(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
(VリブドベルトB)
図1は、実施形態に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)を示す。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスのものである。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。なお、本実施形態では、VリブドベルトBを伝動ベルトの例とするが、特にこれに限定されるものではなく、平ベルトやVベルトや歯付ベルトであってもよい。
【0011】
実施形態に係るVリブドベルトBは、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11と中間の接着ゴム層12とベルト外周側の背面ゴム層13との三重層に構成されたゴム製のVリブドベルト本体10を備えており、接着ゴム層12には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。
【0012】
圧縮ゴム層11は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。また、リブ数は、例えば、3〜6個である(
図1では3個)。
【0013】
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば1.0〜2.5mmである。
【0014】
背面ゴム層13も、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば0.4〜0.8mmである。背面ゴム層13の表面は、ベルト背面が接触する平プーリとの間で生じる音を抑制する観点から、織布の布目が転写された形態に形成されていることが好ましい。
【0015】
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13は、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。このゴム組成物は、硫黄を架橋剤として架橋したものであってもよく、また、有機過酸化物を架橋剤として架橋したものであってもよい。
【0016】
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13は、別配合のゴム組成物で形成されていてもよく、また、同じ配合のゴム組成物で形成されていてもよい。ベルト背面が接触する平プーリとの接触で粘着が生じるのを抑制する観点からは、背面ゴム層13は、接着ゴム層12よりもやや硬めのゴム組成物で形成されていることが好ましい。
【0017】
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。配合剤としては、補強剤、充填剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。なお、圧縮ゴム層11と接着ゴム層12とでVリブドベルト本体10を構成し、背面ゴム層13の代わりに、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等で構成された補強布が設けられた構成であってもよい。
【0018】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物には、ナイロン短繊維等の短繊維が配合されていてもよい。その場合、短繊維が圧縮ゴム層11にベルト幅方向に配向するように含まれていることが好ましく、また、短繊維が圧縮ゴム層11の表面から突出するように設けられていることが好ましい。なお、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物に短繊維を配合した構成ではなく、圧縮ゴム層11の表面に短繊維を付着させた構成であってもよい。
【0019】
心線14は、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配されているが、その螺旋のピッチは例えば0.8〜1.5mmである。
【0020】
心線14は有機繊維のフィラメント糸で構成されている。心線14を構成する有機繊維としては、例えば、脂肪族ポリアミド繊維(PA)、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、ビニロン繊維(PVA)等が挙げられる。これらのうち、VリブドベルトBをストレッチタイプとする観点から、脂肪族ポリアミド繊維(PA)が好ましい。脂肪族ポリアミド繊維としては、例えば、ナイロン66繊維、ナイロン6繊維、ナイロン46繊維、ナイロン610繊維、ナイロン12繊維、ナイロン611繊維、ナイロン612繊維等が挙げられる。
【0021】
心線14を構成する有機繊維のガラス転移点は、例えば、脂肪族ポリアミド繊維(PA)では、ナイロン66繊維が50℃、ナイロン6繊維が50℃、ナイロン46繊維が60℃であり、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)が67℃であり、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)が113℃であり、ビニロン繊維(PVA)が約85℃である。ここで、ガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)によるものである。
【0022】
心線14は、単一種の有機繊維で構成されていてもよく、また、複数種の有機繊維が混在して構成されていてもよい。心線14を構成する有機繊維のフィラメント糸の繊度は例えば2〜6dtexであり、フィラメント径は例えば14〜25μmである。
【0023】
心線14を構成する有機繊維のトータル繊度は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは2500dtex以上であり、より好ましくは4000dtexであり、また、好ましくは10000dtex以下であり、より好ましくは8000dtex以下である。心線14の外径は、好ましくはφ0.5〜1.5mmであり、より好ましくはφ0.7〜1.1mmである。ここで、本出願における「安定時張力」とは、初期伸び、つまり、伝動によってほぼ安定するまでの初期に生ずる伸びの後におけるベルト張力をいう。
【0024】
心線14の糸構成としては、例えば、片撚り糸、諸撚り糸、ラング撚り糸、組紐が挙げられる。これらのうち片撚り糸及び諸撚り糸が好ましい。
【0025】
心線14が片撚り糸の場合、撚り数は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは3T/10cm以上であり、より好ましくは6T/10cm以上であり、また、好ましくは20T/10cm以下であり、より好ましくは15T/10cm以下である。片撚り糸の心線14は、S撚り糸であってもよく、また、Z撚り糸であってもよく、さらに、S撚り糸及びZ撚り糸の両方を、それらで二重螺旋を形成するように設けてもよい。
【0026】
心線14が諸撚り糸の場合、下撚り糸の繊度は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは100dtex以上であり、より好ましくは400dtexであり、また、好ましくは1500dtex以下であり、より好ましくは1000dtex以下である。下撚り数は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは6T/10cm以上であり、より好ましくは12T/10cm以上であり、また、好ましくは35T/10cm以下であり、より好ましくは25T/10cm以下である。下撚り糸の本数は、好ましくは2〜7本であり、より好ましくは3〜5本である。上撚り数は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは3T/10cm以上であり、より好ましくは6T/10cm以上であり、また、好ましくは20T/10cm以下であり、より好ましくは15T/10cm以下である。諸撚り糸の心線14は、上撚りがS撚りであるS撚り糸であってもよく、また、上撚りがZ撚りであるZ撚り糸であってもよく、さらに、S撚り糸及びZ撚り糸の両方を、それらで二重螺旋を形成するように設けてもよい。
【0027】
図2は、実施形態に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置20のプーリレイアウトを示す。
【0028】
この補機駆動ベルト伝動装置20は、クランクシャフトプーリ21と、その右斜め上方に配置されたウォーターポンププーリ22とを備えている。クランクシャフトプーリ21及びウォーターポンププーリ22のいずれもリブプーリであり、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されている。クランクシャフトプーリ21のプーリ径は例えばφ120〜170mmであり、ウォーターポンププーリ22のプーリ径は例えばφ80〜120mmである。そして、この補機駆動ベルト伝動装置20では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ21及びウォーターポンププーリ22のそれぞれに巻き掛けられている。クランクシャフトプーリ21及びウォーターポンププーリ22に巻き掛けられたVリブドベルトBの安定時張力は、1Vリブ15当たり好ましくは80N以上であり、より好ましくは90N以上であり、また、1Vリブ15当たり好ましくは120N以下であり、より好ましくは110N以下である。
【0029】
なお、補機駆動ベルト伝動装置20としては、プーリ数が3個以上のプーリレイアウトであってもよい。
【0030】
(VリブドベルトBの製造方法)
次に、実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法1及び2について説明する。
【0031】
[製造方法1]
製造方法1は、材料準備工程、材料セット工程、加硫成型工程、研削工程、幅切り工程、及び安定時張力検査工程を有し、VリブドベルトBのVリブ15を研削工程における研削により形成する方法である。
【0032】
<材料準備工程>
まず、ゴム成分に各配合物を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を作製する。圧縮ゴム層11に短繊維を含める場合には、この未架橋ゴムシート11’に短繊維を配合すればよい。同様に、接着ゴム層12用及び背面ゴム層13用の未架橋ゴムシート12’,13’も作製する。
【0033】
また、心線14’である撚り糸をRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を施す。
【0034】
ここで、RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にラテックスを混合したものである。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。RFL水溶液の固形分は例えば30質量%以下である。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ラテックスとしては、例えば、ビニルピリジンスチレンブタジエンゴムラテックス(Vp・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とラテックス(L)の質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
【0035】
心線14’のRFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。RFL水溶液による接着処理時に心線14’にヒートセットのために付与する張力は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは0.0009N/dtex以上であり、より好ましくは0.0017N/dtex以上であり、また、好ましくは0.017N/dtex以下であり、より好ましくは0.0052N/dtex以下である。心線14’のRFL水溶液による接着処理回数は、1回のみであってもよく、また、2回以上であってもよい。心線14’にはRFL被膜が付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を構成する有機繊維の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
【0036】
心線14’には、RFL水溶液による接着処理の前に、エポキシやイソシアネート(ブロックイソシアネート)をトルエン等の溶剤に溶解させた、或いは、水に分散させたプライマー溶液に浸漬して加熱する接着処理を施してもよい。プライマー溶液の液温は例えば20〜30℃である。プライマー溶液の固形分は例えば20質量%以下である。
【0037】
心線14’のプライマー溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。プライマー溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。プライマー溶液による接着処理時に心線14’に付与する張力は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは0.0009N/dtex以上であり、より好ましくは0.0017N/dtex以上であり、また、好ましくは0.017N/dtex以下であり、より好ましくは0.0052N/dtex以下である。心線14’のプライマー溶液による接着処理回数は、1回のみであってもよく、また、2回以上であってもよい。心線14’には樹脂被膜が付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を構成する有機繊維の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
【0038】
心線14’には、RFL水溶液による接着処理の後に、未加硫ゴム組成物をトルエン等の溶剤に溶解させたゴム糊に浸漬して乾燥させる接着処理を施してもよい。ゴム糊の液温は例えば20〜30℃である。ゴム糊の固形分は例えば20質量%以下である。
【0039】
心線14’のゴム糊への浸漬時間は例えば1〜3秒である。ゴム糊への浸漬後の乾燥温度(炉温度)は例えば50〜100℃である。乾燥時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。ゴム糊による接着処理時に心線14’に付与する張力は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは0.0009N/dtex以上であり、より好ましくは0.0017N/dtex以上であり、また、好ましくは0.017N/dtex以下であり、より好ましくは0.0052N/dtex以下である。心線14’のゴム糊による接着処理回数は、1回のみであってもよく、また、2回以上であってもよい。心線14’には糊ゴム被膜が付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を構成する有機繊維の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
【0040】
接着処理後の心線14’の乾熱時収縮応力は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは5N/dtex以上であり、より好ましくは10N/dtex以上であり、また、好ましくは30N/dtex以下であり、より好ましくは25N/dtex以下である。接着処理後の心線14’の中間時伸度は、VリブドベルトBの適切な安定時張力を得る観点から、好ましくは1%以上であり、より好ましくは3%以上であり、また、好ましくは8%以下であり、より好ましくは6%以下である。ここで、乾熱時収縮応力及び中間時伸度は、JIS L1017に基づいて測定される値である。
【0041】
<材料検査工程(心線検査工程)>
次いで、材料準備工程で準備した未架橋ゴムシート11’12’,13’及び心線14’の物性を検査する。
【0042】
未架橋ゴムシート11’12’,13’については、JIS K6301等に基づいて引張り強さ及び伸び等を測定する。
【0043】
心線14’については、JIS L1017に基づいて、乾熱時収縮応力、並びに引張強さ、伸び率、及び中間時伸度等を測定する。
【0044】
具体的には、乾熱時収縮応力の測定では、材料万能引張試験機のチャンバー内を150±1℃に調温して最低30分温度を安定させ、そこに接着処理後12時間以上が経過した検査用の心線14’を入れ、引っ張りながらその両端をチャッキングする。このとき、JIS1級直尺(300mm)により測定してチャック間距離を300mmに設定し、初荷重を心線14’の総デニール数の20分の1に設定する。なお、チャッキング後の初荷重の設定は困難なため、クロスヘッドを0.5mm以内で移動させることにより行う。そして、チャンバー内に検査用の心線14’をセットする際、一時的にチャンバー内の温度は低下するが、チャンバーを閉じて温度が上昇して149℃に達した時点でチャートの駆動スイッチを入れ、そのチャートの移動量により3分経過した時点での収縮力を乾熱時収縮応力とする。このとき、チャートスピードは10mm/minとする。
【0045】
中間時伸度の測定では、室温下(25±1℃)で、材料万能引張試験機に、検査用の心線14’を引っ張りながら、その両端をチャッキングする。このとき、チャック間距離を500mmに設定し、初荷重を心線14’の総デニール数の20分の1に設定する。そして、検査用の心線14’の引張試験を行い、得られる「荷重−伸び」曲線における総デニールの2g/de時の伸びを中間時伸びとする。このとき、クロスヘッドスピードは250mm/minとする。
【0046】
<材料セット工程>
次いで、
図3に示すように、円筒型31の外周上に、背面ゴム層13用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上に心線14’を円筒型31に対して螺旋状に一定の張力を付与して巻き付け、さらにその上に接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’及び圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて積層することによりベルト形成用成形体B’を成形する。
【0047】
このとき、心線14’を巻き付ける際には心線14’に一定の張力を付与するが、その張力は、適切な安定時張力、つまり、適切なベルト長さを得る観点から、好ましくは0.0009N/dtex以上であり、より好ましくは0.0017N/dtex以上であり、また、好ましくは0.0052N/dtex以下であり、より好ましくは0.0035N/dtex以下である。
【0048】
ここで、
図4に示すように、この心線14’に付与する張力Fと製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとは相関関係、つまり、心線14’に付与する張力Fが高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さは短くなり、安定時張力Tが高くなる関係を有する。
【0049】
また、心線14’に付与する張力Fを一定とすると、
図5(a)及び(b)に示すように、心線14’の乾熱時収縮応力及び中間時伸度と製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとは相関関係、つまり、心線14’の乾熱時収縮応力が高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さは短くなり、安定時張力Tが高くなる関係、及び心線14’の中間時伸度が高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さが長くなり、安定時張力Tが低くなる関係を有する。
【0050】
以上の関係から、材料検査工程において測定した心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度に基づいて、心線14’に付与する張力Fの設定を変更し、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを調整してもよい。
【0051】
具体的には、
図6(a)及び(b)に示すように、心線14’に付与する張力Fを一定とすると、心線14’の乾熱時収縮応力と安定時張力T、及び心線14’の中間時伸度と安定時張力Tは、それぞれ相関関係を有することから、心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度の測定値が分かると、予定されている心線14’に付与する張力Fを張力F
0としたとき、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを予測することができる。そして、その予測された安定時張力Tが公差の上限T
maxに近い或いは上限T
maxを超える場合には、矢印Xに示すように、予測される安定時張力Tが公差範囲(T
min〜T
max)に収まるように心線14’に付与する張力Fの設定を張力F
0から張力F
1に下げる。逆に、予測された安定時張力Tが公差の下限T
minに近い或いは下限T
minを下回る場合には、矢印X’に示すように、予測される安定時張力Tが公差範囲(T
min〜T
max)に収まるように心線14’に付与する張力Fの設定を張力F
0’から張力F
1’に上げる。
【0052】
このように心線14’の乾熱時収縮応力及び中間時伸度は製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとの相関関係が認められるので、材料検査工程において測定した心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度に基づいて、上記のように材料セット工程において心線14’に付与する張力Fの設定を変更することにより、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを調整することができる。
【0053】
<加硫成型工程>
次いで、
図7に示すように、ベルト形成用成形体B’にゴムスリーブ32を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉すると共に、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填して所定の成型時間だけ保持する。このとき、
図8に示すように、未架橋ゴムシート11’,12’,13’の架橋が進行して一体化すると共に心線14’と複合化し、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0054】
ここで、ベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、成型時間は例えば10〜60分である。
【0055】
<研削工程>
続いて、加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、円筒型31上に成型されたベルトスラブSを型抜きし、
図9に示すように、ベルトスラブSを一対のスラブ掛け渡し軸33間に掛け渡すと共に、ベルトスラブSの外周面に対し、周方向に延びるVリブ形状溝が外周面の軸方向に連設された研削砥石34を回転させながら当接させ、また、ベルトスラブSも一対のスラブ掛け渡し軸33間で回転させることにより、その外周面を全周に渡って研削する。このとき、
図10に示すように、ベルトスラブSの外周面にはVリブ15が形成される。なお、ベルトスラブSは、必要に応じて長さ方向に分割して研削を行ってもよい。
【0056】
ここで、
図11に示すように、ベルトスラブSの研削量Gと製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとは相関関係、つまり、ベルトスラブSの研削量Gが多くなると製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tが小さくなる関係を有する。
【0057】
また、上述したとおり、
図5(a)及び(b)に示すように、心線14’の乾熱時収縮応力及び中間時伸度と製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとは相関関係、つまり、心線14’の乾熱時収縮応力が高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さが短くなり、安定時張力Tが大きくなる関係、及び心線14’の中間時伸度が高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さが長くなり、安定時張力が小さくなる関係を有する。
【0058】
以上の関係から、材料検査工程において測定した心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度に基づいて、ベルトスラブSの研削量の設定を変更し、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを調整してもよい。
【0059】
具体的には、
図12(a)及び(b)に示すように、ベルトスラブSの研削量Gを一定とすると、心線14’の乾熱時収縮応力と安定時張力T、及び心線14’の中間時伸度と安定時張力Tは、それぞれ相関関係を有することから、心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度の測定値が分かると、予定されているベルトスラブSの研削量Gを研削量G
0としたとき、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを予測することができる。そして、その予測された安定時張力Tが公差の上限T
maxに近い或いは上限T
maxを超える場合には、矢印Yに示すように、予測される安定時張力Tが公差範囲(T
min〜T
max)に収まるようにベルトスラブSの研削量Gの設定を張力G
0から張力G
1に下げる。逆に、予測された安定時張力Tが公差の下限T
minに近い或いは下限T
minを下回る場合には、矢印Y’に示すように、予測される安定時張力Tが公差範囲(T
min〜T
max)に収まるようにベルトスラブSの研削量Gの設定を張力G
0’から張力G
1’に上げる。
【0060】
このように心線14’の乾熱時収縮応力及び中間時伸度は製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとの相関関係が認められるので、材料検査工程において測定した心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度に基づいて、上記のように研削工程におけるベルトスラブSの研削量Gの設定を変更することにより、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを調整することができる。
【0061】
<幅切り工程>
そして、研削によりVリブ15を形成したベルトスラブSを所定幅に幅切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。
【0062】
<寸法精度検査工程>
最後に、幅切り工程で得たVリブドベルトBの安定時張力を測定してベルト長さの寸法精度を検査する。
【0063】
図13は、VリブドベルトBの安定時張力を測定するのに用いられる安定時張力測定装置60を示す。
【0064】
この安定時張力測定装置60は、縦長の加熱槽61とその加熱槽61内にVリブドベルトBが巻き掛けられるように上下にそれぞれ設けられた駆動プーリ62及び従動プーリ63とを備えている。
【0065】
加熱槽61には、前面に開閉扉61aが設けられており、この開閉扉61aを開けて検査対象のVリブドベルトBの駆動プーリ62及び従動プーリ63への取り付け及び取り外しを行い、また、この開閉扉61aを閉じてVリブドベルトBの安定時張力の測定を行うように構成されている。
【0066】
加熱槽61には、上部に給気管64及び下部に排気管65がそれぞれ接続されており、それらの給気管64及び排気管65は温調空気循環ポンプに接続されている。そして、これらの給気管64及び排気管65並びに温調空気循環ポンプは、加熱槽61に付帯された温調機構を構成し、温調した空気を循環させて加熱槽61内に温調した空気を連続供給及び排出するように構成されている。なお、加熱槽61内又は加熱槽61外に設けたヒータによって温調機構を構成してもよい。
【0067】
駆動プーリ62は、加熱槽61内の上部に軸回転可能に固設され、図示しない駆動源に接続されている。駆動プーリ62はリブプーリである。駆動プーリ62のプーリ径は、好ましくはφ45mm以上であり、より好ましくはφ70mm以上であり、また、好ましくはφ150mm以下であり、より好ましくはφ120mm以下である。
【0068】
従動プーリ63は、駆動プーリ62の下方に軸回転可能で且つ上下可動に設けられている。従動プーリ63は、駆動プーリ62との間に任意の一定の軸間距離が保持可能なように構成されており、また、軸荷重検知用の図示しないロードセルが設けられている。そして、このロードセルによって検知される軸荷重からVリブドベルトBのベルト張力を算出することができ、従って、このロードセルがVリブドベルトBのベルト張力を検出するベルト張力検出手段を構成する。従動プーリ63もリブプーリである。従動プーリ63のプーリ径は、好ましくはφ45mm以上であり、より好ましくはφ70mm以上であり、また、好ましくはφ150mm以下であり、より好ましくはφ120mm以下である。従動プーリ63のプーリ径は、駆動プーリ62のプーリ径と同一であることが好ましく、その場合、ロードセルで検知される軸荷重の2分の1がベルト張力となる。
【0069】
なお、安定時張力測定装置60のプーリ数は、駆動プーリ62及び従動プーリ63の2個の場合に限定されず、3個以上であってもよく、その場合、そこにリブプーリ以外のVリブドベルトBの背面に接触して押圧する平プーリが含まれていてもよい。
【0070】
この安定時張力測定装置60を用いた安定時張力の検査では、まず、加熱槽61の開閉扉61aを開き、駆動プーリ62及び従動プーリ63にVリブドベルトBを巻き掛けると共に、従動プーリ63を下方に移動させ、駆動プーリ62との間が所定の軸間距離となった位置で移動を停止して固定する。このとき、VリブドベルトBは伸張されてベルト張力が付与される。ここで、駆動プーリ62及び従動プーリ63の軸間距離は、駆動プーリ62及び従動プーリ63に巻き掛けられたVリブドベルトBのベルト長さが、実際に使用されるプーリレイアウトに巻き掛けられたVリブドベルトBのベルト長さに一致するように設定する。
【0071】
次いで、加熱槽61の開閉扉61aを閉じ、加熱槽61に給気管64から温風を送り込み、加熱槽61内を高温度雰囲気とし、それによってVリブドベルトBを、心線14を構成する有機繊維のガラス転移点よりも高いベルト温度に昇温させる。VリブドベルトBのベルト温度は、心線14を構成する有機繊維のガラス転移点よりも10〜50℃高いことが好ましく、20〜40℃高いことがより好ましい。VリブドベルトBのベルト温度は、非接触型温度計等により測定することができる。なお、VリブドベルトBのベルト温度を所定のベルト温度まで昇温させるには、加熱槽61内の雰囲気温度を、その所定のベルト温度よりも20℃程度高くすることが好ましい。
【0072】
そして、その後、ロードセルによって検知される軸荷重に基づいて駆動プーリ62及び従動プーリ63に巻き掛けた状態のVリブドベルトBのベルト張力を安定時張力として測定する。
【0073】
安定時張力の測定は、VリブドベルトBが心線14を構成する有機繊維のガラス転移点よりも高いベルト温度となったとき、VリブドベルトBを走行させることなく、駆動プーリ62及び従動プーリ63に巻き掛けた状態で行ってもよい。
【0074】
安定時張力の測定は、駆動プーリ62を駆動源により回転させることにより、心線14を構成する有機繊維のガラス転移点よりも高いベルト温度となったVリブドベルトBを駆動プーリ62及び従動プーリ63に巻き掛けた状態で所定時間走行させ、その走行中又は走行後に行ってもよい。
【0075】
この場合、駆動プーリ62の回転数は、好ましくは500rpm以上であり、より好ましくは2000rpm以上であり、また、好ましくは6000rpm以下であり、より好ましくは4000rpm以下である。
【0076】
VリブドベルトBの走行時間は、好ましくは0.5分以上であり、より好ましくは1分以上であり、また、好ましくは5分以下であり、より好ましくは3分以下である。
【0077】
安定時張力の測定は、VリブドベルトBの走行直後に行ってもよく、また、走行後所定時間経過(例えば0.5〜3分)した後に行ってもよく、さらに、走行させて冷却した後に行ってもよい。VリブドベルトBを冷却する場合、加熱槽61に給気管64から冷風を送り込み、加熱槽61内を低温度雰囲気とすればよい。冷却後のVリブドベルトBのベルト温度は、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは30℃以下である。
【0078】
安定時張力を工程検査する方法としては、VリブドベルトBを実際に連続走行させて安定時張力を測定することが考えられる。ところが、VリブドベルトBが常温雰囲気下で安定時張力を示すまで走行させるには長時間を要するため、検査に時間がかかりすぎるという問題がある。また、安定時張力はベルト長さに大きく依存することから、安定時張力を工程検査する方法として、代用特性としてベルト長さを測定して安定時張力を検査することが考えられる。ところが、ベルト長さは、
図14に示すように、ベルトスラブSの型抜き後、時間の経過に伴って大きく変化する一方、その型抜き後から検査時までの時間を一定にすることは実質的に不可能であるため、ベルト長さの測定によって安定時張力の検査を高精度に行うことはできないという問題がある。なお、
図14は、周長862mmの円筒型を用いて製造したVリブドベルトBのベルト長さのベルトスラブSの型抜き後からの経時変化を示す。
【0079】
しかしながら、上記のようにすれば、駆動プーリ62及び従動プーリ63に巻き掛けた状態のVリブドベルトBを、心線14を構成する有機繊維のガラス転移点よりも高いベルト温度とすることにより、安定時張力を簡易で且つ高精度に検査することができる。これは、VリブドベルトBの初期クリープによるベルト張力の低下が加速され、そして、その低下分のベルト張力が短時間で除去されてベルト張力が安定化するためであると考えられる。
【0080】
[製造方法2]
製造方法2は、材料準備工程、材料セット工程、加硫成型工程、幅切り工程、及び安定時張力検査工程を有し、VリブドベルトBのVリブ15を加硫成型工程における成型により形成する方法である。上記工程のうち材料準備工程及び幅切り工程以降の各工程は製造方法1と同一であるので説明を省略し、以下、材料セット工程及び加硫成型工程についてのみ説明する。
【0081】
<材料セット工程>
材料セット工程では、
図15に示すように、表面が平滑な円筒ドラム41上にゴムスリーブ42を被せ、その上に、材料準備工程で準備した背面ゴム層13用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線14’を円筒状の内型51に対して螺旋状に巻き付け、さらにその上から接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’及び圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて積層することによりベルト形成用成形体B’を成形する。圧縮ゴム層11の表面に短繊維を付着させる場合には、このベルト形成用成形体B’の最外層の未架橋ゴムシート11’の表面に短繊維を付着させればよい。
【0082】
このとき、心線14’を巻き付ける際には心線14’に一定の張力を付与するが、その張力は、適切な安定時張力、つまり、適切なベルト長さを得る観点から、好ましくは0.0009N/dtex以上であり、より好ましくは0.0017N/dtex以上であり、また、好ましくは0.0052N/dtex以下であり、より好ましくは0.0035N/dtex以下である。
【0083】
ここで、
図4に示すように、この心線14’に付与する張力Fと製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとは相関関係、つまり、心線14’に付与する張力Fが高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さは短くなり、安定時張力Tが高くなる関係を有する。
【0084】
また、心線14’に付与する張力Fを一定とすると、
図5(a)及び(b)に示すように、心線14’の乾熱時収縮応力及び中間時伸度と製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとは相関関係、つまり、心線14’の乾熱時収縮応力が高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さは短くなり、安定時張力Tが高くなる関係、及び心線14’の中間時伸度が高くなると製造されるVリブドベルトBのベルト長さが長くなり、安定時張力Tが低くなる関係を有する。
【0085】
以上の関係から、材料検査工程において測定した心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度に基づいて、心線14’に付与する張力Fの設定を変更し、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを調整してもよい。
【0086】
具体的には、
図6(a)及び(b)に示すように、心線14’に付与する張力Fを一定とすると、心線14’の乾熱時収縮応力と安定時張力T、及び心線14’の中間時伸度と安定時張力Tは、それぞれ相関関係を有することから、心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度の測定値が分かると、予定されている心線14’に付与する張力Fを張力F
0としたとき、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを予測することができる。そして、その予測された安定時張力Tが公差の上限T
maxに近い或いは上限T
maxを超える場合には、矢印Xに示すように、予測される安定時張力Tが公差範囲(T
min〜T
max)に収まるように心線14’に付与する張力Fの設定を張力F
0から張力F
1に下げる。逆に、予測された安定時張力Tが公差の下限T
minに近い或いは下限T
minを下回る場合には、矢印X’に示すように、予測される安定時張力Tが公差範囲(T
min〜T
max)に収まるように心線14’に付与する張力Fの設定を張力F
0’から張力F
1’に上げる。
【0087】
このように心線14’の乾熱時収縮応力及び中間時伸度は製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tとの相関関係が認められるので、材料検査工程において測定した心線14’の乾熱時収縮応力及び/又は中間時伸度に基づいて、上記のように材料セット工程において心線14’に付与する張力Fの設定を変更することにより、製造されるVリブドベルトBの安定時張力Tを調整することができる。
【0088】
<加硫成型工程>
図16及び17は、この製造方法2の加硫成型工程で用いるベルト成形型50を示す。
【0089】
このベルト成形型50は、同心状に設けられた、可撓性の円筒状の内型51及び外型52を有する。内型51は、ゴム等の可撓性材料で形成されている。内型51の外周面は成型面に構成されており、その内型51の外周面には、織布の布目形成模様等が設けられている。外型52は、金属等の剛性材料で形成されている。外型52の内周面は成型面に構成されており、その外型52の内周面には、Vリブ形成面53が構成されている。また、外型52には、水蒸気等の熱媒体や水等の冷媒体を流通させて温調する温調機構が設けられている。そして、このベルト成形型50には、内型51を内部から加圧膨張させるための加圧手段が設けられている。
【0090】
材料セット工程に次いで、
図18に示すように、ベルト形成用成形体B’を設けたゴムスリーブ42を円筒ドラム41から外し、それを上記ベルト成形型50の外型52の中に位置付け、また、内型51を外型52にセットされたゴムスリーブ42内に位置付けて密閉する。
【0091】
続いて、外型52を、所定の成型温度に加熱すると共に、内型51の密封された内部に高圧空気等を注入して加圧し、その状態を所定の成型時間だけ保持する。このとき、
図19に示すように、内型51が膨張し、外型52の成型面に、ベルト形成用成形体B’が圧接し、そして、未架橋ゴムシート11’,12’,13’の架橋が進行して一体化すると共に心線14’と複合化し、最終的に、Vリブ15が外周側に形成された円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0092】
ここで、ベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、成型時間は例えば10〜60分である。