特許第6031208号(P6031208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6031208
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】垂直軸型風力発電機用風車の羽根
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   F03D3/06 G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-91330(P2016-91330)
(22)【出願日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514085241
【氏名又は名称】根本 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(72)【発明者】
【氏名】根本 豊
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−301088(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/152073(WO,A1)
【文献】 特開2005−090332(JP,A)
【文献】 特開平06−280737(JP,A)
【文献】 特開2016−041916(JP,A)
【文献】 特開2010−249062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00−80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直の中心軸に放射状に取付けた複数本の水平アームの外端で、鉛直に立った羽根であって、その水平断面形状は流線形状をしており、後部において鉛直に横断方向に立った後壁と、凸円弧状の外壁面と前記中心軸側に立った内側面とで囲まれた空洞は、前記外壁面と内側面との間隔が最も狭くなった狭隘部より後側は後向きに次第に広くなり、そして後端から追い風が流入するように開口し、
前記狭隘部より前側は、前寄りが次第に間隔が拡がり、前記後壁寄りが最大となっており、
しかも、前記の空洞を外気と連通する穴を少なくとも内側面に、かつ前記後壁寄りに開けたことを特徴とする垂直軸型風力発電機用風車の羽根。
【請求項2】
前記の狭隘部を形成すべく、少なくとも内側面が曲がった形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の垂直軸型風力発電機用風車の羽根。
【請求項3】
前記の水平アームに鉛直に固定された押圧溝は、追い風を受ける背面が凹溝状であり、前面は凸形状になることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の垂直軸型風力発電機用風車の羽根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直軸型の風力発電機用の風車の羽根の形状に関する。
【背景技術】
【0002】
牛山泉著の「風力発電の本」の74ページに記載のように、特別に羽根の幅を広くしたりするような工夫をしない限り、風速2m/s程度以下では回り出さないという。風車が回転を開始する風速を、起動風速またはスタート風速、発電を開始する風速をカットイン風速と言う。東北の震災で福島県の原発が損傷し、原発の安全性が低下したのを機に、再生可能エネルギーを使用した発電装置の効率化が望まれている。
垂直軸型の風車では、特許文献1などが知られている。特許文献1は簡易構造のサボニウス風車の特徴を極力犠牲にすることなく、低回転数域で高トルクを発生すべく、風車の羽根の外端寄りの位置において、羽根外端寄りが受風凹曲面側に相対的にずれるように、逆Z字状又はZ字状の階段状に屈曲させた構造であり、階段状の段差板の外面で受ける風力は、本来の凹曲面で受ける風力を補助する作用をする。その結果、低回転数域でも高トルクを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5251458号
【特許文献2】特許第5731048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、サボニウス風車は、2枚の曲板羽根のうち1枚は、風向に対して逆戻り方向の力を受けるので、この抗力により、トルク又は出力の減少が避けられないという問題が有る。
このような問題を解消すべく特許文献2のように、回転方向と逆方向に作用する力を少なくし、図4のような回転方向に効果的に作用する羽根形状とする改良を提案した。通常の風力発電機用の風車( 羽根) は、[ 抗力] 又は、[ 揚力] の何れかの作用を利用して風車( 羽根) を回転させているが、図1のように、特許文献2の垂直軸型風力発電機用の風車( 羽根) は、羽根1の表面2で受ける気流の進行方向の物体に当たる力である[ 抗力の力] を利用する事は無論の事、そこから発生する上下の圧力差による垂直方向の力である[ 揚力の力] も同時に生かし利用するという大きな特徴を持つ風車( 羽根) である。すなわち、表面2の凸曲面より半径の小さな凹曲面3が裏側すなわち羽根1の周回中心軸6側に形成されている。
その特徴の一つである[ 抗力] と同時に[ 揚力] も生み出す方法は、(a) 羽根と、(b) 図2に示すストラット4其々の裏側の形状を凹彎曲3、5にする事により、一度の風の力で二倍の風の力を生み出せる斬新な垂直軸型風力発電機用の風車( 羽根) となっている。
【0005】
このように、本発明による垂直軸型風力発電機用の風車( 羽根) は、風車( 羽根) の表面で[ 抗力] を生ませて風車( 羽根) を回転させ、羽根1とストラット4の裏側の凹彎曲形状3、5を利用して[ 揚力] を生ませる事により、効率の良い発電量が得られる。すなわち、一回の風で二倍の力を生み出すことに成功し、通常の風力発電機と異なり、微風の風で回転を開始させる事を可能としているため、発電を可能とする強い風が発生した時には短時間差で瞬時に発電を開始できるため、高効率発電を可能とする。
【0006】
さらに詳述すると、本発明である垂直軸型風力発電機用風車 (羽根 )の特徴の一つである
羽根1の裏側を凹彎曲形状3に整形開始する位置は、図4に示す前頭部21から45%の部位がベストである。
また、特許文献2の垂直軸型風力発電機用風車 (羽根 )の特徴の一つでもある風車 (羽根 )の製造に関しては、材質は軽量で強度のあるアルミ合金 (AL -5025 )を使用し、図4のように全体のほぼ中心部から前後に二分割された押圧工法又は引き抜きにより、パイプ形状の中空形状に整形されている。
なお、開閉構造の翼Mは板状をしており、その前端をヒンジHで羽根1の外面に取付けてある。従って、(1).風Wに向かって羽根1が周回している場合は、風圧で開閉翼Mは閉じられるが、(2).180度周回移動して風Wが後端の凹曲面3を押す状態になると、開閉翼Mが風圧で押し開かれると共に開閉翼Mの広い面で風圧を受ける状態となり、より効果的に押圧力を利用できる。
さらに周回移動して、(1).開閉翼Mが閉じる方向の風圧を前端から受けるようになると、開閉翼Mが閉じて、羽根1を押し戻す方向の力は最小となる。
ところが、特許文献2のように、羽根1にヒンジHを介して開閉構造の翼Mを設ける構造にすると、開閉翼Mが確実に開閉しない恐れがあり、またストラット後端のように袋状に形成することも可能だが、入り口が狭いため風圧を十分に生かせない。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、追い風を効果的に利用して風車の周回を速め、風力発電に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、鉛直の中心軸に放射状に取付けた複数本の水平アームの外端で、鉛直に立った羽根であって、その水平断面形状は流線形状をしており、後部において鉛直に横断方向に立った後壁と、凸円弧状の外壁面と前記中心軸側に立った内側面とで囲まれた空洞は、前記外壁面と内側面との間隔が最も狭くなった狭隘部より後側は後向きに次第に広くなり、そして後端から風がガイドされて流入するように開いて開口し、
前記狭隘部より前側は、前寄りが次第に間隔が拡がり、前記後壁寄りが最大となっており、
しかも、前記の空洞を外気と連通する穴を少なくとも内側面に、かつ前記後壁寄りに開けたことを特徴とする垂直軸型風力発電機用風車の羽根である。
【0008】
請求項2は、前記の狭隘部を形成すべく、少なくとも内側面が曲がった形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の垂直軸型風力発電機用風車の羽根である。
【0009】
請求項3は、前記の水平アームに鉛直に固定された押圧溝は、追い風を受ける背面が凹溝状であり、前面は凸形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の垂直軸型風力発電機用風車の羽根である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように、垂直軸型風力発電機用風車は、鉛直の中心軸に放射状に取付けた複数本の水平アームの外端で、鉛直に立った羽根を有しており、その水平断面形状は流線形状をしている。このような羽根の後部において、鉛直に横断方向に立った後壁と、凸円弧状の外壁面と前記中心軸側に立った内側面とで囲まれた空洞が形成されている。この空洞は、前記外壁面と内側面との間隔が最も狭くなった狭隘部を形成してあり、この狭隘部より後側は後向きに次第に広くなり、そして後端から追い風がガイドされて流入し易いように開いている。従って、風車が周回して本発明の羽根が追い風となると、前記狭隘部が風圧で押されて周回する。また、前記狭隘部より前側は、前寄りが次第に間隔が拡がり、前記後壁寄りが最大となっているので、空洞内部の空気圧が次第に低下し、前記後壁寄りで最低となる。そのため、前記狭隘部を通過した噴流が受ける空気抵抗が次第に低下し、前記後壁寄りで最低となので、最高速で前記の後壁を押して、風車を更に押して周回させる。このように、追い風を有効に生かして風車の周回に寄与できる。さらに、前記の空洞が外気と連通する穴を少なくとも内側面に、かつ前記後壁寄りに開けてあるので、前記空洞の空気圧が低下して外気圧に近づくため、前記の狭隘部を通過して噴入した風が前記後壁に衝突して羽根を前進させる力となり、風車をより効果的に周回させる。
【0011】
請求項2のように、前記の狭隘部を形成すべく、少なくとも内側面が曲がった形状に成っているので、外側面は曲げるなどの加工を要しないため、加工の負担が軽くなり、しかも外側面は全く加工しないので、風の流れが乱される恐れはない。
【0012】
請求項3に記載のように、前記の水平アームに鉛直に固定された押圧溝は、追い風を受ける背面が凹溝状であり、前面は凸形状となっているので、風車が前進するときの空気抵抗は小さいのに対し、追い風を受ける背面は凹溝状であるため、空気抵抗が大きく、風車が効果的に周回する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による風車の平面図である。
図2】(1) は図1の風車の一部を拡大して示す斜視図、(2) 1枚の羽根の組み立て図、(3) は1枚の羽根の外観図である。
図3図1の風車の受ける風向と出力を示す平面図である。
図4】従来の開閉翼の詳細を示す水平断面図である。
図5】本発明による羽根1枚の全容を示す斜視図である。
図6】本発明の羽根と追い風翼をストラットに取付けた平面図である。
図7】本発明の羽根の分解平面図である。
図8】本発明の羽根の組み立て平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明による垂直軸型風力発電機用風車の羽根が実際上どのように具体化されるか実施形態で説明する。図5は、本発明による垂直軸型風力発電機用風車の1枚の羽根の全容を示す模式斜視図であり、特許文献2を示す図4とは異なり、後部の水平断面方向の形状が全く相違する。すなわち、羽根1の前半部7は流線形状をしているが、後壁8より後側の構成は、この後壁8と、凸円弧状の外壁面9と前記中心軸6側に立った内側面10とで囲まれた空洞Cが形成されている。すなわち、図のように、外壁面9と内側面10とが対向しているが、間隔は徐々に変化している。
【0015】
この空洞Cは、前記外壁面9と内側面10との間隔が最も狭くなった狭隘部11を狭くしてあり、この狭隘部11より後側Gは、図示のように後向きに次第に広くなり開いていて、追い風が入り込み易いようにガイドする機能を有し、後端から風が流入するように開口してある。従って、風車が周回して本発明の羽根が追い風となると、前記狭隘部11が風圧で押されて風車は更に周回する。また、前記狭隘部11より前側は、前寄りが次第に間隔が拡がり、前記後壁8寄りが最大となっているので、空洞C内部の空気圧は次第に低下し、前記後壁8寄りで最低となる。
そのため、前記狭隘部11を通過した噴流の受ける空気抵抗が次第に低下し、前記後壁8寄りで最低となり、最高速で前記の後壁8を押して、風車を更に押して周回させる。従って、羽根1が後ろから押される風圧も受けて円滑に周回する。
【0016】
前記の狭隘部11を形成すべく、少なくとも内側面10が曲がった形状に成っているので、外側面9は曲げるなどの加工を要しないため、加工の負担が軽くなり,しかも外側面9は全く加工しないので、風の流れが乱される恐れはない。
さらに、前記の空洞Cを外気と連通する穴h…を少なくとも内側面10の前寄りすなわち後壁8寄りに開けてあるので、前記空洞Cの空気圧が低下して外気圧に近づくため、前記の狭隘部11を通過した風が噴流となって前記後壁8に衝突し、羽根1を更に前進させる力となり、風車を更に周回させる。
【0017】
図6のように、前記のような羽根1だけでなく、ストラットすなわち水平アーム4にも受風効果がより高まる改良を加えてある。すなわち、鉛直に立った状態で固定された押圧溝12は、追い風を受け易いように背面をV又はU状の凹溝状に形成してあり、前面は凸形状13に尖っているので、前記羽根1が前進するときの空気抵抗は小さいのに対し、追い風を受ける背面は凹溝状12であるため、空気抵抗が大きく、羽根の前進周回に好適である。なお、前記押圧溝12の上端と下端とは、外形がV状やU状の邪魔板14で塞がれているので、上端と下端から風が逃げ出すことは困難である。
【0018】
図7前記羽根1の実物の分解平面図、図8は組み立て状態の平面図である。1c、1cは、外側及び内側のカバー板であり、1rは補強用のリブ組みである。前頭部fcは前頭部のカバー板である。後壁8は、後端の外側面板9や内側板10を保持するリブを兼ねている。これらを組み立てると、図8のように追い風も受ける1枚の羽根1となる。
こうして組み立てた羽根1を風車に組み立てると、図6のように、後方からも追い風を受けて、風車を周回させる。羽根1をストラット4の外端に取付けるには、中央の鉛直軸15を用い、さらに後寄りの鉛直軸16を介して、後方も支持してある。なお、羽根1よりは内側に、ストラット4の外端寄りに前記の押圧溝12を設けてある。すなわち、先端が凸形状13の押圧溝12をストラット4の外端寄りに取付けてあるので、前記のように、追い風を有効利用してより効果的に周回する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上のように、鉛直の中心軸に放射状に取付けた複数本の水平アームの外端に鉛直に取付けた羽根を有しており、その水平断面形状は流線形状をしており、このような羽根の後部において、鉛直に横断方向に立った後壁と、凸円弧状の外壁面と前記中心軸側に立った内側面とで囲まれた空洞は、前記外壁面と内側面との間隔が最も狭くなった狭隘部を形成してあり、この狭隘部より後側は後向きに次第に広くなり、そして後端から追い風が流入し易いように開いた状態で開口している。従って風車が周回して本発明の羽根が追い風になると、前記狭隘部が風圧で押されて周回する。また、前記狭隘部より前側は、前寄りが次第に間隔が拡がり、前記後壁寄りが最大となっているので、空洞内部の圧力が次第に低下し、前記後壁寄りで最低となる。そのため、前記狭隘部を通過した噴流が受ける空気抵抗が次第に低下して、前記後壁寄りで最低となり、最高速で前記の後壁を押して、風車を更に押して周回させる。
【符号の説明】
【0020】
1 羽根
2 表面
21 前頭部
22 羽根の後部
3 凹曲面
4 ストラット
5 凹彎曲
23 後方の薄い部分
6 センターシャフト
M 開閉翼
H ヒンジ
7 前半部
8 後壁
9 外壁面
10内側面
C 空洞
11狭隘部
D 開いた後側
h…穴
12押圧溝
13、凸形状の前面
14邪魔板
15・16鉛直軸

【要約】      (修正有)
【課題】追風をも効果的に生かして風車の回転を速め、風力発電に寄与する。
【解決手段】流線型の羽根1の後部において、横断方向に立った鉛直の後壁8と、凸円弧状の外壁面9と中心軸側に立った内側面10とで囲まれた空洞Cが形成されており、この空洞は、外壁面と内側面との間隔が最も狭くなった狭隘部11を形成してあり、この狭隘部より後側Gは後向きに広き、後端から追い風が流入し易いように開いている。従って、風車が周回して羽根が追い風となると、狭隘部が風圧で押されて周回する。また、狭隘部より前側は、前寄りが次第に間隔が拡がり、後壁寄りが最大となっているので、空洞内部の空気圧次第に低下し、後壁寄りで最低となるため、噴流が受ける空気抵抗が次第に低下し、最高速で後壁を押して、風車を更に高速で周回させる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8