(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自立構造のカーボンナノチューブフィルム構造体を提供する第一ステップであって、該カーボンナノチューブフィルム構造体は、配向して配列され、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブを含む第一ステップと、
前記カーボンナノチューブフィルム構造体を懸架させるように設置して、表面処理を行い、複数のカーボンナノチューブの表面に欠陥を形成させる第二ステップと、
表面処理された前記カーボンナノチューブフィルム構造体を基板として、原子層堆積法を採用して、前記カーボンナノチューブフィルム構造体における複数のカーボンナノチューブの表面にナノ材料層を生長させる第三ステップと、
前記ナノ材料層が生長したカーボンナノチューブフィルム構造体をアニーリングして、前記カーボンナノチューブフィルム構造体を除去してナノチューブフィルムを形成する第四ステップであって、該ナノチューブフィルムは、複数のナノチューブを含み、前記複数のナノチューブは配向して配列され、互いに接続され、自立構造を形成しており、一部の隣接する二つのナノチューブの接続する箇所はイオン結合によって結合している第四ステップと、を含むことを特徴とするナノチューブフィルムの製造方法。
前記カーボンナノチューブフィルム構造体を懸架させるように設置して、表面処理を行い、複数のカーボンナノチューブの表面に欠陥を形成させる前記第二ステップは、前記カーボンナノチューブフィルム構造体の表面を酸化する処理又はカーボンナノチューブフィルム構造体の表面にカーボンを堆積する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノチューブフィルムの製造方法。
前記第三ステップは、金属のフレームに固定され、懸架して設置されたカーボンナノチューブフィルム構造体を原子層堆積システムの真空室の中に設置するステップと、キャリアガスによって、原子層堆積システムの真空室の中に金属有機化合物と水とを交互に何度も投入することで、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に酸化アルミニウムのナノ材料層を生長させるステップと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノチューブフィルムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ナノ材料は、例えば、触媒、センサーなどの基礎研究に大きな役割を担っている。従って、巨視的な構造を有するナノ材料を製造することが現在の研究の重要課題となっている。
【0003】
現在、ナノ材料の製造方法は、自然成長法(spontaneous growth)、基板に基づく合成方法(templateーbased synthesis)、石版印刷法(lithography)などを含む。しかし、これらの方法によって製造されたナノ材料は、一般的に粉末状であり、自立構造を形成することができない。即ち、支持構造体によってナノ材料を支持しなければ、ナノ材料を、例えばライン状又はフィルム状などの所定の形状に保持できない。従って、ナノ材料の応用が制限される。
【0004】
従来技術におけるカーボンナノチューブフィルム構造体の製造方法は、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)を生長させて、該超配列カーボンナノチューブアレイから直接に引き出すことによって、カーボンナノチューブフィルムを形成する(特許文献1を参照)。当該カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブの長手方向に沿って端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは分子間力で端と端とが接続され、所定の方向に沿って配列されて、自立構造を有する。各カーボンナノチューブは密封構造体であるので、各カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向に、分子間力で端と端とが接続されている。このように、カーボンナノチューブフィルムにおいて、カーボンナノチューブとカーボンナノチューブとの間には複数の接続点が形成されている。これらの接続点は分子間力しか備えていないので、カーボンナノチューブフィルムの性能を弱めており、且つカーボンナノチューブフィルムの応用範囲を制限している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係るナノチューブフィルムの構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るナノチューブフィルムにおけるナノチューブの構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るナノチューブフィルムの構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1又は実施形態2に係るナノチューブフィルムの製造方法の流れ図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るナノチューブフィルムの製造方法に使用されるカーボンナノチューブフィルム構造のSEM写真である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るナノチューブフィルムの製造方法に使用されるカーボンナノチューブフィルム構造のSEM写真である。
【
図7】ナノチューブフィルムの製造方法において、酸素プラズマによってカーボンナノチューブフィルム構造体を処理せずに、直接にカーボンナノチューブフィルム構造体の表面に原子層堆積法を採用して、ナノ材料層を形成した際のSEM写真である。
【
図8】本発明に係るナノチューブフィルムの製造方法において、酸素プラズマによってカーボンナノチューブフィルム構造体を処理した後、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に原子層堆積法を採用して、ナノ材料層を形成した際のSEM写真である。
【
図9】本発明に係るナノチューブフィルムの製造方法において、カーボンナノチューブフィルム構造体にカーボンを堆積した後のTEM写真である。
【
図10】ナノチューブフィルムの製造方法において、カーボンナノチューブフィルム構造体にカーボンを堆積せずに、直接にカーボンナノチューブフィルム構造体の表面に原子層堆積法を採用して、ナノ材料層を形成した際のSEM写真である。
【
図11】本発明に係るナノチューブフィルムの製造方法において、カーボンナノチューブフィルム構造体にカーボンを堆積した後に、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に原子層堆積法を採用して、ナノ材料層を形成した際のSEM写真である。
【
図12】本発明の実施形態1に係るナノチューブフィルムの構造を示すSEM写真である。
【
図13】本発明の実施形態2に係るナノチューブフィルムの構造を示すSEM写真である。
【
図14】本発明の実施形態2に係るナノチューブフィルムの構造の引っ張り強度が変位に応じて変化した状態を示す曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1を参照すると、本実施形態1において、ナノチューブフィルム10を提供する。該ナノチューブフィルム10が、配向して配列された複数のナノチューブ110を含む。ナノチューブフィルム10は、巨視的な層状の構造体であり、二つの相対する表面を有する。好ましくは、複数のナノチューブ110は、ナノチューブフィルム10の表面に平行して、且つ基本的に互いに平行して配列される。複数のナノチューブ110の延伸方向は基本的に同じである。配向して配列されるとは、複数のナノチューブ110の長手方向が同じ方向に沿って規則的に配列されることを意味するが、一つの方向又は二つの方向に制限されない。本実施形態において、複数のナノチューブ110は、その長手方向が基本的に同じ方向に延伸して配列されている。
【0016】
ナノチューブフィルム10における複数のナノチューブ110ついて、その長手方向が基本的に同じ方向に沿って配列されるとは、複数のナノチューブ110の長手方向が同じ方向に配列する傾向にあることを意味している。即ち、ナノチューブフィルム10における大部分のナノチューブ110は、その長手方向が、基本的に同じ方向に延伸している。また、複数のナノチューブ110は、部分的に接触する可能性があるが、その延伸方向には影響を与えない。ナノチューブフィルム10における複数のナノチューブ110の長手方向が基本的に同じ方向に延伸するとは、ナノチューブ110が、微視的(透過型電子顕微鏡で観測できる)には、絶対的に直線状ではなくやや湾曲しているが、一つの方向へ延伸していることを指し、また、巨視的(光学顕微鏡で観測できる)には、ナノチューブフィルム10における複数のナノチューブ110が、配向して配列し、互いに平行して一つの方向に延伸していることを指す。
【0017】
隣接するナノチューブ110は互いに接触している、或いは互いに間隔をあけて位置している。即ち、ナノチューブフィルム10は、互いに間隔をあけて位置するナノチューブ110、或いは互いに接触したナノチューブ110を有する。また、ナノチューブフィルム10は、複数のストライプ状の間隙120を有し、該複数のストライプ状の間隙120の延伸方向は、ナノチューブ110の延伸方向と同じである。また、ナノチューブフィルム10は、互いに交差した少数のナノチューブを有する。互いに交差したナノチューブは、イオン結合によって一体成形の構造体に形成され、優れた力学性能を有する。ナノチューブフィルム10における複数のストライプ状の間隙120は、ナノチューブフィルム10における隣接するナノチューブ110が互いに間隔をあけることで形成されたものである、或いは隣接するナノチューブ110が部分的に接触して、部分的に間隔をあけることで形成されたものである。隣接するナノチューブ110は、分子間力で接続されている。複数のナノチューブ110は、分子間力及びイオン結合によって互いに接触して一体構造体に形成される。ナノチューブ110の互いに接触する部分は、連通しているか又は互いに密封しており、その上イオン結合によって結合されているので、ナノチューブフィルム10は、優れた力学性能を有する。ストライプ状の間隙120の幅は、0.5nm〜5μmである。ナノチューブ110の長さが、ナノチューブフィルム10の長さと同じであると、少なくとも一つのナノチューブ110は、ナノチューブフィルム10の端部からもう一つの端部へ延伸している。本実施形態において、ナノチューブ110の長さは、1cm以上である。
【0018】
ナノチューブ110は互いに接触しているか又は交差しているので、ナノチューブ110からなるナノチューブフィルム10は、巨視的には層状の構造体であり、自立構造を有するフィルムである。ここで自立構造とは、支持体材を利用せず、ナノチューブフィルム10を独立して利用することができる形態のことである。即ち、ナノチューブフィルム10を対向する両側から支持して、ナノチューブフィルム10の構造を変化させずに、ナノチューブフィルムを懸架できることを意味する。
【0019】
図2を参照すると、ナノチューブ110は、管状のハウジング112及び該管状のハウジング112に囲まれている柱状の空間114を含む。管状のハウジング112の厚さは、10nm〜100nmであり、柱状の空間114の直径は、10nm〜100nmである。管状のハウジング112の材料は、金属、非金属、合金、金属化合物及び重合体の一種又は多種からなる。好ましくは、管状のハウジング112の材料は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物及びシリコン炭化物の一種又は多種からなる。本実施形態において、管状のハウジング112の材料は、酸化アルミニウムであり、ナノチューブ110は、酸化アルミニウムのナノチューブである。酸化アルミニウムのナノチューブ110の管状のハウジング112の厚さは、30nmであり、柱状の空間114の直径は、20nmである。また、ナノチューブ110は、複数の管状のハウジング112を含み、該複数の管状のハウジング112は、イオン結合によって結合される。これにより、一体構造を有するナノチューブ110が形成される。また、この際、各管状のハウジング112が、一つの柱状の空間114を囲んで形成される。
【0020】
(実施形態2)
図3を参照すると、本実施形態2において、ナノチューブフィルム20を提供する。該ナノチューブフィルム20は、配向して配列された複数のナノチューブ110を含む。配向して配列されるとは、複数のナノチューブ110の長手方向が規則的に配列されることであるが、一つの方向又は二つの方向に制限されない。例えば、一部のナノチューブ110の長手方向は、第一方向に沿って延伸し、他の一部のナノチューブ110の長手方向は、第二方向に沿って延伸し、他の一部のナノチューブ110の長手方向は、第三方向に沿って延伸する。
【0021】
実施形態1におけるナノチューブフィルム10と比べて、本実施形態2のナノチューブフィルム20における複数のナノチューブ110は、それぞれ第一方向及び第二方向に沿って延伸しており、第一方向に沿って延伸しているナノチューブ110と、第二方向に沿って延伸しているナノチューブ110とは、交差して設置されて二層の構造体を形成する。この際、各層におけるナノチューブ110は同じ延伸方向及び配列方向を有する。また、第一層におけるナノチューブ110と第二層におけるナノチューブ110との配列方向は、90度を成す。二層におけるナノチューブ110は、交差して設置されているので、ナノチューブフィルム20上に、均一に分布された複数の微孔206が形成される。該微孔206の直径は、1nm〜5μmである。
【0022】
ナノチューブフィルム20は、多層の構造体を形成することができる。この際、各層におけるナノチューブ110の延伸方向は、基本的に同じであり、隣接する二つの層におけるナノチューブ110の延伸方向は交差している。隣接する二つの層におけるナノチューブ110の配列方向には、角度αが形成され、該角度αは、0度〜90度である。角度αが0度より大きい場合、複数のナノチューブ110は、交差して設置され、ナノチューブフィルム20上に、均一に分布された複数の微孔206が形成される。互いに接触して且つ交差して設置された二つのナノチューブ110は、イオン結合によって緊密に接続され、ナノチューブフィルム20に自立構造を有する膜構造体を形成させる。これにより、ナノチューブフィルム20の構造を強固にし、機械強度を向上させることができるため、使用する際に破裂し難い。
【0023】
図4を参照すると、実施形態1におけるナノチューブフィルム10及び実施形態2におけるナノチューブフィルム20は、自立構造を有するカーボンチューブフィルムの表面に原子層堆積を介して連続したナノ材料層を形成した後、自立構造を有するカーボンチューブフィルムを除去することによって製造される。ナノチューブフィルムの製造方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0024】
自立構造を有するカーボンナノチューブフィルム構造体を提供する第一ステップであって、該カーボンナノチューブフィルム構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含み、該カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で端と端とが接続され、且つ配向して配列された複数のカーボンナノチューブと、該カーボンナノチューブの配列方向に沿って延伸する間隙とを含む第一ステップと、カーボンナノチューブフィルム構造体を懸架して設置した後に表面処理を行って、複数のカーボンナノチューブの表面に欠陥を形成する第二ステップと、カーボンナノチューブフィルム構造体を基板として、原子層堆積法を採用して、カーボンナノチューブフィルム構造体における複数のカーボンナノチューブの表面にナノ材料層を生長させる第三ステップと、ナノ材料層が生長したカーボンナノチューブフィルム構造体をアニーリングして、カーボンナノチューブフィルム構造体を除去する第四ステップと、含む。
【0025】
第一ステップにおいて、カーボンナノチューブフィルム構造体は、一枚のカーボンナノチューブフィルム又は複数のカーボンナノチューブフィルムからなる。該複数のカーボンナノチューブフィルムは一つの平面に平行に且つ間隔をあけずに設置されるか、又は積層して平行に設置される、又は積層して交差して設置される。カーボンナノチューブフィルムは、基本的に同一方向に沿って配向して配列され、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブからなる。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブフィルムの表面に平行している。
【0026】
実施形態1におけるナノチューブフィルムを製造する際、カーボンナノチューブフィルム構造体は、一枚のカーボンナノチューブフィルムからなる。
図5を参照すると、カーボンナノチューブが配列された方向に沿って、ストライプ状の間隙が形成されている。つまり、カーボンナノチューブフィルムは間隙を有するため、優れた透光性を有する。これは、カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブの端と端とが接続されて、複数のカーボンナノチューブ束が形成され、該カーボンナノチューブ束は同一の延伸方向を有し、隣接するカーボンナノチューブ束の間にストライプ状の間隙が形成されるからである。カーボンナノチューブフィルムは、更に隣接するカーボンナノチューブ束の間に接続されたカーボンナノチューブを含む。前記間隙は、隣接して並列接続されたカーボンナノチューブ間にできる間隙でもよく、隣接するカーボンナノチューブ束間の間隙でもよい。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、端と端とが接続され、且つ同一方向に配列されているので、間隙はストライプ状であり、また、該ストライプ状の間隙は、カーボンナノチューブ束と基本的に平行している。カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイから引き伸ばして形成されたものであり、カーボンナノチューブフィルム構造体及びその製造方法は、特許文献1に掲載されている。
【0027】
図6を参照すると、カーボンナノチューブフィルム構造体は、複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して交差して形成されたものである。該カーボンナノチューブフィルム構造体において、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの軸方向は垂直である。隣接するカーボンナノチューブフィルムは交差しているので、複数の微孔が形成されている。これにより、カーボンナノチューブフィルム構造体は、優れた透光性を有する。
【0028】
カーボンナノチューブフィルム構造体は、自立構造である。カーボンナノチューブフィルム構造体の厚さは、100nmより大きい。カーボンナノチューブフィルム構造体は、基板又はフレームなどの支持体に設置することができる。本実施形態において、カーボンナノチューブフィルム構造体は、金属フレームに設置され、カーボンナノチューブフィルム構造体の周囲は、該金属フレームに固定される。この際、カーボンナノチューブフィルム構造体の周囲を除く部分は懸架して設置されている。
【0029】
大きな微孔を有するナノチューブフィルム10、20を形成するために、第一ステップ(S1)において、有機溶剤を採用して、カーボンナノチューブフィルム構造体を処理する。大きな微孔を有するカーボンナノチューブフィルム構造体を形成した後、有機溶剤を採用して処理されたカーボンナノチューブフィルム構造体を基板として、更に大きな微孔を有するナノチューブフィルム10、20を形成することもできる。
【0030】
前記有機溶剤は、室温で揮発しやすい有機溶剤であり、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン及びクロロホルムの中の一種又は多種の混合物である。本実施形態において、有機溶剤は、エタノールである。該有機溶剤は、カーボンナノチューブに対して、優れた濡れ性を有する。有機溶剤を利用してカーボンナノチューブフィルム構造体を処理するステップは、具体的には、試験管を利用して、有機溶剤をフレームに設置されているカーボンナノチューブフィルム構造体の表面に滴下し、有機溶剤をカーボンナノチューブフィルム構造体に浸漬させる。或いは、カーボンナノチューブフィルム構造体を、有機溶剤が入った容器に浸漬させる。又は、カーボンナノチューブフィルム構造体に対して有機溶剤を噴霧処理する。具体的には、噴霧装置を利用して、有機溶剤を霧状に処理した後、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面にスプレーする。該方法は、単層のカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブフィルム構造体を処理することができる。
【0031】
カーボンナノチューブフィルム構造体を有機溶剤に浸潤させると、該カーボンナノチューブフィルム構造体のカーボンナノチューブフィルムにおける並列して隣接するカーボンナノチューブは集まるため、カーボンナノチューブフィルムにおいて、カーボンナノチューブフィルムは収縮して、間隔をあけて分布する複数のカーボンナノチューブバンドが形成される。カーボンナノチューブバンドは、分子間力で端と端とが接続され、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブからなる。有機溶剤によって処理されたカーボンナノチューブフィルムにおいて、基本的に同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブバンドの間には間隙が形成されている。隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向には交差角度αが形成され、該角度は0°<α≦90°である。有機溶剤によって処理された隣接する二層間のカーボンナノチューブバンドは互いに交差して、カーボンナノチューブフィルム構造体上に、サイズが大きな複数の微孔が形成される。有機溶剤によって処理された後のカーボンナノチューブフィルムの接着性は弱い。カーボンナノチューブフィルム構造体の微孔のサイズは2μm〜100μmであり、好ましくは、2μm〜10μmである。本実施形態において、交差角度αは90°であり、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブバンドは基本的に垂直に交差して、複数の矩形の微孔が形成される。有機溶剤によって処理されたカーボンナノチューブフィルム構造体を基板として形成されたナノチューブフィルムにおける微孔のサイズは更に大きく、透明性にも優れている。
【0032】
第二ステップにおいて、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に欠陥を形成する際、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面を酸化する処理又はカーボンナノチューブフィルム構造体の表面にカーボンを堆積する処理を含む。また、欠陥を形成する方法は、カーボンナノチューブフィルム構造体を懸架させた状態下で行うことが好ましい。具体的には、カーボンナノチューブフィルム構造体は自立構造であるので、カーボンナノチューブフィルム構造体の周囲をフレームで固定して、カーボンナノチューブフィルム構造体を懸架させる。
【0033】
カーボンナノチューブフィルム構造体の表面を酸化処理すると、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面の構造は破壊され、複数のダングリングボンドが形成される。原子層堆積法を採用してナノ材料層を形成する場合、ナノ材料の原子は、カーボンナノチューブの表面のダングリングボンドと結合した後、カーボンナノチューブの表面に堆積する。これにより、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に緻密なナノ材料層が形成される。この際のナノ材料層の強度は強く、厚さの制御性も高いので、厚さが10nmであるナノ材料層を形成することができる。つまり、形成されたナノチューブフィルム10又はナノチューブフィルム20におけるナノチューブ110の管状のハウジング112の厚さは薄い。本実施形態において、酸素プラズマによってカーボンナノチューブフィルム構造体を処理して、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に欠陥を形成する。酸素プラズマ処理の過程において、酸素の流量は50sccmであり、気圧は10Paであり、処理時間は10sであり、パワーは25Wである。
図7及び
図8を参照すると、
図7は、酸素プラズマ処理を行っていないカーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に原子層堆積法によって得られた酸化アルミニウム層の連続していない粒子状のSEM写真であり、
図8は、酸素プラズマ処理を行った後、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に原子層堆積法によって得られた酸化アルミニウム層の連続した層状構造のSEM写真である。
【0034】
カーボンナノチューブフィルム構造体にカーボンを堆積させて、該カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面にカーボンの粒子を被覆させる。カーボンナノチューブフィルム構造体にカーボンを堆積させる方法は、物理気相成長法、化学気相蒸着法、スプレー法の中の一種又は多種である。本実施形態においては、物理気相成長法であるマグネトロンスパッタリング法を利用して、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面にカーボンを堆積して、カーボン層を形成する。マグネトロンスパッタリングをする際の電流は150mAであり、気圧は0.1Paであり、アルゴンの流量は10sccmであり、時間は1.5分〜7.5分である。
【0035】
図9を参照すると、マグネトロンスパッタリングを介してカーボンを堆積させることによって、カーボンナノチューブフィルム構造体における露出したカーボンナノチューブの表面に非晶質のカーボン層が形成される。非晶質のカーボン層が形成されるので、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に欠陥が形成される。これにより、原子層堆積法を採用してナノ材料層を形成する際に、ナノ材料を一層ずつ積層してナノ材料層を形成するため、該ナノ材料層の強度は高く、緻密性に優れ、ナノ材料層の厚さが薄い条件下で、連続した構造を形成させることができる。形成されたナノチューブフィルム10又はナノチューブフィルム20におけるナノチューブ110の管状のハウジング112の厚さは薄い。上記の方法によって、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に形成されたナノ材料層の厚さは、10nm〜30nmに制御することができる。
【0036】
カーボンナノチューブフィルム構造体にカーボンを堆積せずに原子層堆積法によってナノ材料を形成する場合、ナノ材料層の厚さが30nmより厚ければ、連続した層状の構造を形成することができる。ナノ材料層の厚さが30nmより薄い場合、ナノ材料層は不連続な点状の粒子になって、カーボンナノチューブフィルム構造体の表面を被覆するため、管状の構造を形成することができない。また、そのように形成されたナノ材料層は、大きな粒子の材料からなり、原子が積層して形成されたものではないので、緻密性及び力学性能が悪い。
【0037】
図10及び
図11を参照すると、
図10は、カーボンが堆積されていないカーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に、原子層堆積法によって形成された酸化アルミニウム層の連続していない粒子状のSEM写真であり、
図11は、カーボンが堆積されたカーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に、原子層堆積法によって形成された酸化アルミニウム層の連続した薄膜構造体のSEM写真である。
【0038】
第三ステップにおいて、ナノチューブ110の材料に基づいて生長源を選択する。金属の酸化物を例にすると、生長源は金属有機化合物と水であり、キャリアガスは窒素ガスである。具体的には、第三ステップは、ステップ31及びステップ32を含む。
【0039】
ステップ31においては、金属のフレームに固定されて、懸架して設置されたカーボンナノチューブフィルム構造体を、原子層堆積システムの真空室の中に設置する。ステップ32においては、キャリアガスによって、原子層堆積システムの真空室の中に金属有機化合物と水とを交互に何度も投入することで、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの表面に酸化アルミニウムのナノ材料層を生長させる。
【0040】
本実施形態のステップ32における生長源は、トリメチルアルミニウム及び水であり、キャリアガスは窒素ガスであり、キャリアガスの流量は5sccmであり、原子層堆積システムのベース真空度は、0.23Torrである。ステップ32において、トリメチルアルミニウムと水とを交互に真空室に投入する。ここで、トリメチルアルミニウムと水とを交互に一回ずつ投入するのを1サイクルとする。具体的には、トリメチルアルミニウムを真空室に投入すると、真空室の真空度は0.26Torrになる。次いで、真空室をベース真空度の0.23Torrまで真空にした後水を投入する。水を投入すると真空室の真空度は0.26Torrになる。次いで、真空室をベース真空度の0.23Torrまで真空にした後、トリメチルアルミニウムを投入する。この際、トリメチルアルミニウムを投入した後、真空室の真空度を0.26Torrからベース真空度0.23Torrまで真空にする時間は25sであり、また、水を投入した後、真空室の真空度を0.26Torrからベース真空度0.23Torrまで真空にする時間は50sである。該条件下で、酸化アルミニウムが堆積する速度は0.14nm/cycleである。つまり、サイクルの回数を制御することによって、酸化アルミニウムにおけるナノ材料層の厚さを制御することができる。
【0041】
ステップ32において、原子層堆積法によって、酸化アルミニウムのナノ材料層をカーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブに被覆させる。また、異なるカーボンナノチューブフィルム構造体を基板として、異なる構造を有するナノチューブフィルム10又はナノチューブフィルム20を形成することもできる。
【0042】
第四ステップにおいて、酸化アルミニウムのナノ材料層が堆積されたカーボンナノチューブフィルム構造体をアニーリングして、カーボンナノチューブフィルム構造体を除去して、ナノチューブフィルム10又はナノチューブフィルム20を形成する。アニーリングの温度は500℃〜1000℃であり、これらの作業は、酸素を有する環境下で行う。本実施形態において、石英チューブの中において550℃でアニーリングした後、カーボンナノチューブフィルム構造体を除去して、酸化アルミニウムからなるナノチューブフィルム10又はナノチューブフィルム20を形成する。
【0043】
図12及び
図13は、それぞれ、前記方法によって形成された第一実施形態のナノチューブフィルム10及び第二実施形態のナノチューブフィルム20のSEM写真である。
図5及び
図6をさらに参照すると、ナノチューブフィルム10が、一枚のカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブフィルム構造体と基本的に同じ構造を有しており、ナノチューブフィルム20は、交差して設置された複数のカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブフィルム構造体と基本的に同じ構造を有することが分かる。
【0044】
図14を参照すると、本発明の実施形態2における二層の酸化アルミニウムナノチューブ110が交差して形成されたナノチューブフィルム20の引っ張り強度は2.9cNであり、この数値は、交差して積層されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブフィルム構造体の最大の引っ張り強度より大きい。カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものであり、引き出す過程において、分子間力の作用によって、カーボンナノチューブは、端と端とが接続して引き出される。これにより、隣接するカーボンナノチューブ間に複数の接続点が形成されるので、カーボンナノチューブフィルムの力学性能は弱い。また、二層の酸化アルミニウムのナノチューブ110が交差して形成されたナノチューブフィルム20は、カーボンナノチューブフィルム構造体から複製して形成されたものであり、従来の接続点も酸化アルミニウムに被覆されるので、カーボンナノチューブフィルム構成体における欠点を減少することができる。従って、二層の酸化アルミニウムが交差して形成されたナノチューブフィルム20は、イオン結合によって互いに結合する交差点を有するので、交差して積層されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブフィルム構造体よりその力学性能に優れている。
【0045】
従来の技術と比べて、本発明におけるナノチューブフィルムの製造方法によって形成されたナノチューブフィルムは、少なくとも一枚のナノチューブフィルムを含み、該ナノチューブフィルムは基本的に同じ方向に沿って配列する複数のナノチューブを含み、該ナノチューブの長さは、ナノチューブフィルムの長さと同じであるので、ナノチューブフィルムの力学性能が向上する。これにより、ナノチューブフィルムを広範囲にわたって応用することができる。