【実施例】
【0013】
図1は実施例の排水口用ぬめり取り器の分解斜視図であり、
図2は蓋体にカートリッジ体を組合わせて裏返した状態の斜視図である。
【0014】
このぬめり取り器においては、円形状の蓋体10と、この蓋体10の下面に嵌合し、交換可能な環状のカートリッジ体20とが合成樹脂により形成されており、蓋体10は不透明体である。カートリッジ体20は後述する内部の錠剤Pが見えるように透明状又は有色透明状とすることが好ましく、錠剤Pを使い切る毎に新しいカートリッジ体20と交換する。
【0015】
蓋体10も表面には、中央に半円形に窪んだ凹部10Aと、この凹部10Aの半円形の端部同士を結ぶ直径部において蓋体10の表面と凹部10Aの間に段差状に形成した中央孔部10Bと、外周円部に沿った複数の流入孔部10Cとが設けられている。また、蓋体10の裏面には、カートリッジ体20を嵌合するための環状溝10Dが形成されており、嵌合したカートリッジ体20を保持するために、環状溝10Dの外周の複数個所に嵌合爪10Eが設けられている。
【0016】
図3はカートリッジ体20を構成する一部の部品を裏側から見た斜視図である。カートリッジ体20は2個の半円環状の本体部20Aと、2個の半円環状の底部カバー20Bとから構成されている。このような構成により、同じ形状の本体部20Aと底部カバー20Bを2個ずつ製造すればよく、円環状の部位を一体として製造するよりも製造コストが安価となる。
【0017】
各本体部20Aには環状溝である2個の薬剤収納部20Cが設けられており、その両端部には仕切壁20Dが形成され、仕切壁20Dの底部カバー20B側には薬剤収納部20C内に排水を導入する排水導入口20Eが設けられている。また、排水導入口20Eの近傍の蓋体10側には排水流入口20Fが設けられているが、本体部20Aの両端における排水流入口20Fと中央部の排水流入口20F’とは形状が異なっている。つまり、両端の排水流入口20Fは隣り合う本体部20Aとの境界部にあるが、中央の排水流入口20F’は同じ本体部20Aに形成されており連結を保持するために2個所に分割されている。更に、本体部20Aには仕切壁20Dに隣接した4個所に底部カバー20Bと嵌合する嵌合用凸部20Gが形成され、更に底部カバー20Bと係合するための係止爪20Hが形成されている。
【0018】
各底部カバー20Bには、その両端及び中央には受皿状の水受部20Iが設けられている。また、本体部20Aの嵌合用凸部20Gに対向して、嵌合用凹部20Jが4個所に形成されている。また、各薬剤収納部20Cの中央底部に相当する個所に排水流出孔20Kが設けられている。
【0019】
2個の本体部20Aを円環状と成るように突き合わせ、薬剤収納部20Cを覆うように2個の底部カバー20Bを90度ずらして重ね合わせ、嵌合用凸部20Gを嵌合用凹部20Jに嵌合し、係止爪20Hを底部カバー20Bの内側に係止することにより、
図1に示すカートリッジ体20を組立てることができる。
【0020】
なお、底部カバー20Bを本体部20Aに重ねた場合に、底部カバー20Bの端部同士の間に隙間が生ずるようにされ、この隙間は水受部20Iから溢れた排水を下方に落とし込むための水落口20Lとされているが、中央の水受部20Iではその両側の縁部を除いた部分が水落口20Lとされている。
【0021】
本体部20Aの薬剤収納部20Cに錠剤Pを1列に配置した状態で、底部カバー20Bを重ね合わせて組み立てられたカートリッジ体20には、4つの角筒状の薬剤収納部20Cが円弧状に設けられることになる。錠剤Pは微生物の発育を抑制するためのクエン酸等を主成分とする薬剤であり、複数の直径1cm程度の大きさの錠剤Pが、
図1の点線で示すように収納されている。錠剤Pとされた薬剤の成分は、クエン酸を主成分とするもの以外にも、各種公知の殺菌剤、抗菌剤が使用可能であり、一般的な防黴剤又は抗細菌剤として知られている化合物や抗菌作用を有する天然精油類等であれば使用することができる。更に、錠剤Pの薬剤の成分にぬめりを除去するために殺菌作用を有する成分を含有するようにしてもよい。
【0022】
また、薬剤は薬剤収納部20Cに収納する形状であれば、円弧状のブロック型としてもよい。薬剤収納部20Cに収納可能な1個のブロック型の薬剤であれば、錠剤Pに比べて大量の薬剤を収納させることが可能となる。
【0023】
実施例のカートリッジ体20では、計4つの薬剤収納部20Cが等角度に配置され、薬剤収納部20C同士は若干の間隔をおいて配置され、これらの間隙に排水処理機能部20Mが設けられている。この排水処理機能部20Mを構成する排水流入口20F、20F’が蓋体10の流入孔部10Cの下方に位置するように、蓋体10とカートリッジ体20とが組合わされている。
【0024】
図4は
図1のA−A’方向から見た隣合う薬剤収納部20C間の排水処理機能部20Mの斜視図である。仕切壁20Dは前述したように円環状のカートリッジ体20の半径方向に沿って設けられており、各仕切壁20Dの中央下部には排水導入口20Eが設けられている。
【0025】
排水処理機能部20Mは、上方に設けた排水流入口20F、20F’と、下方に設けた水受部20I及び水落口20Lと、薬剤収納部20Cの側方に設けられ、排水導入口20Eを備えた仕切壁20Dとから構成されている。排水流入口20F、20F’の直下に受皿状の水受部20Iが配置され、水受部20Iの脇部に水落口20Lが形成されている。
【0026】
なお、実施例のような半円環状の本体部20A、底部カバー20Bではなく、円環状の本体部20A、底部カバー20Bを用いることで、4個の水受部20I及び4個の水落口20Lの全てを同一形状としてもよい。
【0027】
また、薬剤収納部20Cに流入した排水Rを排出するための排水流出孔20Kは薬剤収納部20Cの底面中央に位置し、排水流出孔20Kと排水導入口20Eとの孔の大きさは、排水Rが所定の時間、薬剤収納部20C内に留まるように、適宜に調整されている。
【0028】
この排水口用ぬめり取り器を台所等の排水口に取り付けると、排水の多くは蓋体10の凹部10Aに集中し、中央孔部10Bを介して排水管に流出する。しかし、一部の排水Rは蓋体10の流入孔部10Cを介して、カートリッジ体20の排水処理機能部20Mに流入する。
【0029】
図5は排水処理機能部20M内に流れ込んだ排水Rの説明図であり、蓋体10の流入孔部10C及び排水流入口20Fを介して流れ込んだ排水Rは、一旦は水受部20Iに当たって拡散する。そして、水受部20Iからの大半の排水Rは水落口20Lを通って抵抗なく排水管に流れ落ちる。しかし、仕切壁20D方向に拡散した排水R1は、稍々抵抗を受けながら排水導入口20Eから薬剤収納部20Cに導入される。
【0030】
排水導入口20Eに導入された排水R1により、薬剤収納部20C内に配列された錠剤Pは入口側の錠剤Pからその下側が徐々に溶解していく。溶解液は各薬剤収納部20Cの底面中央にある排水流出孔20Kから排水管に流下し、排水管内の微生物の発育を抑制する。
【0031】
粒子状の土を多く含む排水Rを流した場合は、排水処理機能部20Mに排水Rが流れ込むものの、殆どの粒子状の土は水受部20Iから水落口20Lを経て排水管に流れ落ちる。粒子状の土は薬剤収納部20C内に入り込むことが少ないので、錠剤Pに土が付着したり、排水導入口20Eや排水流出孔20Kを詰まらせたりすることは少ない。
【0032】
また、排水導入口20Eの変形例として、
図6に示すように排水導入口20Eを仕切壁20Dの底辺との間に段部20Nを設けて配置してもよい。このような構成とすることにより、水受部20Iに衝突した排水から微細な土は段部20Nを越えて排水導入口20Eに流入することが少なくなり、土が薬剤収納部20Cに入り込むことは更に少なくなる。
【0033】
また、水を大量に使用した場合であっても、排水導入口20Eに導入された排水R1は、従来技術の排水流入口1Aに進入する排水Rに比べて抑制されるので、錠剤Pが溶け過ぎることもない。同様に、温かい排水Rを流した場合も排水R1は流入孔部10Cから流入した排水Rに対して抑制されるので、錠剤Pが溶け過ぎることも少ない。
【0034】
また、薬剤収納部20Cの排水導入口20Eと排水流出孔20Kは距離を隔てた構造とされており、排水導入口20Eから導入された排水R1は、錠剤Pをその下側から徐々に平均的に溶解する。従って、薬剤は使用可能期間に渡って平均的に溶解し、薬剤が残り少なくなっても十分に効果のある溶液を排水流出孔20Kから流下させることができる。
【0035】
図7はぬめり取り器の変形例の分解斜視図であり、ゴム製の蓋体10’の下部に、実施例と同様のカートリッジ体20が取り付けられている。菊割れ状の切り込み10Iを有する蓋体10’は、外周部には円環部10Fを備え、この円環部10Fの内側に平面部10Gを備えている。平面部10Gには中心の中央孔部10B’と、この中央孔部10B’に周囲に配置された複数個の周辺孔部10Hと、外周円部に沿った複数の流入孔部10C’とが設けられ、中央孔部10B’と周辺孔部10Hが切り込み10Iにより繋がっている。
【0036】
カートリッジ体20は実施例と同じものを利用し、カートリッジ体20の排水処理機能部20Mが蓋体10’の流入孔部10C’の下方に位置するように、蓋体10’とカートリッジ体20とを組合わせて使用する。その作用効果については先の実施例と同様である。