特許第6031317号(P6031317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

特許6031317自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機
<>
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000002
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000003
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000004
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000005
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000006
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000007
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000008
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000009
  • 特許6031317-自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031317
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20161114BHJP
   A47L 9/04 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   A47L9/28 E
   A47L9/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-221342(P2012-221342)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-73192(P2014-73192A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】石原 圭
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−314669(JP,A)
【文献】 実開昭60−094156(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/04
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式掃除機の筐体底面から突出する回転軸に取り付けられるブラシ基台部と、
前記回転軸に対して斜めに突出するように前記ブラシ基台部に植設された複数のブラシ毛束と、
該ブラシ毛束における前記ブラシ基台部から突出した根元近傍部分を上方に押圧するブラシ押圧部とを備え
前記ブラシ押圧部が、前記複数のブラシ毛束における前記根元近傍部分に当接する周方向当接面を有していることを特徴とする自走式掃除機用の補助ブラシ。
【請求項2】
自走式掃除機の筐体底面から突出する回転軸に取り付けられるブラシ基台部と、
前記回転軸に対して斜めに突出するように前記ブラシ基台部に植設された複数のブラシ毛束と、
該ブラシ毛束における前記ブラシ基台部から突出した根元近傍部分を上方に押圧するブラシ押圧部とを備え、
前記ブラシ基台部は、前記複数のブラシ毛束の基端が差し込まれる差込口を有する複数の収納部を有し、
前記ブラシ押圧部は、前記ブラシ基台部と接する面側に、前記複数のブラシ毛束を外方へ突出させながら前記複数の収納部を収納する複数の凹溝を有することを特徴とする自走式掃除機用の補助ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ基台部と前記ブラシ押圧部とは個別の部材からなり、
前記ブラシ基台部および前記ブラシ押圧部は、中心に貫通孔を有し、
前記ブラシ基台部と前記ブラシ押圧部とは重ね合わされてそれらの前記貫通孔にネジが挿通され、前記回転軸の軸端面に形成されたネジ孔に前記ネジが螺着することにより、前記ブラシ押圧部が前記ブラシ部を前記ブラシ基台部の方へ押圧するように構成されている請求項1または2に記載の自走式掃除機用の補助ブラシ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1つに記載の自走式掃除機用の補助ブラシを備えた自走式掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
床面等の塵埃を清掃するための自走式掃除機として、特許文献1には、筐体の底部後方に設けられた吸込口と、この吸込口内に設けられたメインブラシと、メインブラシの回転によって掃き上げられた床面上の塵埃を収集する集塵部と、メインブラシよりも前方の左右位置に設けられて床面上の塵埃を掻き集める一対のサイドブラシ(「補助ブラシ」とも言う)とを備えた自走式掃除機が提案されている。
【0003】
この自走式掃除機のサイドブラシは、サイドブラシモータの回転軸に取り付けられる支持ブラケットを具備している。この支持ブラケットは、サイドブラシモータの回転軸に取り付けられる円柱形状の取付部と、ブラシ毛が植設される略円板形状の支持板と、支持板の下面に設けられたテーパ外周面を有する補助部材とから構成されている。取付部と支持板と補助部材は樹脂成型により一体的に形成されている。ブラシ毛は、支持板における周縁部に形成されたテーパ面に対して円環状に、かつ斜め下方に向かって延びるように植設されている。補助部材は、ブラシ毛が延びる方向に沿って前記テーパ外周面が配置されている。
【0004】
この自走式掃除機の清掃動作中には、サイドブラシモータによりサイドブラシが駆動され、水平方向に回転する。このとき、ブラシ毛が床面の凹部に嵌り込むことによりブラシ毛が内側に撓むと、ブラシ毛が補助部材のテーパ外周面に当接する。そして、さらにブラシ毛が内側に撓むような力が加わると、ブラシ毛の弾力性によりブラシ毛が反対側(補助部材の外側)に跳ね出される。これにより、ブラシ毛に大きな癖がついてしまうことを防止し、ブラシ毛の塵埃掃き出し能力を維持させるようにしている。
【0005】
また、特許文献2では、前記支持ブラケットの補助部材を省略したサイドブラシを備えた自走式掃除機が提案されている。この自走式掃除機のサイドブラシは、支持ブラケットが無いため、ブラシ毛束の回転方向および上下方向への変形の自由度が大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−280506号公報
【特許文献2】特開2006−314669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の自走式掃除機では、サイドブラシの下部に補助部材が下方に突出するように設けられているので、例えばフローリングの一部に絨毯が敷かれた部屋を掃除する際、自走式掃除機がフローリングから絨毯へ移動しようとすると、補助部材が絨毯の縁部に引っ掛かり、自走式掃除機が絨毯に乗り上げることができない場合がある。
【0008】
また、特許文献2の自走式掃除機では、補助部材を省略したサイドブラシを備えているので、上記の問題は解決されるものの、一方で、例えば毛足の長い絨毯や、飾り房の付いた絨毯の上を清掃した場合には、次のような不具合が生じる傾向にある。
ブラシ毛束の回転方向および上下方向への変形の自由度が大きいことが原因で、ブラシ毛束が絨毯の繊維に絡み付き易くなる。この結果、清掃中にサイドブラシの回転が停止し、清掃運転が強制的に停止させられるという不具合を生じる場合がある(課題1)。
【0009】
第二に、ブラシ毛束の変形癖、特に、サイドブラシの回転方向と逆方向にブラシ毛束が湾曲する変形癖が生じ易くなるため、サイドブラシの回転半径が縮小し、サイドブラシとしての清掃能力が低下する(課題2)。それに加え、絨毯の繊維、糸屑、髪の毛といった繊維屑がサイドブラシの回転軸に巻き付き易くなる。この結果、サイドブラシの回転抵抗が増し、サイドブラシを回転させる駆動モータの負荷が大きくなり、モータ寿命が短くなる(課題3)。
【0010】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、スムーズな回転および清掃能力を維持し、効率よく絨毯上の清掃を行うことができると共に、自走式掃除機の自走を妨げない自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明によれば、自走式掃除機の筐体底面から突出する回転軸に取り付けられるブラシ基台部と、
前記回転軸に対して斜めに突出するように前記ブラシ基台部に植設された複数のブラシ毛束と、
該ブラシ毛束における前記ブラシ基台部から突出した根元近傍部分を上方に押圧するブラシ押圧部とを備え
前記ブラシ押圧部が、前記複数のブラシ毛束における前記根元近傍部分に当接する周方向当接面を有している自走式掃除機用の補助ブラシ(第1の補助ブラシ)が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、自走式掃除機の筐体底面から突出する回転軸に取り付けられるブラシ基台部と、
前記回転軸に対して斜めに突出するように前記ブラシ基台部に植設された複数のブラシ毛束と、
該ブラシ毛束における前記ブラシ基台部から突出した根元近傍部分を上方に押圧するブラシ押圧部とを備え、
前記ブラシ基台部は、前記複数のブラシ毛束の基端が差し込まれる差込口を有する複数の収納部を有し、
前記ブラシ押圧部は、前記ブラシ基台部と接する面側に、前記複数のブラシ毛束を外方へ突出させながら前記複数の収納部を収納する複数の凹溝を有する自走式掃除機用の補助ブラシ(第2の補助ブラシ)が提供される。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、前記自走式掃除機用の補助ブラシを備えた自走式掃除機が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自走式掃除機用の補助ブラシは、自走式掃除機の筐体低面から突出した回転軸に取り付けられた状態において、ブラシ押圧部がブラシ毛束の根元近傍部分をブラシ基台部の方へ押圧するため、自走式掃除機の自走を妨げないと共に、ブラシ毛束の下方への変形が抑制される。
そのため、この補助ブラシを備えた自走式掃除機にて毛足の長い絨毯や、飾り房の付いた絨毯の上を清掃する場合、ブラシ毛束が絨毯の繊維に絡み付き難くなり、従来のように補助ブラシの回転が停止して清掃運転が強制的に停止されるという不具合が生じ難くなる(効果1)。
【0014】
また、ブラシ毛束の下方への変形が抑制されることにより、絨毯に対する補助ブラシの回転抵抗が低減し、ブラシ毛束の下方への変形癖が生じ難くなり、サイドブラシの回転半径が縮小して清掃能力が低下するという不具合が生じ難くなる(効果2)。それに加え、絨毯の繊維、糸屑、髪の毛といった繊維屑がサイドブラシの回転軸に巻き付き難くなる。この結果、サイドブラシの回転が妨げられ難くなり、サイドブラシを回転させる駆動モータの負荷が大きくなって寿命が短くなるという不具合が生じ難くなる(効果3)。
【0015】
よって、本発明の自走式掃除機用の補助ブラシによれば、自走式掃除機による絨毯の効率的な清掃を行うことができ、特に、毛足の長い絨毯や、飾り房の付いた絨毯の清掃に好適である。
また、第1の補助ブラシによれば、各ブラシ毛束の回転方向の変形を抑制することができる。この結果、前記効果1、2および3がより大きくなる。
また、第2の補助ブラシによれば、ブラシ基台部とブラシ押圧部とをコンパクトに(小さな厚みで)重ね合わせることができる。この場合、ブラシ押圧部の外周部における各凹溝の内側面を、前記周方向当接面とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る自走式掃除機の斜視図である。
図2図1に示される自走式掃除機のA−A矢視断面図である。
図3図1に示される自走式掃除機の底面側から視た斜視図である。
図4】実施形態1における補助ブラシを示す正面図である。
図5(A)】実施形態1におけるブラシ部が植設されたブラシ基台部を示す斜視図である。
図5(B)】図5(B)のブラシ基台部の底面図である。
図6】実施形態1におけるブラシ押圧部を示す斜視図である。
図7】実施形態1における補助ブラシおよびその取付構造を示す概略断面図である。
図8(A)】実施形態1におけるブラシ基台部に植設されたブラシ毛束の軸心に対する角度を説明する図である。
図8(B)】実施形態1における補助ブラシのブラシ毛束の軸心に対する角度を説明する図である。
図9】実施形態2における補助ブラシおよびその取付構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の自走式掃除機用の第1の補助ブラシは、自走式掃除機の筐体底面から突出する回転軸に取り付けられるブラシ基台部と、
前記回転軸に対して斜めに突出するように前記ブラシ基台部に植設された複数のブラシ毛束と、
該ブラシ毛束における前記ブラシ基台部から突出した根元近傍部分を上方に押圧するブラシ押圧部とを備え
前記ブラシ押圧部が、前記複数のブラシ毛束における前記根元近傍部分に当接する周方向当接面を有している
また、本発明の自走式掃除機用の第2の補助ブラシは、自走式掃除機の筐体底面から突出する回転軸に取り付けられるブラシ基台部と、
前記回転軸に対して斜めに突出するように前記ブラシ基台部に植設された複数のブラシ毛束と、
該ブラシ毛束における前記ブラシ基台部から突出した根元近傍部分を上方に押圧するブラシ押圧部とを備え、
前記ブラシ基台部は、前記複数のブラシ毛束の基端が差し込まれる差込口を有する複数の収納部を有し、
前記ブラシ押圧部は、前記ブラシ基台部と接する面側に、前記複数のブラシ毛束を外方へ突出させながら前記複数の収納部を収納する複数の凹溝を有する。
【0018】
本発明の自走式掃除機用の補助ブラシは、次のように構成されてもよ
【0021】
記ブラシ基台部と前記ブラシ押圧部とは個別の部材からなり、
前記ブラシ基台部および前記ブラシ押圧部は、中心に貫通孔を有し、
前記ブラシ基台部と前記ブラシ押圧部とは重ね合わされてそれらの前記貫通孔にネジが挿通され、前記回転軸の軸端面に形成されたネジ孔に前記ネジが螺着することにより、前記ブラシ押圧部が前記ブラシ部を前記ブラシ基台部の方へ押圧するように構成されていてもよい。
【0022】
このようにすれば、ブラシ基台部およびブラシ押圧部を容易に樹脂成形することができると共に、ブラシ基台部にブラシ部を容易に植設することができる。また、補助ブラシの組み立てながら自走式掃除機の回転軸へ容易に取り付けることができると共に、交換時に補助ブラシを容易に回転軸から取り外すことができる。
なお、ブラシ基台部とブラシ押圧部を樹脂にて一体成形してもよく、この場合、この一体成形品にブラシ部を植設すればよい。
【0023】
(4)前記ブラシ押圧部は、その外周部に前記複数のブラシ毛束を嵌め込む複数の切欠部を有していてもよい。
このようにすれば、ブラシ基台部から斜め下方に突出する各ブラシ毛束の根元近傍部分がブラシ押圧部の各切欠部に嵌り込むため、各ブラシ毛束の上方への屈曲が緩和される。つまり、この切欠部は、ブラシ毛束が水平になり過ぎて床面上の清掃能力が低下しないよう、ブラシ毛束の上方への屈曲を緩和する機能を有している。
【0024】
(5)本発明の補助ブラシは、前記ブラシ基台部と前記ブラシ押圧部との間に配置されてこれらの間隔を調整するスペーサ部材をさらに備えてもよい。
このスペーサは、ブラシ毛束が水平になり過ぎて床面上の清掃能力が低下しないよう、ブラシ毛束の上方への屈曲を緩和する機能を有している。
【0025】
(6)前記ブラシ押圧部において、前記ブラシ基台部と反対側の面は平坦面であり、この平坦面には前記ネジのヘッド部を収納する凹部が形成されていてもよい。
このようにすれば、床面と対向するブラシ押圧部の平坦面からネジのヘッド部が突出しないので、補助ブラシが絨毯の長い毛や飾り房などに引っ掛かることがない。
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の自走式掃除機用の補助ブラシおよびそれを備えた自走式掃除機を詳説する。なお、本発明は図示された実施形態に限定されるものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る自走式掃除機の斜視図であり、図2図1に示される自走式掃除機のA−A矢視断面図であり、図3図1に示される自走式掃除機の底面側から視た斜視図である。
【0028】
本発明に係る自走式掃除機1は、設置された場所の床面を自走しながら、床面上の塵埃を含む空気を吸い込み、塵埃を除去した空気を排気することにより床面上を掃除する自走式の掃除機である。
自走式掃除機1は、円盤形の筐体2を備え、この筐体2の内部および外部に、回転ブラシ9、補助ブラシ10、集塵ボックス30、電動送風機22、一対の駆動輪29、後輪26および前輪27、各種センサを含む制御部等の構成要素が設けられている。
この自走式掃除機1において、前輪27が配置されている部分が前方部、後輪26が配置されている部分が後方部、集塵ボックス30が配置されている部分が中間部である。
【0029】
筐体2は、前方部における中間部との境界付近の位置に形成された吸込口6を有する平面視円形の底板2aと、筐体2に対して集塵ボックス30を出し入れする際に開閉する蓋部3を中間部に有している天板2bと、底板2aおよび天板2bの外周部に沿って設けられた平面視円環形の側板2cとを備えている。また、底板2aには前輪27、一対の駆動輪29および後輪26の下部を筐体2内から外部へ突出させる複数の孔部が形成され、天板2bにおける前方部と中間部との境界付近には排気口7が形成されている。なお、側板2cは、前後に二分割されており、側板前部はバンパーとして機能する。
【0030】
また、筐体2の内部において、前方部にモータユニット20、電動送風機22、イオン発生装置(図示省略)等を収納する前方収納室R1を有し、中間部に集塵ボックス30を収納する中間収納室R2を有し、後方部に制御部の制御基板15、バッテリー14、充電端子4等を収納する後方収納室R3を有し、前方部と中間部との境界付近に吸引路11および排気路12を有している。吸引路11は吸込口6と中間収納室R2とを連通し、排気路12は中間収納室R2と前方収納室R1とを連通している。なお、これらの各収納室R1、R2、R3、吸引路11および排気路12は、筐体2の内部に設けられてこれらの空間を構成する仕切り壁によって仕切られている。
【0031】
吸込口6は、床面Fに対面するよう筐体2の底面(底板2aの下面)に形成された凹部8の開放面である。この凹部8内には、筐体2の底面と平行な第1軸心廻りに回転する回転ブラシ9が設けられており、凹部8の左右両側には筐体2の底面と垂直な第2回転軸心廻りに回転するサイドブラシ10が設けられている。回転ブラシ9は、回転軸であるローラの外周面に螺旋状にブラシを植設することにより形成されている。サイドブラシ10は、回転軸の下端にブラシ毛束を放射状に設けることにより形成されている。回転ブラシ9の回転軸および一対のサイドブラシ10の回転軸は、筐体2の底板2aの一部に枢着されると共に、その付近に設けられたモータユニット20とプーリおよびベルト等を含む動力伝達機構を介して独立的に連結されている。なお、サイドブラシ10およびその取付構造について詳しくは後述する。
【0032】
図3に示されるように、筐体2の底面と前輪27との間には床面Fを検知する床面検知センサ13が配置され、左右の駆動輪29の側部前方には同様の床面検知センサ19が配置されている。床面検知センサ13によって下り階段を検知すると、その検知信号が制御部に送信され、制御部が両駆動輪29が停止するよう制御する。また、床面検知センサ13が故障した場合、床面検知センサ19が下り階段を検知して両駆動輪29を停止することができるため、自走式掃除機1の下り階段への落下が防止されている。また、床面検知センサ19が、下り階段を検知すると、その検知信号が制御部に送信され、制御部が駆動輪29に下り階段を回避して走行するように制御してもよい。
【0033】
制御基板15には、自走式掃除機1における駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10、電動送風機22等の各要素を制御する制御回路が設けられている。
筐体2の側板2cの後端には、バッテリー14の充電を行う充電端子4が設けられている。室内を自走しながら掃除する自走式掃除機1は、室内に設置されている充電台40に帰還する。これにより、充電台40に設けられた端子部41に充電端子4が接触し、バッテリー14の充電が行われる。商用電源(コンセント)に接続される充電台40は、通常、室内の側壁Sに沿って設置される。
バッテリー14は、充電端子4を介して充電台40から充電され、制御基板15、駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10、電動送風機22、各種センサ等の各要素に電力を供給する。
【0034】
集塵ボックス30は、通常、筐体2内における両駆動輪29の回転軸の軸心よりも上方の中間収納室R2内に収納されており、集塵ボックス30内に捕集された塵埃を廃棄する際は、筐体2の蓋部3を開いて集塵ボックス30を出し入れすることができる。
集塵ボックス30は、開口部を有する集塵容器31と、集塵容器31の開口部を覆うフィルタ部33と、フィルタ部33と集塵容器31の開口部とを覆うカバー部32とを備えている。カバー部32およびフィルタ部33は、集塵容器31の前側の開口端縁に回動可能に軸支されている。
集塵容器31の側壁前部には、集塵ボックス30が筐体2の中間収納室R2内に収納された状態において、筐体2の吸引路11と連通する流入路34と、筐体2の排気路12と連通する排出路35とが設けられている。
【0035】
このように構成された自走式掃除機1において、掃除運転の指令により、電動送風機22、イオン発生装置、駆動輪29、回転ブラシ9およびサイドブラシ10が駆動する。これにより、回転ブラシ9、サイドブラシ10、駆動輪29および後輪26が床面Fに接地した状態で、筐体2は所定の範囲を自走しながら吸込口6から床面Fの塵埃を含む空気を吸い込む。このとき、回転ブラシ9の回転によって床面F上の塵埃は掻き上げられて吸込口6に導かれる。また、サイドブラシ10の回転によって吸込口6の側方の塵埃が吸込口6に導かれる。
【0036】
吸込口6から筐体2内に吸い込まれた塵埃を含む空気は、図2の矢印A1に示されるように、筐体2の吸引路11を通り、集塵ボックス30の流入路34を通って集塵容器31内に流入する。集塵容器31内に流入した気流は、フィルタ部33を通過してフィルタ部33とカバー部32との間の空間に流入し、排出路35を通って筐体2の排気路12へ排出される。この際、集塵容器31内の気流に含まれる塵埃はフィルタ部33によって捕獲されるため、集塵容器31内に塵埃が堆積する。
【0037】
集塵ボックス30から筐体2の排気路12へ流入した気流は、図2の矢印A2に示されるように前方収納室R1へ流入し、図示しない第1排気路および第2排気路を流通する。第1排気路を流通する気流にはイオン発生装置が放出するイオン(プラズマクラスターイオン)が含まれる。そして、筐体2の上面に設けた排気口7から、図2の矢印A3に示されるように、後方の斜め上方にイオンを含む気流が排気される。これにより、床面F上の掃除が行われると共に、自走式掃除機1の排気に含まれるイオンによって室内の除菌および脱臭が行われる。このとき、排気口7から後方の斜め上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げが防止され、室内の清浄度を向上することができる。
また、図示省略するが、第1排気路を流通する気流の一部は、凹部8に導かれてもよい。このようにすれば、吸込口6から吸引路11に導かれる気流内にイオンが含まれるため、集塵ボックス30の集塵容器31内およびフィルタ部33の除菌および脱臭を行うことができる。
【0038】
また、自走式掃除機1は、左右の駆動輪29が同一方向に正回転して前進し、同一方向に逆回転して後退し、互いに逆方向に回転することにより中心線Cを中心に旋回する。例えば、自走式掃除機1は、掃除領域の周縁に到達した場合および進路上の障害物に衝突した場合、駆動輪29が停止し、左右の駆動輪29を互いに逆方向に回転して向きを変える。これにより、自走式掃除機1は、設置場所全体あるいは所望範囲全体に障害物を避けながら自走することができる。
【0039】
<サイドブラシおよびその取付構造>
図4は実施形態1における補助ブラシを示す正面図である。また、図5(A)は実施形態1におけるブラシ部が植設されたブラシ基台部を示す斜視図であり、図5(B)は図5(A)のブラシ基台部の底面図である。また、図6は実施形態1におけるブラシ押圧部を示す斜視図であり、図7は実施形態1における補助ブラシおよびその取付構造を示す概略断面図である。また、図8(A)は実施形態1におけるブラシ基台部に植設されたブラシ毛束の軸心に対する角度を説明する図であり、図8(B)は実施形態1における補助ブラシのブラシ毛束の軸心に対する角度を説明する図である。
【0040】
図6図7に示されるように、筐体2の底面(底板2aの下面)のサイドブラシ取付位置には、サイドブラシ10の後述するブラシ基台部10aを収納する凹部2a1が形成されていると共に、この凹部2a1から第2軸心P回りに回転可能な回転軸2a2が突出している。
【0041】
回転軸2a2は筒形であり、下端の孔の内周面には雌ネジ2a21が形成されている。
筐体2の底板2aの上面(内面)にはボックス2a3が設けられ、このボックス2a3に連結軸2a4が回転可能に枢着されている。この連結軸2a4の下端部は回転軸2a2の上端側の孔に挿入され、連結軸2a4と回転軸2a2とが一体的に回転するよう連結している。なお、連結軸2a4は、前記のように図示しない回転ブラシ駆動用のモータの回転力がプーリおよびベルト等を含む動力伝達機構を介して伝達される。なお、サイドブラシ10は、回転ブラシ駆動用のモータを共用して回転駆動することなく、単独で設けるモータにて駆動されてもよい。
【0042】
サイドブラシ10は、筐体2の底面と垂直な第2軸心P上に回転可能に設けられた前記回転軸2a2に着脱可能に取り付けられるブラシ基台部10aと、ブラシ基台部10aに放射状に植設された4本のブラシ毛束10bからなるブラシ部と、複数のブラシ毛束10bの根元側部分をブラシ基台部10a側へ押圧するブラシ押圧部10cとを有している。
ブラシ基台部10aとブラシ押圧部10cとは個別の部材からなり、4本のブラシ毛束10bはブラシ基台部10aに一体化されている。
【0043】
ブラシ基台部10aは、円板形状に形成されており、筐体2の底面の凹部2a1と対向する上面に、回転軸2a2の先端を嵌め入れる筒部10abを有している。そして、筒部10abの内部が中心貫通孔10ab1とされると共に、中心貫通孔10ab1の長手方向中間付近に内鍔10ab2が形成されている。
【0044】
さらに、ブラシ基台部10aの下面には、複数のブラシ毛束10bの基端が差し込まれる差込口10ac1を有する複数の収納部10acが周方向に等間隔で形成されている。実施形態1では、周方向に等間隔で4つの収納部10acが配置されており、図8(A)に示すように、各収納部10acは回転軸2a2の軸心Pに対して55°程度の角度θ1で下向きに傾斜している。これにより、各収納部10acに植設されたブラシ毛束10bも55°程度の角度θ1で下向きに傾斜している。
【0045】
ブラシ押圧部10cは、ブラシ基台部10aよりも大径の円板形状に形成されており、ブラシ基台部10aと接する面側に、ブラシ基台部10aの中心貫通孔10ab1に下方から差し込まれる筒部10caを有している。そして、筒部10caの内部が中心貫通孔10ca1とされている。
【0046】
また、ブラシ押圧部10cは、ブラシ基台部10aと接する面側に、所定パターン形状に形成されたリブ10cbを有し、複数のブラシ毛束10bを外方へ突出させながらブラシ基台部10aの複数の収納部10acを収納する4つの凹溝10cb1がリブ10cbによって形成されている。そして、凹溝10cb1の外周側の開口は幅が狭くなっており、その狭い開口を構成する凹溝10cb1の内側面が周方向当接面10cb2とされている。なお、リブ10cbは、外周部に等間隔に配置された4つの円弧形部分と、各円弧形部分の内側に配置されたY字形部分とを有する。そして、隣接する円弧形部分とY字形部分とが連接されており、連接された円弧形部分およびY字形部分によって囲まれた凹部が形成されている。
【0047】
また、ブラシ押圧部10cは、その外周部に4本のブラシ毛束10bと接触する4つの切欠部10c1を有している。すなわち、ブラシ押圧部10cの外周部における各凹溝10cb1の外周側の開口付近に半円形状の切欠部10c1が形成されている。
さらに、ブラシ押圧部10cにおいて、ブラシ基台部10aと反対側の面は平坦面10c2であり、この平坦面10c2には取付用ネジGのヘッド部を収納する凹部10ca2が形成されている。
【0048】
サイドブラシ10の組み立ておよび回転軸2a2への取り付けは、まず、ブラシ基台部10aに下方からブラシ押圧部10cを重ね合わせる。このとき、ブラシ基台部10aの各収納部10acをブラシ押圧部10cの各凹溝10cb1内に嵌め込む。そして、ブラシ基台部10aとブラシ押圧部10cの連通した中心貫通孔10ca1、10ab1に下方からネジGを挿通し、ネジGを回転軸2a2の雌ネジ2a21に螺合させる。これにより、サイドブラシ10が自走式掃除機1の筐体2に取り付けられる。
【0049】
図8(A)と図8(B)に示すように、サイドブラシ10の回転軸2a2への取り付けの際、ネジGによりブラシ押圧部10cがブラシ基台部10aの方へ押し付けられる。これにより、ブラシ押圧部10cの各凹溝10cb1の開口から外方へ突出した各ブラシ毛束10bの根元近傍部分が各切欠部10c1にて押し上げられて緩やかに屈曲する。これにより、各ブラシ毛束10bの先端側は回転軸2a2の軸心Pに対して60〜70°程度の角度θ2まで広がる。
【0050】
自走式掃除機1の筐体2に取り付けられたサイドブラシ10において、各ブラシ毛束10bは、ブラシ押圧部10cの外周部の各切欠部10c1にて上下方向の変形が抑制され、かつ各凹溝10cb1の狭まった開口の周方向当接面10cb2にて回転方向の変形が抑制されている。
【0051】
このサイドブラシ10を備えた自走式掃除機1は、ブラシ押圧部10cが筐体2の底面に接近した位置にあるため、フローリングから絨毯の上へ移動する際等にブラシ押圧部10cが引っ掛かることが抑制される。
また、サイドブラシ10のブラシ毛束10bが、ブラシ押圧部10cによってブラシ基台部10aの方へ押し上げられているため、サイドブラシ10自体が絨毯等に引っ掛かることが抑制される。
また、ブラシ押圧部10cにおいて、ブラシ基台部10aと反対側の面を平坦面10c2としているため、ブラシ押圧部10cが絨毯等に引っ掛かかることがさらに抑制される。
【0052】
また、毛足の長い絨毯や飾り房を有する絨毯の上を清掃する際、サイドブラシ10の各ブラシ毛束10bは回転方向と上下方向の変形を抑制されているため(変形の自由度が小さいため)、絨毯の繊維がブラシ毛束10bに絡み付き難い。そのため、サイドブラシ10の回転が停止して清掃運転が強制的に停止されるという不具合が生じ難い。
【0053】
また、ブラシ押圧部10cが筐体2の底面近くに位置し、かつ各ブラシ毛束10bが自由状態よりも大きい回転半径で回転するため、サイドブラシ10の回転軸2a2に繊維屑が巻き付いて回転抵抗が増加するという不具合が生じ難くなり、サイドブラシ10を回転させる駆動モータの負荷が大きくなって寿命が短くなるという不具合が生じ難くなる。さらに、ブラシ毛束10bの変形癖が生じ難くなるため、サイドブラシ10の回転半径が縮小して清掃能力が低下するという不具合が生じ難くなる。
【0054】
(実施形態2)
図9は実施形態2における補助ブラシおよびその取付構造を示す概略断面図である。なお、図9において、図7中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
【0055】
実施形態2のサイドブラシ100は、ブラシ基台部10aとブラシ押圧部100cとの間に配置されてこれらの間隔を調整するスペーサ部材10dをさらに備えている。また、ブラシ押圧部100cは、実施形態1で見られた切欠部10c1図7参照)が外周部から省略されている。実施形態2におけるその他の構成は実施形態1と同様である。
【0056】
スペーサ部材10dは、ブラシ押圧部100cの筒部10caと同等の外径および内径を有する短筒である。このスペーサ部材10dによって、ブラシ基台部10aとブラシ押圧部100cとの間隔がスペーサ部材10dの厚み分広がる。そのため、スペーサ部材10dが無い場合と比べると、ブラシ押圧部100cの外周部による各ブラシ毛束10bの根元近傍部分への押し上げ量が少なくなっている。
【0057】
すなわち、このスペーサ10dは、ブラシ毛束10bが水平になり過ぎて床面上の清掃能力が低下しないよう、ブラシ毛束10bの上方への屈曲を緩和する機能を有している。例えば、絨毯の毛足の長さが比較的短い場合や、飾り房が少ないまたは無い場合は、厚いスペーサを選択する。逆に、絨毯の毛足の長さが比較的長い場合や、飾り房が多い場合は、薄いスペーサを選択するか、あるいはスペーサ部材を用いないようにする。
【0058】
スペーサ部材10dの厚みは任意であり、厚みが異なる複数個のスペーサ部材を取り揃え、ブラシ基台部10aとブラシ押圧部100cとの所望の間隔に近い厚さのスペーサ部材を選択して用いてもよい。あるいは、同じ厚みのスペーサ部材を複数個用意し、使用するスペーサ部材の合計厚さが、ブラシ基台部10aとブラシ押圧部100cとの所望の間隔に近づくように、スペーサ部材の使用個数を決定してもよい。
【0059】
(他の実施形態)
実施形態1のサイドブラシ10に、実施形態2のサイドブラシ100のスペーサ部材10dを設けてもよい。
また、ブラシ押圧部10c、100cは、ブラシ基台部10aと一体に成型されてもよい。この場合、例えば、ブラシ押圧部10c、100cの上面にブラシ毛束10bの基端が差し込まれる差込口を設けてブラシ毛束10bをブラシ押圧部10c、100cに取り付けるようにし、ブラシ押圧部10c、100cがブラシ基台部10aを兼ねることとすることができる。以上のようにブラシ押圧部10c、100cを構成した場合には、サイドブラシ10、100の部品点数を少なくすることができる。また、以上のようにブラシ押圧部10c、100cを構成した場合にも、実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 自走式掃除機
2 筐体
2a 底板
2a2 回転軸
2a21 ネジ孔
10 サイドブラシ(補助ブラシ)
10a ブラシ基台部
10ab1 ブラシ基台部の中心貫通孔
10ac 収納部
10ac1 差込口
10b ブラシ毛束
10c、100c ブラシ押圧部
10ca1 ブラシ押圧部の中心貫通孔
10cb2 周方向当接面
10cb1 凹溝
10d スペーサ部材
G ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9