(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
型開きした金型から成形品を取出した後に前記金型を型締めする型締め工程、前記金型内に樹脂を充填する充填工程、充填した前記樹脂を保圧する保圧工程、前記金型を型開きする型開き工程、および型開きした前記金型から成形品を取出す取出し工程、を含む成形工程と、
ボトムフィルムを加熱する加熱工程、加熱された前記ボトムフィルムに絞り加工によりポケットを形成する絞り工程、前記ポケット内に前記成形品を収容する収容工程、前記成形品を収容した前記ポケットの開口部をトップフィルムで封止する封止工程、および前記ボトムフィルムを所定の距離移動する移動工程、を含む包装工程と、
前記取出し工程において取出した前記成形品を、前記収容工程のために前記ポケットに搬送する搬送工程と、
を有し、
少なくとも前記加熱工程、前記収容工程および前記封止工程の各工程は、前記移動工程の後に実施され、
前記包装工程における前記移動工程から次の前記移動工程までの前記ボトムフィルムの停滞時間は、前記加熱工程において加熱開始時間を遅らせる、前記加熱工程において昇温速度を下げる、または前記絞り工程における絞り加工の時間を長くする、ことによって、前記成形工程における前記型締め工程から次の前記型締め工程までの成形サイクルに合わされている、
包装された成形品の製造方法。
前記包装工程における前記移動工程から次の前記移動工程までの前記ボトムフィルムの停滞時間は、前記絞り工程における絞り加工の時間を長くすることによって、前記成形工程における前記型締め工程から次の前記型締め工程までの成形サイクルに合わされている、請求項1に記載の包装された成形品の製造方法。
型開きした金型から成形品を取出した後に前記金型を型締めする型締め工程、前記金型内に樹脂を充填する充填工程、充填した前記樹脂を保圧する保圧工程、および前記金型を型開きする型開き工程、を含む成形工程を実施する成形機と、
ボトムフィルムを加熱する加熱工程、加熱された前記ボトムフィルムに絞り加工によりポケットを形成する絞り工程、前記ポケット内に前記成形品を収容する収容工程、前記成形品を収容した前記ポケットの開口部をトップフィルムで封止する封止工程、および前記ボトムフィルムを所定の距離移動する移動工程、を含む包装工程を実施する包装機と、
前記型開き工程において型開きした前記金型から成形品を取出す取出し工程、および取出された前記成形品を前記収容工程のために前記ポケット内に搬送する搬送工程を実施する搬送機と、
前記成形機、前記包装機および前記搬送機を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記加熱工程において加熱開始時間を遅らせる、前記加熱工程において昇温速度を下げる、または前記絞り工程における絞り加工の時間を長くする、ことによって、前記成形工程の前記成形機による前記型締め工程から次の前記型締め工程までと、前記ボトムフィルムの滞在時間を調整された前記包装工程の前記包装機による前記移動工程から次の前記移動工程までと、を同期させる、
包装された成形品の製造装置。
【背景技術】
【0002】
以前から、射出成形により、医療現場などで使用される検査器具(ピペット)用のチップが製造されている。このように製造されたチップは、フィルムなどで個別に包装されて出荷されることがある。
【0003】
特許文献1には、射出成形品を製造する射出成形機が記載されている。特許文献1に記載の射出成形機は、射出装置および型締装置を有する。射出装置は、原料となるペレットを加熱して溶融樹脂とするシリンダーと、溶融樹脂を金型に射出するスクリューとを含む。また、型締装置は、金型と、溶融樹脂を射出するときに金型を押さえつける型締機構とを有する。この射出成形機では、型締機構により固定した金型の内部に、シリンダーにより溶融樹脂を所定の圧力で射出する。金型内に充填された樹脂は、所定の時間保圧および冷却される。最後に、金型を開き、射出成形品が取り出される。
【0004】
また、特許文献2には、被包装物を2枚のフィルムで包装する深絞り型包装機が記載されている。特許文献2に記載の深絞り型包装機は、下側フィルムに凹状のポケット部を成形する成形装置と、被包装物が挿入されたポケット部に上側フィルムを被覆する手段と、ポケット部の外周部および上側フィルムをシールするシール手段と、シールされた2枚のフィルムを製品間で切断するカッター手段とを有する。この深絞り包装機では、下側フィルムに形成したポケット部に被包装物を収容し、ポケット部を覆うように上側フィルムを被覆する。次いで、ポケット部の外周部と上側フィルムをシールした後、シールされた2枚のフィルムを所定の位置で切断する。
【0005】
一般的に、特許文献1に記載されているような射出成形機による成形サイクルは、保圧および冷却にある程度の時間を要するため、特許文献2に記載されているような深絞り型包装機による包装サイクルよりも長い時間を要することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療現場などでは、患者の生存率を向上させる目的で、検査によりエンドトキシンの付着量が規定値以下であることが保証され、衛生面が確保された医療用器具や医薬品などが使用されている。このようなエンドトキシンによる汚染の検査には、エンドトキシンフリーの清浄な環境で製造され、かつ個別包装などによりエンドトキシンフリーの清浄な状態が確保されたチップを用いた検査器具が使用される。
【0008】
たとえば、特許文献1に記載されているような射出成形機で形成された射出成形品を、特許文献2に記載されているような包装機で連続して個別包装しようとする場合、成形サイクルは包装サイクルより長い時間を要することから、射出成形品を予め製造しておき、一時的に保管することが考えられる。また、金型から取出された射出成形品を、包装サイクルに合わせた速度に調整されたベルトコンベアによって、包装位置まで搬送する場合もある。これらの場合、射出成形品は、一時的に保管されている間、またはベルトコンベアによって搬送されている間に汚染されてしまうおそれがある。
【0009】
一方、成形サイクルと包装サイクルを合わせるために、射出成形品の成形サイクルを短縮すると、射出成形品を安定して製造することができない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、内部に収容された成形品の衛生面が確保された、包装された成形品を安定して製造することができる、包装された成形品の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る包装された成形品の製造方法は、型開きした金型から成形品を取出した後に前記金型を型締めする型締め工程、前記金型内に樹脂を充填する充填工程、充填した前記樹脂を保圧する保圧工程、前記金型を型開きする型開き工程、および型開きした前記金型から成形品を取出す取出し工程、を含む成形工程と、ボトムフィルムを加熱する加熱工程、加熱された前記ボトムフィルムに絞り加工によりポケットを形成する絞り工程、前記ポケット内に前記成形品を収容する収容工程、前記成形品を収容した前記ポケットの開口部をトップフィルムで封止する封止工程、および前記ボトムフィルムを所定の距離移動する移動工程、を含む包装工程と、前記取出し工程において取出した前記成形品を、前記収容工程のために前記ポケットに搬送する搬送工程と、を有し、少なくとも前記加熱工程、前記収容工程および前記封止工程の各工程は、前記移動工程の後に実施され、前記包装工程における前記移動工程から次の前記移動工程までの前記ボトムフィルムの停滞時間は、前記加熱工程において加熱開始時間を遅らせる、前記加熱工程において昇温速度を下げる、または前記絞り工程における絞り加工の時間を長くする、ことによって、前記成形工程における前記型締め工程から次の前記型締め工程までの成形サイクルに合わされている、構成を採る。
【0012】
本発明に係る包装された成形品の製造装置は、型開きした金型から成形品を取出した後に前記金型を型締めする型締め工程、前記金型内に樹脂を充填する充填工程、充填した前記樹脂を保圧する保圧工程、および前記金型を型開きする型開き工程、を含む成形工程を実施する成形機と、ボトムフィルムを加熱する加熱工程、加熱された前記ボトムフィルムに絞り加工によりポケットを形成する絞り工程、前記ポケット内に前記成形品を収容する収容工程、前記成形品を収容した前記ポケットの開口部をトップフィルムで封止する封止工程、および前記ボトムフィルムを所定の距離移動する移動工程、を含む包装工程を実施する包装機と、前記型開き工程において型開きした前記金型から成形品を取出す取出し工程、および取出された前記成形品を前記収容工程のために前記ポケット内に搬送する搬送工程を実施する搬送機と、前記成形機、前記包装機および前記搬送機を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記加熱工程において加熱開始時間を遅らせる、前記加熱工程において昇温速度を下げる、または前記絞り工程における絞り加工の時間を長くする、ことによって、前記成形工程の前記成形機による前記型開き工程から前記搬送機による前記取出し工程までと、前記ボトムフィルムの滞在時間を調整された前記包装工程の前記包装機による前記移動工程から前記搬送機による前記搬送工程までと、を同期させる、構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部に収容された成形品の衛生面が確保された、包装された成形品を安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[実施の形態1]
(包装された成形品の製造装置の構成)
図1は、実施の形態1に係る包装された成形品Pの製造装置(以下、単に「製造装置」ともいう)100の模式的な平面図である。
【0017】
図1に示されるように、製造装置100は、射出成形機120、包装機140、搬送機160および制御部180を有する。製造装置100は、射出成形機120により製造した射出成形品Pを、搬送機160により包装機140に搬送した後、包装機140により個別に包装する装置である。
【0018】
製造装置100は、衛生面が確保されたクリーンルーム190に収容されている。クリーンルーム190には、クリーンルーム190内の清浄性を確保するための空調機191が併設されている。製造装置100は、射出成形品Pとなる材料の補充、包装に使用される消耗品の交換などを除いて、基本的に無人で稼働できるようになっている。
【0019】
(成形機の構成)
図2は、実施の形態1に係る包装された成形品Pの製造装置100を射出成形機120側から見た模式的な側面図である。この図では、包装機140および制御部180を省略している。
【0020】
射出成形機120は、射出成形品Pを製造する成形工程を実施する。射出成形機120は、射出部121および型締部122を有する。射出部121および型締部122は、それぞれ制御部180によって制御されている。
【0021】
射出部121は、型締部122の金型129に樹脂を充填する。射出部121は、ホッパー123およびシリンダー124を有する。
【0022】
ホッパー123は、投入した樹脂を保管するとともに、保管した樹脂をシリンダー124内に導入する。ホッパー123は、樹脂を一時的に保管するホッパー本体125と、ホッパー本体125の上端に配置され、樹脂を投入する投入口126と、ホッパー本体125の下端に配置され、樹脂をシリンダー124内に導入するための連通口127とを有する。投入される樹脂の種類は、特に限定されず、射出成形品Pの使用目的に合わせて適宜選択すればよい。また、投入される樹脂の形状は、特に限定されないが、取り扱い性の観点から、ペレット状であることが好ましい。
【0023】
シリンダー124は、樹脂を溶解させた溶融樹脂を金型129内に射出する。シリンダー124の先端には溶融樹脂の射出口となるノズル部128が配置されており、基端側にはホッパー123が連通している。シリンダー124およびホッパー123は、型締部122に対して進退可能に構成されている。
【0024】
型締部122は、射出成形品Pを成型する際に金型129を型締めするとともに、射出成形品Pを取り出す際に金型129を型開きする。型締部122は、金型129および型締機構130を有する。
【0025】
金型129は、第1金型129a(固定側金型)および第2金型129b(可動側金型)を有する。第1金型129aおよび第2金型129bを当接させると、射出成形品Pの形状に対応する形状のキャビティが形成される。
【0026】
型締機構130は、射出成形品Pを成型する際に金型129を型締めするとともに、射出成形品Pを取り出す際に金型129を型開きする。型締機構130は、第1金型129aが固定された第1プレート131と、第2金型129bが固定された第2プレート132と、第1プレート131および第2プレート132を繋ぐ複数のレール133とを有する。第1プレート131に固定された第1金型129aは、レール133を介して、第2金型129bに対して進退可能に構成されている。
【0027】
射出部121は、ホッパー123から導入された樹脂を、加熱されたシリンダー124内で溶解して溶融樹脂にする。そして、射出部121は、溶解樹脂を金型129内に射出する。一方、型締部122は、溶融樹脂が射出されるまでに第1金型129aおよび第2金型129bを当接させた状態で固定し、溶融樹脂を射出した後、一定時間保圧および冷却することで、射出成形品Pを形成する。そして、型締部122は、金型129を開いて射出成形品Pを取り出す。
【0028】
(包装機の構成)
図3は、実施の形態1に係る包装された射出成形品Pの製造装置100を包装機140側から見た模式的な側面図である。この図では、射出成形機120および制御部180を省略している。
【0029】
包装機140は、射出成形品Pを包装する包装工程を実施する。包装機140は、加熱部141、絞り部142、収容部143、封止部144、および切断部145を有する。包装に使用されるボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFの移動は、制御部180によって制御されている。
【0030】
包装機140は、ロール状に巻かれた第1原反ロール146から、水平方向に間欠送りされるボトムフィルムBFに対して深絞り加工してポケット148を成形し、ポケット148に射出成形品Pを収容した後、トップフィルムTFで封止して切断する工程を連続で実施する装置である。特に図示しないが、包装機140には、第1原反ロール146から繰り出されたボトムフィルムBFを間欠送りする送り部が設けられている。送り部は、制御部180によって制御されており、第1原反ロール146から加熱部141への移動、絞り部142から収容部143への移動、収容部143から封止部144への移動、封止部144から切断部145への移動をそれぞれ行う。なお、ボトムフィルムBFの材料は、特に限定されず、包装に要求される機能および特性などに基づいて適宜選択される。
【0031】
加熱部141は、ボトムフィルムBFを加熱する。加熱部141は、制御部180に制御された熱源147を有する。熱源147は、ボトムフィルムBFの上側に配置されている。熱源147は、ボトムフィルムBFのポケット148となる領域を絞り加工が可能な程度に軟化する温度に加熱する。一般的に、ボトムフィルムBFは、多層構造であることが多く、各層の組成もそれぞれ異なることが多い。このような場合、ボトムフィルムBFを軟化させるためには、少なくとも1つの層の材料のガラス転移温度(Tg)以上に各層を加熱することが好ましい。
【0032】
絞り部142は、加熱されたボトムフィルムBFに絞り加工によりポケット148を形成する絞り工程を実施する。絞り部142は、型149および吸引ポンプ150を有する。型149は、ボトムフィルムBFの下側に、加熱部141と対向して配置されている。型149の材料は、特に限定されないが、加熱されたボトムフィルムBFが接触しても変形しない金属などで形成されている。また、本実施の形態では、型149は、温度制御されていない。すなわち、クリーンルーム190内において、型149の温度は、常温である。型149の形状は、形成するポケット148の形状に応じて適宜設計される。型149には、吸引ポンプ150が接続されている。ボトムフィルムBFの加熱された部位は、吸引ポンプ150により真空吸引されることで、型149に倣って絞り加工が施されて、ポケット148となる。
【0033】
収容部143は、射出成形品Pを収容する位置にポケット148を移動した後、ポケット148内に搬送機160により搬送された射出成形品Pを収容する。
【0034】
封止部144は、射出成形品Pを収容したポケット148の開口部をトップフィルムTFで封止する。封止部144は、ローラー151およびシーラー152を有する。ローラー151は、シーラー152よりもボトムフィルムBFの送り方向上流側に配置される。シーラー152は、ヒートシーラー153および封止台154を含む。
【0035】
ローラー151は、第2原反ロール155から間欠送りされたトップフィルムTFを、ボトムフィルムBFに成形したポケット148の開口部を覆うことができる位置に配置されるとともに、トップフィルムTFの送り方向をボトムフィルムBFの送り方向と同じ方向に変更する。トップフィルムTFは、送り部によりボトムフィルムBFとともに間欠送りされることで、射出成型品Pが収容された直後に開口部を覆う。また、ローラー151は、トップフィルムTFの内面(ポケット148の内側に向く面)の汚染を防ぐため、トップフィルムTFの外面(ポケット148の内側に向かない面)に接している。これにより、クリーンルーム190内で自然落下する異物が、ポケット148に入り込むことを防止することができ、清浄性が確保された、包装された射出成形品Pを得ることができる。トップフィルムTFの材料は、特に限定されず、包装に要求される機能および特性などに基づいて適宜選択される。
【0036】
シーラー152は、ボトムフィルムBFの下側に上下動可能に配置され、ポケット148よりわずかに大きい開口部を有する封止台154と、封止台154と対向してトップフィルムTFの上側に配置され、ポケット148の開口部を囲う形のヒートシーラー153とを有する。封止部144では、間欠送りされたボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFが封止位置に移動した後、ポケット148が開口部に挿入されるように、封止台154が上昇する。そして、封止台154がさらに上昇して、ヒートシーラー153との間にボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFを挟み込み、開口部の外周部とトップフィルムTFを熱溶着して封止する。これにより、射出成形品Pは、ボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFで包装される。
【0037】
切断部145では、封止されたボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFを、射出成形品Pの間の所定の位置で切断する。切断部145は、封止されたボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFの上側または下側からトップフィルムTFおよびボトムフィルムBFを切断するカッター156を有する。なお、トップフィルムTFおよびボトムフィルムBFの切断位置は、ポケット148およびトップフィルムTFによる封止状態が保持されていれば、シール上であってもよい。
【0038】
(搬送機)
搬送機160は、射出成形機120で製造された射出成形品Pを包装機140に搬送する。搬送機160は、射出成形品Pを把持するアーム161と、アーム161を平面視XY方向に移動させる平面移動部162とを有する。搬送機160は、製造直後の射出成形品Pをアーム161で把持し、包装機140に搬送し、ボトムフィルムBFに形成されたポケット148に収容する。このとき、射出成形品Pは、搬送機120以外に触れることなく、ポケット148内に収容される。
【0039】
(制御部)
制御部180は、射出成形機120、包装機140および搬送機160を統括的に制御する。たとえば、制御部180は、コンピューターである。後述するように、制御部180は、射出成形機120、包装機140および搬送機160を統括的に制御することで、成形サイクルと包装サイクルとのタイミングを合わせる。また、制御部180は、射出成形機120による型開き工程から搬送機160による取出し工程と、包装機140による移動工程から搬送機160による搬送工程と、を同期させる。具体的には、搬送機160による取出し工程と搬送機160による搬送工程とが重ならないように、任意のサイクルにおいて、搬送機160による取出し工程と包装機140による移動工程(任意のサイクルで取り出された射出成形品Pを収容するポケット148を絞り部142から収容部143へ移動する工程)とを同時期に行う。これらのタイミングが合っていない場合、搬送機160が射出成形品Pを保持した状態でポケット148の絞り部142から収容部143への移動を待つことになったり、ポケット148が射出成形品Pを収容しないまま収容部143から封止部144へ移動してしまったりするなどの不具合が生じる。制御部180は、このような不具合が生じることのないように、両者のタイミングを調整する。
【0040】
(製造装置の動作)
次に、包装された射出成形品Pの製造装置100の動作について説明する。
【0041】
射出成形機120では、まず、型締部122により金型129を型締めする(型締め工程)。次いで、射出部121により金型129内に溶融樹脂を充填する(充填工程)。そして、金型129内に溶融樹脂を充填させた状態で保圧しながら自然冷却する(保圧工程)。さらに、型締めされた金型129を型開きする(型開き工程)。最後に、型開きした金型129から、射出成形品Pを取出す(取出し工程)。
【0042】
包装機140では、まず、送り部によりボトムフィルムBFを間欠送りして加熱位置に移動させる(移動工程1)。次いで、加熱部141によりボトムフィルムBFのポケット148を形成する領域を軟化させるために加熱する(加熱工程)。そして、吸引ポンプにより加熱されたボトムフィルムBFを吸引することで、加熱されたボトムフィルムBFに絞り加工によりポケット148を形成する(絞り工程)。形成されたポケット148を収容位置に移動する(移動工程2)。そして、搬送機160により搬送されてきた、射出成形機120で製造した直後の射出成形品Pを、ボトムフィルムBFに形成したポケット148内に収容する(収容工程)。次いで、射出成形品Pを収容したポケット148を封止位置に移動する(移動工程3)。そして、封止位置に送られてきた、射出成形品Pを収容したポケット148の開口部をトップフィルムTFで封止する(封止工程)。ボトムフィルムBFとトップフィルムTFのシール位置がカッター156よりも、ボトムフィルムBFの送り方向下流側となるように、ボトムフィルムBFを移動する(移動工程4)。最後に、切断部145によりトップフィルムTFおよびボトムフィルムBFを切断して、包装体を得る(切断工程)。
【0043】
前述したように、一般的に、射出成形の成形サイクルに要する時間は、包装サイクルに要する時間よりも長い。よって、包装された射出成形品Pを連続して製造する場合、成形サイクルおよび包装サイクルが一致しないと、射出成形品P、またはボトムフィルムBFおよびトップフィルムTFの無駄が生じてしまうとともに、時間当たりの生産数を確保することができない。また、射出成形品Pがパーティクルなどに接触する時間が長くなってしまい、汚染されてしまうおそれがある。
【0044】
したがって、包装された射出成形品Pを連続して製造するために、成形サイクルと包装サイクルを合わせることが考えられる。しかしながら、例えば、包装機140を待機状態にしておくと、加熱部141でボトムフィルムBFが加熱され続けられてしまい、過度に軟化してしまう。このようにボトムフィルムBFが過度に軟化してしまうと、型149の形状をボトムフィルムBFに適切に転写させることができない。
【0045】
このような問題を回避すべく、本実施の形態に係る製造装置100は、包装工程における所定の工程にかける時間を延ばすことにより、成形サイクルと包装サイクルの一部とを同期させる。具体的には、本実施の形態に係る製造装置100は、(1)加熱工程において加熱開始時間を遅らせる、(2)加熱工程において昇温速度を下げる、または(3)絞り工程における絞り加工の時間を長くすることによって、射出成形機120による型締め工程から次の型締め工程までの成形サイクルと、包装機140による包装工程における移動工程から次の移動工程までの時間(包装サイクルにおいて移動工程から次の移動工程までに行われる各工程の作業位置(加熱部141、絞り部142、収容部143、封止部144および切断部145)におけるボトムフィルムBFの停滞時間)とを合わせる。
【0046】
図4〜6は、成形サイクルと包装サイクルにおける移動工程から次の移動工程までの時間とを一致させる方法の説明図である。
図4は、(1)加熱工程において加熱開始時間を遅らせることで一致させる方法の説明図である。
図5は、(2)加熱工程において昇温速度を下げることで一致させる方法の説明図である。
図6は、(3)絞り工程における絞り加工の時間を長くすることで一致させる方法の説明図である。これらの図に示されるように、(1)加熱工程において加熱開始時間を遅らせる、(2)加熱工程において昇温速度を下げる、または(3)絞り工程における絞り加工の時間を長くすることによって、成形工程および包装工程に何ら問題を生じさせることなく、成形サイクル(T1)と包装サイクルにおける移動工程から次の移動工程までの時間(T2)とを一致させることができる。
【0047】
図7は、成形サイクルと、包装サイクルの一部とを同期させる方法の概念図である。
図7の「a1」は、「移動工程2」を示しており、「a2」は、包装機140による収容工程および搬送機160による搬送工程を示しており、「a3」は、移動工程3を示している。また、「b1」は、成形機120による型開き工程および搬送機160による取出し工程を示している。また、「n」は、成形サイクルおよび包装サイクルの回数を示している。
【0048】
図7に示されるように、本実施の形態に係る製造装置100は、射出成形機120による型開き工程から搬送機160による取出し工程(b1)と、包装機140による移動工程から搬送機160による搬送工程と(a1)とを、搬送機160による取出し工程と搬送機160による搬送工程とが重複しないように、部分的に同時並行して実施する。これにより、製造直後の射出成形品Pを適切にポケット148に収容することができる。
【0049】
(効果)
以上のように、実施の形態1に係る製造装置100および製造方法は、包装工程にかかる時間を長く調整することで、成形サイクルと包装サイクルにおける移動工程から次の移動工程までの時間(ボトムフィルムBFの各作業位置での停滞時間)とを合わせて、射出成形機120による型開き工程から搬送機160による取出し工程と、包装機140による移動工程から搬送機160による搬送工程とを同期させているため、製造直後の射出成形品Pを適切にポケット148に収容することができる。これにより、衛生面が確保された、包装された射出成形品Pを製造することができる。
【0050】
また、絞り工程における絞り加工の時間を長くすることで成形サイクルと包装サイクルの一部とを同期させる場合は、絞り加工により成型されたポケット148は、冷却されることにより収縮しようとするボトムフィルムBFを継続して真空吸引することになる。このため、ポケット148を成型した直後に型149からはずした場合と比較して、ポケット148によって自然収縮が抑えられ、型149のキャビティ形状を精度良く転写させることができる。よって、包装体の品質を向上させることができる。
【0051】
[実施の形態2]
(包装された成形品の製造装置の構成)
図8は、実施の形態2に係る包装された射出成形品Pの製造装置200を包装機240側から見た側面図である。
図3と同様に、この図では、射出成形機120および制御部180を省略している。
【0052】
図8に示されるように、製造装置200は、射出成形機120、包装機240、搬送機160および制御部180を有する。実施の形態2に係る製造装置200は、包装機240の構成が実施の形態1に係る製造装置100と異なる。そこで、実施の形態1に係る製造装置100と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
包装機240は、加熱部241、絞り部142、収容部143、封止部144および切断部145を有する。
【0054】
加熱部241は、ボトムフィルムBFの下側であって、絞り部142よりボトムフィルムBFの送り方向上流側に配置されている。すなわち、実施の形態2において加熱部241は、ボトムフィルムBFの送り方向に、絞り部142と並んで配置されている。
【0055】
(製造装置の動作)
実施の形態2の包装された製造装置200の動作は、加熱したボトムフィルムBFを絞り加工する際に、加熱部141から絞り部142へ移動させることを除いて、実施の形態1の製造装置100を同じである。実施の形態2の製造装置200でも、制御部180は、成形サイクルおよび包装サイクルのタイミングを調整し、射出成形機120による型開き工程から搬送機160による取出し工程と、包装機240による移動工程から搬送機160による搬送工程とを、部分的に同期させる。
【0056】
(効果)
以上のように、実施の形態2に係る製造装置200では、加熱部241および絞り部142がボトムフィルムBFの下側に配置されているため、ポケット148の内面となる部分の直上部には、射出成形品Pが搬送されてくるまで、余計な装置がない。これにより、ポケット148の内面となる部位の清浄性をさらに高めることができる。
【0057】
なお、本発明に係る製造装置では、成形機および包装機の構成は上記各実施の形態に係る例に限定されず、型締め工程、充填工程、保圧工程、型開き工程および取出し工程を含む成形工程を実施しうる既知の成形機、および既知の包装機を使用することができる。