特許第6031460号(P6031460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031460
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両用通信装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20161114BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20161114BHJP
【FI】
   B60R21/00 630F
   H04W24/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-21539(P2014-21539)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147509(P2015-147509A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2014年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(74)【代理人】
【識別番号】100114122
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086841
【弁理士】
【氏名又は名称】脇 篤夫
(72)【発明者】
【氏名】川田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】野本 大志
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−213269(JP,A)
【文献】 特開2011−035652(JP,A)
【文献】 特開平11−177462(JP,A)
【文献】 特開2002−117472(JP,A)
【文献】 特開2011−049825(JP,A)
【文献】 特開2007−137081(JP,A)
【文献】 特開2008−271326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
H04W 24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局から車両側へは同じ周波数帯域の複数チャネルによる無線データ伝送が行われることで車両側で受信のために複数のアンテナが用いられ、車両側から基地局への無線データ伝送には車両側の1つのアンテナが用いられる通信方式を用いる車両用通信装置において、
車両の車室外であってルーフ後方位置であり、ルーフ上部の車両幅方向に略中央となる位置に配置され、通常状態において前記通信方式による受信及び送信に用いられる第1の送受信アンテナと、
車両の車室内前方位置でダッシュボード内の空間において運転席の正面となる位置に配置され、通常状態において前記通信方式による受信に用いられる第2の送受信アンテナと、
前記ダッシュボード内の空間の車両幅方向に略中央となる位置に配置され、緊急事態を検知し、かつ前記第1の送受信アンテナによる送信が不能であると検知した場合に、前記第2の送受信アンテナを用いて緊急データの送信の実行制御を行う制御部と、を備えた
車両用通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記緊急状態の検知として、車両の衝突を検知する
請求項1に記載の車両用通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車両用通信装置に関し、特に緊急通信の用途に適した通信装置についての技術分野に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2006−4180号公報
【特許文献2】特開2012−172334号公報
【背景技術】
【0003】
近年、いわゆるテレマティクス通信システムとして、車両と外部システムが、基地局を介して各種の通信を行う技術が知られている。
テレマティクス通信システムでは、車両に関する情報、道路交通情報等を車両側に提供したり、緊急通信を行うことが想定されている。
【0004】
なお上記特許文献1には、車両に備えた無線通信装置により車両外部と情報通信を行う車両の情報通信システムが開示されている。
上記特許文献2には、車両においてドアロックの施錠/解錠を無線電子キーにより行うためアンテナとして車外用アンテナと車内用アンテナが設けられることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のテレマティクス通信システムにより、車両が衝突等の事故に遭遇した場合に緊急通信が行えることは、人身の安全確保、救護等に大いに役立つものではあるが、そのためには緊急時の通信が確保されなければならないことはいうまでもない。
ところが衝突事故等が発生した場合に、車両に設置したアンテナやアンテナへの配線が破損する可能性は高く、これによって通信不能となる事態は容易に想定される。
一方で、アンテナの破損を想定して、予備のために無闇に多数のアンテナを車両に設置することは、配置設計、車両デザイン、コスト等の面から制約が大きい。
【0006】
そこで、本発明は、なるべく少ないアンテナにおいて、できるだけ緊急時の通信を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる車両用通信装置は、基地局から車両側へは同じ周波数帯域の複数チャネルによる無線データ伝送が行われることで車両側で受信のために複数のアンテナが用いられ、車両側から基地局への無線データ伝送には車両側の1つのアンテナが用いられる通信方式を用いる車両用通信装置において、車両の車室外であってルーフ後方位置であり、ルーフ上部の車両幅方向に略中央となる位置に配置され、通常状態において前記通信方式による受信及び送信に用いられる第1の送受信アンテナと、車両の車室内前方位置でダッシュボード内の空間において運転席の正面となる位置に配置され、通常状態において前記通信方式による受信に用いられる第2の送受信アンテナと、前記ダッシュボード内の空間の車両幅方向に略中央となる位置に配置され、緊急事態を検知し、かつ前記第1の送受信アンテナによる送信が不能であると検知した場合に、前記第2の送受信アンテナを用いて緊急データの送信の実行制御を行う制御部
と、を備えたものである。
上記の通信方式の場合、1つの送受信アンテナと、1つの受信専用アンテナの合計2つのアンテナが最低限必要になるところ、本発明の構成では、少なくとも第1、第2の2つの送受信アンテナを設ける。ここで、第1、第2の送受信アンテナは、車室外で車両後方と、車室内で車両前方に振り分けて配置し、車両事故発生の際に両方が破損する危険性を小さくする。また第1の送受信アンテナは、車室外のルーフ上とするが、これは無線データ通信のための電波環境を考えた場合、アンテナ配置位置として好適となる。
【0008】
さらに、車両の幅方向に略中央の位置は、衝突の影響を受けにくい位置である。
【0009】
また、ダッシュボード内の空間(インストルメントパネルの奥側の空間)は、後方衝突の影響を受けにくいだけでなく、車種によっては前方衝突にも比較的強い。さらに通常は乗員が触れることのない空間である。
【0010】
記した本発明に係わる車両用通信装置においては、前記制御部は、前記緊急状態の検知として、車両の衝突を検知することが望ましい。
衝突時には車室外の第1の送受信アンテナは破損の可能性が高い。そのような場合に、緊急通信を第2の送受信アンテナで行えるようにすることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも第1,第2の送受信アンテナにより、無闇に多数のアンテナを配置すること無く、緊急時にできるだけ通信可能な状態を確保できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態で採用する通信方式の説明図である。
図2】実施の形態の車両用通信装置のブロック図である。
図3】実施の形態のアンテナ及びユニットの配置状態の説明図である。
図4】実施の形態のアンテナ切換処理のフローチャートである。
図5】実施の形態の衝突時の状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図5を参照して本発明の実施の形態について説明する。実施の形態は自動車としての車両に搭載される、テレマティクス通信システムに対応する車両用通信装置とする。
【0014】
まず、本実施の形態で想定するテレマティクス通信システムの概要及び通信方式について説明する。
本実施の形態のテレマティクス通信システムは、個々の車両(及び乗員)とサービスプロバイダとの間の通信により、個々の車両に各種サービスを提供するもので、例えば次のようなサービスが想定される。
【0015】
・緊急通信
例えば衝突事故等によりエアバッグが作動した状況など、緊急事態を認識した場合において、自動的に現在位置などの情報の送信を行ったり、自動的に通話回線を開いて乗員がサービスオペレータ、医療機関、警察機関などとの間で会話ができるようにする。
・ロードサービス
車両故障、ガス欠等の場合に、車両の現在位置情報を送信したり、音声通話により状況を伝えるなどのための通信を行う。
・車両関係
オイル交換や定期点検などのメンテナンス情報を乗員に通知したり、故障診断警告を行う。
・盗難対応/セキュリティ関係
車両が盗難にあった場合に、サービス側で通信により車両の位置情報を取得し、オーナーに通知したり、データ通信により車両の状況を監視し、なんらかの異常事態が発生した際に車両のオーナーの携帯端末にアラームを送信する。
【0016】
以上はテレマティクス通信システムで実現可能なサービスの一例に過ぎず、これら以外にも各種サービスが考えられるが、テレマティクス通信システムを利用することで、各ドライバーに対して安全、安心なドライブ環境や、運転時の便利さを提供することが想定されている。そして本実施の形態の技術は、特に緊急通信の確保という視点に基づくものである。
【0017】
本実施の形態のテレマティクス通信システムでは、基地局から車両側へは同じ周波数帯域の複数チャネルによる無線データ伝送が行われることで車両側で受信のために複数のアンテナが用いられ、車両側から基地局への無線データ伝送には車両側の1つのアンテナが用いられる通信方式である。具体的な例としては、3G/3.9G(「G」はGeneration)のLTE(Long Term Evolution)に対応したMIMO(multiple-input and multiple-output)方式である。公知の通りMIMO方式は、複数のアンテナを用いて同じ周波数帯の複数の経路(チャネル)でデータを同時に送受信する技術である。アンテナ数を増やすことで通信の高速化が可能であるが、アンテナ数を増やすとチャネルも増え、送受信時の端末の電力量負担が大きくなる。
本実施の形態のテレマティクス通信システムは、車両側では2つのアンテナを用いるものとしている。
【0018】
図1Aは、基地局アンテナ100A、100Bと車両1を示している。図示しないサービスプロバイダと車両1の通信は各所に設置された基地局を介して行う。
車両1には最小限のアンテナ構成として送受信アンテナ2と受信専用アンテナ3Aが必要になる。
【0019】
下り通信(基地局→車両)では図1Aのように、2つの基地局アンテナ100A、100Bから2チャネルで無線データ伝送を行う。車両1では、2つのアンテナ(送受信アンテナ2,受信専用アンテナ3A)を用いてデータを受信する。
一方上り通信(車両→基地局)では図1Bのように、車両1側の送受信アンテナ2を用いて1チャネルで無線データ通信を行う。車両1からの送信は1チャネルであることで、車両1側としては、送信のためには送受信アンテナが1つあればよい。
【0020】
従って、車両1側の最小限のアンテナ構成は、送受信アンテナ2と受信専用アンテナ3Aの2つのアンテナとなる。
但し送受信アンテナと受信専用アンテナ3Aを搭載すると、送受信アンテナ2に通信不能な障害が発生した際に対応できない。そこで本実施の形態では、車両1には受信専用アンテナ3Aに代えて送受信アンテナ3を設置し、2つの送受信アンテナ2,3を用いることとしている。
これにより図1A図1Bの無線データ通信に加えて、図1Cのように送受信アンテナ3を用いて車両1から基地局に対する無線データ送信が実行できる。
【0021】
図2に実施の形態の車両用通信装置の構成例を示す。この車両用通信装置は、基地局100を介してサービスプロバイダ110との通信が可能なテレマティクス通信システムの車両側通信端末システムとして構成される。
実施の形態の車両用通信装置は、送受信アンテナ2(以下「主アンテナ2」という)、送受信アンテナ3(以下「副アンテナ3」という)、GPS(Global Positioning System)アンテナ4、DCM(Data Communication Module)5、スピーカ6L、6R、ユーザ対応コンソール7を備えている。
【0022】
主アンテナ2、副アンテナ3は、それぞれ図1で説明したMIMO方式の無線データ通信を行うための送受信アンテナである。本例では、通常時(衝突事故等の緊急時以外)は、主アンテナ2は送信及び受信に用いられ、副アンテナ3は受信に用いられる。
GPSアンテナ4は、位置情報(緯度・経度)や速度情報を得るためのGPS衛星からの電波信号を受信する。
【0023】
スピーカ6L、6Rは、テレマティクス通信システムによるメッセージ音声や通話音声を車両1の乗員に対して出力するスピーカである。このスピーカ6L、6Rは当該車両用通信装置の専用スピーカとして車両内に設置もよいし、カーオーディオシステムで用いられるスピーカを利用するようにしてもよい。ここでは左右2チャンネルスピーカを例示しているが、車両用通信装置としての音声出力のためには少なくとも1つのスピーカが搭載されていればよい。
【0024】
ユーザ対応コンソール7は、車両用通信装置のユーザインターフェース部である。例えばオーバーヘッドコンソール形式で、車室内の上方に設けられる。
このユーザ対応コンソール7には、マイクロホン10、手動通信スイッチ11、インジケータ12等が設けられている。
マイクロホン10は、テレマティクス通信システムによる緊急時の通話の際などに乗員の声を集音する。
手動通信スイッチ11は、緊急連絡やロードサービス/アシストなどを求める乗員がテレマティクス通信システムでサービスプロバイダ110との通信/通話を行いたい場合に操作するスイッチである。
インジケータ12は、通信状態、警告メッセージ、車両状態など、テレマティクス通信システムの動作により乗員に通知すべき情報を表示する。
【0025】
DCM5は、テレマティクス通信動作を実現する通信ユニットであり、その機能構成として図示するように、制御部21、ネットワーク通信部22、GPSデコーダ23、アンプ部24、ユーザユニットインターフェース25、バスインターフェース26、アンテナ異常検出部27,28を備える。
【0026】
制御部21はDCM5内の各部を制御し、必要な通信動作等を実行させる。
ネットワーク通信部22は主アンテナ2、副アンテナ3を介したテレマティクス通信システムによるデータ通信のための処理を行う。例えば制御部21から転送されてくる送信データのエンコード、変調、高周波増幅等を行って送信信号を生成し、通常は主アンテナ2に供給して送信を実行させる。またネットワーク通信部22は主アンテナ2及び副アンテナ3による受信信号の検波/復調、2値化、受信データのデコード等を行い、受信データを制御部21に受け渡す。またネットワーク通信部22は、制御部21の指示に応じて、送信時のアンテナの切換も行うことができる。具体的にはデータ送信に用いるアンテナを、主アンテナ2と副アンテナ3の間で切り換える処理を行う。即ち送信信号を主アンテナ2に供給するか、副アンテナ3に供給するかを選択的に行うことができる。
【0027】
GPSデコーダ23は、GPSアンテナ4で受信された信号のデコードを行い、現在位置情報や速度情報を得、これを制御部21に受け渡す。
アンプ部24は、制御部21から供給される、例えばメッセージ音声や通話音声としての音声データをスピーカ6L、6Rから出力させるための処理を行う。例えば音声データのD/A変換(デジタル−アナログ変換)処理、レベル調整/ゲインコントロール処理、パワーアンプ処理等を行って、スピーカ6L、6Rへ音声信号を供給する。
【0028】
ユーザユニットインターフェース25は、ユーザ対応コンソール7と制御部21の間の入出力を行う。例えばマイクロホン10で集音された音声信号のA/D変換(アナログ−デジタル変換)や、必要なコーデック処理等を行って、送話音声データとして制御部21に受け渡す。また手動通信スイッチ11の操作があった場合、ユーザユニットインターフェース25はその操作情報信号を入力して制御部21に通知する。また制御部21によるインジケータ12の表示制御信号をユーザ対応コンソール7に転送する。
【0029】
バスインターフェース26は、車両内のバス9との間のインターフェースである。車両1には、エンジンECU(electronic control unit)、表示ECUなど、各種のマイクロコンピュータによる制御ユニットが搭載されているが、DCM5はバス9を介して各種制御ユニットと通信可能とされている。図2ではエアバッグECU8を示しているが、DCM5はエアバッグECU8から衝突検知情報を得ることができる。
【0030】
アンテナ異常検出部27、28はそれぞれ主アンテナ2、副アンテナ3の断線/故障検知を行う。例えばアンテナ線15,16の端子電圧から断線/地絡を検出したり、受信電界強度信号の判定などにより、主アンテナ2、副アンテナ3のそれぞれについて通信可能か否かを検出する。その検出に基づく異常判定信号を制御部21に通知する。
【0031】
このような構成の車両用通信装置の各部の車両1内の配置状態を図3で説明する。図3Aは車両1を上方から見た場合の各部の配置位置を、また図3Bは車両1を側方から見た場合の各部の配置位置を、それぞれ模式的に示している。
なお破線で囲った空間は、車室内空間RMである。また一点鎖線で囲った空間はダッシュボード内空間DSである。ダッシュボード内空間DSとは、車室内空間RMにおける運転席18及び助手席17の前方のダッシュボードの内部という意味である。これは運転席18と助手席17の乗員が相対するインストルメントパネルの奥側の空間とも言える。
なお図3では、ステアリング19を示した運転席18が左側となるいわゆる左ハンドル車を想定している。
【0032】
主アンテナ2は、車室内空間RMの外部となる車体のルーフ上であって、車両1の後方位置に配置されている。またこの主アンテナ2の配置位置は車両幅方向には略中央となっている。
副アンテナ3は、車室内空間RMの前方として、ダッシュボード内空間DSに配置されている。特にはダッシュボード内空間DSにおいて運転席18の正面となる位置とされている。
GPSアンテナ4は、副アンテナ3と同じくダッシュボード内空間DSであって運転席21の正面となる位置に配置されている。
このGPSアンテナ4副アンテナ3は運転席18からみて前後に並ぶような位置に配置され運転席18側にGPSアンテナ4、運転席18からみて奥側に副アンテナ3が配置される。
【0033】
DCM5はダッシュボード内空間DSにおいて、車両幅方向の略中央位置に配置されている。例えばカーオーディア装置やナビゲーション装置が取り付けられる場合、それらの奥側の位置となる。
エアバッグECU8は、ダッシュボード内空間DS内において、DCM5の直下の位置に配置されている。
ユーザ対応コンソール7は、オーバーヘッドコンソールとして運転席18及び助手席17の上方位置に取り付けられている。例えば運転席18及び助手席17の乗員が見上げるとインジケータ12や手動通信スイッチ11を確認できる位置である。またマイクロホン10が乗員の声を拾いやすい位置でもある。
スピーカ6L、6Rは、例えば左右のドア内に配置されている。
【0034】
本実施の形態の車両用通信装置は、以上の図2図3の構成及び配置によって車両1内に装備される。この車両用通信装置は、図1で説明したように主アンテナ2、副アンテナ3を用いてLTEに対応したMIMO方式で通信を行う。
先に述べたように、通常時は、主アンテナ2は送信及び受信に用いられ、副アンテナ3は受信に用いられる。
ここで本実施の形態では、DCM5は制御部21の制御機能により、緊急時には送信に用いるアンテナを切り換えることが可能とされている。
図4に緊急事態を検知した場合の制御部21の処理例を示す。
【0035】
制御部21は、バスインターフェース26を介して車内の各制御ユニットからの情報を受け取ることができるが、特にエアバッグECU8からの衝突検知情報をステップS101で常時監視している。
もちろん、エアバッグECU8からの情報だけでなく、DCM5の内外に衝撃センサ、姿勢センサ等を搭載するなどにより、衝突、横転、車体姿勢異常などを認識できるようにしてもよい。
【0036】
制御部21はエアバッグECU8からの衝突検知情報などにより、例えば車体が損傷するなどの緊急事態が発生したことを検知した場合、処理をステップS101からS102に進め、アンテナ異常検出部27の異常判定信号を確認し、主アンテナ2が通信可能な状態か否かを判断する。
【0037】
主アンテナ2が通信可能であれば、制御部21はステップS106に進んで緊急通報処理を行う。即ち事故等の緊急事態が発生したことの判断に応じて自動的に緊急データ送信を行う。例えば車両ID(車両や登録オーナーを識別できる情報)や、GPSデコーダ23から得られていた最新の位置情報を含めた緊急通報データを生成し、これをネットワーク通信部22に受け渡して送信させる。より詳細な情報、例えば破損箇所、破損程度が検知できるのであれば、その情報を含めるようにしてもよい。また、例えば車室内空間RMや車外を撮像するカメラを搭載している場合、それらのカメラで撮像される車室内の乗員の様子や、車外の状況の画像などを、緊急通報データに含めるようにしてもよい。
【0038】
次にステップS107で制御部21は通話処理を行う。即ち乗員による手動通信スイッチ11の操作がなくとも、自動的に通話回線の発呼処理をネットワーク通信部22に実行させ、例えばサービスプロバイダ110のオペレータ等との間の音声通話回線を開く。そしてオペレータ等からの通話音声のデータを受信してスピーカ6L、6Rにより乗員に届け、またマイクロホン10で拾った乗員の声を送話音声として送信させる。
以上のステップS106,S107における送信は、主アンテナ2が正常に機能していれば、特にアンテナ切換処理を行っていないため、主アンテナ2を用いることになる。
【0039】
一方ステップS102で主アンテナ2が通信不能な状態であると判断した場合、ステップS103に進んでアンテナ異常検出部28の異常判定信号を確認し、副アンテナ3が通信可能な状態か否かを判断する。
主アンテナ2、副アンテナ3の両方が通信不能であれば、緊急通信ができないのでステップS104で通信不能のエラー処理となる。
副アンテナ3が通信可能であれば、制御部21はステップS105に進んで、データ送信に用いるアンテナを副アンテナ3に切り換えるようにネットワーク通信部22に指示する。
そして制御部21はステップS106,S107で上述の緊急通報処理、及び通話処理を行う。この場合ステップS106,S107における送信及び受信は、副アンテナ3を用いることになる。
【0040】
このような本実施の形態の車両用通信装置では、以下のような効果が得られる。
実施の形態の車両用通信装置は、基地局から車両側へは同じ周波数帯域の複数チャネルによる無線データ伝送が行われることで車両側で受信のために複数のアンテナが用いられ、車両側から基地局への無線データ伝送には車両側の1つのアンテナが用いられる通信方式の通信を行う。この場合に、車両の車室外であってルーフ後方位置に配置され、通常状態において受信及び送信に用いられる主アンテナ2(第1の送受信アンテナ)と、車両の車室内前方位置に配置され、通常状態において受信に用いられる副アンテナ3(第2の送受信アンテナ)とを備える。そして緊急状態を検知し、かつ主アンテナ2による送信が不能であると検知した場合に、副アンテナ3を用いて緊急データの送信の実行制御を行うDCM5(制御部21)を備えている。
【0041】
この場合、通常時に送信に使用される主アンテナ2は車室外のルーフ上に配置されるが、これは無線データ通信のための電波環境を考えた場合、アンテナ配置位置として好適な配置となる。従って、なるべく送信に主アンテナ2が使用されることは、通常時の通信に好適である。
【0042】
ここで衝突等の事故の場合を考える。衝突時には、ルーフ上の主アンテナ2は通信不能となる可能性が副アンテナ3に比較して高い。例えば図5Aのように後方から追突された場合、後方位置に配置されている主アンテナ2が破損する可能性が高い。さらに車体が横転したような場合も、主アンテナ2は破損の可能性が高い。
また図5Bに示すように、主アンテナ2とDCM5の間のアンテナ配線15は、ダッシュボード内空間DSにおいてDCM5から例えば左ドア側に伸ばされ、その後の左ウインドウの下方、側方、上方を沿うような経路で後方に配設されている。従って、図5Bのように側方から衝突された場合、アンテナ配線15に断線や地絡が発生し、主アンテナ2による通信が不能となる可能性が高い。
【0043】
一方、副アンテナ3は車両1内の前方に配置されているため、後方からの追突によって破損する可能性は非常に低い。
また副アンテナ3は車室内空間RMに配置されていることで、車体の横転等があっても破損する可能性は低い。
さらに副アンテナ3はダッシュボード内空間DSに配置されていることで、ダッシュボードによる保護機能も加わり、破損の可能性は更に低くできると共に、乗員が触ることができない位置であるため、人為的な行為で破損することもない。
また副アンテナ3とDCM5の間のアンテナ配線16は、ダッシュボード内空間DS内で完結し、しかも配設距離も短いため、これも断線や地絡が生ずる可能性は低い。
【0044】
なお、主アンテナ2、副アンテナ3の状態に関わらず、DCM5が破損したような場合は、そもそも緊急通信が実行できない。そのため実施の形態では、DCM5は、車室内前方のダッシュボード内空間DSであって、且つ幅方向の略中央位置という、前後左右からの衝突時や横転時に最も保護される位置に配置している。従ってDCM5は副アンテナ3と同様以上に破損の可能性は低い。
また車種によっては、副アンテナ3、アンテナ配線16、及びDCM5がダッシュボード内空間DSに配置されることで、車両前方の衝突に対してもこれらが保護される可能性を高くすることができる。特に近年の車両構造は、前方衝突の場合にバンパー、ボンネット、フェンダー等の部位がつぶれても車室内空間RMがなるべく維持されるような構造を採用しているためである。
【0045】
このようなことから、衝突事故の場合、主アンテナ2が通信不能となる可能性は高いが、その一方で副アンテナ3やDCM5に異常が生じていないという状況は十分高い確率として想定される。
そこで本実施の形態は、副アンテナ3も送信可能な送受信アンテナとし、図4の処理でわかるように主アンテナ2が通信不能となった場合は、副アンテナ3に切り換えてステップS106,S107の緊急送信を行うようにしている。これにより、緊急時の送信をできるだけ確保できる。
【0046】
もちろん車両前方の衝突によっては、副アンテナ3が破損・故障する可能性もある。しかしDCM5はダッシュボード内空間DS内で車両幅方向の略中央位置であり、車室内空間RM内で最も保護機能が高い位置にある。また車体前方衝突の場合は、主アンテナ2は有効に機能する可能性が高い。つまりDCM5と主アンテナ2が正常であることで、緊急通信が可能となることが高い確率で想定される。
また主アンテナ2は、ルーフ上部の後方であって車両幅方向に略中央となる位置に配置されることで、ルーフ上であっても、なるべく破損の可能性を下げることができる。即ち車両の後方であって幅方向に略中央の位置は、車両前方の衝突や側方からの衝突の影響を受けにくい位置であるためである。
【0047】
つまり本実施の形態では、主アンテナ2と副アンテナ3を、車室外で車両後方と車室内で車両前方に振り分けて配置し、車両事故発生の際に両方が破損する危険性を小さくすること、及び緊急時に両アンテナ2、3を切り換えて送信を可能とすることで、緊急時の通信環境を確保できる可能性を高めることができる。これによりテレマティクス通信システムによる人身の安全、保全、救護等のための活動をできるだけ有効化できる。
また可能であればなるべく主アンテナ2で送信を行うことで、ルーフ上という、比較的送信環境のよい状態で送信を行う機会を多くできる。
【0048】
また図4の処理では、制御部21は、緊急状態の検知として、例えばエアバッグECU8からの衝突検知情報等により車両の衝突を検知した場合に、必要に応じたアンテナ切換の処理(S102〜S105)、及び緊急通信の処理(S106,S107)を行う。乗員の救護等のための緊急通報が必要であって、かつアンテナ故障の発生するという事態は衝突時であることが想定されるため、このような場合をステップS101で判断してステップS102以下の処理を行うことは、最も効率よくかつ適切な処理となる。
【0049】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の例に限らず、各種の変形例が考えられる。
【0050】
図5Bでは、主アンテナ2へのアンテナ配線15と、副アンテナ3の配置位置が、車両の幅方向にはいずれも左側とした例を示したが、アンテナ配線15を右ウインドウ側にする、つまり副アンテナ3とは車幅中央からみて反対側とするようにしてもよい。これにより左右の側面方向からの衝突について、両アンテナ(2,3)が同時に通信不能となる可能性をより低下させることができる。
【0051】
またテレマティクス通信のためのアンテナ数は、主アンテナ2と副アンテナ3の2つとしたが、3つ以上のアンテナを搭載してもよい。
但し、上記実施の形態のように2つの送受信アンテナを用いることは、MIMO方式に最小限必要なアンテナ数(送受信アンテナと受信専用アンテナの2つ)と同数のままで、より通信可能状態の維持の可能性を高めることができるという点で、非常に好適である。特に2つの送受信アンテナを用いることで、より多数のアンテナを用いる場合に比べて、車内システム設計の容易性が得られ、また多数のアンテナによるデザインの自由度の低下やコストアップを避けることもできる。
【0052】
また主アンテナ2はルーフ上で車幅方向の略中央位置に配置する例としたが、車幅方向において左側或いは右側に偏倚いた位置としてもよい。
また副アンテナ3は必ずしもダッシュボード内空間DSではない車室内空間RMに配置してもよい。
また通信方式は、3G/3.9Gに対応したMIMO方式に限定されず、下り通信に複数のアンテナが用いられ、上り通信に1つのアンテナが用いられる他の通信方式であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…車両、2…主アンテナ、3…副アンテナ、4…GPSアンテナ、5…DCM、6L,6R…スピーカ、7…ユーザ対応コンソール、8…エアバッグECU、21…制御部、22…ネットワーク通信部
図1
図2
図3
図4
図5