【実施例1】
【0015】
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態が適用された光学部品3,4をホルダ2に事前にモジュール単位に組立をしたサブアセンブリ2を、前記光学部品を使用する装置の筺体1の該当部分へ組付け・接着固定した状態を示す斜視図である。
図2は、
図1の光学部品を保持したサブアセンブリ2を、前記光学部品を使用する装置の筺体1へ組付ける概略の組立手順を示す斜視図である。
図3(a),(b),(c)は、
図2の組立手順毎の断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の光学部品の固定構造は、主に、筐体1と、LD3とレンズ4が固定されたホルダ(サブアセンブリ)2と、それらをホルダ側光軸6の位置を調整して接着固定するUV硬化型接着剤5a、5bから構成される。ここで、筐体1は、光ディスクの記録、再生に用いられる光ピックアップ装置やレーザディスプレイに用いられるRGB3原色光源モジュール装置のレーザダイオードや受光素子等を接着固定する筐体の一部分を図示したもので、上記装置全体の構成を
図7、
図8に示す。
【0017】
図7は、本発明の第1の実施形態が適用された光ピックアップ装置701の構成部品と組立方法を説明する展開斜視図である。本実施形態の光ピックアップ装置701は、光ピックアップケース(筐体)702と、第1のLDモジュール703(
図1の光学部品3,4を保持したサブアセンブリ2に該当)と、第2のLDモジュール704(
図1の光学部品3,4を保持したサブアセンブリ2に該当)と、プリズム705と、反射ミラー706と、アクチュエータ707と、対物レンズ708と、レンズ709と、受光素子モジュール710と、を有する。
【0018】
上記構成の光ピックアップ装置701において、第1のLDモジュール703、第2のLDモジュール704からの出射光は、プリズム705で合成または反射され、反射ミラー706を介して、アクチュエータ707上に配置された対物レンズ708に導き、光ディスク711上でスポットを収束させる。光ディスク711からの反射光は、対物レンズ708及び反射ミラー706、プリズム705、レンズ709を介して受光素子710に結像される。
【0019】
以上の光学系を実現するために、光ピックアップケース702に対し、アクチュエータ707、反射ミラー706、プリズム705、レンズ709等の内部部品は組立方向714で実装され、その後、第1のLDモジュール703は組立方向715で、第2のLDモジュール704は組立方向716で、受光素子モジュール710は組立方向717で位置調整後、接着固定される。また、光ピックアップ装置701自身は、主軸712と副軸713により、回転している光ディスクの半径方向に移動し、光信号の読み書き可能な構成としている。
【0020】
図8は、本発明の第1の実施形態が適用されたRGB3原色光源モジュール装置801の構成部品と組立方法を説明する斜視図である。本実施形態のRGB3原色光源モジュール装置801は、RGBモジュールケース(筐体)802と、緑色のLDモジュール803(
図1の光学部品3,4を保持したサブアセンブリ2に該当)と、赤色のLDモジュール804(
図1の光学部品3,4を保持したサブアセンブリ2に該当)と、青色のLDモジュール805(
図1の光学部品3,4を保持したサブアセンブリ2に該当)と、第1の合成ミラー806と、第2の合成ミラー807と、2方向首振りミラー808と、を有する。
【0021】
上記構成のRGB3原色光源モジュール装置801において、LDモジュール803からの緑色出射光813、LDモジュール804からの赤色出射光814は、第1の合成ミラー806で合成され、その合成光とLDモジュール805からの青色出射光815とが第2の合成ミラー807で合成されたビームとなり、2方向首振りミラー808で、スクリーン809上に、3色RGB合成ビーム816を2次元走査して、画像を投射する。
以上の光学系を実現するために、RGBモジュールケース802に対し、緑色のLDモジュール803と、赤色のLDモジュール804と、青色のLDモジュール805と、第1の合成ミラー806と、第2の合成ミラー807と、2方向首振りミラー808が、位置調整後、接着固定される。
【0022】
これらの装置に使用される、
図1の光学部品の固定構造は、
図2に示すように、LD3とレンズ4が、ホルダ2に、ホルダ側光軸6の方向(Z軸−方向)にレーザ光が出射するようにサブ組立されている。次に、ホルダ連結部23が、筐体1の筐体中心U溝12に対して挿入されるように、ホルダY軸移動101でY軸−方向に降下される。更に、筐体基準面13に対し、ホルダ基準面25が接触するように、ホルダZ軸移動102でZ軸−方向に水平移動する。そして、ホルダ孔21a、21bから、接着剤塗布装置のニードル(図示無し)を挿入し、筐体貫通孔11a、11bを通して、UV硬化型接着剤5a、5bを塗布する。最後に、UV光源201a、201bを用いて、筐体貫通孔中心8a、8bに沿ってUV光を照射し、UV硬化型接着剤5a、5bを硬化固定する。
【0023】
更に、
図3を用いて光軸の調整方法と光学部品の固定構造を詳細に説明する。
図3は、
図1の光学部品の固定構造の斜視図において、ホルダ側光軸6を面内に含むA-A’切断面で切断して示した光学部品の固定構造を組立てる手順毎の断面図である。
【0024】
まず、
図3(a)で、レンズ付LDのサブアセンブリ2を説明する。ホルダ2は、ホルダ前プレート22とホルダ後プレート24とを円筒状のホルダ連結部23で連結した構造をしており、ホルダ連結部23には、LD3の発光部を挿入して、発光されたレーザビームを通すためのホルダ中心孔27が開けられている。
ホルダ2のホルダ中心孔27にLD3の発光部を挿入し、同時にレンズ4をホルダ前プレート22の前面に位置決めステージ等(図示無し)を用いて位置決め・調整可能とする。LD3の電極に電気接続(図示無し)して発光状態となったLD3をZ調芯104でZ軸+−方向に前後に調整して、レンズ4から出射されるビームが、平行ビーム、又は所望の焦点距離となるように決定して、LD3にUV硬化型接着剤31を塗布し、UV照射(図示無し)して硬化固定する。その後、レンズ4をXY調芯103でX軸Y軸の+−方向に調芯・位置決めして、レンズ4から出射されるビームがホルダ基準面25に対して垂直となるホルダ側光軸6と一致するようにビーム角度を調整する。そして、レンズ4にUV硬化型接着剤41を塗布し、UV照射(図示無し)して硬化固定し、LD3とレンズ4が接着されたホルダ2のサブアセンブリが完了する。ちなみに、ここでは、ホルダ2にLDとレンズが接着された構成を明示したが、ホルダに受光素子とレンズを接着させた構成でも同様に適用できる。
【0025】
次に、
図3(b)で、レンズ付LDのサブアセンブリ2の筐体1への組立を説明する。
図3(b)は、
図2でホルダ連結部23が筐体1の筐体中心U溝12に対して、ホルダY軸移動101で垂直に降下挿入された状態の断面図である。まず、ホルダ孔21a、21bが、筐体貫通孔11a、11bにそれぞれ対向するように配置する。次に、ホルダ前プレート22のホルダ前プレート面26と筐体1の筐体外面15が接触しないように、また、筐体1の筐体基準面13と、ホルダ後プレート24のホルダ基準面25が接触しないようにして、筐体1の筐体側光軸7に対し、組立られたホルダ2のサブアセンブリをXY調芯105でX軸Y軸の+−方向に調芯・位置決めして、レンズ4から出射されるビーム位置を調整する。ここで、筐体側光軸7とは、筐体上で光学部品を搭載すべき理想的な光軸のことである。これは、筐体だけを見ても筐体側光軸7は決められず、実際にLDを光らせて筐体上に仮位置決めして、その他の光学部品も筐体上に仮位置決めして、光の入出力関係が成り立つように位置決めを調整して決定された光軸のことである。
【0026】
最後に、
図3(b),(c)で、接着剤の塗布、硬化を説明する。まず、筐体基準面13に対し、ホルダ基準面25が接触するように、ホルダZ軸移動102でZ軸−方向に移動する。筐体の筐体貫通孔11a、11bが開けられている面(筐体内面14)は、筐体基準面13より段差を設けてZ軸−方向に掘り下げて形成されていて、筐体基準面13へホルダ基準面25を接触させた際に、筐体貫通孔11a、11bとホルダ孔21a、21bとの間には、
図4(a)に示すように厚さがt2の隙間が形成されるようになっている。
【0027】
そして、ホルダ後プレート24に設けられたホルダ孔21a、21bから、筐体1に設けられた筐体貫通孔11a、11bを通して、ホルダ前プレート22のホルダ前プレート面26付近まで、接着剤塗布装置のニードル(図示無し)の先端をZ軸−方向に挿入する。そして、ニードルをZ軸+方向に引抜きながら、UV硬化型接着剤5a、5bを塗布し、ホルダ後プレート24に設けられたホルダ孔21a、21bの半分程度まで塗布した時点で、塗布を完了する。
【0028】
接着剤塗布装置のニードル先端から塗布されたUV硬化型接着剤5a、5bは、最初にホルダ前プレート22のホルダ前プレート面26に当ることになる。また、ホルダ前プレート面26と筐体1の筐体外面との間には隙間を形成している。しかし、UV硬化型接着剤は粘性があり、液体状というよりゲル状に近いため、ニードルをZ軸+方向に引抜きながらUV硬化型接着剤5a、5bを塗布する速度を適切に調整することにより、前記隙間へ漏れ出る接着剤の量はほとんど無く、前記ホルダ前プレート面26に接着した円柱状のUV硬化型接着剤5a、5bが形成される。
最後に、UV光源201a、201bを用いて、筐体貫通孔中心8a、8bに沿ってUV光を照射し、UV硬化型接着剤5a、5bを硬化固定する。
【0029】
ここで、UV硬化時、筐体1とホルダ2の関係を説明する。一般にUV硬化型接着剤は液体から固体へUV硬化する際に、%オーダで体積が収縮する。ホルダ後プレート24に設けられたホルダ孔21a、21b内に充填されたUV硬化型接着剤5a、5bは、UV光源201a、201bに近い、開放端Cから先にUV硬化を始め、筐体貫通孔中心8a、8bに沿って、筐体貫通孔11a、11b内がUV硬化し、ホルダ前プレート22のホルダ前プレート面26上の固定端B側が最後にUV硬化する。このため、開放端C側からUV硬化収縮により、UV硬化収縮力51が発生し、筐体1はホルダ後プレート24側へ筐体押付力52が作用し、筐体基準面13とホルダ基準面25が接触面Dで密着する。以上より、組立時に、UV硬化型接着剤5a、5bのUV硬化収縮を利用して、筐体1とホルダ2を密着して組み立てることができ、組立初期には、サブミクロンオーダの位置ずれを防止できる効果がある。
【0030】
次に、本実施形態の光学部品の固定構造が、温度サイクルのある使用環境においてもサブミクロンオーダの位置ずれを防止できる効果があると想定される理由を、信頼性試験時を想定して、筐体1とホルダ2の関係を
図4を用いて説明する。一般に接着剤は熱膨張係数が金属やガラス等の部品に比べて大きく、これにより部品の位置ずれが発生しやすいため、接着剤自身の熱膨張収縮が繰り返し発生する、温度サイクル試験での状況を想定する。
【0031】
まず、
図4(a)は、例えば70℃から90℃程度の高温の状態を示す。高温時には、UV硬化型接着剤5a、5b全体が体積膨張するが、Z軸−方向には、ホルダ前プレート面26上の固定端Bで拘束され、更に筐体貫通孔11a、11b及びホルダ孔21a、21bでも拘束されるため、Z軸+方向に膨張する。更に一般に接着剤は高温で軟化し、弾性率(ヤング率)は低下するため、固定端B側から膨張し、開放端C側の軟化した接着剤表面もZ軸+方向へ変形する。このため、固定端B側から開放端C側に向けて、接着剤自身は体積膨張し膨張力53を発生し、Z軸+方向に筐体押付力54が発生する。この結果、
図3(c)の組立時から引き続いて、筐体1はホルダ後プレート24側へ筐体押付力52が作用し、筐体基準面13とホルダ基準面25が接触面Dで密着する。ここで、筐体1の筐体貫通孔11a、11bを挟んで、Z軸−方向でホルダ前プレート面26上の固定端Bと筐体外面15で挟まれる接着剤長さをt1とし、Z軸+方向で筐体内面14とホルダ後プレート24のホルダ基準面25とで挟まれる接着剤長さをt2とする。例えば、t1=0.8mm、t2=0.5mmを想定する。
(数1) t2<t1
が成立する場合、Z軸+方向に確実に密着させることができるので、この関係の配置とすることがより望ましい。
【0032】
一方、
図4(b)は、例えば−40℃から−20℃程度の低温の状態を示す。低温時には、UV硬化型接着剤5a、5b全体が体積収縮する。ここで、筐体1の筐体貫通孔11a、11bを挟んで、Z軸−方向でホルダ前プレート面26上の固定端Bと筐体外面15で挟まれる接着剤長さをt1とし、Z軸+方向で筐体内面14とホルダ後プレート24のホルダ孔21a、21b内の開放端Cとで挟まれる接着剤長さをt2+t3とする。
(数2) t1<t2+t3
が成立する場合、t1で発生するB側収縮力55より、t2+t3で発生するC側収縮力56が大きくなり、Z軸+方向に筐体押付力57が発生する。この結果、
図3(c)の組立時から引き続いて、筐体1はホルダ後プレート24側へ筐体押付力52が作用し、筐体基準面13とホルダ基準面25が接触面Dで密着する。
【0033】
以上より、高温及び低温時に、UV硬化型接着剤5a、5bの熱膨張収縮を利用して、筐体1とホルダ2の密着を維持することができ、前述の組立初期に加えて、温度サイクル試験でも、サブミクロンオーダの位置ずれを防止できる効果がある。また、60℃90%等の高温高湿試験では、一般に接着剤は吸湿して膨潤するので、上記高温時の挙動と同等の効果が期待できる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態を
図6(a)の展開斜視図、
図6(b)の断面図を用いて説明する。本実施形態の筐体301と、ホルダ302の接合部の関係は、第1の実施形態の
図2の展開斜視図、
図3(c)の断面図と比較すると明らかなように、ホルダ前プレート22とホルダ後プレート24に相当する筐体301の筐体前プレート322と筐体後プレート324を構成し、筐体1の筐体貫通孔11a、11bが形成された接合部14に相当するホルダ302の接合プレート312を構成している。筺体側の接合部とホルダ側の接合部とを、柱状に塗布して硬化させた接着剤によって接着固定する原理は、実施形態1と同じである。
【0037】
まず、
図2同様に、LD3とレンズ4付のホルダ302のサブアセンブリ2が先に組立られている。本実施形態のホルダ302は、LD3とレンズ4の光軸を調芯して接着固定するための円筒形のホルダ本体302と、筐体301との接合部を構成するフランジ状の接合プレート312が形成されている。接合プレート312には、ホルダ貫通孔311a、311bが開けられている。
【0038】
前記ホルダ302のサブアセンブリ2を、筐体前プレート322と筐体後プレート324に形成された筐体中心U溝323に挿入(ホルダY軸移動106)して、ホルダ貫通孔311a、311bが、筐体後プレート324に形成された筐体孔321a、321bにそれぞれ対向するように配置する。続いて、筐体301の筐体側光軸7に対し、組立られたホルダ302のサブアセンブリ2をXY調芯して位置決めして、レンズ4から出射されるビーム位置を調整する。
【0039】
次に、筐体基準面325に対し、ホルダ基準面313が接触するように、ホルダ302のサブアセンブリ2をZ軸+方向に移動107する。そして、筐体後プレート324に設けられた筐体孔321a、321bから、ホルダ302の接合プレート312に設けられたホルダ貫通孔311a、311bを通して、筐体前プレート322の筐体前プレート面326付近まで、接着剤塗布装置のニードル(図示無し)の先端をZ軸−方向に挿入する。そして、ニードルをZ軸+方向に引抜きながら、UV硬化型接着剤5a、5bを塗布し、筐体後プレート324に設けられた筐体孔321a、321b内の奥行き方向の半分程度まで塗布した時点で、塗布を完了する。最後に、UV光源201a、201bを用いて、筐体貫通孔中心308a、308bに沿ってUV光を照射し、UV硬化型接着剤5a、5bを硬化固定する。
【0040】
UV硬化型接着剤5a、5bを塗布するために、接着剤塗布装置のニードルを挿入する開放端C側の孔を、前述の
図1から
図5ではホルダ側に設けたが、同様に
図6(b)では筐体側に筐体孔321a、321bを設けて開放端Cを構成することができる。従って、
図6(b)の構成でも、
図3(c)と同様に、組立時に、UV硬化型接着剤5a、5bのUV硬化収縮を利用して、筐体301とホルダ302を密着して組み立てることができる。また、
図4(a),(b)と同様に、高温及び低温時に、UV硬化型接着剤5a、5bの熱膨張収縮を利用して、筐体301とホルダ302の密着を維持することができ、実施形態1の構成と同様に、組立初期と温度サイクル試験でも、サブミクロンオーダの位置ずれを防止できる効果がある。また、組立時及び信頼性試験(温度サイクル)を通して常に筐体と部品が特定の面で接触するようにしているため、位置ずれ防止に加え、放熱性も向上した光学部品の固定構造を提供できる。更に、筐体と部品以外には接着剤だけを用いているので、バネ等による押付部品が不要となり、部品点数を減らし、材料費、組立費用等を低減する効果もある。
【0041】
以上、説明した本発明の実施形態1〜3において、光学部品はLD(レーザダイオード)の例で説明したが、同様の構成にて、受光素子等の他の光学部品にも適用が可能である。
また、筐体、ホルダの材質としては、Zn,Mg,Alなどの金属のダイキャスト品が主に考えられるが、受光素子のように放熱性をそれ程必要としない場合には、樹脂製とすることも考えられる。
【0042】
また、UV硬化型接着剤は、アクリル系接着剤でも、エポキシ系接着剤でも同様に効果を得ることができる。