(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031503
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力を求める方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
G01M17/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-500533(P2014-500533)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-508953(P2014-508953A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】IB2012051435
(87)【国際公開番号】WO2012127458
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】TO2011A000255
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】マルコ アンドレア マギー
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−522953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 − 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力を求める方法であって、
車両(1)をサンプル道路経路に沿って運転するステップと、
前記車両(1)が前記サンプル道路経路に沿って走行する際の前記車両(1)の前後速度(Vx)及び位置(P)の変動を測定するステップと、
前記車両(1)の前後速度(Vx)及び位置(P)の変動に基づいて、前記車両(1)が前記サンプル道路経路に沿って走行する際に前記車両(1)に作用する慣性力(FIx、FIy)を計算するステップと
を含む方法において、
前記サンプル道路経路の少なくとも1つの区間に沿って最高制限速度(Vx−max)を求めるステップと、
前記測定した前後速度(Vx)を前記最高制限速度(Vx−max)と比較するステップと、
前記測定した前後速度(Vx)が前記最高制限速度(Vx−max)と有意に異なる場合、前記最高制限速度(Vx−max)と前記測定した前後速度(Vx)との有意な差を排除するために、前記測定した前後速度(Vx)以外の前後速度(Vx)を用いて前記車両(1)に作用する慣性力(FIx、FIy)を計算するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記サンプル道路経路全体を、それぞれが1つの最高制限速度(Vx−max)を有する一連の区間に分割するステップをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記測定した前後速度(Vx)が前記最高制限速度(Vx−max)と有意に異なる場合、前記最高制限速度(Vx−max)に等しい前後速度(Vx)を用いて前記車両(1)に作用する慣性力(FIx、FIy)を計算するステップをさらに含む方法。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の方法において、各点方式で、前記測定した前後速度Vxと前記最高制限速度Vx−maxとの間の絶対差が所定の第1閾値よりも大きい場合、前記測定した前後速度(Vx)が前記最高制限速度(Vx−max)と有意に異なると考えるステップをさらに含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、必要であれば前記測定した前後速度(Vx)の各点補正を行うステップをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項1、2、又は3に記載の方法において、前記サンプル道路経路の区間全体に沿って計算した前記測定した前後速度(Vx)と前記最高制限速度(Vx−max)との間の平均二乗偏差が所定の第2閾値よりも大きい場合、前記区間全体に沿って、前記測定した前後速度(Vx)が前記最高制限速度(Vx−max)と有意に異なると考えるステップをさらに含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、必要であれば前記サンプル道路経路の前記区間全体に沿って前記測定した前後速度(Vx)を補正するステップをさらに含む方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、前記車両(1)の位置(P)に基づいて、交通規則の速度制限を示す道路地図を用いて、前記サンプル道路経路の各区間の前記最高制限速度(Vx−max)を求めるステップをさらに含む方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
前記車両(1)が前記サンプル道路経路に沿って走行する際に前記車両(1)の前方の道路の画像を取得するステップと、
前記車両の前方の道路の画像内の交通規則の速度制限標識を認識するステップと、
前記交通規則の速度制限標識に基づいて、前記サンプル道路経路の各区間の前記最高制限速度(Vx−max)を求めるステップと
をさらに含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、不一致の場合には速度制限標識を前記道路地図における速度制限情報よりも優先する方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法において、
前記車両(1)の前後速度(Vx)の変化率を計算することにより、前記車両(1)の前後加速度(Ax)を求めるステップと、
前記車両(1)の位置(P)の変動に基づいて、前記車両(1)の軌道(T)を求めるステップと、
前記車両(1)の前記軌道(T)の曲率半径(R)を求めるステップと、
前後速度(Vx)及び前記軌道(T)の前記曲率半径(R)に基づいて、前記車両(1)の横加速度(Ay)を計算するステップと、
前記車両(1)の質量(M)に前記車両(1)の前後加速度(Ax)を乗じることにより、前記車両(1)に作用する前後慣性力(FIx)を計算するステップと、
前記車両(1)の質量(M)に前記車両(1)の横加速度(Ay)を乗じることにより、前記車両(1)に作用する横慣性力(FIy)を計算するステップとをさらに含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記車両(1)の位置(P)を、3つの座標(X,Y,Z)により規定し、前記車両(1)の前記軌道(T)を、緯度及び経度に対応する2つの座標(X,Y)により画定された平面において求める方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
第3座標(Z)に基づいて、前記車両(1)の高度を求めるステップと、
前記車両(1)の高度の変動に基づいて、前記車両(1)が走行している道路の勾配を求めるステップと、
前記車両(1)が走行している道路の勾配に基づいて、前記車両(1)に作用する重力(FG)を求めるステップと、
前記重力(FG)及び前記前後慣性力(FIx)を代数的に加算するステップと
をさらに含む方法。
【請求項14】
請求項11、12、又は13に記載の方法において、
前記車両(1)の前後速度(Vx)に基づいて、前記車両(1)に作用する空気力(FA)を求めるステップと、
前記空気力(FA)及び前記前後慣性力(FIx)を代数的に加算するステップと
をさらに含む方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法において、前記車両の前後速度(Vx)及び位置(P)を、衛星測位装置(4)により測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台上試験は非常に低費用であり(実際の車両及び運転者の使用が不要)、極めて高い再現性を示すので(タイヤに加えた応力と路面の温度及び特性等の境界条件とが既知であり調整し易い)、屋内で試験台を用いてさまざまな試験が行われる。試験台は、多種多様な応力をタイヤに加えることを可能にするが、台上試験をできる限り現実的にする(すなわち、路上で起こるものとできる限り類似させる)ため及び屋内台上試験を公道での屋外試験と同等にするためには、道路使用時にタイヤが受ける応力を試験台で再現するようにこれらの応力を正確に知る必要がある。この目的で、タイヤに作用する力を測定及び記録する測定ユニットを備えた車両を用いて、公道で屋外試験が行われる。このタイプの屋外試験の終わりに、測定ユニットがタイヤに作用した力の経時的推移を記録し、この経時的推移をベンチアクチュエータに提供することにより、屋内台上試験時に当該力の経時的推移を忠実に再現できるようにする。
【0003】
屋外試験の全体的持続時間(数時間続いて数百キロメートルに及ぶ計画である)を減らすために、また屋外試験が再現可能な条件下で(当然ながら、できる限り一般道路で)行われることを確実にするために、屋外試験時は常に車両を交通規則で認められた最高速度で運転すべきである。しかしながら、主に一般道路での交通のために、車両を交通規則で認められた最高速度で運転することが常に可能なわけではないことは明らかである。その結果、公道上での屋外試験時にタイヤに作用する力の経時的推移も、車両が常には交通規則で認められた最高速度で運転されなかったことによる影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力を求める方法であって、上述の欠点を有さず、特に、容易且つ安価に実施できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載したような屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力を求める方法が提供される。
【0006】
次に、非限定的な例を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】タイヤに作用する力を続いて推定するために必要な物理量を測定する測定ユニットを備えた車両を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の車両が辿るサンプル道路経路の区間を概略的に示す図である。
【
図3】タイヤを屋内耐久試験にかける試験台を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1において、参照符号1は、4つのタイヤ2を備えた車両を全体として示す。
【0009】
車両1は、タイヤ2に作用する力を続いて推定するために必要な物理量を測定する測定ユニット3を有する設備である。測定ユニット3が記録した情報により、屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力(力)を求めて、車両交通に開放された道路で行う同様の屋外耐久試験を高精度でシミュレートすることが可能である。換言すれば、さらに説明するように測定ユニット3が記録した情報を処理することにより、屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力(力)の経時的推移を求めて、車両交通に開放された道路で行う同様の屋外耐久試験で起こるのと同じ摩耗をタイヤに与えることが可能である。
【0010】
測定ユニット3は、車両1の前進の前後速度V
x及び車両1の位置PをリアルタイムでGPS基準を用いて測定する衛星測位装置4を備える。車両1の位置Pは、3つの相互に垂直な軸を有する3次元基準系の3つの座標X、Y、Zによって規定される。X座標及びY座標は緯度及び経度に対応して平面を画定し、Z座標は基準面(通常は海水面)に対する高度を提供する。
【0011】
さらに、測定ユニット3は、車両内に配置されて車両1の前方の道路を撮像するカメラ5を備える(例えば、カメラ5は、車両1のウインドシールドに面して配置することができる)。
【0012】
最後に、測定ユニット3は、衛星測位装置4及びカメラ5によって供給されたデータを記憶することが可能な大容量記憶装置6(ハードディスク及び/又はRAMメモリからなる)と、通常はパーソナルコンピュータによって構成される処理装置7とを備え、処理装置7は、記憶装置6を内部に組み込むことができる。
【0013】
屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力(力)を求めて、車両交通に開放された道路で行われる同様の屋外耐久試験を高精度でシミュレートする方法を、次に説明する。
【0014】
測定ユニット3を備えた車両1は、屋内でのシミュレートが望まれる屋外試験を行うために用いられ、その結果として、車両交通に開放された道路での屋外試験が行われるサンプル道路経路に沿って運転される。
【0015】
車両1の質量Mを事前に、すなわち路上試験の開始前に求める。可能な一実施形態によれば、燃料消費による減少(電子式エンジン制御ユニットが提供した情報から容易に推定される)を考慮して車両1の質量Mを徐々に更新する(すなわち、減少させる)ことができる。
【0016】
車両1の運転中、衛星測位装置4は、リアルタイムで比較的高いサンプリング周波数(通常は少なくとも数Hz)で、XYZ座標組によって構成されたサンプル道路経路に沿った車両1の位置Pと、車両1の前進の前後速度V
xとを提供する。このデータは、衛星測位装置4のサンプリング周波数に通常は等しく衛星測位装置4のサンプリング周波数と同期した記憶周波数で、記憶装置6に周期的に記憶される。
【0017】
さらに、車両1の運転中、カメラ5は、車両1の前方の道路の画像をリアルタイムで提供する。これらの画像の少なくとも一部が、衛星測位装置4のサンプリング周波数に通常は等しく衛星測位装置4のサンプリング周波数と同期した記憶周波数で、記憶装置6に周期的に記憶される(このようにして、各記憶画像は、撮像時の車両1の対応の位置Pと関連付けられる)。
【0018】
屋外試験が終了すると(より正確には、サンプル道路経路に沿った行程が完了すると)、サンプル道路経路に沿った走行中に測定ユニット3が記憶した情報が処理されて、屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力(力)が求められて屋外耐久試験が高精度でシミュレートされる。
【0019】
好適な実施形態によれば、移動平均フィルタを衛星測位装置4が供給した測定値に(特に、車両1の前進の前後速度V
xに)適用して、高周波雑音(特に時間微分において非常に煩わしい)を除去する。
【0020】
実行される第1の演算は、最高制限速度V
x−max(すなわち、交通規則で認められた最高速度)と衛星測位装置4が測定した前後速度V
xとの実質的な(有意)差を排除するための車両1の前進の前後速度V
xの補正である。
【0021】
前後速度V
xを補正するために、サンプル道路経路全体を、それぞれが単一の最大制限速度V
x−maxを特徴とする一連の区間に分割することが好ましい(すなわち、最高制限速度V
x−maxは区間全体に沿って同じである)。経路を分割する区間のサイズ(より正確には長さ)は、概して、異なるサイズでさまざまな試験を行って最終結果を評価することにより実験的に求められる。
【0022】
サンプル道路経路の区間毎に、最高制限速度V
x−max(すなわち、交通規則で認められた最高速度)を求め、次に最高制限速度V
x−maxを衛星測位装置4が測定した前後速度V
xと比較する。この比較の結果に応じて、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xに等しい前後速度V
x又は衛星測位装置4が測定した前後速度V
xとは異なる前後速度V
xを、後続の処理(後述)に用いることができる。特に、測定した前後速度V
xが最高制限速度V
x−maxと有意に異ならない場合、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xに等しい前後速度V
xが後続の処理(後述)に用いられる。これに対して、測定した前後速度V
xが最高制限速度V
x−maxと有意に異なる場合、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xとは異なる前後速度V
x(通常は最高制限速度V
x−maxに等しい)が後続の処理(後述)に用いられる。
【0023】
サンプル道路経路の区間毎に、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xと最高制限速度V
x−maxとの比較を各点方式で行うことができ、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xの単一値を最高制限速度V
x−maxと個別に比較する(そして次に、有意差があった場合には個別に補正する)。換言すれば、測定した前後速度V
xの単一値と最高制限速度V
x−maxとの間の差の絶対値が閾値(概して実験的に求められ、数km/時程度である)よりも大きい場合、測定した前後速度V
xの単一値を「排除」し、通常は最高制限速度V
x−maxに等しい「正確な」値に置き換える。
【0024】
代替的に、サンプル道路経路の区間毎に、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xと最高制限速度V
x−maxとの比較を集約方式で行うことができ、一連の値(例えば、サンプル道路経路の対象区間の全値)をまとめて最高制限速度V
x−maxと比較する(したがって、有意差がある場合は対象の値全部をまとめて補正する)。この場合、対象区間の値全部をまとめて用いて、類似度指数I
CRの値を計算し、次にこれを(概して実験的に求めた)閾値と比較する。類似度指数I
CRが閾値よりも小さい場合、対象の経路区間に沿って衛星測位装置4が測定した前後速度V
xを保って後続の処理(後述)に用いるが、類似度指数I
CRが閾値よりも大きい場合、対象の経路区間に沿って衛星測位装置4が測定した全部の前後速度V
xを「排除」し、通常は最高制限速度V
x−maxに等しい「正確な」値に置き換える。換言すれば、類似度指数I
CRが閾値よりも小さい場合、対象の経路区間に沿った前後速度V
xは、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xに等しいと考えられるが、類似度指数I
CRが閾値よりも大きい場合、対象の経路区間に沿った前後速度V
xは、最高制限速度V
x−maxに等しいと考えられる(したがって、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xは廃棄される)。
【0025】
可能な実施形態によれば、類似度指数I
CRは、次式で表される平均二乗偏差を用いて計算される(第1方程式はアナログ信号の場合に適用可能であり、第2方程式はデジタル信号の場合に適用可能である)。
【数1】
【0026】
上述のことから、前進の前後速度V
xを補正する目的は、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xを補正して、前後速度V
xが常に対応の最高制限速度V
x−maxの付近にあることを確実にすることである。結果として、衛星測位装置4が測定した前後速度V
xが最高制限速度V
x−maxと有意に異なる場合、最高制限速度V
x−maxに等しい前後速度V
xが後続の処理(後述)に常に用いられる。
【0027】
サンプル道路経路の区間毎に、車両1の位置Pに基づいて、交通規則の制限速度情報を提供する道路地図を用いて、対応する最高制限速度V
x−maxを求めることができる。換言すれば、サンプル道路経路の区間毎に、対応する最高制限速度V
x−maxが交通規則の制限速度情報を提供する道路地図により提供される。代替的に、又は道路地図の使用と組み合わせて、カメラ5が撮影した車両1の前方の道路の画像に含まれる情報を利用することにより、サンプル道路経路の区間毎の対応する最高制限速度V
x−maxを求めることが可能である。この場合、車両1の前方の道路の各画像を解析ソフトウェアにより処理して、交通規則の速度制限標識を認識する。したがって、サンプル道路経路の区間毎の対応する最高制限速度V
x−maxは、カメラ5が撮影した車両1の前方の道路の画像内にある交通規則の速度制限標識によって提供される情報に基づいて求められる。好適な実施形態によれば、道路地図はリアルタイムで更新される可能性が低く、いずれにせよ誤りを含み得るので、道路標識によって提供される情報が道路地図に含まれる情報よりも優先される。通常、カメラ5が撮影した車両1の前方の道路の画像に含まれる情報のみを用いて、最高制限速度V
x−maxを求めることが常に試みられ、車両1の前方の道路の画像に含まれる情報が不十分又は判読不可能である場合(例えば、道路標識がないか又は読み難い場合)にのみ、道路地図が用いられる。
【0028】
前進の前後速度V
xの上記補正が行われると、屋外耐久試験を高精度でシミュレートするために屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力(又は力)が計算される。
【0029】
前述のように補正された車両1の前進の前後速度V
xデータを用いて、処理装置7は、車両1の前進の前後速度V
xの変化率(1次時間微分)を求めることによって車両1の前後加速度A
xを計算する。
【0030】
さらに、記憶装置6に記憶した車両1の位置Pデータを用いて、処理装置7は、2つの座標X及びY(緯度及び経度に対応する)によって画定された平面における車両1の軌道Tを求める。換言すれば、車両1の軌道Tは、X座標及びY座標によって画定された平面における車両1の位置Pの発展により与えられる。続いて、処理装置7は、単純な幾何学的計算によって車両1の軌道Tの曲率半径(R)を計算し、次に次式で表される単純な数学演算によって、(前述のように補正した)前進の前後速度V
x及び軌道Tの曲率半径(R)に基づいて車両1の横加速度A
yを計算する。
A
y=V
x2/R
【0031】
処理装置7は、次式で表されるように、車両1の質量Mに車両1の前後加速度A
xを乗じることにより、車両1に作用する前後慣性力FI
xを計算し、車両1の質量に車両1の横加速度A
yを乗じることにより、車両1に作用する横慣性力FI
yを計算する。
FI
x=M×A
x
FI
y=M×A
y
【0032】
好適な実施形態によれば、処理装置7は、第3座標Zに基づいて車両1の高度を求め、単純な幾何学的計算によって車両1の高度の発展に基づいて、車両1が走行する道路の勾配を求め、最後に、単純な幾何学的計算によって車両1が走行する道路の勾配に基づいて、車両1に作用する重力FGを求める。換言すれば、車両1に作用する重力FGは、車両1に作用する全体的な重錘力(質量Mに重力加速度Gを乗じたものに等しい)に車両1が走行する道路の勾配角度の正弦を乗じることにより計算される。
【0033】
好適な実施形態によれば、処理装置7は、車両1の前進の前後速度V
xの関数として車両1に作用する空気力FAも求める。空気力FAは、実験的に求めたパラメータを有する理論的に求めた式を用いて計算することができ、又は実験的に求めた表を用いて(通常は表の点間の補間を用いて)計算することができる。
【0034】
最後に、処理装置7は、次式で表されるように、前後慣性力FI
x(減速又は加速に対応して正又は負の符号を有する)、重力FG(下降又は上昇に対応して正又は負の符号を有する)、及び空気力FA(常に負の符号を有する)を代数的に加算(すなわち、正及び負の符号を考慮して)することによって、車両1に作用する全前後力F
xを求める。
F
x=FI
x+FG+FA
【0035】
これに対して、車両1に作用する全横力F
yを横慣性力FI
yに等しいと仮定し、すなわち横慣性力FI
y以外の寄与を考慮しない。
【0036】
車両1に作用する全体的な力F
x及びF
yは、タイヤ2間で分割される。すなわち、車両1に作用する全体的な力F
x及びF
yの割り当て量を、車両1の幾何学的特性(すなわち、車両1における質量の分布)及び車両1のサスペンションタイプに基づいて、タイヤ2毎に求める。
【0037】
屋内台上耐久試験時にタイヤに加えるべき応力を求める上記方法には、多くの利点がある。
【0038】
まず第1に、上記方法は、比較的安価で設置し易く事前設定を一切必要としない2つの測定機器(衛星測位装置4及びカメラ5)の使用が考えられるので、単純且つ安価に実施できる。
【0039】
上記方法は、極めて精密であり、特に、時間ドリフトによる影響を一切受けない。その理由は、衛星測位装置4が、加速度計とは異なり、測定の実施に物理的に関与する敏感な素子を有さないので、雑音レベルが低く、高精度を提供し、且つ時間ドリフト(コンポーネント経年劣化又は熱影響による)の影響を受けないからである。
【0040】
衛星測位装置4は、車両1の本体の運動の影響を一切受けないので、衛星測位装置4が行う測定は、サスペンション上の車両1の本体の運動による影響を受けない。
【0041】
車両1の高度に関して衛星測位装置4が提供する情報により、車両1が走行している道路の勾配に基づいて、車両1に作用する重力FGを正確に求めることも可能である。
【0042】
最後に、上記前後速度V
xを補正する演算により、実効前後速度V
x(すなわち、衛星測位装置4が測定した)と所望の速度(すなわち、交通規則に従った最高制限速度V
x−max)との間の不可避的な差が完全に排除され、したがって、屋内耐久試験時にタイヤに加える応力(又は力)が、現実に非常に近くなる(すなわち、公道での実際の屋外試験をほぼ完璧にシミュレートする)だけでなく、公称条件下、すなわち所望の速度に(実質的に)等しい前後速度V
xで加えられる。