(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡性スチレン系樹脂粒子は、該発泡性スチレン系樹脂粒子を80℃に加熱された発泡槽内に入れ、0.07MPaの蒸気によって加熱して発泡槽内の温度を90℃に上げ、90℃に達してから1分間経過後に発泡粒子を得た場合、前記発泡粒子に50〜65倍の嵩倍数を与える粒子である請求項1又は2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発泡性スチレン系樹脂粒子)
発泡性スチレン系樹脂粒子(以下、発泡性粒子)は、スチレン系樹脂成分、アクリル酸エステル由来の樹脂成分と発泡剤とを含んでいる。また、発泡性粒子は、
(a)200〜500μmの平均粒子径を有し、
(b)前記吸光度比(A)が前記吸光度比(B)より大きく、
(c)吸光度比(A)が0.15〜0.5の範囲である
粒子である。
上記吸光度比(A)は、発泡性粒子の表層の吸光度D1730と吸光度D1600の比(D1730/D1600)である。一方、上記吸光度比(B)は、発泡性粒子の中心部の吸光度D1730と吸光度D1600の比(D1730/D1600)である。吸光度D1730と吸光度D1600は、顕微透過イメージング法により測定された表層と中心部のそれぞれの赤外線吸収スペクトルから得られた、吸収波長1730cm
-1と1600cm
-1時の値を意味する。
【0012】
(1)構成成分
(a)スチレン系樹脂成分
スチレン系樹脂成分としては、特に限定されず、公知のスチレン系モノマー由来の樹脂成分をいずれも使用できる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等に由来する樹脂成分が挙げられる。これらスチレン系樹脂成分は、一種類でも、複数種の混合物であってもよい。好ましいスチレン系樹脂成分は、スチレンのホモポリマーである。
(b)アクリル酸エステル由来の樹脂成分
アクリル酸エステル由来の樹脂成分は、特に限定されないが、スチレン系モノマーと共重合可能なモノマーに由来する樹脂成分が好ましい。アクリル酸エステルは、炭素数3〜20のエステルであることが好ましい。この範囲の炭素数のモノマーを使用することで、より発泡性の向上した発泡性粒子を提供できる。
【0013】
具体的なアクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル等が挙げられる。炭素数3以上のアルキル基は、直鎖状のアルキル基以外に、イソ構造、sec構造やtert構造のような構造異性のアルキル基も含む。
【0014】
(c)スチレン系樹脂成分とアクリル酸エステル由来の樹脂成分の割合
スチレン系樹脂成分とアクリル酸エステル由来の樹脂成分の割合は、1:0.005〜0.031(質量比)の範囲であることが好ましい。
アクリル酸エステル由来の樹脂成分が0.005より少ない場合、発泡性を十分向上できないことがある。0.031より多い場合、蒸気による加熱によって樹脂が軟化してしまい収縮・合着が発生してしまい高倍の発泡粒子を得難いことがある。より好ましい割合は、1:0.005〜0.021の範囲であり、更に好ましい割合は、1:0.01〜0.016の範囲である。
なお、スチレン系樹脂成分とアクリル酸エステル由来の樹脂成分の割合は、原料としてのモノマーの割合と実質的に一致している。
【0015】
(d)その他の樹脂成分
発泡性粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、全樹脂成分100質量部に対して5質量部以下)で、スチレン系樹脂及びアクリル酸エステル由来の樹脂成分に加えて、他の樹脂成分を含んでいてもよい。
他の樹脂成分としては、多官能ビニル系モノマー由来の樹脂成分、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル等の樹脂成分が挙げられる。
多官能性ビニル系モノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等の3官能モノマーが挙げられる。
【0016】
(e)添加剤
物性を損なわない範囲内において、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤としては、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等が挙げられる。
【0017】
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
【0018】
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0019】
(2)平均粒子径
発泡性粒子は、200〜500μmの平均粒子径を有している。この範囲であれば、十分な発泡性を確保しつつ、意匠性の良好な軽量コンクリートを得ることができる発泡粒子を提供できる。平均粒子径が200μm未満の場合、十分な発泡性を得難いことがある。500μmより大きい場合、十分な意匠性が得難いことがある。好ましい平均粒子径は、250〜400μmであり、より好ましい平均粒子径は、330〜380μmである。更に、十分な発泡性と良好な意匠性の確保のために、200μm未満及び500μmより大きい発泡性粒子はあらかじめ除去しておくことが好ましい。
なお、発泡性粒子の形状が、球状でない場合、平均粒子径は最大径の平均値を意味する。
【0020】
(3)吸光度比(A)及び(B)
ここでの吸光度比は、赤外吸収スペクトル法によって測定された赤外線吸収スペクトルから得られる。
吸光度比は、測定された赤外吸収スペクトル中、1600cm
-1での吸光度D1600に対する1730cm
-1での吸光度D1730の比D1730/D1600である。ここで、1730cm
-1の吸収はアクリル酸エステルに由来する樹脂に含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来するピークを示している。1600cm
-1の吸収はスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来するピークの存在を示している。
なお、吸光度D1600及び吸光度D1730は、測定対象にその表面から入射した波長1600cm
-1と1730cm
-1の光が測定対象を透過して測定機器へ到達する際に、光が吸収される度合い(量)を意味する。
【0021】
表層の吸光度比(A)は、中心部の吸光度比(B)より大きい値である。このことは、アクリル酸エステルに由来する樹脂成分が、中心部より表層に多く含まれることを意味している。ここで、吸光度比(A)における表層とは粒子最表層から粒子半径の約20%以内の領域を意味する。また、吸光度比(B)における中心部とは粒子中心から粒子半径の約15%以内の領域を意味する。
吸光度比は、発泡性粒子の表面から中心部に向かって低下する傾向を示していることが好ましい。低下の傾向としては、例えば、表面から中心部に向かって直線的に低下する傾向でもよく、表面に近い領域又は中心部に近い領域で大きく低下しその後ほぼ一定値となる傾向でもよい。
【0022】
表層の吸光度比(A)は、0.15〜0.5の範囲であることが好ましい。吸光度比(A)が0.15未満の場合、十分な発泡速度を得難くなることがある。吸光度比が0.5より大きい場合、表層の樹脂が軟化し過ぎてしまい高倍の発泡粒子を得難くなることがある。より好ましい吸光度比(A)は0.2〜0.4の範囲であり、更に好ましい吸光度比(A)は0.25〜0.35の範囲である。
中心部の吸光度比(B)は、0.05〜0.4の範囲であることが好ましい。吸光度比(B)が0.05未満の場合、十分な発泡速度を得難くなることがある。吸光度比(B)が0.4より大きい場合、高倍の発泡粒子を得難くなることがある。より好ましい吸光度比(B)は0.08〜0.3の範囲であり、更に好ましい吸光度比(B)は0.1〜0.2の範囲である。
吸光度比(A)と(B)との差は、0.05〜0.3の範囲であることが好ましい。差が0.3より大きい場合、発泡時の気泡径にバラツキが生じ、発泡粒外観が悪くなることがある。より好ましい差は0.05〜0.2の範囲であり、更に好ましい差は0.05〜0.1の範囲である。
【0023】
(4)発泡性粒子の発泡速度
発泡性粒子は、その発泡性粒子を80℃に加熱された発泡槽内に入れ、0.07MPaの蒸気によって加熱して発泡槽内の温度を90℃に上げ、90℃に達してから1分間経過後に発泡粒子を得た場合、その発泡粒子に65〜50倍の範囲の嵩倍数を与える粒子であることが好ましい。
【0024】
(発泡性粒子の製造方法)
発泡性粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、スチレン系樹脂からなる種粒子に、アクリル酸エステルを少なくとも含むモノマー混合物を吸収させ重合させることで、樹脂粒子を得、重合と同時又は重合後に、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。モノマー混合物には、通常、スチレン系モノマーが含まれる。
(a)種粒子
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(i)スチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(ii)水性媒体、スチレン系モノマー、又は一部ポリスチレン系樹脂を溶解させたスチレン系モノマー、及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(iii)水性媒体及びスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、スチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを連続的にあるいは断続的に供給して、スチレン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
【0025】
種粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の平均粒子径に応じて適宜調整できる。例えば平均粒子径が350μmの樹脂粒子を得ようとする場合には、平均粒子径が330〜340μm程度の種粒子を用いることが好ましい。更に、種粒子の重量平均分子量は特に限定されないが10万〜50万が好ましく、更に好ましくは15万〜40万である。
【0026】
(b)含浸工程
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、モノマー混合物を供給することで、モノマー混合物を種粒子に吸収させる。モノマー混合物中のアクリル酸エステルは、種粒子100質量部に対して、0.5〜3.4質量部の範囲で使用されることが好ましい。また、アクリル酸エステルは、モノマー混合物中に5.0〜30.0質量%含まれていることが好ましい。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0027】
モノマー混合物には、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来からモノマーの重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存モノマーを低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
水性媒体中には、モノマーの小滴及び種粒子の分散を安定させるために懸濁安定剤が含まれていてもよい。懸濁安定剤としては、従来からモノマーの懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。そして、前記懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましく、このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0029】
(c)重合工程
重合工程は、使用するモノマー種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、60〜130℃の加熱を、2〜10時間維持することにより行われる。重合工程は、モノマー混合物を含浸させつつ行ってもよい。
重合工程は、使用するモノマー混合物全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい。2段階以上に分けて重合させる場合、通常、含浸工程も2段階に分けて行われる。2段階以上に分けた重合工程の重合温度及び時間は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0030】
例えば、1段階で行われる場合、次のように重合工程を調整することが好ましい。
スチレン系樹脂の種粒子に、スチレン系モノマーとアクリル酸エステルを含むモノマー混合物を吸収させて種粒子内で重合させる。ここで、モノマー混合物は1〜30分かけて重合容器に添加することが好ましい。
重合工程を経て得られた樹脂粒子は、10万〜70万の範囲の重量平均分子量を有していることが好ましい。重量平均分子量が10万未満である場合、発泡粒の強度が低下してしまうことがある。70万より大きい場合、十分な発泡を得られることができなくなることがある。より好ましい重量平均分子量は10万〜50万の範囲であり、更に好ましい重量平均分子量は15万〜30万の範囲である。
【0031】
(d)発泡剤含浸工程
上記樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで、発泡性粒子を得る。
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0032】
更に、発泡剤の含有量は、2〜14質量%の範囲であることが好ましい。2質量%より少ないと、発泡性粒子から所望の嵩密度の発泡粒子を得られないことがある。14質量%より多いと、樹脂が軟化し、発泡時に破泡することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、3〜13質量%である。
【0033】
発泡剤の含浸は、モノマー混合物の重合と同時に湿式で行ってもよく、重合後に湿式又は乾式で行ってもよい。湿式で行う場合は、上記重合工程で例示した、懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で行ってもよい。
発泡剤の含浸温度は、60〜120℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、120℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜110℃である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、アジピン酸イソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
特に、発泡性粒子は、水性媒体中で、スチレン系樹脂からなる種粒子に、少なくともアクリル酸エステルを含むモノマー混合物を吸収及び重合させて樹脂粒子を得、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得られ、
アクリル酸エステルを、種粒子100質量部に対して、0.5〜3.4質量部使用し、かつ発泡性スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂100質量部に対して、0.5〜3.1質量部使用することにより得られた粒子であることが好ましい。
【0034】
(発泡粒子)
上記発泡性粒子から得られる発泡粒子の平均粒子径は、1.0〜2.0mmであることが好ましい。平均粒子径は、1.1〜1.5mmがより好ましく、1.2〜1.3mmが更に好ましい。
なお、発泡粒子の形状が、球状でない場合、平均粒子径は最大径の平均値を意味する。
発泡粒子の嵩倍数は、50〜65倍の範囲であることが好ましい。嵩倍数が65倍より大きい場合、発泡速度が早すぎて発泡倍数にバラツキが発生することがある。一方、嵩倍数が50倍より小さい場合、発泡時間に時間がかかることがある。より好ましい嵩倍数は55〜60倍である。
【0035】
(発泡粒子の製造方法)
発泡粒子は、上記発泡性粒子を水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡させることで発泡粒子が得られる。本発明では、スチレンの単独重合体からなる発泡性粒子より発泡速度を約1.1〜1.5倍に速くすることができる。なお、発泡は、例えば、0.06〜0.08MPaの水蒸気を用いて、必要に応じて加圧しつつ、1〜3分間加熱することにより実施できる。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、帯電防止剤としてのポリエチレングリコールや、ブロッキング防止剤としてのステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。
【0036】
(軽量コンクリート)
軽量コンクリートは、上記発泡粒子を含む生コンクリート組成物を、硬化させるか、又は硬化後、焼成して前記発泡粒子を分解させることにより得られる。
生コンクリート組成物は、上記発泡粒子以外に、通常使用される成分を含んでいてもよい。例えば、水及び結合材(セメント、アスファルト等)を必須成分とし、必要に応じて、骨材としての砂利や、化学混和剤としての収縮抑制剤、凍結抑制剤等の他の成分が含まれていてもよい。
軽量コンクリートは、例えば、次の方法により得ることができる。即ち、発泡粒子、水、結合材及び他の成分を混合して生コンクリート組成物を得る。得られた生コンクリート組成物を所定の型枠に打設する。打設後、必要に応じて締固め、養生等の工程を経ることで軽量コンクリートを得ることができる。
得られた軽量コンクリートを焼成することで発泡粒子を分解除去してもよい。分解除去することで、軽量コンクリートに、調湿性、透水性等の機能を更に付与できる。
軽量コンクリートは、例えば、建造物の壁面、床面、天井板等の比較的薄い部材、比較的厚い板状構造物や柱状構造物の充填用のコンクリートとして使用できる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0038】
<重量平均分子量>
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。
具体的には、試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させ(完全溶解)、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過して測定する。予め測定し、作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の重量平均分子量を求める。また、クロマトグラフの条件は下記の通りとする。
・装置:高速GPC装置
・商品名:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSEC-WorkStation(RI検出器内蔵)
・分析条件
カラム:TSKgel SuperHZM−H×2本(4.6mmI.D×15cmL×2本)
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperHZ−H×1本(4.6mmID×2cmL)
流量:サンプル側 0.175ml/min、リファレンス側 0.175ml/min
検出器:内蔵RI検出器
濃度:0.3g/L
注入量:50μL
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、500、2630、9100、37900、102000、355000、3840000、及び5480000である標準ポリスチレン試料と、昭和電工社製商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1030000である標準ポリスチレン試料を用いる。
検量線の作成方法は以下の通りである。まず、上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1030000のもの)、グループB(重量平均分子量が500、9100、102000及び3480000のもの)及びグループC(重量平均分子量が2630、37900、355000及び5480000のもの)にグループ分けする。グループAに属する重量平均分子量が1030000である標準ポリスチレン試料を5mg秤量した後にTHF20mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。グループBに属する重量平均分子量が500、9100、102000及び3480000である標準ポリスチレン試料をそれぞれ10mg、5mg、5mg、及び5mg秤量した後にTHF50mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。グループCに属する重量平均分子量が2630、37900、355000及び5480000である標準ポリスチレン試料をそれぞれ5mg、5mg、5mg、及び1mg秤量した後にTHF40mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。これら標準ポリスチレン試料の保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC−WS)にて作成し、これをポリスチレン換算重量平均分子量測定の検量線として用いる。
【0039】
<各種粒子の平均粒子径>
平均粒子径は次の方法で測定する。すなわち、JIS標準ふるい目開き2360μm(7.5メッシュ)、目開き2000μm(8.6メッシュ)、目開き1700μm(10メッシュ)、目開き1400μm(12メッシュ)、目開き1180μm(14メッシュ)、目開き1000μm(16メッシュ)、目開き850μm(18メッシュ)、目開き710μm(22メッシュ)、目開き600μm(26メッシュ)、目開き500μm(30メッシュ)、目開き425μm(36メッシュ)、目開き355μm(42メッシュ)、目開き300μm(50メッシュ)、目開き250μm(60メッシュ)、目開き212μm(70メッシュ)、目開き180μm(83メッシュ)のふるいで分級し、累積重量分布曲線を基にして、累積質量が50%となる粒径(メジアン系)を平均粒子径とする。
<中心部及び表層の吸光度比>
スチレン系樹脂粒子の中心部及び表層部分の吸光度比(D1730/D1600)を次の要領で測定する。
(a)測定試料の作製
無作為に選択した10個の粒子をプラスチック試料支持台(日新EM社製)に固定する。次いで、粒子をウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ製、LEICA ULTRACUT UCT)を用いてダイヤモンドナイフによって、ほぼ中心を通って約10μm厚みにスライスすることで、スライスサンプルを得る。得られたスライスサンプルを2枚のフッ化バリウム結晶(ピアーオプティックス社製)で挟む。これを測定試料とする。スライスサンプルの画像を、下記測定装置付属のCCDで取り込む。画像の取り込みは、ウルトラミクロトームの刃の進行方向をY軸とし、それに対して垂直方向をX軸として行う。スライスサンプル中の粒子は、刃の進行方向に、極僅かに潰れが発生している。取り込まれる画像のY軸を刃の進行方向に合わせることで、測定される吸光度比がばらつくことを抑制する。
吸光度D1730及びD1600は、Perkin Elmer社から商品名「高速IRイメージングシステムSpectrum Spotlight 300」で販売されている装置を用いる。この装置を用いて、下記条件にて、スライスサンプルの画像を得る。得られた画像から、各箇所における赤外吸収スペクトルを下記測定条件で得る。
【0040】
(測定条件)
モード:顕微透過イメージング法
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm
-1〜650cm
-1
検出器:MCT
分解能:8cm-1
スキャン/ピクセル:2回
(バックグランド測定条件)
モード:顕微透過イメージング法
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm
-1〜650cm
-1
検出器:MCT
分解能:8cm-1
スキャン/ピクセル:60回
その他:試料の近傍の試料の無い部分のフッ化バリウム結晶を測定した赤外吸収スペクトルをバックグランドとして測定スペクトルに関与しない処理を実施する。
【0041】
取り込んだ画像から、
図1に示すように、X座標値の最小値と最大値及びY軸のY座標値の最小値と最大値を線で結び、その線の交点を中心点Aとする。画像処理における、中心点のX、Y座標値設定は、中心点Aの±20μmの範囲内におさまるようにする。
【0042】
次に、画像中に、中心点Aを通り、X軸に平行な直線を引く。この直線が、粒子(樹脂)が存在する末端の位置(X軸の最大値)と交わる点を点Dとする。点Aと点Dを結ぶ線上の赤外吸収スペクトルをX座標値で12±2μmごとに抽出する。尚、本発明での中心部分とはA点からD点までの距離の15%以内をいい、一方表層部分とはD点からA点までの距離の20%の部分をいう。
【0043】
抽出した赤外吸収スペクトルから、吸光度D1730及びD1600をそれぞれ読み取り、中心部、及び表層部分における吸光度比(D1730/D1600)を算出する。10個の粒子について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とする。
【0044】
なお、赤外吸収スペクトルから得られる1730cm
-1での吸光度D1730は、上記エステルに含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、1730cm
-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度D1730は、1680cm
-1と1785cm
-1を結ぶ直線をベースラインとして、1680cm
-1と1785cm
-1間の最大吸光度を意味する。また、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm
-1での吸光度D1600は、スチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、1600cm
-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度D1600は、1565cm
-1と1640cm
-1を結ぶ直線をベースラインとして、1565cm
-1と1640cm
-1間の最大吸光度を意味する。
【0045】
<初期発泡速度>
初期発泡速度は測定を行う発泡性粒子を蒸篭に量り取り、発泡槽内で水蒸気によって加熱し、測定する。測定に使用する発泡槽は幅1120mm、高さ635mm、奥行き900mmの外寸であり、槽内下部及び側面に設置された蒸気流入口より水蒸気が流入し、槽内上部に設置されたφ140mmの開口部より水蒸気が外部に排出される。また槽内には天井部から50mmの位置に温度計の測定部が位置するように温度計が設置されており、槽内温度を測定することが可能である。
測定は水蒸気によって90℃以上に加熱された発泡槽の扉を開放し、槽内温度が80℃なったのを確認した後、測定を行う発泡性粒子3gを蒸篭に量り取り、発泡性粒子を発泡槽内中心付近に静置する。発泡性粒子を発泡槽内に静置した後、即座に発泡槽の扉を閉め、0.07MPaの水蒸気で発泡槽内の加熱を開始する。発泡槽内の温度が90℃に達した時点より1分経過した後、水蒸気を止め、即座に扉を開放し、発泡粒子を回収する。
次いで、得られた発泡粒子の嵩倍数を、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、発泡粒子をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた発泡粒子の体積Vcm
3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Vcm
3を下記式に代入することで、発泡粒子の嵩倍数を算出する。
発泡粒子の嵩倍数(倍)=発泡粒子の体積(V)/発泡粒子の質量3g
初期発泡速度は、嵩倍数/1分で表される。
【0046】
(実施例1)
内容積が100Lの撹拌機付きオートクレーブにリン酸三カルシウム120kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4g、ベンゾイルパーオキサイド105g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g、イオン交換水40kg及びスチレン40kgを供給した後、200rpmの撹拌速度で撹拌羽を撹拌させて懸濁液を作製した。
引き続き、オートクレーブ内温度を90℃に加熱し、6時間に亘って保持した。次いで、オートクレーブ内の温度を125℃に昇温し、2時間に亘って保持した後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、生成された粒子を回収、脱水、乾燥を経て後、ポリスチレン粒子を分級して、平均粒子径が350μmでかつ重量平均分子量が20万のポリスチレン粒子を得た。
【0047】
内容積5Lの撹拌機付き重合容器に、種粒子としての上記ポリスチレン樹脂1800g、ピロリン酸マグネシウム5g及びドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.2gを添加して撹拌しつつ75℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、スチレン80g、アクリル酸ブチル20gを混合させた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ添加した。
そして、分散液中に前記溶液を供給し終えてから15分経過後に、この分散液中に、ベンゾイルパーオキサイド1.2g、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.2gをスチレン100gに溶解させた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ添加した。添加した後、分散液を75℃に保持しながら、40分間重合反応を行った。
次いで、重合容器の温度を120℃に昇温し、1時間に亘って保持した後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、生成された粒子を回収、脱水、乾燥を経て平均粒子径が360μmでかつ重量平均分子量が20万の樹脂粒子を得た。
【0048】
次に、樹脂粒子が分散した分散液を90℃に保持し、重合容器内にプロパン20g、ペンタン(n−ペンタン/イソペンタン(質量比)=4)150g、イソブタン100gを圧入して3時間に亘って保持することにより、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得た。この後、重合容器内を25℃に冷却して発泡性粒子を取り出した。
発泡性粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性粒子の表面にブロッキング防止剤としてステアリン酸亜鉛を塗布した。塗布後、発泡性粒子を13℃の恒温室にて7日間放置した。
そして、発泡性粒子を用いて初期発泡速度を測定した。
(実施例2)
スチレン80gとアクリル酸ブチル20gを、スチレン90gとアクリル酸ブチル10gに代えたこと以外は実施例1と同様にして発泡性粒子を得、実施例1と同様にして初期発泡速度を測定した。
(実施例3)
スチレン80gとアクリル酸ブチル20gを、スチレン40gとアクリル酸ブチル60gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得、実施例1と同様にして初期発泡速度を測定した。
【0049】
(比較例1)
スチレン80gとアクリル酸ブチル20gを、スチレン100gとアクリル酸ブチル0gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得、実施例1と同様にして初期発泡速度を測定した。
(比較例2)
スチレン80gとアクリル酸ブチル20gを、スチレン94gとアクリル酸ブチル6gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得、実施例1と同様にして初期発泡速度を測定した。
(比較例3)
スチレン80gとアクリル酸ブチル20gを、スチレン30gとアクリル酸ブチル70gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得、実施例1と同様にして初期発泡速度を測定した。
実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を表1にまとめて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から、平均粒子径が200〜500μmであり、前記吸光度比(A)が前記吸光度比(B)より大きく、吸光度比(A)が0.15〜0.5の範囲の要件を満たす実施例の発泡性粒子は、これら要件のいずれかを満たさない比較例の発泡性粒子に比べて、発泡速度が早いことがわかる。また、吸光度比(A)が0.5を超えている場合、初期発泡速度は早いものの発泡粒子が収縮してしまい発泡粒子外観が悪化してしまっている。