(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031199
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】時計のアーバを案内するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 31/008 20060101AFI20161114BHJP
G04B 31/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
G04B31/008
G04B31/00 B
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-553021(P2015-553021)
(86)(22)【出願日】2013年11月4日
(65)【公表番号】特表2016-503899(P2016-503899A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2013072882
(87)【国際公開番号】WO2014114377
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】13152192.4
(32)【優先日】2013年1月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ツァウク,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ブローシェ,リュシー
(72)【発明者】
【氏名】エルフェ,ジャン−リュック
(72)【発明者】
【氏名】ルショー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シルバ・オタイサ,ハビエル・ホセ
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
スイス国特許発明第00702314(CH,A5)
【文献】
スイス国特許出願公開第00704770(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 31/008
G04B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(100)のアーバ(1)を枢動させるためのデバイス(10)であって、前記デバイス(10)は、セッティング(7)内に固定された、回転軸(D)を有する前記アーバ(1)のホゾ(2)が通過する宝石(3)と、少なくとも前記セッティング(7)によって前記ムーブメント(100)の地板(6)に間接的に固定された受け石(4)とを含み、前記受け石(4)は、前記ホゾ(2)の遠位端と当接して協働するよう配設された第1の軸受表面(5)を含み、前記軸受表面(5)は唯一のものであり、また前記軸受表面(5)は、前記受け石(4)に対して前記ホゾ(2)が当接する位置において、前記ホゾ(2)及び前記第1の軸受表面(5)に対する共通の接平面(PT)に対する垂線(N)が、前記軸(D)に対してゼロでないカント角(θ)で傾斜するように配設され、前記垂線(N)及び前記軸(D)は共に、前記地板(6)の基準方向(DR)に対してあるヨー角(α)を形成する第1の角度配向を有する受け石平面(PCP)を画定する、デバイス(10)において、前記デバイス(10)は、前記ヨー角(α)及び/又は前記カント角(θ)を調整して、前記ムーブメント(100)の進度を調節及び調整するための手段(20)を含むことを特徴とする、デバイス(10)。
【請求項2】
前記唯一の軸受表面(5)は平坦であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記宝石(3)及び前記受け石(4)は共に前記セッティング(7)内に固定され、前記セッティング(7)内では、前記受け石(4)は衝撃吸収性ばね(8)によって前記宝石(3)に向かって押圧されること;並びに前記調整手段(20)は、前記地板(6)に対して枢動するよう設置された前記セッティング(7)のための、及び/又は前記セッティング(7)を取り囲み、かつ前記地板(6)に対して移動可能に設置されたカボション(9)のための、位置決め手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
前記宝石(3)及び前記受け石(4)は共に前記セッティング(7)内に固定され、前記セッティング(7)内では、前記受け石(4)は衝撃吸収性ばね(8)によって前記宝石(3)に向かって押圧されること;並びに前記調整手段(20)は、前記地板(6)に対して枢動するよう設置された前記セッティング(7)のための、及び/又は前記セッティング(7)を取り囲み、かつ前記地板(6)に対して移動可能に設置されたカボション(9)のための、角度インデックス手段(22)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
前記デバイスは、前記セッティング(7)及び前記衝撃吸収性ばね(8)を取り囲み、かつ前記地板(6)内で枢動するよう設置された、前記カボション(9)を含み、前記カボション(9)は、前記地板(6)の第2の相補的な軸受表面(61)に対面する第2の基準表面(91)を含むこと;前記第1の軸受表面(5)は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備えるオリフィス(31)の軸(DO)に対して垂直であること;並びに前記セッティング(7)は前記カボション(9)内に、単一の所定の位置において前記第2の基準表面(91)に対して傾斜した状態で設置されることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
前記カボション(9)は、前記セッティング(7)を受承するためのハウジング(92)を含むこと;及び前記ハウジング(92)は、単一の所定の位置において前記第2の基準表面(91)に対して傾斜しており、前記セッティング(7)は前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して同軸の、回転体である外側表面(71)を含むことを特徴とする、請求項5に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
前記カボション(9)は、前記セッティング(7)を受承するための前記ハウジング(92)を含むこと;前記セッティング(7)は、単一の所定の位置において前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して傾斜している前記外側表面(71)を含むこと;及び前記ハウジング(92)は、前記第2の基準表面(91)の方向に対して平行であることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
前記デバイスは、前記セッティング(7)及び前記衝撃吸収性ばね(8)を取り囲み、かつ前記地板(6)内で枢動するよう設置された、前記カボション(9)を含み、前記カボション(9)は、前記地板(6)の前記第2の相補的な軸受表面(61)に対面する前記第2の基準表面(91)を含むこと;前記第1の軸受表面(5)は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備える前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して垂直であること;前記セッティング(7)は前記カボション(9)内に、前記第2の基準表面(91)に対して平行に設置されること;並びに前記カボションの前記第2の基準表面(91)は、前記地板(6)の前記第2の相補的な軸受表面(61)に対して傾斜した状態で保持されることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
前記カボションの前記第2の基準表面(91)は、前記地板(6)の前記第2の相補的な軸受表面(61)に対して傾斜した状態で保持され、前記カボション(9)は、前記地板(6)のハウジング(64)に遊びを有した状態で挿入され、前記カボションは、前記カボション(9)の周縁部のフランジ(96)を把持する溝(27)をそれぞれ含む3つのねじ(23)によって前記地板(6)上に堅固に保持され、これによって前記カント角(θ)及び前記ヨー角(α)の両方を調整できることを特徴とする、請求項8に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
前記デバイスは、前記セッティング(7)及び前記衝撃吸収性ばね(8)を取り囲み、かつ前記地板(6)内で枢動するよう設置された、前記カボション(9)を含み、前記カボション(9)は、前記地板(6)の前記第2の相補的な軸受表面(61)に対面する前記第2の基準表面(91)を含むこと;前記第1の軸受表面(5)の前記垂線は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備える前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して傾斜していること;並びに前記セッティング(7)は前記カボション(9)内に、前記第2の基準表面(91)に対して平行に設置されることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス(10)。
【請求項11】
前記デバイスは、前記セッティング(7)及び前記衝撃吸収性ばね(8)を取り囲み、かつ前記地板(6)内で枢動するよう設置された、前記カボション(9)を含み、前記カボション(9)は、前記地板(6)の前記相補的な軸受表面(61)に対面する前記基準表面(91)を含むこと;並びに前記調整手段(20)は、前記カボション(9)の枢動を駆動するための手段(24)を含むことを特徴とする、請求項3に記載のデバイス(10)。
【請求項12】
前記地板(6)の前記相補的な軸受表面(61)は、前記ホゾ(2)の前記軸(D)に対して略平行な穿孔(63)であること;前記デバイス(10)は、前記セッティング(7)及び前記衝撃吸収性ばね(8)を取り囲み、かつ前記地板(6)内で枢動するよう設置された、前記カボション(9)を含むこと;前記第1の軸受表面(5)は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備える前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して垂直であること;並びに前記セッティング(7)は、単一の所定の位置において、円筒形の前記第2の基準表面(91)に対して傾斜するように、前記カボション(9)内に設置されることを特徴とする、請求項7又は8又は10又は11に記載のデバイス(10)。
【請求項13】
前記地板(6)の前記相補的な軸受表面(61)は、前記ホゾ(2)の前記軸(D)に対して傾斜した前記穿孔(63)であること;前記デバイス(10)は、前記セッティング(7)及び前記衝撃吸収性ばね(8)を取り囲み、かつ前記地板(6)内で枢動するよう設置された、前記カボション(9)を含むこと;前記第1の軸受表面(5)は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備える前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して垂直であること;並びに前記セッティング(7)は、単一の所定の位置において、円筒形の前記第2の基準表面(91)に対して平行に、前記カボション(9)内に設置されることを特徴とする、請求項7又は8又は10又は11に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
前記カボション(9)及び前記セッティング(7)は真っ直ぐになっており、かつ同軸であり、前記カボション(9)は前記地板(6)内で枢動するよう設置され、前記カボション(9)は前記地板(6)の前記第2の相補的な軸受表面(61)に対面する前記第2の基準表面(91)を含むこと;前記第1の軸受表面(5)の前記垂線は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備える前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して傾斜していること;前記セッティング(7)は前記カボション(9)内に、前記第2の基準表面(91)に対して平行に設置されること;並びに前記衝撃吸収性ばね(8)は、前記受け石(4)の、前記ホゾ(2)の端部の前記軸受表面(5)とは反対側の表面のリブ(41)又は溝(42)と協働し、前記カボション(9)は、前記衝撃吸収性ばね(8)のループ(82)又は端部アーム(83)のための複数のハウジング(95)を含み、これにより、前記セッティング(7)を様々な位置にインデクシングできることを特徴とする、請求項7又は8又は10又は11に記載のデバイス(10)。
【請求項15】
前記軸受表面(5)は、前記ホゾ(2)を案内するために前記宝石(3)が備える前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して中心がずらされた凹部(51)、又は前記オリフィス(31)の前記軸(DO)上にセンタリングされたV字型外形を有する第1の溝(52)、又は前記オリフィス(31)の前記軸(DO)に対して中心がずらされたV字型外形を有する第2の溝(53)で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項16】
前記デバイスは、前記ホゾ(2)の前記軸(D)に対して略直交方向に前記ホゾ(2)を牽引するか又は押し戻すための手段(30)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項17】
前記牽引又は押し戻し手段(30)は、静電場又は磁場を生成するエレクトレット又は磁石(30A)によって形成されること;及び 前記ホゾ(2)は伝導性金属材料製であることを特徴とする、請求項16に記載のデバイス(10)。
【請求項18】
前記牽引又は押し戻し手段(30)は、前記ホゾ(2)に径方向の力を印加する少なくとも1つの弾性復元手段又はばね(30B)によって形成されることを特徴とする、請求項16に記載のデバイス(10)。
【請求項19】
請求項1に記載のデバイス(10)を含む、時計ムーブメント(100)。
【請求項20】
請求項1に記載のデバイス(10)を含む、腕時計(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントのアーバを枢動させるためのデバイスに関し、上記デバイスは、セッティング内に嵌合された、上記アーバのホゾが通過する宝石と、少なくとも上記セッティングによって上記ムーブメントの地板に間接的に固定された受け石とを含み、上記受け石は、上記ホゾの遠位端と当接して協働するよう配設された第1の軸受表面を含む。
【0002】
本発明はまた、上記デバイスを含む時計ムーブメントにも関する。
【0003】
本発明はまた、上記時計ムーブメント及び/又は上記デバイスを含む腕時計にも関する。
【0004】
本発明は、腕時計用の時計アーバ、より詳細には、天真の枢動の案内の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
機械式腕時計は、比較的等時性の進度を有する。しかしながらこの「比較的」という表現には、進度が1日あたりゼロ秒から数十秒までの範囲で変動し得る余地が残されている。
【0006】
このような進度の変動の原因の1つは、2つの水平位置の間での、受け石に接するテンプのホゾの挙動の差である。このような挙動の差は例えば、一方の水平位置では他方の水平位置に比べてホゾに近くなるヒゲゼンマイの力の差が、宝石内のホゾの遊びと組み合わさることによって引き起こされる。
【0007】
実際に、従来の組立体において受け石が宝石と平行である場合、ホゾの挙動は水平位置では安定しない。これは、水平な受け石上でのホゾの枢動と、宝石内の遊びとによるものである。
【0008】
受け石の基本的な機能は、ホゾ上の摩擦の低減と、良好な油の分散である。
【0009】
DITISHEIMによる特許文献1は、天真等を枢動させるためのデバイスを開示しており、このデバイスは、アーバの端部との接触部位において傾斜した表面を有する受け石を含む。
【0010】
PATEK PHILIPPEによる特許文献2は、結晶質材料で形成された軸受を開示しており、ホゾ受承孔は、結晶質材料の結晶質平面内に配置された平坦な面を含む。
【0011】
ULYSSE NARDINによる特許文献3は、ホゾを開示しており、このホゾの自由端部は、ホゾの軸に対して径方向に、ホゾの周縁部に向かってオフセットされた接触先端部を有する。
【0012】
LE VAN HAMILTONによる特許文献4は、オリーブ状宝石及び受け石を含む軸受を開示しており、アーバは、受け石の周縁部に接触するための円錐形の窪みを取り囲む丸みを帯びた縁部を有する1つの端部を含む。
【0013】
SWATCH GROUP R&Dによる特許文献5は、アーバのシャンクが挿入されるホゾシステムを受承するハウジングを有する支持体を含む、衝撃吸収性軸受を開示しており、この軸受は、ホゾ上に軸方向の力を印加する非晶質材料製の弾性手段を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】スイス特許第239786号
【特許文献2】スイス特許第702314B1号
【特許文献3】スイス特許出願第704770A2号
【特許文献4】米国特許出願第2654990A号
【特許文献5】欧州特許出願第2400355A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、腕時計の様々な位置におけるアーバの挙動の差を低減することによって従来技術の欠点を克服する、アーバを枢動させるためのガイドを製造することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、時計ムーブメントのアーバを枢動させるためのデバイスに関し、上記デバイスは、セッティング内に嵌合された、上記アーバのホゾが通過する宝石と、少なくとも上記セッティングによって上記ムーブメントの地板に間接的に固定された受け石とを含み、上記受け石は、上記ホゾの遠位端と当接して協働するよう配設された第1の軸受表面を含む。このデバイスは、上記軸受表面が唯一のものであり、また上記受け石に対して上記ホゾが当接する位置において、上記ホゾ及び上記第1の軸受表面に対する共通の接平面に対する垂線が、上記軸に対してゼロでないカント角で傾斜するように、上記軸受表面が配設され、また上記垂線及び上記軸が、上記地板の基準方向に対してあるヨー角を形成する第1の角度配向を有する受け石平面を画定することを特徴とする。
【0017】
本発明の特徴によると、上記デバイスは、上記ヨー角及び/又は上記カント角を調整して、上記ムーブメントの進度を調節及び調整するための手段を含む。
【0018】
本発明はまた、上記デバイスを含む時計ムーブメントにも関する。
【0019】
本発明はまた、上記時計ムーブメント及び/又は上記デバイスを含む時計にも関する。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、天真の枢動を案内するためのデバイスに関する以下の詳細な説明を、添付の図面を参照して読むことにより明らかになるであろう。上記図面は全て、本発明の好ましい、ただし非限定的な用途に関するものであり、上記天真は、宝石のオリフィス内で枢動するホゾを端部に含み、このホゾはその遠位端において受け石上に載置されるよう配設される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、天真と、ホゾの遠位端と受け石上の軸受表面との間の接点とを通る受け石平面における、本発明の変形実装形態のうちの1つの概略部分断面図であり、受け石上のこの軸受表面はホゾの軸に対していわゆるカント角で傾斜している。
【
図2】
図2は、
図1の枢動案内デバイスの一部分の概略部分底面図であり、
図1の受け石平面は、このデバイスを受承する地板に対応する基準方向から、いわゆるヨー角だけ偏向している。
【
図3】
図3〜10は、宝石内におけるホゾの運動に影響を与えるための、複数の異なる実施形態を示す。
図3は、ある変形例の概略断面図である。天真の理論上の軸と位置合わせされて地板(図示せず)内に設置された、実質的に回転体であるカボションが、同軸に設置されたセッティングを支持しており、カボションに対して平行に設置されたこのセッティングは、テンプの軸上にホゾを案内するための宝石を備える。このセッティングは、受け石を受承するための、テンプの軸に対して傾斜した内側ハウジングを含み、この受け石の軸受表面は従って、宝石に対して及びテンプの軸に対して、約3°のカント角で傾斜する。この受け石は衝撃吸収性ばねによってカボション内に保持される。この傾斜により、宝石内におけるホゾの運動に影響を与えることができ、従って腕時計の水平位置における時間測定法に影響を与えることができる。
【
図4】
図4は、ある変形例の概略断面図である。天真の理論上の軸と位置合わせされて地板(図示せず)内に設置された、実質的に回転体であるカボションが、同軸に設置されたセッティングを支持しており、このセッティングは、テンプの軸上にホゾを案内するための宝石を備える。このセッティングは、受け石を受承するための内側ハウジングを含み、この受け石は衝撃吸収性ばねによってカボション内に保持される。カボションの近傍に配置された磁石は、ホゾの軸に対して略直交方向の磁場を生成し、これにより
図3の受け石の傾斜と同様の効果が得られる。
【
図5】
図5は、
図4と同様の構成を示し、ここでは磁石が、ホゾの軸に対して略直交方向の力で天真に作用するばねに置き換えられている。これにより、
図3の受け石の傾斜と同様の効果が得られる。
【
図6】
図6は、ある変形例の概略断面図である。天真の理論上の軸と位置合わせされて地板(図示せず)内に設置された、実質的に回転体であるカボションが、同軸に設置されたセッティングを支持しており、このセッティングは、テンプの軸上にホゾを案内するための宝石を備える。このセッティングは、受け石を宝石に対して略平行に受承するための内側ハウジングを含み、受け石は衝撃吸収性ばねによってカボション内に保持される。この受け石は、ホゾの端部を受承するための、中心がずらされた凹状のハウジングを含み、従ってこの受け石は、あるカント角で軸受表面を形成する斜面上でハウジングを支持する。
【
図7】
図7は、ある変形例の概略断面図である。実質的に回転体であるカボションは、天真の理論上の軸に対して3°傾斜した状態で地板に設置されており、カボションと同軸に設置されたセッティングを支持している。このセッティングは、ホゾを案内するための宝石を備え、地板におけるカボションの傾斜により、通路用オリフィスはホゾの軸に対して傾斜している。セッティングは、受け石を宝石に対して略平行に受承するための内側ハウジングを含み、受け石は衝撃吸収性ばねによってカボション内に保持される。従ってホゾの端部は受け石の平坦な軸受表面に、地板におけるカボションの傾斜角度と同一のカント角で当接する。
【
図8】
図8は、ある変形例の概略断面図である。実質的に回転体であるカボションは、テンプの軸と位置合わせされた状態で設置されており、カボションと同軸に設置されたセッティングを支持している。このセッティングは、カント角の値だけ傾斜した、互いに対して平行な2つのハウジングを含み、一方のハウジングはホゾを案内するための宝石のためのものであり、これにより通路用オリフィスはホゾの軸に対して傾斜している。もう一方のハウジングは、受け石を宝石に対して略平行に受承するためのものであり、受け石は衝撃吸収性ばねによってカボション内に保持される。従ってホゾの端部は受け石の平坦な軸受表面に、セッティングにおける受け石及び宝石の傾斜角度と同一のカント角で当接する。
【
図9】
図9は、ある変形例の概略断面図である。実質的に回転体であるカボションは、テンプの軸と位置合わせされた状態で設置されており、セッティングを受承するための、カント角の値だけ傾斜したハウジングを備える。このセッティングは、互いに対して平行な2つのハウジングを含み、一方のハウジングはホゾを案内するための宝石のためのものであり、これにより通路用オリフィスはホゾの軸に対して傾斜している。もう一方のハウジングは、受け石を宝石に対して略平行に受承するためのものであり、受け石は衝撃吸収性ばねによってカボション内に保持される。従ってホゾの端部は受け石の平坦な軸受表面に、セッティング内での受け石及び宝石の傾斜角度と同一のカント角で当接する。
【
図10】
図10は
図6と同様の図であり、受け石の軸受表面の中心がずらされた溝によって、中心がずらされた凹状のハウジングが形成されている様子を、断面図で示す。
【
図10A】
図10Aは、受け石の軸受表面の中心がずらされた溝によって、中心がずらされた凹状のハウジングが形成されている様子を、平面図で示す。
【
図11】
図11は、
図10と同様の図であり、中央溝によって上記中心がずらされた凹状のハウジングが形成されている様子を、断面図で示す。
【
図11A】
図11Aは、中央溝によって上記中心がずらされた凹状のハウジングが形成されている様子を、平面図で示す。
【
図12】
図12〜15は、
図2と同様に、
図1、3〜10に示したホゾの位置に影響を与えるための手段に適用されるインデックス手段を示す。この傾斜位置に対する作用により、時間測定法を、特に2つの水平位置の間の進度の差を補正及び調整できる。
図12は、本発明によるデバイスの平面図であり、このデバイスは、傾斜した受け石と、進度調整を実施してこの調整を維持するために複数の別個の位置にインデクシングできるセッティングとを含む。
【
図13】
図13は、
図9のタイプのカボション内に傾斜したセッティングを含む、本発明によるデバイスの平面図であり、上記カボションは、摩擦により設置され、地板内に真っ直ぐに配設され、かつ地板に当接する。カボションはねじ回し等の工具を用いてヨー角の角度調整するためのねじ穴を含み、このヨー角の調整により進度調整を実施でき、また摩擦の作用下でこの調整を維持できる。
【
図14】
図14は、傾斜した受け石を支持するカボションを含む、本発明によるデバイスの平面図である。このカボションは、地板内に摩擦によって設置されたねじ穴を有する作動用ピニオンと噛合する周縁歯部を含み、ねじ回しを用いてカボション全体を枢動させてそのヨー角を調整することにより進度調整を実施でき、また摩擦の作用下でこの調整を維持できる。
【
図15】
図15は、真っ直ぐになったカボション及びセッティングを含む、本発明によるデバイスの平面図である。セッティングは
図3のタイプの傾斜した受け石を含み、衝撃吸収性ばねは、受け石の、ホゾ端部の軸受表面とは反対側の表面において、リブ又は溝と協働し、これにより、竪琴型ばねを介してセッティングを複数の位置にインデクシングできる。
【
図16】
図16は、互いに対して平行な宝石と受け石とを含む真っ直ぐなセッティングを有するカボションを含む、本発明によるデバイスの平面図である。カボションは地板内のハウジングに遊びを有した状態で挿入され、カボションの周縁部を把持する溝をそれぞれ含む3つのねじによって地板上に堅固に保持される。これにより、カント角及びヨー角の両方の調整が可能となる。
【
図17】
図17は、本発明によるデバイスが取り付けられたムーブメントを含む腕時計のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ホゾの挙動に影響を与え、これによって腕時計の進度に対して影響を与えるための、様々な手段について説明することを提案する。これらの手段により、上記挙動に影響を与えて、即ち上記挙動を調整して、特に2つの水平位置における進度を等しくすることができる。
【0023】
まず、上記複数の水平位置におけるテンプのホゾの挙動に影響を与えるための手段を、非限定的な様式で
図3〜11に図示する。次に、ホゾに対する影響を修正することによって、複数の異なる位置における進度の一貫性を達成するための手段を、
図12〜16に図示する。当然のことながら、これらの図のうちのいくつかを組み合わせることができ、またそのような組み合わせを実装するための方法は当業者には公知であろう。
【0024】
本発明は、時計ムーブメント100のアーバ1を枢動させるためのデバイス10に関し、上記デバイス10は、セッティング7内に固定された宝石3を含む。この宝石3は、回転軸Dを有するアーバ1のホゾ2によって通過される。この説明は、天真の枢動を案内するという好ましいケースに適用されるものであるが、本発明は当然のことながら、アンクルのホゾ等といった他のアーバを案内するためにも有利に使用できる。ここではアーバ1はばね付きテンプの真である。
【0025】
受け石4は、少なくともセッティング7によってムーブメント100の地板6に間接的に固定される。図示した実施形態では、セッティング7はカボション9によって支持され、このカボション9は地板6に固定される。
【0026】
本発明によると、この受け石4は、ホゾ2の遠位端と当接して協働するよう配設された第1の唯一の軸受表面5を含む。その一方でホゾ2の円筒形部分は、宝石3内に備えられた概してオリーブ状のオリフィス31と協働する。
【0027】
経済的な実施形態では、特に
図1、3、4、5、7、8、9、13、15、16に見られるように、軸受表面5は平坦である。
【0028】
本発明によるデバイス10は、受け石4に対してホゾ2が当接する位置において、ホゾ2及び第1の軸受表面5に対する共通の接平面PTに対する垂線Nが、軸Dに対してゼロでないカント角θで傾斜するように配設される。
【0029】
このような配置により、宝石のオリフィス内のホゾの遊びによって許容される範囲内において、水平な受け石上でホゾが揺動及び摺動するという、従来技術の欠点が回避される。実際に、受け石4を傾斜させることにより、上記複数の水平位置におけるホゾの位置に対して影響を与えることができる。約3°の傾斜は潤滑に干渉せず、必要な油滴をホゾに保持できる。受け石の傾斜位置によって発生する平坦位置での摩擦の僅かな増加により、効率が僅かに低下するものの、懸架位置での摩擦値は平坦位置での摩擦値に近く、これは望んでいた目標である。要するに、摩擦を最小化するという問題ではなく、天真の異なる複数の空間的位置において摩擦を等しくするという問題である。
【0030】
この垂線N及び軸Dは共に、いわゆる受け石平面PCPを画定し、この受け石平面PCPは、地板6の基準方向DRに対してヨー角αの第1の角度配向を有する。
【0031】
本発明によると、デバイス10は、2つの水平位置の間の進度の差を低減することによって、デバイス10が組み込まれたムーブメント100の進度を調節及び調整するために、宝石のオリフィス31内でのホゾ2の運動に影響を与えるための、調整手段20を含む。より具体的には、これらの調整手段20は、ヨー角α及び/又はカント角θを調整するための手段である。これらの調整手段は、特定の従来技術の軸受の弾性アーム又はばねと混同してはならない。上記特定の従来技術の軸受の弾性アーム又はばね一般に、保持機能及び/又は弾性復元機能のみを目的としたものであり、いずれにしても再生可能な調整手段を形成できない。
【0032】
特に
図1に見られるような、受け石4上の唯一の軸受表面5の、ホゾ2の軸DOに対するカント角θの傾斜により、宝石のオリフィス31内でのホゾ2の運動、及びこの運動によって得られる時間測定法に対して影響を与えることができる。
【0033】
図2に見られるような、デバイス10を受承する地板6に対応する基準方向DRに対する、受け石平面PCPのヨー角αの傾斜により、時間測定法を、特に2つの水平位置の間の進度の差を補正及び調節できる。
【0034】
好ましくは、宝石3及び受け石4は共にセッティング7内に固定され、受け石4は、少なくとも1つの衝撃吸収性ばね8によって、宝石3に向かってセッティング7内へと押圧され、セッティング7の肩部に当接する。
【0035】
本発明の特定のバージョンでは、複数の変形例のうちのいくつかにおいて、これらの調整手段20は、地板6に対して枢動するよう設置されたセッティング7のための、又はセッティング7を取り囲み、かつ地板6に対して移動可能に設置されたカボション9のための、位置決め手段21を含む。
【0036】
地板6に対するセッティング7の可動性は、間接的なものであってよい。これは、セッティング7がカボション9に対して枢動し、カボション9が地板6に対して不動化されている、
図12、15の場合である。
【0037】
地板6に対するカボション9の可動性は好ましくは、
図13、14に見られるような遊びを有しない若しくは好ましくは摩擦を有しての枢動、又は
図16に見られるような、地板6の周縁部上の3点における、地板6に対する受け石4のねじれのみを可能とするような低減された遊びを有する、地板6に対する差動並進運動のみに制限される。
【0038】
当然のことながら、カボション9に対するセッティング7の可動性と、地板6に対するカボション9の可動性とを組み合わせることもできるが、これは結果として調整の単純さを損ない、異なる複数の位置の間で進度のバランスをとるためには、殆どの場合セッティング7のみ又はカボション9のみの調整で十分である。
【0039】
有利には、調整手段20は、腕時計に対して実施した調整を維持するための、角度インデックス手段22を含む。これらの角度インデックス手段22もまた、
図12に見られるような、地板6に対して枢動するよう設置されたセッティング7、及び/又は
図14に見られるような、セッティング7を取り囲み、かつ地板6に対して移動可能に設置されたカボション9に関するものであり、前者の場合はセッティングが複数の別個の位置をとることができ、後者の場合は歯付きピニオン25によって、カボション9と一体の歯付きクラウン94の微調整を行うことができる。
【0040】
図12は、傾斜した受け石4と、進度調整を実施してこの調整を維持するために複数の別個の位置にインデクシングできるセッティング7とを有する、ある変形例を示す。カボション9は、セッティング7と一体のフィンガ72を格納できるセル93を含み、これらセル93及びフィンガ72は共に、調整手段20及びインデックス手段22を形成する。受け石4はセッティング7内で駆動されるか、又はインデクシングされる。
【0041】
図示したように、本発明を様々な変形例において実装できる。全ての図示した変形例に共通する様式では、デバイス10は、セッティング7及び衝撃吸収性ばね8を取り囲み、かつ地板6内で枢動するよう設置されたカボション9を含む。このカボション9は、地板6の第2の相補的な軸受表面61に対面する第2の基準表面91を含む。
【0042】
特に
図8に示した変形例では、第1の軸受表面5は、ホゾ2を案内するための宝石3のオリフィス31の軸DOに対して垂直である。セッティング7はカボション9内に、単一の所定の位置において第2の基準表面91に対して傾斜した状態で設置される。
図8では、カボション9はテンプの軸Dと位置合わせされた状態で設置され、セッティング7はカボション9と同軸に設置される。セッティング7は、好ましくは約3°であるカント角θの値だけ傾斜した、互いに対して平行な2つのハウジング75、76を含む。第1のハウジング75はホゾ2を案内するための宝石のためのものであり、従って通路用オリフィス31はホゾ2の軸Dに対して傾斜している。他方のハウジング76は受け石4を受承するためのものであり、受け石4は宝石3に対して略平行であり、衝撃吸収性ばね8によってカボション9内に保持される。このようにしてホゾ2の端部は、受け石4の平坦な軸受表面5に、セッティング7における受け石及び宝石の傾斜角度θと同一のカント角θで当接する。
【0043】
より詳細には、カボション9は、外側表面71を含むセッティング7を受承するためのハウジング92を含み、上記外側表面71は、単一の所定の位置においてオリフィス31の軸D0に対して傾斜している。このハウジング92は、カボション9の第2の基準表面91の方向に対して平行である。
【0044】
特に
図9〜13に示す変形例では、カボション9はセッティング7を受承するためのハウジング92を含み、このハウジング92は、単一の所定の位置においてカボション9の第2の基準表面91に対して傾斜している。このセッティング7は、宝石3のオリフィス31の軸D0に対して同軸の、回転体である外側表面71を含む。
【0045】
従って
図9は、地板6の穿孔63と協働する円筒形肩部91によってテンプの軸Dと位置合わせされた状態で設置された、実質的に回転体であるカボション9を示し、このカボション9は、セッティング7を受承するための、好ましくは約3°であるカント角θの値だけ傾斜したハウジング92を備える。このセッティング7は、互いに対して平行な2つのハウジングを含み、一方のハウジング75はホゾ2を案内するための宝石3のためのものであり、これにより通路用オリフィス31はホゾ2の軸Dに対して傾斜しており、もう一方のハウジング76は、受け石4を宝石3に対して略平行に受承するためのものであり、受け石4は衝撃吸収性ばね8によってカボション9内に保持される。従ってホゾ2の端部は受け石4の平坦な軸受表面5に、カボション9におけるセッティング7の傾斜角度θと同一のカント角θで当接する。
図13では同一の組立体を確認できるが、この
図13は、カボション9内のこのような傾斜したセッティング7を示し、このカボション9は真っ直ぐに組み付けられ、地板6内に摩擦により設置され、かつ地板6に当接する。カボション9はねじ回し等の工具を用いてヨー角αを角度調整するためのねじ穴93を含み、このヨー角αの調整により進度調整を実施でき、また摩擦の作用下でこの調整を維持できる。
【0046】
特に
図16に示す変形例では、第1の軸受表面5は、ホゾ2を案内するための宝石3のオリフィス31の軸DOに対して垂直である。セッティング7はカボション9内に、第2の基準表面91に対して平行に設置される。第2の基準表面91は、地板6の相補的な第2の軸受表面61に対して傾斜した状態で保持される。より詳細には、カボション9は地板6のハウジング64内に遊びを有した状態で挿入され、またカボション9は、カント角θ及びヨー角αの両方を調整するために、カボション9の周縁部上のフランジ96を把持する溝27をそれぞれ含む3つのねじ23によって地板6上に堅固に保持される。好ましくは図示したように、ねじ23のうちの少なくとも1つは、調整を容易にするために、この溝27の範囲を画定するカラー28の肩部241によって、地板6の面61に当接して保持される。
【0047】
また、
図3に示す本発明の変形例では、第1の軸受表面の垂線は、ホゾ2を案内するための宝石3のオリフィス31の軸DOに対して、約3°のカント角θで傾斜している。セッティング7はカボション9内に、第2の基準表面91に対して平行に設置される。
【0048】
特に
図14に示す変形例では、調整手段20は、カボション9の枢動を駆動するための手段24を含む。
図14では、カボション9は傾斜した受け石4を支持し、このカボション9は、地板内に摩擦によって設置されたねじ穴26を有する作動用ピニオン25と噛合する周縁歯部94を含み、ねじ回しを用いてカボション9全体を枢動させてそのヨー角αを調整することにより進度調整を実施でき、また摩擦の作用下でこの調整を維持できる。
【0049】
特に
図9に示す変形例では、地板6の相補的な軸受表面61は、軸Dに対して略平行な穿孔63であり、第1の軸受表面5は宝石3のオリフィス31の軸DOに対して垂直である。セッティング7は、単一の所定の位置において、円筒形の第2の基準表面91に対して傾斜するように、カボション9の傾斜したハウジング92内に設置される。
【0050】
特に
図7に示す変形例では、地板6の相補的な軸受表面61は、軸Dに対して約3°の傾斜で傾斜した穿孔63であり、第1の軸受表面5は宝石3のオリフィス31の軸DOに対して垂直であり、上記宝石3は、地板内のカボションの傾斜により、ホゾの軸に対して傾斜している。セッティング7は、単一の所定の位置において、円筒形の第2の基準表面91に対して平行となるように、カボション9内に同軸に設置される。従ってホゾ2の端部は受け石4の平坦な軸受表面5に、地板6におけるカボション9の傾斜角度と同一のカント角θで当接する。
【0051】
特に
図15に示す変形例では、カボション9及びセッティング7は真っ直ぐになっており、かつ同軸であり、カボション9は地板6内で枢動するよう設置される。第1の軸受表面5の垂線は、宝石3のオリフィス31の軸DOに対して傾斜している。セッティング7はカボション9内に、第2の基準表面91に対して平行に設置される。衝撃吸収性ばね8は、受け石4の、ホゾ2の端部の軸受表面5とは反対側の表面のリブ41又は溝42と協働する。カボション9は、衝撃吸収性ばね8のループ82又は端部アーム83を受承してロックするための複数のハウジング95、即ち95A、95B、95C、95Dを含み、これにより、ばね8の竪琴型部材を介してセッティング7を様々な位置にインデクシングでき、ばね8はハウジング95内で、カボション9のノッチにおいてインデクシングされる。
【0052】
いくつかの変形例では、受け石4は、ホゾ2の遠位部分を受承するための、凹状の、有利には中心がずらされた、特に球形又は円錐形の表面を含み、この中心がずらされた凹状の表面は、特にヒゲゼンマイ側において傾斜した縁部を含み、これにより真1を垂直位置から取り外すことができ、これは水平位置におけるホゾ2の挙動に影響を与える。従って軸受表面5は、
図6に見られるように、宝石3のオリフィス31の軸DOに対して中心がずらされた凹部51、又は
図11に見られるように、軸DO上にセンタリングされたV字型外形を有する第1の溝52、又は
図10に見られるように、軸DOに対して中心がずらされたV字型外形を有する第2の溝53で形成できるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
特定の実施形態では、デバイス10は、ホゾ2の軸Dに対して略直交方向にホゾ2を牽引するか又は押し戻すための手段30を含む。ホゾ2の軸Dに対して略直交方向にホゾ2を牽引するか又は押し戻すための手段30を実装することにより、水平位置におけるホゾの位置に影響を与える。
【0054】
図4に見られる第1の変形例では、これらの牽引又は押し戻し手段30は、静電場又は磁場を生成するエレクトレット又は磁石30Aによって形成され、伝導性金属材料製のホゾ2はこれらの場に対する感受性を有し、宝石3のオリフィス31の少なくとも1つの縁部に対してホゾ2を押圧しようとする力を受ける。受け石4が傾斜している場合、軸受表面5に対する垂線と同一の平面内での場の傾斜により、進度の調節が更に改善される。
【0055】
図5に見られる第2の変形例では、これらの牽引又は押し戻し手段30は、特に天真1上に直接作用することによってホゾ2に径方向の力を印加する、少なくとも1つの弾性復元手段又はばね30Bによって形成される。
【0056】
本発明はまた、このようなデバイス10を含む時計ムーブメント100にも関する。
【0057】
本発明はまた、このような時計ムーブメント100及び/又はこのようなデバイス10を含む腕時計200にも関する。
【0058】
要するに、軸Dに対する受け石4の傾斜はそれ自体が好ましいものである。セッティング7全体の傾斜により、水平位置におけるホゾ2の位置に影響を与えることができる。更にカボション9に対して作用することで、又はカボション9に対する作用とセッティング7に対する作用とを組み合わせることで、ホゾ2に対する影響を修正することによって、異なる複数の位置間で進度を等しくすることができる。
【0059】
傾斜した受け石4と、凹状のハウジングを有する受け石4とを使用し、受け石4をテンプの上側又は下側で回転させることにより、対応する水平位置における進度に影響を与える。
【0060】
この原理は、カボション9内に衝撃吸収性ばね8を組み込むことによって形成される衝撃吸収体内での受け石の回転、セッティング7及び受け石4の回転、衝撃吸収体全体の回転、並びにテンプ受けの回転に対して適用できる。
【0061】
上述の全ての解決策は、従来のセッティングを有する衝撃吸収体、又は懸架状態の若しくは半懸架状態のセッティングを有する衝撃吸収体に対して適用可能である。
【0062】
上述の特徴から得られる利点により、異なる複数の位置間での腕時計の進度の差を制御できる。