特許第6031452号(P6031452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031452
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】心臓弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】31
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-553993(P2013-553993)
(86)(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公表番号】特表2014-511231(P2014-511231A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】GB2012000165
(87)【国際公開番号】WO2012110767
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】1102828.9
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513203118
【氏名又は名称】ウィートリー,デイビッド ジェイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィートリー,デイビッド ジェイ.
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−512611(JP,A)
【文献】 特表2001−508681(JP,A)
【文献】 特表2007−517595(JP,A)
【文献】 特表2007−518496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流のためのアパーチャを形成する支持構造と、柔軟なリーフレットとを備えた人工心臓弁であって、
前記リーフレットは、前記アパーチャに血液を流す開配置と、前記アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間を、前記支持構造に対して動くことが可能であり、
前記アパーチャは中心軸を画定し、前記リーフレットは、前記中心軸を横断する平面を通る横断面であって、前記開配置および前記閉配置、および、該リーフレットの自然形状に相当する初期配置を含む前記開配置と前記閉配置との間のすべての中間状態において、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する横断面を有し
前記リーフレットは、少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けラインに沿って取り付けられており、該リーフレットが前記開配置と前記閉配置との間を動くことにより、前記横断面における前記凸部が、第1および第2の取り付けラインの一方の回りを旋回し、かつ、前記横断面における前記凹部が、第1および第2の取り付けラインの他方の回りを旋回する、
人工心臓弁。
【請求項2】
前記第1および第2の取り付けラインは、前記中心軸に対して略平行方向に伸長する、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記凸部は、第1および第2の取り付けラインの一方から前記ジャンクションへと伸長し、前記凹部は、第1および第2の取り付けラインの他方から前記ジャンクションへと伸長する、請求項1または2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記リーフレットが閉配置を離れて開配置の方へと動くことにより、前記横断面における前記凸部の曲率は減少し、前記横断面における前記凹部の曲率は増加する、請求項1〜3のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記リーフレットが閉配置から開配置へと動くことにより、最初は前記横断面における前記凸部および前記凹部の曲率がともに増加し、続いて、該凸部の曲率は減少し、該凹部の曲率はさらに増加する、請求項1〜3のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記リーフレットが閉配置を離れて開配置の方へと動くことにより、前記リーフレットの横断面に沿って、前記ジャンクションは、前記凸部がその回りを旋回する第1または第2の取り付けラインから離れて、前記凹部がその回りを旋回する第1および第2の取り付けラインの他方の方へと動く、請求項1〜5のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項7】
前記リーフレットが閉配置から開配置へと動くことにより、最初は前記リーフレットの横断面に沿って、前記ジャンクションは移動せず、その後、該ジャンクションは、前記凸部がその回りを旋回する第1または第2の取り付けラインから、前記凹部がその回りを旋回する第1および第2の取り付けラインの他方の方へと動く、請求項1〜6のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項8】
前記横断面における前記凸部の長さは、閉配置におけるよりも開配置において、その全長に対する比率が大きい、請求項1〜7のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項9】
前記リーフレットは、前記アパーチャに隣接する取り付けベースラインに沿って前記支持構造に取り付けられている、請求項1〜8のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項10】
前記取り付けベースラインは、外向き凸形状である、請求項9に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
前記取り付けベースラインは、円周方向に、少なくとも部分的に前記アパーチャの周囲を伸長する、請求項9または10に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
前記リーフレットは、前記取り付けベースラインとは反対側に、前記第1および第2の取り付けラインの間を伸長する自由端を有し、該自由端は、前記支持構造に対して可動であり、該自由端は、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する、請求項9〜11のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項13】
前記リーフレットの自由端は、前記取り付けベースラインよりも長い、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
前記リーフレットの前記取り付けベースラインから前記自由端までの間を通る複数の横断面は、それぞれ、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する、請求項12または13に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
前記リーフレットは、前記自由端から該自由端と前記取り付けベースラインとの間に位置する境界ラインまで伸長する接合領域を形成し、該接合領域は、複数のほぼ同一の横断面を形成する、請求項12〜14のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項16】
前記リーフレットは、前記取り付けベースラインと前記境界ラインとの間に、第1および第2の横断面を、第1の横断面が第2の横断面よりも取り付けベースラインの近くに配置されるように形成するとともに、第1および第2の横断面は、それぞれ、凸部と凹部を形成し、第1の横断面の前記凸部は、第2の横断面の前記凸部よりも長く、かつ、第1の横断面の前記凹部は、第2の横断面の前記凹部よりも短い、請求項15に記載の人口心臓弁。
【請求項17】
前記支持構造は、アパーチャを形成する基部と、該アパーチャの回りに配され、該基部から伸長する第1および第2のポスト部とを備え、該第1および第2のポスト部は、前記アパーチャの中心軸とほぼ平行方向に伸長しており、前記リーフレットは、前記第1の取り付けラインに沿って前記第1のポスト部と、前記第2の取り付けラインに沿って前記第2のポスト部と、前記取り付けベースラインに沿って前記基部に取り付けられる、請求項1〜16のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項18】
前記リーフレットは、前記第1の取り付けラインに沿って、前記第1のポスト部にわたって伸長し、その周囲を取り囲み、かつ、前記第2の取り付けラインに沿って、前記第2のポスト部にわたって伸長し、その周囲を取り囲む、請求項17に記載の人工心臓弁。
【請求項19】
前記第1および第2のポスト部は、それぞれを貫通するホールを有し、前記リーフレットは、前記第1のポスト部のホール内を伸長し、かつ、前記第2のポスト部のホール内を伸長する、請求項17または18に記載の人工心臓弁。
【請求項20】
前記第1および第2のポスト部を貫通するそれぞれのホールは、前記アパーチャの中心軸に対して、径方向に角度が付けられている、請求項19に記載の人工心臓弁。
【請求項21】
前記第1および第2のポスト部を貫通するそれぞれのホールは、スリットからなる、請求項19または20に記載の人工心臓弁。
【請求項22】
前記第1および第2のポスト部は、それぞれを貫通する複数のホールを有し、前記リーフレットが、該第1および第2のポスト部を貫通する複数のホール内を伸長する、請求項17〜21のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項23】
前記リーフレットは、前記基部にわたって伸長し、その周囲を取り囲む、請求項17〜22のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項24】
前記基部は、該基部を貫通するホールを有し、前記リーフレットは該ホール内を伸長する、請求項17〜23のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項25】
前記基部を貫通するホールは、前記アパーチャの中心軸に対して、径方向に角度が付けられている、請求項24に記載の人工心臓弁。
【請求項26】
前記基部を貫通するホールは、スリットからなる、請求項24または25に記載の人工心臓弁。
【請求項27】
前記基部は、該基部を貫通する複数のホールを有し、前記リーフレットは、該基部を貫通する複数のホール内を伸長する、請求項17〜26のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項28】
前記リーフレットは、前記支持構造上に一体的に形成されている、請求項1〜27のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項29】
前記支持構造の少なくとも一部は、柔軟または折り畳み可能である、請求項1〜28のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項30】
柔軟な1つ以上のさらなるリーフレット備え、該1つ以上のさらなるリーフレットは、それぞれ、前記アパーチャに血液を流す開配置と、前記アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間を、前記支持構造に対して可動となっており、
前記中心軸を横断する平面で通る前記1つ以上のさらなるリーフレットのいずれか1つの横断面は、前記開配置および前記閉配置、および、該さらなるリーフレットが形成される自然形状に相当する初期配置を含む前記開配置と前記閉配置との間のすべての中間状態において、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成し、
前記1つ以上のさらなるリーフレットは、それぞれ、少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けラインに沿って取り付けられており、該1つ以上のさらなるリーフレットのいずれか1つが、対応する開配置と閉配置との間を動くことにより、該さらなるリーフレットの前記横断面における前記凸部が、対応する第1および第2の取り付けラインの一方の回りを旋回し、かつ、該さらなるリーフレットの該横断面における前記凹部が、対応する第1および第2の取り付けラインの他方の回りを旋回する、
請求項1〜29のいずれかに記載の人工心臓弁。
【請求項31】
前記リーフレットの前記横断面の凸部の曲率が、該リーフレットと隣接する前記1つ以上のさらなるリーフレットの一方の前記横断面の凹部の曲率と実質的に一致し、該横断面が、前記中心軸を横断する同一平面で、該リーフレットおよび該隣接するさらなるリーフレットを通る、
請求項30に記載の人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工心臓弁および該人工心臓弁を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁は、生まれつき異常があったり、罹患したり、老化により機能不全になる場合がある。心臓弁の機能不全が、ある程度以上になった場合、心臓弁を置換する必要がある。確立された臨床的用途において、使用可能な置換用人工心臓弁には、様々な種類がある。概して、これらの人工弁は、2つのタイプに分類される。機械的心臓弁は、金属合金、熱分解カーボン、硬質ポリマーのような硬い合成材料で構成される。これらの機械弁は、本来の心臓弁とは非類似である。生体的心臓弁は、人間の大動脈弁または肺動脈弁、動物の大動脈弁または静脈弁、あるいは動物の心膜(心臓を取り囲む繊維状シート)など、人間または動物由来の柔軟な材料で構成される。こうした動物組織は、一般的に、グルタルアルデヒドのような薬剤で処理して耐久性が高められている。生体心臓弁は、本来の大動脈弁または肺動脈弁に類似する。グルタルアルデヒドで処理したウシの心膜が、一般的に使用される材料であり、本来の大動脈弁に倣って、支持フレーム上に3枚の柔軟なリーフレットを備えるように形成される。これらの弁は、不全な弁を開心術により除去した後、心臓に移植される。最近では、柔軟なリーフレットを拡張可能なメッシュ状のシリンダ内に取り付け、心尖に挿入したカテーテルまたは末梢血管を介して移植することも行われている。正しい位置へと操作した後、装置をバルーンで膨らませて機能的な弁を作り出すものであり、従来的な侵襲手術は必要とされない。
【0003】
一般的に、機械弁の場合、弁の周囲に血液が凝固して弁の機能を妨げたり、血栓が血液中に拡散して、脳、消化管、体肢、その他の部位へと通じる大動脈を塞いだりしないよう、生涯にわたって抗凝固薬療法を続ける必要がある。一方、生体弁の場合、劣化を免れず、その耐久性に限界があるため、特に小児および若年者への適用に問題となる。
【0004】
生体リーフレットの硬化および劣化は、小児および若年者の場合に顕著であり、生体弁の臨床的魅力を半減させている。このため、この問題の解消に対する要請に応じて、生体材料を合成材料に置き換える試みがなされている。こうした取り組みの中で、最も注目を集めているのが、生体安定ポリウレタンである。生体安定ポリウレタンを用いた弁のデザインは、血栓塞栓リスクを低く抑制しうるであろうとの見込みから、生体弁のデザインを模したものとなっている。
【0005】
合成ポリマー製の柔軟なリーフレットからなる人工心臓弁は、まだ実験段階にあり、標準的なデザインパターンを確立するには至っていない。しかしながら、文献に開示された多くの例では、すでに確立された標準的な生体弁のデザインを模しており、従って、本来の心臓大動脈弁に類似する。これには、相応の理由がある。すなわち、このデザインは、機能する弁を通る血流を、本来の自然な血流と近似に保つことができるからである。機械弁の「不自然」なデザインおよび本来とは異なる血流パターンと比べると、生体弁は血液凝固作用を起こしにくい、すなわち「血栓塞栓リスクが低い」ので、生体弁を使用する場合には、抗凝固療法の必要はない、と考えられている。
【0006】
動物由来の材料で作られた柔軟なリーフレットを備える現行の生体弁は、耐久性に限界があり、これに対する解決策として、ポリウレタンのような合成ポリマーの使用が提唱されている。合成ポリマー心臓弁の臨床的使用例はきわめて少なく、現在、その使用は、長期稼働の必要がない体外循環器に限定されている。実験的ポリマー心臓弁は、耐久性に限界があり、このことが、弁置換装置として将来的にポリマー心臓弁を臨床使用へと発展させることへの、重大な阻害要因となっている。特に、実験的ポリマー心臓弁は、弁の稼働中に発生しうるバックリング(座屈)やリンクリング(シワ寄り)に起因する局所的な曲げ応力により、引き裂けなどの損傷を受けやすい。
【0007】
医学的用途に適しており、血流中で長期使用しても十分に生体安定的な市販のポリウレタンは限られており、かつ、入手可能なポリウレタンは、一般的に、リーフレットとして十分に機能するには硬すぎる。ポリウレタンが硬く、高弾性であるほど、耐久性および生体安定性が増すことは明らかである。さらに、たとえばカーボンナノチューブやこれより大きなファイバーを強化用にポリウレタン内に使用すると、強化リーフレットの硬さが増加して、十分な血行動態機能を果たすには硬くなりすぎる可能性が高い。たとえば、弁を横切る圧力低下に素早く反応して開閉し、逆流を抑えるには硬くなりすぎる。
【0008】
現在、かなりの数の患者グループが、実用的で満足のいく置換用心臓弁を利用できずにいる。このグループには、発展途上国の小児および若年層が含まれる。たとえば、サハラ以南のアフリカは、リューマチ性心臓疾患の患者数が世界一多い(世界保健機構(WHO)によれば、この地域における5歳〜24歳の患者数は、先進国のおよそ33,000人に対し、百万人を超える)。これらの患者の多くにとって、弁の置換は有効である。しかしながら、これらの国の若年患者にとって、先進国では時々適用される複雑な弁修復や弁移植(ロス手術)は、実現不能である。機械弁は、生涯にわたる抗凝固薬療法(それ自体監視が必要である)が必要であり、また出血や血栓症の危険も伴う。一方、生体弁は、それ自体に伴うリスクに加え、耐用期間が数年であるため、繰り返し手術する必要がある。従って、先進国における比較的数少ない若年患者や、医学上またはライフスタイル上の理由から、抗凝固剤の服用ができない人々にとっても、抗凝固剤を必要とせずに臨床的に満足な機能を果たし、早期劣化や故障を起こしにくい、長期にわたって使用可能な置換用心臓弁は、すぐにでも必要なものである。しかしながら、発展途上国おいては、はるかに多くの患者達が、こうした弁の利益を享受することができる。これまでは、手術施設へのアクセスが、しばしば阻害要因となってきたが、多くの国において開発が進んでおり、この問題は改善されつつある。抗凝固剤を必要としない、妥当な価格の、信頼できる心臓弁が、従来的な手術室で簡単に移植可能となれば、幅広い臨床的利用が見込まれる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様により、血流のためのアパーチャを形成する支持構造と、該支持構造と連結した柔軟なリーフレットとを備えた人工心臓弁が提供される。該リーフレットは、少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けラインに沿って、前記支持構造と連結されており、前記アパーチャに血液を流す開配置と、前記アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間で、前記支持構造に対して可動となっている。前記アパーチャは中心軸を画定し、該中心軸を横断する平面内における前記リーフレットの横断面は、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する。
【0010】
このように構成された弁により、使用時において、前記リーフレットが血流方向に沿って伸長し、かつ、前記リーフレットの横断面が、前記血流方向を横断する方向を向くように、人間または動物に移植可能である。
【0011】
前記弁は、たとえば、人間または動物の心臓、または人間または動物の心臓に隣接する血管に連結可能である。
【0012】
前記弁は、縫い付けたり、縫合したり、ステッチすることなどにより、心臓に連結可能である。
【0013】
前記弁は、埋め込み、接合、接着、その他の手段により心臓に取り付け可能である。
【0014】
前記リーフレットは、該リーフレットを横切る圧力の変化に対応して、開配置と閉配置との間で可動である。
【0015】
このように構成された弁により、リーフレットが開配置にある時は、弁を通して血液を送り出し、リーフレットが閉配置にある時は、弁を通って血液が逆流することを制限または阻止することができる。
【0016】
前記弁は、自然形状を有するように形成されうる。
【0017】
前記弁が自然形状にある場合、内部応力は生じないか、あるいは最低限に保持されうる。
【0018】
前記弁は、自然形状に相当する初期配置を有するように構成されうる。
【0019】
前記リーフレットを横切る圧力差が存在しない場合、リーフレットは初期形状に戻ることができる。
【0020】
前記リーフレットの初期形状は、その開配置と閉配置との中間に配置されうる。
【0021】
前記リーフレットは、前記開配置、閉配置、および初期配置を含む開配置と閉配置との中間配置において、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する横断面を有することができる。
【0022】
前記弁は、所定の圧力差に対応して、前記リーフレットが前記初期配置から前記閉配置へと可動となるように構成されうる。
【0023】
前記弁は、所定の圧力差に対応して、前記リーフレットが前記初期配置から前記開配置へと可動となるように構成されうる。
【0024】
前記弁は、所定の圧力差に対応して、前記リーフレットが前記初期配置から前記開配置へと直ちに動くことができるように構成されうる。
【0025】
前記ジャンクション、外向き凸部および外向き凹部のうちの少なくとも1つは、所定の圧力差に対応して変化可能である。
【0026】
直線的な、あるいは少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けライン、および前記リーフレットの横断面の形状は、前記リーフレットが前記開配置および閉配置の間を、優先的な動作モードで動くことを可能とする。ここでは、従来の生体的かつ合成材料による柔軟リーフレット弁のデザインの多く、すなわち、主として支持構造とリーフレットとの取り付けライン付近のみの曲率を変化させることで弁を開閉するデザインと異なり、前記リーフレットの曲率の変化はリーフレットの幅全体に分散される。このような動作モードにより、前記リーフレットは、従来の人工心臓弁のリーフレットにおいて生じる曲げ応力との比較で、より低い曲げ応力により、開配置と閉配置との間で動くことが可能となる。これにより、リーフレットの硬さを同じとした場合、心臓弁の作動中にリーフレットに生じる曲げ応力を低減させることが可能となり、その結果、リーフレットに引き裂けや亀裂などの損傷が生じる可能性を低減することができる。従って、このような構成により、同じ硬さのリーフレットであれば、心臓弁の信頼性をより向上させることが可能となる。
【0027】
直線的な、あるいは少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けライン、および前記リーフレットの横断面の形状により、前記リーフレットは、周知の生体心臓弁または周知の合成リーフレット心臓弁の場合と比較して、前記開配置における血流制限を低減させうる形状を採用することができる。従って、このような構成により、同じ硬さのリーフレットを用いた場合、人工心臓弁の血行動態性能は向上する。換言すれば、所定の血行動態性能を得ようとする場合に、より硬いリーフレットを用いて人工心臓弁を構成することが可能となる。たとえば、周知の生体心臓弁または周知の合成リーフレット心臓弁の血行動態性能を損なうことなく、より硬いリーフレット材料を選択したり、リーフレットを厚くしたりすることが可能となる。
【0028】
直線的な、あるいは少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けライン、および、前記リーフレットの横断面の形状により、前記リーフレットを横切る所定の圧力差に応じて、前記リーフレットが予め定められた挙動を採ることが可能となる。より具体的には、前記外向き凸部および前記外向き凹部は、前記リーフレットを横切る圧力差の変化に応じて、予め定められた挙動により変化することが可能となる。これにより、前記リーフレットが開配置と閉配置との間で再配置を繰り返す際に、該リーフレットが任意の形状をとることを阻止することが可能となる。特に、再配置に際して、該リーフレットが鋭く曲がってしまうことや、バックリングやリンクリングの発生を阻止できる。従って、リーフレットの硬さが一定であれば、心臓弁の作動中にリーフレットに生じる曲げ応力を減少させて、リーフレットに引き裂けや亀裂などの損傷が生じる可能性を低減させることができる。このように、リーフレットの硬さが同じでも、心臓弁の信頼性をより向上させることが可能となる。
【0029】
前記第1および第2の取り付けラインは、略平行でありうる。
【0030】
前記第1および第2の取り付けラインは、中心軸に対して概ね平行方向に伸長しうる。
【0031】
前記外向き凸部は、第1の取り付けラインから前記ジャンクションへと伸長しうる。
【0032】
前記外向き凹部は、第2の取り付けラインから前記ジャンクションへと伸長しうる。
【0033】
前記横断面は、前記ジャンクションにおいて非連続的な曲率を有しうる。
【0034】
前記横断面は、前記ジャンクションにおいて連続的な曲率を有しうる。
【0035】
前記ジャンクションは、変曲域を備えうる。
【0036】
前記ジャンクションは、変曲点を備えうる。
【0037】
前記ジャンクションは、曲線域を備えうる。
【0038】
前記ジャンクションは、直線域を備えうる。
【0039】
前記リーフレットの横断面の形状により、前記リーフレットは、血流特性を改善しうる、予め定められた形状を採ることが可能となる。前記リーフレットの横断面の形状は、弁を通過する血液に螺旋状の動きを与え、周知の人工心臓弁の配置と比較して、弁を通過する血流が、より正確に自然な心臓弁の生理的血流条件を再現できるようになっている。このような螺旋状の血流により、周知の人工弁を使用した場合に比べて、人工心臓の効率を向上させることができる。
【0040】
前記リーフレットは、血液が、前記弁の流出側から見て反時計回りで螺旋に流れるように促す横断面を形成するように構成されうる。前記リーフレットを通る横断面は、前記アパーチャの中心軸の回りを、前記弁の流出側から見てほぼ反時計回りに、前記外向き凸部の後に前記外向き凹部が続くように形成されうる。
【0041】
前記リーフレットは、血液が、前記弁の流出側から見て時計回りで螺旋に流れるよう促す横断面を形成するように構成されうる。前記リーフレットの横断面は、前記アパーチャの中心軸の回りを、前記弁の流出側から見てほぼ反時計回りに、前記外向き凹部の後に前記外向き凸部が続くように形成されうる。
【0042】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが開配置と閉配置との間を動くことにより、前記横断面の外向き凸部が第1の取り付けラインの回りを旋回するように、構成されうる。
【0043】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが開配置と閉配置との間を動くことにより、前記横断面の外向き凹部が第2の取り付けラインの回りを旋回するように、構成されうる。
【0044】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが動くことにより、前記横断面における前記凸部および前記凹部の曲率が変化するように、構成されうる。
【0045】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが閉配置を離れて開配置の方へと動くことにより、前記横断面における前記凸部の曲率が減少するように、構成されうる。
【0046】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが閉配置を離れて開配置の方へと動くことにより、前記横断面における前記凹部の曲率が増加するように、構成されうる。
【0047】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが閉配置から開配置へと動くことにより、最初は前記横断面における前記凸部および前記凹部の曲率がともに増加し、続いて、前記凸部の曲率は減少し、前記凹部の曲率はさらに増加するように、構成されうる。
【0048】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが動くことによりにより、前記リーフレットの横断面に沿って前記ジャンクションが動くように、構成されうる。
【0049】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが閉配置を離れて開配置の方へと動くことにより、前記リーフレットの横断面に沿って、第1の取り付けラインから離れて、第2の取り付けラインの方へと、前記ジャンクションが動くように、構成されうる。
【0050】
前記人工心臓弁は、前記リーフレットが閉配置から開配置へと動くことにより、最初に前記ジャンクションは、前記リーフレットの横断面に沿って動かず、その後、前記ジャンクションは、第1の取り付けラインから第2の取り付けラインの方へと動くように、構成されうる。
【0051】
前記横断面の前記外向き凸部は、その長さが、閉配置におけるよりも開配置において、全長に対する比率が大きくなるように、構成されうる。
【0052】
前記リーフレットは、取り付けベースラインに沿って前記支持構造と連結されうる。
【0053】
前記取り付けベースラインは、少なくとも部分的に前記アパーチャの周囲を伸長しうる。
【0054】
前記取り付けベースラインは、円周方向に前記アパーチャの周囲を伸長しうる。
【0055】
前記取り付けベースラインは、前記アパーチャと隣接しうる。
【0056】
前記取り付けベースラインは、外向きに凸形状でありうる。
【0057】
前記リーフレットは、前記支持構造に対して可動となっている自由端を備えることができる。
【0058】
前記自由端は、前記第1および第2の取り付けラインの間を、前記取り付けベースラインとは反対側において伸長しうる。
【0059】
前記自由端は、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成しうる。
【0060】
前記自由端のジャンクションは、該自由端に沿って、前記第1および第2の取り付けラインのほぼ中間に位置しうる。
【0061】
前記リーフレットの自由端は、前記取り付けベースラインよりも長くなりうる。
【0062】
前記取り付けベースラインから前記自由端までの間で、前記リーフレットの複数の横断面のそれぞれは、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部との間のジャンクションを形成しうる。
【0063】
前記リーフレットは、前記自由端から伸長し、かつ、複数のほぼ同一の横断面を有する、接合域を形成することができる。
【0064】
前記接合域の内向きに配された表面は、内向きに配されたもう1つの接合域の相補的表面、たとえば、もう1つのリーフレットの内向きに配された接合域との間に、改善されたシールを形成して、前記リーフレットが閉配置にある場合に、前記アパーチャを通る血液の逆流を阻止または低減することを可能とする。
【0065】
前記接合域は、前記自由端から、該自由端と前記取り付けベースラインとの間に位置する境界まで伸長しうる。
【0066】
前記取り付けベースラインと前記接合域の境界との間に位置するが、該取り付けベースラインに近い横断面は、前記取り付けベースラインと前記接合域の境界との間に位置するが、該取り付けベースラインから遠い横断面よりも、より長い外向き凸部およびより短い外向き凹部を有するように構成されうる。
【0067】
前記取り付けベースラインと前記接合域の境界との間で、前記リーフレットの横断面のそれぞれの前記ジャンクションは、前記リーフレットが成形時の形状または自然形状にある場合に、予め定められたジャンクション基準線に沿って位置しうる。
【0068】
前記ジャンクション基準線は、少なくとも部分的に直線でありうる。
【0069】
前記ジャンクション基準線は、前記接合域の前記境界のほぼ中間点から、前記第2の取り付けラインと前記取り付けベースラインとの交点まで伸長しうる。このような構成により、前記リーフレットは、成形時の形状または自然形状にある場合に、前記第2の取り付けラインと前記取り付けベースラインとの交点、または該交点付近を頂点とする立体的な略円錐域を形成しうる。こうした立体的なリーフレットの形状により、該リーフレットが開配置と閉配置の間を動く際に、該リーフレットの幅方向を横切る応力が分散されうる。
【0070】
前記支持構造は、前記アパーチャを形成する基部を備えうる。
【0071】
前記基部は、曲線状でありうる。前記基部は、ループ状または略環状でありうる。前記基部は、円形、楕円形などでありうる。
【0072】
前記基部は、人間または動物に、たとえば、人間または動物の心臓に、あるいは人間または動物の心臓に隣接する血管に取り付け可能に構成されうる。前記基部は、埋め込み、縫合、接合、接着、またはその他の手段により、人間または動物に取り付け可能に構成されうる。
【0073】
前記アパーチャは、曲線状でありうる。前記アパーチャは、円形、楕円形などでありうる。
【0074】
前記リーフレットは、取り付けベースラインに沿って前記基部と連結されうる。
【0075】
前記支持構造は、前記基部から伸長する複数のポスト部を備えうる。
【0076】
前記複数のポスト部は、前記アパーチャの周囲に配置されうる。
【0077】
前記ポスト部のそれぞれは、略軸方向に伸長しうる。
【0078】
前記ポスト部のそれぞれは、略軸方向に伸長する直線端を備えうる。たとえば、前記ポスト部のそれぞれの直線端は、前記基部の側面に対して垂直方向に伸長しうる。
【0079】
前記支持構造は、前記第1および第2の取り付けラインを形成する第1および第2のポスト部を備えうる。
【0080】
前記リーフレットは、2つのポスト部の間に取り付けられうる。
【0081】
前記リーフレットは、2つの隣り合ったポスト部の間に取り付けられうる。
【0082】
前記弁は、前記リーフレットの自由端のジャンクションが、該リーフレットが閉配置にある場合に該リーフレットが取り付けられる前記2つのポストを結ぶ直線の一方側に位置するように、構成されうる。前記弁は、前記リーフレットの前記自由端の前記ジャンクションが、該リーフレットが開配置にある場合に該リーフレットが取り付けられる前記2つのポストの間を結ぶ直線の他方側に位置するように、構成されうる。
【0083】
このような構成により、前記リーフレットが開配置と閉配置の間で動く間に、該リーフレットが前記2つのポストの間を通過するに従って、前記リーフレット上に圧縮力を作用させることができる。このような圧縮力は、前記リーフレットが前記2つのポストの間を通過するに従って、前記リーフレットの横断面における前記外向き凸部および外向き凹部の曲率を増強させることが可能となる。
【0084】
前記ポスト部は、外側に広がった形状で、前記基部から伸長しうる。該ポスト部のそれぞれは、軸方向に対して、鋭角を形成しうる。前記ポスト部のそれぞれは、軸方向に対して、0度〜30度、0度〜10度、もしくは0度〜5度の角度を形成しうる。このように外側に広がったポスト部の形状により、前記リーフレットの開配置と閉配置との間を容易に動くことが可能となる。このため、前記リーフレットの動作中に、該リーフレットに生じる応力が低減されうる。
【0085】
前記リーフレットは、前記第1の取り付けラインに沿って、前記第1のポスト部にわたっておよびその周囲を伸長しうる。
【0086】
前記リーフレットは、前記第2の取り付けラインに沿って、前記第2のポスト部にわたっておよびその周囲を伸長しうる。
【0087】
前記第1および第2のポスト部のそれぞれは、それぞれを貫通するホールを有しうる。
【0088】
前記リーフレットは、前記第1の取り付けラインに沿って、第1のポスト部の前記ホール内に伸長しうる。
【0089】
前記リーフレットは、前記第2の取り付けラインに沿って、第2のポスト部の前記ホール内に伸長しうる。
【0090】
このような構成により、前記リーフレットと前記第1および第2のポスト部のそれぞれとを、強固に連結することができる。
【0091】
前記第1および第2のポスト部を貫通するホールのそれぞれは、前記アパーチャの中心軸に対して、径方向に角度を付けることができる。これにより、前記リーフレットが予め定められた形状で(たとえば、予め定められた角度で)、前記第1および第2のポスト部を貫通するホールに入り、および/または、該ホールから出ることが可能となる。このような角度付けにより、前記第1および第2のポスト部を貫通するホールのそれぞれから抜け出すに従って、前記リーフレットの横断面の曲率が、前記第1または第2のポスト部と隣接する前記リーフレットの横断面の外向き凸部および外向き凹部の曲率と連続性を確保することが可能となる。
【0092】
前記第1および第2のポスト部を貫通するホールのそれぞれを、細長い形状にすることも可能である。たとえば、前記第1および第2のポスト部を貫通するホールのそれぞれを、スリットなどで構成してもよい。
【0093】
前記第1および第2のポスト部が、それぞれ複数の貫通するホールを備えることも可能である。
【0094】
前記リーフレットは、前記第1および第2のポスト部を貫通する複数のホール内に伸長しうる。
【0095】
前記リーフレットは、取り付けベースラインに沿って、前記基部と連結されうる。
【0096】
前記リーフレットは、前記基部にわたっておよびその周囲を伸長しうる。
【0097】
前記基部は、該基部を貫通するホールを形成しうる。
【0098】
前記リーフレットは、前記基部を貫通するホール内に伸長しうる。
【0099】
このような構成により、前記リーフレットと前記基部とを、強固に連結できる。
【0100】
前記基部を貫通する1つ以上のホールは、前記アパーチャの中心軸に対して、径方向に角度を付けることができる。これにより、前記リーフレットが予め定められた形状で(たとえば、予め定められた角度で)、前記基部を貫通する1つ以上のホールに入り、および/または、該ホールから出ることが可能となる。このような角度付けにより、前記基部を貫通する1つ以上のホールを抜け出すに従って、前記リーフレットの横断面の曲率が、該基部と隣接する前記リーフレットの曲率との連続性を確保することが可能となる。
【0101】
前記基部を貫通する1つ以上のホールを、細長い形状にすることも可能である。たとえば、前記第基部を貫通する1つ以上のホールを、スリットなどで構成してもよい。
【0102】
前記第基部は、該基部を貫通する複数のホールを形成しうる。
【0103】
前記リーフレットは、前記基部に形成された複数のホール内に伸長しうる。
【0104】
前記リーフレットは、前記支持構造上に一体的に形成することができる。
【0105】
前記リーフレットは、合成材料で形成できる。
【0106】
前記リーフレットは、ポリマー材料で形成できる。
【0107】
前記リーフレットは、ポリウレタンで形成できる。
【0108】
前記リーフレットは、マトリックス材と1つ以上の補強要素を含む複合材料で形成することもできる。たとえば、1つのマトリックス材と、ファイバー、ファイブリル(小線維)、ストランド、ナノチューブなどの1つ以上の補強要素とを組み合わせて、前記リーフレットを形成することができる。
【0109】
前記リーフレットは、カーボンナノチューブで強化したポリウレタンで形成することができる。
【0110】
前記心臓弁は、柔軟な複数のリーフレットを備え、該リーフレットのそれぞれは、それぞれに対応する第1および第2の取り付けラインに沿って前記支持構造と連結され、該リーフレットのそれぞれは、前記アパーチャに血液を流す開配置と、前記アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間を、前記支持構造に対して可動となっており、前記中心軸を横断する平面における前記リーフレットのそれぞれの横断面は、それぞれに対応する外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成するように、構成されうる。
【0111】
第1および第2のリーフレットを通る横断面において、該第1のリーフレットの凸部の曲率は、該第1のリーフレットに隣接する第2のリーフレット凹部の曲率と実質的に一致するように構成することができる。
【0112】
このような弁の構成により、前記リーフレットの閉配置において、該リーフレットのそれぞれが、前記弁を通る血流を少なくとも部分的に塞ぐことが可能となる。
【0113】
前記リーフレットのそれぞれは、接合面を備えることができ、該接合面は、1つ以上の他のリーフレットの相補的接合面と係合するよう構成されうる。このような接合面により、改善されたシールを形成することが可能であり、前記リーフレットが閉配置にある場合、前記アパーチャを通る血液の逆流を阻止または低減することができる。
【0114】
前記ポスト部のそれぞれに、複数のリーフレットを連結することが可能である。
【0115】
前記リーフレットのそれぞれは、前記フレーム上に一体的に形成することができる。
【0116】
前記弁は、3枚のリーフレットを備えうる。前記弁は、3本のポストを備えうる。このような弁は、動脈弁(大動脈弁および肺動脈弁)用のプロテーゼ(人工器官)を提供できる。
【0117】
前記弁は、2枚のリーフレットを備えうる。前記弁は、2本のポストを備えうる。このような弁は、静脈弁(僧帽弁および三尖弁)用のプロテーゼを提供できる。
【0118】
前記支持構造の少なくとも一部は、硬質または半硬質でありうる。
【0119】
前記支持構造の少なくとも一部は、柔軟でありうる。たとえば、前記支持構造の少なくとも一部は、拡張可能である。このような支持構造は、前記弁を患者の体内に、たとえば血管を通して挿入する際、弁を圧縮したり、折り畳んだりすることを可能とする。また、患者が成長するタイムスケールにわたって、弁が移植位置で拡張し、患者の成長に適合することも可能となる。こうした支持構造は、たとえば子供のような患者の成長にも、適応しうる。
【0120】
前記支持構造は、前記リーフレットを形成する材料よりも硬い材料で形成することができる。
【0121】
前記支持構造は、金属で形成することができる。
【0122】
前記支持構造は、ステンレス鋼で形成することができる。
【0123】
前記支持構造は、チタンで形成することができる。
【0124】
前記支持構造は、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)などのポリマーで形成することができる。
【0125】
前記支持構造の少なくとも一部は、柔軟または折り畳み可能に構成されうる。
【0126】
前記支持構造は、フレームを備えうる。
【0127】
前記支持構造は、丸みを帯びた外形を有しうる。たとえば、前記支持構造のコーナーに丸みを持たせることができる。このような支持構造は、人間または動物に心臓弁を配置または移植する際に、人間や動物を傷つけるリスクを低減させることができる。
【0128】
前記弁は、経皮デリバリー用に構成されうる。
【0129】
前記支持構造は、ステントにより構成することができる。
【0130】
前記支持構造は、心臓の一部により構成することができる。換言すれば、人間や動物の心臓に直接取り付けるように、前記リーフレットは構成されうる。
【0131】
前記弁は、相互係合可能な第1および第2のパーツを備えうる。
【0132】
前記第1のパーツは、人間または動物に、たとえば、人間または動物の心臓、あるいは、人間または動物の心臓に隣接する血管に、取り付け可能に構成されうる。
【0133】
前記第2のパーツは、前記リーフレットを備えうる。このように第1および第2のパーツを使用することにより、第2のパーツのリーフレットに損傷を与えることなく、第1のパーツを心臓に取り付けることが可能となる。
【0134】
前記第1のパーツは、縫い付けたり、縫合したり、ステッチすることなどにより、心臓と連結することができる。
【0135】
前記第1のパーツは、埋め込み、接合、接着、またはその他の方法により心臓に取り付けることもできる。
【0136】
前記第1のパーツは、曲線状でありうる。前記第1のパーツは、ループ状または略環状でありうる。前記第1のパーツは、円形または楕円形などでありうる。
【0137】
前記第1のパーツは、縫合リングにより構成することができる。
【0138】
前記第1のパーツは、糸、またはワイヤーなどを、該第1のパーツの周囲および心臓壁の内部に通すことにより、心臓と連結されるよう構成されうる。
【0139】
前記第1および第2のパーツは、相補的係合機構を備えうる。
【0140】
前記第1および第2のパーツは、雄型および雌型機構を備えうる。
【0141】
前記第1および第2のパーツは、一方のパーツが1つ以上の突起部を備え、もう一方のパーツが該突起部を受容するよう構成された1つ以上の収納凹部を備えるように、構成されうる。
【0142】
前記第1および第2のパーツを、互いにロック可能に連結するよう構成することができる。たとえば、前記第1および第2のパーツは、一方のパーツが差し込みピン(バイオネット)を備え、もう一方のパーツが、該差し込みピンを受容するソケットを備えるように、構成されうる。前記差し込みピンは、前記第1および第2のパーツを互いに捩ることにより、前記ソケット内でロックするように、構成されうる。
【0143】
前記支持構造は、前記第1および第2のパーツの連結を容易にするアダプタのような第3のパーツを備えうる。
【0144】
本発明の第2の態様により、血流のためのアパーチャを形成する支持構造と、第1および第2の取り付けラインに沿って該支持構造に連結された、柔軟なリーフレットとを備えた人工心臓弁が提供される。前記リーフレットは、前記アパーチャに血液を流す開配置と、前記アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間で、前記支持構造に対して可動となっている。前記アパーチャは中心軸を画定し、該中心軸に横断する平面における前記リーフレットの横断面は、前記第1の取り付けラインからジャンクションへと伸長する外向き凸部と、該ジャンクションから第2の取り付けラインへと伸長する外向き凹部とを形成する。
【0145】
前記第1および第2の取り付けラインは、少なくとも部分的に直線的でありうる。
【0146】
前記第1および第2の取り付けラインは、略平行の関係を有しうる。
【0147】
前記第1および第2の取り付けラインは、前記アパーチャの中心軸に対して、少なくとも部分的に平行方向に伸長しうる。
【0148】
前記第1および第2の取り付けラインは、少なくとも部分的に曲線的でありうる。
【0149】
本発明の第1の態様について言及した1つ以上の選択的特徴は、単独もしくは組み合わせて、第2の態様にも適用可能である。
【0150】
本発明の第3の態様により、支持構造と、一体的に成形された柔軟なリーフレットとを備えた人工心臓弁が提供される。該支持構造は、血流のためのアパーチャと、スルーホールとを形成し、該リーフレットは、該スルーホール内および前記支持構造の一部の周囲に伸長する。
【0151】
前記リーフレットは、前記スルーホール内を伸長するように、一体的に形成されうる。
【0152】
前記リーフレットは、前記スルーホールに隣接する前記支持構造の一部の周囲に伸長するように、一体的に形成されうる。
【0153】
このような構成により、前記リーフレットと前記支持構造とを、強固に連結することができる。
【0154】
前記スルーホールを、細長い形状にすることも可能である。
【0155】
前記スルーホールを、スリットなどで構成することもできる。
【0156】
前記スルーホールには、角度を付けることができる。これにより、リーフレットが予め定められた形状で(たとえば、予め定められた角度で)、前記スルーホールに入り、および/または、該スルーホールから出ることが可能となる。
【0157】
前記支持構造は、複数のスルーホールを形成しうる。
【0158】
前記リーフレットは、前記支持構造に形成された複数のスルーホールのそれぞれを通って伸長するように、一体的に形成されうる。
【0159】
前記リーフレットは、前記複数のスルーホールのそれぞれに隣接する前記支持構造の一部の周囲に伸長するように、一体的に形成されうる。
【0160】
前記複数のスルーホールを、細長い形状にすることも可能である。
【0161】
前記複数のスルーホールを、スリットなどで構成することもできる。
【0162】
本発明の第1の態様に関連して前述した1つ以上の選択的特徴は、単独でも、何れかの組み合わせであっても、第3の態様に適用可能である。
【0163】
本発明の第4の態様により、支持構造と、該支持構造に連結された柔軟なリーフレットとを備えた人工心臓弁が提供される。ここで、前記リーフレットのそれぞれは、開配置と閉配置の間で動く際に、予め定められた形状を備えるように形成される。
【0164】
前記リーフレットは、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する横断面を備えるように形成されうる。
【0165】
このようなリーフレットは、該リーフレットを横切る圧力差の変化に応じて、前記外向き凸部および外向き凹部が、予め定められた挙動で変化することを可能とし、これによりリーフレットのバックリングを阻止することができる。
【0166】
使用時において、このような弁は、前記リーフレットが血流方向に沿って伸長し、前記リーフレットの横断面が、血流方向に対してほぼ横向きに整列するよう、人間または動物に埋め込まれうる。
【0167】
前記心臓弁は、前記支持構造にそれぞれ連結された、複数の柔軟なリーフレットを備えうる。
【0168】
本発明の第1の態様について言及した1つ以上の選択的特徴は、単独もしくは組み合わせて、第4の態様に適用可能である。
【0169】
本発明の第5の態様により、人工心臓弁を移植する方法が提供される。この方法は、人工心臓弁を提供するステップと、該人工心臓弁を移植するステップを含む。具体的には、
血流用のアパーチャを形成する支持構造と、
少なくとも部分的に直線的な第1および第2の取り付けラインに沿って、前記支持構造と連結された柔軟なリーフレットと、
を備え、
前記リーフレットは、前記アパーチャに血液を流す開配置と、前記アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間を、前記支持構造に対して可動となっており、前記アパーチャは中心軸を画定し、該中心軸に横断する平面における前記リーフレットの横断面は、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成するように構成された、人工心臓弁を提供するステップと、
前記人工心臓弁を、前記アパーチャの中心軸が血流方向に伸長するように、対象者に移植するステップと、
を含む方法が提供される。
【0170】
本発明の第1の態様について言及した1つ以上の選択的特徴は、単独もしくは組み合わせて、第5の態様に適用可能である。
【0171】
本発明の第6の態様により、人工心臓弁用のリーフレットが提供される。該リーフレットは、第1および第2の少なくとも部分的に直線的な取り付けラインに沿って、それぞれ支持構造と連結するよう構成された第1および第2の端部を備え、前記支持構造のアパーチャに血液を流す開配置と、該アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間を可動となっており、前記リーフレットの前記端部間に伸長する平面を通る横断面が、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成するように、構成される。
【0172】
本発明の第1の態様について言及した1つ以上の選択的特徴は、単独もしくは組み合わせで、第6の態様に適用可能である。
【0173】
本発明の第7の態様により、人工心臓弁を製造する方法が提供される。該方法は、柔軟なリーフレットを、第1および第2の少なくとも部分的に直線的な取り付けラインに沿って、支持構造に連結するステップを含む。ここで、前記リーフレットは、前記支持構造のアパーチャに血液を流す開配置と、該アパーチャに血液が流れることを制限する閉配置との間で可動であり、前記アパーチャは中心軸を画定し、該中心軸を横断する平面における前記リーフレットの横断面が、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成するようになっている。
【0174】
前記方法は、前記支持構造を液体内でディップコーティングするステップを含みうる。
【0175】
前記方法は、前記液体を凝固させて柔軟なリーフレットを形成するステップを含みうる。
【0176】
前記方法は、前記支持構造を液体内でディップコーティングする前に、該支持構造を成形型に取り付けるステップと、
前記液体の凝固後に、前記成形型から前記支持構造と前記柔軟なリーフレットを取り外すステップ、とを含みうる。
【0177】
前記成形型は、その上で前記液体が凝固し、前記柔軟なリーフレットを形成する、外表面を備えうる。
【0178】
前記外表面は、本発明の第1〜第4の態様の柔軟なリーフレットのいずれもが、その上で液体を凝固させることにより形成可能に構成されうる。
【0179】
前記成形型は、前記支持構造の基部を受容するためのベース部と、その上で液体を凝固させて柔軟なリーフレットを形成するための外表面を有するマンドレル部とを備えうる。
【0180】
前記方法は、前記成形型を前記支持構造に取り付けた状態で前記液体に浸漬させて、該成形型の前記外表面のうち、第3のエッジと、前記接合面下部と第4のエッジの間に位置する前記接合面上部との間についてコーティングするステップを含みうる。
【0181】
前記方法は、前記液体の凝固後に、前記リーフレットの接合面で該リーフレットをトリミングして(切り取って)、該リーフレットの自由端を形成するステップを含みうる。前記成形型の前記外表面は、前記液体が該外表面に接着してしまわないように構成されうる。
【0182】
前記液体は、溶解物質を含みうる。
【0183】
前記液体は、合成材料を含みうる。
【0184】
前記液体は、ポリマー材料を含みうる。
【0185】
前記液体は、ポリウレタンを含みうる。
【0186】
前記液体は、溶液を含みうる。
【0187】
前記液体は、ポリウレタン溶液を含みうる。
【0188】
このような方法により、乾燥前において、前記支持構造を前記液体の連続シートで包み込むことで、前記リーフレットの一体的な形成および前記支持構造への確実な取り付けを可能にすることができる。この方法の場合、前記リーフレットの取り付けは、前記支持構造の一カ所または数カ所への接着によることに限られず、前記弁の移植や手術中などの際に、前記リーフレットが前記支持構造から外れてしまうリスクを低減できるという利点がある。
【0189】
前記方法は、前記支持構造と成形型とを互いに整列させるステップを含みうる。
【0190】
前記方法は、前記支持構造と前記成形型のアセンブリを、液体内でディップコーティングするステップを含みうる。
【0191】
前記方法は、前記成形型の上で前記液体を凝固または乾燥させるステップと、該液体の凝固後に、前記成形型を取り外すステップとを含みうる。
【0192】
このような成形型により、柔軟なリーフレットの形成、具体的には、前記支持構造に対して可動な自由端を有する柔軟なリーフレットの形成が可能となる。
【0193】
前記方法は、前記支持構造と前記成形型に、前記支持構造と前記成形型とが相互に整列することを可能とする、同一のあるいは対応する整列機構を提供するステップを含みうる。たとえば、前記支持構造および前記成形型に、相補的相互係合機構を提供するステップを含みうる。
【0194】
前記方法は、前記成形型に、前記支持構造のポスト部ごとに1つの整列機構を提供するステップと、前記支持構造の前記ポスト部のそれぞれに、前記成形型の別の整列機構と整列および/係合するための整列機構を提供するステップとを含みうる。
【0195】
前記方法は、前記支持構造のポスト部のそれぞれに、スロット、スリットなどの細長い開口部を提供するステップを含みうる。
【0196】
前記方法は、前記支持構造のポスト部のそれぞれに、溝などの細長い凹部を提供するステップを含みうる。
【0197】
前記方法は、前記成形型に、前記支持構造のポスト部ごとに1つの細長い突起部を提供するステップを含みうる。該細長い突起部のそれぞれは、別のポスト部の細長い開口部または凹部と整列または係合するように構成される。
【0198】
このような方法により、支持構造のポスト部に形成されたスリットが、前記成形型のエッジと整列して、これにより、前記支持構造をディップコーティングして形成されるリーフレットは、ポスト部の周囲および該ポスト部に形成された前記スリット内に伸長して、前記支持構造と確実に連結される。
【0199】
前記方法は、前記支持構造と前記成形型を連結するステップを含みうる。このようなステップにより、ディップコーティングの間、前記支持構造と前記成形型とを互いに整列して保持することが可能となる。
【0200】
前記方法は、前記支持構造および/または前記成形型に、前記支持構造と前記成形型とが相互に連結されることを可能とする、同一あるいは対応する機構を提供するステップを含みうる。前記方法は、具体的には、前記支持構造に、位置決めピンやスクリューファスナなどの締め具用のクリアランスホールを提供するステップと、前記成形型に、前記位置決めピンまたは締め具を受容するネジ穴などの対応穴を提供するステップとを含みうる。
【0201】
前記方法は、前記成形型の長手方向に伸長するスルーホールに、分離用の流体を注入するステップを含みうる。
【0202】
前記方法は、前記スルーホールの第1の端部の上で、液体が凝固または乾燥することを防ぐステップを含みうる。前記スルーホールを通して流体を注入することにより、前記リーフレットを形成する液体が、前記スルーホールの第1の端部の反対側にある前記スルーホールの第2の端部の上で凝固した後、前記人工心臓弁を前記成形型から分離させることを補助できる。
【0203】
前記方法は、水、食塩水などの分離流体を前記スルーホールに注入するステップを含みうる。
【0204】
前記方法は、空気なとのガス状分離流体を前記スルーホールに注入するステップを含みうる。
【0205】
前記方法は、シリンジを使用して前記スルーホールに分離流体を注入するステップを含みうる。
【0206】
このような方法により、前記リーフレットをそれぞれ形成し、かつ、該リーフレットのベース端に沿って、前記基部へ該リーフレットを連結させることができる。また、このような方法により、前記リーフレットのそれぞれを、その自由端がそのベース端よりも長くなるように形成することができる。
【0207】
このような方法により、前記リーフレットのそれぞれを、前記支持構造の2つポスト部の間に連結されるように形成することができる。
【0208】
このような方法により、前記リーフレットのそれぞれを、該リーフレットの側端に沿って、支持構造のポスト部に連結されるように形成することができる。
【0209】
このような方法により、前記リーフレットのそれぞれを、前記支持構造のそれぞれのポスト部に複数ずつ連結できるように形成することができる。
【0210】
前記成形型は、閉塞部材を受容するよう構成され、該成形型を貫通して伸長するスルーホールを形成することができる。
【0211】
前記方法は、前記成形型を前記液体内に浸漬する前に、該液体が前記スルーホール内に浸入することを防ぐため、前記閉塞部材で前記スルーホールを塞ぐステップと、
前記液体の凝固後に、前記スルーホールから前記閉塞部材を取り外すステップと、
流体を注入して、前記凝固した液体を前記成形型マンドレル部の外表面から分離するのを補助するステップと、
を含みうる。
【0212】
本発明の第1の態様について言及した1つ以上の選択的特徴は、単独あるいは組み合わせて、第7の態様に適用可能である。
【0213】
本発明の第8の態様により、人工心臓弁を製造するための成形型が提供される。該成形型は、第1および第2の少なくとも部分的に直線的なエッジを有する外表面を備え、前記第1および第2のエッジの側方にある平面において前記外表面を通る横断面が、外向き凸部、外向き凹部、および該凸部と凹部とのジャンクションを形成する。
【0214】
前記成形型は、本発明の第1〜第4の態様における人工心臓弁、第6の態様における人工心臓弁のリーフレットのいずれを製造するために使用可能であり、また第7の態様における人工心臓弁の製造方法に用いることができる。
【0215】
前記外表面は、ディップ成形の際に、液体が該外表面上で凝固または乾燥するよう構成されうる。
【0216】
前記外表面は、ディップ成形の際に、該外表面への前記液体の接着が抑止されるように構成されうる。
【0217】
前記外表面を、付着防止材料でコーティングしうる。
【0218】
前記外表面を、研磨加工することができる。
【0219】
前記外表面を、ステンレス鋼で構成することができる。
【0220】
前記成形型は、人工心臓弁の支持構造を受容するよう構成されうる。
【0221】
前記成形型は、前記支持構造が該成形型に整列可能なよう構成されうる。
【0222】
前記成形型は、前記支持構造が該成形型と連結可能なよう構成されうる。
【0223】
前記成形型は、支持構造の基部を受容するためのベース部と、前記液体を凝固させて前記柔軟なリーフレットを形成するための外表面を有するマンドレル部とを備えうる。
【0224】
前記外表面は、前記成形型のベース部と隣接する第3のエッジ、および該第3のエッジの反対側に位置する第4のエッジを備えうる。
【0225】
前記第3のエッジと第4のエッジ間を通る前記成形型の外表面を通る複数の横断面のそれぞれは、前記第1のエッジからジャンクションへと伸長する外向き凸部と、前記第2のエッジから前記ジャンクションへと伸長する外向き凹部とを形成する。
【0226】
前記成形型は、該成形型を貫通して伸長するスルーホールを備えうる。
【0227】
前記スルーホールは、ディップ成形の際に、前記液体が前記スルーホール内に浸入することを防ぐ閉塞部材を受容するよう構成されうる。
【0228】
前記スルーホールは、ディップ成形の後に、前記凝固または乾燥した液体を前記外表面から分離することを補助する分離流体を受容するよう構成されうる。
【0229】
前記スルーホールは、水、食塩水などの分離流体を受容するよう構成されうる。
【0230】
前記スルーホールは、空気などのガス状分離流体を受容するよう構成されうる。
【0231】
前記スルーホールは、加圧された分離流体を受容するよう構成されうる。
【0232】
前記スルーホールは、前記分離流体を含んだシリンジを受容するよう構成されうる。
【0233】
前記液体は、溶融物質を含みうる。
【0234】
前記液体は、合成材料を含みうる。
【0235】
前記液体は、ポリマー材料を含みうる。
【0236】
前記液体は、ポリウレタンを含みうる。
【0237】
前記液体は、溶液を含みうる。
【0238】
前記液体は、ポリウレタン溶液を含みうる。
【0239】
本発明の第1の態様について言及した1つ以上の選択的特徴は、単独あるいは組み合わせて、第8の態様に適用可能である。
【0240】
本発明の第9の態様により、人工心臓弁を人間または動物に移植する際に用いる方法が提供される。該方法は、前記取り付けリングの環状基部の少なくとも一部の回りを、所定長さの縫合糸でルーピングすることにより、取り付けリングを人間または動物の導管に縫い付けるステップを含む。
【0241】
前記方法は、連続する所定長さの縫合糸を用いて、前記基部の回りを繰り返しルーピングするステップを含みうる。このような連続縫合により、縫合過程を簡易化できる。
【0242】
このような方法により、周知の縫合リングよりも径方向の広がりが小さい環状基部を有する取り付けリングを、使用することが可能となる。周知の縫合リングの場合、その取り付けは、該リングの基部に糸を通過させて、人間または動物の導管に縫い付けるため、より大きな径方向の広がりが必要となる。径方向の広がりがより小さい基部を用いることにより、より大きな血流アパーチャを形成する取り付けリングを、人工心臓弁に使用することが可能となる。
【0243】
前記取り付けリングの外表面は、前記導管の内表面とシール係合するよう構成されうる。
【0244】
前記方法は、前記取り付けリングおよび人工心臓弁を通って伸長する血液流路の周囲をシールするため、前記人工心臓弁を前記取り付けリングとシール係合して保持するステップを含みうる。
【0245】
本発明の第10の態様により、人工心臓弁を人間または動物に移植する際に用いる取り付けリングが提供される。該取り付けリングは、環状の基部を備え、該基部の少なくとも一部の回りを、所定長さの縫合糸によりルーピングして縫合することにより、人間または動物の導管に縫い付けられる。
【0246】
前記取り付けリングの外表面は、前記導管の内表面とシール係合するよう構成されうる。
【0247】
前記取り付けリングは、該取り付けリングおよび人工心臓弁を通って伸長する血液流路の周囲をシールするため、前記人工心臓弁とシール係合して保持されうる。
【0248】
前記取り付けリングの内表面は、前記心臓弁の外表面とシール係合するよう構成されうる。
【0249】
前記基部の径方向の広がりは、0〜3mm、0〜2mm、もしくは0〜1mmでありうる。これにより、より大きな血流用アパーチャを備える人工心臓弁とともに、前記取り付けリングを使用することが可能となる。
【0250】
前記基部は、手術中に手術針が通過することを防止するよう構成された環状の支持構造を備えうる。これとは対照的に、周知の縫合リングは、手術の際に手術針が通過可能なよう構成された環状支持構造を備える。
【0251】
前記支持構造は、金属、ステンレス鋼、チタン、ポリマーおよび/またはポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)で構成されうる。
【0252】
前記取り付けリングは、前記支持構造の少なくとも一部の周囲を伸長する、弾力的で変形可能な被覆材料を備えうる。
【0253】
前記被覆材料は、ダクロン(登録商標)により構成されうる。
【0254】
前記取り付けリングは、人工心臓弁の相補的機構と係合する係合機構を備えうる。
【0255】
前記取り付けリングは、中心軸方向を画定するアパーチャを形成することができ、該中心軸方向に沿って、前記係合機構が人工心臓弁の相補的機構と係合するよう構成できる。
【0256】
前記係合機構は、前記軸方向に沿って伸長しうる。これにより、手術中、前記人工心臓弁を前記取り付けリングと係合する作業が簡略化され、たとえば、前記導管の範囲内での係合が可能となる。
【0257】
前記係合機構の断面は、円形ではない対称断面、たとえば、略正方形または略長方形断面でありうる。これにより、前記人工心臓弁と前記取り付けリングとが相互に正しく整列した場合、両者の係合を確実化できる。
【0258】
前記係合機構は、雌型係合機構でありうる。
【0259】
前記係合機構は、雄型係合機構でありうる。
【0260】
前記係合機構は、人工心臓弁の相補的機構とロック係合するよう構成されうる。
【0261】
前記係合機構は、人工心臓弁のより硬い相補的機構との係合に際して、弾力的に変形するよう構成されうる。
【0262】
前記係合機構を硬くし、人工心臓弁との係合に際して、該人工心臓弁の相補的機構を弾力的に変形するよう構成することも可能である。
【0263】
前記取り付けリングは、人工心臓弁の複数の相補的機構と係合する複数の係合機構を備えうる。
【0264】
本発明の第11の態様により、前記心臓弁および前記取り付けリングを通って伸長する血液流路の周囲をシールするため、本発明の第10の態様における取り付けリングとシール係合して保持される人工心臓弁が提供される。
【0265】
本発明の第12の態様により、第11の態様における人工心臓弁と係合した第10の態様における取り付けリングを備える人工心臓弁アセンブリが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0266】
図1(a)】図1(a)は、本来の大動脈弁の部分切り取り斜視図であり、該大動脈弁の一部とリーフレットを1枚取り外した状態で示す。
図1(b)】図1(b)は、閉配置にある図1(a)の本来の大動脈弁を流出側から見た図である。
図1(c)】図1(c)は、閉配置にある図1(a)の本来の大動脈弁の長手方向の断面図である。
図1(d)】図1(d)は、開配置にある図1(a)の本来の大動脈弁を流出側から見た図である。
図1(e)】図1(e)は、開配置にある図1(a)の本来の大動脈弁の長手方向の断面図である。
図2(a)】図2(a)は、心膜生体弁の斜視図である。
図2(b)】図2(b)は、閉配置にある図2(a)の生体弁を流出側から見た図である。
図2(c)】図2(c)は、開配置にある図2(a)の生体弁を流出側から見た図である。
図3(a)】図3(a)は、3枚の比較的硬いリーフレットを有し、血行動態機能が悪い合成ポリマー弁の斜視図である。
図3(b)】図3(b)は、開配置にあるが、開口が十分ではない図3(a)の合成ポリマー弁を流出側から見た図である。
図3(c)】図3(c)は、3枚の比較的柔軟なリーフレットを有し、耐久性が悪い合成ポリマー弁の斜視図である。
図3(d)】図3(b)は、開配置にあり、高い曲げ応力を示す、図3(a)の合成ポリマー弁を流出側から見た図である。
図3(e)】図3(e)は、図3(c)の合成ポリマー弁を、繰り返し疲労試験器にかけた後に生じる典型的な引き裂けの位置を示す。
図4図4は、本発明の合成ポリマー弁の実施例の1つを示す斜視図である。
図5(a)】図5(a)は、図4の合成ポリマー弁のフレームを示す斜視図である。
図5(b)】図5(b)は、流出側から見た図4の合成ポリマー弁の等高線図である。
図6図6は、対象者の心臓内の異なる2カ所に配された、図4の合成ポリマー弁の切り取り略図である。
図7図7は、流出側から見た図4の合成ポリマー弁の、異なる作動位置における部分的等高線図である。
図8図8は、ディップ成形型に配置した図4の弁フレームの斜視図である。
図9図9は、図8の成形型の長手方向の断面図である。
図10(a)】図10(a)は、図4の弁のフレーム基部付近の長手方向の断面図であり、基部を包囲するリーフレット示す。
図10(b)】図10(b)は、図4の弁のフレームポスト部付近の横方向の断面図であり、ポスト部を包囲し、ポスト部のスリットを通過して伸長する、一体的に形成された隣接するリーフレットを示す。
図11図11は、本発明のもう1つの実施例である2つのリーフレットを備える弁を、流出側から見た図であり、リーフレットの閉配置(実線)と開配置(破線)を示す。
図12(a)】図12(a)は、図4の合成ポリマー弁の第1の代替フレームを示す斜視図である。
図12(b)】図12(b)は、図12(a)の弁のフレーム基部付近の長手方向の断面図であり、基部を包囲して伸長するリーフレット示す。
図13(a)】図13(a)は、図4の合成ポリマー弁の第2の代替フレームを示す斜視図である。
図13(b)】図13(b)は、図13(a)の弁のフレーム基部付近の長手方向の断面図であり、基部を包囲して伸長するリーフレット示す。
図14(a)】図14(a)は、本発明の合成ポリマー弁のさらにもう1つの実施例を示す斜視図である。
図14(b)】図14(b)は、流出側から見た図14(a)の合成ポリマー弁の、異なる作動位置における部分的等高線図である。
図15(a)】図15(a)は、人工心臓弁のフレームと取り付けリングの組立てを示す概略斜視図である。
図15(b)】図15(b)は、図15(a)の取り付けリングの概略平面図である。
図15(c)】図15(c)は、図15(a)の取り付けリングの基部の断面図である。
図15(d)】図15(b)は、図15(a)の取り付けリングの基部を、雌型係合機構の付近で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0267】
図1(a)〜図1(e)に示すように、本来の大動脈弁2は、大動脈6の起始部の周囲と連結した、薄い可撓性の組織からなる3枚のポケット状のリーフレット4で構成される。リーフレット4は、曲線縁9に沿って大動脈6の内壁8と連結する。各リーフレット4は、自由縁10を有しており、それぞれの自由縁10は、大動脈6に対して、ほぼ横平面に伸長し、交連と呼ばれる部位11で、大動脈壁8と連結する。図1(b)および図1(c)に示すように、弁2が閉配置にある場合、リーフレット4は、互いに密接する。図1(b)に示すように、弁2が閉配置にある場合、リーフレット4は、流出側から見て、ほぼ凸面体を形成する。リーフレット4は、弁2の両側の圧力差に受動的に対応して、図1(d)および図1(e)に示す開配置へと動き、心室の収縮期(排出期)に、左心室(図示せず)からの血液を一方向に送り出し、拡張期(充満期)には閉じて、心室への逆流を阻止する。
【0268】
図2(a)は、生体弁12の斜視図であり、図2(b)および図2(c)は、同じ生体弁12を、それぞれ閉配置および開配置において示したものである。生体弁12は、仔ウシなどの心膜(心臓を包む繊維質の嚢)を利用しており、環状の縫い付けリング基部18と、そこから伸長する3つの突起部20とを備えたステントと呼ばれるフレーム16内(または周囲)に、心膜のリーフレット14が取り付けられている。
【0269】
図3(a)は、合成ポリマー弁22を示しているが、フレーム26に取り付けられた3枚のリーフレット24は、比較的硬い合成ポリマーでできている。フレーム26は、図3(b)に示すように、流入開口部(流入アパーチャ29)を形成する環状の縫い付けリング基部28を備え、そこから3つの突起部30が伸長する。突起部30は、基部28を通って伸長するほぼ円筒形の面上に位置する。さらに、突起部30が伸長する、その同じ円筒形の面上の曲線32に沿って、リーフレット24が、それぞれフレーム26に取り付けられている。しかしながら、このような合成ポリマー弁22は、図3(b)に示す開配置にある合成ポリマー弁22を見ると分かるように、容認し難いほどに血流を制限してしまうため、血行動態機能が悪い。リーフレット24を形成するポリマーが硬く、伸張しにくかったり(高弾性率)、リーフレットが厚かったり、あるいは、合成ポリマーが何らかの方法で(ファイバーネットワークを施したり、カーボンナノチューブを埋め込んだりして)内部補強されている場合、リーフレット24が、そこを横切る圧力の差に速やかに対応して動くことは困難となる。その結果、臨床的に許容し難い血流障害となり、また、閉鎖反応の緩慢さにより、過剰な血液の逆流を招く(「血行動態機能が悪い」)。開いたリーフレット24の自由端34で形成される流出開口部(流出オリフィス33)は、流入アパーチャ29と同じ寸法までは至らない。これは、1つには、流入アパーチャ29の周囲で計測した、フレーム26の隣接する連結部35同士の距離(dを流入アパーチャ29の直径として、πd/3)が、1枚のリーフレットにおける自由端34の長さよりも大きいためであり、1つには、リーフレット24に特有の硬さのため、連結部35と隣接する自由端34の連結域は、理論上の全開配置までは開かないためである。こうした十分に開かない硬いポリマー弁22は、血行動態機能が悪く、また、連結域において、不完全にしか開かないリーフレット24の下に、血流の遅いエリアを生じさせるため、血液凝固が起こりやすくなる。
【0270】
図3(c)は、合成ポリマー弁42を示しているが、フレーム46に取り付けられた3枚のリーフレット44は、比較的柔軟な合成ポリマーでできている。フレーム46は、流入アパーチャ49を形成する環状の縫い付けリング基部48と、そこから伸長する3つの突起部50を備える(図3(d))。突起部50は、基部48を通って伸長する円筒面上に位置する。突起部50が伸長する、その同じ円筒面上の曲線52に沿って、リーフレット44が、それぞれフレーム46に取り付けられている。このような合成ポリマー弁42においては、図3(d)に示す開配置にある場合の血流制限が緩和されているが、その代わリ、図3(a)の合成ポリマー弁22よりも耐用期間が短い。リーフレット44を形成するポリマーが、伸張しやすかったり(低弾性率)、リーフレット44が非常に薄かったりする場合、リーフレット44は、そこを横切る圧力の差に速やかに対応して動くことができる(「血行動態機能が良好である」)。こうしたリーフレット44の場合、血流障害はほとんど起こらず、また、閉鎖反応も俊敏で、弁42を通る血液の逆流を低減するが、耐久性に限界がある。弁42は、絶え間ない開閉による応力に耐えきることができず、最終的には、図3(e)に示すように引き裂けてしまう。
【0271】
図3(c)〜図3(e)に示す弁42のデザイン的特徴も、耐用期間が短いことの一因となっている。リーフレット44を全開に開くためには、連結部55の辺りでリーフレット44を鋭く曲げる必要があり(曲率半径が短い)、その結果、特にリーフレット44の連結域において、局部応力が非常に高くなり、図3(e)に示すように、リーフレット44の連結域に、裂け目58を生じさせることになる。さらに、閉配置ある各自由端60の長さは、フレーム46の突起部50間の距離よりも長いため、リーフレット44の開口時、自由端60が突起部50の間を通る際、鋭く任意に歪んだり、曲がったりする可能性があり、この歪みが各リーフレット44の中部まで伝わって、高い局部応力を生じさせ、最終的にはリーフレット44の中間部に、裂け目62を形成することになってしまう。
[本発明の実施形態の第1例]
図4は、前述した従来の合成ポリマー弁が抱える問題点を、克服または緩和するために考案された、本発明の合成ポリマー弁102の実施形態の第1例を示す。合成ポリマー弁102は、比較的柔軟な3枚のポリウレタン製リーフレット104を、比較的硬いステンレススチール製のフレーム106に連結したものである。これらのリーフレット104は、フレーム106と比較すると柔らかいが、周知の合成ポリマー弁22、42のリーフレットに使用されるものよりは、一般的に、硬く、耐久性のあるポリウレタン材料で形成されている。
【0272】
図5(a)に示すように、フレーム106は、アパーチャ109を形成する略環状の基部108を備え、この基部108から3つのポスト部110が、ほぼ長手方向に伸長する。各リーフレット104は、それぞれの取り付けベースライン112に沿って、フレーム106の基部108に連結される。各リーフレット104は、隣り合った2つのポスト部110の間に、それぞれの取り付けライン114に沿って連結される。取り付けライン114は、ほぼ直線的であり、基部に対して垂直長手方向に伸長する。各リーフレット104は、取り付けベースライン112とは反対側に、フレーム106の2つの隣り合うポスト部110の間を伸長する自由端115を有する。各リーフレットの自由端115は、リーフレット104の両側の圧力差に反応して、フレーム106と相対的に動く。
【0273】
図5(b)は、自然な状態、またな形成時の状態におけるリーフレット104の等高線図であり、フレーム106の基部108からの距離を、一定の高さで増加する等高線1〜11で表している。等高線1は、リーフレット104の取り付けベースライン112を表し、等高線11は、垂直接合域117の下方境界116を示している。垂直接合域117は、リーフレット104の自由端115から垂直接合域117の下方境界116まで伸長する。図5(b)から明らかなように、各リーフレットの横断面は、凸部と凹部とジャンクションである変曲点118を有しており、第1のポスト部110から変曲点118へと伸長する外向き凸部119と、第2のポスト部110から変曲点118へと伸長する外向き凹部120とで、流出側から見た場合、S字形状の断面を形成するようになっている。従って、各リーフレット104の横断面は、リーフレット104の取り付けベースライン112よりも長い。さらに、各リーフレット104の自由端115は、対応する取り付けベースライン112よりも長い。各リーフレット104は、立体的なカーブ形状となっており、立体的な凸部121を変曲点118の一方のサイド、立体的な凹部122を変曲点118のもう一方のサイドに備えている。さらに、各リーフレット104の取り付けライン114は、フレーム106の各ポスト部110の付近において直線的であるため、図5(b)に示される等高線1〜11は、フレーム106の各ポスト部110付近で交わっている。取り付けベースライン112と、接合域117の下方境界116との間におけるリーフレット104の横方向の各断面において、変曲点118は、直線124に沿って位置する。この直線124は、リーフレット104の凹部122と隣接する取り付けライン114と取り付けベースライン112との交点126から、接合域117の下方境界116の中心にある変曲点118まで伸長する。
【0274】
後に詳細に説明するが、製造時、各リーフレットの形状は成形型を用いて形成される。図9は、リーフレットの製造に使用する成形型の長手方向の断面図であり、製造時、リーフレットが合わさって形成される成形型表面の輪郭を示している。従って、リーフレットの等高線番号1〜11で示される外形は、図9において対応する番号1〜11で示される成形型の外形により形成される。
【0275】
使用時において、フレーム106の基部108は、環状の縫い付けリング(図示せず)に組み込まれ、手術では、この縫い付けリングを介して、置換を要する自然な心臓弁が付いているエリア(弁輪)に、人工心臓弁102を縫い付けて固定する。図6(ここで、LAは左心房、LVは左心室、Aoは大動脈を指す)に示すように、人工心臓弁102は、血液が心臓130を通って一方向に適切に流れるよう配向されるため、大動脈弁(心室−動脈弁)および/または僧帽弁(心房−心室弁)の置換に使用できる。
【0276】
弁102が閉配置にある場合(図7の破線C)、柔軟なリーフレット104の各自由端105、およびリーフレット接合域117の各内面は互いに係合し、血流が弁102を通るのを軽減または阻止する。柔軟なリーフレット104にかかる流入側からの圧力が、流出側からの圧力を十分に上回ると(血液放出の始まりに起こる)、リーフレット104は外側に動いて、自由端115は開配置(図7の実線O)に移行し、流出オリフィス132を形成する。流出オリフィス132の最大サイズは、リーフレット自由端115の長さを決定するS字形状のデザインによって、さまざまに変化させることが可能である。図7の実線3、5、7および9は、開配置Oにおけるリーフレット104の等高線である。後に詳細に説明するが、リーフレット104の自由端115は、閉配置Cと開配置Oとの中間にあたる破線Fの位置で形成される。
【0277】
弁102のデザインは、より硬く耐久性のある生体適合性材料をリーフレット104に使用することを可能とし、硬い材料で作られた従来の合成ポリマー心臓弁と比べ、開配置Oにおける血流制限をより緩和することができ、同時に、リーフレット104の引き裂けに対する感受性も低減できる。このような損傷に対する耐性の改善は、リーフレット104の硬さの増加に因るだけではなく、各リーフレット104の横断面に沿って形成された変曲点にも起因する。より具体的には、各リーフレット104の硬さと配置は、次の点で意義がある。すなわち、変曲点118における各リーフレット104の曲率、および/または、変曲点118の両側における各リーフレット104の曲率は、リーフレット104を横切る圧力差の変化に応じて変化するが、リーフレット104の立体的な略凸部121および略凹部121は、一般的に、リーフレット104を横切る圧力差が変化しても持ちこたえるということである。このような動きにより、リーフレット104にかかる応力は、リーフレット104の幅を横切って分散されるため、一定サイズの流出オリフィスを形成する場合、フレーム106付近のリーフレット104の連結域は、図3(c)および図3(e)に示すような従来の合成ポリマー弁44ほど曲がらずに済む。
【0278】
さらに、各リーフレット104の硬さと配置には、各リーフレット104を横切る一定の圧力差に対応する形状を、予め定めることができるという意義もある。一定の圧力差に対する各リーフレット104の予め定められた形状は、各リーフレット104が任意のバックリング(座屈)やリンクリング(シワ寄り)を起こさないよう選択されており、各リーフレット104に過剰な曲げ応力がかからないようになっている。具体的には、各リーフレット104は、開配置から閉配置に至る動きの全てにおいて、予め定められた形状を有している。
【0279】
各リーフレット104が、図7に示す閉配置Cから、それぞれの開配置Oへと、2つの隣り合ったポスト部110の間を動くにつれ、リーフレット104の立体的な略凸部121および略凹部122は、それぞれの取り付けライン114の周りをスウィングまたは旋回する。リーフレット104の自由端115の凸部119および凹部120の曲率は、自由端115沿いの変曲点118が、隣り合うポスト部110を結ぶ直線と交わるまで、ともに増加する。自由端115沿いの変曲点118が、隣り合うポスト部110を結ぶ直線と交わると、自由端凸部119の曲率は減少する一方、自由端凹部120の曲率は増加し、リーフレット104がぞれぞれの開配置Oに達するまで、リーフレット104の立体的な略凹部122が縮小する代わりに、リーフレット104の立体的な略凸部121は増大する。これに対応する変化が、等高線1〜11で示した各リーフレット104の横断面にも観察できる。また、曲率の変化に伴い、リーフレット104の横断面沿いの変曲点118も、リーフレット104の立体的な略凸部121および略凹部122の曲率の変化に合わせて移動する。これにより、弁102の流出側から見た場合、各リーフレット104は、各外面凹部122が縮小するにつれ、各外面凸部121が増大するという予測可能な態様で、連続的に動くことになる。こうした動きにより、各リーフレット104のバックリングやリンクリング、およびこれらに伴い生じる曲げ応力を、回避することができる。また、こうした動きの結果として各リーフレット104に生じる曲げ応力が、閾値を超えぬよう弁102を構成することが可能となり、これによりリーフレット104が引き裂けなどの損傷を受けることを回避できる。
【0280】
3つのリーフレットを備える心臓弁102の各リーフレット104は、弁102の流出側から見た場合に、血液が反時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成している。各リーフレット104の横断面は、弁102の流出側から見た場合に、アパーチャ109の中心軸の回りをほぼ反時計回りに、外向き凸部119、外向き凹部120という順番で続くよう形成されている。使用時、人間または動物の心臓に移植された場合において、このような螺旋状の血流は、周知の人工心臓弁を用いた場合よりも、心臓の作動効率を向上させる。
【0281】
合成心臓弁102のデザインは、本来の心臓弁のデザインからの脱却という重要な意味を持つ。本来の心臓弁は、何百万年もわたって自然に進化してきたものであり、一生を通じてよく働くが、そのために、コラーゲン、エラスチンおよび糖タンパク質をマトリックスとした複雑なリーフレット構造の物理的、生物学的特性に依存している。これを修復、置換することができる生物組織も同様である。合成心臓弁102におけるデザインの原則は、従来の人造の心臓弁に用いられてきたデザインの原則に反するものである。これまでは、人造心臓弁は、自然な心臓弁のデザインを模倣するべきであると説かれてきたのである。具体的には、人工心臓弁102のデザインは、少なくとも、各リーフレット104とフレーム106のポスト部110とを連結する取り付けライン114が直線であるという点で、自然な心臓のデザインを模した従来の人造心臓弁のデザインと異なる。また、各リーフレット104の横断面は、外向きの凸部119と凹部120を形成しており、両者の間には変曲点118が形成されている。さらに、各リーフレット104における全ての横断面および自由端はともに、各リーフレット104の取り付けベースライン112よりも長いという点も、合成心臓弁102の際立った特徴である。
【0282】
図8は、ディップ成形を用いた心臓弁102の製造を表ししている。フレーム106を成形型140に適切に設置し、ポリウレタン溶液に浸した後、オーブンで乾燥させる。成形型140の形状が、成形時の弁リーフレット104の形状を決定する。成形時のリーフレット104の自由端115の形を、図7に破線Fで示す。リーフレット104を横切る圧力差がない場合、リーフレット104は、成形時の形状に戻る傾向にあり、具体的には、リーフレット104の自由端115が、破線Fで示した形状に戻る傾向にある。これは、リーフレットを形成する材料の特性によるものであり、具体的には、リーフレット104がその初期形状、すなわち成形時の位置から離れるように動く際に、リーフレット104を形成する材料に生じる応力によるものである。さらに、リーフレット104の初期形状は、適切な圧力差に対応して、初期形状Fから閉配置Cへと動き、血液の逆流を阻止するため、リーフレット104の自由端115があまり離れすぎないよう、意図的に設計されている。また、リーフレット104の初期形状は、適切な圧力差に対応して、初期形状Fから開配置Oへと即座に動き、弁102を通って前方に流れる血液を可能な限り制限しないよう、意図的に設計されている。
【0283】
図9は、フレーム106を設置する前の成形型140を示す。成形型140は、ステンレス鋼製で、支持部材(図示せず)に取り付けるためのネジ式取り付け部142と、本体部144を備えている。本体部144の表面146は、ポリウレタン溶液が乾いた後、成形型140から人工心臓弁102を取り外しやすくするため、高度に研磨されている。中心に位置するスルーホール148が、成形型140を長手方向に伸長する。スルーホール148は、シャンク部152とヘッド部154とを有する閉塞ピン150を受容するよう構成される。閉塞ピン150のシャンク部152は、ディップ成形中、スルーホール148の中にポリエチレン溶液が浸入することを防ぐため、スルーホール148を閉塞する役割を果たす。閉塞ピン150のヘッド部154は、成形型140の取り付け部142に形成されたスルーホール148の開口部155周辺地帯に、ポリウレタン溶液が付かぬよう広く保護する役割を果たす。成形型140は、フレーム106を整列させ、位置決めピン(図示せず)を用いて成形型140に取り付けるための位置決めホール156を備える。これにより、ディップ成形過程において、成形型140とフレーム105が相対的に動いてしまうことが防止される。また、成形型の各側端部158を、フレーム106の対応するポスト部110に隣接させて整列させることが、確実にできるようになる。
【0284】
ディップ成形後、閉塞ピンおよび位置決めピンを、成形型140から取り外す。その後、成形型140から人工心臓弁102を取り外すが、その際、水または食塩水などの流体をスルーホールの開口部155から注入して分離を助け、成形型140の本体部144の磨き上げられた表面146から、リーフレット104が平面的に分離するよう促す。なお、成形型は、接合域117の下方境界116(成形型140上の等高線11で示す)の上のレベルでポリウレタン溶液が固まるよう、ポリエチレン溶液に浸される。その後、等高線11より上のレベルでリーフレット104を切りそろえる(トリミングする)。これにより、自由端115を形成し、下方境界116から自由端115までの、接合域117の高さを決定する。
【0285】
このディップ成形過程により、図10(a)に示すように、基部108を含むフレーム106を、ポリマーで包むことが可能となり、また、図10(b)に示すように、フレーム106のポスト部110に設けたスリット160を通して、フレーム106をポリマーで完全に包み込んで、リーフレット104と一体的に形成することが可能となり、リーフレット104とフレーム106の連結を確実ならしめることができる。こうした製造工程において、ポリウレタンの連続シートでフレーム106を包囲することにより、リーフレット104の一体的な形成および、リーフレット104とフレーム106の確実な連結が実現される。これには、次のような利点がある。すなわち、リーフレット104の連結が、フレーム106の一カ所または数カ所に対しての接着に限定されないため、リーフレット104がフレーム106から外れるリスクを低減させることができる。さらに、リーフレット104が予め定められた形状でスリット160に入り、および/または、スリット160から出ることができるよう、スリット160に角度をつけている。この角度により、リーフレット104の横断面のポスト部110付近の曲率と、リーフレット104の横断面の凸部119および凹部120の曲率との連続性を確保することができる。
[本発明の実施形態の第2例]
図11は、本発明の合成ポリマー弁の実施形態の第2例を示す。第2例において、合成ポリマー弁202は、フレーム206と連結した柔軟な2枚のリーフレット204を備える。血液が流れるためのアパーチャを形成する基部208からは、2つのポスト部210が伸長しており、それぞれのポスト部210が形成する2本のほぼ直線的な取り付けラインに沿って、リーフレット204はフレーム206と連結される。さらに、各リーフレット204は、取り付けベースライン212に沿って、フレーム206の基部208に連結される。各リーフレット204は、血流方向に、自由端215へと伸長する。自由端215は、閉配置から(図11の実線C)開配置(図11の破線O)へと移動できる。2つのリーフレットを備える心臓弁202のリーフレット204は、弁202の流出側から見た場合に、血液が時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成している。各リーフレット204の横断面は、弁202の流出側から見た場合に、基部208の中心軸の回りをほぼ反時計回りに、外向き凹部、外向き凸部という順番で続くよう形成される。その他の点において、2つのリーフレットを備える心臓弁202は、前述した3つのリーフレットを備える合成ポリマー心臓弁102のデザイン原理と同様の原理に基づき設計されており、同じように機能する。
【0286】
本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更を加えることが可能であることは、当業者であれば十分に理解できることである。たとえば、図12(a)は、図4の合成ポリマー弁104に用いることが可能な、第1の代替フレーム306の斜視図である。フレーム306は、基部308と、基部308を貫通する多数のスルーホール370を備える。図12(b)は、図12(a)に示すフレームの基部308付近を、縦断面で表したものあり、スルーホール370を通って伸長し、基部308を包囲するリーフレット304を示している。各スルーホール370には、水平に対して上向きにおよそ30度の角度がつけられており、基部308と隣接するリーフレット304の曲率と、リーフレット304の凸部321および凹部322の曲率との連続性を確保している。
【0287】
図13(a)は、図4の合成ポリマー弁104に用いることが可能な、第2の代替フレーム406の斜視図である。フレーム406は、基部408と、基部408を貫通する多数のスリット480を備える。図13(b)は、図13(a)に示すフレームの基部408付近を、縦断面で表したものあり、スリット480を通って伸長し、基部408を包囲するリーフレット404を示している。各スリット480には、水平に対して上向きにおよそ30度の角度がつけられており、基部408と隣接するリーフレット404の曲率と、リーフレット404の凸部421および凹部422の曲率との連続性を確保している。
【0288】
図4の合成ポリマー弁104に用いることが可能な、さらなるフレームの代替例(図示せず)として、ほぼ直線的な取り付けラインに沿って、リーフレットをフレームのポスト部に連結するためのスリットの代わりに、各ポスト部に沿って整列した多数のスルーホールを形成し、ほぼ直線的な取り付けラインに沿ってリーフレットを連結することも可能である。
【0289】
フレーム106を、硬質または半硬質ではなく、むしろ柔軟にする場合もある。フレーム106を拡張可能とし、たとえば、成長過程にある子供などを対象とする場合、弁102、202が自然な成長に合わせて拡大するようにしたり、バルーンやその他の手段を用いて、リーフレット104、204の機能を損なったり、漏出を発生させることなく、弁を強制的に膨張させることも可能である。接合域117、217におけるリーフレット117、217の密着性は、弁102、202の拡大と共にポスト部110、210が離れて動く際、リーフレットの曲率が変化することで維持される。
【0290】
いくつかの実施形態において、1つ以上のリーフレットは、弁の流出側から見た場合に、血液が反時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成する。各リーフレットの横断面は、弁の流出側から見た場合に、アパーチャの中心軸の回りをほぼ反時計回りに、外向き凸部、外向き凹部という順番で続くよう形成される。たとえば、図4図5(b)、図7、および図8における3つのリーフレットを備えた心臓弁102において、リーフレット104は、弁102の流出側から見た場合に、血液が反時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成している。その他の実施例において、1つ以上のリーフレットは、弁の流出側から見た場合に、血液が時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成する。各リーフレットの横断面は、弁の流出側から見た場合に、アパーチャの中心軸の回りをほぼ反時計回りに、外向き凹部、外向き凸部という順番で続くよう形成される。たとえば、図11における2つのリーフレットを備えた心臓弁202において、リーフレット204は、弁202の流出側から見た場合に、血液が時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成している。同様に、図14(a)および図14(b)における3つのリーフレットを備えた心臓弁302も、リーフレット304は、弁302の流出側から見た場合に、血液が時計回りの螺旋に流れるよう促す横断面を形成する。
【0291】
図15(a)は、人工心臓弁フレーム406と取り付けリング500の組み立てを、概略的に斜視図で示す。図15(a)および図15(b)に示すように、取り付けリング500は、レセプタクル形状の3つの雌型係合機構を円周方向に配した環状の基部502を備える。図15(c)に示す基部502の断面図から明らかなように、基部502は、弾力的で変形可能な被覆材料508(ダクロン(登録商標)層)で包まれた環状の支持機構506を備える。使用時において、基部502は、連続的な所定長さの縫合糸を基部502の回りに繰り返しルーピングすることによる連続縫合510で、人間または動物の心臓内の導管(図示せず)に縫い付けられる。その後、ダクロン(登録商標)層508を通路の内側表面(図示せず)に押しつけ、基部502の外側表面周囲との間をシールする。縫い目510は、ダクロン層508の中に沈み込む。これにより、基部502の外側表面と前記導管(図示せず)の内側表面間のシールを妨害することがなくなり、また、その後、基部502の内側表面とフレーム406の環状基部408の外側表面との間に形成されるシールも妨害せずに済む。このような縫い付け方法により、周知の縫い付けリングよりも、径方向の広がりが、かなり小さい環状基部502を有する取り付けリング500の使用が可能となる。これにより、より大きな血流アパーチャを形成する人工心臓弁の使用が可能となる。
【0292】
図15(d)に示すように、各レセプタクル504は、収納凹部512と、この収納凹部512を横切って下方に伸長する弾力的な変形可能部材514とを備える。人工心臓弁のフレーム406は、脚部518と足部520を有する差し込みピン形状の3つの硬質な雄型係合機構516を備える。各差し込みピン516の断面は、ほぼ長方形形状で、対応する収納凹部512内に収まるようになっている。組み立ての際に、各差し込みピン516を対応する収納凹部512に位置合わせして押し入れ、まず差し込みピン516の足部520を変形可能部材514に嵌め合わせ、続いて変形可能部材514を変形させる。足部520が、完全に収納凹部512内に押し込まれ、収納凹部512の閉口終端522と係合すると、変形可能部材514の下端部524は、自然な位置へと跳ね戻り、対応する差し込みピン516を収納凹部512内に係合してロックする。このような押し込み式の構成により、人間や動物の心臓内導管(図示せず)への人工心臓弁フレーム406の取り付けが簡易化できる。
【符号の説明】
【0293】
2 大動脈弁
4 リーフレット
6 大動脈
8 大動脈内壁
10 自由端
11 交連
12 生体弁
14 リーフレット
16 フレーム
18 縫合リング基部
20 突起部
22 合成ポリマー弁
24 リーフレット
26 フレーム
28 縫合リング基部
29 アパーチャ
30 突起部
33 オリフィス
34 自由端
35 連結部
42 合成ポリマー弁
44 リーフレット
46 フレーム
50 突起部
58 裂け目
60 自由端
102 合成ポリマー弁
104 リーフレット
106 フレーム
108 フレーム基部
109 アパーチャ
110 ポスト部
114 取り付けライン
115 自由端
116 下方境界
117 接合域
118 変曲点
119 (横断面)外向き凸部
120 (横断面)外向き凹部
121 (立体的)外向き凸部
122 (立体的)外向き凹部
126 取り付けライン交点
130 心臓
132 オリフィス
140 成形型
142 取り付け部
144 本体部
146 本体部表面
148 スルーホール
150 閉塞ピン
152 シャンク部
154 ヘッド部
155 開口部
156 位置決めホール
158 側端部
202 合成ポリマー弁
204 リーフレット
206 フレーム
208 フレーム基部
217 接合域
304 リーフレット
306 フレーム
308 フレーム基部
370 スルーホール
404 リーフレット
406 フレーム
408 フレーム基部
480 スリット
500 取り付けリング
502 取り付けリング基部
504 レセプタクル
508 ダクロン層(被服材料)
510 縫合糸/縫い目
512 収納凹部
514 変形可能部材
516 雄型係合機構/差し込みピン
518 脚部
520 足部
522 閉口終端
524 下端部

図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図3(e)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11
図12(a)】
図12(b)】
図13(a)】
図13(b)】
図14(a)】
図14(b)】
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】
図15(d)】