(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031406
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】PCB廃棄物処理施設の解体撤去方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20161114BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20161114BHJP
G21F 9/30 20060101ALN20161114BHJP
A62D 3/34 20070101ALN20161114BHJP
A62D 101/22 20070101ALN20161114BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
B09B3/00 Z
!G21F9/30 535C
!A62D3/34
A62D101:22
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-99337(P2013-99337)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218848(P2014-218848A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】松隈 英治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良
(72)【発明者】
【氏名】和田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】浮氣 英明
(72)【発明者】
【氏名】柳原 誠
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−021406(JP,A)
【文献】
特開2003−329222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
B09B 3/00
A62D 3/34
A62D 101/22
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB除染機能を有するPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
前記PCB廃棄物処理施設が複数の部屋を有し、該複数の部屋を、解体撤去作業及び前記PCB除染機能の維持に不要な、かつPCB汚染の可能性を有するエリアA、前記PCB除染機能の維持に必要なエリアB、並びに解体撤去作業に必要なエリアCの少なくとも3エリアに区別し、
前記PCB除染機能を用い、前記エリアAをPCB汚染物の除染を行いながら解体撤去する工程A、
前記エリアBをPCB汚染物の除染又は保管を行いながら解体撤去する工程B、及び
前記エリアCを解体撤去する工程C
をこの順に有することを特徴とするPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法。
【請求項2】
請求項1記載のPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
前記エリアBが、PCB含浸物の除染装置を備える部屋a及びPCB非含浸物の除染装置を備える部屋bを含み、
前記工程Bにおいて、前記部屋aの解体撤去の後に前記部屋bの解体撤去を行うことを特徴とするPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
少なくとも1エリアの解体撤去を、通常操業の際のPCB廃棄物処理における上流側の前記部屋から順に行うことを特徴とするPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
少なくとも1つの前記部屋が解体撤去作業に使用可能な搬送装置を有し、
該搬送装置を前記部屋内及び前記部屋間のいずれか一方又は双方の搬送に用いることを特徴とするPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
前記各部屋が有する装置を解体撤去する前に、前記装置に対して予備除染を行うことを特徴とするPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
前記各部屋の解体撤去作業における該部屋が有する装置の解体撤去を、その装置サイズの大きい順又は汚染レベルの高い順に行うことを特長とするPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB除染機能を有するPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、化学的に極めて安定な不燃性の物質であり、耐熱性及び絶縁性に優れた特性を有する。このため、トランスやコンデンサなどの絶縁油等として広く用いられていた。しかし、PCBは生体環境への影響があることが明らかになり、現在ではその使用が禁止されている。このため、従前から使用されてきたPCBを含むトランス、コンデンサ、整流器、蛍光灯の安定器等は、特別な処理を必要とするPCB廃棄物としてPCB廃棄物処理施設で無害化処理が行われている。
【0003】
今後、PCB廃棄物処理が進むと、最終的にこのPCB廃棄物処理施設を解体撤去する必要性が生じる。PCB廃棄物処理施設内にはPCBで汚染された部屋や機器が存在するため、これらの汚染物の除染や解体撤去の際にはPCB汚染物の施設外への拡散、漏洩を防止する必要がある。しかし、現在のところPCB廃棄物処理施設を解体撤去した事例が無く、この解体撤去に係る技術蓄積が無い。
【0004】
一方、廃棄物処理設備の解体方法に関して、有害物質による環境汚染等を防止することを目的とした技術としては、解体する対象設備の汚染状況や、有害物質を使用している機器等を先行調査する工程、先行調査に基づき汚染物質を除去し、これを密閉保管する工程、先行調査に基づき有害物質を使用している機器等からその有害物質を取り除く工程、及び対象設備を解体する工程等を有する廃棄物処理設備の解体システムが提案されている(特許文献1参照)。この技術によれば、前記各工程を有することで、有害物質等の飛散等が防止でき、作業者等が健康障害を起こしたり、周囲の環境が汚染されたりすることも防止することができるとされている。この技術においては、対象となる汚染物質としてPCBも含んでいるが、解体の際に汚染物質は密閉保管するとしており、この汚染物質の最終的な処分方法には触れていない。従って、この技術をPCB廃棄物処理施設に適用する場合、処理施設中のPCB汚染物を永久に密閉保管することとなるため、PCB廃棄物処理施設の解体撤去方法として適当とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−130316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、PCB汚染物の施設外への漏洩を抑制することができ、かつ解体撤去作業及びPCB汚染物の除染を効率的に実施することができるPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法は、PCB除染機能を有するPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、
前記PCB廃棄物処理施設が複数の部屋を有し、該複数の部屋を、解体撤去作業及び前記PCB除染機能の維持に不要な、かつPCB汚染の可能性を有するエリアA、前記PCB除染機能の維持に必要なエリアB、並びに解体撤去作業に必要なエリアCの少なくとも3エリアに区別し、
前記PCB除染機能を用い、前記エリアAをPCB汚染物の除染を行いながら解体撤去する工程A、
前記エリアBをPCB汚染物の除染又は保管を行いながら解体撤去する工程B、及び
前記エリアCを解体撤去する工程C
をこの順に有する。
【0008】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法によれば、このようにPCB廃棄物処理施設中の各部屋を少なくとも3エリアに区分し、エリアAについてはPCB廃棄物処理施設自らの除染機能を用いて除染しながら解体撤去し、次いでエリアBについても、その中の一部の部屋や装置を除染しながら解体撤去を行うことができる。このようにすることにより、解体撤去の対象であるPCB廃棄物処理施設自体が有する除染機能を最大限に活用することができるため、PCB汚染物の施設外への漏洩を抑制することができ、かつ解体撤去作業及びPCB汚染物の除染を効率的に実施することができる。ここで「部屋」とは、壁等で厳密に仕切られた一つの空間のみを意味するものではなく、施設内を区分する所定の領域をいい、屋外に建てられた別棟等も一つの部屋とすることができる。
【0009】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、前記エリアBが、PCB含浸物の除染装置を備える部屋a及びPCB非含浸物の除染装置を備える部屋bを含み、前記工程Bにおいて、前記部屋aの解体撤去の後に前記部屋bの解体撤去を行うことが好ましい。このように汎用性の高いPCB非含浸物の除染装置の解体撤去を後に行うことで、例えば、このPCB非含浸物の除染装置を用いて、PCB含浸物の除染装置の除染を行うことができ、PCB汚染物の漏洩をより抑制することができる。なお、「前記部屋aの解体撤去の後に前記部屋bの解体撤去を行う」とは、部屋a及び部屋bの解体撤去をこの順に連続して行う場合と、部屋aと部屋bとの解体撤去の間に他の部屋の解体撤去を行う場合とを含む。
【0010】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、少なくとも1エリアの解体撤去を、通常操業の際のPCB廃棄物処理における上流側の前記部屋から順に行うことが好ましい。このように上流側の部屋から順に解体撤去を行うことで、解体装置や除染装置等を有効に活用することができ、PCBの漏洩もより低減することができる。
【0011】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、少なくとも1つの前記部屋が解体撤去作業に使用可能な搬送装置を有し、該搬送装置を前記部屋内及び/又は前記部屋間の搬送に用いることが好ましい。このように施設内の搬送装置を有効に活用することで、より効率的な解体撤去作業を行うことができる。
【0012】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、前記各部屋が有する装置を解体撤去する前に、前記装置に対して予備除染を行うことが好ましい。このように各装置に対して予備除染を行うことで、作業環境のさらなる改善を図ることができる。
【0013】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において、前記各部屋の解体撤去作業における該部屋が有する装置の解体撤去を、その装置サイズの大きい順又は汚染レベルの高い順に行うことが好ましい。このように各部屋の装置の解体撤去を装置サイズの大きい順又は汚染レベルの高い順に行うことにより、PCBの拡散を抑制し、かつ解体撤去作業をより効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法によれば、PCB汚染物の施設外への漏洩を抑制することができ、かつ解体撤去作業及びPCB汚染物の除染を効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法を示すフロー図である。
【
図2】同解体撤去方法の対象となるPCB廃棄物処理施設の模式的平面図である。
【
図3】同解体撤去方法における部屋内の装置等の解体撤去作業に係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しながら本発明を具体化した実施の形態について説明する。
【0017】
(PCB廃棄物処理施設)
はじめに
図2を参照して、本発明の一実施の形態に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法において解体撤去の対象となるPCB廃棄物処理施設100の各部屋の構成を説明する。PCB廃棄物処理施設100では、PCB廃棄物として、それぞれPCBを含む大型及び車載トランス、小型トランス並びにコンデンサ等の処理を行う。PCB廃棄物処理施設100は、各部屋として、搬入室101、受入室102、前室103、検査室104、荷捌室105、大型及び車載トランス解体室106、小型トランス解体室107、コンデンサ解体室108、リターナブル容器抜油室109、抜油装置室110、基幹物流室111、攪拌洗浄室112、真空加熱分離室113、汚染メンテナンス室114、真空超音波洗浄室115、排気処理室116、液処理室117、SD室118、SD搬入室119、蒸留室120、判定待室121、詰替室122、払出室123、搬出室124、分析室125、分析室空調機室126、電気及び中央制御室127、ポンプ室128、メンテナンス通路129、換気空調及び活性炭吸着塔室130、二次廃棄物保管倉庫131、冷水及び空気圧縮機室132、熱媒室133、窒素製造設備室134、粉末消火室135、モニタリング室136、並びに屋外タンクヤード137を主に備えている。さらに、その他図示しない管理棟、会議室等も備えている。
【0018】
なお、大型及び車載トランス解体室106、小型トランス解体室107、コンデンサ解体室108、基幹物流室111、攪拌洗浄室112、真空加熱分離室113、汚染メンテナンス室114並びに真空超音波洗浄室115は、遮蔽フード140で覆われている。
【0019】
通常操業の際には、主として以下の順でPCB廃棄物の処理がなされる。まず、PCB廃棄物は搬入室101に搬入され、受入室102に運ばれる。ついで、PCB廃棄物のうち大型及び車載トランスは前室103に、その他の小型トランスやコンデンサは検査室104での検査を経て荷捌室105に運ばれる。大型及び車載トランスは、大型及び車載トランス解体室106にてある程度の大きさにまで解体された後、小型トランスと共に小型トランス解体室107にて解体される。コンデンサはコンデンサ解体室108にて解体される。なお、これらの解体においては、容器内のPCBの抜き出し(抜油)を行い、容器内のコイル、紙、木等を取り出す。なお、ドラム缶等により別途搬入されるPCBは、リターナブル容器抜油室109、抜油装置室110で抜油される。ドラム缶(リターナブル容器)は、受入と逆の順を通って、搬入室101にまで戻され、繰り返し使用される。
【0020】
解体されたPCB廃棄物は、基幹物流室111にてPCB含浸物とPCB非含浸物とに分けられる。PCB含浸物としては、紙や木、その他の微細な素子等が挙げられる。PCB非含浸物としては、容器本体や、鉄心、その他の金属部材等が挙げられる。PCB含浸物は、攪拌洗浄室112及び真空加熱分離室113(PCB含浸物の除染装置を備える部屋a)にて処理され、PCB非含浸物は、真空超音波洗浄室115(PCB非含浸物の除染装置を備える部屋b)にて処理される。これらの処理を経た廃棄物は、判定待室121に移動後、PCBが残留していないかの判定(卒業判定)がされ、その後必要に応じて詰替室122、払出室123及び搬出室124を順に経て搬出され、最終処分又は再利用等がされる。PCBが残留していると判定されたものは、再度処理が施される。
【0021】
一方、抜油で分離されるPCBは直接液処理室117へ、洗浄処理にて分離されるPCBは蒸留室120を経て液処理室117へ運ばれ、SD(金属ナトリウム分散体)法により無害化処理される。このSDは、SD搬入室119から搬入され、SD室118に保管され、液処理室117に供給される。液処理室117における処理の後は、処理済油又は廃アルカリとして払い出される。一方、各解体室や洗浄室等からの排気及び各攪拌装置等からの機器排気は、排気処理室116にて処理される。
【0022】
(解体撤去方法)
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るPCB廃棄物処理施設100の解体撤去方法は、工程A(STEP A)、工程B(STEP B)及び工程C(STEP C)をこの順に有する。工程AではエリアAの解体撤去、工程BではエリアBの解体撤去、工程CではエリアCの解体撤去をそれぞれ行う。エリアA、エリアB及びエリアCの3エリアは、PCB廃棄物処理施設100中の各部屋を以下の基準にて区別したものである。
【0023】
(エリア区別)
エリアA:解体撤去作業及びPCB除染機能の維持に不要な、かつPCB汚染の可能性を有するエリア
エリアB:PCB除染機能の維持に必要なエリア
エリアC:解体撤去作業に必要なエリア
エリアAとしては、PCB廃棄物を受け入れてから除染前までの工程に必要な各部屋(搬入室101、大型及び車載トランス解体室106等)が含まれる。エリアBとしては、解体物に対してPCBの除染を行う部屋(攪拌洗浄室112等)や液処理に関する部屋(液処理室117及び蒸留室120)に加え、解体されたPCB廃棄物をPCB含浸物とPCB非含浸物とに分類する部屋(基幹物流室111)、PCBを含みうる排気を処理する部屋(排気処理室116)、無害化処理に必要な薬剤を取り扱う部屋(SD室118及びSD搬入室119)等が含まれる。エリアCとしては、搬出ルートの確保や無害化処理が行われているか否かの確認に必要な部屋(判定待室121、分析室125等)、解体撤去の作業環境の確保のために必要な部屋(電気及び中央制御室127、粉末消火室135等)等が含まれる。
【0024】
PCB廃棄物処理施設100の各部屋を前記基準にてエリアA、エリアB及びエリアCに区別すると、下記表1のようになる。さらに、表1においては、エリアAを受入から荷捌まで(解体より前)のエリアA−1、及び荷捌以降(解体及び抜油等)のエリアA−2に分け、エリアBをPCB含浸物の除染を行うエリアB−1、PCB含浸物とPCB非含浸物とに分離するエリアB−2、PCB非含浸物の除染を行うエリアB−3、液(PCB)の処理を行うエリアB−4、及びその他のエリアB−5に分け、エリアCを払出に直接必要な(払出のルートを確保する)エリアC−1、払出に直接必要ではなく(二次的に必要)、かつ最後まで残しておく必要性の低いエリアC−2、及び最後まで残しておく必要性の高い(作業環境の確保のために特に必要な)エリアC−3に分けている。
【0026】
以下、各工程順に具体的解体撤去方法について説明する。
【0027】
(工程A)
本工程においては、PCB廃棄物処理施設100が有するPCB除染機能を用い、エリアAをPCB汚染物の除染を行いながら解体撤去する。さらに、工程Aは工程A−1(STEP A−1)及び工程A−2(STEP A−2)をこの順に有する。
【0028】
(工程A−1)
工程A−1においては、表1におけるエリアA−1を、搬入室101、受入室102、前室103、検査室104、荷捌室105、リターナブル容器抜油室109及び抜油装置室110の順にPCB汚染物の除染を行いながら解体撤去する。なお、各部屋の解体撤去順は、通常操業の際のPCB廃棄物処理における上流側の部屋からの順(PCB廃棄物が移動する順)としている。エリアA−1に区分された各部屋の解体撤去は、通常操業の際のPCB廃棄物処理と同様に行うことができる。すなわち、PCB廃棄物処理施設100内の各装置等を用い、解体や無害化処理を行い、払い出す。具体的には、エリアA−2の各解体装置、及びエリアBの各除染装置を用い、エリアCを通じて払い出される。解体等の作業においては、通常の一般的な施設の解体撤去と同様の重機等を用いて行うことができる。なお、後に詳述するように、エリアA−1の各部屋に備わる装置(例えば搬送装置)を、解体撤去作業に使用し(工程A−1において解体撤去を行わず)、後工程で解体撤去することができる。このようにすることで、効率的な解体撤去を行うことができる。
【0029】
(工程A−2)
工程A−2においては、表1におけるエリアA−2を、大型及び車載トランス解体室106、小型トランス解体室107、コンデンサ解体室108並びに汚染メンテナンス室114の順にPCB汚染物の除染を行いながら解体撤去する。各部屋の解体撤去順は、通常操業の際のPCB廃棄物処理における上流側の部屋からの順(PCB廃棄物が移動する順)としている。エリアA−2に区分された各部屋の解体撤去は、PCB廃棄物処理施設100内の各装置等を用い、無害化処理を行い、払い出すことができる。エリアA−2に区分された各部屋の解体も、各部屋が備える解体装置等を用いて行うことができる。
【0030】
(工程B)
本工程においては、エリアBをPCB汚染物の除染又は保管を行いながら解体撤去する。この除染は、PCB廃棄物処理施設100が有するPCB除染機能を用いて行う。さらに、工程Bは工程B−1(STEP B−1)、工程B−2(STEP B−2)、工程B−3(STEP B−3)、工程B−4(STEP B−4)及び工程B−5(STEP B−5)をこの順に有する。
【0031】
(工程B−1)
工程B−1においては、表1におけるエリアB−1(PCB含浸物の除染装置を備える部屋a)を、攪拌洗浄室112及び真空加熱分離室113の順に解体撤去する。これらの部屋は、PCB非含浸物の除染装置を備える真空超音波洗浄室115を用いて除染することができる。除染後は、通常操業と同様に払い出しを行う。
【0032】
(工程B−2)
工程B−2においては、表1におけるエリアB−2、すなわち基幹物流室111を解体撤去する。この部屋の除染は、PCB非含浸物の除染装置を備える真空超音波洗浄室115を用いて行うことができる。除染後は、通常操業と同様に払い出しを行う。
【0033】
(工程B−3)
工程B−3においては、表1におけるエリアB−3(PCB非含浸物の除染装置を備える部屋b)、すなわち真空超音波洗浄室115を解体撤去する。解体後は、通常操業と同様に払い出しを行う。エリアB−3におけるPCB汚染物(無害化処理がなされなかったもの)は、別途保管され、例えば他の処理施設で無害化処理がなされる。
【0034】
(工程B−4)
工程B−4においては、表1におけるエリアB−4を、液処理室117及び蒸留室120の順に解体撤去する。解体後は、通常操業に準じて払い出しを行う。エリアB−4におけるPCB汚染物は、別途保管され、例えば他の処理施設で無害化処理がなされる。
【0035】
(工程B−5)
工程B−5においては、表1におけるエリアB−5を、SD搬入室119及びSD室119の順に解体撤去し、また排気処理室116を解体撤去する。解体後は、通常操業に準じて払い出しを行う。エリアB−5におけるPCB汚染物は、別途保管され、例えば他の処理施設で無害化処理がなされる。
【0036】
(工程C)
本工程Cにおいては、エリアC及び遮蔽フード140を解体撤去する。工程Cは工程C−1(STEP C−1)、工程C−2(STEP C−2)、工程C−h(STEP C−h)及び工程C−3(STEP C−3)をこの順に有する。
【0037】
(工程C−1)
工程C−1においては、表1におけるエリアC−1を、搬出室124、払出室123、詰替室122及び判定待室121の順に解体撤去する。この工程C−1においては、通常操業の際のPCB廃棄物処理における下流側の部屋からの順(処理されたPCB廃棄物の移動とは逆の順)としている。このように、撤去(払出)を行う各部屋については、下流側から解体撤去することにより効率性等を高め、かつPCBの拡散をより低減することができる。また、この工程C−1においては、エリアC−1に加えて、工程A−1で解体撤去しなかったエリアA−1中の装置(例えば、搬送装置等)の解体撤去を併せて行うことができる。
【0038】
(工程C−2)
工程C−2においては、表1におけるエリアC−2を、窒素製造設備室134、冷水及び空気圧縮機室132並びに熱媒室133の順、分析室125及び分析室空調機室126の順、二次廃棄物保管倉庫131及びモニタリング室136の順にそれぞれ解体撤去し、また屋外タンクヤード137を解体撤去する。
【0039】
(工程C−h)
工程C−hにおいては、大型及び車載トランス解体室106、小型トランス解体室107、コンデンサ解体室108、基幹物流室111、攪拌洗浄室112、真空加熱分離室113、汚染メンテナンス室114及び真空超音波洗浄室115を覆っていた遮蔽フード140を解体撤去する。遮蔽フード140がPCBで汚染されている場合、これらは保管され、他のものと同様に例えば他の処理施設で無害化処理がなされる。なお、このように遮蔽フード140の解体撤去を工程Bでは行わず、後工程とすることにより、PCBの拡散をより低減することができる。
【0040】
(工程C−3)
工程C−3においては、表1におけるエリアC−3を、ポンプ室128、換気空調及び活性炭吸着塔室130、粉末消火室135、メンテナンス通路129並びに電気及び中央制御室127の順に解体撤去する。
【0041】
最後に、その他の管理棟等を解体撤去し、PCB廃棄物処理施設100の解体撤去作業は終了する。このように、本発明の一実施の形態に係る廃棄物処理施設100の解体撤去方法においては、エリアAについてはPCB廃棄物処理施設100自らの除染機能を用いて除染しながら解体撤去し、次いでエリアBについても各部屋及び装置の一部を除染しながら解体撤去を行う。このようにすることにより、PCB廃棄物処理施設100が有する除染機能を最大限に活用することができるため、PCB汚染物の施設外への漏洩を抑制することができ、かつ、解体撤去作業及びPCB汚染物の除染を効率的に実施することができる。
【0042】
(各部屋内の装置等の解体撤去作業)
部屋毎の装置等の解体撤去作業の方法及び手順は、必要に応じ
図3に示すフローチャートに沿って決定される。すなわち、まず、各装置のPCB内包の有無を確認し、内包が無いものについてはさらに外表面のPCB汚染の可能性の有無について確認する。外表面汚染の可能性のあるものについては、汚染の有無について拭取試験を行う。
【0043】
この結果、PCB内包有り又は外表面汚染有りとされたもの(各装置のうちのPCB汚染物)については、優先解体条件(※1)の順に従って処理が行われる(
図3中、※1の点線で囲まれたフロー)。PCB汚染物のうち、PCB廃棄物処理施設100内で除染できないものは、他施設での除染等となる。この場合、これらの装置に対し、必要に応じて一次除染(予備除染)、養生、切断等を行う。PCB廃棄物処理施設100内で除染できるものは、一次除染(予備除染)及び養生、必要に応じて除染可能なサイズにまで切断及び分解、除染を行い、卒業合格判定を経て払い出される。払出においては、有価物はリサイクルし、非有価物は最終処分される。
【0044】
一方、各装置のうち、PCB内包及び外表面汚染無しとされたもの(PCB非汚染物)については、優先解体条件(※2)の順に従って、処理が行われる(
図3中、※2の点線で囲まれたフロー)。PCB非汚染物については、一般的な施設の解体撤去と同様に解体等の処理後に払い出され、有価物はリサイクルし、非有価物は最終処分される。PCB非汚染物に対しても、解体撤去の前に予備除染を行うことができる。
【0045】
なお、このように各装置に対して解体撤去前に予備除染(予備除染のうち、PCB汚染物に対する予備除染を一次除染とする)を行うことで、作業環境の更なる改善を図ることができる。予備除染は、拭取りやその他の方法(例えば、塔槽類の装置については循環洗浄)により行うことができる。
【0046】
優先解体条件(※1)及び(※2)としては、例えば、各装置の汚染レベル(汚染レベルの高い順又は低い順)、装置サイズ(装置サイズの大きい順又は小さい順)、搬送装置か否かなどとすることができる。各部屋内の装置のうちのPCB汚染物(※1のフロー)における優先解体条件(※1)としては、例えば汚染レベルの高い順又は装置サイズの大きい順等とすることが好ましい。また、PCB非汚染物(※2のフロー)における優先解体条件(※2)としては、例えば装置サイズの大きい順等に処理することが好ましい。
【0047】
また、優先解体条件として、解体撤去作業に使用可能な搬送装置の有無を基準とすることができる。このような搬送装置がある場合、この搬送装置自体の解体撤去は後回しにし、部屋内及び/又は部屋間の搬送作業に用いることができる。このような搬送装置としては、エリアA−1に区別された各部屋に備わるクレーン、フォークリフト、コンベア等を挙げることができる。この際、先にその搬送装置が備わる部屋内の装置等の搬送作業にこの搬送装置を用い、その後、他の部屋又は部屋間の搬送作業に用いることで、効率的に作業を進めることができ、またPCBの拡散を低減することができる。なお、この搬送装置がPCB汚染物である場合、予備除染を行い、予備除染を経た搬送装置を部屋間の搬送に用いることが好ましい。このように部屋間の搬送に、予備除染を行った搬送装置を用いることで、搬送装置に付着している可能性のあるPCBの拡散を抑制することができる。
【0048】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、各エリアにおける複数の部屋の解体撤去手順は部屋の配置等に応じて適宜変更することができる。また、3つのエリアに分類されない部屋(解体撤去作業及びPCB除染機能の維持に不要で、かつ汚染可能性のない部屋)は、任意のタイミングで解体撤去すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るPCB廃棄物処理施設の解体撤去方法は、PCB廃棄物処理が終了し、その役割が終わった後のPCB廃棄物処理施設の解体撤去に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
100:PCB廃棄物処理施設、101:搬入室、102:受入室、103:前室、104:検査室、105:荷捌室、106:大型及び車載トランス解体室、107:小型トランス解体室、108:コンデンサ解体室、109:リターナブル容器抜油室、110:抜油装置室、111:基幹物流室、112:攪拌洗浄室、113:真空加熱分離室、114:汚染メンテナンス室、115:真空超音波洗浄室、116:排気処理室、117:液処理室、118:SD室、119:SD搬入室、120:蒸留室、121:判定待室、122:詰替室、123:払出室、124:搬出室、125:分析室、126:分析室空調機室、127:電気及び中央制御室、128:ポンプ室、129:メンテナンス通路、130:換気空調及び活性炭吸着塔室、131:二次廃棄物保管倉庫、132:冷水及び空気圧縮機室、133:熱媒室、134:窒素製造設備室、135:粉末消火室、136:モニタリング室、137:屋外タンクヤード、140:遮蔽フード