、及び低臭気性で、且つ表面のタックやブルームがなく、発泡状態も良好なゴム発泡体である。従って、例えば、ウインドウダム等の車両;エアコン、洗濯機、冷蔵庫、自動販売機等電気設備;音響設備;外壁目地、サッシュ類、屋根材接合部等の建築;厨房機器、ユニットバス、給湯機等の住宅設備機器;構造物、道路や橋梁の目地、水路接合部等の土木などにおいて、各部材の隙間をシールするためのシール材として用いることができる。また、防塵、断熱、防音、防振、緩衝、水密および気密などを目的とする、防塵材、断熱材、防音材、防振材、緩衝材、充填材などして用いることもできる。
【0044】
ゴム発泡体は、シール材として使用する場合、シート状の形状を有するのが好ましく、少なくとも片面に粘着剤や両面テープを付与し離型紙を貼り付けるなどの処理が行われていてもよい。ゴム発泡体の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、20〜100mmであるのが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0046】
(実施例1〜8、比較例1〜9)
表1及び2に示す配合組成の内、まず、ゴム成分、顔料、充填剤、軟化剤についてニーダーを用いて、130℃で10分間混練した。次に、表面温度を25℃まで冷ました混練物に、表1及び2に示す配合組成の通りに、加工助剤、脱水剤、加硫剤、加硫促進剤(比較例9)、発泡剤、及び発泡助剤(比較例6〜9)をさらに加え、ニーダーにより、90℃で7分間混練した。そして、得られた混練物を、ゴム用押出し機により厚さ10mm×幅100mm×長さ100mmのシート状に成形し、これを加熱炉に入れて、100℃×30分の予熱後、30分かけて、175℃まで昇温し、175℃で15分間加硫発泡しゴム発泡体を得た。
【0047】
配合物の詳細については、以下の通りである。また、その他の一般的な成分についての詳細は省略する。
【0048】
EPDM:エスプレン505A(ジエン含有量9.5質量%)(住友化学工業社製)
ペロキシモンF40:α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン40質量%品(日油社製)
パークミル(R)D40:ジクミルパーオキサイド40質量%品(日油社製)
パーヘキサ(R)25B:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製)
p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム:バノルックDGM(大内新興化学工業社製)
p−キノンジオキシム:バノルックGM(大内新興化学工業社製)
アゾジカルボンアミド:ビニホールAC#LQ(永和化成工業社製)
【0049】
(評価方法)
(1)低金属腐食性
得られたゴム発泡体0.5gを100ml密閉容器に入れ、容器の内側に研磨及び洗浄した銀板及び銅板を貼り付け、85℃、7日間放置し、各金属板の腐食の有無を確認した。腐食が確認されなかった場合を○、確認された場合を×とした。
(2)低フォギング性
得られたゴム発泡体10cmを500mlのガラス瓶に入れ、80℃、20時間放置し、ガラス瓶のくもり(フォギング)を確認した。くもりが確認されなかった場合を○、確認された場合を×とした。
(3)低臭気性
得られたゴム発泡体について官能試験を行い、各添加剤に起因する臭気が認められなかった場合を○、認められた場合を×とした。
(4)ブルーム
得られたゴム発泡体の表面を観察し、析出物が認められなかった場合を○、認められた場合を×とした。
(5)表面のタック
得られたゴム発泡体の表面を指触し、べたつきがない場合を○、べたつきがある場合を×とした。
(6)発泡状態
得られたゴム発泡体の外観を目視観察し、良好な外観の場合を○、表面が収縮している(発泡が進行し過ぎて破泡し、表面から気体が抜けて収縮した)場合を×、発泡体に割れ又は膨れがある(加硫が速く進行し過ぎて、硬くなり割れた)場合を××、架橋不良の場合を×××とした。
(7)密度
得られたゴム発泡体のスキン層を除去した後、JIS K 6268A法の規定に準じて測定した。
【0050】
(評価結果)
評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1及び2に示すように、加硫剤としてα,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンと、キノイド系加硫剤を併用し、尿素系発泡助剤を添加していないゴム発泡体用組成物からなる実施例1〜7のゴム発泡体、尿素系発泡剤をゴム発泡体組成物全体の約0.1質量%添加したゴム発泡体用組成物からなる実施例8のゴム発泡体(即ち、本発明の尿素発泡体を実質的に含まないゴム発泡体組成物からなるゴム発泡体)は、低金属腐食性、低フォギング性、低臭気性が合格であり、ゴム発泡体表面のブルームやタックも認められず、発泡状態も良好であった。一方、他の有機過酸化物系加硫剤を用いた比較例1及び2や尿素系発泡助剤をゴム発泡体組成物全体の約1.4質量%添加した添加した比較例6〜9は、臭気が認められた。加硫剤として硫黄を用いた比較例9は、金属の腐食も認められた。また、加硫剤としてα,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンを単独で用いた比較例3は、ゴム発泡体表面にブルームやタックが生じ、キノイド系加硫剤を単独で用いた比較例4及び5は、発泡状態が不良であった。
【0054】
以上により、本発明のゴム発泡体用組成物により、低金属腐食性、低フォギング性、及び低臭気性で、且つ表面のタックやブルームがなく、発泡状態も良好なゴム発泡体が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、車両、電気設備、音響設備建築、住宅設備機器、土木等において好ましく使用できる低金属腐食性、低フォギング性、及び低臭気性の高品質のシール材、防塵材、断熱材、防音材、防振材、緩衝材、充填材等に用いられるゴム発泡体を提供することができる。