特許第6031189号(P6031189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031189
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ガスケット及び電解槽
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/02 20060101AFI20161114BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C25B13/02 302
   C25B9/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-514820(P2015-514820)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2014061475
(87)【国際公開番号】WO2014178317
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-95821(P2013-95821)
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-265405(P2013-265405)
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】中川 兼次
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 伸司
(72)【発明者】
【氏名】内野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】野秋 康秀
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−115781(JP,A)
【文献】 特開2012−215291(JP,A)
【文献】 特開2011−006767(JP,A)
【文献】 実開平03−125069(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 13/00−13/08
C25B 9/00
C02F 1/46
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ水電解槽に組み込まれ、隔膜を保持するガスケットであって、
陽極側の枠体に接する第1面及び陰極側の枠体に接する第2面を有すると共に四角形状又は環状をなしており、
内側に向かって開口し、前記隔膜の縁部を収容するスリット部と、当該スリット部の外側に設けられ、前記隔膜を収容しない充填部と、が全周にわたって設けられており、
前記第1面と前記第2面との対向方向において前記スリット部を介して対向する、前記第1面を有する第1部分及び前記第2面を有する第2部分と、
前記第1部分及び前記第2部分の何れか一方において前記内側に向かって開口して設けられ、前記第1面と前記第1部分において前記スリット部を画成する面とに連続して前記第1部分を分断、又は前記第2面と前記第2部分において前記スリット部を画成する面とに連続して前記第2部分を分断する分断部と、を備える、ガスケット。
【請求項2】
前記第1面及び前記第2面の何れか一方の面から突出する突出部を2つ以上有しており、
前記突出部は、前記第1面と前記第2面との対向方向から見て、前記スリット部と重なる位置に1つ以上配置され、且つ、前記スリット部と重ならない前記充填部に1つ以上配置されている、請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記スリット部と前記充填部との前記スリット部の長さ方向における距離の割合が、70:30〜20:80である、請求項1又は2記載のガスケット。
【請求項4】
前記隔膜がイオン透過性隔膜である、請求項1〜3のいずれか一項記載のガスケット。
【請求項5】
前記イオン透過性隔膜が多孔質膜である、請求項4記載のガスケット。
【請求項6】
補強材が埋設されている、請求項1〜5のいずれか一項記載のガスケット。
【請求項7】
前記第1面及び前記第2面の少なくとも一部に保護膜が設けられている、請求項1〜6のいずれか一項記載のガスケット。
【請求項8】
前記分断部は、前記第1部分又は前記第2部分の前記内側の面が交差する角部分に設けられている、請求項1〜7のいずれか一項記載のガスケット。
【請求項9】
前記分断部は、前記第1面と前記第2面との対向方向に沿って直線的に設けられる仮想分断部を形成する面の対向面積よりも、当該分断部を形成する面の対向面積が大きくなるように形成されている、請求項1〜8のいずれか一項記載のガスケット。
【請求項10】
前記分断部は、前記突出部が設けられていない前記第1部分又は前記第2部分に設けられている、請求項記載のガスケット。
【請求項11】
請求項1〜1のいずれか一項記載のガスケットを備えることを特徴とする電解槽。
【請求項12】
前記ガスケットの前記第1面又は前記第2面は、それぞれが接する前記陽極側の枠体又は前記陰極側の枠体に接着剤により接着されており、
前記分断部は、前記接着剤により接着される面を有する前記第1部分又は前記第2部分に設けられている、請求項1記載の電解槽。
【請求項13】
前記第1面及び前記第2面の何れかに一方において前記接着剤により接着されない面から突出する突出部を2つ以上有しており、
前記突出部は、前記第1面と前記第2面との対向方向から見て、前記スリット部と重なる位置に1つ以上配置されており、且つ、前記スリット部と重ならない前記充填部に1つ以上配置されている、請求項1記載の電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット及びそれを備える電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電解槽は、ガスケット、電極、ガスケット、隔膜固定用リング、隔膜、及びセルフフレームが順次結合した単位セットが複数配置され、その両端に陰極と陽極とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−332586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、セルフフレームと隔膜固定用リングとの間に隔膜を配置し、セルフフレームと隔膜固定用リングとにより隔膜を挟持している。このように、隔膜を一対の部材で挟持する構成では、隔膜が多孔質膜である場合には、隔膜の端面から電解液やガスが漏れる可能性がある。
【0005】
本発明は、隔膜から電解液やガスが漏れることを防止できるガスケット及び電解槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るガスケットは、アルカリ水電解槽に組み込まれ、隔膜を保持するガスケットであって、陽極側の枠体に接する第1面及び陰極側の枠体に接する第2面を有すると共に四角形状又は環状をなしており、内側に向かって開口し、隔膜の縁部を収容するスリット部と、当該スリット部の外側に設けられ、隔膜を収容しない充填部と、が全周にわたって設けられている。
【0007】
このガスケットでは、内側に向かって開口し、隔膜の縁部を収容するスリット部が全周にわたって設けられている。これにより、ガスケットは、隔膜の縁部をスリット部内に収容し、隔膜の縁部の端面を覆う。したがって、ガスケットでは、隔膜の端面から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0008】
一実施形態においては、第1面及び第2面の何れか一方の面から突出する突出部を2つ以上有しており、突出部は、第1面と第2面との対向方向から見て、スリット部と重なる位置に1つ以上配置され、且つ、スリット部と重ならない充填部に1つ以上配置されていてもよい。これにより、ガスケットでは、突出部が局所的に押圧されたときに、突出部に対応する位置においてスリット部に収容された隔膜がガスケットにより押圧される。したがって、ガスケットでは、隔膜をより強固に保持できる。
【0009】
一実施形態においては、スリット部と充填部との割合が、70:30〜20:80であってもよい。
【0010】
一実施形態においては、隔膜がイオン透過性隔膜であってもよい。
【0011】
一実施形態においては、イオン透過性隔膜が多孔質膜であってもよい。
【0012】
一実施形態においては、補強材が埋設されていてもよい。これにより、枠体に挟まれて押圧されたときに、ガスケットが潰れることを抑制できる。
【0013】
一実施形態においては、第1面及び第2面の少なくとも一部に保護膜が設けられていてもよい。これにより、ガスケットでは、例えば電解液やガスが腐食性を有する場合、その電解液やガスによる腐食を抑制できる。その結果、ガスケットのメンテナンス性の向上を図れる。
【0014】
一実施形態においては、第1面と第2面との対向方向においてスリット部を介して対向する、第1面を有する第1部分及び第2面を有する第2部分と、第1部分及び第2部分の何れか一方において内側に向かって開口して設けられ、第1面と第1部分においてスリット部を画成する面とに連続して第1部分を分断、又は第2面と第2部分においてスリット部を画成する面とに連続して2部分を分断する分断部と、を備えていてもよい。この分断部により、隔膜をスリット部に収容するときに、第1部分又は第2部分をめくり上げることができる。したがって、スリット部の開口が広がるため、隔膜をスリット部に容易に収容することができる。その結果、ガスケットへの隔膜の取り付け作業性の向上が図れる。
【0015】
一実施形態においては、分断部は、第1部分又は第2部分の内側の面が交差する角部分に設けられていてもよい。このように、ガスケットに角部分(隅部)が設けられている場合に、分断部を角部分に設けることにより、第1部分又は第2部分を良好にめくり上げることができる。
【0016】
一実施形態においては、分断部は、突出部が設けられていない第1部分又は第2部分に設けられていてもよい。ガスケットは、突出部が設けられていない第1面又は第2面が枠体に接着剤で接着される。そのため、分断部を突出部が設けられていない第1部分又は第2部分に設けることにより、分断部が接着剤により封止される。したがって、分断部から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0017】
一実施形態においては、分断部は、第1面と第2面との対向方向に沿って直線的に設けられる仮想分断部を形成する面の対向面積よりも、当該分断部を形成する面の対向面積が大きくなるように形成されていてもよい。これにより、スリットに隔膜を収容した後に分断部を封止する場合に、対向面積が大きいため、分断部の封止を良好に行うことができる。したがって、分断部から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0018】
本発明の他側面に係る電解槽は、上記のガスケットを備えている。これにより、電解槽では、隔膜から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0019】
本発明の他側面に係る電解槽は、アルカリ水溶液からなる電解液を電解して酸素及び水素を得るための電解槽であって、隔膜を保持するガスケットを備え、ガスケットは、陽極側の枠体に接する第1面及び陰極側の枠体に接する第2面を有すると共に四角形状又は環状をなしており、内側に向かって開口すると共に全周にわたって設けられ、隔膜の縁部を収容するスリット部と、スリット部の外側に全周にわたって設けられ、隔膜を収容しない充填部と、第1面と第2面との対向方向においてスリット部を介して対向する、第1面を有する第1部分及び第2面を有する第2部分と、第1部分及び第2部分の何れか一方において内側に向かって開口して設けられ、第1面と第1部分においてスリット部を画成する面とに連続して第1部分を分断、又は第2面と第2部分においてスリット部を画成する面とに連続して第2部分を分断する分断部と、を備える。
【0020】
この電解槽は、隔膜を保持するガスケットを備えている。ガスケットは、内側に向かって開口し、隔膜の縁部を収容するスリット部が全周にわたって設けられている。これにより、ガスケットは、隔膜の縁部をスリット部内に収容し、隔膜の縁部の端面を覆う。したがって、ガスケットは、隔膜の端面から電解液やガスが漏れることを防止できる。また、ガスケットは、第1部分及び第2部分の何れか一方において内側に向かって開口して設けられ、第1面と第1部分においてスリット部を画成する面とに連続して第1部分を分断、又は第2面と第2部分においてスリット部を画成する面とに連続して第2部分を分断する分断部を備える。この分断部により、隔膜をスリット部に収容するときに、第1部分又は第2部分をめくり上げることができる。したがって、隔膜をスリット部に容易に収容することができる。その結果、ガスケットへの隔膜の取り付け作業性の向上が図れる。
【0021】
一実施形態においては、ガスケットの第1面又は第2面は、それぞれが接する陽極側の枠体又は陰極側の枠体に接着剤により接着されており、分断部は、接着剤により接着される面を有する第1部分又は第2部分に設けられていてもよい。これにより、分断部が接着剤により封止されるため、分断部から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0022】
一実施形態においては、第1面及び第2面の何れかに一方において接着剤により接着されない面から突出する突出部を2つ以上有しており、突出部は、第1面と第2面との対向方向から見て、スリット部と重なる位置に1つ以上配置されており、且つ、スリット部と重ならない充填部に1つ以上配置されていてもよい。ガスケットは、突出部が設けられていない第1面又は第2面が枠体に接着剤で接着される。そのため、分断部を突出部が設けられていない第1部分又は第2部分に設けることにより、分断部が接着剤により封止される。したがって、分断部から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、隔膜から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、電解槽の主要部である電解セルを構成する各部材の配置を示す斜視図である。
図2図2は、電解槽を一部破断して示す側面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るガスケットを示す正面図である。
図4図4は、図3におけるIV−IV線での断面構成を示す図である。
図5図5は、図3におけるV−V線での断面構成を示す図である。
図6図6は、ガスケットにイオン透過性隔膜が挟持された状態の断面構成を示す図である。
図7図7は、他の実施形態に係るガスケットの断面構成を示す図である。
図8図8は、第1実施形態の変形例に係るガスケットを示す正面図である。
図9】第2実施形態に係るガスケットを示す正面図である。
図10図9におけるX−X線での断面構成を示す図である。
図11図9におけるXI−XI線での断面構成を示す図である。
図12図9におけるXII−XII線での断面構成を示す図である。
図13】ガスケットにイオン透過性隔膜が挟持された状態の断面構成を示す図である。
図14】第2実施形態の変形例に係るガスケットを示す正面図である。
図15】第2実施形態の変形例に係るガスケットの断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電解槽1は、アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための装置である。電解槽1は、各部材によって構成される電解セル3を備えている。電解セル3は、タイロッド5(図2参照)で締め付けられることで各部材が一体化されている。
【0027】
図1に示すように、電解セル3は、一端側(図示左側)から、プレスフランジ7、プレスフランジガスケット9、及び陽極ターミナルセル11が順番に並べられ、更に、ガスケット13、複極式アルカリ水電解セルユニット15が、この順番で並べて配置されている。ガスケット13は、イオン透過性隔膜17を保持している。ガスケット13と複極式アルカリ水電解セルユニット15とは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。
【0028】
電解セル3は、ガスケット13と複極式アルカリ水電解セルユニット15とが必要数だけ交互に配置され(図1参照)、更にガスケット13が配置され、他端側に陰極用給電端子10Bを備えた陰極ターミナルセル19、絶縁プレート21、エンドプレスフランジ23がこの順番で配置されて構成されている。電解セル3は、全体をタイロッド5で締め付けることにより一体化され、電解槽1となる。電解セル3を構成するこれらの配置は、陽極側からでも陰極側からでも任意に選択でき、本実施形態の順序に限定されるものではない。
【0029】
プレスフランジ7は、円板状のカバー部7aの縁に沿って短筒状の外枠7bが設けられており、更にカバー部7aには格子状の補強リブ7cが設けられている。また、プレスフランジ7には、陽極液入口ノズル25、陰極液入口ノズル27、陽極液及びガス出口ノズル29、及び、陰極液及びガス出口ノズル31がカバー部7aを貫通して設けられている。カバー部7aには、陽極用給電端子10Aが挿通するスリット部Saが四か所に形成されている。
【0030】
プレスフランジガスケット9には、陽極液入口ノズル25に連通する流路孔9a、陰極液入口ノズル27に連通する流路孔9b、陽極液及びガス出口ノズル29に連通する流路孔9c、及び、陰極液及びガス出口ノズル31に連通する流路孔9dが設けられており、更に、陽極用給電端子10Aを避けるための孔部9eが形成されている。
【0031】
陽極ターミナルセル11には、プレスフランジ7側に突き出した四本の陽極用給電端子10Aと、隣接するガスケット13側に設けられた陽極11a(図2参照)とが設けられている。
【0032】
複極式アルカリ水電解セルユニット15の外枠フレーム(枠体)15aには、陽極液入口ノズル25に連通する流路孔32と、陰極液入口ノズル27に連通する流路孔34と、陽極液及びガス出口ノズル29に連通する流路孔36と、陰極液及びガス出口ノズル31に連通する流路孔38と、が設けられている。
【0033】
陰極ターミナルセル19には、隣接するガスケット13側に設けられた陰極19aと、エンドプレスフランジ23側に突き出した四本の陰極用給電端子10Bとが設けられている。絶縁プレート21及びエンドプレスフランジ23には、陰極用給電端子10Bが挿通するスリット部Sbが四か所に形成されている。
【0034】
イオン透過性隔膜17は、ガス透過性が低く、電導度が小さく、強度が強いものが求められている。従来からアルカリ水電解に用いられていた隔膜は、アスベストや変性アスベスト等である。しかし、最近はポリスルホン系ポリマーを用いた多孔性隔膜、ポリフェニレンスルファイド繊維を用いた布、フッ素系多孔質体膜、無機物と有機物の混合した多孔質体等も用いられている。多孔質隔膜以外にもフッ素系のイオン交換膜等も用いる場合がある。なお、ガスケット13は、これらいずれの膜も制限なく保持できる。
【0035】
続いて、上記のガスケット13について、詳細に説明する。図3は、ガスケットを示す正面図である。図4は、図3におけるIV−IV線での断面構成を示す図である。図5は、図3におけるV−V線での断面構成を示す図である。
【0036】
図3に示すように、ガスケット13は、環状(枠状)を呈している。ガスケット13は、耐アルカリ性を有する材料から形成されていることが好ましい。ガスケット13の材料としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン−プロピレンゴム(EPT)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等を用いることができる。
【0037】
図4及び図5に示すように、ガスケット13は、第1面13aと、第2面13bと、を有している。第1面13a及び第2面13bは、平坦面とされている。
【0038】
ガスケット13は、スリット部14と、充填部16と、を有している。スリット部14及び充填部16は、ガスケット13の全周にわたって設けられている。詳細には、スリット部14は、ガスケット13の内側を向いて開口している。スリット部14は、ガスケット13の第1面13a及び第2面13bと略平行に延在している。スリット部14の長さ(深さ)Lは、イオン透過性隔膜17を保持できる程度の長さに適宜設定されればよく、例えば3〜20mm程度である。スリット部14の幅Wは、イオン透過性隔膜17の厚みに応じて適宜設定されればよく、例えば0.1〜1.0mm程度である。本実施形態では、スリット部14の幅は、イオン透過性隔膜17の厚みと略同等であり、例えば0.4mm程度である。
【0039】
充填部16は、スリット部14の外側に設けられ、イオン透過性隔膜17を収容しない部分である。スリット部14と充填部16との割合は、例えば、70:30〜20:80である。
【0040】
ガスケット13は、第1突出部13cと、第2突出部13dと、を有している。第1突出部13c及び第2突出部13dは、第2面13bから突出している。第1及び第2突出部13c,13dは、断面が三角形、四角形など様々な形状をとることができるが、例えばイオン透過性隔膜17を傷めないような略半円形形状を呈していることが好ましい。
【0041】
第1及び第2突出部13c,13dの高さは、特に限定される訳ではないが、イオン透過性隔膜17とガスケット13との間、陰極NE側、陽極PE側の外枠フレーム15aとガスケット13との間に十分な押し圧を発現するために、0.5mm〜5mmであることが好ましい。第1突出部13c及び第2突出部13dは、ガスケット13の形状に沿って延在している。第1突出部13cと第2突出部13dとは、所定の間隔をあけて配置されている。
【0042】
第1突出部13cは、ガスケット13の内縁部側に位置し、第1面13aと第2面13bとの対向方向から見たときに、スリット部14と重なる位置に配置されている。すなわち、スリット部14の底部は、第1突出部13cよりもガスケット13の外縁部側に位置している。第2突出部13dは、ガスケット13の外縁部側に位置している。本実施形態では、第2突出部13dは、スリット部14の底部よりもガスケット13の外縁部側、すなわち充填部16に位置している。
【0043】
第1突出部13cと第2突出部13dとは、その役割がそれぞれ異なっている。第1突出部13cは、イオン透過性隔膜17を押さえつけ、イオン透過性隔膜17がスリット部14から抜け出るのを防止する。第2突出部13dは、ガスケット13と陰極NE側、陽極PE側の外枠フレーム15aとを好適に押えつけ、電解槽1内部からの液やガスの漏洩を防止する。
【0044】
第1突出部13cの位置は、イオン透過性隔膜17を好適に押さえつける点から、スリット部14中心付近であることが好ましい。具体的には、第1突出部13cの位置は、スリット部14の開口部から第1突出部13cの中心までの距離と、第1突出部13cの中心からスリット部14の底部までの距離の比率が、20:80〜80:20であることが好ましい。これにより、膜ズレが防止される。
【0045】
ガスケット13は、張出部13eを有している。張出部13eは、ガスケット13の外縁部から外側に張り出す部分である。張出部13eは、他の部分よりも厚み(第1面13aと第2面13bとの間の寸法)が小さく、第1面13aと段差を有している。張出部13eには、突出部13fが設けられている。なお、突出部13fは、設けられていなくてもよい。
【0046】
ガスケット13には、陽極液入口ノズル25に連通する流路孔40、陰極液入口ノズル27に連通する流路孔42、陽極液及びガス出口ノズル29に連通する流路孔44、及び、陰極液及びガス出口ノズル31に連通する流路孔46が設けられている。
【0047】
図6に示すように、イオン透過性隔膜17は、スリット部14に挿入される。ガスケット13は、複極式アルカリ水電解セルユニット15の外枠フレーム15aの間に配置され、外枠フレーム15aに押圧されている。これにより、イオン透過性隔膜17は、ガスケット13に押圧されてガスケット13に挟持されている。
【0048】
続いて、ガスケット13の取り付け方法の一例について説明する。以下の説明では、ガスケット13を複極式アルカリ水電解セルユニット15に取り付ける方法を一例に説明する。最初に、ガスケット13の第1面13aに接着剤を塗布する。次に、ガスケット13の第2面13bを、複極式アルカリ水電解セルユニット15の陽極PE側の外枠フレーム15aに貼り付ける。なお、接着剤を乾燥させた後、複極式アルカリ水電解セルユニット15の陽極PEに水をかけ、陽極を湿らせておくことが好ましい。
【0049】
続いて、所定のサイズ(ガスケット13の開口部分よりも大きいサイズ)にカットしたイオン透過性隔膜17を準備する。次に、イオン透過性隔膜17の外縁部を、ガスケット13のスリット部14に挿入する。このとき、イオン透過性隔膜17にシワが生じた場合には、イオン透過性隔膜17に水をかけてシワを伸ばす。
【0050】
ガスケット13にイオン透過性隔膜17を装着した後、もう一台の複極式アルカリ水電解セルユニット15を準備し、この複極式アルカリ水電解セルユニット15の陰極NE側の外枠フレーム15aがガスケット13と対向するように、複極式アルカリ水電解セルユニット15を重ねる。以上により、ガスケット13が取り付けられる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のガスケット13には、スリット部14が設けられている。これにより、ガスケット13は、イオン透過性隔膜17の縁部をスリット部14内に収容し、イオン透過性隔膜17の端面を覆う。したがって、ガスケット13では、イオン透過性隔膜17の端面から電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0052】
本実施形態では、ガスケット13は、第1突出部13cを有している。第1突出部13cは、第1面13aと第2面13bとの対向方向から見たときに、スリット部14に重なる位置に配置されている。これにより、ガスケット13は、例えば複極式アルカリ水電解セルユニット15の外枠フレーム15aに押圧されたときに、第1突出部13cが局所的に押圧される。これにより、ガスケット13では、第1突出部13cに対応する位置に配置されたイオン透過性隔膜17が押圧されるため、イオン透過性隔膜17を強固に保持できる。
【0053】
本実施形態では、ガスケット13は、張出部13eを有している。これにより、電解槽1では、図6に示すように、例えば一対の複極式アルカリ水電解セルユニット15の間に配置されたときに、張出部13eが外枠フレーム15aの外縁よりも外側に突出する。これにより、電解槽1では、一対の複極式アルカリ水電解セルユニット115間において短絡が生じることを防止できる。
【0054】
上記実施形態に加えて、ガスケット13は、補強材が設けられていてもよい。補強材は、例えばガスケット13に埋設(内蔵)される。補強材としては、ステンレス、ナイロン、ポリプロピレン、PVDF、PTFE、PPS等の糸を、織った布状のものや、これらの短繊維等が使用できる。これにより、ガスケットは、外枠フレーム15aに挟まれて押圧されたときに、潰れにくくなる。
【0055】
上記実施形態に加えて、ガスケット13の表面に加工を施してもよい。加工の一例としては、保護膜をガスケット13の表面に設けることができる。保護膜としては、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene:ポリテトラフルオロエチレン)のテープを用いることができる。保護膜は、少なくとも、第2面13bの内側から第1突出部13cを覆う程度に設けられればよい。これにより、ガスケット13は、腐食性を有する電解液やガスに対する耐久性を向上させることができる。その結果、ガスケットのメンテナンス性の向上を図れる。
【0056】
上記実施形態では、ガスケット13の第2面13bに第1突出部13c及び第2突出部13d、張出部13eに突出部13fが設けられている構成を一例に説明したが、図7に示すように、突出部は設けられていなくてもよい。なお、ガスケットでは、突出部が設けられていることが好ましい。
【0057】
また、ガスケットは、図8に示すような構成であってもよい。図8は、他の実施形態に係るガスケットを示す正面図である。図8に示すように、ガスケット13Aは、外形が略矩形形状(四角形状)を呈している。ガスケット13Aには、陽極液入口ノズル25に連通する流路孔40A、陰極液入口ノズル27に連通する流路孔42A、陽極液及びガス出口ノズル29に連通する流路孔44A、及び、陰極液及びガス出口ノズル31に連通する流路孔46Aが設けられている。流通孔40A,42A,44A,46Aのそれぞれは、略矩形形状を呈している。なお、ガスケットの外形形状は特に限定されない。また、ガスケット13Aには、突出部が設けられていてもよいし、突出部が設けられていなくてもよい。
【0058】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態に係るガスケットを示す正面図である。図10は、図9におけるX−X線での断面構成を示す図である。図11は、図9におけるXI−XI線での断面構成を示す図である。図12は、図9におけるXII−XII線での断面構成を示す図である。
【0059】
図10及び図11に示すように、ガスケット13Bは、第1面13aと、第2面13bと、を有している。第1面13a及び第2面13bは、平坦面とされている。
【0060】
ガスケット13Bは、スリット部14と、充填部16と、を有している。スリット部14は、ガスケット13Bの全周にわたって設けられている。詳細には、スリット部14は、ガスケット13Bの内側を向いて開口している。スリット部14は、第1面13aを有する第1部分50の面50aと第2面13bを有する第2部分52の面52aとにより画成されている。面50aと面52aとは、対向している。すなわち、第1部分50と第2部分52とは、第1面13aと第2面13bとの対向方向においてスリット部14を介して対向している。
【0061】
スリット部14は、ガスケット13Bの第1面13a及び第2面13bと略平行に延在している。スリット部14の長さ(深さ)Lは、イオン透過性隔膜17を保持できる程度の長さに適宜設定されればよく、例えば3〜20mm程度である。スリット部14の幅Wは、イオン透過性隔膜17の厚みに応じて適宜設定されればよく、例えば0.1〜1.0mm程度である。本実施形態では、スリット部14の幅は、イオン透過性隔膜17の厚みと略同等であり、例えば0.4mm程度である。
【0062】
図9及び図12に示すように、ガスケット13Bは、分断部20a,20b,20c,20dを有している。分断部20a〜20dは、ガスケット13Bの角部分C1,C2,C3,C4にそれぞれ設けられている。角部分C1〜C4は、第1部分50(第2部分52)の内側の面13sが交差する部分である。分断部20a〜20dは、同様の構成を有している。以下では、分断部20aを一例に説明する。
【0063】
分断部20aは、環状の第1部分50の一部を分断する。詳細には、分断部20aは、第1部分50において内側に向かって開口して設けられ、第1面13aと第1部分50においてスリット部14を画成する面50aとに連続して第1部分50を分断する。図12に示すように、分断部20aは、第1面13aに対して傾斜して形成されている。これにより、分断部20aは、第1面13aと第2面13bとの対向方向に沿って直線的に設けられる仮想分断部を形成した場合の仮想分断部の面の対向面積よりも、この分断部20aを形成する面20aa及び面20abの対向面積が大きくなるように形成されている。なお、図12では、分断部20aの面20aaと面20abとの間隔がスリット部14と略同等に図示しているが、面20aaと面20abとの間隔は、更に小さくてもよい。
【0064】
ガスケット13Bは、分断部20aが形成されていることにより、第1部分50をめくり上げることが可能とされている。詳細には、ガスケット13Bでは、第1部分50を第2部分52に対して離間する方向に持ち上げると、分断部20aを起点として第1部分50がめくり上がる。これにより、ガスケット13Bでは、スリット部14の開口が広がるため、イオン透過性隔膜17の縁部を容易に収容できる。
【0065】
図10及び図11に示すように、ガスケット13Bは、第1突出部13cと、第2突出部13dと、を有している。第1突出部13c及び第2突出部13dは、第2面13bから突出している。すなわち、第1突出部13c及び第2突出部13dは、分断部20a〜20dが設けられた第1部分50側ではなく、第2部分52に設けられている。第1及び第2突出部13c,13dは、断面が三角形、四角形など様々な形状をとることができるが、例えばイオン透過性隔膜17を傷めないような略半円形形状を呈していることが好ましい。
【0066】
第1及び第2突出部13c,13dの高さは、特に限定される訳ではないが、イオン透過性隔膜17とガスケット13Bとの間、陰極NE側、陽極PE側の外枠フレーム15aとガスケット13Bとの間に十分な押し圧を発現するために、0.5mm〜5mmであることが好ましい。第1突出部13c及び第2突出部13dは、ガスケット13Bの形状に沿って延在している。第1突出部13cと第2突出部13dとは、所定の間隔をあけて配置されている。
【0067】
第1突出部13cは、ガスケット13Bの内縁部側に位置し、第1面13aと第2面13bとの対向方向から見たときに、スリット部14と重なる位置に配置されている。すなわち、スリット部14の底部は、第1突出部13cよりもガスケット13Bの外縁部側に位置している。第2突出部13dは、ガスケット13Bの外縁部側に位置している。本実施形態では、第2突出部13dは、スリット部14の底部よりもガスケット13Bの外縁部側、すなわち充填部16に位置している。
【0068】
第1突出部13cと第2突出部13dとは、その役割がそれぞれ異なっている。第1突出部13cは、イオン透過性隔膜17を押さえつけ、イオン透過性隔膜17がスリット部14から抜け出るのを防止する。また、第1突出部13cは、イオン透過性隔膜17と第1部分50(第2部分52)の面50a(面52a)との間からスリット部14の底部を通り、イオン透過性隔膜17と第2部分52(第1部分50)の面52a(面50a)を通って、発生した酸素ガス、水素ガスが電解槽1内部で混合することを防止する。第2突出部13dは、ガスケット13Bと陰極NE側、陽極PE側の外枠フレーム15aとを好適に押えつけ、電解槽1内部からの液やガスの漏洩を防止する。
【0069】
第1突出部13cの位置は、イオン透過性隔膜17を好適に押さえつける点から、スリット部14中心付近であることが好ましい。具体的には、第1突出部13cの位置は、スリット部14の開口部から第1突出部13cの中心までの距離と、第1突出部13cの中心からスリット部14の底部までの距離の比率が、20:80〜80:20であることが好ましい。これにより、膜ズレが防止される。
【0070】
ガスケット13Bは、張出部13eを有している。張出部13eは、ガスケット13Bの外縁部から外側に張り出す部分である。張出部13eは、他の部分よりも厚み(第1面13aと第2面13bとの間の寸法)が小さく、第1面13aと段差を有している。張出部13eには、突出部13fが設けられている。なお、突出部13fは、設けられていなくてもよい。
【0071】
ガスケット13Bには、陽極液入口ノズル25に連通する流路孔40、陰極液入口ノズル27に連通する流路孔42、陽極液及びガス出口ノズル29に連通する流路孔44、及び、陰極液及びガス出口ノズル31に連通する流路孔46が設けられている。
【0072】
図13に示すように、イオン透過性隔膜17は、スリット部14に挿入される。ガスケット13Bは、複極式アルカリ水電解セルユニット15の外枠フレーム15aの間に配置され、外枠フレーム15aに押圧されている。これにより、イオン透過性隔膜17は、ガスケット13Bに押圧されてガスケット13に挟持されている。
【0073】
続いて、ガスケット13Bの取り付け方法の一例について説明する。以下の説明では、ガスケット13Bを複極式アルカリ水電解セルユニット15に取り付ける方法を一例に説明する。最初に、所定のサイズ(ガスケット13Bの開口部分よりも大きいサイズ)にカットしたイオン透過性隔膜17を準備する。次に、第1部分50を第2部分52に対して離間する方向に持ち上げ、スリット部14の開口を広げながら、カットしたイオン透過性隔膜17を、ガスケット13Bのスリット部14に挿入する。このとき、イオン透過性隔膜17にシワが生じた場合には、イオン透過性隔膜17に水をかけてシワを伸ばす。
【0074】
続いて、各分断部20a〜20dの面20aa,20abの水分を拭き取り、この面20aa,20abに接着剤を塗布して面20aaと面20abとを接着し、分断部20a〜20dを封止する。次に、ガスケット13Bの第1面13aの水分を拭き取り、この面に接着剤54(図13参照)を塗布する。次に、ガスケット13Bの第1面13aを、複極式アルカリ水電解セルユニット15の陽極PE側の外枠フレーム15aに貼り付ける。なお、接着剤54を乾燥させた後、複極式アルカリ水電解セルユニット15の陽極PEに水をかけ、陽極を湿らせておくことが好ましい。
【0075】
次に、もう一台の複極式アルカリ水電解セルユニット15を準備し、この複極式アルカリ水電解セルユニット15の陰極NE側の外枠フレーム15aがガスケット13Bと対向するように、複極式アルカリ水電解セルユニット15を重ねる。以上により、ガスケット13Bが取り付けられる。
【0076】
以上説明したように、電解槽1のガスケット13Bは、内側に向かって開口し、イオン透過性隔膜17の縁部を収容するスリット部14が全周にわたって設けられている。これにより、ガスケット13Bは、イオン透過性隔膜17の縁部をスリット部14内に収容し、イオン透過性隔膜17の縁部の端面を覆う。したがって、ガスケット13Bは、イオン透過性隔膜17の端面から電解液やガスが漏れることを防止できる。また、ガスケット13Bは、第1部分50において内側に向かって開口して設けられ、第1面13aと第1部分50においてスリット部14を画成する面50aとに連続して第1部分50を分断する分断部20a〜20dを備える。この分断部20a〜20dにより、イオン透過性隔膜17をスリット部14に収容するときに、第1部分50をめくり上げることができる。したがって、スリット部14の開口が広がるため、イオン透過性隔膜17をスリット部14に容易に収容することができる。その結果、ガスケット13Bにイオン透過性隔膜17を容易に取り付けることができる。
【0077】
本実施形態では、分断部20a〜20dは、第1部分50の内側の面13sが交差する角部分C1〜C4のそれぞれに設けられている。このように、分断部20a〜20dを角部分C1〜C4に設けることにより、第1部分50を良好にめくり上げることができる。
【0078】
本実施形態では、ガスケット13Bは、第2面13bから突出する第1突出部13c及び第2突出部13dを有しており、第1突出部13cは、第1面13aと第2面13bとの対向方向から見て、スリット部14と重なる位置に配置されている。これにより、ガスケット13Bでは、第1突出部13cが局所的に押圧されたときに、第1突出部13cに対応する位置においてスリット部14に収容されたイオン透過性隔膜17がガスケット13Bにより押圧される。したがって、ガスケット13Bは、イオン透過性隔膜17をより強固に保持できる。
【0079】
本実施形態では、分断部20a〜20dは、第1突出部13c及び第2突出部13dが設けられていない第1部分50に設けられている。ガスケット13Bは、第1突出部13c及び第2突出部13dが設けられていない第1面13aが外枠フレーム15aに接着剤54で接着される。そのため、分断部20a〜20dを第1突出部13c及び第2突出部13dが設けられていない第1部分50に設けることにより、分断部20a〜20dが接着剤54により封止される。したがって、分断部20a〜20dから電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0080】
本実施形態では、分断部20a〜20dは、第1面13aと第2面13bとの対向方向に沿って直線的に設けられる仮想分断部を形成する面の対向面積よりも、分断部20a〜20dを形成する面20aa,20abの対向面積が大きくなるように形成されている。これにより、スリット部14にイオン透過性隔膜17を収容した後に分断部20a〜20dを封止する場合に、対向面積が大きいため、分断部20a〜20dの封止を良好に行うことができる。したがって、分断部20a〜20dから電解液やガスが漏れることを防止できる。
【0081】
ガスケットは、図14に示すような構成であってもよい。図14は、第2実施形態の変形例に係るガスケットを示す正面図である。図14に示すように、ガスケット13Cは、外形が略矩形形状を呈している。ガスケット13Cには、陽極液入口ノズル25に連通する流路孔40A、陰極液入口ノズル27に連通する流路孔42A、陽極液及びガス出口ノズル29に連通する流路孔44A、及び、陰極液及びガス出口ノズル31に連通する流路孔46Aが設けられている。流路孔40A,42A,44A,46Aのそれぞれは、略矩形形状を呈している。なお、ガスケットの外形形状は特に限定されない。また、ガスケット13Cには、突出部が設けられていてもよいし、突出部が設けられていなくてもよい。ガスケット13Cには、角部分C1〜C4のそれぞれに、分断部56a,56b,56c,56dが設けられている。
【0082】
上記実施形態では、図12に示すように、ガスケット13Bの分断部20a〜20dの断面形状が傾斜している形状を一例に説明したが、分断部の形状はこれに限定されない。図15は、第2実施形態の変形例に係るガスケットの断面構成を示す図である。図15に示すように、ガスケット13Dの分断部58は、断面形状が段差形状を呈している。このような構成により、分断部58は、第1面13aと第2面13bとの対向方向に沿って直線的に設けられる仮想分断部を形成した場合の仮想分断部の面の対向面積よりも、この分断部58を形成する面58a及び面58bの対向面積が大きくなるように形成されている。要は、分断部は、第1面13aと第2面13bとの対向方向に沿って直線的に設けられる仮想分断部を形成する面の対向面積よりも、当該分断部を形成する面の対向面積が大きくなるように形成されていればよい。
【0083】
上記実施形態では、分断部がガスケットの各角部分に設けられる構成を一例に説明したが、分断部は、ガスケットの第1部分又は第2部分のどの位置に設けられてもよい。また、分断部の数は、設計に応じて適宜設定されればよい。
【0084】
上記実施形態では、分断部が第1部分に設けられた構成を一例に説明したが、分断部は第2部分に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…電解槽、13,13A,13B,13C,13D…ガスケット、13a…第1面、13b…第2面、13c…第1突出部、13s…面、14…スリット部、15a…外枠フレーム(枠体)、16…充填部、17…イオン透過性隔膜(隔膜)、20a〜20d,56a〜56d…分断部、50…第1部分、50a…面、52…第2部分、52a…面、54…接着剤、C1〜C4…角部分、PE…陽極、NE…陰極。
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9
図10
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図15