(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オフ信号生成部は、前記オン信号がアサートされてから前記スイッチングレギュレータの入力電圧および出力電圧に応じた長さのオン時間が経過後に、前記オフ信号をアサートするタイマー回路を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)等の電子機器には、電池電圧よりも高い、あるいは低い電源電圧を必要とするデバイスが搭載される。このようなデバイスに適切な電源電圧を供給するために、昇圧、降圧、もしくは昇降圧型のスイッチングレギュレータが利用される。
【0003】
図1は、本発明者が検討したスイッチングレギュレータ4rを示す回路図である。スイッチングレギュレータ4rは、制御回路100r、出力回路102を備える。出力回路102は、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタC1を含み、一般的な降圧型スイッチングレギュレータのトポロジーを有する。制御回路100rは、スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2をスイッチングし、出力電圧V
OUTを目標値に安定化する。
【0004】
制御回路100rは、軽負荷時に出力電圧を安定化させるために、ボトム検出コンパレータ10、駆動回路20r、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60を備える。第1分圧抵抗R1および第2分圧抵抗R2は出力電圧V
OUTを分圧し、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBを生成する。ボトム検出コンパレータ10は、フィードバック電圧V
FBを所定の基準電圧V
REFと比較し、フィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下するとアサート(たとえばハイレベル)されるオン信号S
ONを生成する。
【0005】
オフ信号生成部50は、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1が所定のピーク電流I
PEAKに達するとオフ信号S
OFFをアサートするピーク電流検出部を含む。オフ信号生成部50は、電流検出部52およびピーク電流検出コンパレータ54を含む。
【0006】
スイッチングトランジスタM1のオン期間において、スイッチングトランジスタM1と同期整流用トランジスタM2の接続点(スイッチング端子LX)の電圧V
LXは、V
DD−I
M1×R
ON1で与えられる。R
ON1はスイッチングトランジスタM1のオン抵抗である。電流検出部52は、スイッチングトランジスタM1の電圧降下(I
M1×R
ON1)に応じた検出電圧V
IM1を生成する。
【0007】
ピーク電流検出コンパレータ54は、検出電圧V
IM1を、ピーク電流I
PEAKに対応するしきい値電圧V
PEAKと比較し、検出電圧V
IM1がしきい値電圧V
PEAKに達すると、言い換えると電流I
M1が所定のピーク電流I
PEAKに達すると、オフ信号S
OFFをアサート(たとえばハイレベル)する。
【0008】
ゼロ電流検出部60は、同期整流用トランジスタM2に流れる電流I
M2がゼロ付近のしきい値I
ZEROに低下するとゼロ電流検出信号S
ZEROをアサートする。同期整流用トランジスタM2がオンの期間、スイッチング端子LXの電位V
LXは、V
IM2=−R
ON2×I
M2となる。R
ON2は同期整流用トランジスタM2のオン抵抗である。ゼロ電流検出部60は、スイッチング端子LXの電位V
LXを所定のしきい値電圧V
ZEROと比較するコンパレータを含む。
【0009】
駆動回路20rは、制御ロジック部22rおよびプリドライバ24を含む。制御ロジック部22rは、オン信号S
ON、オフ信号S
OFF、ゼロ電流検出信号S
ZEROを受け、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2のオン、オフを指示する制御信号を生成する。プリドライバ24は制御ロジック部22rが生成した制御信号にもとづきスイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2を制御する。
【0010】
駆動回路20rは、オン信号S
ONがアサートされるとスイッチングトランジスタM1をオン、同期整流用トランジスタM2をオフする(第1状態φ1)。続いてオフ信号S
OFFがアサートされると、スイッチングトランジスタM1をオフ、同期整流用トランジスタM2をオンする(第2状態φ2)。続いてゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされると、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2を両方オフする(第3状態φ3)。
【0011】
図2(a)、(b)は、
図1のスイッチングレギュレータ4rの動作波形図である。
時刻t1以前、スイッチングレギュレータ4rは第3状態φ3であり、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2がともにオフしている。負荷電流によって出力キャパシタC1が放電され、出力電圧V
OUTが低下していく。時刻t1に、フィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下すると、オン信号S
ONがアサートされる。これを契機に第1状態φ1に遷移し、スイッチングトランジスタM1がオンする。
【0012】
スイッチングトランジスタM1がオンすると、スイッチング端子LXの電位V
LXが、入力電圧V
DD付近まで上昇する。そしてコイル電流I
COILが増大するに従って、すなわちスイッチングトランジスタM1の電流I
M1が増大するに従って、スイッチングトランジスタM1の電圧降下が増大し、スイッチング端子LXの電位V
LXは低下していく。
【0013】
時刻t2に、スイッチングトランジスタM1の電圧降下がしきい値V
PEAKに達すると、言い換えれば、スイッチング端子LXの電位V
LXが、V
DD−V
PEAKまで低下すると、オフ信号生成部50は、オフ信号S
OFFをアサートする。これを契機に第2状態φ2に遷移し、スイッチングトランジスタM1がオフ、同期整流用トランジスタM2がオンする。
【0014】
時刻t3に同期整流用トランジスタM2に流れる電流がゼロ付近のしきい値I
ZEROまで低下すると、ゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされる。これを契機に、第3状態φ3に遷移し、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2がともにオフする。
【0015】
時刻t4に、再びフィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下すると、オン信号S
ONがアサートされ、第1状態φ1に戻る。スイッチングレギュレータ4rは、軽負荷状態において、第1状態φ1〜第3状態φ3を繰り返す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、
図1のスイッチングレギュレータ4rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。ボトム検出コンパレータ10は応答遅延τ
Dを有し、応答遅延τ
Dは出力電圧V
OUTに影響を及ぼす。応答遅延τ
Dが出力電圧V
OUTに与える影響を、
図2(b)を参照して説明する。
【0017】
実線は、応答遅延がゼロの理想的な状態を示す。応答遅延がゼロのとき、フィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下すると直ちにオン信号S
ONがアサートされ、第1状態φ1に遷移する。第1状態φ1でスイッチングトランジスタM1がオンすると、インダクタL1に流れるコイル電流I
COILによって出力キャパシタC1が充電され、出力電圧V
OUT(フィードバック電圧V
FB)が上昇に転ずる。
【0018】
一点鎖線は、非ゼロの応答遅延τ
Dが存在する場合を示す。応答遅延τ
Dの間は、スイッチングトランジスタM1がオンしないため、出力電圧V
OUTは低下し続ける。つまり、応答遅延τ
Dが長くなるほど、出力電圧V
OUTのリップル(ドロップ量)が大きくなる。
【0019】
同様にピーク電流検出コンパレータ54の応答遅延は、コイル電流I
COILのピークI
PEAKに影響を及ぼす。ピーク電流I
PEAKが変動すると、出力キャパシタC1へ供給される電荷が変動し、出力電圧V
OUTのリップルが変動する。
【0020】
出力電圧V
OUTのリップルを小さくし、またリップルの変動を抑制するためには、ボトム検出コンパレータ10やピーク電流検出コンパレータ54の応答速度を高める必要があるが、そのためには、コンパレータの動作電流(バイアス電流)を増大させる必要がある。一方、コンパレータの動作電流の増大は、スイッチングレギュレータ4rの効率、特に軽負荷状態の効率を悪化させる。
【0021】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、効率の悪化を抑制しつつ、出力電圧のリップルを低減可能なスイッチングレギュレータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のある態様は、スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタを制御する制御回路に関する。制御回路は、スイッチングレギュレータの出力電圧に応じたフィードバック電圧が所定の基準電圧まで低下するとオン信号をアサートするボトム検出コンパレータと、オン信号がアサートされた後にオフ信号をアサートするオフ信号生成部と、オフ信号がアサートされた後に、同期整流用トランジスタに流れる電流が所定のしきい値まで低下するとゼロ電流検出信号をアサートするゼロ電流検出部と、オン信号、オフ信号およびゼロ電流検出信号を受け、(i)オン信号がアサートされると、スイッチングトランジスタをオン、同期整流用トランジスタをオフする第1状態に遷移し、(ii)オフ信号がアサートされると、スイッチングトランジスタをオフ、同期整流用トランジスタをオンする第2状態に遷移し、(iii)ゼロ電流検出信号がアサートされると、スイッチングトランジスタ、同期整流用トランジスタをオフする第3状態に遷移し、各状態に応じて制御信号を生成する制御ロジック部と、制御ロジック部からの制御信号にもとづいてスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタをスイッチングするプリドライバと、を備える。制御ロジック部は、第3状態において、ゼロ電流検出信号がアサートされてから所定の待機時間経過した時刻から次にオン信号がアサートされる時刻までの間、制御回路の少なくとも一部の動作電流を低減する。
【0023】
負荷が軽くなるにしたがって、第3状態の期間は長くなる。第3状態の期間中、待機時間の経過後は、制御回路の少なくとも一部の動作電流が減少するため、消費電力を低減できる。一方、負荷が重くなると、第3状態の期間が短くなる。そして第3状態の長さが待機時間よりも短くなると、動作電流が低減する前に高速なボトム検出コンパレータによって短い遅延でオン信号をアサートできるため、出力電圧のリップルを低減できる。
【0024】
本発明の別の態様もまた、スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタを制御する制御回路に関する。この制御回路は、スイッチングレギュレータの出力電圧に応じたフィードバック電圧が所定の基準電圧まで低下するとオン信号をアサートするボトム検出コンパレータと、オン信号がアサートされた後にオフ信号をアサートするオフ信号生成部と、オフ信号がアサートされた後に、同期整流用トランジスタに流れる電流が所定のしきい値まで低下するとゼロ電流検出信号をアサートするゼロ電流検出部と、オン信号、オフ信号およびゼロ電流検出信号を受け、(i)オン信号がアサートされると、スイッチングトランジスタをオン、同期整流用トランジスタをオフする第1状態に遷移し、(ii)オフ信号がアサートされると、スイッチングトランジスタをオフ、同期整流用トランジスタをオンする第2状態に遷移し、(iii)ゼロ電流検出信号がアサートされると、スイッチングトランジスタ、同期整流用トランジスタをオフする第3状態に遷移し、各状態に応じて制御信号を生成する制御ロジック部と、制御ロジック部からの制御信号にもとづいてスイッチングトランジスタおよび同期整流用トランジスタをスイッチングするプリドライバと、を備える。制御ロジック部は、第3状態において、ゼロ電流検出信号がアサートされてからの経過時間に応じて、制御回路の少なくとも一部の動作電流を変化させる。
【0025】
負荷が軽くなるにしたがって、第3状態の期間は長くなる。第3状態の期間中、待機時間の経過後は、制御回路の少なくとも一部の動作電流が減少するため、消費電力を低減できる。一方、負荷が重くなると、第3状態の期間が短くなる。そして第3状態の長さが待機時間よりも短くなると、動作電流が低減する前にボトム検出コンパレータによって短い遅延でオン信号をアサートできるため、出力電圧のリップルを低減できる。
【0026】
制御ロジック部は、少なくともボトム検出コンパレータの動作電流を低減してもよい。
【0027】
オフ信号生成部は、スイッチングトランジスタに流れる電流が所定のピーク値に達すると、オフ信号をアサートしてもよい。
【0028】
オフ信号生成部は、スイッチングトランジスタの電圧降下に応じた検出電圧を生成する電流検出部と、検出電圧をピーク値に応じたしきい値電圧と比較し、比較結果に応じたオフ信号を生成するピーク電流検出コンパレータと、を含んでもよい。
制御ロジック部は、少なくともピーク電流検出コンパレータの動作電流を低減してもよい。
【0029】
オフ信号生成部は、オン信号がアサートされてからスイッチングレギュレータの入力電圧および出力電圧に応じた長さのオン時間が経過後にオフ信号をアサートするタイマー回路を含んでもよい。
制御ロジック部は、少なくともタイマー回路の動作電流を低減してもよい。
この態様によると、オフ信号を、コンパレータによる電圧比較ではなく、タイマー回路による時間測定にもとづいて生成することになるため、コイル電流のピークを精度良く制御できる。
【0030】
タイマー回路は、オン時間の長さを、入力電圧と出力電圧の差に応じて調節してもよい。
スイッチングトランジスタに流れる電流すなわちコイル電流の傾きは、スイッチングレギュレータのインダクタ(コイル)の両端間に印加される電圧、すなわち入力電圧と出力電圧の差に比例する。この態様によれば、入力電圧あるいは出力電圧の少なくとも一方が変動する状況においても、コイル電流の傾きに応じて、オン時間を変化させることにより、コイル電流のピークを一定に保つことができる。
【0031】
タイマー回路は、入力電圧と出力電圧の差が大きくなるほど、オン時間の長さを短くしてもよい。
【0032】
タイマー回路は、オン時間の長さを、入力電圧と出力電圧の差に実質的に反比例するように調節してもよい。
【0033】
タイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを入力電圧と出力電圧の差に応じた電流で充電する充電回路と、キャパシタの電圧を、所定のしきい値電圧と比較するコンパレータと、を含んでもよい。
【0034】
充電回路は、入力電圧と出力電圧の差に比例した電流でキャパシタを充電してもよい。
【0035】
充電回路は、第1入力端子に入力電圧を受け、第2入力端子に出力電圧を受けるトランスコンダクタンスアンプを含み、トランスコンダクタンスアンプの出力電流に応じた電流によってキャパシタを充電してもよい。
【0036】
充電回路は、基準電流を生成する基準電流源と、ドレインが基準電流源に接続され、ソースに入力電圧が印加されたPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の第1トランジスタと、ソースに入力電圧が印加され、ゲートが第1トランジスタのゲートと接続され、ドレインが充電回路の出力端子と接続されたPチャンネルMOSFETの第2トランジスタと、ソースに入力電圧が印加され、ゲートが第1トランジスタのゲートと接続されたPチャンネルMOSFETの第3トランジスタと、ソースが第3トランジスタのドレインと接続され、ゲートに出力電圧が印加され、ドレインが充電回路の出力端子と接続された第4トランジスタと、を含んでもよい。
【0037】
タイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを所定の電流で充電する充電回路と、入力電圧と出力電圧の差に応じたしきい値電圧を生成する可変電圧源と、キャパシタの電圧をしきい値電圧と比較するコンパレータと、を含んでもよい。
【0038】
可変電圧源は、入力電圧と出力電圧の差に実質的に反比例したしきい値電圧を生成してもよい。
【0039】
スイッチングレギュレータは降圧型であってもよい。
【0040】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0041】
本発明の別の態様はスイッチングレギュレータに関する。スイッチングレギュレータは、上述のいずれかの制御回路を備えてもよい。
【0042】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、スイッチングレギュレータを備えてもよい。
【0043】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0044】
本発明のある態様によれば、効率の悪化を抑制しつつ、出力電圧のリップルを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0047】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0048】
図3は、第1の実施の形態に係るスイッチングレギュレータ4を備える電子機器1の構成を示す回路図である。
【0049】
電子機器1は、タブレットPC(Personal Computer)、ラップトップPC、携帯電話端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯オーディオプレイヤ、PDA(Personal Digital Assistant)である。電子機器1は、負荷2、電池3、スイッチングレギュレータ4を備える。
【0050】
負荷2は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロコントローラ、メモリ、液晶ドライバ、オーディオ回路をはじめとするさまざまなデジタル回路、アナログ回路、アナログデジタル混載回路を含む。
【0051】
スイッチングレギュレータ4は、電源電圧(入力電圧ともいう)V
DDを受け、それを降圧して安定化された出力電圧V
OUTを生成し、負荷2に供給する。電源電圧V
DDは、電池3もしくは図示しない外部電源から供給される。
【0052】
制御回路100は、スイッチングレギュレータ4の出力信号(本実施の形態では、出力電圧V
OUT)に応じたフィードバック電圧V
FBにもとづいてスイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2を駆動し、出力電圧V
OUTを所望のレベルに安定化させる。
【0053】
スイッチングレギュレータ4は、制御回路100、インダクタL1、出力キャパシタC1、第1分圧抵抗R1、第2分圧抵抗R2、を備え、ひとつの半導体基板上に一体集積化される。
【0054】
本実施の形態では、スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2が制御回路100に内蔵される場合を示すが、これらは制御回路100の外部に設けられたディスクリート素子であってもよい。スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2は、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0055】
スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタCoを含む出力回路102のトポロジーは一般的な同期整流型スイッチングレギュレータと同様である。
【0056】
出力キャパシタC1は出力端子P
OUTと接地端子の間に設けられる。インダクタL1は、出力端子P
OUTと制御回路100rのスイッチング端子P3の間に設けられる。制御回路100rの入力端子P1には入力電圧V
DDが入力され、接地端子P2は接地される。第1分圧抵抗R1および第2分圧抵抗R2は、出力電圧V
OUTを分圧し、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBを、制御回路100のフィードバック端子P4にフィードバックする。
【0057】
制御回路100rは、スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2に加えて、ボトム検出コンパレータ10、駆動回路20、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60、を備える。
【0058】
スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2は、入力端子P1と接地端子P2の間に順に直列に設けられる。スイッチングトランジスタM1と同期整流用トランジスタM2の接続点LXは、スイッチング端子P3と接続される。
【0059】
ボトム検出コンパレータ10は、フィードバック電圧V
FBを所定の基準電圧V
REFと比較し、フィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下するとアサート(たとえばハイレベル)されるオン信号S
ONを生成する。
【0060】
ゼロ電流検出部60は、オフ信号S
OFFのアサートを契機として同期整流用トランジスタM2がオンした後、同期整流用トランジスタM2に流れる電流I
M2(コイル電流I
COIL)がゼロ付近に定められたしきい値I
ZEROに低下するとアサートされるゼロ電流検出信号S
ZEROを生成する。同期整流用トランジスタM2がオンの期間、スイッチング端子LXの電位V
LXは、V
IM2=−R
ON2×I
M2となる。R
ON2は同期整流用トランジスタM2のオン抵抗である。ゼロ電流検出部60は、スイッチング端子LXの電位V
LXを所定のしきい値電圧V
ZEROと比較するコンパレータを含んでもよい。なおゼロ電流検出部60の構成は
図3のそれには限定されず、別の構成を用いてもよい。たとえば電流検出用の抵抗を同期整流用トランジスタM2と直列に挿入し、その抵抗の電圧降下をしきい値電圧V
ZEROと比較してもよい。
【0061】
オフ信号生成部50は、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1が所定のピーク電流I
PEAKに達するとアサートされるオフ信号S
OFFを生成するピーク電流検出部を含む。オフ信号生成部50は、電流検出部52およびピーク電流検出コンパレータ54を含む。
【0062】
スイッチングトランジスタM1のオン期間において、スイッチングトランジスタM1と同期整流用トランジスタM2の接続点(スイッチング端子LX)の電圧V
LXは、V
DD−I
M1×R
ON1で与えられる。R
ON1はスイッチングトランジスタM1のオン抵抗である。電流検出部52は、スイッチングトランジスタM1の電圧降下(I
M1×R
ON1)に応じた検出電圧V
IM1を生成する。
【0063】
ピーク電流検出コンパレータ54は、検出電圧V
IM1を、ピーク電流I
PEAKに対応するしきい値電圧V
PEAKと比較し、検出電圧V
IM1がしきい値電圧V
PEAKに達すると、言い換えると電流I
M1が所定のピーク電流I
PEAKに達すると、オフ信号S
OFFをアサート(たとえばハイレベル)する。
【0064】
駆動回路20は、制御ロジック部22およびプリドライバ24を含む。制御ロジック部22は、オン信号S
ON、オフ信号S
OFFおよびゼロ電流検出信号S
ZEROを受け、それらにもとづいてスイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2のオン、オフを指示する制御信号S1、S2を生成する。プリドライバ24は、制御信号S1、S2にもとづき、スイッチングトランジスタM1および同期整流用トランジスタM2をスイッチングする。
【0065】
具体的には制御ロジック部22は、(i)オン信号S
ONがアサートされると、スイッチングトランジスタM1をオン、同期整流用トランジスタをオフする第1状態φ1に遷移し、(ii)オフ信号S
OFFがアサートされると、スイッチングトランジスタM1をオフ、同期整流用トランジスタM2をオンする第2状態φ2に遷移し、(iii)ゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされると、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2をオフする第3状態φ3に遷移する。駆動回路20は、第1状態φ1〜第3状態φ3を繰り返し、出力電圧V
OUTを基準電圧V
REFに応じた目標値に安定化する。
【0066】
加えて制御ロジック部22は、第3状態φ3において、ゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされてから所定の待機時間τw経過した時刻から次にオン信号S
ONがアサートされる時刻までの間、制御回路100の少なくとも一部の動作電流を低減する。
タイマー回路80は、ゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされてから時間τw経過後にアサートされるスタンバイ信号S
STBを生成する。制御ロジック部22は、第3状態φ3の期間中にスタンバイ信号S
STBがアサートされると、次にオン信号S
ONがアサートされるまでの間(スタンバイ状態φ4という)、制御回路100の少なくとも一部の消費電流を低減させる。タイマー回路80の構成は特に限定されず、公知のアナログタイマー、あるいはデジタルタイマーを利用すればよい。
【0067】
スタンバイ状態φ4において、好ましくは制御ロジック部22は、ボトム検出コンパレータ10、電流検出部52、ピーク電流検出コンパレータ54、ゼロ電流検出部60の動作電流を低減する。
【0068】
以下、動作電流の制御の一例を説明する。
【0069】
ボトム検出コンパレータ10の動作電流(バイアス電流)は、2段階で切りかえ可能となっている。ボトム検出コンパレータ10のバイアス電流が大きいとき、ボトム検出コンパレータ10は高速に動作し、その遅延τ
Dは相対的に小さな第1の値τ
D1となる。バイアス電流が小さいとき、ボトム検出コンパレータ10は電圧比較は可能であるが、その遅延τ
Dが、第1の値τ
D1より大きな第2の値τ
D2となる。制御ロジック部22は、スタンバイ状態φ4において、ボトム検出コンパレータ10のバイアス電流を減少させる。
【0070】
またオフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60それぞれの動作電流も、ボトム検出コンパレータ10と同様に2段階で切りかえ可能となっている。スタンバイ状態φ4におけるオフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60の動作電流を、実質的にゼロとしてもよい。
【0071】
以上がスイッチングレギュレータ4の構成である。続いてその動作を説明する。スイッチングレギュレータ4の利点は、比較技術との対比によって明確となる。そこで、スイッチングレギュレータ4の動作を説明する前に、比較技術について説明する。
【0072】
比較技術においては、第1状態φ1、第2状態φ2において、ボトム検出コンパレータ10、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60には通常の動作電流が供給される。第3状態φ3では、それらの動作電流が低減される。つまり、ボトム検出コンパレータ10の応答遅延τ
Dは、第1状態φ1、第2状態φ2において第1の値τ
D1であり、第3状態φ3において第2の値τ
D2となる。
【0073】
この比較技術では、以下の問題が生ずる。
図4(a)は、軽負荷状態における、
図4(b)は、重負荷状態における、比較技術に係るスイッチングレギュレータの動作波形図である。第3状態φ3において、ボトム検出コンパレータ10の動作電流が減少すると、ボトム検出コンパレータ10の応答遅延τ
Dが大きな第2の値τ
D2となる。
【0074】
スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2のスイッチングが停止する第3状態φ3では、出力キャパシタC1の電荷が負荷電流I
OUTによって放電されることにより、フィードバック電圧V
FB(出力電圧V
OUT)は、負荷電流I
OUTに応じた傾きで低下していく。ボトム検出コンパレータ10の応答遅延τ
D2の間も、フィードバック電圧V
FBは低下し続けるため、フィードバック電圧V
FBは目標レベルV
REFを下回る。
【0075】
図6には比較技術における負荷電流I
OUTと出力電圧V
OUTの関係が一点鎖線で示される。比較技術では、フィードバック電圧V
FBと基準電圧V
REFを比較する時刻において、ボトム検出コンパレータ10の応答遅延τ
Dが常に大きい。負荷電流I
OUTが大きくなると、フィードバック電圧V
FBが低下する速度が速くなるため、負荷が重いほどフィードバック電圧V
FBと目標レベルV
REFの差分(ドロップ量という)V
DROPは大きくなってしまう。つまり負荷が重いほど、出力電圧V
OUTの平均レベルが低下し、ロードレギュレーションが悪化するという問題が生ずる。
【0076】
スイッチングレギュレータ4の動作を、軽負荷状態、重負荷状態それぞれについて説明する。
図5(a)は、負荷電流I
OUTが小さいとき、
図5(b)は負荷電流I
OUTが大きいときの、
図3のスイッチングレギュレータ4の動作波形図である。
【0077】
(軽負荷状態)
図5(a)を参照し、軽負荷状態の動作を説明する。スイッチングレギュレータ4の基本動作は
図2(a)、(b)を参照して説明した通りである。第1状態φ1、第2状態φ2において、制御ロジック部22は、ボトム検出コンパレータ10、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60の動作電流を大きな値に設定する。この状態では、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60は高速に動作可能であり、小さな遅延で動作する。
【0078】
第3状態φ3に遷移した後、待機時間τwの経過後に、スタンバイ状態φ4に遷移し、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60それぞれの動作電流が低減する。第3状態φ3においては、オフ信号生成部50、ゼロ電流検出部60は利用されないため、それらの動作電流をゼロとすることにより、制御回路100の消費電力を低減できる。
【0079】
加えて、スタンバイ状態φ4において、ボトム検出コンパレータ10の動作電流も小さくなる。これにより、制御回路100の消費電流を低減できる。
【0080】
一方、ボトム検出コンパレータ10の動作電流を低減すると、ボトム検出コンパレータ10の応答遅延τ
Dが長い第2の値τ
D2となるが、軽負荷状態では、フィードバック電圧V
FBの低下速度が遅いため、基準電圧V
REFからのドロップ量V
DROPはそれほど大きくならない。
【0081】
(重負荷状態)
負荷が重くなるに従い、第3状態φ3の長さが短くなり、したがってスタンバイ状態φ4の長さも短くなる。負荷電流I
OUTがあるしきい値を超えると、
図5(b)に示すように、スタンバイ状態φ4に遷移する前に、フィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下する。このとき、ボトム検出コンパレータ10の応答遅延τ
Dは短い第1の値τ
D1であるため、フィードバック電圧V
FBの低下速度が速いにも関わらず、ドロップ量V
DROPを低減できる。
【0082】
図6は、
図3のスイッチングレギュレータ4の、負荷電流と出力電圧(平均レベル)の関係を示す図である(実線)。
【0083】
I
OUT=I
THのとき、待機時間τwの長さと、第3状態φ3の長さが等しくなる。I
OUT<I
THの軽負荷状態では、負荷電流I
OUTがあるしきい値I
THより小さな範囲では、スタンバイ状態φ4が存在し、ボトム検出コンパレータ10の応答速度は遅い。軽負荷時の特性は、比較技術と同様である。
【0084】
負荷電流I
OUTがしきい値I
THより大きくなると、第3状態φ3の長さが待機時間τwより短くなる。このとき、スイッチングレギュレータ4はスタンバイ状態φ4に遷移することなく、オン信号S
ONは、高速なボトム検出コンパレータ10によって生成される。したがって、ドロップ量V
DROPが小さくなる。
【0085】
以上がスイッチングレギュレータ4の動作である。このスイッチングレギュレータ4によれば、負荷が軽くなるにしたがって、第3状態φ3の期間は長くなる。第3状態φ3のうち、待機時間τwの経過後はスタンバイ状態φ4となり、制御回路100の少なくとも一部の動作電流が減少するため、消費電力を低減できる。
【0086】
また負荷が重くなると、第3状態φ3の期間が短くなる。そして第3状態φ3の長さが待機時間よりも短くなると、動作電流が低減する前に、言い換えればボトム検出コンパレータの応答速度が速い状態でオン信号がアサートされるため、出力電圧V
OUTのドロップ量(リップル)V
DROPを低減できる。
【0087】
加えて、しきい値I
THは、待機時間τw、インダクタL1のインダクタンス、出力キャパシタC1の容量値に依存する。言い換えれば、待機時間τwに応じて、しきい値I
THを任意に設定できる。
【0088】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係るスイッチングレギュレータ4sの構成を示す回路図である。スイッチングレギュレータ4sは、
図3のスイッチングレギュレータ4のオフ信号生成部50に代えて、オフ信号生成部70を備える。またスイッチングレギュレータ4sの出力電圧V
OUTは、出力電圧検出端子P5に入力される。その他の構成は
図3のスイッチングレギュレータ4と同様である。
【0089】
図7のオフ信号生成部70は、タイマー回路を含む。オフ信号生成部70は、オン信号S
ONがアサートされた後、つまりスイッチングトランジスタM1がオンした後、オン時間T
ONを測定し、オン時間T
ONの経過後にアサートされるオフ信号S
OFFを生成する。オフ信号生成部70は、スイッチングレギュレータ4の入力電圧V
DDおよび出力電圧V
OUTに応じて、オン時間T
ONの長さを設定する。
【0090】
電子機器1においては、入力電圧V
DDおよび出力電圧V
OUTの一方、あるいは両方が変動しうる。たとえば入力電圧V
DDが電池3から供給される場合、電池3の放電にしたがって入力電圧V
DDは低下し、電池3の充電にともない入力電圧V
DDは増大する。リチウムイオン電池を例にとれば、入力電圧V
DDは、3.2V〜4.2Vの範囲で変動しうる。
【0091】
あるいは、負荷2に供給する出力電圧V
OUTを、ダイナミックに変動させる場合も想定される。
【0092】
コイル電流I
COILの傾きは、インダクタL1の両端間の電圧に比例する。スイッチングトランジスタM1がオン、同期整流用トランジスタM2がオフの期間、インダクタL1の一端には入力電圧V
DDが印加され、その他端には出力電圧V
OUTが印加される。つまり、インダクタL1の両端間の電圧は、V
DD−V
OUTとなる。
【0093】
第1状態において、コイル電流I
COILは、傾き(V
DD−V
OUT)/Lで増大する。コイル電流I
COILは、オン時間T
ON経過後にピークとなり、ピーク電流I
PEAKは式(1)で与えられる。
I
PEAK=(V
DD−V
OUT)/L×T
ON …(1)
【0094】
入力電圧V
DDおよび出力電圧V
OUTの少なくとも一方が変動する場合、それを相殺するように、オン時間T
ONを調節することにより、ピーク電流I
PEAKを一定に保つことができる。すなわち式(2)を満たすように、オン時間T
ONを調節する。
T
ON=I
PEAK/(V
DD−V
OUT)×L …(2)
【0095】
別の観点から見れば、
図7のオフ信号生成部70は、オン時間T
ONの長さを、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差(V
DD−V
OUT)に応じて調節する。より好ましくは、オフ信号生成部70は、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差(V
DD−V
OUT)が大きくなるほど、オン時間T
ONの長さを短くする。より好ましくは、オフ信号生成部70は、オン時間T
ONの長さを、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差(V
DD−V
OUT)に実質的に反比例するように調節する。
【0096】
図8(a)〜(d)は、オフ信号生成部70の構成例を示す回路図である。
図8(a)のオフ信号生成部70aは、キャパシタC11、スイッチSW11、電流源72、コンパレータ74を備える。キャパシタC11の一端の電位は固定され、その他端には電流源72が接続される。電流源72は、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTに応じた充電電流I
CHGによってキャパシタC11を充電する。スイッチSW11は、キャパシタC11の電圧V
C11をゼロに初期化するために設けられ、オン時間T
ONの測定開始を契機としてオフする。コンパレータ74は、キャパシタC11の電圧V
C11と、所定のしきい値電圧V
THを比較し、電圧V
C11がしきい値電圧V
THに達するとアサート(たとえばハイレベル)されるオフ信号S
OFFを生成する。
【0097】
スイッチSW11がオフしてからオフ信号S
OFFがアサートされるまでのオン時間T
ONは、式(3)で与えられる。
T
ON=C11×V
TH/I
CHG …(3)
【0098】
好ましくは電流源72は、差電圧(V
DD−V
OUT)に実質的に比例する充電電流I
CHGを生成する。比例係数をg
mと書くと、式(4)が成り立つ。
I
CHG=g
m×(V
DD−V
OUT) …(4)
式(4)を式(3)に代入すると、式(5)が得られる。
T
ON=C11×V
TH/{g
m×(V
DD−V
OUT)} …(5)
式(2)と式(5)を対比すると、式(6)が成り立つように、キャパシタC11の容量値およびしきい値V
TH、比例係数g
mを定めることで、コイル電流I
COILのピークを、所望の値I
PEAKと一致させることができる。
I
PEAK/L=C11×V
TH/g
m …(6)
【0099】
図8(b)は、
図8(a)の電流源72の構成例を示す回路図である。電流源72は、トランスコンダクタンスアンプ(gmアンプ)を含み、入力電圧V
DD−V
OUTの差分に応じた、より具体的には差分に実質的に比例した電流を出力する。比例係数は相互コンダクタンスg
mである。
【0100】
図8(c)は、
図4(a)の電流源72の別の構成例を示す回路図である。電流源72はPチャンネルMOSFETである第1トランジスタM11〜第4トランジスタM14、基準電流源76を含む。基準電流源76は、所定の基準電流I
REFを生成する。第1トランジスタM11〜第3トランジスタM13はカレントミラー回路を形成しており、それらのソースには入力電圧V
DDが印加される。第4トランジスタM14は、第3トランジスタM13と電流源72の出力端子78の間に設けられる。第4トランジスタM14のゲートには、出力電圧V
OUTが印加される。
【0101】
第4トランジスタM14に流れる電流I
M14は、V
DDとV
OUTの差が大きいほど大きくなる。この電流I
M14が、第2トランジスタM12に流れる電流I
M12と加算されて、充電電流I
CHGが生成される。充電電流I
CHGは、V
DDとV
OUTの差に完全に比例する訳ではないが、それらの差に応じた電流となるため、オフ信号生成部70aに使用することができる。
【0102】
図8(d)は、タイマー回路の別の構成を示す。オフ信号生成部70bの基本構成は、
図8(a)のタイマー回路aと同様であるが、以下の点で異なっている、電流源72bは、所定の充電電流I
CHGを生成する。可変電圧源79は、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差に応じたしきい値電圧V
THを生成する。
【0103】
スイッチSW11がオフしてからオフ信号S
OFFがアサートされるまでのオン時間T
ONは、上記の式(3)で与えられる。
【0104】
好ましくは可変電圧源79は、差電圧(V
DD−V
OUT)が大きくなるほど低下するしきい値電圧V
THを生成する。しきい値電圧V
THは差電圧(V
DD−V
OUT)に実質的に反比例することが好ましい。反比例の係数定数をk
mと書くと、式(7)が成り立つ。
V
TH=k
m/(V
DD−V
OUT) …(7)
式(7)を式(3)に代入すると、式(8)が得られる。
T
ON=C11×k
m/(V
DD−V
OUT)/I
CHG …(8)
【0105】
式(2)と式(8)を対比すると、式(9)が成り立つように、キャパシタC11の容量値および充電電流I
CHG、係数k
mを定めることで、コイル電流I
COILのピークを、所望の値I
PEAKと一致させることができる。
I
PEAK/L=C11×k
m/I
CHG …(6)
【0106】
可変電圧源79の構成は特に限定されず、公知の、あるいは将来利用可能な回路を用いればよい。
【0107】
以上がスイッチングレギュレータ4の構成である。続いてその動作を説明する。
図9は、
図7のスイッチングレギュレータ4sの動作波形図である。
時刻t1に、フィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFまで低下すると、オン信号S
ONがアサートされる。これを契機として、第1状態に遷移し、スイッチングトランジスタM1がオン、同期整流用トランジスタM2がオフする。
【0108】
第1状態に遷移すると、オフ信号生成部70によって、オン時間T
ONが測定され、オン時間T
ONの経過後の時刻t3にオフ信号S
OFFがアサートされる。これを契機に第2状態に遷移し、スイッチングトランジスタM1がオフ、同期整流用トランジスタM2がオンする。
【0109】
時刻t4に同期整流用トランジスタM2を経由するコイル電流I
COIL(I
M2)がゼロ付近のしきい値I
ZEROまで低下するとゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされる。これを契機に第3状態に遷移し、スイッチングトランジスタM1、同期整流用トランジスタM2がともにオフする。
【0110】
以上がスイッチングレギュレータ4sの動作である。
スイッチングレギュレータ4sは、
図3のスイッチングレギュレータ4の利点に加えて、さらに以下の利点を有する。
【0111】
図3のスイッチングレギュレータ4では、コイル電流I
COILの実際のピークI
PEAKは、オフ信号S
OFFを生成するオフ信号生成部50の遅延τ
Dの影響を受ける。すなわち、入力電圧V
DDや出力電圧V
OUTは変動し、遅延時間τ
Dの間のコイル電流I
COILの傾きは、入力電圧V
DDや出力電圧V
OUTに応じて変化する。したがって、遅延時間τ
Dにおけるコイル電流I
COILの増加量、ひいては実際のピーク電流I
PEAKも、入力電圧V
DDや出力電圧V
OUTに応じて変動してしまう。ピーク電流I
PEAKが変動すると、出力電圧V
OUTのリップル幅も変動し、出力電圧V
OUTの安定性が低下する。
【0112】
これに対して
図7のスイッチングレギュレータ4sによれば、オフ信号生成部70によってオン時間T
ONを測定することによりオフ信号S
OFFを生成するため、オフ信号生成部50のように、遅延の影響を排除することができる。またオフ信号生成部50ではピーク電流検出コンパレータ54のオフセットによってもピーク電流が変化するが、
図7のスイッチングレギュレータ4sでは、オフセットの影響も排除できる。
【0113】
さらには、オン時間T
ONを入力電圧V
DDおよび出力電圧V
OUTに応じて調節することにより、ピーク電流I
PEAK、すなわち電流リップルを一定に保つことができ、出力電圧V
OUTのリップル量も一定に保つことができる。
【0114】
続いて、
図4のスイッチングレギュレータ4sの変形例を説明する。
【0115】
(第1の変形例)
オン時間T
ONは、必ずしも完全に入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差に反比例している必要はない。反比例の関係から逸脱している場合でも、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差が大きくなるほどオン時間T
ONを短くすることにより、オン時間T
ONを固定した場合に比べれば、ピーク電流I
PEAKの変動を抑制できる。
【0116】
(第2の変形例)
実施の形態では、オン時間T
ONを入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTに応じて変化させる場合を説明したが、入力電圧V
DDと出力電圧V
OUTの差の変動量が小さい場合には、オン時間T
ONは固定してもよい。この場合であっても、
図4のスイッチングレギュレータ4とは異なり、オフ信号生成部50の遅延時間の影響を受けないため、ピーク電流を正確に制御できる。
【0117】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0118】
(第3の変形例)
第1〜第3の実施の形態では、制御回路100の動作電流を、2段階で変化させる場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。第3の変形例において、制御ロジック部22は、第3状態φ3において、ゼロ電流検出信号S
ZEROがアサートされてからの経過時間に応じて、制御回路100の少なくとも一部の動作電流を、多段階で、あるいは連続的に変化させてもよい。
【0119】
第3の変形例においては、制御回路100を、その少なくとも一部の動作電流I
DDがN段階(Nは3以上)で変更可能に構成し、タイマー回路80によって複数の待機時間τw
1、τw
2、…τw
N−1を測定してもよい。
τw
1<τw
2<…<τw
N−1
I
DD1>I
DD2>…>I
DDN
【0120】
そして、ゼロ電流検出信号S
OFFがアサートされてから、待機時間τw
1経過前には、動作電流I
DDを第1の値I
DD1に設定し、ボトム検出コンパレータ10を高速動作させる。待機時間τw
1経過後、待機時間τw
2経過前には、動作電流I
DDを第2の値I
DD2に設定する。そして待機時間τw
N−1経過後には、動作電流I
DDを第Nの値I
DDNに設定する。
【0121】
図10は、第3の変形例に係るスイッチングレギュレータの、負荷電流と出力電圧(平均レベル)の関係を示す図である。しきい値I
TH1〜I
THNは、待機時間τw
1〜τw
N−1に応じて定まる。多段階で動作電流I
DDを変化させることにより、出力電圧V
OUTの安定性をさらに高めることができる。
【0122】
(第4の変形例)
第1〜第3の実施の形態では、降圧型のスイッチングレギュレータについて説明したが、本発明はそれには限定されず、昇圧型、あるいは昇降圧型のスイッチングレギュレータにも適用可能である。昇圧型あるいは昇降圧型のスイッチングレギュレータでは、出力回路102のトポロジーを変更すればよい。
【0123】
最後に、電子機器1の具体例を説明する。
図11(a)、(b)は、スイッチングレギュレータ4を備える電子機器を示す図である。
図11(a)の電子機器500は、タブレットPCや携帯型ゲーム機、携帯型オーディオプレイヤであり、筐体502の内部には、電池3、スイッチングレギュレータ4(制御回路100)、負荷2が内蔵される。負荷2はたとえばCPUである。
【0124】
図11(b)の電子機器600は、デジタルカメラである。筐体602の内部には、電池3、スイッチングレギュレータ4、撮像素子2a、画像処理プロセッサ2b等が内蔵される。スイッチングレギュレータ4は、撮像素子2a、画像処理プロセッサ2bに電源電圧を供給する。
【0125】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。