(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長分離器上に異なる角度で入射する光信号がチャネル偏向要素のそれぞれ異なるアレイと結合することに対応するために、チャネル偏向要素の前記アレイのうちの2つ以上を互いに対して任意の角度に配向する、請求項1に記載の波長スイッチ・システム。
前記複数のコリメータ要素の各コリメータ要素が、2つ以上の導波路と、前記2つ以上の導波路に光学的に結合された単一のレンズとを含み、前記2つ以上の導波路を一定のオフセットだけ離している、請求項1に記載の波長スイッチ・システム。
前記2つ以上のアレイの前記チャネル偏向要素が、微小電気機械システム(MEMS)鏡、液晶オンシリコン(LCOS)装置、双安定液晶、UV硬化性光媒体、または光屈折ホログラフィック格子を含む、請求項1に記載の波長スイッチ・システム。
チャネル偏向要素の前記2つ以上のアレイのうちの1つから発する組のスペクトルチャネルを受け取るように構成され、前記組のスペクトルチャネルの方向を、チャネル偏向要素の前記2つ以上のアレイのうちの他の1つへ変更するように構成された方向変換光学系をさらに含む、請求項1に記載の波長スイッチ・システム。
前記波長分離器と、チャネル偏向要素の前記アレイの間と、チャネル偏向要素の前記アレイと、前記方向変換光学系の間とに光学的に結合された集束光学系をさらに含み、前記2つの円柱レンズと集束光学系とは4f光学系を形成するように構成されている、請求項9に記載の波長スイッチ・システム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、その設計態様の大部分を保持しながら、波長スイッチ・システムの柔軟性を高めることができる光学的構成を利用する。
はじめに
発明性がある波長選択スイッチ(WSS)構成の利点を明らかにするには、従来のWSSの詳細を理解することが役立つ。
図1A〜
図1Bは、先行技術の波長スイッチ・システム(WSS)の実施例を示している。
図1AはWSSの平面図を示しており、一方、
図1BはWSSの横断面図を示している。WSS100は、ファイバ・コリメータ・アレイ103と、一連のリレー光学系(set of relay optics)105の集合と、波長分離器(wavelength separator)107と、集束光学系109と、チャネル偏向要素のアレイ111(array of channel deflective elements)とを含む。WSS100は、1つ以上のマルチチャネル光信号101を受け取り、マルチチャネル光信号101の構成チャネルを、対応する出力ポート106に案内するように構成されている。各マルチチャネル光信号101は、さまざまな波長を単一の高速信号に多重化することにより生成される。
【0008】
ファイバ・コリメータ・アレイ103は、複数の入力ポート104と複数の出力ポート106とを含む。各入力ポート104は、単一のマルチチャネル光信号101を受け取り、マルチチャネル光信号101をリレー光学系の集合105へ案内するように構成されている。説明のために、単一のマルチチャネル光信号101だけがWSS100を通過するが、利用できる入出力ポートの個数に応じて、いくつかのマルチチャネル光信号の方向を同時に変えるようにWSS100を構成してもよいことに注目することが重要である。
【0009】
リレー光学系105は、マルチチャネル光信号101をスペクトルビームに変換して、そのスペクトルビームを波長分離器107へ案内するように構成されている。リレー光学系105は、アナモルフィック・ビーム・エキスパンダ(anamorphic beam expander)を用いて実現してもよい。その後、波長分離器107は、マルチチャネル光信号101に対応するスペクトルビームを、その構成スペクトルチャネル(すなわち、波長)に分離して、それらのスペクトルチャネルを集束光学系の集合109へ向かうように構成されている。限定するためではなく、一例として、波長分離器107は、干渉フィルタ、偏光フィルタ、アレイ導波路格子、プリズムなどを用いて実現してもよい。
【0010】
集束光学系109は、個々のスペクトルチャネルを受け取り、個々のスペクトルチャネルを、チャネル偏向要素のアレイ111へ案内するように構成してもよい。各スペクトルチャネルを、WSS100の構成に応じて、対応するチャネル偏向要素113へ案内する。関連するスイッチングの特徴に応じて、アレイ111内の各チャネル偏向要素113は、異なるスペクトルチャネルを、異なる出力ポート106へ案内するように配置してもよい。偏向要素113をそのように機能するように設定すれば、2つの異なるスペクトルチャネルを同じ出力ポート106に案内することができることに注目することが重要である。チャネル偏向要素113は、微小電気機械システム(MEMS)鏡、双安定液晶、UV硬化性光媒体、光屈折ホログラフィック格子などを用いて実現してもよい。
【0011】
図1A〜
図1Bに示す種類のスイッチ内のチャネルの個数が、コリメータ・アレイ103内のポートの個数に依存することが分かる。本明細書で使用する場合、用語「ポート」は、光信号を光スイッチに結合するか、または光信号を光スイッチから切り離すように構成された光路を指している。
図1A〜
図1Bに示すような従来の構成のWSSでは、コリメータ当たり1つのポート、例えば、1つの光路などがある。したがって、
図1A〜
図1Bに示す種類のスイッチ内のポートの個数が増加すると、アレイ内のコリメータの個数の増加が必要となる。これは、さらに、コリメータ・アレイ103、リレー光学系105、波長分離器107の大きさの増加、および偏向要素111の角度範囲の増加が必要となる。
【0012】
本発明の任意の実施形態について説明する前に、光学構造のいくつかの基本的原理を説明しておく必要がある。
図2に示すように、2つの焦点の間で、レンズ203が、前焦点面および後焦点面における角度および位置の空間においてフーリエ変換を行うと言われている。
図2Aおよび
図2Bを参照して、この概念をより詳しく説明する。
図2Aでは、レンズ203の左側から伝搬する2本の平行光線が、レンズの右側の焦点面201’の同じ点を通る。同様に、
図2Bでは、レンズの左側の焦点面201の同じ点から伝搬する2本の光線が、2本の光線の最初の角度方向にかかわらず、レンズの右側の同じ方向に伝播する。
【0013】
このように、光スイッチングを行うには、所与の光学構造では、その光学部品と、その関連する空間とを整合させる必要がある。
図1A〜
図1Bでは、波長分離器により、マルチチャネル光信号を、異なる角度の構成チャネル(すなわち、波長)に分散される。したがって、チャネルは、異なる位置において集束光学系に到達して、その後、この集束光学系はチャネルを異なる偏向要素に案内する。偏向要素を異なる位置に向けて、構成チャネルについて角度変調を行い、この角度変調はチャネルが波長分離器に到達する位置を変更して、任意のチャネルを、どの出力ポートへ案内するかを最終的に決定する。
【0014】
リレー光学系、格子、およびレンズを含む光学部品の費用のほかに、光学系の位置合わせに関連する費用も非常に高額である。したがって、光学構造の能力を最大にすることが非常に望ましい。
図1A〜
図1Bに示すスイッチの構成は、所与のWSS内のスイッチングに対して許容されるマルチチャネル光信号の個数を増加させるには、ポートの個数を増加させる必要があることを示す。これは、単一のマルチチャネル光信号だけを送受信するように各ポートが構成されるためである。ポート数の増加は、垂直方向または水平方向での光学部品の増加を必然的にもたらすことになる。
【0015】
垂直方向寸法では、ファイバ・コリメータ・アレイの大きさが、ポート数の増加を補償するように増大する。その結果、光学系全体(例えば、リレー光学系、波長分離器、集束光学など)の高さの増加につながり、これは費用に大きな影響を与えることになる。さらにまた、垂直方向寸法の増加は、個々のチャネル偏向要素の角度範囲の増加に対する必要性を生み出すことになるが、この必要性は容易には実現できない可能性がある。
【0016】
水平方向寸法では、ポート数の増加を補償するために、コリメータ・アレイを2xNまたはMxNの大きさまで拡大される。これは、ファイバ・コリメータ・アレイに関連するレンズ系の大きさおよび開口数(NA)の大幅な増加を必要とすることになるが、低挿入損失に対して低収差を達成しようとしているときに、これを実現するのはかなり困難である。さらに、リレー光学系、波長分離器、および集束光学系の表面積を増加させる必要があるが、それはWSSの全費用および大きさを増大させることになる。
【0017】
角度多重化WSS
切り替えられるマルチチャネル光信号の個数を増加させることに関連する費用を最小にするために、本発明の実施形態は、ポートの個数を増加させたときにも、光学系の大きさの増大を防ごうとする。コリメータの個数を増加させて、かつ垂直方向または水平方向に光学系を拡大するという手段ではなく、本発明の実施形態は、一度に2つ以上のマルチチャネル光信号を送受信するように各コリメータを再構成することにより、切り替えられるマルチチャネル光信号の許容数を増加させる。実際には、各コリメータが2つ以上の異なるポートを収容するように構成できる。これは、上述の光学構造の基本的原理(例えば、格子に対して同じ点に異なる角度で入射する2つの光信号など)を適用することにより、同一のリレー光学系、波長分離器、および集束レンズを用いて行うことができる。
【0018】
図3A〜
図3Bは、本発明の実施形態の、角度多重化光学系を用いる波長スイッチ・システムを示す模式図である。
図3AはWSSの平面図を示しており、一方、
図3Bは同じWSSの横断面図を提供している。WSS300は、コリメータ・アレイ303と、リレー光学系305と、波長分離器307と、集束光学系309と、2つの偏向器アレイ311、312とを含む。複数のコリメータ要素304でコリメータ・アレイ303を構成してもよい。同時に2つ以上の異なるポートに対応する異なる光路を介して2つ以上のマルチチャネル光信号301、302を送受信するようにコリメータ・アレイ303内の各コリメータ要素304を構成してもよい。例えば、光ファイバまたは光導波路などを用いて、異なる光路を実現してもよい。説明のために、我々の実施例では、WSS300は2つのマルチチャネル光信号301、302の全てだけを切り替えている。同時に3つ以上のマルチチャネル光信号を送受信するようにそれぞれの入出力コリメータを構成してもよいことに注目することが重要である。
【0019】
限定するためではなく、一例として、各コリメータ要素304はレンズを含んでいてもよい。レンズが異なる角度で光信号を偏向させるように形成された異なる光路により、インバウンド(inbound)のマルチチャネル光信号をレンズに案内することができる。レンズの光学的動作が可逆的である場合には、コリメータ要素304は、異なる角度でレンズ上に入射するアウトバウンド(outbound)の光信号を、異なる光路に同様に結合できる。
【0020】
図3Bを参照すると、コリメータ304は、2つのインバウンドのマルチチャネル光信号301、302を受け取る。コリメータ304は、これらの2つのマルチチャネル光信号301、302をリレー光学系305へ異なる角度で案内するように構成されている。これらの2つのマルチチャネル光信号301、302が入力ポート304を出る角度は、WSS300の全体的な目的に依存することができ、WSSごとに変化してもよい。その後、リレー光学系305は各マルチチャネル光信号301、302を取り込み、それらを対応するスペクトルビームに変換するとともに、同時に、各信号がコリメータ304を出る異なる角度を、各ビームが波長分離器307上に入射する異なる角度に変換する。マルチチャネル光信号に対応する各スペクトルビームが、異なる角度ではあるが同じ点Pで波長分離器307に到達することになる。波長分離器307が集束光学系309の焦点面に位置する場合、2本のスペクトルビームは上述の光学構造の基本的原理に基づいて動くことになる(すなわち、2本のスペクトルビームは平行に集束光学系を出る)。
【0021】
集束光学系309は、実線で表した第1のマルチチャネル光信号301をチャネル偏向要素のアレイ312へ導き、このチャネル偏向要素のアレイ312は、以下、偏向器アレイBと呼ぶ。集束光学系309は、点線で表した第2のマルチチャネル光信号302をチャネル偏向要素311の第2アレイへ導き、このチャネル偏向要素のアレイ311は、以下、偏向器アレイAと呼ぶ。その後、偏向器アレイ311、312は、WSS300の要求に応じて、構成チャネルの方向を、異なるコリメータ要素306内の出力ポートへ変えることができる。限定するためではなく、一例として、偏向器アレイ内の偏向器要素は微小電気機械システム(MEMS)鏡であってもよい。しかしながら、本発明の実施形態はMEMS鏡を利用する実施態様に限らず、あるいは、液晶オンシリコン(LCOS)装置などの他の種類の偏向器要素を使用してもよい。波長分離器307上の第1および第2の光信号301、302の異なる入射角に起因するため、偏向器アレイ311、312は互いに対して任意の角度に向け、アレイ上の第1および第2の光信号301、302の異なる入射角に対応することができる。
【0022】
各偏向器アレイ311、312は、WSS300の中でのそれらの垂直配置のため、もう一方の偏向器アレイに影響を与えずに独立的に機能できることが明らかでなくてはならない。したがって、いくつかの光信号(さらに、いくつかの光スイッチング・システム)は、互いに影響を与えずに同じ物理的空間を占有することができる。具体的には、限定するためではなく、一例として、本発明の実施形態は、2つ以上の独立した1XN波長選択スイッチを、1つの1XN波長選択スイッチと同じ形状因子で作ることを可能にする実施態様を含む。先行技術ではコリメータの個数を増加する必要があり、したがって、光学部品の大きさの増加を必要としたが、本発明の実施形態では既存の光スイッチ構成を利用できる。本発明の実施形態は、各コリメータが2つ以上のマルチチャネル光信号を送受信できるようにすることにより、各コリメータをより経済的に使用できる。言い換えれば、各コリメータは2つ以上のポートに対応できる。これにより、光学系内の光学部品の大部分(すなわち、リレー光学系、波長分離器、および集束光学系)に変更を加えることなく、より多くの信号の切り替えに関連して発生する費用を最小限になる。本発明の実施形態は、それぞれの追加のマルチチャネル光信号を単一のコリメータ要素により送信するために、追加の偏向器アレイを必要とするが、切り替え処理に使用される光学部品の大部分、例えば、リレー光学系、波長分離器、および集束光学系などが、従来のスイッチ内と同じであるという理由から、追加のマルチチャネル光信号の切り替えの費用全体を削減できる。
【0023】
この種類の角度多重化WSSに関連する懸念は、2つ以上のマルチチャネル光信号間でクロストーク(またはアイソレイション)が発生する可能性があることである。しかしながら、マルチチャネル光信号が波長分離器に到達するときにマルチチャネル光信号間の角度分離を制御することにより、クロストークを容易に40dBよりも低く保つことができる。
【0024】
図4A〜
図4Bは、異なる光路を介して2つ以上のマルチチャネル光信号を送受信するために単一の入力コリメータをどのように構成できるか実施例を示している。
図4Aはマルチポート・コリメータ400の横断面図を示しており、他方、
図4Bはコリメータ400の軸方向図を示している。限定するためではなく、一例として、単一のレンズ405の前に2つの別々の導波路403A、403Bを配置することにより、単一のコリメータ要素を2つのマルチチャネル光信号401、402を送受信するように構成される。この実施例では、導波路経路403A、403Bは互いに平行であり、かつレンズ405の光軸に平行であってもよい。この実施例では、2つの導波路経路403A、403Bは互いにオフセット(offset)している。導波路経路403A、403Bのそれぞれは、それの対応する入力マルチチャネル光信号401、402を、平行な方向であるが、レンズ405上の異なる点の方へ案内する。2つの導波路経路の間のオフセット距離が十分大きい場合には、2つの信号401、403の間のクロストークを約40dBより低く保つことができる。限定するためではなく、一例として、同じレンズを共有する2つの導波路が、導波路の幅の約2倍の分離距離だけオフセットしている。例えば、典型的な導波路幅は約8μmである。この場合、2つの導波路の中心間距離は16μm以上でなくてはならない。出力ポートもまた同じような方法で2つ以上のマルチチャネル光信号を送受信するように構成されてもよいことに注目することが重要である。本発明の実施形態は、単一のコリメータ要素が光信号に対する3つ以上のポートに対応できる実施態様を含んでいることが分かる。したがって、本発明の実施形態内のコリメータ要素は、
図4A〜
図4Dに示す構成に限定されない。
【0025】
他の実施形態では、導波路経路403A、403Bのそれぞれが、それの対応する入力マルチチャネル光信号を、レンズ405の同じ点の方へ異なる角度で案内する。他の実施形態では、導波路経路403A、403Bが、光信号401、402を、レンズ405上の異なる点へ異なる角度で案内する。
【0026】
図4Aおよび
図4Bは単一の入力ポートの構成を示しているが、
図4C〜
図4Dに示すように、同様の設定を用いて複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを構成してもよい。
図4Cは、各ポートが2つのマルチチャネル光信号を送受信するように構成された入力ポートおよび出力ポートのアレイの横断面図を提供している。
図4Dは、その同じアレイの軸方向図を提供している。レンズアレイ409の前に導波路アレイ407を設置して、それにより、2つ以上の導波路403が、それらのマルチチャネル光信号を同じレンズ405へ案内するように構成されてもよい。
図4Aおよび
図4Bに示す実施形態では、導波路403の各対が単一のレンズ405を共有できる。導波路アレイ(WGA)407は、フォトリソグラフィで規定する規則的で反復可能なパターンを形成するためにウェハ処理技術を利用する平面光波回路(PLC)技術を用いて実現されてもよい。リソグラフィを用いることで、導波路対同士の間隔と、レンズアレイ409の間隔とを正確に一致させることができる。レンズアレイ409の焦点距離を極めて高い精度で作ることができるので、コリメータを出る2つ以上の組の光の間の角度差もまた非常に正確に制御できる。
【0027】
図3Bは、2つのマルチチャネル光信号を、異なる出力ポートに切り替える実施例を示した。しかしながら、2つの異なるマルチチャネル光信号を同じ出力ポートに結合(すなわち、クロスカップリング)する必要がある場合もある。2つのマルチチャネル光信号をクロスカップリングするために
図3Bに提供された2つの偏向器アレイ311、312だけを使用することは、それほど簡単ではないため、このプロセスを促進するために追加の光学部品を導入する必要がある可能性がある。
【0028】
アレイ303内の各コリメータに対する異なる導波路経路を2つの異なる組の光学ポートに属すと考えることができることが分かる。例えば、各コリメータ要素内の上部ポートを1つのポートの組に属すと考えてもよく、各コリメータ要素内の下部ポートを異なるポートの組に属すと考えてもよい。
図3A〜
図3Bに示すスイッチ構成では、1つのポートの組のうちのポートからの信号を、対応する偏向器アレイを通じて、同じポートの組のうちの他の任意のポートと結合できる。異なるポートの組の間の光信号のクロスカップリングに対応するように、
図3A〜
図3Bのスイッチを変更してもよい。
【0029】
図5Aおよび
図5Bは、本発明の実施形態の、角度多重化およびクロスカップリングを使用するWSSを示す模式図である。本明細書で使用する場合、用語「クロスカップリング」は、2つの異なる入力ポートからの信号を同じ出力ポートに結合することを指している。
図5Aは発明の他の実施形態のWSS500の平面図を示しており、他方、
図5Bは同じWSSの横断面図を示している。各マルチチャネル光信号を、出力ポートの異なる集合に案内するのではなく、この実施形態は角度交換を用いてマルチチャネル光信号をクロスカップリングするように構成されている。実施例の目的上、どのように単一のマルチチャネル光信号501の出射先を偏向器アレイB512から偏向器アレイA511に変更するかを示す。マルチチャネル光信号501の出射先を偏向器アレイA511に変更すると、その後、そのマルチチャネル光信号501は、まず、偏向器アレイA(説明の目的上、図示せず)へ案内されたマルチチャネル光信号と結合する。
【0030】
WSS500は、コリメータ要素504のアレイ503と、一連のリレー光学系505と、波長分離器507と、集束光学系509と、チャネル偏向要素511、512の2つのアレイとを含む。これらの光学部品は、
図3A〜
図3Bについて上述したのと同様の方法で、1つ以上のマルチチャネル光信号を、それらの各出力ポートに切り替えるように構成されている。また先述の説明の光学部品に加えて、WSS500は、クロスカップリングを促進するために追加の一次元(1−D)反射器515を含む。1−D反射器515は、波長分離器507と集束光学系515の間の光路に沿って挿入される。1−D反射器515は、1つの鏡519と、2つの円柱レンズ521、523と、を含む。2つの円柱レンズ521、523は、
図5Bの図面の面に対して垂直な方向に集束するように構成されており、
図5Bの垂直方向には集束しない。便宜上、集束光学系にもっとも近い円柱レンズを本明細書では第1の円柱レンズ523と呼ぶ。鏡519と第1の円柱レンズ523との間に位置する円柱レンズを本明細書では第2の円柱レンズ521と呼ぶ。
【0031】
第1の円柱レンズ523は、集束光学系509と組み合わせて1つの効果的なレンズを形成する。この効果的なレンズと第2の円柱レンズ521とを光学的に結合して、4f光学系(4f optical system)を形成する。周知のように、典型的な4f光学系では、等しい焦点距離fの2つのレンズが距離2fだけ互いに分離されている。入力面がレンズの一方から距離fのところにあり、出力面が反対側のもう一方のレンズから距離fのところにある。
図5Bでは、入力面が偏向器アレイA511または偏向器アレイB512にあり、出力面が1−D反射器の鏡519にある。光信号の可逆性の理由から、入力面および出力面を逆にできることが分かる。この実施例では、第1の円柱レンズ523と集束光学系とは有効焦点距離fを有しており、第2の円柱レンズ521は焦点距離fを有している。厳密に言えば、4fシステムは2つのレンズの焦点距離が等しいことを必要としない。2つのレンズ521、523が異なる焦点距離f1およびf2を有する場合には、レンズ間の距離がf1+f2であり、かつ入力面および出力面がそれぞれf1およびf2のところにあるようにレンズが構成されている場合に、4f光学系を実現してもよい。
【0032】
平面図から、偏向器アレイB512が光を光軸に沿って後方へ反射する場合、4fシステムは、その光を同じ位置に戻すことになる。しかしながら、
図5Bの側面図から、偏向器アレイB512は実際には下方に向いていることが分かる。
図5Bの図面の垂直方向では、円柱レンズ521、523を通る光に対する光学的な集束効果がないため、光が偏向器アレイB512により反射すると、角度が変化する。集束光学509が引き起こす角度位置変換の結果、角度の変化は、光を1−D反射器の鏡519へ案内して、その後、光を偏向器アレイA511に集束させることになる。偏向器アレイB512により反射したすべての光は、初めに偏向器アレイ511に案内された光の任意の組と結合されることになる。このように、1−D後方反射器515は角度交換(AE)のための機構を提供する。
【0033】
この角度交換の概念は、1つのコリメータ要素504当たり3つ以上のマルチチャネル光信号を送受信するように構成されたシステムに拡張できる。これは
図5Cに示され、
図5Cでは、偏向要素511、512、517の3つのアレイを用いてWSS500’が1つの入力コリメータ要素504当たり3つのマルチチャネル光信号を切り替えるように構成されている。本明細書で偏向器アレイC517と呼ぶ第3の偏向器アレイ517を導入して、入力ポートに関連する第3のマルチチャネル光信号の切り替えを促進している。説明のために、1つのマルチチャネル光信号501だけを示して、3つの偏向器アレイ511、512、517の間の角度交換を説明している。1−D後方反射器515’内に追加の鏡520を設置して、偏向器アレイB512と偏向器アレイC517の間の光の角度交換を促進している。1−D後方反射器515’は、偏向器アレイA511および偏向器アレイB512により偏向されたクロスカップリング光に関して上述したのと同じように動く。偏向器アレイB512から反射された光と、初めに偏向器アレイC517に案内された光の任意の組とのクロスカップリングを促進するために、追加の鏡520は鏡519に対して傾けられている。
【0034】
発明のいくつかの実施形態では、偏向器アレイA511と偏向器アレイC517の間のクロスカップリングを可能にさせるようにWSS500を構成してもよい。光信号501が鏡519または追加の鏡520のどちらに当たるかの選択は、偏向器アレイB512の角度に依存している。偏向器アレイB512の角度をわずかに調節する場合には、光は戻りの光の角度を変えるように鏡519に当たって、意図的に光信号が偏向器アレイA511に戻るようにできる。
【0035】
図5A〜
図5Cに示す角度交換のこの概念は、任意の個数のマルチチャネル光信号と、チャネル偏向要素の任意の個数のアレイとに適合させてもよいことに注目することが重要である。
【0036】
また、偏向器アレイ間のクロスカップリングが望ましくないときには、これを防ぐようにWSS500を構成できることが分かる。例えば、1D反射器519、520が従来の1xNのWSS機能を変化させないスペースを占める場合には、望ましくないクロスカップリングを防ぐことができる。1D反射器519、520に、もとの光路の間の1つのチャネル・スペースを位置付けられるか、またはもとのWSS設計と比較してポートの個数を1つだけ減らす。このようにして、光信号501を、それ自身の偏向器アレイ内にとどまらせる可能性があり、または戻りビームを1D反射器に移動させて、異なる偏向器アレイにチャネルが変化するようにさせる。各鏡519、520は、偏向器アレイB512から偏向器アレイC517への信号の一種類の交換を引き起こすように構成できる。追加のスペースにより、偏向器アレイB512と偏向器アレイA511の間の交換を提供するための他の鏡(異なる角度で傾いた)を可能にさせる。
【0037】
角度多重化および角度交換は、WSSに対して、光スイッチング能力およびクロスカップリングの領域で先行技術よりも優れた利点を与える。角度多重化および角度交換は、数個のマルチチャネル光信号が光学部品を共有することを可能にして、付加的な光学部品の製造に関連する費用を削減する。また、角度多重化および角度交換は、数個のマルチチャネル光信号が同じ物理的な空間を共有することを可能にすることで、WSSの外形寸法を抑えるとともに、拡張に関連する費用を削減する。さらに、WSSの部品数を減らす能力は、より高い全体的信頼性につながる。
【0038】
角度多重化光学系および角度交換の主な応用は波長スイッチ・システムを含むが、これらの概念は、
図6A〜
図6Bに示すようにファイバ・スイッチにもまた同様に応用できる。
図6Aは、角度多重化および角度交換を使用するファイバ・スイッチの平面図を示している。
図6Bは、同じ光スイッチの横断面図を示している。スイッチ600は、コリメータ・アレイ603と、1−D後方反射器615と、集束光学系609と、3つの偏向器611、612、617とを含む。これらの3つの偏向器を本明細書では偏向器A611、偏向器B612、および偏向器C617と呼ぶ。限定するためではなく、一例として、偏向器611、612、617は、コリメータ・アレイ603内の任意のポートの組のうちの異なるポート間で望ましい光結合を提供するために、可動鏡、例えば、1つ以上の軸のまわりに旋回できるMEMS鏡などを含んでもよい。
【0039】
コリメータ・アレイ603は、光信号を送受信するように構成された複数のコリメータ要素604、606を含む。各コリメータ要素604、606は、上述のように、異なるポートを通じて2つ以上の光信号を受信するように構成されてもよい。
図6に示す実施例では、所与の時間に3つの光信号を送受信するように各コリメータ要素604、606を構成している。しかしながら、説明のために、ファイバ・スイッチ600を通る単一の光信号601だけを示している。第1のコリメータ要素604内の入力ポートが光信号601を受け取ると、入力ポートは、その光信号601を集束光学系609の集合へ案内する。
【0040】
その後、集束光学系609は、スイッチ600の構成に応じて、光信号601を偏向器へ案内する。
図6Bで説明する実施例に示すように、集束光学系609は、光信号601を偏向器B612へ案内するように構成できる。WSSは各マルチチャネル光信号の個々のチャネル(すなわち、波長)の方向を変えるために偏向器アレイを使用するが、光信号を最初にそれの構成チャネルに分けずにマルチチャネル光信号全体の方向を変えるために、個々の偏向器要素を用いてファイバ・スイッチ600を実現できる。偏向器B612は、光信号601を1−D後方反射器615へ案内するように方向付けることができる。1−D後方反射器615は、2つの円柱レンズと1つの鏡とを含み、上述のように振る舞う(すなわち、1−D後方反射器615は、その上に入射する光の方向を他の鏡の方へ変えてクロスカップリングを行う)。2つの円柱レンズおよび集束光学系609は、例えば、上述のように、4f光学系を形成するように構成できる。我々の実施例では、1−D後方反射器615が光信号の方向を偏向器B612から偏向器C617へ変えるようにファイバ・スイッチ600を配置している。この角度交換の効果は、鏡B612で反射した光信号と、初めに、偏向器C617上に入射した任意の光信号とをクロスカップリングすることである。偏向器アレイの任意の個数の組み合わせの間で角度交換を実現する可能性があることに注目することが重要である。
【0041】
上述の記載は本発明の好ましい実施形態の完全な説明であるが、さまざまな代替、修正、および均等物を使用できる。したがって、本発明の範囲は上述の説明に基づいて決定すべきではなく、その代わりに、特許請求の範囲に加えて、特許請求の範囲の均等物の完全な範囲に基づいて決定すべきである。好ましいか否かにかかわらず本明細書に記載の任意の特徴は、好ましいか否かにかかわらず本明細書に記載の他の任意の特徴と組み合わせてもよい。