(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法により製造された合成ポリイソプレンであって、シス−1,4結合量が95%以上である、ことを特徴とする合成ポリイソプレン。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(合成ポリイソプレン)
本発明に係る重合触媒組成物を用いて製造される重合体は、合成ポリイソプレンである。
【0010】
−シス−1,4結合量−
前記合成ポリイソプレンのシス−1,4結合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。
前記シス−1,4結合量が、95%以上であると、ポリマー鎖の配向が良好となり、伸長結晶性の生成が十分となり、更に、98%以上であると、より高い耐久性を得るのに十分な伸長結晶性を生成できる。
【0011】
−トランス−1,4結合量−
前記合成ポリイソプレンのトランス−1,4結合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%未満が好ましく、3%未満がより好ましく、2%未満が特に好ましい。
前記トランス−1,4結合量を5%未満とすると、伸長結晶性が阻害を受けにくくなる。
【0012】
−3,4−ビニル結合量−
−3,4−ビニル結合量−
前記合成ポリイソプレンの3,4−ビニル結合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。
前記3,4−ビニル結合量を5%以下とすると、伸長結晶性が阻害を受けにくくなる。
【0013】
−重量平均分子量(Mw)−
前記ポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)は、100万以上が好ましく、更に150万以上が好ましい。
−数平均分子量(Mn)−
前記ポリイソプレンの数平均分子量(Mn)は、40万以上が好ましく、更に50万以上が好ましい。
【0014】
−触媒残渣量−
前記ポリイソプレンの触媒残渣量は、600ppm以下が好ましく、200ppm以下が更に好ましい。触媒残渣量を、600ppm以下にすることで、高シビリティ条件下の耐久性がより良好となる。なお、ここでいう触媒残渣量とは、具体的にはポリイソプレン中に残存する希土類元素化合物の測定値をいうものとする。
【0015】
(合成ポリイソプレンの製造方法)
次に、前記合成ポリイソプレンを製造することができる、本発明に係る合成ポリイソプレンの製造方法を詳細に説明する。但し、以下に詳述する製造方法は、あくまで例示に過ぎない。
【0016】
前記合成ポリイソプレンの製造方法は、少なくとも、重合工程を含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を含む。
【0017】
−重合工程−
本発明における重合工程は、イソプレンモノマーを重合する工程である。
前記重合工程においては、本発明の重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、単量体であるイソプレンを重合させることができる。本発明において、使用される重合触媒組成物については、後に詳述する。
【0018】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、ノルマルヘキサン、トルエン、シクロヘキサンまたそれらの混合物等が挙げられるが、特に環境への負荷、コスト等の観点から、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またはこれらの混合物を好適に使用できる。さらに、沸点がトルエンより低い、毒性が低い等の利点を有することから、シクロヘキサンの使用が好ましい。
【0019】
前記重合工程は、重合触媒組成物を使用する場合、例えば、(1)単量体としてイソプレンを含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。
【0020】
また、前記重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0021】
前記重合工程において、イソプレンの重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、イソプレンを十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒〜10日の範囲が好ましいが、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0022】
−−重合触媒組成物−−
次に、本発明の重合触媒組成物について説明する。
本発明の重合触媒組成物の触媒活性は、30kg/mol・h以上が好ましく、1000kg/mol・h以上が更に好ましい。触媒活性を30kg/mol・h以上にすることで、より効率よくポリイソプレンを合成することが可能となる。なお、ここでいう触媒活性の数値は、触媒単位モル、及び単位時間あたりにポリイソプレンを製造する能力を示すものとする。
前記重合触媒組成物は、少なくとも
(A)成分:下記一般式(i)で表される希土類元素化合物
M−(NQ
1)(NQ
2)(NQ
3) ・・・(i)
(式中、Mはランタノイド、スカンジウム、イットリウムから選択される少なくとも一種であり、NQ
1、NQ
2及びNQ
3はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M−N結合を有する)と、
(B)成分:炭素数1から20の炭化水素基を有するヒドロカルビルアルミノキサン化合物と、
(C)成分:下記一般式(X):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ互いに同一または異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される化合物とを含む。
上記(A)成分は、希土類元素化合物ルイス塩基との反応物であって、希土類元素と炭素との結合を有さないものも含む。
上記重合触媒組成物は、さらに、アニオン性配位子となり得る化合物((D)成分)を含んでいてもよい。
【0023】
上記式(i)において、NQが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオベンチルフェニルアミド基、2-tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基などのビストリアルキルシリルアミド基のいずれでもよいが、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0024】
なお、重合反応系において、重合触媒組成物に含まれる(A)成分のモル量は、後に添加されるイソプレンモノマーの1/5000以下、特に1/10000以下であることが好ましい。具体的な濃度としては、0.1〜0.0001mol/lの範囲であることが好ましい。モル比率をこのように規定することで、シス−1,4結合量が向上する他、触媒の活性が向上するため、合成ポリイソプレン中の触媒残渣量を大きく低減させることができる。これにより、該ポリイソプレンをゴム組成物に配合することで、その耐久性をより向上させることが可能である。
【0025】
上記重合触媒組成物に用いる(A)成分は、希土類元素化合物または該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であり、ここで、希土類元素化合物及び該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、希土類元素と炭素との結合を有さないことが好ましい。該希土類元素化合物及び反応物が希土類元素−炭素結合を有さない場合、化合物が安定であり、取り扱いやすい。ここで、「希土類元素化合物」とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素またはスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。
なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(A)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記重合触媒組成物に用いる(A)成分において、上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。
【0027】
上記重合触媒組成物に用いる(B)成分は、炭素数1から20の炭化水素基を有するヒドロカルビルアルミノキサン化合物である。
【0028】
上記ヒドロカルビルアルミノキサン化合物は、アルキルアルミノキサンであることが好ましく、アルキルアルミノキサンの例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサンなどが挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンの好適例としては、P−MAOおよびMMAO−3A(東ソー・ファインケム社製)などが挙げられる。
なお、上記重合触媒組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分に対して10倍モル以上
である。
【0029】
上記重合触媒組成物に用いる(C)成分は、下記一般式(X):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は、同一または異なり、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
3は上記R
1またはR
2と同一または異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物であり、下記一般式(Xa):
AlR
1R
2R
3 ・・・ (Xa)
(式中、R
1及びR
2は、同一または異なり、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
3は上記R
1またはR
2と同一または異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。一般式(Xa)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(C)成分としての有機アルミニウム化合物は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記重合触媒組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分に対して10倍モル以上であることが好ましく、特に20〜1000倍モルであることが更に好ましい。また、(C)成分の含有量は、後に添加するイソプレンモノマーのモル量の1/5000以上、特に1/3000〜1/10とすることが好ましい。モル比率をこのように規定することで、シス−1,4結合量が向上する他、触媒の活性が向上するため、合成ポリイソプレン中の触媒残渣量を大きく低減させることができる。これにより、該ポリイソプレンをゴム組成物に配合することで、その耐久性をより向上させることが可能である。
【0030】
−−アニオン性配位子となり得る化合物−−
前記アニオン性配位子となり得る化合物((D)成分)は、(A)成分のアミド基と交換可能なものであれば特に限定されないが、OH基、NH基、SH基のいずれか少なくとも一つを有することが好ましい。
【0031】
具体的な化合物として、OH基を有するものとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール等が挙げられる。具体的にはジブチルヒドロキシトルエン、アルキル化フェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチリルチオプロピオネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、ヒンダードフェノール系のものとして、さらに、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォソフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等を挙げることができる。
また、ヒドラジン系として、さらに、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等を挙げることができる。
【0032】
NH基を有するものとしては、アルキルアミン、アリールアミン等の第1級アミンあるいは第2級アミンを挙げることができる。具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ビス(2−ジフェニルフォスフィノフェニル)アミン等が挙げられる。
【0033】
SH基を有するものとしては、脂肪族チオール、芳香族チオール等のほか、下記一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して−O−C
jH
2j+1、−(O−C
kH
2k−)
a −O−C
mH
2m+1又は−C
nH
2n+1 で表され、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つが−(O−C
kH
2k−)
a −O−C
mH
2m+1であり、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12であり、R
4は炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
一般式(I)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【化2】
(式中、Wは−NR
8−、−O−又は−CR
9R
10−(ここで、R
8及びR
9は−C
pH
2p+1であり、R
10は−C
qH
2q+1であり、p及びqはそれぞれ独立して0〜20である。)で表され、R
5及びR
6はそれぞれ独立して−M−C
rH
2r−(ここで、Mは−O−又は−CH
2−であり、rは1〜20である。)で表され、R
7は−O−C
jH
2j+1、−(O−C
kH
2k−)
a −O−C
mH
2m+1又は−C
nH
2n+1 で表され、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12であり、R
4は炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
一般式(II)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−メチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ブチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ドデシルアザ−2−シラシクロオクタンなどが挙げられる。
【0034】
(D)成分としては、好適には下記一般式(ii)で表されるアニオン性三座配位子前駆体を使用できる。
E
1−T
1−X−T
2−E
2 ・・・(ii)
(Xは、周期律表中の第15族原子から選択される配位原子を含むアニオン性電子供与基を示し、E
1及びE
2はそれぞれ独立して、第15族及び16族原子から選択される配位原子を含む中性電子供与基を示し、T
1及びT
2はそれぞれ独立して、XとE
1及び~E
2を架橋する架橋基を示す)
【0035】
(D)成分は、前記希土類元素化合物((A)成分)1molに対して、0.01〜10mol、特に0.1〜1.2mol添加するのが好ましい。添加量が0.1mol以上であれば、触媒活性が十分高くなり、効率よくポリイソプレンを合成することが可能となる。添加量を希土類元素化合物と当量(1.0mol)とすることが好ましいが、過剰量添加されていてもよい。しかし、また、添加量が1.2mol超とすると、試薬のロスが大きいため、好ましくない。
【0036】
上記一般式(ii)中、中性の電子供与基E
1及びE
2は、第15族及び第16族から選択される配位原子を含む基である。また、E
1及び~E
2は同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。該配位原子としては、窒素N、リンP、酸素O、硫黄Sなどが例示されるが、好ましくはPである。
【0037】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がPである場合には、中性の電子供与基E
1またはE
2としては、1)ジフェニルホスフィノ基やジトリルホスフィノ基などのジアリールホスフィノ基、2)ジメチルホスフィノ基やジエチルホスフィノ基などのジアルキルホスフィノ基、3)メチルフェニルホスフィノ基などのアルキルアリールホスフィノ基が例示され、より好ましくはジアリールホスフィノ基が例示される。
【0038】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がNである場合には、中性の電子供与基E
1またはE
2としては、1)ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基やビス(トリメチルシリル)アミノ基などのジアルキルアミノ基、2)ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基、3)メチルフェニル基などのアルキルアリールアミノ基などが例示される。
【0039】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がOである場合には、中性の電子供与基E
1またはE
2としては、1)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、2)フェノキシ基、2,6− ジメチルフェノキシ基などのアリールオキシ基などが例示される。
【0040】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がSである場合には、中性の電子供与基E
1またはE
2としては、1)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのアルキルチオ基、2)フェニルチオ基、トリルチオ基などのアリールチオ基などが例示される。
【0041】
アニオン性の電子供与基Xは、第15族から選択される配位原子を含む基である。該配位原子として好ましくはリンPまたは窒素Nが挙げられ、より好ましくはNが挙げられる。
【0042】
架橋基T
1及びT
2は、XとE
1及びE
2を架橋することができる基であればよく、アリール環上に置換基を有していてもよいアリーレン基が例示される。また、T
1及びT
2は同一の基でも異なる基であってもよい。
前記アリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、チエニレン基(好ましくはフェニレン基、ナフチレン基)などであり得る。また、前記アリーレン基のアリール環上には任意の基が置換されていてもよい。該置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲン基、トリメチルシリル基などのシリル基などが例示される。
前記アリーレン基として、さらに好ましくは1,2−フェニレン基が例示される。
【0043】
一般式(ii)で示されるアニオン性三座配位子前駆体としては、例えば下記一般式(iii)に示されるものが好ましく例示される。これらは、例えば、下記の実施例に記載の方法、またはOrganometallics, 23, p.4778-4787(2004)などを参考にして製造され得る。
【化3】
(上記式において、Rはアルキル基またはアリール基、Yは水素、アルキル基、ハロゲノ基、シリル基などを示す。)
より具体的には、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)アミン等のPNP配位子が挙げられる。
【0044】
(ゴム組成物)
本発明の合成ポリイソプレンは、ゴム組成物に使用することができる。ゴム組成物は、少なくとも本発明の製造方法で製造された合成ポリイソプレンを含み、さらに必要に応じて、その他ゴム成分を含み、さらに必要に応じて、カーボンブラックやシリカ、無機充填剤等の充填剤、架橋剤、その他の成分を含む。
【0045】
前記ゴム成分中における前記合成ポリイソプレンの配合量(含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15質量%〜100質量%が好ましい。
前記ゴム成分中における前記合成ポリイソプレンの配合量が、15質量%以上であると、前記合成ポリイソプレンの効果を十分に発揮することができる。
【0046】
(用途)
上記ゴム組成物、または上記架橋ゴム組成物は、タイヤに使用することができる。タイヤの中でも、前記適用部位をトレッドとすることが、耐久性の点で有利である。タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホースなどに使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1:合成ポリイソプレンAの製造方法)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム(Gd[N(SiMe
3)
2]
3)7.9μmol((A)成分)、トリイソブチルアルミニウム1.19mmol((C)成分)、トルエン5.0gを仕込んだ。30分間熟成した後、メチルアルミノキサン(P−MAO:東ソーファインケム社製)をAl換算で790μmol((B)成分)加え15分間熟成させた。その後、グローブボックスから反応器を取り出し、シクロヘキサン235.0g、イソプレン70gを添加し、25℃で15時間重合反応を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、70℃で真空乾燥し合成ポリイソプレンAを得た。得られた合成ポリイソプレンAの収量は60gであった。
【0049】
(実施例2:合成ポリイソプレンBの製造方法)
実施例1において、重合を50℃で2時間行うこと以外は同様の方法で行ったところ、合成ポリイソプレンBが収量65gで得られた。
【0050】
(比較例1:合成ポリイソプレンXの製造方法)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した100ml耐圧ガラスボトルに、ジメチルアルミニウム(μ−ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウム[(Cp*)2Gd(μ−Me)
2AlMe
2]を0.05mmol仕込みトルエン34.0mlで溶解させた。次いでトリイソブチルアルミニウム1.5mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル) ボレート(Ph
3CB(C
6F
5)
4)0.05mmolを添加しボトルを打栓した。室温で1時間反応後、グローブボックスからボトルを取り出し、イソプレンを1.0ml仕込み、−40℃で15時間重合を行った。重合後、2,6−ビス(t−ブチル)−4−メチルフェノールの10wt%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。得られた重合体Xの収率は100%であった。
【0051】
(比較例2:合成ポリイソプレンYの製造方法)
グローブボックス中で、フラスコ(100mL))に磁気撹拌子を入れ、イソプレン(2.04g、30.0mmol)、[Y(Ch
2C
6H
4NMe
2−o)
2(PNP)](12.5μmol)のクロロベンゼン溶液(16mL)を加えた後、高速撹拌下、[PhMe
2NH][B(C
6F
5)
4](12.5μmol)のクロロベンゼン溶液(4mL)を加えた。室温で5分間撹拌し、反応させた後、メタノールを加えることにより重合を終了させた。反応溶液を少量の塩酸およびブチルヒドロキシトルエン(安定剤)を含むメタノール溶液200mLに注いだ。デカンテーションにより沈殿したポリマー生成物を単離し、メタノールで、洗浄し、60℃にて乾燥させ、重合体Yを得た(収率100%)。
【0052】
(比較例3:合成ポリイソプレンZの製造方法)
特許文献3に記載のテストCと同一の条件で重合反応を行い、重合体Zを得た。
【0053】
(1)ミクロ構造(シス−1,4結合量)
合成ポリイソプレンA,B及びX〜Zについて、
1H−NMRおよび
13C−NMRにより得られたピーク[
1H−NMR:δ4.6−4.8(3,4−ビニルユニットの=CH
2)、5.0−5.2(1,4−ユニットの−CH=)、
13C−NMR:[δ23.4(1,4−シスユニット)、15.9(1,4−トランスユニット)、18.6(3,4−ユニット)]の積分比からそれぞれ算出した。
【0054】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)
合成ポリイソプレンA,B及びX〜Zについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8220GPC、カラム:東ソー製GMH
XL−2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、合成ポリイソプレンのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃とした。溶出溶媒としてTHFを用いた。
【0055】
(3)ポリマー中の希土類元素量(ppm)
合成ポリイソプレンA,B及びX〜Zについて、波長分散型蛍光X線装置[XRF−1700:島津製作所製]で含有希土類元素量が既知のポリイソプレンを基準として、合成ポリイソプレンの希土類元素量(ppm)を求めた。なお、X線源にはRhを用い、真空下にて測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する重合触媒組成物を用いて、(イソプレンモノマー)/((A)成分)が5000以上、((C)成分)/((A)成分)が10以上、(イソプレンモノマー)/((C)成分)が5000以下となるようにイソプレンモノマーを重合させたところ、高分子量、高シス−1,4結合量のポリブタジエンが得られた。