(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ケースの凹部に充填される前記混合材の上面と前記凹部の周囲の前記第1ケースの上面とが同一平面内に配置されるように、前記第1ケースに前記混合材が充填される請求項7又は請求項8に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、以下で説明する実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0026】
[アルミニウム複合材の構造]
図1は、本実施形態に係るアルミニウム複合材100の一例を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態において、アルミニウムとは、純アルミニウム及びアルミニウム合金の一方又は両方を含む概念である。
【0027】
図1において、アルミニウム複合材100は、金属板1と、金属板2と、金属板1と金属板2との間に配置された母材3とを備えている。母材3の一方の表面と金属板1とが接触し、一方の表面の反対方向を向く母材3の他方の表面と金属板2とが接触する。母材3は、金属板1と金属板2とに挟まれる。なお、母材3を、コア材3と称してもよいし、金属板1及び金属板2をそれぞれ、スキン材1及びスキン材2と称してもよい。
【0028】
母材3は、アルミニウム粉末で形成され、その母材3に中性子吸収性能を有する粒子が分散されている。中性子吸収性能は、中性子の透過を阻害する機能を含む。本実施形態において、母材3に酸化ガドリニウム粒子が分散されている。酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)は、中性子吸収性能を有する材料である。本実施形態において、母材3に酸化ガドリニウム粒子が6質量%以上30質量%以下含有されてもよい。母材3は、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とから生成されてもよい。母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とから生成される場合、母材3は、6質量%以上30質量%以下の酸化ガドリニウム粒子と、その残余のアルミニウム粉末とから生成されてもよい。
【0029】
さらに、母材3に炭化ホウ素粒子が分散されてもよい。炭化ホウ素(B
4C)は、中性子吸収性能を有する材料である。本実施形態において、母材3に、酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上20質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されてもよい。母材3に、酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上10質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されてもよい。母材3は、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とから生成されてもよい。母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とから生成される場合、母材3は、2質量%以上10質量%以下の酸化ガドリニウム粒子と、10質量%以上20質量%以下の炭化ホウ素粒子と、その残余のアルミニウム粉末とから生成されてもよい。
【0030】
以下の説明においては、中性子吸収性能を有する酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の一方又は両方を適宜、中性子吸収粒子、と称する。
【0031】
金属板1及び金属板2はそれぞれ、アルミニウム製である。なお、金属板1及び金属板2の両方がステンレス鋼製でもよいし、金属板1及び金属板2の一方がアルミニウム製で他方がステンレス鋼製でもよい。
【0032】
アルミニウム複合材100の厚さDaは、金属板1の厚さD1と金属板2の厚さD2と母材3の厚さD3との合計値である。本実施形態において、金属板1の厚さD1と金属板D2の厚さD2の合計値(D1+D2)は、アルミニウム複合材100の厚さDaの15%以上25%以下に定められる。
【0033】
[原材料の説明]
(アルミニウム粉末)
母材3のアルミニウム粉末について説明する。母材3を形成するアルミニウム粉末は、例えば、JIS規格によるA1100(AA規格によるAA1100)で規定されるアルミニウム合金から形成されてもよい。本実施形態において、アルミニウム粉末は、シリコン(Si)と鉄(Fe)の合計が0.95重量%以下、銅(Cu)が0.05質量%〜0.20質量%、マンガン(Mn)が0.05質量%以下、亜鉛(Zn)が0.10質量%以下、その残余がアルミニウム及び不可避不純物である組成を有する材料から形成される。
【0034】
なお、アルミニウム粉末の組成は、上述の組成に限定されていない。例えば、アルミニウム粉末が、純アルミニウム(JIS1050、JIS1070等)、Al−Cu系合金(JIS2017等)、Al−Mg−Si系合金(JIS6061等)、Al−Zn−Mg系合金(JIS7075等)、及びAl−Mn系合金の少なくとも一つの合金から形成されてもよい。
【0035】
アルミニウム粉末の組成は、要求される特性、成形加工性、混合される粒子の量、及び原料コストなどを考慮して決定されてもよい。例えば、アルミニウム複合材100の加工性又は放熱性を高めたい場合、アルミニウム粉末は、純アルミニウム粉末であることが好ましい。純アルミニウム粉末は、アルミニウム合金粉末に比べて原料コストの面で有利である。なお、純アルミニウム粉末は、純度が99.5質量%以上のものを使用することが好ましい。
【0036】
アルミニウム粉末の平均粒径の上限値は、例えば200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下である。アルミニウム粉末の平均粒径の下限値は、例えば0.5μm以上、好ましくは10μm以上である。なお、アルミニウム粉末の平均粒径は、製造可能であれば特に限定されない。本実施形態においては、平均粒径が0.5μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下のアルミニウム粉末が使用される。
【0037】
なお、アルミニウム粉末の平均粒径が100μm以下であり、中性子吸収粒子(酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の一方又は両方)の平均粒径が30μm以下であることにより、母材3において中性子吸収粒子が均一に分散され、中性子吸収粒子が希薄な部分が少なくなり、アルミニウム複合材100の特性が安定する。
【0038】
アルミニウム粉末の平均粒径と中性子吸収粒子の平均粒径との差が大きい場合、後述の圧延加工において母材3に割れが発生する可能性が高い。そのため、アルミニウム粉末の平均粒径と中性子吸収粒子の平均粒径との差は小さいことが好ましい。
【0039】
また、アルミニウム粉末の平均粒径が大きすぎる場合、アルミニウム粉末と中性子吸収粒子とが均一に混合されることが困難となる可能性が高くなる。一方、アルミニウム粉末の平均粒径が小さすぎる場合、アルミニウム粉末同士で凝集が生じやすくなり、アルミニウム粉末と中性子吸収粒子とが均一に混合されることが困難となる可能性が高くなる。アルミニウム粉末の平均粒径が上述の範囲に定められることにより、優れた加工性、成形性、及び機械的特性が得られる。
【0040】
アルミニウム粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法による値を示す。例えば、日機装株式会社製「マイクロトラック」でアルミニウム粉末の平均粒径が計測されてもよい。平均粒径は、体積基準メジアン径である。アルミニウム粉末の形状も特に限定されない。アルミニウム粉末の形状は、例えば、涙滴状、真球状、回転楕円体状、フレーク状、及び不定形状などのいずれの形状でもよい。なお、後述する酸化ガドリニウム粒子の平均粒径、炭化ホウ素粒子の平均粒径、及びその他の粒子の平均粒径も、同様の手法で計測可能である。
【0041】
アルミニウム粉末は、公知の金属粉末の製造方法にしたがって製造可能である。アルミニウム粉末の製造方法は限定されない。アルミニウム粉末の製造方法としては、アトマイズ法、メルトスピニング法、回転円盤法、回転電極法、その他の急冷凝固法等が挙げられる。工業的生産の観点からは、アトマイズ法が好ましく、ガスアトマイズ法がより好ましい。
【0042】
なお、アトマイズ法においては、溶湯を通常700℃以上1200℃以下に加熱してアトマイズすることが好ましい。この温度範囲に設定することにより、より効果的なアトマイズを実施可能である。アトマイズ時の噴霧媒・雰囲気は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水、あるいはそれらの混合体であってもよいが、噴霧媒は、経済的観点から、空気、窒素ガス又はアルゴンガスによるのが好ましい。
【0043】
(酸化ガドリニウム粒子)
次に、母材3に分散される酸化ガドリニウム粒子について説明する。酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)は、中性子吸収性能を有し、母材3に酸化ガドリニウム粒子が分散されることによって、アルミニウム複合材100は中性子吸収材として機能する。
【0044】
酸化ガドリニウム粒子は、アルミニウム粉末に、6.0質量%以上30.0質量%以下の量で含有されることが好ましい。6質量%よりも少ない場合、母材3は十分な中性子吸収性能を有することができない可能性が高くなる。一方、30質量%よりも多い場合、成形体が脆くなって折れやすくなるという問題が生じる可能性が高くなる。また、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子の結合性も悪くなり、空隙ができやすく、求める各機能が得られなくなり、強度や熱伝導性も低下する可能性が高くなる。さらに、アルミニウム複合材100としての切削性も低下する可能性が高くなる。
【0045】
酸化ガドリニウム粒子の平均粒径は任意であり、アルミニウム粉末の平均粒径と酸化ガドリニウム粒子の平均粒径との差は、要求される仕様により適宜選択される。本実施形態において、酸化ガドリニウム粒子の平均粒径は、1μm以上30μm以下である。酸化ガドリニウム粒子の平均粒径が30μmよりも大きい場合、切断時に切断工具が直ぐに摩耗してしまうなどの問題が生じる可能性が高くなる。一方、酸化ガドリニウム粒子の平均粒径が1μmよりも小さい場合、微細な酸化ガドリニウム粒子同士で凝集が生じやすくなるため、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とが均一に混合されることが困難となる可能性が高くなる。
【0046】
なお、酸化ガドリニウム粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法による値を示す。酸化ガドリニウム粒子の形状も限定されず、例えば、涙滴状、真球状、回転楕円体状、フレーク状、不定形状等のいずれであってもよい。
【0047】
(炭化ホウ素粒子)
次に、炭化ホウ素粒子について説明する。本実施形態において、アルミニウム粉末で形成された母材3に、酸化ガドリニウム粒子のみならず、炭化ホウ素粒子が分散されてもよい。炭化ホウ素(B
4C)は、中性子吸収性能を有し、母材3に酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子が分散されることによって、アルミニウム複合材100は中性子吸収材として機能する。
【0048】
アルミニウム粉末に酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上20質量%以下の量で含有される場合、炭化ホウ素粒子は、10質量%以上20質量%以下の量で含有されることが好ましい。炭化ホウ素粒子が10質量%より少ない場合、母材3は、十分な中性子吸収性能を有することができない可能性が高くなる。一方、炭化ホウ素粒子が20質量%よりも多い場合、成形体が脆くなって、折れやすくなるという問題が生じる可能性が高くなる。なお、アルミニウム粉末に炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下の量で含有される場合、酸化ガドリニウム粒子は、2質量%以上10質量%以下の量で含有されてもよい。
【0049】
炭化ホウ素粒子の平均粒径は任意であり、アルミニウム粉末の平均粒径と炭化ホウ素粒子の平均粒径との差は、要求される仕様により適宜選択される。本実施形態において、炭化ホウ素粒子の平均粒径は、1μm以上30μm以下である。炭化ホウ素粒子の平均粒径が30μmよりも大きい場合、切断時に切断工具が直ぐに摩耗してしまうなどの問題が生じる可能性が高くなる。一方、炭化ホウ素粒子の平均粒径が1μmよりも小さい場合、微細な炭化ホウ素粒子同士で凝集が生じやすくなるため、アルミニウム粉末と炭化ホウ素粒子とが均一に混合されることが困難となる。
【0050】
なお、炭化ホウ素粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法による値を示す。炭化ホウ素粒子の粉末形状も限定されず、例えば、涙滴状、真球状、回転楕円体状、フレーク状、不定形状等のいずれであってもよい。
【0051】
なお、母材3には炭化ホウ素粒子が含有されてもよいし、含有されなくてもよい。また、母材3には、酸化ガドリニウム粒子に加えて、他の粒子が含有されてもよい。母材3に含有される粒子として、セラミックス粒子が含有されてもよい。母材3に含有されるセラミックスとしては、B
4Cの他に、Al
2O
3、SiC、BN、窒化アルミ、窒化ケイ素等が挙げられる。これらセラミックスは、粉末形状として用いられ、これらを単独で又は混合物として使用することができ、複合材の用途によって選択される。
【0052】
ホウ素(B)には中性子吸収性能があるため、ホウ素系セラミックス粒子を用いた場合、アルミニウム複合材100は中性子吸収材として使用可能である。その場合、ホウ素系セラミックスとしては、上述のB
4Cの他に、例えば、TiB
2、B
2O
3、FeB、FeB
2等が挙げられる。これらホウ素系セラミックスは、粉末の形状として用いられ、これらを単独で又は混合物として使用することができる。特に、中性子を良く吸収するBの同位体である
10Bを多く含む炭化ホウ素B
4Cを使用するのが好ましい。これらのセラミックス粒子の平均粒径は任意であるが、1μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。
【0053】
母材3にさらに中性子吸収性能を付与したい場合、換言すれば、中性子透過性を低く押さえたい場合、ハフニウム(Hf)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)等の中性子吸収性能を備えた少なくとも1種の元素を、アルミニウム粉末中に添加してもよい。また、高温強度が要求される場合には、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、ストロンチウム(Sr)等の少なくとも1種を、アルミニウム粉末に添加してもよい。室温強度が要求される場合には、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)等の少なくとも1種を、アルミニウム粉末に添加してもよい。
【0054】
[製造方法]
次に、本実施形態に係るアルミニウム複合材100の製造方法の一例について説明する。なお、以下の説明では、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とから生成される例について説明する。
【0055】
図2のフローチャートに示すように、本実施形態に係るアルミニウム複合材100の製造方法は、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とを混合して混合材Mを生成する混合工程(ステップS1)と、混合工程により生成された混合材Mを充填するためのケース10を準備するケース準備工程(ステップS2)と、ケース10を補強するための補強材16を準備する補強材準備工程(ステップS3)と、混合工程により生成された混合材Mをケース10に充填して被圧延体18を形成する充填工程(ステップS4)と、被圧延体18を加熱する予熱工程(ステップS5)と、加熱された被圧延体18を圧延してアルミニウム複合材100を製造する圧延工程(ステップS6)と、を含む。
【0056】
(ステップS1:混合工程)
アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とが用意され、均一に混合される。アルミニウム粉末は一種のみでもよいし複数種を混合したものでもよい。混合工程においては、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子との混合材Mに、酸化ガドリニウム粒子が6質量%以上30質量%以下含有されるように混合が行われる。アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子との混合方法は、公知の方法でよく、例えばVブレンダー、クロスロータリーミキサー等の各種ミキサー、振動ミル、遊星ミル等を使用し、所定の時間混合すればよい。本実施形態において、混合時間は、10分以上10時間以下であり、好ましくは、3時間以上6時間以下である。また、混合は、乾式又は湿式の何れであってもよい。また、混合の際に解砕の目的で、アルミナ又はSUSボール等の研磨メディアが適宜加えられてもよい。
【0057】
混合工程において、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とを混合して生成された混合材Mは、そのまま次工程に送られる。
【0058】
(ステップS2:ケース準備工程)
ケース準備工程においては、上述した混合工程で生成された混合材Mを充填する中空扁平状の金属製のケース10が準備される。
図3は、ケース10の一例を示す分解斜視図である。
図4は、ケース10の構造の一例を示す図である。
図5は、ケース10とそのケース10に充填された混合材Mとを含む被圧延体18の一例を示す断面図である。
【0059】
ケース10は、好適にはアルミニウム製又はステンレス鋼製である。例えば、アルミニウム製のケース10の場合、純アルミニウム(JIS1050、JIS1070等)が好適に用いられる。なお、ケース10を形成する材料として、Al−Cu系合金(JIS2017等)、Al−Mg系合金(JIS5052等)、Al−Mg−Si系合金(JIS6061等)、Al−Zn−Mg系合金(JIS7075等)、Al−Mn系合金等、種々のタイプの合金素材を使用することもできる。
【0060】
どのような組成のアルミニウムを選択するかは、要求される特性、及びコスト等を考慮して決定されてもよい。例えば、加工性又は放熱性を高めたい場合、ケース10は、純アルミニウムで形成されることが好ましい。純アルミニウムは、アルミニウム合金の場合に比べて原料コストの面で有利である。また、更にケース10の強度や加工性を高めたい場合、ケース10は、Al−Mg系合金(JIS5052等)で形成されることが好ましい。更に、中性子吸収性能を高めたい場合、Hf、Sm、Gd等の中性子吸収性能を有する少なくとも1種の元素が、ケース10に1〜50質量%添加されてもよい。
【0061】
本実施形態において、ケース10は、下ケース(第1ケース)12と上ケース(第2ケース)14とを含み、ケース準備工程において、下ケース12と上ケース14とが準備される。下ケース12及び上ケース14のそれぞれは、同一の材料から形成されており、本実施形態においては、アルミニウム製である。
図3、
図4、及び
図5に示すように、下ケース12は、側板12Aと、側板12Aと対向する側板12Bと、前板12Cと、前板12Cと対向する後板12Dと、底板12Eとを有する。上ケース14は、側板14Aと、側板14Aと対向する側板14Bと、前板14Cと、前板14Cと対向する後板14Dと、上板14Eとを有する。
【0062】
下ケース12は、上面が開放された有底直方体状に形成されており、混合材Mが充填される凹部12Hを有する。上ケース14は、略直方体状に形成されており、開放された下ケース12の上面を閉塞する閉塞部材として機能する。上ケース14は、下ケース12よりも僅かに大きい寸法を有し、下ケース12の上方から下ケース12の外周を覆うように嵌合される。上ケース14は、混合材Mが充填された凹部12Hの上端の開口12Kを覆うように配置される。
【0063】
(ステップS3:補強材準備工程)
ケース10の外周を補強するための補強材(補強枠)16が準備される。補強材16は、圧延工程においてケース10の外周面を補強するために配置される。ケース10の圧延時において、ケース10は、ケース10の長手方向(ケース10の平面形状が正方形である場合には、何れかの中心軸線)が圧延方向に沿うとともに、これの延出面が水平方向に沿うように配置される。
【0064】
上ケース14の側板14A及び側板14Bは、圧延方向に沿って配置され、前板14C及び後板14Dは、圧延方向と直交する方向に沿って配置される。補強材16は、側板14Aに接続される第1の補強部材16Aと、側板14Bに接続される第2の補強部材16Bと、前板14Cに接続される第3の補強部材16Cと、後板14Dに接続される第4の補強部材16Dとを有する。
【0065】
第1の補強部材16Aは、側板14Aに取り付けられ、第2の補強部材16Bは、側板14Bに取り付けられる。第1の補強部材16Aは、圧延方向に関して、第1の補強部材16Aの両端が側板14Aよりも前後に延出し、第2の補強部材16Bは、圧延方向に関して、第2の補強部材16Bの両端が側板14Bよりも前後に延出する。
【0066】
第3の補強部材16Cは、前板14Cに取り付けられ、第4の補強部材16Dは、後板14Dに取り付けられる。第3の補強部材16Cは、圧延方向と直交する方向に関して、前板14Cと同一の長さを有し、第4の補強部材16Dは、圧延方向と直交する方向に関して、後板14Dと同一の長さを有する。
【0067】
(ステップS4:充填工程)
次に、上述した混合工程で生成された混合材Mが下ケース12の凹部12Hに充填される。充填工程は、混合材Mを均一投入する作業を含む。下ケース12に対する混合材Mの充填作業(均一投入作業)において、下ケース12がタッピングされる。タッピングは、下ケース12を叩く処理を含む。タッピングは、均一投入作業の少なくとも一部と並行して行われてもよいし、均一投入作業後に行われてもよい。タッピングにより、下ケース12における混合材Mの充填密度を高めることができる。混合材Mの理論充填率35%から65%の範囲となるようにタッピングが行われる。
【0068】
図6から
図13は、被圧延体18を形成する充填工程の一例を示す図である。
図6に示すように、凹部12Hの開口12Kが上方を向くように、下ケース12が所定の充填位置に配置される。次に、
図7に示すように、延長スリーブ20と下ケース12とが重なるように、延長スリーブ20が下ケース12上に配置される。延長スリーブ20と下ケース12とが重ねられた状態で、延長スリーブ20は、凹部12Hの周囲の下ケース12の上面12Jと密着可能な下面を有するスリーブ本体20Aと、スリーブ本体20Aの下面から外側に突出するように形成され、スリーブ本体20Aの下面と下ケース12の上面12Jとが接触した状態で、下ケース12に外側から嵌合するスカート部20Bとを有する。
【0069】
このように、下ケース12上に延長スリーブ20が重ねられた状態で、
図8に示すように、下ケース12と延長スリーブ20とで形成される空間に混合材Mが投入される。
【0070】
本実施形態においては、下ケース12と延長スリーブ20とで形成される空間に混合材Mが投入された状態で、下ケース12と延長スリーブ20とがタッピングされる。すなわち、下ケース12及び延長スリーブ20の一方又は両方が叩かれる。その結果、
図9に示すように、下ケース12と延長スリーブ20とで形成される空間において混合材Mの充填密度が高まり、混合材Mの上面が下降する。
【0071】
そして、所定のタッピング時間が経過して、混合材Mの充填密度が必要とされる充填密度になるとタッピングが停止され、延長スリーブ20が上方に持ち上げられて下ケース12から外される。その結果、
図10に示すように、下ケース12の凹部12Hに混合材Mが配置されるとともに、延長スリーブ20内に存在していた混合材Mの一部分が下ケース12の上方に突出するように配置される。
【0072】
この後、下ケース12の上面12Jに沿ってスクレーパー22が移動することにより、下ケース12の上方に突出した混合材Mの一部分が擦り切られ、
図11に示すように、擦り切られた混合材Mが回収箱24に回収される。なお、回収箱24に回収された混合材Mは、上述したブレンダーに戻され、再び攪拌されて、再利用される。
【0073】
混合材Mの一部分が擦り切られることにより、下ケース12の凹部12H内には充填密度が高い混合材Mがフルに充填される。本実施形態においては、下ケース12の凹部12Hに充填された混合材Mの上面と、凹部12Hの周囲の下ケース12の上面12Jとが同一平面内に配置される(面一となる)。
【0074】
この後、
図12に示すように、上ケース14と下ケース12とが嵌合され、混合材Mが充填された凹部12Hの開口12Kが上ケース14で覆われる。下ケース12の開口12Kが閉塞された状態で、
図13に示すように、ケース10の内部に混合材Mがフルに充填された被圧延体18が形成される。
【0075】
ここで、
図13に示す被圧延体18の状態は、本実施形態に係るアルミニウム複合材100を製造するための「素材」(後述する圧延工程において、圧延の対象となる素材の意味)として極めて重要な意味を持つ。詳細は後述するが、この被圧延体18を圧延することにより得られる3層クラッド構造において、下ケース12の底板12Eが最下層(スキン層)を規定し、混合材Mが中間層(コア層)を規定し、上ケース14の上板14Eが最上層(スキン層)を規定する。
【0076】
そして、この3層クラッド構造が、充分な機械的特性を発揮するために、隣接する互いの層が密着している必要がある。本実施形態においては、混合材Mの下面と下ケース12の底板12Eの上面とが、全面に渡り密着し、混合材Mの上面と上ケース14の上板14Eの下面とが、全面に渡り密着している。本実施形態において、隣接する層同士が密着した状態で圧延され、圧延後の3層クラッド構造において、それら層同士は強固に接合される。したがって、3層クラッド構造のアルミニウム複合材100の機械的強度が充分に担保される。
【0077】
次に、補強材16で被圧延体18を補強する作業が実施される。
図5に示すように、補強する作業は、圧延時の姿勢における上下両面を除く被圧延体18の外周を補強材16で囲むことを含む。
【0078】
すなわち、第1の補強部材16Aが上ケース14の側板14Aに仮止めされ、第2の補強部材16Bが上ケース14の側板14Bに仮止めされる。圧延方向に関して第1の補強部材16Aの両端が側板14Aから延出し、第2の補強部材16Bの両端が側板14Bから延出するように仮止めされる。次に、第3の補強部材16Cが上ケース14の前板14Cに仮止めされ、第4の補強部材16Dが上ケース14の後板14Dに仮止めされる。圧延方向と直交する方向に関して第3の補強部材16Cの一端が第1の補強部材16Aの端部に当接し、第3の補強部材16Cの他端が第2の補強部材16Bの端部に当接するように仮止めされる。圧延方向と直交する方向に関して第4の補強部材16Dの一端が第1の補強部材16Aの端部に当接し、第4の補強部材16Dの他端が第2の補強部材16Bの端部に当接するように仮止めされる。
【0079】
このように、補強材16が被圧延体18に仮止めされた状態で、この被圧延体18が真空炉に配置され、所定の真空度で減圧されて脱ガスされる。
【0080】
脱ガス作業が終了した後、仮止めした補強材16が被圧延体18にMIG溶接により固着される。MIG溶接は、補強材16の上縁と、上ケース14の上縁とを全周にわたり溶接するとともに、補強材16の下縁と、上ケース14の下縁とを全周にわたり溶接することにより実施する。ここで、上ケース14の下縁と、下ケース12の下縁とは、緊密に隣接した状態となっている。この結果、補強材16の下縁と上ケース14の下縁とを溶接する時点で、下ケース12の下縁もともに溶接されることとなり、この結果、ケース10は全体として気密に密封されることになる。
【0081】
ここでケース10は気密に密封されることになるため、被圧延体18内に空気が存在(残留)する場合、これが欠陥として残る可能性がある。このため、圧延工程において空気が被圧延体18内から逃げて内部に残らないようにするために、上ケース14の上面の4隅に空気抜きの穴(図示せず)を形成するか、溶接を部分的に行いケースに隙間を形成しても良い。なお、この穴や隙間の形成により、溶接時に被圧延体18内に入り込んだガスが除去される効果も期待できる。
【0082】
(ステップS5:予熱工程)
補強材16で補強された被圧延体18は、圧延される前に、予熱(加熱)される。予熱は、加熱炉において、300℃〜600℃の範囲の大気中の雰囲気で2時間以上放置することにより実施する。本実施形態においては、500℃で2時間以上予熱する。ここで、予熱雰囲気としては、大気中で行うことに限定されない。アルゴン等の不活性ガス中で行うことが好ましい。より好ましくは、5Pa以下の真空雰囲気中で行われる。予熱工程では、混合材Mの粉状態が維持されるように、被圧延体18が加熱される。
【0083】
(ステップS6:圧延工程)
圧延工程は、被圧延体18に圧延という塑性加工を実施するものであるが、この被圧延体18において本実施形態において特有の効果をもたらす状況を、先ず、説明する。
【0084】
すなわち、圧延工程で圧延処理される被圧延体18において、圧延対象となる混合材Mは粉体のままであり、何ら固化する状況となっていない。すなわち、従前のように、圧延加工に供せられる前に、形状維持の目的で予備成形、具体的には、プレス加工したり、通電加圧焼結したりして、目的とする形状に予備成形する状況とはされていないものである。本実施形態における被圧延体18においては、上述したタッピングにより充填率が高められているものの、固化する程度のものではなく、粉体としての状況が維持されたものである。
【0085】
また、圧延工程に供せられる際、粉体としての混合材Mは、その上下をアルミニウムのケース10(下ケース12及び上ケース14)で挟み込まれた状況となっている。具体的には、混合材Mの上面は、上ケース14の上板14Eにより全面的に、且つ、緊密に覆われているものであり、混合材Mの下面は、下ケース12の底板12Eにより全面的に、且つ、緊密に覆われているものである。このようにして、この被圧延体18は、混合材Mをケース10内に充填して密封した状態で、混合材Mを上下からアルミニウム板で挟み込んだ3層クラッド構造としての板状クラッド材の「素材」が規定されているものである。
【0086】
予熱された被圧延体18は、圧延加工を施され、目的とする形状に成形される。板状クラッド材を作製する場合、冷間圧延のみでAl板材やAl容器との所定のクラッド率を有するクラッド板材を得ることも可能である。熱間塑性加工で一つの加工を行ってもよいし、複数の加工を組み合わせてもよい。また熱間塑性加工後、冷間塑性加工を行ってもよい。冷間塑性加工を行う場合は、加工前に300℃〜600℃(好ましくは400℃〜500℃)で焼鈍を行うと加工が行いやすくなる。
【0087】
被圧延体18はアルミニウム板によってクラッドされているので、その表面には塑性加工の際に破壊の基点となったり、ダイス等を摩耗させたりするセラミックス粒子は無い。そのため、圧延加工性が良好であり、強度や表面性状の優れたアルミニウム複合材100を得ることができる。また得られた熱間塑性加工材は、表面が金属でクラッドされ、表面の金属と内部の混合材Mとの密着性もよいので、表面を金属材にクラッドされていないアルミニウム複合材100より、耐食性、耐衝撃性、熱伝導性に優れる。
【0088】
好適な他の実施形態では、圧延加工を施す前に、被圧延体18の表面を金属製の保護板、例えばSUS又はCu製の薄板で覆うことも有効である。これにより、塑性加工時に生じる恐れのある前後方向の割れや亀裂等を未然に防止することができる。
【0089】
更に詳細には、圧延工程は、圧下率10%〜70%の範囲で10〜14パスを繰り返し実施して熱間圧延を行う。この熱間圧延における圧延温度は500℃に設定されている。
【0090】
なお、この熱間圧延で所望の最終厚さに仕上げてもよい。また、この熱間圧延の後、200℃〜300℃の範囲で温間圧延をしてもよい。更に、この温間圧延の後、200℃以下の温度で第2回の温間圧延を実施してもよい。
【0091】
そして、圧延工程が終了した後、300℃〜600℃の範囲で所定時間の熱処理工程、すなわち、焼鈍工程を実施する。この焼鈍工程の後、冷却工程を実施して、所望の平坦度に矯正する矯正工程を実施して、両側縁、先端縁、後端縁を、夫々切り落として、所定の製品形状(アルミニウム複合材100としての板状クラッド材)とする。例えば、この圧延後、450℃で所定時間焼鈍してもよい。
【0092】
本実施形態においては、混合材Mが母材3となり、上ケース14の少なくとも一部が金属板1となり、下ケース12の少なくとも一部が金属板2となる。
【0093】
なお、上述の実施形態においては、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とから生成される例について説明した。母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とから生成される場合、混合工程においては、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とが混合される。また、混合工程においては、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子との混合材Mに、酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上10質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されるように混合が行われる。
【0094】
[実施例1]
次に、本発明に係る実施例1について説明する。表1、表2、及び表3に示すように、組成が異なる13種類の母材3を有するアルミニウム複合材100のサンプル(サンプル1〜サンプル13)を用意し、それらサンプルのそれぞれについての性能を評価した。なお、各材料の組成は、ICP発光分光分析法により分析可能である。
【0098】
表1は、各サンプルの母材3の組成と、それらサンプルの相当B
4C濃度とを示す。各サンプルは、表1に示す組成を有する母材3と、その母材3を挟むように配置されるアルミニウム製の金属板1及び金属板2とを有する。
【0099】
サンプル1〜サンプル4、サンプル6、サンプル7、サンプル9〜サンプル11は、本発明に係る実施例に相当する。サンプル1〜サンプル4は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)とから生成されているサンプルである。サンプル6、サンプル7、サンプル9〜サンプル11は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成されているサンプルである。サンプル5、サンプル8、サンプル12、及びサンプル13は、比較例に係るサンプルであり、母材3は酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含まないサンプルである。
【0100】
表1に示すように、サンプル1〜サンプル4は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)とから生成され、炭化ホウ素粒子(B
4C)を含有しないサンプルである。サンプル1は、酸化ガドリニウム粒子を6質量%含有し、サンプル2は、酸化ガドリニウム粒子を12質量%含有し、サンプル3は、酸化ガドリニウム粒子を15質量%含有し、サンプル4は、酸化ガドリニウム粒子を30質量%含有する。
【0101】
サンプル5〜サンプル7は、母材3が炭化ホウ素粒子(B
4C)を10質量%含有するサンプルである。サンプル5は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成され、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含有しないサンプルである。サンプル6及びサンプル7は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成されたサンプルである。サンプル6は、酸化ガドリニウム粒子を4質量%含有し、サンプル7は、酸化ガドリニウム粒子を10質量%含有する。
【0102】
サンプル8〜サンプル11は、母材3が炭化ホウ素粒子(B
4C)を20質量%含有するサンプルである。サンプル8は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成され、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含有しないサンプルである。サンプル9〜サンプル11は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成されたサンプルである。サンプル9は、酸化ガドリニウム粒子を2質量%含有し、サンプル10は、酸化ガドリニウム粒子を8質量%含有し、サンプル11は、酸化ガドリニウム粒子を20質量%含有する。
【0103】
サンプル12及びサンプル13は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成され、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含有しないサンプルである。サンプル12及びサンプル13は、炭化ホウ素粒子(B
4C)を多く含有し、サンプル12は、炭化ホウ素粒子を30質量%含有し、サンプル13は、炭化ホウ素粒子を60質量%含有する。
【0104】
表1において、相当B
4C濃度とは、母材3の全部を炭化ホウ素粒子で形成してその母材3の熱中性子吸収性能を100としたときの、各サンプルの熱中性子吸収性能を示す相対的な数値である。
【0105】
評価試験として、(1)引張試験、(2)曲げ試験を行った。引張試験は、JIS−Z2241に基づくものであり、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、及び伸び(%)を測定した。曲げ試験は、JIS−Z2248に基づくものであり、アルミニウム複合材100の厚さDaが1mm、2mm、4mm、8mmのサンプルをそれぞれ用意し、曲率半径6mm(R6)、9mm(R9)、12mm(R12)、15mm(R15)、20mm(R20)で90度の曲げ試験を行った。
【0106】
表1は、各サンプルの引張試験の結果(引張特性)を示す。表2及び表3は、各サンプルの曲げ試験の結果(曲げ性)を示す。
【0107】
また、
図14、
図15、
図16、
図17、
図18、
図19、
図20、
図21、
図22、及び
図23のそれぞれに、サンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4、サンプル6、サンプル7、サンプル9、サンプル10、サンプル11、及びサンプル12それぞれを、光学顕微鏡を用いて500倍の倍率で撮影した顕微鏡写真を示す。
図14〜
図22に示すように、本発明に係る母材3においては、アルミニウム粉末に中性子吸収粒子(酸化ガドリニウム粒子、炭化ホウ素粒子)が均一に分散されていることが分かる。
【0108】
一般的に、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)は、炭化ホウ素粒子(B
4C)よりも5倍程度の高い中性子吸収性能(熱中性子吸収性能)を有する。すなわち、炭化ホウ素粒子を含有せず、酸化ガドリニウム粒子を30質量%含有するサンプル4の相当B
4C濃度は、150質量%である(と期待される)。
【0109】
また、表1のサンプル1〜サンプル4などの引張特性の伸びから分かるように、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)が含有された母材3を有するアルミニウム複合材100は、十分な伸びを有することが分かる。中性子吸収材が流通している市場における伸びの一般要求仕様値として、0.5%以上が要求されている。この要求仕様値と比較して、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)が含有された母材3を有するアルミニウム複合材100の伸びは、高い値となっており、充分な伸びを有することが分かる。また、炭化ホウ素粒子を含有せず、酸化ガドリニウム粒子を30質量%含有するサンプル4の伸びは、8.0%であり、酸化ガドリニウム粒子を含有せず、炭化ホウ素粒子を30質量%含有するサンプル12の伸びは、3.8%であり、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含有する母材3のほうが、炭化ホウ素粒子(B
4C)を含有する母材3よりも十分に伸びることが分かる。
【0110】
表1のサンプル1〜サンプル4から分かるように、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とから生成される場合において、十分な中性子吸収性能(相当B
4C濃度)を有し、且つ、十分な引張特性を有するアルミニウム複合材100を実現するためには、母材3に酸化ガドリニウム粒子が6質量%以上30質量%以下含有されることが好ましいことが判明した。その数値範囲で酸化ガドリニウム粒子が含有されることにより、引張特性の伸びのみならず、引張強さ及び0.2%耐力も十分な値を得られることが分かる。
【0111】
中性子吸収材が流通している市場における引張強さは、一般要求仕様値として、35MPa以上が要求されている。表1から分かるように、この要求仕様値と比較して、サンプル1〜サンプル4は、充分な引張強さを有することが分かる。
【0112】
また、中性子吸収材が流通している市場における0.2%耐力は、一般要求仕様値として、15MPa以上が要求されている。表1から分かるように、この要求仕様値と比較して、サンプル1〜サンプル4は、充分な0.2%耐力を有することが分かる。
【0113】
サンプル6、サンプル7、サンプル9、及びサンプル10から分かるように、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とから生成される場合において、十分な中性子吸収性能(相当B
4C濃度)を有し、且つ、十分な引張特性を有するアルミニウム複合材100を実現するためには、母材3に酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上10質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されることが好ましいことが判明した。その数値範囲で酸化ガドリニウム粒子が含有されることにより、引張特性の伸びのみならず、引張強さ及び0.2%耐力も十分な値を得られることが分かる。
【0114】
伸びが高いほうが物品の加工性が良いため、本発明に係るアルミニウム複合材100は、良好な加工性を有することが分かる。
【0115】
なお、ある中性子吸収性能(相当B
4C濃度)を得ようとした場合、酸化ガドリニウム粒子が含有され炭化ホウ素粒子が含有されない場合のほうが、酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の両方が含有される場合よりも、引張特性(伸び)が向上する場合がある。例えば、例えばサンプル2とサンプル7とから分かるように、60質量%の相当B
4C濃度を得ようとした場合、炭化ホウ素粒子が含有されていないサンプル2の伸びは、20.8%であるが、炭化ホウ素粒子が含有されているサンプル7の伸びは、8.1%となる。このように、中性子吸収性能を維持しつつ、十分な伸びを得ようとすると、炭化ホウ素粒子の含有率は少ないほうがよい。
【0116】
一方、要求される加工性(引張特性)、及び要求される中性子吸収性能、製造コストなどを考慮して、酸化ガドリニウム粒子のみを含有するか、酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の両方を含有するかが決定されてもよい。本実施形態においては、必要とされる引張特性、及び上述の要求仕様値(目標引張り強さ、目標0.2%耐力、及び目標伸び)を考慮して、母材3には、酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上10質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されることが好ましいと判定する。
【0117】
表2及び表3において、「×」は、曲げ試験の結果、アルミニウム複合材100の少なくとも一部に割れが生じた場合(NGの場合)を示し、「○」は、割れなどが生じなかった場合(OKの場合)を示す。表2及び表3に示すように、曲げ性も、酸化ガドリニウム粒子のみが含有されるか、酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の両方が含有されるかによって変化する。また、アルミニウム複合材100の厚さDaに応じて試験結果も変化する。厚さDaが小さいほうが、NGになる確率は低くなる。そのため、要求される加工性(曲げ性)、及び要求される中性子吸収性能などを考慮して、酸化ガドリニウム粒子のみを含有するか、酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の両方を含有するかが決定されてもよい。
【0118】
このように、本実施形態に係るアルミニウム複合材100(中性子吸収材)は、その機械的強度の観点で、市場が要求する仕様値よりも、かなり高い値を発揮しているものであり、十分な機械的強度を有していて、したがって、産業上の利用性が高いことが判明した。
【0119】
[実施例2]
次に、本発明に係る実施例2について説明する。実施例2は、実施例1よりもサンプル数を増やして評価試験を実施した例を示す。表4、表5、及び表6に示すように、組成が異なる18種類の母材3を有するアルミニウム複合材100のサンプル(サンプル1〜サンプル18)を用意し、それらサンプルのそれぞれについての性能を評価した。
【0123】
表4は、各サンプルの母材3の組成と、それらサンプルの相当B
4C濃度とを示す。各サンプルは、表4に示す組成を有する母材3と、その母材3を挟むように配置されるアルミニウム製の金属板1及び金属板2とを有する。
【0124】
表4、表5、及び表6に示すサンプル1〜サンプル13は、実施例1のサンプル1〜サンプル13と同じである。実施例2では、サンプル14〜サンプル18を新たに加えて評価試験を実施した。
【0125】
サンプル1〜サンプル4、サンプル14、サンプル6、サンプル7、サンプル9〜サンプル11、及びサンプル15は、本発明に係る実施例に相当する。
【0126】
サンプル1〜サンプル4、及びサンプル14は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)とから生成され、炭化ホウ素粒子(B
4C)を含有しないサンプルである。
【0127】
表4に示すように、サンプル1は、酸化ガドリニウム粒子を6質量%含有する。サンプル2は、酸化ガドリニウム粒子を12質量%含有する。サンプル3は、酸化ガドリニウム粒子を15質量%含有する。サンプル4は、酸化ガドリニウム粒子を30質量%含有する。サンプル14は、酸化ガドリニウム粒子を8質量%含有する。
【0128】
サンプル6、サンプル7、サンプル9〜サンプル11、及びサンプル15は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成されているサンプルである。
【0129】
表4に示すように、サンプル6は、酸化ガドリニウム粒子を4質量%含有し、炭化ホウ素粒子を10質量%含有する。サンプル7は、酸化ガドリニウム粒子を10質量%含有し、炭化ホウ素粒子を10質量%含有する。サンプル9は、酸化ガドリニウム粒子を2質量%含有し、炭化ホウ素粒子を20質量%含有する。サンプル10は、酸化ガドリニウム粒子を8質量%含有し、炭化ホウ素粒子を20質量%含有する。サンプル11は、酸化ガドリニウム粒子を20質量%含有し、炭化ホウ素粒子を20質量%含有する。サンプル15は、酸化ガドリニウム粒子を5質量%含有し、炭化ホウ素粒子を20質量%含有する。
【0130】
サンプル16、サンプル5、サンプル8、サンプル12、サンプル17、サンプル18、及びサンプル13は、比較例に係るサンプルであり、母材3は酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含まないサンプルである。
【0131】
表4に示すように、サンプル16は、母材3に酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)及び炭化ホウ素粒子(B
4C)の両方を含有しないサンプルである。
【0132】
サンプル5、サンプル8、サンプル12、サンプル17、サンプル18、及びサンプル13は、母材3がアルミニウム粉末(Al)と炭化ホウ素粒子(B
4C)とから生成され、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含有しないサンプルである。
【0133】
表4に示すように、サンプル5は、炭化ホウ素粒子を10質量%含有する。サンプル8は、炭化ホウ素粒子を20質量%含有する。サンプル12は、炭化ホウ素粒子を30質量%含有する。サンプル17は、炭化ホウ素粒子を40質量%含有する。サンプル18は、炭化ホウ素粒子を50質量%含有する。サンプル13は、炭化ホウ素粒子を60質量%含有する。
【0134】
表4において、相当B
4C濃度とは、母材3の全部を炭化ホウ素粒子で形成してその母材3の熱中性子吸収性能を100としたときの、各サンプルの熱中性子吸収性能を示す相対的な数値である。
【0135】
評価試験として、(1)引張試験、(2)曲げ試験を行った。実施例1と同様、引張試験は、JIS−Z2241に基づくものであり、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、及び伸び(%)を測定した。実施例1と同様、曲げ試験は、JIS−Z2248に基づくものであり、アルミニウム複合材100の厚さDaが1mm、2mm、4mm、8mmのサンプルをそれぞれ用意し、曲率半径6mm(R6)、9mm(R9)、12mm(R12)、15mm(R15)、20mm(R20)で90度の曲げ試験を行った。
【0136】
表4は、各サンプルの引張試験の結果(引張特性)及び曲げ試験の結果(成形性)を示す。表5及び表6は、各サンプルの曲げ試験の結果(曲げ性)を示す。
【0137】
表4のサンプル1〜サンプル4、及びサンプル14などの引張特性の伸びから分かるように、酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)が含有された母材3を有するアルミニウム複合材100は、十分な伸びを有することが分かる。
【0138】
酸化ガドリニウム粒子を8質量%含有し、炭化ホウ素粒子を含有しないサンプル14の伸びは、17.4%である。酸化ガドリニウム粒子を8質量%含有し、炭化ホウ素粒子を20質量%含有するサンプル10の伸びは、6.7%である。酸化ガドリニウム粒子(Gd
2O
3)を含有する母材3において、炭化ホウ素粒子(B
4C)の含有率が小さい母材3のほうが、炭化ホウ素粒子(B
4C)の含有率が大きい母材3よりも十分な伸びを有することが分かる。
【0139】
表4のサンプル1〜サンプル4、及びサンプル14などから分かるように、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とから生成される場合において、十分な中性子吸収性能(相当B
4C濃度)を有し、且つ、十分な引張特性を有するアルミニウム複合材100を実現するためには、母材3に酸化ガドリニウム粒子が6質量%以上30質量%以下含有されることが好ましいことが分かる。その数値範囲で酸化ガドリニウム粒子が含有されることにより、引張特性の伸びのみならず、引張強さ及び0.2%耐力も十分な値を得られることが分かる。
【0140】
表4のサンプル6、サンプル7、サンプル9、サンプル10、サンプル11、及びサンプル15などから分かるように、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とから生成される場合において、十分な中性子吸収性能(相当B
4C濃度)を有し、且つ、十分な引張特性を有するアルミニウム複合材100を実現するためには、母材3に酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上20質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されることが好ましいことが分かる。この場合、アルミニウム複合材100の伸び率は、サンプル11の2.1%が最小値であり、他のサンプル(サンプル6、サンプル7、サンプル9、サンプル10、及びサンプル15)の伸び率は、2.1%以上である。表4に示す例においては、サンプル6の11.2%が最大値である。本実施例により、母材3に、酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上20質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有され、伸び率が約2%以上(2.1%以上11.2%以下)であるアルミニウム複合材100が製造可能であることが確認できる。
【0141】
なお、サンプル6、サンプル7、サンプル9、サンプル10、及びサンプル15などから分かるように、母材3がアルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子と炭化ホウ素粒子とから生成される場合において、母材3に酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上10質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有されることが好ましい。その数値範囲で酸化ガドリニウム粒子が含有されることにより、引張特性の伸びのみならず、引張強さ及び0.2%耐力も十分な値を得られることが分かる。
【0142】
表5及び表6において、「×」は、曲げ試験の結果、アルミニウム複合材100の少なくとも一部に割れが生じた場合(NGの場合)を示し、「○」は、割れなどが生じなかった場合(OKの場合)を示す。
【0143】
本実施例では、アルミニウム複合材100の成形性の評価のために、厚さDaのアルミニウム複合材100を90度曲げ試験したときの、割れが生じない場合(OKの場合)の曲率半径Rを求め、比R/Daを評価値として定めた。すなわち、90度曲げ試験したときの割れが生じない曲率半径をR、厚さをDaとしたとき、アルミニウム複合材100の成形性を、比R/Daで表した。
【0144】
表5に示すように、厚さDaが1mm、2mm、4mm、及び8mmのアルミニウム複合材100を曲率半径Rが6mmとなるように90度曲げ試験したときの比R/Daは、それぞれ、「6」、「3」、「1.5」、「0.75」、である。
【0145】
厚さDaが1mm、2mm、4mm、及び8mmのアルミニウム複合材100を曲率半径Rが9mmとなるように90度曲げ試験したときの比R/Daは、それぞれ、「9」、「4.5」、「2.25」、「1.125」、である。
【0146】
厚さDaが1mm、2mm、4mm、及び8mmのアルミニウム複合材100を曲率半径Rが12mmとなるように90度曲げ試験したときの比R/Daは、それぞれ、「12」、「6」、「3」、「1.5」、である。
【0147】
厚さDaが1mm、2mm、4mm、及び8mmのアルミニウム複合材100を曲率半径Rが15mmとなるように90度曲げ試験したときの比R/Daは、それぞれ、「15」、「7.5」、「3.75」、「1.875」、である。
【0148】
厚さDaが1mm、2mm、4mm、及び8mmのアルミニウム複合材100を曲率半径Rが20mmとなるように90度曲げ試験したときの比R/Daは、それぞれ、「20」、「10」、「5、「2.5」、である。
【0149】
例えば、表5に示すように、サンプル1において、曲率半径Rが6mm、厚さDaが1mm及び2mmのとき、割れが生じない。割れが生じない曲率半径Rが6mm、厚さDaが1mmのときの比R/Daは、「6」である。割れが生じない曲率半径Rが6mm、厚さDaが2mmのときの比R/Daは、「3」である。
【0150】
また、表5に示すように、サンプル1において、曲率半径Rが9mm、厚さDaが1mm及び2mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが9mmのときの比R/Daは、「9」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが9mmのときの比R/Daは、「4.5」である。
【0151】
また、表5に示すように、サンプル1において、曲率半径Rが12mm、厚さDaが1mm、2mm、及び4mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが12mmのときの比R/Daは、「12」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが12mmのときの比R/Daは、「6」である。厚さDaが4mm、割れが生じない曲率半径Rが12mmのときの比R/Daは、「3」である。
【0152】
また、表6に示すように、サンプル1において、曲率半径Rが15mm、厚さDaが1mm、2mm、及び4mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが15mmのときの比R/Daは、「15」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが15mmのときの比R/Daは、「7.5」である。厚さDaが4mm、割れが生じない曲率半径Rが15mmのときの比R/Daは、「3.75」である。
【0153】
また、表6に示すように、サンプル1において、曲率半径Rが20mm、厚さDaが1mm、2mm、4mm、及び8mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが20mmのときの比R/Daは、「20」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが20mmのときの比R/Daは、「10」である。厚さDaが4mm、割れが生じない曲率半径Rが20mmのときの比R/Daは、「5」である。厚さDaが8mm、割れが生じない曲率半径Rが20mmのときの比R/Daは、「2.5」である。
【0154】
このように、サンプル1において、90度曲げ試験したときの割れが生じない曲率半径をR、厚さをDaとしたとき、比R/Daは、「6」、「3」、「9」、「4.5」、「12」、「6」、「3」、「15」、「7.5」、「3.75」、「20」、「10」、「5」、「2.5」、となる。本実施例では、複数求められる比R/Daの最小値を、アルミニウム複合材100の成形性の評価値として用いる。サンプル1において、曲率半径Rが20mm、厚さDaが8mmのとき、比R/Daは最小値「2.5」を示す(表6の網掛け部分参照)。
【0155】
例えば、表5に示すように、サンプル4において、曲率半径Rが6mm、厚さDaが1mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが6mmのときの比R/Daは、「6」である。
【0156】
また、表5に示すように、サンプル4において、曲率半径Rが9mm、厚さDaが1mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが9mmのときの比R/Daは、「9」である。
【0157】
また、表5に示すように、サンプル4において、曲率半径Rが12mm、厚さDaが1mm及び2mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが12mmのときの比R/Daは、「12」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが12mmのときの比R/Daは、「6」である。
【0158】
また、表6に示すように、サンプル4において、曲率半径Rが15mm、厚さDaが1mm及び2mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが15mmのときの比R/Daは、「15」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが15mmのときの比R/Daは、「7.5」である。
【0159】
また、表6に示すように、サンプル4において、曲率半径Rが20mm、厚さDaが1mm及び2mmのとき、割れが生じない。厚さDaが1mm、割れが生じない曲率半径Rが20mmのときの比R/Daは、「20」である。厚さDaが2mm、割れが生じない曲率半径Rが20mmのときの比R/Daは、「10」である。
【0160】
このように、サンプル4において、90度曲げ試験したときの割れが生じない曲率半径をR、厚さをDaとしたとき、比R/Daは、「6」、「9」、「12」、「6」、「15」、「7.5」、「20」、「10」、となる。本実施例では、複数求められる比R/Daの最小値を、アルミニウム複合材100の成形性の評価値として用いる。サンプル4において、曲率半径Rが6mmで、厚さDaが1mmのとき、比R/Daは最小値「6」を示す(表5の網掛け部分参照)。
【0161】
以上、サンプル1及びサンプル4を例にして説明した。本実施例では、全てのサンプル(サンプル1〜サンプル18)について、比R/Daの最小値を求める(表5及び表6の網掛け部分参照)。表4に、サンプル1〜サンプル18の比R/Daの最小値を示す。
【0162】
本実施例では、サンプル1の比R/Daの最小値は、「2.5」である。サンプル2の比R/Daの最小値は、「2.25」である(なお、表4においては、2.25を概数2.3と示す)。サンプル3の比R/Daの最小値は、「3.75」である(なお、表4においては、3.75を概数3.8と示す)。サンプル4の比R/Daの最小値は、「6」である。サンプル14の比R/Daの最小値は、「2.5」である。サンプル6の比R/Daの最小値は、「4.5」である。サンプル7の比R/Daの最小値は、「6」である。サンプル9の比R/Daの最小値は、「6」である。サンプル10の比R/Daの最小値は、「7.5」である。サンプル11の比R/Daの最小値は、少なくとも「20」である。サンプル15の比R/Daの最小値は、「7.5」である。サンプル16の比R/Daの最小値は、「1.875」である(なお、表4においては、1.875を概数1.9と示す)。サンプル5の比R/Daの最小値は、「4.5」である。サンプル8の比R/Daの最小値は、「7.5」である。サンプル12の比R/Daの最小値は、「15」である。サンプル17の比R/Daの最小値は、少なくとも「20」である。サンプル18の比R/Daの最小値は、少なくとも「20」である。サンプル13の比R/Daの最小値は、少なくとも「20」である。
【0163】
表4のサンプル1〜サンプル4、及びサンプル14に示すように、母材3に酸化ガドリニウム粒子が6質量%以上30質量%以下含有される場合において、伸び率が約8%以上(8.0%以上20.8%以下)であり、90度曲げ試験したときの割れが生じない曲率半径をR、厚さをDaとしたとき、比R/Daの最小値で表される成形性が2.3以上6.0以下であるアルミニウム複合材100が製造可能であることが確認できる。
【0164】
また、表4のサンプル6、サンプル7、サンプル9、サンプル10、及びサンプル15に示すように、母材3に酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子が分散され、母材3に、酸化ガドリニウム粒子が2質量%以上10質量%以下含有され、炭化ホウ素粒子が10質量%以上20質量%以下含有される場合において、伸び率が約6%以上(6.7%以上11.2%以下)であり、90度曲げ試験したときの割れが生じない曲率半径をR、厚さをDaとしたとき、比R/Daの最小値で表される成形性が4.5以上7.5以下であるアルミニウム複合材100が製造可能であることが確認できる。
【0165】
以上説明したように、本実施形態によれば、アルミニウム粉末の母材3に酸化ガドリニウム粒子が分散されているため、中性子吸収性能を有した加工性、引張特性が良いアルミニウム複合材100が提供される。また、母材3に酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子の両方が分散されることにより、中性子吸収性能、加工性、製造コストなどの性能においてバランスの良いアルミニウム複合材が提供される。
【0166】
酸化ガドリニウム粒子は、例えばガドリニウムと比較して安価であり、原料コストの観点から有利である。また、本発明者の知見によると、既存の鋳造法の工程においてアルミニウム粉末に酸化ガドリニウム粒子を添加すると、酸化ガドリニウム粒子が均一に分散せず、製造される物品の品質が低下する可能性があることが判明している。本実施形態においては、アルミニウム粉末と酸化ガドリニウム粒子とを混合して、アルミニウム粉末に酸化ガドリニウム粒子を均一に分散させた後、その混合材Mをケース(金属板)で挟んで被圧延体18を生成し、焼結工程などを経ることなく圧延加工することにより、アルミニウム粉末に酸化ガドリニウム粒子が均一に分散された母材3を有するアルミニウム複合材100を生成することができる。このように、本実施形態に係る製造方法を用いることにより、安価で優れた中性子吸収性能を有する酸化ガドリニウム粒子をアルミニウム粉末に均一に分散させた母材3を製造することができ、製造されるアルミニウム複合材100の品質の向上に寄与する。また、その酸化ガドリニウム粒子により、加工性に優れたアルミニウム複合材100を提供することができる。
【0167】
本実施形態において、被圧延体18は、ケース10内に混合材Mを充填して、タッピングにより混合材Mの充填密度を高めた状態でケース10を密閉することにより形成される。また、被圧延体18は、粉体としての混合材Mを上ケース14と下ケース12とで挟んだ構造である。この結果、被圧延体18を予熱して圧延加工することにより、混合材Mの高い充填密度が維持された状態でクラッド材としてのアルミニウム複合材100を製造することができる。
【0168】
また、本実施形態においては、クラッド構造の母材3(混合材M)の上面と金属板1(上ケース14)とが密着し、母材3(混合材M)の下面と金属板2(下ケース12)とが密着しているため、互いに隣接する層同士が強固に接合される。その結果、アルミニウム複合材100の機械的強度が飛躍的に増大する。また、本実施形態においては、アルミニウム複合材100の表面は金属板1及び金属板2で形成され、粒子が存在しないため、例えば、既存の焼結体に比べて、表面が破壊し難い良好な圧延加工材を得ることができる。
【0169】
すなわち、セラミックス粒子を多く含む金属粉末を、従来のように、焼結加工して焼結体を形成し、この焼結体を塑性加工するようにすると、表面のセラミックス粒子が破壊の基点となり、塑性加工材に割れが発生する傾向が強い。また、押出ダイス、圧延ローラ、鍛造金型等を摩耗させる問題点もある。しかしながら、本実施形態においては、アルミニウム複合材100の表面は金属板1及び金属板2で形成され、粒子が存在しないため、例えば、既存の焼結体に比べて、表面には、破壊の基点となったり、ダイス等を摩耗させたりするセラミックス粒子が無い。このように、良好な圧延加工材を得ることができるという効果を得ることができる。
【0170】
また、本実施形態においては、中空のケース10の上面(上ケース14)及び下面(下ケース12)が、クラッド材を構成する際の上下の金属板1及び金属板2として機能するため、混合材Mをケース10に充填した状態でクラッド材としての構成が完了することになり、製造工程が簡略化される。さらに、中空のケース10内の混合材Mは、粉体の形態のままで圧延工程に供せられるので、混合材Mがケース10内に充填された状態で維持される嵩密度は、最大で65%程度までで済まされる。
【0171】
以上、本願発明の種々の有用な実施例を示し、且つ、説明を施した。本願発明は、上述した種々の実施例や変形例に限定されること無く、この発明の要旨や添付する請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでも無い。