(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜9を参照して、本発明による組電池の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態の組電池100の全体構成を示す分解図である。
図2は、組電池100を構成する単電池10の積層状態を示す分解図であり、
図3は、
図2の一部を拡大した図である。組電池100は、複数個の単電池10と、電池セルホルダ40と、固定部材120とを備えている。
【0012】
組電池100が組み込まれる自動車等の移動体や蓄電システム等の仕様から組電池100としての出力が決まり、組電池100に組み込む単電池10の員数が決まる。通常、組電池100に組み込む単電池10の員数は、数十セル程度である。この組電池100を複数組み込んで構成した電池パックが自動車等の移動体や蓄電システム等に搭載される。
【0013】
組電池100では、扁平型の複数個の単電池10が積層された積層体110が、固定部材120によって単電池10の積層方向(以下、単に積層方向と呼ぶ)に圧縮力が加えられた状態で拘束(固定)されている。積層体110は、複数個の単電池10が電池セルホルダ40によって保持されて積層されたものである。以下、固定部材120によって各単電池10に積層方向へ圧縮力を加えた状態で積層体110を拘束することを固縛とも呼ぶ。また、固定部材120によって各単電池10に加える積層方向への圧縮力を固縛力とも呼ぶ。
【0014】
図1に示すように、固定部材は、一対の端板121と、一対の側板126とを備えている。一対の端板121は、それぞれ、積層体110に単電池の積層方向に当接して、積層体110に固縛力を与える厚板状の部材である。それぞれの端板121の厚さ方向に延在する側面には、側板126と締結するための締結ボルト125が螺合するネジ穴122が設けられている。
【0015】
一対の側板126は、一対の端板121で積層体110に固縛力を与えた状態で一対の端板121を固定する板状の部材である。それぞれの側板126には、複数の開口127と、複数の貫通孔128とが設けられている。開口127は、単電池10を空冷するための空気の出入口となる開口であり、後述する側面開口43の位置と対応する位置に設けられている。貫通孔128は、側板126と端板121とを締結するための締結ボルト125が挿通される貫通孔である。
【0016】
図2,3に示すように、電池セルホルダ40は、隣り合う2つの単電池10同士の間に設けられる中間ホルダ41と、積層された単電池10のうち、最も外側に位置する単電池10の外側に設けられる端部ホルダ46とを有する。電池セルホルダ40は、電気絶縁性を有する樹脂で構成されている。
【0017】
中間ホルダ41は、後述する単電池10の厚さ方向に延在する側面である幅狭面13、および、単電池10の底面14を支持するフレーム42と、幅狭面13および底面14と直交する単電池10の幅広面12に後述するように直接当接するスペーサ51とを備えている。中間ホルダ41には、単電池10を空冷するための空気の出入口となる側面開口43が両側面に設けられている。
【0018】
端部ホルダ46は、後述する単電池10の幅狭面13および底面14を支持するフレーム47と、単電池10の幅広面12に直接当接するスペーサ52とを備えている。なお、スペーサ52は、端部ホルダ46に対向する面で側板126に当接する。
【0019】
スペーサ51およびスペーサ52は、それぞれ上下方向に離間して複数設けられている。
【0020】
図4は、外装絶縁フィルム26が巻かれた単電池10の斜視図である。単電池10は、扁平形のリチウムイオン二次電池であり、扁平した有底角筒容器(電池容器)11に不図示の電池セル内捲回群が収容され、上蓋15が被せられている。上蓋15には、電池の端子16が設けられている。電池容器11は、幅広面12と、幅狭面13と、底面14とを有する。幅広面12は、電池容器11の側面のうち、電池容器11の厚み方向に対向する一対の面である。幅狭面13は、電池容器11の側面のうち、電池容器11の厚み方向に延在する一対の面である。底面14は、電池容器11の底面である。
【0021】
電池容器11の側面には、外装絶縁フィルム26が上下方向に離間して複数箇所に巻かれている。外装絶縁フィルム26は、意図しない電気的な短絡を防止するための絶縁材であり、電池容器11に貼り付けるための不図示の粘着層が一方の面に設けられている。外装絶縁フィルム26は、捲回数が1回であり、帯状の外装絶縁フィルム26の両端が、たとえば、電池容器11の幅狭面13で重複するように貼り付けられている。
【0022】
電池容器11の側面で、外装絶縁フィルム26が巻かれていない部分は電池容器11の側面が露出している。電池容器11の側面で、外装絶縁フィルム26が巻かれている部分を保護部19と呼び、外装絶縁フィルム26が巻かれていない部分を非保護部17と呼ぶ。非保護部17のうち、幅広面12上の露出部分をスペーサ当接部18と呼ぶ。
【0023】
図5は、隣り合う単電池10のそれぞれの幅広面12で挟まれた中間ホルダ41のスペーサ51が、スペーサ当接部18へ当接する状態を模式的に示した断面図である。なお、端部ホルダ46に設けられたスペーサ52と、スペーサ当接部18との当接状態もスペーサ51とスペーサ当接部18との当接状態と同じであるので、図示による説明を省略する。
【0024】
中間ホルダ41で単電池10を保持すると、各スペーサ51がそれぞれスペーサ当接部18に当接する。同様に、端部ホルダ46で単電池10を保持すると、各スペーサ52がそれぞれスペーサ当接部18に当接する。換言すると、スペーサ51およびスペーサ52と、幅広面12上の非保護部17(すなわち電池容器11の露出面)とが直接当接するように、外装絶縁フィルム26が上下方向に離間して複数箇所に巻かれている。スペーサ51,52におけるスペーサ当接部18との当接部分(当接面)を当接部54と呼ぶ。
【0025】
中間ホルダ41および端部ホルダ46で単電池10を保持して積層体110とし、一対の端板121で積層体110を積層方向から挟んで圧縮力を加え、一対の端板121と一対の側板126とを締結ボルト125で締結すると、積層体110が所定の圧縮力で固縛される。すなわち、端板121と端部ホルダ46のスペーサ52とが当接して、最も外側の単電池10の幅広面に固縛力を伝達する。最も外側の単電池10に伝達された固縛力は、隣り合う単電池10に対して、幅広面12同士で当接しているスペーサ51を介して固縛力を伝達する。したがって、積層体110を構成するすべての単電池10の幅広面12に対して固縛力が付与される。
【0026】
なお、積層体110の固縛力、すなわち、各単電池10の積層方向に作用する圧縮力が低下すると、電池の特性が劣化する。不図示の電池セル内捲回群の構成部品のうち、負極には、その材料として電池容量の大きい黒鉛を用いる場合が多い。黒鉛負極は、充放電により膨張収縮を繰り返し、電池セル内捲回群を変形させることにより、特性が急激に劣化する。この変形を外部から拘束する、すなわち、固縛力を加えることにより、電池特性の劣化を大幅に改善できる。
【0027】
図6は、固縛力を与えることによる電池特性劣化の改善程度を示すデータである。
図6では、横軸に充放電の回数、すなわち、サイクル数をとり、縦軸に特性の指針となる容量とDCRの変化率をとっている。容量とは電池が蓄えることのできる電気量であり、長期にわたり低下しないことが望ましい。また、DCRは電池の内部の電気抵抗であり、長期にわたり上昇しないことが望ましい。固縛力を与えた場合(固縛有りの場合)には、充放電回数が増加しても、容量およびDCRの変化率の変動は小さい。しかし、固縛力を与えない場合(固縛無しの場合)には、充放電回数の増加すると、容量が大きく低下し、DCRは大きく上昇する。
【0028】
本実施の形態とは異なって、幅広面12とスペーサ51との間に外装絶縁フィルム26が存在する状態で、組電池100を長期間運転した場合に固縛力が減少する(抜ける)理由を説明する。
図7は、隣り合う単電池10のそれぞれの幅広面12で挟まれた中間ホルダ41のスペーサ51が、幅広面12に貼られている外装絶縁フィルム26へ当接する状態を模式的に示した断面図である。
【0029】
外装絶縁フィルム26は、電池容器11に貼り付けるために粘着層を有し、フィルム材自体も電池容器11に巻くために柔軟性を有している必要がある。このような材料に対して固縛力による圧力を加え続けると、運転初期の状態では外装絶縁フィルム26はその厚さを保っている。しかし、長期間にわたる運転の途中で
図8に示すように外装絶縁フィルム26がクリープ変形して薄くなる。この状態になると、固縛力が低下し、電池特性の劣化を早めることになる。
【0030】
外装絶縁フィルム26の厚さは通常0.05mm程度である。したがって、電池容器11の両側の幅広面12で合わせて0.1mm程度となる。この厚さ変化で、固縛力がどの程度抜けるのかを
図9を用いて説明する。
図9は固縛力、すなわち、荷重を増加させていった場合の単電池10の厚さの変化の一例を示すデータである。電池の充電量をSOC(State of Charge)と称しており、
図9はSOC=50%におけるデータである。単電池10の幅広面12に荷重2000Nを加えた場合の単電池10の厚さ(セル厚み)は26.92mmである。この厚さを組電池100に組み込む場合の設計寸法とする。
【0031】
組電池100は組立て後の寸法を固定することになるので、充放電を行う際のセル厚みは設計寸法26.92mmに固定したままになる。この状態で充放電を行って荷重の変化を測定すると、放電によりSOCが0%となった場合の荷重は1000N程度まで下がり、充電によりSOCが100%になった場合の荷重は4000N程度まで上がる。
【0032】
仮に、外装絶縁フィルム26の一対の幅広面12における厚さに相当する0.1mmだけセル厚みが厚くなることを許容すると、セル厚みは27.02mmとなる。この場合、SOC=50%での固縛力は700N程度となる。この状態で充放電を行うと、SOCの低い領域で固縛力が極めて小さくなり、電池特性の劣化を大幅に早めることになる。すなわち、仮に、幅広面12とスペーサ51との間に外装絶縁フィルム26が存在した場合には、外装絶縁フィルム26がクリープ変形して薄くなると、電池特性の劣化を大幅に早めることになる。
【0033】
これに対して本実施の形態の組電池100では、スペーサ51と幅広面12上の非保護部17とが直接当接するので、外装絶縁フィルム26のクリープ変形の影響を受けない。
【0034】
本実施の形態の組電池100では、次の作用効果を奏する。
(1) 幅広面12同士を互いに向かい合わせて扁平型の複数個の単電池10を積層して積層体110を構成し、固定部材120によって単電池10の積層方向に圧縮力を付与した状態で保持するように構成した。そして、スペーサ51が、隣り合う単電池10同士で互いに向かい合った幅広面12同士の間に設けられて、幅広面12に直接当接するように構成した。これにより、長期間にわたって安定的に各単電池10に固縛力を与えられるので、電池特性の劣化を防止して、組電池100の耐久性を大幅に向上できる。
【0035】
(2) 幅広面12におけるスペーサ当接部18以外の部分を外装絶縁フィルム26で覆うように構成した。これにより、意図しない短絡を防止でき、組電池100の耐久性を向上できる。
【0036】
(3) 中間ホルダ41の両側面に、単電池10を空冷するための空気の出入口となる側面開口43を設けた。これにより、外部の送風装置を用いて各単電池10を効率的に冷却できるので、組電池100の耐久性を向上できる。
【0037】
−−−第2の実施の形態−−−
図10,11を参照して、本発明による組電池の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、外装絶縁フィルムの形状が第1の実施の形態と異なる。
【0038】
図10は、本実施の形態の外装絶縁フィルム27を示す図である。本実施の形態の外装絶縁フィルム27は、複数の開口28を有する。各開口28の形状、および、各開口28の外装絶縁フィルム27上での位置は、外装絶縁フィルム27を電池容器11の側面に巻き付けた際に、各開口28が一対の幅広面12に位置するように設定されている。さらに、各開口28の形状、および、各開口28の外装絶縁フィルム27上での位置は、中間ホルダ41および端部ホルダ42が単電池10に取り付けられた際に、幅広面12にスペーサ51,52が当接する位置と一致するように設定されている。
【0039】
したがって、外装絶縁フィルム27を電池容器11に貼り付けると、
図11に示すように、幅広面12上で、第1の実施の形態と同じ位置に保護部19と非保護部17が設けられ、幅狭面13が外装絶縁フィルム27で切れ目なく覆われる。
【0040】
本実施の形態の組電池100では、第1の実施の形態の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。
(1) 単電池10の側面に巻く外装絶縁フィルム27を1枚とし、複数の開口28を設けるように構成した。そして、各開口28の形状、および、各開口28の外装絶縁フィルム27上での位置が、中間ホルダ41および端部ホルダ42が単電池10に取り付けられた際に、幅広面12にスペーサ51,52が当接する位置と一致するようにした。これにより、1つの単電池10につき1枚の外装絶縁フィルム27を巻けばよいので、フィルムの加工や巻いて貼り付ける作業の効率が向上する。
【0041】
(2) 幅狭面13が外装絶縁フィルム27で切れ目なく覆われるようにしたので、電気的短絡に対する絶縁性が向上し、組電池100の耐久性を向上できる。
【0042】
−−−第3の実施の形態−−−
図12,13を参照して、本発明による組電池の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1および第2の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1および第2の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、外装絶縁フィルム26とスペーサ51との間を絶縁樹脂61で覆った点で第1および第2の実施の形態と異なる。
【0043】
図12は、本実施の形態における、隣り合う単電池10のそれぞれの幅広面12で挟まれた中間ホルダ41のスペーサ51が、スペーサ当接部18へ当接する状態を模式的に示した断面図である。中間ホルダ41で単電池10を保持すると、各スペーサ51がそれぞれ当接部54でスペーサ当接部18に当接する。スペーサ当接部18の図示上下方向の寸法は、スペーサ51の図示上下方向の寸法より若干大きい。スペーサ当接部18の図示上下方向の寸法とスペーサ51の図示上下方向の寸法とが等しいことが理想である。
【0044】
しかし、構成部品個々の寸法誤差や組立上の誤差を考慮すると、スペーサ51が確実にスペーサ当接部18に接触するように、スペーサ当接部18の図示上下方向の寸法をスペーサ51の図示上下方向の寸法より上記誤差の分だけ大きくする必要がある。そのため、スペーサ51の図示上下には、外装絶縁フィルム26との間に隙間29が生じ、電池容器11の表面である金属面が露出する。この露出部分から電気的短絡の生じるおそれがある。
【0045】
そこで、本実施の形態では、
図13に示すように、電気的絶縁性を有する絶縁樹脂61を隙間29に充填することで、電池容器11の表面が露出しないようにしている。
【0046】
本実施の形態の組電池100では、第1および第2の実施の形態の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。
(1) スペーサ当接部18の図示上下方向の寸法をスペーサ51の図示上下方向の寸法より上記誤差の分だけ大きくした。これにより、スペーサ51の当接部54が外装絶縁フィルム26を積層方向に圧迫することがないので、上述した外装絶縁フィルム26のクリープ変形を起こすことがなく、固縛力の伝達に悪影響を及ぼさない。したがって、長期間にわたって安定的に各単電池10に固縛力を与えられるので、電池特性の劣化を防止して、組電池100の耐久性を大幅に向上できる。
【0047】
(2) スペーサ51,52と外装絶縁フィルム26との間の隙間29に絶縁樹脂61を充填した。これにより、電気的短絡に対する絶縁性が向上し、組電池100の耐久性を向上できる。
【0048】
−−−第4の実施の形態−−−
図14を参照して、本発明による組電池の第4の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1〜第3の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1〜第3の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、後述するスペーサ53に外装絶縁フィルム26と当接する部位を設けた点で第1〜第3の実施の形態と異なる。
【0049】
図14は、本実施の形態における、隣り合う単電池10のそれぞれの幅広面12で挟まれた中間ホルダ41のスペーサ53と、スペーサ当接部18および外装絶縁フィルム26との位置関係を模式的に示した断面図である。中間ホルダ41で単電池10を保持すると、各スペーサ53がそれぞれ当接部54でスペーサ当接部18に当接する。また、本実施の形態のスペーサ53は、外装絶縁フィルム26で覆われている保護部19と外装絶縁フィルム26を介して重なる重複部55を有する。
【0050】
図14に示すように、重複部55は、スペーサ53の当接部54よりも図示上方および下方に延在する部位であり、図示左右方向(すなわち単電池10の積層方向)の厚さが当接部54よりも薄い。重複部55の積層方向の厚さは、単電池10を中間ホルダ41で保持した際に、単電池10に巻かれた外装絶縁フィルム26に密着するように設定されている。但し、重複部55の積層方向の厚さは、上述した外装絶縁フィルム26のクリープ変形を起こさないように、重複部55と外装絶縁フィルム26との接触面では固縛力の伝達に寄与しないが、電気絶縁性の確保の観点から隙間29の密閉性が適宜確保されるように設定されている。すなわち、たとえば、重複部55の積層方向の厚さは、当接部54の積層方向の厚さよりも外装絶縁フィルム26の厚さのおおよそ2倍分だけ薄くなるように設定されている。
【0051】
本実施の形態の組電池100では、第1〜第3の実施の形態の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。
(1) スペーサ53に外装絶縁フィルム26で覆われている保護部19と外装絶縁フィルム26を介して重なる重複部55を設けた。これにより、当接部54と外装絶縁フィルム26との隙間29が重複部55で覆われるので、電気的短絡に対する絶縁性が向上し、組電池100の耐久性を向上できる。
【0052】
(2) 上述した第3の実施の形態とは異なって、スペーサ51,52と外装絶縁フィルム26との間の隙間29に絶縁樹脂61を充填する必要がないので、組電池100の組み立て作業を容易化でき、製造コストを抑制できる。
【0053】
(3) 重複部55の積層方向の厚さは、上述した外装絶縁フィルム26のクリープ変形を起こさないように、重複部55と外装絶縁フィルム26との接触面では固縛力の伝達に寄与しないが、電気絶縁性の確保の観点から隙間29の密閉性が適宜確保されるように設定されている。これにより、外装絶縁フィルム26のクリープ変形による固縛力の変化が生じない。したがって、長期間にわたって安定的に各単電池10に固縛力を与えられるので、電池特性の劣化を防止して、組電池100の耐久性を向上できる。
【0054】
なお、上述した重複部55の形状は一例であって、本発明はこれに限定されない。たとえば、
図15に示すように、重複部55と当接部54との間に、当接部54から図示上下方向に離れるにつれて積層方向の厚さが漸減する漸減部56を設けてもよい。このように漸減部56を設けることで、当接部54から重複部55にかけての形状変化が緩やかになり、漸減部56を設けていない場合と比べて、当接部54と重複部55との間の部位に応力が集中しにくくなる。
【0055】
そのため、組電池100の運転中に重複部55に積層方向の意図しない応力が作用したとしても、たとえば当接部54と重複部55との間の部位など、スペーサ53に亀裂が入るなどの不具合の発生を防止できる。したがって、長期間にわたって安定的に各単電池10に固縛力を与えられるので、電池特性の劣化を防止して、組電池100の耐久性を向上できる。
【0056】
また、上述した漸減部56では、表面が平面であるが、
図16に示すように曲面としてもよい。たとえば、
図16に示した漸減部57は、当接部54から図示上下方向に離れるにつれて徐々に傾きが増していくように、換言すれば、
図16上で当接部54と重複部55との段差部分を丸面取りしたように構成されている。漸減部57をこのような形状とすることで、当接部54から重複部55にかけての形状変化が漸減部56よりもさらに緩やかになり、当接部54と重複部55との間の部位に応力がさらに集中しにくくなる。
【0057】
そのため、組電池100の運転中に重複部55に積層方向の意図しない応力が作用したとしても、たとえば当接部54と重複部55との間の部位など、スペーサ53に亀裂が入るなどの不具合の発生を防止できる。したがって、長期間にわたって安定的に各単電池10に固縛力を与えられるので、電池特性の劣化を防止して、組電池100の耐久性を向上できる。
【0058】
なお、上述の説明では、1つの中間ホルダ41および端部ホルダ46における各図で図示したスペーサ51,52,53の本数が4本であるが、本発明はこれに限定されない。固縛力の維持ができ、幅広面12における固縛力による面圧分布が電池特性劣化防止の観点から適切であれば、1つの中間ホルダ41および端部ホルダ46に設けるスペーサ51,52,53の本数は4本以外の本数であってもよい。また、固縛力の維持ができ、幅広面12における固縛力による面圧分布が電池特性劣化防止の観点から適切であれば、各スペーサ51,52,53の1本当たりの接触面積や、隣り合うスペーサ51,52,53との間隔は適宜設定してよい。
【0059】
また、上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、電池容器表面に電池容器厚み方向に対向する一対の幅広面を有する複数の扁平形電池と、隣り合う扁平型電池の幅広面同士を互いに向かい合わせて積層し、所定の圧縮力を付与した状態で扁平電池を複数保持する保持部材と、幅広面の一部を除いて電池容器の外周を覆う外装絶縁フィルムとを備え、保持部材は、隣り合う扁平電池同士で互いに向かい合った幅広面同士の間に設けられて、幅広面のうち外装絶縁フィルムで覆われていない非保護部に当接部で当接するスペーサを有することを特徴とする各種構造の組電池を含むものである。