(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
1.創傷治癒及び線維症のメカニズム
“創傷治癒”という用語は、身体の組織のいずれかに対する外傷(特に物理的手段によってもたらされ連続性の遮断を有するもの)を当該身体が修復するプロセスを指す。
創傷治癒応答はしばしば3つの別個の期(損傷期、炎症期及び修復期)を有すると言われる。概して、身体は損傷に対し炎症応答を伴って応答し、前記は器官の健全性及び完全性の維持に必須である。しかしながら前記応答が間違えて進行すると組織の破壊を生じ得る。
I期:損傷
自己免疫若しくはアレルギー反応、環境性微粒子、感染又は機械的損傷を含む(ただしこれらに限定されない)因子によって引き起こされる損傷は、しばしば正常な組織構造の破壊をもたらし、治癒応答を開始させる。損傷した上皮細胞及び内皮細胞は取り替えられて、それぞれ障壁機能及び完全性を維持し血液の消失を防がなければならない。内皮細胞に対する急性損傷は、炎症媒介因子の遊離及び抗フィブリン溶解性凝固カスケードの開始(血小板及び高フィブリン凝塊による損傷血管を一過性にふさぐ)をもたらす。例えば、特発性肺線維症(IPF)患者の肺ホモジネート、上皮細胞又は気管支肺洗浄液は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びコントロール患者と比較して、はるかに高レベルの血小板分化因子(X-ボックス-結合タンパク質-1)を含み、凝塊形成応答が持続的に活性化されていることを示唆する。さらにまた、トロンビン(フィブリノゲンをフィブリンに変換するために要求されるセリンプロテアーゼ)もまた、いくつかの肺線維症症状の肺及び肺胞間隙内で容易に検出され、凝固経路の活性化がさらに確認される。トロンビンはまた線維芽細胞を直接活性化して、増殖を促進し、さらにコラーゲン生成筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化を促進することができる。気道上皮、特に肺胞内肺細胞の損傷は同様な抗フィブリン溶解性カスケードを惹起させ、間質性浮腫、急性炎症領域及び基底膜の上皮分離をもたらす。
【0004】
血小板補充、脱顆粒及び凝塊形成は透過性促進を伴う血管収縮期へ急速に進み、血管外遊出(毛細血管から白血球が当該毛細血管周辺組織へ移動する)及び損傷部位への白血球の直接的補充を可能にする。基底膜(実質組織の上皮及び内皮の下に存在する細胞外マトリックスを形成する)は損傷組織への直接的接近を妨げる。この物理的障壁を破壊するために、亜鉛依存エンドペプチダーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)とも称される)は1つ以上の細胞外マトリックス構成成分を切断し、損傷部位内外への細胞の遊出を可能にする。特にMMP-2(ゼラチナーゼA、N型コラゲナーゼ)及びMMP-9(ゼラチナーゼB、IV型コラゲナーゼ)は、N型コラーゲン及びゼラチン(基底膜の2つの重要な構成成分)を切断する。最近の研究では、MMP-2及びMMP-9はアップレギュレートされることが見出され、組織破壊及び再生プロセスは線維症性症状で一般的であることが強調された。MMPの活性は、MMPの転写調節、前酵素調節、特異的な組織阻害物質を含むいくつかのメカニズムによって制御される。MMPと多様な阻害メカニズムとの間のバランスは炎症を調節し、治癒応答中の沈着コラーゲンの正味量を決定する。
アレルギー性気道炎症モデル、並びにMMP-1
-/-、MMP-9
-/-、及びMMP-1
-/-MMP-9
-/-二重ノックアウトマウスによるリモデリングを用いた以前の研究によって、MMP-2及びMMP-9は、炎症組織から気腔への炎症細胞の退出及び除去の達成に必要であることが示された。これらのMMPが存在しないとき、細胞は肺の実質内に止められ気腔に移動できず、これは致死的窒息をもたらした。
【0005】
II期:炎症
組織損傷部位へのアクセスがいったん達成されたら、ケモカイングラディエントによって炎症性細胞が補充される。好中球、好酸球、リンパ球及びマクロファージが、急性炎症部位で細胞屑及び食細胞により清掃された壊死領域とともに観察される。
炎症性サイトカイン及びケモカインを提供する好酸球、好中球、リンパ球及びマクロファージの初期補充は、局所のTGF-β及びIL-13蓄積に寄与することができる。最初の傷害及び炎症細胞の押寄せに続いて、炎症細胞の後期補充は、食作用、細胞屑の清掃及び過剰な細胞増殖の制御(前記は一緒になって正常な治癒に貢献し得る)を支援することができる。後期炎症は抗線維症的役割を果たすことができ、創傷治癒応答の消散の達成に要求されるかもしれない。例えば、IL-10分泌性調節性T細胞(局所ケモカイン生成及びTGF-βを抑制する)に加えて食細胞性マクロファージ(線維芽細胞清掃を補助する)に富む後期炎症プロフィールは、過剰な線維芽細胞活性化を予防するかもしれない。
傷害又は原因因子の性質は、しばしば後続の炎症応答の特徴を決定する。例えば、病原体関連分子パターン(PAMP)のような外因性刺激は、病原体認識レセプター、例えばToll様受容体及びNOD様受容体(炎症性及びアポトーシス性反応の調節で多様な機能を有する細胞質タンパク質)によって認識され、侵入病原体に対する固有の細胞の応答に影響を与える。内因性の危険シグナルもまた局所の固有細胞に影響を与え、炎症カスケードと協調して働くことができる。
【0006】
炎症応答の性質は、定住する組織細胞及び後続の炎症性細胞に絶大な影響を与える。炎症性細胞はそれ自体もまた、ケモカイン、サイトカイン及び増殖因子の分泌を通して更なる炎症を広める。多くのサイトカインが創傷治癒及び線維症性応答全体で必要とされ、種々の状態で特異的な遺伝子群が活性化される。例えば、喘息の慢性アレルギー性気道疾患は一般的に、上昇する2型ヘルパーT細胞(Th
2)関連サイトカインプロフィール(以下を含むがただしこれらに限定されない:インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-13(IL-13)及びインターロイキン-9(IL-9))を伴い、一方、慢性閉塞性肺疾患及び線維症性肺疾患(例えば特発性肺線維症)患者は、より頻繁に前炎症性サイトカインプロフィール(以下を含むがただしこれらに限定されない:インターロイキン-1アルファ(IL-1α)、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)及び血小板由来増殖因子(PDGF))を提示する。これらのサイトカインの各々は、線維芽細胞、マクロファージ及び筋線維芽細胞の補充、活性化及び増殖を介して顕著な前線維症活性を提示することが示された。
【0007】
III期:組織の修復及び収縮
創傷治癒の終期は、フィブリン(創傷部位を覆う血塊を形成する “網状組織”を形成するために重合する線維性タンパク質)に富む足場形成によって先導される協調的細胞再編成、創傷収縮、創傷閉鎖及び創傷の再上皮形成から成る。創傷修復のこの期に中心的に関与するプロセスを究明する非常の多くの研究が皮膚創傷の研究及びin vitro系からもたらされた。
筋線維芽細胞由来コラーゲン及び平滑筋アクチン(α-SMA)は仮の細胞外マトリックスを形成し、マクロファージ、血小板、及び線維芽細胞由来フィブロネクチンはフィブリン足場を形成する。一まとめにして一般的にこれらの構造は顆粒化組織と称される。特発性肺線維症患者から単離された主要線維芽細胞又は肺胞マクロファージは、コントロールの線維芽細胞よりも極めて多くのフィブロネクチン及びα-SMAを生成し、線維芽細胞活性化増進状態を示す。ステロイド治療を受けているIPF患者は、処置を受けていないIPF患者と類似するマクロファージ由来フィブロネクチンレベルの上昇を示すことが報告された。したがって、ステロイド耐性IL-13媒介筋線維芽細胞分化と同様に、マクロファージ由来フィブロネクチン放出もまたステロイド治療に耐性であるように思われ、なぜステロイド治療が有効ではないかの別の理由を提供する。動物モデルから、フィブロネクチンは肺線維症の発生に必要であるように思われる。なぜならば、フィブロネクチンのエキストラIII型ドメイン(EDA)が特異的に欠失したマウスは、それらの野生型対応動物と比較してブレオマイシン投与後の線維症の発生が低かったからである。
【0008】
前記仮の細胞外マトリックスは、フィブロネクチンに加えて、糖タンパク質(例えばPDGF)、グリコサミノグリカン(例えばヒアルロン酸)、プロテオグリカン及びエラスチンから成る。増殖因子及びTGF-β-活性化線維芽細胞は当該細胞外マトリックスネットワークに沿って移動し、創傷を修復する。皮膚創傷内では、TGF-βはまた収縮応答を誘発し、コラーゲン線維の方向性を調節する。筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化はまた、上記で考察したようにストレス線維及びα-SMAの新発現を生じ、前記は両方とも筋線維芽細胞内で高い収縮活性を付与する。細胞外マトリックスの特殊化部位(“フィブロネクサス”と称される)への筋線維芽細胞の付着(“超成熟巣状粘着(super mature focal adhesion)”)は一緒になって創傷を引張って収縮期の病巣のサイズを減少させる。堆積した細胞マトリックスの範囲及び活性化筋線維芽細胞の量はコラーゲン沈着量を決定する。この終着点に向かって、メタロプロテイナーゼの組織阻害物質(TIMP)に対するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)のバランス及びコラゲナーゼに対するコラーゲンのバランスは当該応答中ずっと変化し、前合成及びコラーゲン沈着増加からバランス制御に向けてシフトし、コラーゲンの正味の増加はない。創傷治癒の良好な達成のために、線維芽細胞がアポトーシスを起こし、炎症がおさまり始め、顆粒化組織が後退するときに、このバランスはしばしば発生して、高コラーゲン病巣を生じる。炎症細胞(特にα-SMA陽性筋線維芽細胞)の除去はコラーゲン沈着の停止に必須である。興味深いことに、特発性肺線維症の患者では、線維芽細胞の除去は遅延し、前アポトーシス分子及びFAS-シグナリング分子のレベル上昇にもかかわらず細胞はアポトーシスシグナルに耐性を有する。アポトーシスに対するこの相対的耐性は潜在的にこの線維症の発症の根拠となり得る。しかしながら、いくつかの研究ではまた、特発性肺線維症でコラーゲン分泌線維芽細胞及び上皮細胞のアポトーシス速度の増加が観察され、さらに別のバランスが線維芽細胞のアポトーシスと線維芽細胞の増殖のモニタリングを要求していることを示唆した。皮膚の研究から、創傷部位の再上皮形成は障壁機能を再樹立し、被包化細胞の再編成を可能にする。コラーゲンマトリックス上で増殖させたヒト又はラットの上皮細胞を用いるか、又はin vivoの気管の損傷を用いる、いくつかのin vitro及びin vivoモデルを用いて、細胞の移動、増殖及び細胞拡散の重要なステージが同定された。はく脱領域の端から上皮が復元され、迅速で動的な運動性及び増殖が最初の創傷から数時間以内に生じる。さらにまた、上皮細胞のスライディングシートが損傷領域の上部に移動し、創傷の保護を支援することができる。血清由来形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ-7(MMP-7)(それ自体はTIMP-1によって調節される)を含む、いくつかの因子が再上皮形成を調節することが示された。
総合すれば、炎症の程度、血管形成、及び細胞外マトリックス沈着は全て最終的な線維症病巣の発達に寄与する。したがって、線維芽細胞の活性化、増殖又はアポトーシスを妨害する治療的介入は、創傷修復の全ての期の完全な理解及び評価を必要とする。これら3期はしばしば連続的に提示されるが、慢性又は反復損傷時にはこれらのプロセスは並行して機能し、調節メカニズムに重要な要求が向けられる(Wilson and Wynn, Mucosal Immunol., 2009, 3(2):103-121)。
【0009】
2.病変としての線維症
線維症は、器官又は組織における過剰な線維性結合織の形成又は発達であり、前記は、瘢痕を生じる正常/異常な反応性創傷治癒応答の結果として形成される。線維症は、例えば異常な細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、線維芽細胞増殖の異常な促進、線維芽細胞集団の筋線維芽細胞集団への異常な分化誘発、筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの異常な結合促進、又はそれらの組合せ(ただしこれらに限定されない)を特徴とする。
前炎症性媒介因子
サイトカインとして知られているポリペプチド媒介物質(多様なリンホカイン、インターロイキン及びケモカインを含む)は線維症におけるコラーゲン沈着の重要な刺激であることを、蓄積し続ける証拠が示唆している。サイトカインは、定住組織細胞及び補充炎症細胞によって放出され、線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲンを含む)の合成増進を刺激すると考えられる。例えば、特発性肺線維症の病理発生における初期の特色は、肺胞上皮細胞及び/又は毛細血管細胞損傷である。前記の損傷は、循環免疫細胞(例えば単球、好中球、リンパ球及び好酸球)の肺への補充を促進する。これらのエフェクター細胞は、続いて定住する肺細胞(例えばマクロファージ、肺胞上皮細胞及び内皮細胞)と一緒になってサイトカインを放出する。前記サイトカインは標的細胞(典型的には線維芽細胞)を刺激して複製させ、さらに増加量のコラーゲンを合成させる(Coker and Laurent, Eur Respir J, 1998,; 11:1218-1221)。
【0010】
線維症の病理発生に多数のサイトカインが示唆されている。前記には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):形質転換増殖因子-β(TGF-β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、エンドセリン-1(ET-1)並びにインターロイキン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)及びインターロイキン-17(IL-17)。正常T細胞活性化時に調節、発現及び分泌される(RANTES)因子を含むケモカイン白血球ケモアトラクタントもまた重要な役割を果たすと考えられる。前炎症サイトカイン、例えばインターロイキン-8(IL-8)のレベル上昇は、関連する下流の粘着分子(CAM)のレベル上昇と同様に、特発性肺線維症の患者で死亡率、肺移植無しの生存率及び疾患進行と密接に関係することが見出された(Richards et al, Am J Respir Crit Care Med, 2012, 185: 67-76)。前記顆粒粘着分子は、例えば細胞間粘着分子-1(ICAM-1)及び血管細胞粘着分子-1(VCAM-1)、マトリックスメタロプロテイナーゼ(例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ-7(MMP-7))及びシグナリング分子(例えば末梢血中のS100カルシウム結合タンパク質A12(S100A12、カルグラヌリンCとしてもまた知られている))である。
【0011】
TGF-βタンパク質は、細胞外マトリックスの沈着に対して強力な刺激作用を有し、実際のところ遺伝子移転による線維症誘発動物モデルの構築に用いられている。in vitroの研究では、TGF-β1(休止期前駆体として分泌される)は、線維芽細胞のプロコラーゲン遺伝子発現及びタンパク質合成を刺激することが示されている。これらのデータは、他の哺乳動物のアイソフォームTGF-β2及びTGF-β3もまたヒト肺線維芽細胞のコラーゲン合成を刺激しin vitroでの分解を低下させることを示唆している。肺線維症の動物モデルでは、TGF-β1遺伝子発現の強化は、コラーゲン遺伝子発現及びタンパク質沈着の増加に時間的及び空間的に関係する。TGF-β1抗体は、ネズミのブレオマイシン誘発肺線維症でコラーゲン沈着を低下させ、さらにヒトの線維症の肺組織はTGF-β1遺伝子及びタンパク質の発現強化を示す。
TNF-αは、線維芽細胞の複製及びコラーゲン合成をin vitroで刺激することができ、さらに肺のTNF-α遺伝子発現はマウスにブレオマイシンを投与した後で上昇する。可溶性TNF-αレセプターはネズミモデルで肺線維症を減少させ、さらにトランスジェニックマウスの肺のTNF-α過剰発現は肺線維症を特徴とする。IPE又はアスベスト症(アスベストの吸引及び保持によって引き起こされる肺実質組織を冒す慢性炎症性及び線維症性症状)の患者では、気管支肺洗浄由来マクロファージはコントロールと比較して増加量のTNF-αを放出する。
エンドセリン-1(ET-1)もまた前線維症性サイトカインの基準を満たす。この分子は線維芽細胞の増殖及び化学走性を促進し、プロコラーゲンの生成を刺激する。前記は肺線維症の患者の肺に存在し、最近の報告は、ET-1レセプターアンタゴニストのボセンタンは実験動物に投与したとき肺線維症を緩和することを示唆している。
【0012】
未調査筋線維芽細胞増殖/活性化及び線維症病巣形成
線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化は、創傷修復及び線維症を含む多くの症状における重要な事象であると長い間考えられてきた。例えば、筋線維芽細胞は活発な線維症領域で生じ、肺線維症では細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の生成及び沈着の原因であると報告されている(Liu, T. et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 2007, 37:507-517)。
特発性肺線維症の原因についての1つの仮説は、なお未確認のある刺激によって急性肺損傷という反復エピソードがもたらされるというものである。これらの損傷部位における創傷治癒は最終的に線維症をもたらし、肺機能を低下させる。線維症病巣(特発性肺線維症の診断基準病巣)の特徴は、間葉細胞の激しい複製及び新しい細胞外マトリックスの旺盛な沈着である。そのような病巣は肺胞上皮細胞損傷の典型であり、管腔内の血漿滲出及び遠位気腔の破壊を伴う。創傷治癒と密接に関係する媒介物質(例えば形質転換増殖因子-β1(TGF-β1)及び結合織増殖因子)もまたこれらの部位に発現される。この巣状性急性肺損傷の駆動力及び創傷修復は明らかではない。
3.線維症が役割を有する疾患又は症状
線維症は多数の不均質な疾患又は症状にかかわっている。前記疾患には、間質性肺疾患、例えば特発性肺線維症、急性肺損傷(ALI)、放射線誘発線維症、及び移植拒絶が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
3.1.特発性肺線維症(IPF)
特発性肺線維症(IPE、原因不明の線維化肺胞炎(DFA)又は特発性線維化間質肺炎としてもまた知られている)は、主として高齢者に発する病因不明の慢性進行性線維化間質肺炎の特殊型と規定され、肺臓に限定され、通常の間質肺炎(UIP)の放射線学的及び組織学的パターンと密接な関係を有する(Raghu G. et al., Am J Respir Crit Care Med., 183(6):788-824, 2011;Thannickal, V. et al., Proc Am Thorac Soc., 3(4):350-356, 2006)。IPEは、肺間質の異常で過剰な線維症組織の分布を特徴とし得る。高解像コンピューター支援断層撮影(HRCT)画像によれば、UIPは、牽引気管支拡張症にしばしば付随する網状混濁の存在を特徴とする。IPFは進行するにつれ、ハチの巣形状はいっそう目立つようになる(Neininger A. et al., J Biol Chem., 277(5):3065-8, 2002)。肺機能試験はしばしば限定的障害及び一酸化炭素拡散能力の低下を示す(Thomas, T. et al., J Neurochem., 105(5): 2039-52, 2008)。特発性肺線維症(IPF)の患者におけるTNF-α及びIL-6放出の顕著な増加を複数の研究が報告し(Zhang, Y, et al. J. Immunol. 150(9):4188-4196, 1993)、前記の増加はIL-1βの発現レベルに起因すると考えられている(Kolb, M., et al. J. Clin. Invest, 107(12):1529-1536, 2001)。IPF症状(短縮呼吸及び咳)の開始は潜行性であるが徐々に進行し、診断後5年以内に患者の70%が死亡する。この厳しい予後は乳癌に起因する年間の死亡数に類似する(Raghu G. et al., Am J Respir Crit Care Med., 183(6):788-824, 2011)。
【0013】
IPFは米国でほぼ130,000人の患者が罹患し、世界中で毎年50,000人の新たな患者が出現し、毎年40,000人が死亡する(Raghu G. et al., Am J Respir Crit Care Med., 183(6):788-824, 2011)。これらのデータは注目に値するが、最近の研究では、IPFは以前に考えられていたよりも5−10倍蔓延している可能性があると報告された(これはおそらく蔓延の増加又は診断性能の強化のためであろう)(Thannickal, V. et al., Proc Am Thorac Soc., 3(4):350-356, 2006)。肺移植はIPFのもっとも確実な治療法と考えられるが、肺移植後の5年生存は50%未満である。したがって、肺移植すらIPFの“治癒”と考えることはできない。患者の身体的及び情緒的損失に加えて、IPFは治療及びケアが極めて高価で、国のヘルスケアの経費は100,000人の患者毎に毎年28億ドルの範囲にある。
さらにまた、以前の研究は、環境性傷害の付加も特発性肺線維症の病理発生に重要である可能性を示唆している。大半の症例シリーズの報告では、特発性肺線維症のインデックス患者の75%までが現在又は以前に喫煙者である。広範囲の疫学調査では、喫煙は特発性肺線維症と極めて密接に関係している。さらにまた、特発性肺線維症の炎症性特徴の多くが基礎となる肺疾患よりも喫煙状況とより密接に関係する。したがって、喫煙は特発性肺線維症の独立したリスク因子であり得る。潜伏性ウイルス感染(特にヘルペスウイルスファミリーの感染)もまた特発性肺線維症と密接に関係すると報告されている。
【0014】
IPFについては肺移植を含めて有効な公知の治療が存在しないので、新規な治療薬がなお希求されている。瘢痕又は線維症組織を生じる身体の能力の速度を遅らせるか又は阻害することができる抗線維症療法、及び肺のガス交換のための組織面積を増加させる肺の血管拡張剤を含む、現在開発中の多様な治療手段が存在する。肺移植はさておき、潜在的なIPF治療には、コルチコステロイド、アザチオプリン、シクロホスファミド、抗凝固剤及びN-アセチルシステインが含まれる(Raghu G. et al., Am J Respir Crit Care Med., 183(6):788-824, 2011)。さらにまた、補助療法(例えば酸素療法及び肺リハビリ)も日常的に用いられる。しかしながら、これらのいずれもIPF患者の長期生存に確実な影響をもたらさず、このことはIPFの治療選択肢のための医学的希求が未だ達成されていないことをさらに強調する。例として挙げれば、混合臨床プログラムの結果にもかかわらず、InterMuneの経口小分子Esbriet(商標)が、IPF患者のために欧州及び日本で承認された。したがって、Esbriet(商標)は、IPF治療のために特に指示される最初の医薬となった。決定的とは言えない臨床試験の結果及び薬剤の副作用のために、米国では当該薬剤の有用性は懐疑的に検分され、その時提出されたデータ-からはFDAの承認は得られなかった。したがって、米国では新薬適用を支持するためにその有効性を決定する広範囲のフェース3の臨床試験が進行中である。
組織病理学的には、IPEは、線維芽細胞病巣における活性化筋線維芽細胞(又は間葉細胞)の蓄積と説明することができる(Thannickal, V. et al., Proc Am Thorac Soc., 3(4):350-356, 2006)。筋線維芽細胞の損なわれたアポトーシスは、組織の線維症に終わる持続的で調節の失われた修復プロセスをもたらし得る。議論の余地はあるが、おそらく周期的な線維芽細胞の急性刺激による炎症もまたIPFで決定的な役割を果たす。これらの発見は治療的介入のための潜在的標的を指し示している。
【0015】
3.1.1.特発性肺線維症(IPF)の病理発生
病理発生は完全には理解されていないが、現在受け入れられている理論的枠組は、肺胞上皮に対する損傷に続いて、正常な組織修復関連応答を引き起こす前炎症性及び線維増殖性媒介物質が大量放出される。明確ではない理由により、これらの修復プロセスは消散せず、結果として進行性線維症が続く(Selman M, et al., Ann Intern Med, 134(2):136-151, 2001;Noble, P. and Homer R., Clin Chest Med, 25(4):749-58, 2004;Strieter, R., Chest, 128 (5 Suppl 1):526S-532S, 2005)。
【0016】
3.1.2.肺線維症のブレオマイシンマウスモデル
多数の動物モデルが存在し有用ではあるが(例えばTGF-βアデノウイルストランスダクションモデル又は放射線誘発線維症モデル)、ブレオマイシンモデルは、詳しく記載されてあり、炎症後/前線維症/線維症予防段階で個々の薬剤又はタンパク質キナーゼの有効性を明示するために今日使用されている特徴がもっとも明らかなネズミモデルである(Vittal, R. et al., J Pharmacol Exp Ther., 321(1):35-44, 2007;Vittal, R. et al., Am J Pathol., 166(2):367-75, 2005;Hecker L. et al., Nat Med., 15(9):1077-81, 2009)。
抗生物質のブレオマイシンは最初ストレプトミセス・ベルチシラツス(Streptomyces verticillatus)から単離された(Umezawa, H. et al., Cancer 20: 891-895, 1967)。その後、この抗生物質は扁平上皮癌及び皮膚腫瘍に対して有効であることが判明した(Umezawa, H., Fed Proc, 33: 2296-2302, 1974)。しかしながら抗新形成薬剤としてのその有用性は、線維症をもたらす用量依存肺毒性により制限された(Muggia, F. et al., Cancer Treat Rev, 10: 221-243, 1983)。気管内ルートによるブレオマイシンのデリバリー(供給源に応じて1.25−4U/kg)は、ただ1回の薬剤の注射が肺損傷及びその結果の線維症をげっ歯類でもたらすという利点を有する(Phan, S. et al., Am Rev Respir Dis 121: 501-506, 1980;Snider, G. et al., Am Rev Respir Dis. 117: 289-297, 1978;Thrall, R. et al., Am J Pathol, 95: 117-130, 1979)。げっ歯類への薬剤の気管内デリバリーはまず初めに肺胞上皮細胞への直接的損傷をもたらす。この損傷に続いて1週間以内に好中球性及びリンパ球性汎肺胞炎が生じる(Janick-Buckner, D. et al., Toxicol Appl Pharmacol., 100(3):465-73, 1989)。続いて、肺胞の炎症細胞が除去され、線維芽細胞の増殖が認められ、さらに細胞外マトリックスが合成される(Schrier D. et al., Am Rev Respir Dis., 127(1):63-6,1983)。このモデルでの線維症の発生は14日までに生化学的及び組織学的に認めることができ、最大応答は一般的には21−28日頃に認められる(Izbicki G. et al., Int J Exp Pathol., 83(3):111-9, 2002;Phan, S. et al., Chest., 83(5 Suppl):44S-45S, 1983)。しかしながら、28日を過ぎるとブレオマイシンに対する応答はより変動性である。最初の報告は、気管内にデリバーされたブレオマイシンは60−90日間進行又は持続する線維症を誘発できることを示している(Thrall R. et al., Am J Pathol., 95(1):117-30, 1979;Goldstein R., et al., Am Rev Respir Dis., 120(1):67-73, 1979;Starcher B. et al., Am Rev Respir Dis., 117(2):299-305, 1978)。しかしながら他の報告は、この期間を過ぎると緩解が始まる自己限定性応答を示している(Thrall R. et al., Am J Pathol., 95(1):117-30, 1979;Phan, S. et al., Chest, 83(5 Suppl): 44S-45S, 1983;Lawson W. et al., Am J Pathol. 2005;167(5):1267-1277)。緩解を生じるこのモデルの性質はヒトの疾患を模倣しないが、当該モデルのこの特徴はこれらの時点における線維症の緩解を研究する機会を提供する。
【0017】
3.2.急性肺損傷(ALI)
急性肺損傷(ALI)及びそのより重篤な形態である急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、急性肺水腫及び炎症から生じる急性呼吸不全症候群である。ALI/ARDSは、多様な疾患(敗血症(肺性又は非肺性)、肺炎(細菌性、ウイルス性及び真菌性)、胃及び口腔咽頭内容物の吸引、大きな外傷、及び重篤な他の臨床的異常(重篤な急性膵炎、薬剤の用量過剰、及び血液製剤を含む)を含む)から全年齢の患者で発生する急性呼吸不全の原因である(Ware, L. and Matthay, M., N Engl J Med, 342:1334-1349, 2000)。ほとんどの患者は陽圧による換気支援を必要とする。主要な生理学的異常は、重篤な動脈の低酸素血症とともに肺のデッドスペース部分の急激な増加から派生する微弱換気の顕著な増加である。ALI/ARDSの患者は高タンパク質性肺水腫を生じ、前記は、障壁の透過性の増加から派生する肺の間質及び気腔区画への液体の滲出から生じる。さらに別の病理学的変化は、肺水腫に含まれるメカニズムは複雑であり、水腫はALI/ARDSにおける病理生理学的事象のほんの1つであることを示す。1つの生理学的帰結は肺コンプライアンスの顕著な低下であり、前記は呼吸の労働増加をもたらし(Nuckton T. et al., N Engl J Med, 346:1281-1286, 2002)、これがほとんどの患者のために換気支援が要求される理由の1つである。
【0018】
ALIの主力治療である機械的換気(MV)は、換気装置関連肺損傷(VALI)を引き起こす呼吸系の種々の成分への厳しい機械的ストレスによって透過性に潜在的に影響を与え、これを悪化させると提唱された(Fan, E. et al., JAMA, 294:2889-2896, 2005; MacIntyre N., Chest, 128:561S-567, 2005)。最近の臨床試験は、高換気量(HV
T)と比較して低換気量(LV
T)で換気された患者で生存が顕著に改善されることを示した(The Acute Respiratory Distress Syndrome N. Ventilation with Lower Tidal Volumes as Compared with Traditional Tidal Volumes for Acute Lung Injury and the Acute Respiratory Distress Syndrome. N Engl J Med; 342:1301-1308, 2000)。より低い換気量での換気以外に(前記はおそらく機械的ストレスが少ない)、VALIの病理生理学の機械学的理解はほとんど存在せず、指定される治療法も存在しない。
高換気量(HV
T)の機械的換気(MV)は、p38 MAPキナーゼのリン酸化、MK2の活性化及びHSPB1のリン酸化をもたらすと提唱された。HSPB1のリン酸化は、アクチンをHSPB1から解離させポリマーを形成させてストレス線維を生成するプロセスである(前記ポリマーの形成は最終的に細胞横側にギャップを生じ血管透過性を高める)。さらにまた、p38 MAPキナーゼ又はその下流のエフェクターMK2の阻害はHSPB1のリン酸化を妨げ、さらにアクチンストレス線維の形成及び細胞骨格の再編成を停止させることによって血管の透過性から防御することが示され、MK2阻害のターゲティングは急性肺損傷の治療のために強力な治療手段であり得ることが示唆された(Damarla, M. et al., PLoS ONE, 4(2): E4600, 2009)。
さらにまた、複数の研究が、肺線維症はまたALIから生じ得ることを示唆した。ALIは完全に緩解することがあるが、また永続的な血中低酸素(低酸素血症)及び呼吸毎に拡張する肺の能力の低下(肺コンプライアンスの低下)を伴う線維症肺胞炎に進む。損傷誘発肺線維症の病因は特発性肺線維症とは異なるが、両疾患は共通の病理学的メカニズム(すなわち線維芽細胞の肺気腔への浸潤)を共有すると提唱された(Tager et al., Nat. Med. 14: 45-54, 2008; Ley, K. and Zarbock, A., Nat. Med. 14: 20-21; 2008)。
【0019】
3.3.放射線誘発線維症
線維症は、放射線療法よる癌治療及び事故による被爆の両方に共通の後遺症である。放射線療法に続く線維症病巣は以下を含む多くの組織で記載されている:皮膚(Bentzen, S. et al., Radiother. Oncol. 15: 261-214, 1989;Brocheriou, C., et al., Br. J. Radiol. Suppl. 19: 101-108, 1986)、肺(Lopez Cardozo, B. et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 11: 907-914, 1985)、心臓(Fajardo, L. and Stewart, J., Lab. Invest., 29: 244-257, 1973)及び肝臓(Ingold, J. et al., Am. J. Roentgenol., 93: 200-208, 1965)。
肺(後期応答組織)では、2つの放射線傷害症候群(放射線肺炎及び肺線維症)が生じ得る。肺炎は放射線療法の完了後2−3ヶ月で出現する。病理学的には、肺炎は、間質水腫、間質性及び肺胞性炎症細胞の存在、並びにII型肺細胞の数の増加を特徴とする(Gross, N. et al., Radiat. Res., III: 143-50, 1981;Guerry-Force, M. et al., Radiat. Res. 114: 138-53, 1988)。肺炎では、組織に対する主要な損傷はほぼ実質細胞の枯渇によって引き起こされる(Hendry, J., Radiat. Oncol. Vol. 4,2: 123-132, 1994;Rosiello, R. et al., Am. Rev. Respir. Dis., 148: 1671-1676, 1993;Travis, E. and Terry, N., Front. Radiat. Ther. Oncol., 23: 41-59, 1989)。
線維症性反応の特色は、間質のコラーゲン沈着増加、血管壁の肥厚、及び血管閉塞である(Vergava, J. et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 2: 723-732, 1987)。線維症病巣の組織学的試験によって、線維症組織は浸潤してきた炎症細胞、線維芽細胞及び大量の多様な細胞外マトリックス成分を含むことが明らかになった。線維症組織では、間質コラーゲン、フィブロネクチン及びプロテオグリカンの合成及び沈着強化が報告され(Maasiha, P. et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 20: 973-980, 1991)、このことは、線維芽細胞系の放射線誘発調節の結果と解釈されている(Remy, J. et al., Radiat. Res. 125: 14-19, 1991)。
【0020】
放射線誘発線維症(特に肺線維症)は、線維症反応に関係するいくつかの細胞系における細胞性事象と分子性事象の相互錯綜によると提唱された。単独放射線照射は、線維芽細胞/線維細胞細胞系の成熟前の最終分化プロセスを誘発し、有糸分裂後の線維細胞蓄積増進(間質コラーゲン合成において数倍の増加を特徴とする)をもたらすことができる。同時に、付随する実質細胞タイプ(例えば肺胞マクロファージ及び肺胞II型肺細胞)の放射線照射は、特異的サイトカイン(例えばTGF-β1)の即時合成を誘発し、前記は続いて実質細胞と線維芽細胞系との相互作用を改変する。TGF-β1は、線維症反応をもたらす主要なサイトカインの1つとして、先祖線維芽細胞の細胞タイプの分裂増殖による線維芽細胞増殖とともに、先祖線維芽細胞の有糸分裂後線維細胞への成熟前最終分化を誘発する。前記は、先祖線維芽細胞及び有糸分裂後線維細胞の良好な均衡にあった細胞タイプ比のかく乱のために有糸分裂後線維細胞の蓄積をもたらす。放射線照射に続く病理生理学的組織応答は、サイトカイン及び増殖因子によって媒介される多細胞性細胞系の改変された相互作用によって引き起こされ、良好な均衡にあった間質線維芽細胞/線維細胞細胞系の細胞タイプ比のかく乱をもたらすと提唱された(Rodemann, H. and Bamberg, M., Radiotherapy and Oncology, 35, 83-90, 1995)。
【0021】
3.4.移植拒絶
移植は、細胞、組織又は器官を一方の側から別の側へ移す作業である。器官系の機能不全はドナーから器官(例えば腎臓、肝臓、心臓又は膵臓)を移植することにより修正できる。しかしながら、免疫系は、日常的医療処置としての移植に対するもっとも恐るべき障壁であり続け、そのような器官の拒絶は移植された器官における線維症表現型としばしば一致する。免疫系は、外来物質との闘いのために精緻で有効なメカニズムを発達させてきた。これらのメカニズムはまた移植器官(宿主の免疫系によって外来物と認識される)の拒絶にも深く関与する。
移植片に対する免疫応答の程度は、移植された器官と宿主との間の遺伝的不一致性に部分的に左右される。異種移植片(異なる種のメンバー間の移植片)はもっとも大きな不一致性を有し、最大の免疫応答を誘引し迅速な拒絶を受ける。自家移植片(身体の一部から別の部分への移植片である)、例えば皮膚移植片は外来組織ではなく、したがって拒絶を誘引しない。同系移植片(遺伝的に同一個体(例えばモノ接合体双生児)間の移植片である)もまた拒絶を受けない。
同種異系移植片は、遺伝的に異なる同じ種のメンバー間の移植片である。前記はもっとも一般的な移植の形態である。異系移植片が拒絶を受ける程度は、部分的にはドナーと宿主間の類似性又は組織適合性の程度に左右される。
応答の程度及びタイプもまた移植片のタイプにより変動する。いくつかの部位(例えば眼及び脳)は免疫学的免除を受けている(すなわちそれらはほとんど又は全く免疫系細胞をもたず、不適合移植片にすら寛容であり得る)。皮膚移植片は最初血管が形成されず、したがって血液供給が発達するまで拒絶が明示されない。肺、心、腎及び肝臓は血管が豊富な器官であり、したがって宿主で激しい細胞媒介応答が生じ、免疫抑制療法が要求される。
【0022】
狭窄性細気管支炎(CB)(肺移植患者ではまた閉塞性細気管支炎と称される)は、膜性の呼吸細気管支の壁及び連続組織でもっぱら生じる炎症及び線維症であり、それら細気管支管腔の狭窄をもたらす。CBは、多様な設定で、もっとも頻繁には肺及び心肺移植(通常は移植後最初の2年間に34から39%の患者を冒す)及び骨髄移植の合併症として見出されるが、慢性関節リウマチで有毒物質(例えば二酸化窒素)の吸入後、ある種の薬剤(例えばペニシラミン)の摂取後及び以下の物質(East Asian vegetable Sauropus andorogynous)の摂取後に、さらに小児のアデノウイルス、インフルエンザA型、麻疹及び肺炎マイコプラズマ感染における稀な合併症としてもまた見出される。肺移植では、CBはその後死に至る唯一のもっとも重要な要因である。ある研究では全体的死亡率は25%であった。しかしながら、同時に患者の87%が疾患の緩解及び安定化を示した(彼らは無症状でもっぱら経気管支生検によって診断された)。FEV
1がベースラインより低下することをもって、移植患者におけるCBを臨床的に支持できる。閉塞性気管支炎症候群という用語はこの臨床的機能不全を示すために用いられ、等級付けシステがはそのために確立されている(このシステムは現在文献で広範囲に用いられる)。肺移植でCBを発症させる重要なリスク要因には異系抗原依存性及び非依存性メカニズムが含まれる。前者のグループでは、後期急性拒絶及びA遺伝子座におけるHLA不適合があり、後者では虚血/気道に対する再灌流損傷(前記は移植手術及びサイトメガロ感染からもたらされる)がある(Schlesinger C. et al, Curr Opin Pulm. Med., 4(5): 288-93, 1998)。
【0023】
拒絶メカニズム
移植器官に対する免疫応答は、細胞性(リンパ球媒介)及び液性(抗体媒介)メカニズムの両方から成る。他の細胞タイプもまた関与するが、移植片の拒絶ではT細胞が中心的である。拒絶反応は感作期及びエフェクター期から成る。
感作期
この期では、CD4及びCD8は、それらのT細胞レセプターを介して外来移植片の細胞上で発現されるアロ抗原を認識する。抗原認識には2つのシグナルが必要である:第一はT細胞レセプターとMHC分子によって提示される抗原との相互作用によって提供され、第二はT細胞/APC表面上での同時刺激レセプター/リガンド相互作用によって提供される。多数の同時刺激経路のうち、T細胞表面上のCD28とそのAPC表面リガンド、B7-1又はB7-2(それぞれ一般的にCD80又はCD86として知られている)との相互作用がもっともよく研究されている(Clarkson, M. and Sayegh, M., Transplantation; 80(5): 555-563, 2005)。さらにまた、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA4)もまたこれらのリガンドに結合し、抑制シグナルを提供する。他の同時刺激分子にはCD40及びそのリガンドCD40L(CD154)が含まれる。典型的には、MHC分子のヘリックスはペプチド結合溝を形成し、正常な細胞タンパク質から誘導されるペプチドによって占有される。胸腺又は中枢性寛容メカニズム(クローン欠失)及び末梢性寛容メカニズム(例えばアネルギー)は、これらの自己ペプチドMHC複合体が当該T細胞によって認識されないことを担保し、それによって自己免疫を予防する。
【0024】
エフェクター期
アロ抗原依存及び非依存因子がエフェクターメカニズムに寄与する。まず初めに免疫学的“損傷応答”(虚血)には非特異的炎症応答が含まれる。このために、粘着分子、クラスII MHC、ケモカイン及びサイトカインの発現がアップレギュレートされるにつれ、T細胞への抗原提示は増加する。前記はまた、無傷で可溶性のMHC分子(間接的なアロ認識経路を活性化できる)の放出を促進する。活性化後に、CD4-陽性T細胞はマクロファージ媒介遅延型過敏(DTH)応答を開始させ、抗体生成のためにB細胞への支援を提供する。
移植後早期に、多様なT細胞及びT細胞由来サイトカイン(例えばIL-2及びIFN-γ)がアップレギュレートされる。後には、β-ケモカイン、例えばRANTES(活性化時に調節され、正常T細胞により発現及び分泌される(
regulated upon
activation,
normal
T cell
expressed and
secreted))、IP-10、及びMCP-1が発現され、これはアロ移植片の激しいマクロファージ浸潤を促進する。IL-6、TNF-α、誘発性無水硝酸シンターゼ(iNOS)及び増殖因子もまたこのプロセスで役割を果たす。増殖因子(TGF-β及びエンドセリンを含む)は、平滑筋分裂、内膜肥厚、間質線維症、及び腎臓の場合には糸球体硬化症を引き起こす。
T細胞誘導サイトカイン及びマクロファージによって活性化された内皮細胞は、クラスII MHC、粘着分子及び同時刺激分子を発現する。これらは抗原を提示し、それによってより多くのT細胞を補充し、拒絶プロセスを増幅することができる。CD8陽性T細胞は、 “致死性ヒット”をデリバーすることによって又別にはアポトーシスを誘発することによって細胞媒介性細胞傷害性反応を媒介する。
さらにまた、明らかになった研究では、器官移植の慢性移植拒絶では線維症プロセスの密接な関与が示唆された。例えば、慢性肺アロ移植片拒絶は、アロ移植片内皮細胞誘導HIF-1αの相対的欠乏によって媒介され、前記は移植器官の線維症性再造形をもたらすことが示された。(Wilkes, D., J Clin Invest., 121(6): 2155-2157, 2011; Jiang, X. et al., J Clin Invest., 121(6): 2336-2349, 2011)。
【0025】
3.5.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性閉塞性気管支炎、気腫、及び/又は慢性喘息のいくつかの組合せに起因する慢性で相対的に不可逆性の呼気気流の機能不全によって代表される肺疾患の総称である。COPDは、一連の環境性又は遺伝性リスク要因(当該疾患の一因となる喫煙を含む)によって引き起こされる。
COPDの広がりは世界的に増しており、COPDは米国では4番目に高い死亡原因となった。米国では、ここ数十年の喫煙の減少にもかかわらず、COPDの広がり及びCOPD関連死亡率は増加しており、まだ数年間は増加し続けると見積もられている。さらにまた、COPDは費用がかさみ、激しい悪化(中等度又はより重篤なCOPDの患者で大まかに年に一度発生する)はもっとも高価な成分を構成する。
COPDでは、気流の閉塞は肺では2つの非常に異なる病理生理学的プロセスのどちらかを土台にして発生し得る:1)肺実質のタンパク分解及び肺の弾性低下(気腫)をもたらす肺実質の炎症;及び2)小気道の炎症、瘢痕形成及び狭窄(“小気道疾患”)。個々の患者では、これらのプロセスの一方(種々の遺伝因子によって制御され得る)が優勢であり得るが、ただし通常は両プロセスが同時に存在する。最終的にはこれらのプロセスの両方が機能障害の類似のパターン(呼気流の減少、過膨張及びガス交換異常)を生じる。
COPDの初期段階では、COPD患者の肺で以下の症状が見出される:1)損傷エーロゾルによる気道上皮の切れ目、2)炎症性粘液滲出物の蓄積、3)気道壁への炎症性免疫細胞の浸潤、4)気道再造形/気道壁の肥厚及び管腔空間における侵食、及び5)気流に対する耐性の強化。この初期段階中、平滑筋収縮及び過敏性もまた耐性を高めるが、この高められた耐性は気管支拡張剤によって緩和される
進行段階では、COPD患者は、気道壁を取り巻く上皮下の非通気性区画内に線維性結合式の堆積を特徴的に進行させる。そのような細気管支周囲の線維症は、肺膨張により生じる気道口径の拡大を制限することによって気道の閉塞の固定の一因となる。
【0026】
3.5.1.慢性気管支炎
慢性気管支炎は、慢性の咳が有ること、痰を生じることが認識されている他の疾患が2年連連続して存在しないときに少なくとも3カ月痰の排出があることと規定される。慢性気管支炎では、疫学的に当該気管支上皮は、粘液線の肥大及び杯細胞の数の増加とともに慢性炎症を示す。線毛もまた破壊され、粘膜線毛エスカレーターの有効性は大きく損なわれる。粘液の粘性及び粘液生成は増加し、吐き出すことが困難になる。粘液の貯留は感染に対する感受性を高める。
顕微鏡的には炎症細胞による気道壁の浸潤が存在する。炎症に続いて、壁を肥厚させさらに気道の狭窄ももたらす瘢痕化及び再造形が生じる。慢性気管支炎が進行するにつれ、扁平上皮化生(気道の内側を裏打ちする組織中の異常な変化)及び線維症(気道壁の更なる肥厚及び瘢痕化)が生じる。これらの変化の結果は気流の制限である。期間の経過中に繰り返される感染及び炎症は気道壁への不可逆的な構造的損傷及び瘢痕化をもたらし、より小さな抹消気道の狭窄及び歪みを生じる。
【0027】
3.5.2.気腫
気腫はその病理学的な特色に基づいて規定され、終末細気管支に対し遠位の終末気腔の異常な拡長を特徴とし、それらの壁の破壊及び肺弾性の低下を伴う。水疱(bulla)(幅が1cmを超える水疱(blister))は、気腫領域の直径が1cmより大きい場合に過剰膨張の結果として発生し得る。異常な気腔の分布によって2つの主要な気腫パターンに分類される:汎細葉性(汎小葉性)気腫(前記は膨張及び細葉全体の破壊(特に肺の下半分)をもたらす)。細葉中心部(小葉中心部)気腫は、肺の上部葉及び下方葉上方部分に影響が及ぶ呼気細気管支周囲の損傷を含む。さらにまた、気腫のある種の形態は線維症を伴うことが判明している。
気腫の破壊性プロセスはもっぱら喫煙と密接に関係する。タバコの煙は刺激原であり、気道及び肺胞の低度の炎症を生じる。タバコは4000を超える有害物質を含むことが知られている(前記有害物質は、肺の抗プロテアーゼとプロテアーゼとの間のバランスに影響を及ぼし、永続的な損傷を引き起こす)。炎症性細胞(マクロファージ及び好中球)は、エラスターゼとして知られているタンパク分解酵素を生成する(エラスターゼはエラスチン(肺組織の重要な成分)を破壊する)。
肺胞又は肺の空気嚢は、肺内の気道の潜在力を支援及び維持する弾性組織を含む。肺胞壁の破壊は、気道の開放の維持を支援する支え綱を崩すことによって小気道を狭窄させる。正常な吸気中に、横隔膜は下方に移動するが肋骨ケージは外方向に動き、生じた陰圧により空気が肺内に流入する。呼気に際して、肋骨ケージ及び横隔膜は弛緩するので、肺実質の弾性反動が気道を上方及び外方に押す。肺実質の破壊にしたがって(前記破壊は肺の弾性低下及び肺胞の支え綱の喪失をもたらす)、小気道が破壊され空気が閉じ込められて肺の過剰膨張に至る。過剰膨張は横隔膜を平坦にし、有効収縮の低下及び肺胞効率の減少をもたらし、これらは順次更なる空気の閉じ込めに至る。時間の経過とともに、記載したメカニズムは重篤な気流閉塞をもたらし、次の吸気の前に肺がすっかり空気を抜くには不十分な空気の吐き出しを生じる。
【0028】
3.5.3.慢性喘息
喘息は、広範囲で多様な気道閉塞に至る、気道の慢性炎症状態と規定され、前記は偶発的に又は治療により可逆的である。慢性喘息を示すいくらかの患者では、特に、喘息と診断されなかったか又は管理が悪かったために喘息が治療されなかった場合、又は喘息が特に重篤であった場合に、この疾患は進行し不可逆的な気道閉塞に至る。喘息の小児は不可逆的な喘息に進行する10の機会のうち1つを有するが、成人の喘息開始のリスクは4つのうち1つである。複数の研究が、小児及び成人で彼らの喘息が適切に治療されなければ(特にコルチコステロイド療法により)、喘息は肺機能の不可逆的悪化に至る可能性があることを見出した。
時間の経過とともに喘息の気道炎症は、平滑筋の増加、表面上皮の破壊、コラーゲン沈着の増加、及び基底膜の肥厚により気道の再造形を生じ得る。
【0029】
3.6.他のタイプの線維症
他のタイプの線維症には、膵及び肺嚢胞性線維症、注射線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、腹膜後線維症、及び腎性全身性線維症が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
嚢胞性線維症(CF、膵線維症)は常染色体性劣性遺伝疾患である。前記は米国ではもっとも一般的な致死性遺伝疾患で、約30,000人が罹患し、白人集団ではもっとも一般的であり3,300人につき1人出現する。嚢胞性線維症に中心的に関係する遺伝子(1989年に同定された)は、嚢胞性線維症トランスメンブレンコンダクタンスレギュレーター(CFTR)と称されるタンパク質をコードする。通常ではCFTRは全身の外分泌上皮によって発現され、塩素イオン、重炭酸イオン及びグルタチオンの細胞内外への移動を調節する。嚢胞性線維症患者では、CFTR遺伝子の変異はCFTRタンパク質機能の変化又は完全な喪失をもたらし、浸透圧、pH及び外分泌のレドックス特性の不完全性を生じる。肺では、CFは、気道を塞ぐ厚い粘液分泌の存在によって当該疾患を明示する。他の外分泌器官(例えば汗腺)では、CFは閉塞性表現型によっては当該疾患を明示しないが、分泌物の異常な塩組成によって示され得る(したがって臨床的な汗の浸透圧試験によってCF患者が検出される)。嚢胞性線維症患者の症状及び死亡のもっとも一般的な原因は進行性肺疾患である。厚いCF粘液(前記は気道の通過を妨げる)は、分泌物の浸透圧の異常とともに、炎症細胞セット(好中球と称される)に由来する大量のDNA、アクチン、プロテアーゼ及び前酸化酵素から生じると考えられている。実際、CF肺疾患は、ウイルス性及び細菌性病原体に対する初期の過活動性好中球媒介炎症反応を特徴とする。CFの肺のこの過剰炎症症候群はいくつかの根拠を有し、その中でとりわけ、前炎症性サイトカイン(主としてIL-8)及び抗炎症性サイトカイン(主としてIL-10)の不均衡が主要な役割を果たすことが報告されている(以下を参照されたい:Chmiel et al., Clin Rev Allergy Immunol. 3(1):5-27, 2002)。複数の研究が、嚢胞性線維症患者の気管支肺洗浄中のTNF-α、IL-6及びIL-1βのレベルは、コントロールの気管支肺洗浄のものより高いことを報告している(Bondfield, T. L., et al. Am. J. Resp. Crit. Care Med. 152(1):2111-2118, 1995)。
【0030】
注射線維症(IF)は、筋肉内注射の合併症で、乳児及び小児の四頭筋、三頭筋及び臀部筋肉でしばしば生じる(乳児及び小児の場合、対象は患部筋肉を完全に収縮させることができない)。前記は典型的には無痛であるが進行性である。複数の研究が、糖タンパク質オステオポンチン(OPN)が組織の再造形で役割を果たすこと(Liaw, L., et al. J. Clin. Invest, 101(7):1469-1478, 1998)及びこの炎症性媒介物質がヒト単球でIL-1βのアップレギュレーション及び付随して強化されるTNF-α及びIL-6の生成を誘発することを報告している(Naldini, A., et al. J. Immunol. 177:4267-4270, 2006;Weber, G. F., and Cantor, H. Cytokine Growth Factor Reviews. 7(3):241-248, 1996)。
心内膜心筋疾患(好酸球増多症候群(HS))は、血液中の好酸球数の持続的上昇(1500好酸球/mm
3)を特徴とする疾患プロセスである。HSは同時に多くの器官を冒す。複数の研究が、IL-1β、IL-16及びTNF-αがウイルス誘発性心筋炎患者において高レベルで発現されることを報告している(Satoh, M., et al. Virchows Archiv. 427(5):503-509, 1996)。症状には以下が含まれ得る:心筋障害、皮膚病巣、血栓塞栓症、肺疾患、神経障害、肝脾腫大症(肝臓及び脾臓が同時に肥大する)及び心室サイズの低下。治療にはコルチコステロイドの使用が含まれ好酸球レベルを低下させることができる。
【0031】
縦隔線維症(MF)は、主要な血管及び気道を塞ぐ、リンパ節に集中する侵襲性石灰化線維症を特徴とする。MFはヒストプラズマ症の後期合併症である。ネズミモデルにおける複数の研究が、IL-10及びTNF-αが顕著に上昇することを報告している(Ebrahimi, B , et al. Am. J. Pathol. 158:2117-2125, 2001)。
骨髄線維症(骨髄様化生、慢性特発性骨髄線維症、原発性骨髄線維症)は、骨髄が線維症を示す骨髄疾患である。骨髄線維症は進行性の骨髄不全に至る。平均生存は5年で、死亡原因には感染、出血、器官機能不全、門脈圧促進症、及び白血病性形質転換が含まれる。ウイルス誘発骨髄線維症の動物モデルでTNF-α及びIL-6レベルが上昇することが報告されている(Bousse-Kerdiles, M., et al. Ann. Hematol. 78:434-444, 1999)。
腹膜後線維症(オルモンド病)は、腹膜後腔における線維組織の増殖を特徴とする疾患である。腹膜後腔は、腎臓、大動脈、腎路及び他の構造を含む身体区画である。IL-1、IL-6及びTNF-αが腹膜後線維症の病理発生に重要な役割を有することが報告されている(Demko, T., et al, J. Am. Soc. Nephrol. 8:684-688, 1997)。腹膜後線維症の症状には、背下部の痛み、腎不全、高血圧及び深部静脈血栓症が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
腎性全身性線維症(NSF、腎性線維化皮膚障害)は、皮膚、関節、眼及び内部器官の線維症を含む。NSFはガドリニウムへの曝露に密接に関係し得る。患者は、線維症結節及び斑を有する広域の皮膚硬化を発達させる。運動範囲制限を伴う屈曲拘縮もまた生じ得る。NSFは、皮膚線維芽細胞及び樹状突起細胞の増殖、肥厚コラーゲン束、弾性線維増加及びムチン沈着を示す。いくつかの報告が、前炎症性状態は腎性全身性線維症を引き起こす素因を提供すること(Saxena, S., et al. Int. Urol. Nephrol. 40:715-724, 2008)、及びTNF-αレベルが腎性全身性線維症の動物モデルで上昇すること(Steger-Hartmann, T., et al. Exper. Tox. Pathol. 61(6): 537-552, 2009)を示唆している。
【0032】
4.リスク因子
4.1.主要リスク因子
4.1.1.喫煙
線維症性気道疾患に対して多数のリスク因子が認定されているが(それらのいくつかは前記の原因として重要な役割を果たし得る)、タバコの煙はCOPDの第一のもっとも重要な原因である。喫煙するタバコの数が多いほど、線維症性気道疾患の発症リスクは高くなる。線維症性気道疾患を発症する人の大多数は喫煙者であり、彼らの肺機能は非喫煙者の肺機能よりはるかに速く低下する。
もっとも有効な介入は喫煙の停止(好ましくは初期段階における)である。喫煙を停止した喫煙者は失われた肺機能を回復させることはないが、低下率は非喫煙者のそれに復帰し得る。初期段階における喫煙停止は、どれほど多くの試みが停止のために必要とされるかに関係なく予後を改善する。線維症性気道疾患を発症させる個々の感受性は、喫煙との関係で変動する。約15%の喫煙者が臨床的に重要なCOPDを発症し、一方、約50%が全く症状を生じないであろう。肺機能の低下は漸進的であり、さらに患者は短縮呼吸の症状に慣れるか又は症状に気づかないために、診断は通常後期にもたらされる。複数の研究が、喫煙する1日当たりのタバコの本数に応じて喫煙者の24−47%が気道閉塞を発症することを示している。喫煙の受動的曝露はこの疾患に対する感受性を高める。
【0033】
4.1.2.アルファ-1アンチトリプシン欠乏
この希な遺伝性症状は、肺の重要なアンチプロテアーゼ防御系の1つの完全な欠如をもたらす。前記は集団の1:4000が罹患する劣性遺伝疾患である。アルファ-1アンチトリプシン欠損の患者は、20から40歳の間の若年に気腫を発症するリスクがあり、しばしばこの疾患の強い家族歴を有する。当該欠損及び気腫を有する患者は各親から1つの異常な遺伝子を受け継ぎ、いわば両親はこの遺伝子の保有者である。そのような両親は、血中に正常レベルの半分のアンチトリプシンを有するであろう(前記レベルは気腫の発症を防ぐために十分であり得る)。同様に、アルファ-1アンチトリプシン欠損患者の子供は全て1つの異常な遺伝子を保有するが、症状を示さないであろう。アルファ-1アンチトリプシン欠損の2つの通常型は、アルファ-1アンチトリプシンをコードする遺伝子の点変異から生じる。
【0034】
4.2.関連リスク因子
4.2.1.環境汚染
線維症性気道疾患は大気汚染によって悪化し得るという強力な証拠が存在するが、線維症性気道疾患の疫学における汚染の役割は、喫煙の役割と比較したとき小さい。重い粒子物質、炭素、及び二酸化硫黄(前記は石炭及び石油化石燃料の燃焼によって生成される)を含む大気汚染は、線維症性気道疾患の発症の重要な原因又は補助因子である。これらは主として乗り物の排気ガスに由来し、さらに光化学汚染物質(例えばオゾン)は特に非難されるべきである。発展途上国における換気が悪い家庭での料理及び暖房のために燃焼されるバイオマス燃料由来の室内の空気汚染は、特に女性の線維症性気道疾患(例えばCOPD)の重要なリスク因子であり得る。
4.2.2.職業因子
労働者が石炭、シリカ及び陽イオンに曝露されるいくつかの職業(例えば鉱夫、織物職人及びセメント作業員)は、線維症性気道疾患のリスク増加と密接に関係する。1950年代以来カドミウム、重金属及び溶接の煙への曝露は気腫の原因と認識されている。
埃っぽい多くの職業はガス又は煙への曝露よりも危険であり、慢性気管支炎及び気道閉塞性疾患の多様な形態の発症と密接に関係している。セメントの埃に曝露される建設業作業員と同様に、造船所の溶接工及び水漏れ防止作業員もまた線維症性気道疾患の発症リスクの増加を有する。
【0035】
4.2.3.小児の呼吸器感染
生後1年目の胸部感染(例えば肺炎及び細気管支炎)は、後の人生におけるCOPD発症の素因となり得る。これは、成人初期に肺の成長が終了するまで誕生時の呼吸器系の不完全な発育の結果であり得る。発育中に肺が損傷を受けると最大の潜在的肺機能は達成されず、若年でCOPDの症状を生じる。
4.3.他のリスク因子
線維性気道疾患(例えば肺線維症)の原因として役割を果たすか及び/又は前記疾患の初期症状として供される他のリスク因子には、過敏症肺炎(もっとも頻繁には細菌、真菌又は動物生成物で汚染された埃の吸引からもたらされる)、いくつかの典型的な結合織疾患(例えば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)及び強皮症)、結合組織と密接に関係する他の疾患(例えばサルコイドーシス及びヴェーゲナー肉芽腫症)、感染、ある種の医薬(例えばアミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン、メトトレキセート、及びニトロフラントイン)、及び胸部の放射線療法が含まれる。
【0036】
5.線維症性疾患又は症状を治療する従来の及び出現しつつある治療アプローチ
線維症性疾患の治療にこれまで用いられている治療薬剤は以下の文献に開示されている:Datta et al., British Journal of Pharmacology, 163: 141-172, 2011(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。そのような治療薬剤の非限定的な例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):精製ウシV型コラーゲン(例えばIW-001;ImmuneWorks;United Therapeutics)、IL-3レセプターアンタゴニスト(例えばQAX576; Novartis)、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばimatinib (Gleevec(商標)); Craig Daniels/Novartis)、内皮レセプターアンタゴニスト(例えばACT-064992 (macitentan); Actelion)、二重エンドセリンレセプターアンタゴニスト(例えばbosentan (Tracleer(商標)); Actelion)、プロスタサイクリンアナローグ(吸入イロプロスト、例えば(Ventavis(商標));Actelion)、抗CTGFモノクローナル抗体(例えばFG-3019)、エンドセリンレセプター(A-セレクティブ)(例えばアンブリセタン(Letairis(商標))、Gilead)、AB0024(Arresto)、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)モノクローナル抗体(例えばGS-6624(以前にはAB0024); Gilead)、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)阻害剤(例えばCC-930; Celgene)、ピルフェニドン(例えばEsbriet(商標)(InterMune)、Pirespa(商標)(Shionogi))、IFN-γ1b(例えばActimmune(商標);InterMune)、3つのTGF-βアイソフォーム全てに対する汎中和IgG4ヒト抗体(例えばGC1008; Genzyme)、TGF-β活性化阻害剤(例えばStromedix (STX-100))、組換えヒトペントラキシン-2タンパク質(rhPTX-2)(例えばPRM151; Promedior)、二特異性IL4/IL13 抗体(例えばSAR156597; Sanofi)、インテグリンαvβ6を標的とするヒト化モノクローナル抗体(BIBF 1120; Boehringer Ingelheim)、N-アセチルシステイン(Zambon SpA)、シルデナフィル(Viagra(商標)))、TNFアンタゴニスト(例えばエタネルセプト(Enbrel(商標)); Pfizer)、グルココルチコイド(例えばプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾンフロエート、フルチカゾンプロピオネート及びフルチカゾンフロエート)、気管支拡張剤(例えばロイコトリエン改変薬剤(例えば(Montelukast (SINGUAIR(商標)))、抗コリン作動性気管支拡張剤(例えばイプラトロピウムブロミド及びチオトロピウム)、短時間作用性β2-アゴニスト(例えばイソエタリンメシレート(Bronkometer(商標))、アドレナリン、サルブタノール/アルブテロール、及びテルブタリン)、長時間作用性β2-アゴニスト(例えばサルメテロール、フォルモテロール、インデカテロール(Onbrez(商標))、及びSYMBICORT(商標)(ブデソニド及びフォルモテロールの両方を含む)を含む(ただし前記に限定されない)組合せ気管支拡張剤、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾンフロエート)、メチル化キサンチン及びその誘導体(例えばカフェイン、アミノフィリン、IBMX、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、及びテオフィリン)、好中球エラスターゼ阻害剤(例えばONO-5046、MR-889、L-694,458、CE-1037、GW-311616、及びTEI-8362、並びに変遷状態阻害剤、例えばONO-6818、AE-3763、FK-706、ICI-200,880、ZD-0892及びZD-8321)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばロフルミラスト(DAXAS(商標); Daliresp(商標)))、及びシロミラスト(Ariflo(商標)、SB-207499)。
【0037】
5.1.キナーゼ及びリン酸化
キナーゼは、リン酸ドナー(通常はアデノシン-5’-三燐酸(ATP))からレセプター物質へリン酸転移反応を触媒する普遍的な酵素群である。全てのキナーゼが本質的に同じリン酸転移反応を触媒するが、それら酵素は、その基質特異性、構造及びそれらが参加する経路において驚くべき多様性を示す。全ての利用可能なキナーゼ配列(ほぼ60,000配列)の最近の分類は、キナーゼは相同なタンパク質(共通の祖先に由来することを意味する)を含む25のファミリーにグループ分けできることを示している。これらのキナーゼファミリーは、構造的折り畳みの類似性に基づいて12の折り畳みグループに集められる。さらに、25ファミリーのうち22(全配列の約98.8%)が、構造的折り畳みが判明している10の折り畳みグループに属している。他の3つのファミリーのうち、リン酸キナーゼは別個の折り畳みグループを形成し、残りの2ファミリーは両方ともインテグラルメンブレンキナーゼであり、最終的折り畳みグループを含む。これらの折り畳みグループはもっとも広範囲に認められるタンパク質折り畳みのいくつか(例は以下に挙げる)を含むだけでなく、タンパク質構造の全ての主要なクラス(全てのα、全てのβ、α+β、α/β)を含む。前記いくつかのもっとも広範囲に認められるタンパク質折り畳みタンパク質の例は、例えばロスマン様折畳み(トポロジーにおいてβ-α-β-α-βの順序で2つのαヘリックスによって連結された3つ以上のパラレルβ鎖)、フェレドキシン様折畳み(シグナチャーβαββαβ二次構造をその骨格に沿って有する一般的なα+βタンパク質)、TIMバレル折畳み(8つのαヘリックス及び8つのパラレルβ鎖(ペプチド骨格に沿って交互に入れ替わる)から成る保存されたタンパク質折り畳みを意味する)、及びアンチパラレルβバレル折り畳み(βバレルは、ツイスト及びコイルにより閉鎖構造(第一の鎖が最後の鎖と水素結合する)を形成する大きなベータシートである)である。折り畳みグループの中で、各ファミリーのヌクレオチド結合ドメインのコアは同じ構造様式を有し、当該タンパク質コアのトポロジーは同一であるか、又は環の並べ替えによって関連している。折り畳みグループ内のファミリー間の相同性は必ずしも含まれない。
【0038】
グループI(23,124配列)キナーゼは、タンパク質S/T-Yキナーゼ、非定形的タンパク質キナーゼ、脂質キナーゼ、及びATPグラスプ酵素を取り込み、さらにタンパク質S/T-Yキナーゼ及び非定形的タンパク質キナーゼファミリーを含む(22.074配列)。これらのキナーゼには以下が含まれる:コリンキナーゼ(EC2.7.1.32);タンパク質キナーゼ(EC2.7.1.37);ホスホリラーゼキナーゼ(EC2.7.1.38);ホモセリンキナーゼ(EC2.7.1.39);I-ホスファチジルイノシトール4-キナーゼ(EC2.7.1.67);ストレプトマイシン6-キナーゼ(EC2.7.1.72);エタノールアミンキナーゼ(EC2.7.1.82);ストレプトマイシン3’-キナーゼ(EC2.7.1.87);カナマイシンキナーゼ(EC2.7.1.95);5-メチルチオリボースキナーゼ(EC2.7.1.100);ビオマイシンキナーゼ(EC2.7.1.103);[ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(NADPH2)]キナーゼ(EC2.7.1.109);タンパク質チロシンキナーゼ(EC2.7.1.112);[イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(NADP+)]キナーゼ(EC2.7.1.116);[ミオシン軽鎖]キナーゼ(EC2.7.1.117);ヒグロマイシン-Bキナーゼ(EC2.7.1.119);カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼ(EC2.7.1.123);ロドプシンキナーゼ(EC2.7.1.125);[ベータ-アドレナリン作動性レセプター]キナーゼ(EC2.7.1.129);[タウタンパクっ質]キナーゼ(EC2.7.1.135);mクロライド2’-キナーゼ(EC2.7.1.136);I−ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(EC2.7.1.137);[RNA−ポリメラーゼ]-サブユニットキナーゼ(EC2.7.1.141);ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート3-キナーゼ(EC2.7.1.153);及びホスファチジルイノシトール-4-ホスフェート3-キナーゼ(EC2.7.1.154)。グループIはさらに脂質キナーゼファミリー(321配列)を含む。これらのキナーゼには以下が含まれる:I-ホスファチジルイノシトール-4-ホスフェート5-キナーゼ(EC2.7.1.68);ID-ミオ-イノシトール-トリホスフェート3-キナーゼ(EC2.7.1.127);イノシトール-テトラキスホスフェート5-キナーゼ(EC2.7.1.140);I-ホスファチジルイノシトール-5-ホスフェート4-キナーゼ(EC2.7.1.149);I-ホスファチジルイノシトール-3-ホスフェート5-キナーゼ(EC2.7.1.150);イノシトール-ポリホスフェートマルチキナーゼ(EC2.7.1.151);及びイノシトール-ヘキサキホスフェートキナーゼ(EC2.7.1.421)。グリープIはさらにATP-graspキナーゼ(729配列)を含み、前記キナーゼにはイノシトール-テトラキホスフェートI-キナーゼ(EC2.7.1.134);ピルベート、ホスフェート二キナーゼ(EC2.7.9.1);及びピルベート、水二キナーゼ(EC2.7.9.2)が含まれる。
【0039】
グループII(17,071配列)キナーゼはロスマン様キナーゼを取り込む。グループIIはP-ループキナーゼファミリー(7,732配列)を含む。これらには以下が含まれる:グルコノキナーゼ(EC2.7.1.12);ホスホリブロキナーゼ(EC2.7.1.19);チミジンキナーゼ(EC2.7.1.21);リボシルニコチンアミドキナーゼ(EC2.7.1.22);デホスホ-CoAキナーゼ(EC2.7.1.24);アデニリルスルフェートキナーゼ(EC2.7.1.25);パントテン酸キナーゼ(EC2.7.1.33);タンパク質キナーゼ(細菌性)(EC2.7.1.37);ウリジンキナーゼ(EC2.7.1.48);デオキシシチジン(EC2.7.1.74);デオキシアデノシンキナーゼ(EC2.7.1.76);ポリヌクレオチド5’-ヒドロキシル-キナーゼ(EC2.7.1.78);6-ホスフォフルクト-2-キナーゼ(EC2.7.1.105);デオキシグアノシンキナーゼ(EC2.7.1.113);テトラアシルジサッカリド4’-キナーゼ(EC2.7.1.130);デオキシヌクレオシドキナーゼ(EC2.7.1.145);アデノシルコビンアミドキナーゼ(EC2.7.1.156);ポリホスフェートキナーゼ(EC2.7.4.1);ホスホメバロネートキナーゼ(EC2.7.4.2):アデニレートキナーゼ(EC2.7.4.3);ヌクレオシド-ホスフェートキナーゼ(EC2.7.4.4);グアニレートキナーゼ(EC2.7.4.8);チミジレートキナーゼ(EC2.7.4.9);ヌクレオシド-トリホスフェート-アデニレートキナーゼ(EC2.7.4.10);(デオキシ)ヌクレオシド-ホスフェートキナーゼ(EC2.7.4.13);シチジレートキナーゼ(EC2.7.4.14);及びウリジレートキナーゼ(EC2.7.4.22)。グループIIはさらにホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼファミリー(815配列)を含む。これらの酵素には以下が含まれる:タンパク質キナーゼ(HPrキナーゼ/ホスファターゼ)(EC2.7.1.37);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(GTP)(EC.4.1.1.32);及びホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(ATP)(EC4.1.1.49)。グループIIはさらにホスホグリセレートキナーゼ(1,351配列)ファミリーを含む。これらの酵素にはホスホグリセレートキナーゼ(EC2.7.2.3)及びホスホグリセレートキナーゼ(GTP)(EC2.7.2.10)が含まれる。グループIIはさらにアスパルトキナーゼファミリー(2,171配列)を含む。これらの酵素には以下が含まれる:カルバメートキナーゼ(EC2.7.2.2);アスパルテートキナーゼ(EC2.7.2.4);アセチルグルタメートキナーゼ(EC2.7.2.81);グルタメート5-キナーゼ(EC2.7.2.1)及びウリジレートキナーゼ(EC2.7.4)。グループIIはさらにホスホフルクトキナーゼ様キナーゼファミリー(1,998配列)を含む。これらの酵素には以下が含まれる:6-ホスホフルクトキナーゼ(EC2.7.1.11);NAD(+)キナーゼ(EC2.7.1.23);I-ホスホフルクトキナーゼ(EC2.7.1.56);ジホスフェート-フルクトース-6-ホスフェートI-ホスホトランスフェラーゼ(EC2.7.1.90);スフィンガニンキナーゼ(EC2.7.1.91);ジアシルグリセロールキナーゼ(EC2.7.1.107);及びセラミドキナーゼ(EC2.7.1.138)。グループIIはさらにリボキナーゼ様ファミリー(2,722配列)を含む。これらの酵素には以下が含まれる:グルコキナーゼ(EC2.7.1.2);ケトヘキソキナーゼ(EC2.7.1.3);フルクトキナーゼ(EC2.7.1.4);6-ホスホフルクトキナーゼ(EC2.7.1.11);リボキナーゼ(EC2.7.1.15);アデノシンキナーゼ(EC2.7.1.20);ピリドキサルキナーゼ(EC2.7.1.35);2-デヒドロ-デオキシグルコノキナーゼ(EC2.7.1.45);ヒドロキシメチルピリミジンキナーゼ(EC2.7.1.49);ヒドロキシエチルチアゾールキナーゼ(EC2.7.1.50);I-ホスホフルクトキナーゼ(EC2.7.1.56);イノシンキナーゼ(EC2.7.1.73);5-デヒドロ-2-デオキシグルコノキナーゼ(EC2.7.1.92);タガトース-6-ホスフェートキナーゼ(EC2.7.1.144);ADP-依存ホスホフルクトキナーゼ(EC2.7.1.146);ADP-依存グルコキナーゼ(EC2.7.1.147);及びホスホメチルピリミジンキナーゼ(EC2.7.4.7)。グループIIはさらにチアミンピロホスホキナーゼファミリー(175配列)を含み、前記にはチアミンピロホスホキナーゼ(EC2.7.6.2)が含まれる。グループIIはさらにグリセレートキナーゼファミリーを含み、前記にはグリセレートキナーゼ(EC2.7.1.31)が含まれる。
【0040】
グループIIIキナーゼ(10,973配列)はフェロドキシン様折畳みキナーゼを含む。グループIIIはさらにヌクレオシド-ジホスフェートキナーゼファミリー(923配列)を含む。これらの酵素にはヌクレオシド-ジホスフェートキナーゼ(EC2.7.4.6)が含まれる。グループIIIはさらにHPPKキナーゼファミリー(609配列)を含む。これらの酵素には2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ(EC2.7.6.3)が含まれる。グループIIIはさらにグアニドキナーゼファミリー(324配列)を含む。これらの酵素にはグアニドアセテートキナーゼ(EC2.7.3.1);クレアチンキナーゼ(EC2.7.3.2);アルギニンキナーゼ(EC2.7.3.3);及びロンブリシンキナーゼ(EC2.7.3.5)が含まれる。グループIIIはさらにヒスチジンキナーゼファミリー(9,117配列)を含む。これらの酵素には、タンパク質キナーゼ(ヒスチジンキナーゼ)(EC2.7.1.37);[ピルベートデヒドロゲナーゼ(リポアミド)]キナーゼ(EC2.7.1.99);及び[3-メチル-2-オキシブタノエートデヒドロゲナーゼ(リポアミド)]キナーゼ(EC2.7.1.115)が含まれる。
グループIVキナーゼ(2,768配列)はリボヌクレアーゼH様キナーゼを取り込む。これらの酵素には以下が含まれる:ヘキソキナーゼ(EC2.7.1.1);グルコキナーゼ(EC2.7.1.2);フルクトキナーゼ(EC2.7.1.4);ラミュロキナーゼ(EC2.7.1.5);マンノキナーゼ(EC2.7.1.7);グルコノキナーゼ(EC2.7.1.12);L-リブロキナーゼ(EC2.7.1.16);キシルロキナーゼ(EC2.7.1.17);エリスリトールキナーゼ(EC2.7.1.27);グリセロールキナーゼ(EC2.7.1.30);パントテン酸キナーゼ(EC2.7.1.33);D-リブロキナーゼ(EC2.7.1.47);L-フコロキナーゼ(EC2.7.1.51);L-キシルコキナーゼ(EC2.7.1.53);アロースキナーゼ(EC2.7.1.55);2-デヒドロ-3-デオキシガラクトノキナーゼ(EC2.7.1.58);N-アセチルグルコサミンキナーゼ(EC2.7.1.59);N-アシルマンノサミンキナーゼ(EC2.7.1.60);ポリホスフェート-グルコースホスホトランスフェラーゼ(EC2.7.1.63);ベータ-グルコシドキナーゼ(EC2.7.1.85);アセテートキナーゼ(EC2.7.2.1);ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7);分枝鎖脂肪酸キナーゼ(EC2.7.2.14);及びプロピオン酸キナーゼ(EC2.7.2.15)。
【0041】
グループVキナーゼ(1,119配列)はTIMβ-バレルキナーゼを取り込む。これらの酵素にはピルビン酸キナーゼ(EC2.7.1.40)が含まれる。
グループVIキナーゼ(885配列)はGHMPキナーゼを取り込む。これらの酵素には以下が含まれる:ガラクトキナーゼ(EC2.7.1.6);メバロネートキナーゼ(EC2.7.1.36);ホモセリンキナーゼ(EC2.7.1.39);L-アラビノキナーゼ(EC2.7.1.46);フコキナーゼ(EC2.7.1.52);シキメートキナーゼ(EC2.7.1.71);4-(シチジン5’-ジホスホ)-2-C-メチル-D-エリスリオキナーゼ(EC2.7.1.148);及びホスホメバロネートキナーゼ(EC2.7.4.2)。
グループVIIキナーゼ(1,843配列)はAIRシンターゼ様キナーゼを取り込む。これらの酵素にはチアミン-ホスフェートキナーゼ(EC2.7.4.16)及びセレニド、水ジキナーゼ(EC2.7.9.3)が含まれる。
グループVIIIキナーゼ(565配列)はリボフラビンキナーゼ(565配列)を取り込む。これらの酵素にはリボフラビンキナーゼ(EC2.7.1.26)が含まれる。
グループIXキナーゼ(197配列)はジヒドロキシアセトンキナーゼを取り込む。これらの酵素にはグリセロンキナーゼ(EC2.7.1.29)が含まれる。
グループXキナーゼ(148配列)は仮定的グリセレートキナーゼを取り込む。これらの酵素にはグリセレートキナーゼ(EC2.7.1.31)が含まれる。
グループXIキナーゼ(446配列)はポリホスフェートキナーゼを取り込む。これらの酵素にはポリホスフェートキナーゼ(EC2.7.4.1)が含まれる。
グループXIIキナーゼ(263配列)はインテグラルメンブレンキナーゼを取り込む。グループXIIはドリコールキナーゼファミリーを含む。これらの酵素にはドリコールキナーゼ(EC2.7.1.108)が含まれる。グループXIIはさらにウンデカプレノールキナーゼファミリーを含む。これらの酵素にはウンデカプレノールキナーゼ(EC2.7.1.66)が含まれる。
キナーゼは、多数の細胞代謝経路及びシグナリング経路で必須の役割を果たし、それらは、構造レベル、生化学レベル及び細胞レベルでもっともよく研究されている酵素である。全てのキナーゼが同じリン酸ドナー(ほとんどの場合ATP)を用い、さらに外見的に同じホスホリル転移反応を触媒するという事実にもかかわらず、それら酵素はその構造的折り畳み及び基質認識メカニズムにおいて顕著な多様性を示す。これは、おそらくそれらの基質の構造及び特性の極めて多様な性質よるものである。
【0042】
5.1.1.マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ(MK2及びMK3)
種々のグループのMAPK活性化タンパク質キナーゼ(MAP-KAPK)が、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の下流で明らかにされた。これらの酵素は、MAPKの直接的基質ではない標的タンパク質にシグナルをトランスデュースし、したがってMAPKカスケードによるリン酸化依存シグナルを多様な細胞機能に中継するために機能する。これらのグループの1つは3つのMAPKAPK(すなわちMK2、MK3(3pKとしても知られている)及びMK5(PRAKとも称される))によって形成される。マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(“MAPKAPK2”、“MAPKAP-K2”又は“MK2”とも称される)は、セリン/スレオニン(Ser/Thr)タンパク質キナーゼファミリーのキナーゼである。MK2はMK3に対して高度に相同性である(約75%のアミノ酸同一性)。MK2及びMK3のキナーゼドメインは、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼ(CaMK)、ホスホリラーゼbキナーゼ、及びリボソームS6キナーゼ(RSK)アイソフォームのC-末端キナーゼドメイン(CTKD)と極めて類似する(約35%から40%同一)。mk2遺伝子は2つの異なる態様でスプライスされる転写物370アミノ酸(MK2A)及び400アミノ酸(MK2B)をコードする。mk3遺伝子は1つの転写アミノ酸をコードする。MK2及びMK3タンパク質は高度に相同性で、しかもMK2Aはより短いC-末端領域を保有する。MK2BのC-末端は2部に分かれた機能的な核内局在配列(NLS)(Lys-Lys-Xaa10-Lys-Arg-Arg-Lys-Lys;配列番号:23)を有し、前記はより短いMK2Aアイソフォームには存在せず、スプライシングの相違はMK2アイソフォームの細胞内分布を決定することを示している。MK3は同様な核内局在配列を保有する。MK2B及びMK3の両方で見出されるこの核内局在配列はDドメイン(Leu-Leu-Lys-Arg-Arg-Lys-Lys;配列番号:24)を包含し、前記はp38α及びp38βによりMK2BとMK3との特異的な相互作用を媒介することが複数の研究によって示された。MK2B及びMK3はまた、NLS及びDドメインに対してN-末端に位置する機能的な核外移送シグナル(NES)を保有する。MK2BのNESは、刺激(レプトマイシンBによって阻害され得るプロセス)に続く核外移送の引き金となるために十分である。MK2及びMK3の触媒ドメインに対してN-末端の配列は高プロリンであり、1つ(MK3)又は2つ(MK2)の仮定的Src相同性3(SH3)ドメイン-結合部位を含み、複数の研究が、MK2はc-Ab1のSH3ドメインとの結合をin vitroで媒介することを示した。最近の研究は、このドメインはMK2-媒介細胞遊走に必要であることを示唆している。
MK2B及びMK3はもっぱら休止細胞の核に存在し、一方、MK2Aは細胞質に存在する。MK2B及びMK3の両方が、染色体領域維持タンパク質(CRM1)依存メカニズムを介してストレス刺激時に細胞質に迅速に移送される。MK2Bの核外移送はキナーゼ活性化によって媒介されるように思われる。なぜならば、当該キナーゼの活性化ループ内のThr334のホスホミメティック変異はMK2Bの細胞内局在を強化するからである。理論に拘束されないが、MK2B及びMK3は構成的に活性なNLS及びリン酸化によって調節されるNESを含むことができると考えられる。
MK2及びMK3は普遍的に発現されるようであるが、心臓、骨格筋及び腎組織で優勢的に発現される。
【0043】
5.1.2.活性化
p38α及びp38βの多様なアクチベーターがMK2及びMK3活性を強力に刺激する。p38は、4つのプロリン指定部位(Thr25、Thr222、Ser272及びThr334)でMK2のin vitro及びin vivoリン酸化を媒介する。これらの部位のうち、Thr25のみがMK3で保存されていない。理論に拘束されないが、リン酸化Thr25の機能は不明であるが、2つのSH3ドメイン結合部位の間の前記の位置は、前記がタンパク質-タンパク質相互反応を調節する可能性があることを示唆している。MK2のThr222(MK3ではThr201)はキナーゼドメインの活性化ループ内に存在し、MK2及びMK3キナーゼ活性のために必須であることを示した。MK2のThr334(MK3ではThr313)は触媒ドメインに対してC-末端に位置し、キナーゼ活性に必須である。MK2の結晶構造が明らかにされ、理論に拘束されないが、Thr334のリン酸化はMK2の核内外移送のスイッチとして機能し得ることが提唱された。Thr334のリン酸化はまたMK2のC-末端と触媒ドメインとの結合を弱めるか又は妨害して、NESを暴露し核外移送を促進することができる。
p38は核内でMK2及びMK3を活性化できるが、MK2及びMK3の活性化及び核外移送は、リン酸化依存構造切り替え(前記はまたp38の安定化及び局在化を指令する)によって1つに結びつけられること、及びp38そのものの細胞内の位置はMK2及びおそらくMK3によって制御されることを実験的証拠が示唆していることを複数の研究が示した。さらに別の研究が、核のp38は、MK2のリン酸化及び活性化に続いてMK2との複合体として細胞質に移送されることを示した。p38レベルはMK2欠乏細胞で低く、触媒的に活性の無いMK2の発現はp38レベルを回復させることを複数の研究が示しているので、p38とMK2との相互作用はp38の安定化のために重要であり得る。
【0044】
5.1.3.基質及び機能
さらに別の研究によって、小さな熱ショックタンパク質HSPB1(熱ショックタンパク質27又はHsp27としても知られている)、リンパ球特異的タンパク質LSP-1、及びビメンチンはMK2によってリン酸化されることが示された。HSPB1は大きなオリゴマーを形成するので極めて有益である(そのようなオリゴマーは分子シャペロンとして機能し、細胞を熱ショック及び酸化性ストレスから保護する)。リン酸化に際して、HSPB1は大きなオリゴマーを形成する能力を失い、アクチン重合化を阻止できない。このことは、HSPB1のMK2媒介リン酸化は、アクチンの動的変化の調節を目的とする恒常性維持機能に役立つ(そうでなければ前記はストレス時に脱安定化されるであろう)ことを示唆している。
MK3はまたin vitro及びin vivoでHSPB1をリン酸化することが示されたが、ストレスの多い条件下でのその役割はまだ解明されていない。MK2は多くの基質をMK3と共有できる。両酵素は類似する基質嗜好性を有し、ペプチド基質を類似の動力学定数でリン酸化する。MK2による効果的なリン酸化に必要な最小の配列はHyd-Xaa-Arg-Xaa-Xaa-pSer/Thr(配列番号:25)であることが見出された(前記式中Hydは大きな疎水性残基である)。
実験的証拠は、サイトカイン生合成の調節及び細胞遊走におけるp38の役割を支持している。マウスでのmk2遺伝子標的欠損は、p38は多くの類似のキナーゼの活性化を媒介するが、MK2はこれらp38依存生物学的プロセスをもたらす重要なキナーゼと思われることを示唆している。MK2の低下は以下をもたらす:(i)サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)及びガンマインターフェロン(IFN-γ))のリポ多糖類(LPS)誘導合成の欠如、並びに(ii)マウス胚線維芽細胞、平滑筋細胞及び好中球の遊走における変化。
炎症応答におけるMK2の役割と一致して、MK2欠損マウスは、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)感染に対する感受性の上昇及び巣状虚血に続く炎症媒介神経細胞死の減少を示した。p38タンパク質レベルはまたMK2欠損細胞で顕著に低下するので、これらの表現型がMK2の欠損にのみによるものか否かを明らかにする必要が有った。前記を達成するために、MK2変異体をMK2欠損細胞で発現させた。それらの結果は、MK2の触媒活性はp38レベルの回復に必要ではないが、サイトカインの生合成の調節には要求されることを示した。
【0045】
MK2のノックアウト又はノックダウン研究は、活性化MK2は、IL-6 mRNAの高AU-3’非翻訳領域と相互作用するタンパク質のリン酸化を介してIL-6 mRNAの安定化を強化するとう強力な支持結果を提供した。特に、MK2は主としてhnRNPA0(IL-6 RNAを安定化させるmRNA結合タンパク質)のリン酸化に必要であることが示された。さらにまた、多様な炎症疾患を究明するいくつかのさらに別の研究は、前炎症性サイトカイン(例えばIL-6、IL-1β、TNF-α及びIL-8)のレベルは、安定期の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者、又は喫煙者の肺胞マクロファージの誘発喀痰で増加することを見出した(Keatings V. et al, Am J Resp Crit Care Med, 1996, 153:530-534;Lim, S. et al., J Respir Crit Care Med, 2000, 162:1355-1360)。前炎症性サイトカイン(例えばインターロイキン-8(IL-8)及びインターロイキン-6(IL-6))のレベル低下は、関連する下流の細胞粘着分子(CAM)(例えば細胞間粘着分子-1(ICAM-1)及び血管細胞粘着分子-1(VCAM-1))、マトリックスメタトプロテイナーゼ(例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ-7(MMP-7))、及びシグナリング分子(例えばS100カルシウム結合タンパク質A12(S100A12、カルグラヌリンCとしてもまた知られている))の末梢血中のレベル低下とともに、特発性肺線維症患者における死亡率、肺移植の無い状態での生存、及び疾患の進行と密接に関係することが見出された(Richards et al., Am J Respir Crit Care Med, 2012, 185: 67-76;Richards, T. et al., Am J Respir Crit Care Med, 181: A1120, 2010;Moodley, Y. et al., Am J Respir Cell Mol Biol., 29(4): 490-498, 2003)。総合すれば、これらの研究は、MK2活性化によって誘発された炎症性サイトカインのレベル上昇は気道又は肺組織の疾患の病理発生に必要であることを暗示し、さらに気道又は肺組織の疾患(例えば特発性肺線維症及び慢性閉塞性肺疾患(COPD))の治療のための抗サイトカイン療法の潜在能力を示唆する(Chung, K., Eur Respir J, 2001, 18: Suppl. 34: 50-59)。
【0046】
5.1.4.mRNA翻訳の調節
MK2ノックアウトマウス又はMK2欠損細胞を用いる以前の研究は、MK2は炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1及びIL-6)の生成を、そのmRNAの翻訳速度を速めることによって高めることを示した。TNF-αの転写、プロセッシング及び放出における顕著な低下はMK2欠損マウスでは検出できなかった。p38経路はmRNA安定化の調節に重要な役割を果たすことが知られており、さらにMK2はp38がこの機能を媒介するおそらく標的である。MK2欠損マウスを利用する研究は、MK2の触媒活性はサイトカイン生成及び遊走におけるその作用に必要であることを示し、理論に拘束されないが、MK2はmRNA安定化に必要とされる標的をリン酸化することを示唆している。これと一致して、MK2は、異種の核内核タンパク質(hnRNP)A0、トリステトラプロリン、ポリ(A)-結合タンパク質PABP1、及びHuR(普遍的に発現されるRNA結合タンパク質のelav(ドロソフィラ・メラノガスターの胚致死性異常の視覚的事象(embryonic-lethal abnormal visual in Drosophila melanogaster))メンバーと結合及び/又はリン酸化することが示された。これらの基質は、その3’-非翻訳領域に高AU成分を含むmRNAと結合又は同時精製されることが知られており、MK2は高AU mRNA(例えばTNF-α)の安定性を調節し得ることが示唆される。これまでのところ、MK3が同様な機能を果たすか否かは不明であるが、MK2欠損線維芽細胞のLPS処置はhnRNP A0のリン酸化を完全に停止させ、MK3はMK2の欠損を代償することはできないことを示唆している。
MK3は、MK2と一緒に真核細胞伸長因子2(eEF2)キナーゼのリン酸化に加わる。eEF2キナーゼはeEF2をリン酸化しこれを不活化する。eEF2活性は翻訳時のmRNAの伸長に必須であり、Thr56におけるeEF2のリン酸化はmRNA翻訳の終了をもたらす。Ser377におけるeEF2キナーゼによるMK2及びMK3リン酸化は、これらの酵素はeEF2キナーゼ活性を調節し、それによってmRNA翻訳伸長を調節し得ることを提唱している。
【0047】
5.1.5.MK2及びMK3による転写調節
核内MK2は、多くのMKと同様に、cAMP応答成分結合(CREB)、血清応答因子(SRF)及び転写因子ER81のリン酸化に寄与する。野生型及びMK2欠損細胞の比較によって、MK2はストレスによって誘発される主要なSRFキナーゼであることが明らかになり、ストレス媒介即時性初期応答におけるMK2の役割を示唆した。MK2及びMK3の両方が塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス転写因子E47とin vivoで相互作用し、さらにin vitroでE47をリン酸化する。E47のMK2媒介リン酸化は、E47の転写活性を抑制し、それによってE47依存遺伝子発現を阻害し、MK2及びMK3は組織特異的遺伝子発現及び細胞分化を調節し得ることを示唆する。
【0048】
5.1.6.MK2及びMK3の他の標的
いくつかの他のMK2及びMK3の基質がまた同定され、いくつかの生物学的プロセスにおけるMK2及びMK3の多様な機能を反映している。足場となるタンパク質14-3-3ζは生理学的なMK2の基質である。複数の研究が14-3-3ζは細胞シグナリング経路の多数の成分(タンパク質キナーゼ、ホスフェート、及び転写因子を含む)と相互作用することを示している。また別の研究は、Ser58における14-3-3ζのMK2媒介リン酸化はその結合活性を損なうことを示し、MK2は、通常は14-3-3ζによって調節されるいくつかのシグナリング分子の調節に影響を及ぼし得ると提唱した。
さらに別の研究は、MK2はまた、7員のArp2及びArp3複合体(p16-Arc)のp16サブユニットをSer77で相互作用し、これをリン酸化することを示した。p16-Arcは、細胞骨格アクチンの調節で役割を有し、MK2はこのプロセスに必要であり得ると提唱されている。
MK2及びMK3はまた5-リポキシゲナーゼをリン酸化できる。5-リポキシゲナーゼは、炎症媒介因子ロイコトリエンの生成における最初の工程を触媒する。チロシンヒドロキシラーゼ、グリコゲンシンターゼ、及びAktもまたMK2によってリン酸化されることが示された。最後に、MK2は腫瘍サプレッサータンパク質、ツベリンをSer1210でリン酸化し、14-3-3ζのためのドッキング部位を生じる。通常ツベリン及びハマルチンは機能的複合体を形成し、この複合体はmTOR依存シグナリングと拮抗することによって細胞増殖を負の方向に調節し、MK2のp38媒介活性化はツベリンと結合する14-3-3ζを増加させることによって細胞増殖を調節し得ると提唱されている。
【0049】
5.2.キナーゼの阻害
真核細胞のタンパク質キナーゼは、それらの触媒ドメインに関して相同なタンパク質のもっとも大きなスーパーファミリーの1つを構成する。もっとも関係の深いタンパク質キナーゼはセリン/スレオニン又はチロシンリン酸化に特異的である。タンパク質キナーゼは、細胞外刺激に対する細胞応答で不可欠の役割を果たす。したがって、タンパク質キナーゼの刺激は、シグナルトランスダクション系におけるもっとも一般的な活性化メカニズムの1つであると考えられる。多くの基質が、多数のタンパク質キナーゼによってリン酸化を受けることが判明しており、多様なタンパク質キナーゼの触媒ドメインの一次配列に関する極めて多くの情報が発表されている。これらの配列は、ATP結合、触媒及び構造的完全性の維持に必要とされる多数の残基を共有する。ほとんどのタンパク質キナーゼがよく保存された30−32kDaの触媒ドメインを保有する。
複数の研究がタンパク質キナーゼの調節成分の同定及び利用を試みている。これらの調節成分には阻害因子、抗体及び遮断ペプチドが含まれる。
【0050】
5.2.1.阻害因子
酵素阻害因子は、酵素と結合し、それによって酵素活性を低下させる分子である。阻害因子の結合は、基質の酵素活性部位への進入を停止させるか及び/又は酵素がその反応を触媒するのを妨害することができる。阻害因子の結合は不可逆性又は可逆性である。不可逆的阻害因子は通常、酵素と反応し、前記がもはやその反応を触媒できないように当該酵素を化学的に(例えば酵素活性に必要な重要なアミノ酸残基を改変することによって)変化させる。対照的に、可逆性阻害因子は非共有結合によって結合し、これらの阻害因子が酵素、酵素-基質複合体又はその両方に結合するか否かにしたがって種々のタイプの阻害因子が作製されている。
酵素阻害因子はしばしばその特異性及び潜在能力によって評価される。本明細書で用いられる“特異性”という用語は、阻害因子の選択的結合又は他のタンパク質との当該因子の結合の欠如を指す。本明細書で用いられる“潜在能力”は、阻害因子の解離定数(酵素の阻害に必要とされる阻害因子の濃度を示す)を指す。
タンパク質キナーゼの阻害因子は、タンパク質キナーゼ活性の調節のツールとして用いるために研究されてきた。阻害因子は例えば以下に関して使用するために研究されてきた:サイクリン依存(Cdk)キナーゼ、MAPキナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼ、Srcファミリータンパク質チロシンキナーゼ、カルモジュリン(CaM)キナーゼ、カゼインキナーゼ、チェックポイントキナーゼ(Chkl)、グリコゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)、タンパク質キナーゼA、Akt(タンパク質キナーゼB)、タンパク質キナーゼC、タンパク質キナーゼG、タンパク質チロシンキナーゼ、Rafキナーゼ、及びRhoキナーゼ。
【0051】
5.2.2.遮断ペプチド
ペプチドは、2つ以上のアミノ酸の鎖を含み、それによって鎖の中の1つのアミノ酸のカルボキシル基が他のアミノ酸のアミノ基とペプチド結合を介して連結された化合物である。ペプチドはとりわけタンパク質の構造及び機能の研究で用いられてきた。合成ペプチドは、とりわけどこでタンパク質-ペプチド相互作用が生じるかを調べるためにプローブとして用いることができる。阻害性ペプチドは、とりわけタンパク質キナーゼ、癌タンパク質及び他の疾患の阻害におけるペプチドの作用を調べるために臨床研究で用いることができる。
いくつかの遮断ペプチドの使用が研究されてきた。例えば、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、MAPKタンパク質キナーゼは、細胞の増殖及び分化に必須である。MAPKの活性化はカスケードメカニズムを要求し、それによってMAPKは上流のMAPKK(MEK)によってリン酸化され、前記は続いて第三のキナーゼMAPKKK(MEKK)によってリン酸化される。ERK阻害性ペプチドは、ERKと結合することによってMEKのおとりとして機能する。
他の遮断ペプチドにはオートカムチド-2関連阻害性ペプチド(AIP)が含まれる。この合成ペプチドは、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼII(CaMKII)の高度に特異的で強力な阻害因子である。AIPは、オートカムチド-2(CaMKIIのための高度に選択的なペプチド基質)のリン酸化不能アナローグである。AIPは、100nMのIC
50(IC
50は50%阻害を得るために要求される阻害因子の濃度である)でCaMKIIを阻害する。AIP阻害は、シンチド-2(CaMKIIペプチド基質)及びATPに関して非競合性であるが、オートカムチド-2に関しては競合性である。この阻害はCa
2+/カルモジュリンの有無によって影響されない。CaMKII活性はAIP(1μM)によって完全に阻害されるが、PKA、PKC及びCaMKIVによって影響されない。
他の遮断ペプチドには細胞分裂タンパク質キナーゼ5(Cdk5)阻害ペプチド(CIP)が含まれる。Cdk5は、微小管タンパク質タウがp25と結合するとき、アルツハイマー病特異的ホスホ-エピトープで前記タンパク質をリン酸化する。p25は切端アクチベーターであり、前記は、生理学的Cdk5アクチベーターp35からアミロイドβペプチドへの暴露に際して生成される。CIPによるニューロンの感染に際して、CIPは選択的にp25/Cdk5活性を阻害し、皮質ニューロンで異常なタウリン酸化を抑制する。CIPによって示される特異性の理由は完全には理解されていない。
さらに別の遮断ペプチドが以下のものについて研究されてきた:細胞外調節キナーゼ2(ERK2)、ERK3、p38/HOG1、タンパク質キナーゼC、カゼインキナーゼII、Ca
2+/カルモジュリンキナーゼIV、カゼインキナーゼII、Cdk4、Cdk5、DNA依存タンパク質キナーゼ(DNA-PK)、セリン/スレオニン-タンパク質キナーゼPAK3、ホスホイノシチド(PI)-3キナーゼ、PI-5キナーゼ、PSTAIRE(cdk高度保存配列)、リボソームS6キナーゼ、GSK-4、胚中心キナーゼ(GCK)、SAPK(ストレス活性化タンパク質キナーゼ)、SEKI(ストレスシグナリングキナーゼ)、及び巣状粘着キナーゼ(FAK)。
【0052】
5.3.細胞貫通ペプチド(CPP)
細胞貫通ペプチド(CPP)は、哺乳動物細胞の形質膜を貫通し、膜を横断して多くのタイプ及び分子量の化合物を輸送できるペプチドのクラスである。これらの化合物には、エフェクター分子、例えばタンパク質、DNA、複合ペプチド、オリゴヌクレオチド、及び小粒子、例えばリポソームが含まれる。CPPが他のタンパク質と化学的に連結又は融合されるとき、生成された融合タンパク質はなお細胞に侵入することができる。形質導入の正確なメカニズムは不明であるが、これらタンパク質の内在化はレセプター媒介又はトランスポーター媒介であるとは考えられていない。CPPは一般的に長さが10−16アミノ酸であり、それらの組成(例えば高アルギニン及び/又は高リジンペプチド)にしたがって分類され得る。
細胞にエフェクター分子を輸送することができるCPPの使用は、それらが積荷分子の細胞内取り込みを促進するので薬剤の設計においてますます有益となってきた。これらの細胞貫通ペプチド(それらの配列にしたがって概ね両親媒性(極性又は非極性末端の両方を有することを意味する)又は陽イオン性(正味の陽性荷電原子に関するか前記を含むことを意味する)として分類される)は、巨大分子の非侵襲性デリバリー技術を提供する。CPPはしばしば“トロイのペプチド”、“膜転座配列”、“タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)”又は“細胞透過性タンパク質(CPP)”と称される。CPPはまた、新規なHSPB1キナーゼ阻害因子の細胞膜貫通を支援するために用いることができる(以下を参照されたい:米国特許出願Ser.No.11/972,459(発明の名称:HSPB1キナーゼのポリペプチド阻害因子及びその使用(Polypeptide Inhibitors of HSPB1 Kinase and Uses Therefor)、2008年1月10日出願)及びSer. No. 12/188,109(発明の名称:キナーゼ阻害因子及びその使用(Kinase Inhibitors and Uses Thereof)、2008年8月7日出願);各出願の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0053】
5.3.1.ウイルスCPP含有タンパク質
形質導入特性を有するものとして記載されるべき第一のタンパク質はウイルス起源であった。これらのタンパク質はなおもっとも一般的に許容されるCPPのためのモデルである。細胞貫通ペプチドでは、とりわけ高アルギニン細胞貫通ペプチド(TATペプチドが含まれるが、ただし前記に限定されない)がもっとも広範囲に研究されている(El-Sayed, A. et al., AAPS J. 11, 13-22, 2009;Wender, P. et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 60, 452-472, 2008)。
TAT(HIV-1トランスアクチベーター遺伝子生成物)は86アミノ酸ポリペプチドであり、前記は組み込まれたHIV-1ゲノムの強力な転写因子として機能する。TATはウイルスゲノム上で機能し、潜伏感染細胞でウイルス複製を刺激する。TATの転座特性は、前記が休止細胞を活性化することを可能にし、さらに多くの細胞性遺伝子(サイトカインを含む)を調節することによって、その後の感染のために非感染細胞のプライミングに関与することができる。TATの最小CPPは9アミノ酸のタンパク質配列RKKRRQRRR(TAT49−57;配列番号:20)である。TATのより長いフラグメントを用いた研究は、120kDaまでの融合タンパク質の形質導入の成功を示した。合成TAT誘導体と同様に多数のTAT-CPPの付加が膜における転座を媒介することが示された。治療薬部分としてTAT CPP含有融合タンパク質が、癌を含む実験、殺滅タンパク質を細胞に輸送する実験及び神経変性疾患の疾患モデルで用いられている。
VP22はHSV-1外皮タンパク質(HSVビリオンの構造部分)である。VP22はレセプター非依存性で転座することができ、核に蓄積される。VP22のこの特性によって当該タンパク質はCPP含有ペプチドとして分類される。完全長のVP22を含む融合タンパク質は、形質膜を貫通して効率的に転座される。
【0054】
5.3.2.細胞間転座特性を有するホメオタンパク質
ホメオタンパク質は、形態学的プロセスで必要とされる、高度に保存されたトランスアクチベート転写因子である。前記は60アミノ酸の特異的配列を介してDNAと結合する。このDNA結合ホメオドメインは、前記ホメオタンパク質のもっとも高度に保存された配列である。いくつかのホメオタンパク質がCPP様活性を示すことが報告されている。それらは、細胞タイプによる特異性がなくエネルギー非依存性及びエンドサイトーシス非依存性態様で細胞膜を貫通して効率的に転座することができる。
アンテナペディアタンパク質(Antp)は、細胞膜を貫通して転座することができるトランスアクチベート因子である。転座できる最小配列は、タンパク質のホメオドメイン(HD)の第三ヘリックスに一致する16アミノ酸ペプチドである。このヘリックスの内在化は4℃で生じ、このプロセスがエンドサイトーシス依存性ではないことを示唆している。AntpHDを含む融合タンパク質として生成される100アミノ酸までのペプチドが細胞膜を貫通する。
転座することができる他のホメオドメインにはフシ・タラズ(Fushi tarazu)(Ftz)及びエングレイル(En)ホメオドメインが含まれる。多くのホメオドメインが高度に保存された第三のヘリックスを共有する。
5.3.3.ヒトCPP
ヒトCPPは、ヒト患者への導入時に潜在的免疫原性組織を回避することができる。CPS配列を有するペプチドには以下が含まれる:Hoxa-5、Hox-A4、Hox-B5、Hox-B6、Hox-B7、HOX-D3、GAX、MOX-2及びFtzCPP。これらのタンパク質は全てAntpCPPで見出される配列を共有する。他のCPPには以下が含まれる:Islet-1、インターロイキン-1、腫瘍壊死因子、カポジ線維芽細胞増殖因子(又はEGF-4)由来疎水性配列(前記はエネルギー-、レセプター-及びエンドサイトーシス-非依存性転座能力を有する)。未確定CPPには線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバーが含まれる。
【0055】
6.MK2阻害物質及び線維症性疾患又は症状の治療
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MAPKAPK2又はMK2)(p38MAPKの下流のセリン/スレオニンキナーゼ基質)は、瘢痕形成及び線維症の合併症である多くの炎症性疾患に関係している(Lopes, L. et al., Biochem Biophys Res Commun., 382(3):535-9, 2009)。これら疾患には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):癌、内膜過形成、器官線維症、腹部癒着、炎症性腸疾患、及び慢性関節リウマチ。特発性肺線維症(IPE)に加えて、炎症及び線維症を伴い、肺に影響を及ぼす他の疾患には、急性肺損傷(ALI)、器官移植拒絶(IPFの後期治療のための肺移植を含む)、敗血症の二次的器官不全、急性肺不全、自己免疫疾患(例えば強皮症)、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)。
線維症の発達には炎症、線維芽細胞の増殖及び補充が要求されることは公知であり、前記は筋線維芽細胞表現型を有する細胞を生じる(Horowitz J. et al., Semin Respir Crit Care Med., 27(6):600-612, 2006)。MK2は、転写レベル及び転写後レベルで遺伝子発現を制御するとともに(Neininger A. et al., J Biol Chem. 2002;277(5):3065-8;Thomas T. et al., J Neurochem., 105(5): 2039-52, 2008;Johansen C. et al., J Immunol., 176(3):1431-8, 2006;Rousseau S. et al., EMBO J. 21(23):6505-14, 2002)、細胞骨格を制御することが示された(Lopes, L. et al., Biochem Biophys Res Commun., 382(3):535-9, 2009)。さらにまた、活性化MK2は、炎症性サイトカインmRNAの翻訳及び安定性を高めること及びアクチンの再編成を引き起こすことが示され、さらにMK2の阻害は炎症の低下(Ward, B. et al., J Surg Res., 169(1):e27-36, 2011)及び筋線維芽細胞の分化(Lopes, L. et al., Biochem Biophys Res Commun., 382(3):535-9, 2009)を伴うことが示された。
総合すれば、これらのデータは、MK2の阻害は、線維症性疾患又は症状(例えば特発性肺線維症(IPF)、急性肺損傷(ALI)及び移植片拒絶)の患者に治療的利益を提供し得ることを示唆している。これに関して、本発明は、細胞貫通性のペプチド系MK2阻害物質を用いて炎症プロセス及び線維症に介入するアプローチを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、その必要がある対象で肺線維症を治療する組成物及び方法を提供し、前記方法は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(MMI-01007;配列番号:1)を有するポリペプチド又はその機能的等価物を含む治療量の組成物を投与する工程を含む。
用語解説
本明細書で用いられる“気道”という用語は、それを通して空気が体に入りさらに体から出ていく通路を指す。肺の気道は、空気が呼吸時に通過する呼吸管部分を含む。
本明細書で用いられる“気道の閉塞”という用語は、気流の任意の異常な低下を指す。気流に対する抵抗は、上部気道から終末気管支までの気道の任意の場所で生じ得る。
本明細書で用いられる“気道疾患”という用語は、肺の内外の酸素及び他の気体を運ぶ管(気道)を冒す疾患を指す。気道疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(喘息、気腫及び慢性気管支炎を含む)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本明細書で用いられる“肺組織疾患”という用語は、肺組織(例えば肺間質)の構造を冒す疾患を指す。肺組織の瘢痕形成又は炎症は、肺の完全な拡張を不能にする(“拘束性肺疾患”)。前記はまた、肺が酸素を取り上げ(酸素付加)さらに二酸化炭素を放出する能力を低下させる。肺組織疾患の例には、特発性肺線維症(IPF)、急性肺損傷(ALI)、肺の放射線誘発線維症、肺移植に付随する線維症症状が含まれるが、ただしこれらに限定されない。瘢痕形成は、腫脹(炎症)がリンパ節、肺、肝、眼、皮膚又は他の組織で生じる疾患である。
【0061】
“肺間質”又は“肺臓の間質”という用語は本明細書では互換的に用いられ、肺の気腔上皮と胸膜中皮との間に存在する領域を指す。マトリックスタンパク質の線維(コラーゲン及びエラスチン)は肺間質の主要成分である。これらの線維の主要な機能は、換気時に構造的完全性を維持する物理的な足場を築くことである。
本明細書で用いられる“接近可能表面積”又は“ASA”という用語は、溶媒に曝露される生物分子の表面積を指す。本明細書で用いられる“溶媒の接近可能表面”又は“SAS”という用語は、当該溶媒に接近できるある残基の表面積のパーセンテージを指す。前記は、残基の三次元構造におけるASAとその伸展させたペプチド構造の最大ASAとの間の比率として計算される。
“アミノ酸残基”又は“アミノ酸”又は“残基”という用語は互換的に用いられ、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに取り込まれるアミノ酸を指し、前記には天然に存在するアミノ酸及び天然に存在するアミノ酸と同様な態様で機能できる天然のアミノ酸の公知なアナローグが含まれるが、ただしこれらに限定されない。アミノ酸はL-又はD-アミノ酸であり得る。アミノ酸は合成アミノ酸によって代替し得る。合成アミノ酸はペプチドの半減期を延長させるように、ペプチドの能力を高めるように、又はペプチドの生物利用性を高めるように改変される。本明細書では主にアミノ酸の一文字表示を用いる。当業者には周知であるが、そのような一文字表示は以下のとおりである:Aはアラニン、Cはシステイン、Dはアスパラギン酸、Eはグルタミン酸、Fはフェニルアラニン、Gはグリシン、Hはヒスチジン、Iはイソロイシン、Kはリジン、Lはロイシン、Mはメチオニン、Nはアスパラギン、Pはプロリン、Qはグルタミン、Rはアルギニン、Sはセリン、Tはスレオニン、Vはバリン、Wはトリプトファン、Yはチロシンである。
【0062】
以下は、互いに保存的置換であるアミノ酸のグループを表す:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
本明細書で用いられるように、単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈が明瞭にそうでないことを示さない限り複数の対応物を含む。例えば、“a polypeptide”は1つ以上のポリペプチドを意味する。
本明細書で用いられる“付加”という語は、ある配列への1つ以上の塩基又は1つ以上のアミノ酸の挿入を指す。
本明細書で用いられる“投与する”という用語は、分配、供給、適用、提供、配分すること又は与えることを指す。 “投与すること(administering)”又は“投与(administration)”という用語は本明細書では互換的に用いられ、in vivo投与を含むとともに、ex vivoで組織に直接投与することも含む。一般的には、組成物は全身的に、経口、頬側、非経口、局部に、吸入又は吹送(すなわち口から又は鼻から)のいずれかにより、又は直腸から、ユニット投薬処方物(通常的で無害な医薬的に許容できる担体、アジュバント及びベヒクルを含む)として投与するか、又は局所的に、例えば注射、インプラント、移植、局部適用の手段によって又は非経口的に投与できる。追加の投与は、好ましくは例えば静脈内に、心膜内に、経口的に、インプラントにより、経粘膜的に、経皮的に、局部的に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、硬膜下腔内に、リンパ内に、病巣内に、硬膜外に実施できる。投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1つ以上の長い期間にわたって実施できる。
【0063】
本明細書で用いられる“アレルギー反応”という用語は免疫系の過敏反応を指す。アレルギー反応は、アレルゲンとして知られる通常的には無害な物質に対して生じる。これらの反応は後天的で予測可能で迅速である。アレルギー反応は、マスト細胞及び好塩基球と称されるある種の白血球の、IgEとして知られる抗体タイプによる過剰な活性化を特徴とし、結果として激甚な炎症応答を生じる。一般的なアレルギー反応には、湿疹、蕁麻疹,枯草熱、喘息発作、食物アレルギー、並びに刺針を有する昆虫(例えばスズメバチ及びミツバチ)の毒液に対する反応が含まれる。
本明細書で用いられる“α-平滑筋アクチン”又は“α-SMA”という用語はアクチンタンパク質、α-アクチン2(ACTA2、アクチン又は大動脈平滑筋アクチンとしても知られている)(最初に血管平滑筋細胞で単離された)を指す。アクチンは、高度に保存されたタンパク質で全ての真核細胞で発現される。アクチンフィラメントは細胞骨格の部分を形成し、細胞の形状及び移動の調節に必須の役割を果たす。6つの別個のアクチンアイソタイプが哺乳動物細胞で同定された。各々は分離している遺伝子によってコードされ、発育により調節されさらに組織特異的態様で発現される。アルファ及びベータ細胞質アクチンは非常に多様な細胞で発現されるが、一方、アルファ骨格アクチン、アルファ心アクチン、アルファ血管アクチン及びガンマ腸管アクチンはより強く特殊な筋肉細胞タイプに制限される。アルファ-平滑筋アクチンの遺伝子は、その発現が血管平滑筋細胞に比較的限定されているいくつかの遺伝子の1つであるが、前記は今や筋線維芽細胞形成のマーカーとしてもっとも一般的に用いられている。アルファ平滑筋アクチンの発現はホルモン及び細胞増殖によって調節され、病的状態(腫瘍原性形質転換及びアテローム性硬化症を含む)によって改変される。
【0064】
本明細書で用いられる“肺胞(alveolus又はalveoli)”という用語は、中身のない腔の形状を有する解剖学的構造を指す。肺胞は、肺で見出され、血液とガス交換する呼吸部位の球状突出である。肺胞はいくらかのコラーゲン及び弾性線維を含む。弾性線維は、肺胞が吸気時に空気で満たされたとき肺胞の伸展を可能にする。続いて肺胞は呼気時に急激に動いて、二酸化炭素に富む空気を吐き出す。
本明細書で用いられる“ブレオマイシン”という用語は、細菌のストレプトミセス・バーチシルス(Streptomyces verticillus)によって産生される糖ペプチドの抗生物質を指す。前記は、DNAブレークを誘発しDNA鎖へのチミジン取り込みを阻害することによって機能する。ブレオマイシンのもっとも重大な合併症は肺線維症及び肺機能障害である。
本明細書で用いられる“気管支肺洗浄”又は“BAL”は、気管支鏡を口又は鼻から肺に通し液体を肺の小部分に噴出させ、続いて試験のために再収集する医療措置を指す。BALは典型的には肺疾患の診断のために実施される。BALは一般的には、免疫系の問題を有する人の感染、換気装置を使用する人の肺炎、いくつかのタイプの肺癌、及び肺(間質性肺疾患)の瘢痕形成の診断のために用いられる。BALは、上皮基底層液(ELF)の成分のサンプル採取、及び肺気道のタンパク質組成の決定のためのもっとも一般的な態様であり、肺における細胞又は病原体レベルのサンプリング手段として免疫学的研究でしばしば用いられる。
【0065】
本明細書で用いられる“担体”及び“医薬担体”という用語は、1つ以上の活性物質を対象へデリバーするための医薬的に許容される不活性物質又はベヒクルを指し、しばしば“賦形剤”と称される。(医薬)担体は、治療される対象への投与に適切であるように、十分に純度が高く、十分に毒性が低くなければならない。(医薬)担体はさらに、活性物質(例えば本発明のポリペプチド)の安定性及び生物利用性を維持しなければならない。(医薬)担体は液体でも固体でも可能であり、さらに、与えられた組成物の活性物質と他の成分を混合するとき所望される体積、濃度などを提供するために、投与を念頭に置いて選択される。(医薬)担体は以下であり得る(ただしこれらに限定されない):結合剤(例えば予備ゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えばラクトース及び他の糖類、微晶質セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイドシリカ、ステアリン酸、ステアリン酸メタル、水素添加植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えばデンプン、グリコール酸ナトリウムデンプンなど)、又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)。本発明の組成物のための他の適切な(医薬)担体には、水、食塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれるが、ただし前記に限定されない。本発明のポリペプチドの経口投与用組成物は例えば以下のような(医薬)担体(ただしこれらに限定されない)を含むことができる:無菌的水溶液、一般的溶媒の非水性溶液(例えばアルコール)、又は液状油基剤のポリペプチド溶液。
【0066】
本明細書で用いられる“コラーゲン”という用語は、哺乳動物の筋肉及び結合組織で見出される天然に存在するタンパク質を指す。前記は結合組織の主要成分で、哺乳動物のもっとも豊富なタンパク質であり、全身体タンパク質含有量の約25%から35%を構成する。コラーゲン(フィブリルの伸長型)はほとんど線維性組織(例えば腱、靭帯及び皮膚)で見出され、さらに角膜、軟骨、骨、血管、腸管及び椎間円板にも豊富である。これまでのところ、29タイプのコラーゲンが同定され、身体のコラーゲンの90%超がI型(皮膚、腱、血管、靭帯、器官、骨)、II型(軟骨)、III型(小網(細網線維の主要成分))及びIV型(細胞基底膜の土台を形成する)である。
本明細書で用いられる“症状”という用語は身体の多様な状態を指し、何らかの内在するメカニズム、異常又は損傷によって引き起こされる異常又は疾患を含むことが意図される。
【0067】
“サイトカイン” という用語(他の細胞に多様な影響を及ぼす細胞によって分泌される小さな可溶性タンパク質物質を指す)は、一般的には多くのシグナリング分子(リンホカイン、インターロイキン及びケモカインを含むが、ただしこれらに限定されない)を指すために用いられる。サイトカインは、多くの重要な生理学的機能(増殖、発生、創傷治癒及び免疫応答を含む)を媒介する。サイトカインは細胞膜に存在するそれらの細胞特異的レセプターと結合することによって機能する。前記結合は、当該細胞でそれぞれ別個のシグナルトランスダクションカスケードを開始させ、前記シグナルカスケードは最終的に標的細胞で生化学的変化及び表現型の変化をもたらすであろう。一般的には、サイトカインは局所的に作用するが、ただしいくつかは、ホルモンと同様な多形質発現性オートクライン作用、パラクライン作用及び内分泌作用とともに全身的な免疫調節作用を有することが見出されている。サイトカインには、I型サイトカイン(いくつかの造血性増殖因子とともに多くのインターロイキンを含む)、II型サイトカイン(インターフェロン及びインターロイキン-10を含む)、腫瘍壊死因子(“TNF”)関連分子(TNF-α及びリンホトキシンを含む)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(インターロイキン-1(IL-1)を含む)、及びケモカイン(極めて多様な免疫及び炎症機能で重要な役割を果たす分子ファミリー)が含まれる。同じサイトカインが、細胞の状態に応じて当該細胞で異なる作用を有し得る。サイトカインはしばしば他のサイトカインの発現を調節しそのカスケードを始動させる。
【0068】
本明細書で用いられる“疾患”又は“異常”という用語は、原因に関係なく(遺伝性、環境性、食事性、感染性、外傷性又はその他の原因)健康障害又は異常な機能状態を指す。異常には例えば以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):炎症性及び線維症性疾患、線維症、急性肺損傷、放射線誘発線維症、移植片拒絶、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、内毒素ショック、局所性炎症疾患、アテローム硬化症性心脈管系疾患、アルツハイマー病、腫瘍疾患、神経虚血、結合組織性及び全身性自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、強皮症、血管炎、内膜過形成、狭窄症、再狭窄症、アテローム性硬化症、平滑筋細胞腫瘍及び転移、平滑筋痙攣、狭心症、プリンツメタル狭心症、虚血、卒中、徐脈、高血圧、心肥大、腎不全、卒中、肺高血圧、喘息、妊娠毒血症、早産、子癇前症、子癇、レイノー病又はレイノー現象、溶血性尿毒症、肛門裂傷、アカラシア、インポテンス、偏頭痛、平滑筋痙攣を伴う虚血性筋損傷、血管症、徐脈型不整脈、うっ血性心不全、昏倒下心筋層、肺高血圧、拡張期機能不全、グリオーシス(星状神経膠細胞の増殖、さらに中枢神経系の損傷領域における細胞外マトリックス(ECM)沈着を含むことがある)、慢性閉塞性肺疾患(すなわち気流の閉塞又は制限を特徴とする呼吸管の疾患、慢性気管支炎、気腫及び慢性喘息を含むが、ただしこれらに限定されない)、骨減少症、内皮機能不全、炎症、変形性関節症、強直性脊椎炎、ギライン-バーレ病、感染症、敗血症、内毒素ショック、乾癬、放射線腸炎、肝硬変、腸管線維症、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、大腸炎、虫垂炎、胃炎、喉頭炎、髄膜炎、膵炎、耳炎、再灌流損傷、外傷性脳損傷、脊髄損傷、末梢神経症、多発性硬化症、アレルギー、心代謝性疾患、肥満、真性II型糖尿病、真性I型糖尿病、及びNASH/肝硬変。
【0069】
本明細書で用いられる“ドメイン”という用語は、特徴的な三次元構造及び機能を有する領域、及びタンパク質の三次元サブユニットのいずれかであってその線状ペプチド鎖を折り畳むことによって形成されるその三次元構造を一緒に構成するものを指す。
本明細書で用いられる“治療ドメイン”という用語は、ペプチドKALARQLGVAA(配列番号:2)又はそのセグンメントと実質的同一性を有する、ペプチド、ペプチドセグメント若しくは変種、又は前記の誘導体を指す。治療ドメインは単独では、一般的には哺乳動物細胞の形質膜を貫通することはできない。いったん細胞内に入ると、治療ドメインは、特異的グループのキナーゼのキナーゼ活性を阻害することができる。
本明細書で用いられる“細胞貫通ペプチド”(“CPP”、“タンパク質トランスダクションドメイン”、“PTD”、“トロイのペプチド”、“膜転座配列”及び“細胞透過性タンパク質”とも称される)という用語は、一般的には哺乳動物細胞の形質膜を貫通できるペプチドのクラスを指す。前記はまた、ペプチドYARAAARQARA(配列番号:11)又はその機能的セグメントと実質的同一性を有する、ペプチド、ペプチドセグメント若しくは変種又は前記の誘導体、又は配列番号:11と機能的等価物であるペプチド、ペプチドセグメント若しくは変種又は前記の誘導体を指す。CPPは、一般的には長さが10−16アミノ酸であり、哺乳動物細胞を貫通して多くのタイプ及び分子量の化合物を輸送することができる。そのような化合物には、エフェクター分子(例えばタンパク質、DNA、複合ペプチド、オリゴヌクレオチド)及び小分子(例えばリポソーム)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。他のタンパク質と化学的に連結又は融合したCPPはなお形質膜を貫通して細胞に侵入できる。
【0070】
本明細書で用いられる“細胞外マトリックス”という用語は、細胞が特異的な細胞表面レセプターを介して相互作用する、細胞外環境中の足場を指す。細胞外マトリックスは、線維性タンパク質とグリコサミノグリカン(GAG)とが組み合わされた網状組織を含む。細胞外マトリックスで見出される線維性タンパク質の例には、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン及びラミニンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。細胞外マトリックスで見出されるGAGの例には、プロテオグリカン(例えば硫酸ヘパリン)、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸及び非プロテオグリカン多糖類(例えばヒアルロン酸)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。“プロテオグリカン”という用語は、1つ以上のグリコサミノグリカンが結合したコアタンパク質を含む糖タンパク質のグループを指す。細胞外マトリックスは多くの機能を提供する。前記機能には、細胞の支持及び固定の提供、ある組織と別の組織の隔離、及び細胞内連絡の調節が含まれるが、ただし前記に限定されない。
“機能的等価物”又は“機能的に等価な”という用語は、類似若しくは同一の作用又は用い方を有する物質、分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを指すために、本明細書では互換的に用いられる。ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と機能的に等価なポリペプチドは、例えば配列番号:1の発現ポリペプチドと実質的に類似する又は同一である生物学的活性、例えば阻害性活性、動態パラメータ、塩阻害、補助因子依存活性及び/又は機能ユニットサイズを有し得る。
【0071】
YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と機能的に等価なポリペプチドの例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アミノ酸配列FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3)のポリペプチド;アミノ酸配列KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4)のポリペプチド;アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLAVA(配列番号:5)のポリペプチド;アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVA(配列番号:6)のポリペプチド;及びアミノ酸配列HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7)のポリペプチド。
本発明に記載のアミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))ペプチドは、治療有効性を高めるために、細胞貫通ペプチド(CPP;YARAAARQARA(配列番号:11))が治療ドメイン(KALARQLGVAA;配列番号:2)と作動できるように連結されてある融合タンパク質を含む。
ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の治療ドメイン(TD;KALARQLGVAA(配列番号:2))と機能的に等価のポリペプチドの例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アミノ酸配列KALARQLAVA(配列番号:8)のポリペプチド、アミノ酸配列KALARQLGVA(配列番号:9)のポリペプチド、及びアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:10)のポリペプチド。
ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の細胞貫通ペプチド(CPP;YARAAARQARA(配列番号:11)と機能的に等価なポリペプチドの例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アミノ酸配列WLRRIKAWLRRIKA(配列番号:12)のポリペプチド、アミノ酸配列WLRRIKA(配列番号:13)のポリペプチド、アミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:14)のポリペプチド、アミノ酸配列WLRRIKAWLRRI(配列番号:15)のポリペプチド、アミノ酸配列FAKLAARLYR(配列番号:16)のポリペプチド、アミノ酸配列KAFAKLAARLYR(配列番号:17)のポリペプチド、及びアミノ酸配列HRRIKAWLKKI(配列番号:18)のポリペプチド。
【0072】
本明細書で用いられる“内因性”という用語は、内部から増殖するか若しくは発するか、又は内部から誘導されることを指す。
本明細書で用いられる“内皮”という用語は、血管の内部表面を裏打ちし、管腔内の循環血液と管腔壁の残りの部分との間の境界面を形成する細胞の薄い層を指す。内皮細胞は、心臓から最小の毛細血管まで全循環系を裏打ちするであろう。これらの細胞は血流の乱れを低下させ、当該液体をさらに遠くへ押し出す。
本明細書で用いられる“好酸球”又は“好酸球性顆粒球”という用語は、脊椎動物における多細胞性寄生虫及びある種の感染との戦いに必要な白血球を指す。前記は、血中に遊走する前の骨髄での造血時に発育する顆粒球である。マスト細胞とともに、前記細胞はまたアレルギー及び喘息に密接に関係するメカニズムを制御する。活性化に続いて、好酸球は以下を含む多様な機能を発揮する:(1)陽イオン性顆粒タンパク質の産生及び脱顆粒によるそれらの放出、(2)反応性酸素種(例えば超酸化物、過酸化物及び次亜臭素酸塩(次亜臭素酸、前記はもっぱら好酸球ペルオキシダーゼによって生成される))の生成、(3)ロイコトリエン及びプロスタグランジンファミリーから脂質媒介因子(エイコサノイド)の生成、(4)増殖因子(例えば形質転換増殖因子(TGF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、及び血小板由来増殖因子(PDGF))の生成、及び(5)サイトカイン(例えばIL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-13及びTNF-α)の生成。
【0073】
本明細書で用いられる“上皮”という用語は、全身体の腔及び構造物表面に一列に並ぶ細胞を含む組織を指す。上皮の基底表面はその下にある結合組織に向き合い、この2つの層は基底膜によって分離される。
本明細書で用いられる“血管外遊出”は、毛細血管から血液細胞成分がそれらを取り巻く組織へ移動すること(漏出)を指す。悪性癌の転移の場合、前記用語は毛細血管から脱出して器官に侵入する癌細胞を指す。
本明細書で用いられる“滲出”という用語は、循環系の液体が血管壁を通過して炎症病巣又は領域に侵入するプロセスを指す。血液滲出物はいくらかの又は全ての血漿タンパク質、白血球、血小板及び赤血球を含む。
本明細書で用いられる“フィブリン”という用語は、血液凝固に必要とされる線維性タンパク質を指す。創傷部位を覆う止血の栓又は血塊(血小板と一緒になって)を形成する“網状組織”を形成するために重合するのは原線維タンパク質である。フィブリンは、シグナルトランスダクション、血液凝固、血小板活性化、及びタンパク質重合に必要とされる。
【0074】
本明細書で用いられる“線維芽細胞”という用語は、細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲンを含むが、ただし前記に限定されない)を生成及び分泌する結合組織細胞を指す。線維芽細胞(結合組織で見出されるもっとも一般的な細胞タイプ)は創傷治癒に重要な役割を果たす。結合組織の他の細胞のように、線維芽細胞は初期間葉(3つの胚葉全てから誘導される粗い結合組織タイプ)に由来する。ある種の状況では、上皮細胞は線維芽細胞を生じることができる(上皮-間葉変遷と称されるプロセス)。線維芽細胞及び線維細胞は同じ細胞の2つの状態であり、前者は、メンテナンス及び組織の代謝に関して活性化状態で、後者は活性が前者より低い状態である(両用語は場合によって互換的に用いられる)。
本明細書で用いられる“筋線維芽細胞”という用語は、平滑筋のいくつかの特徴(例えば収縮特性及び線維)を有し、さらに一時的にIII型コラーゲンを生成すると考えられている創傷領域の線維芽細胞を指す。筋線維芽細胞の発達に関してはいくつかの可能な態様が存在するが、筋線維芽細胞は、その分化において線維芽細胞と平滑筋細胞の間にある細胞である。多くの器官(例えば肝臓、肺臓及び腎臓)では、筋線維芽細胞は主として線維症に関係する。創傷組織では、それらは、創傷の強化(細胞外コラーゲン線維の沈着による)に、続いて創傷の収縮(細胞内収縮及びインテグリンにより媒介されるコラーゲン束への引き寄せによるコラーゲン線維の同時アラインメントによる)に関係する。
【0075】
本明細書で用いられる“フィブロネクチン”という用語は、膜全域(membrane-spanning)細胞表面マトリックスレセプタータンパク質(“インテグリン”)及び細胞外マトリックス成分(例えばコラーゲン、フィブリン及びヘパリン硫酸プロテオグリカン(例えばシンデカン))と結合する高分子量(約440kDa)の細胞外マトリックス糖タンパク質を指す。フィブロネクチンはダイマーとして存在し、前記ダイマーは一対のジスルフィド結合によって連結された2つのほぼ同一のモノマーから成る。フィブロネクチンには多数のアイソフォームが存在する。血漿フィブロネクチンは可溶性で血中及び他の体液中で循環し、前記は血液凝固、創傷治癒及び食作用を強化すると考えられる。他のアイソフォームは細胞表面に集合し、高度に不溶性のフィブロネクチン原線維として細胞外マトリックスに沈着される。線維芽細胞の表面又は表面近くで生成されるフィブロネクチン原線維は、近傍の細胞内アクチンストレス線維(分泌フィブロネクチン分子の原線維へのアッセンブリーを促進し、原線維の方向性に影響を与える)により通常整然と並べられる。フィブロネクチンは、細胞増殖、細胞遊走及び細胞分化に主要な役割を果たし、例えば創傷治癒及び胚の発生プロセスに重要である。
本明細書で用いられる“線維症”という用語は、ある部分の損傷又は炎症の結果としての、又はその血液供給の妨害の結果としての、器官又は組織における過剰な線維性結合組織の形成又は発達を指す。線維症は、瘢痕に至る正常な治癒応答の結果であるか、異常な反応プロセスであるか、又は原因が不明若しくは解釈不能であり得る。
【0076】
本明細書で用いられる“吸入”という用語は、医薬が添加された蒸気を呼吸により吸い込む行為を指す。
本明細書で用いられる“吹送”という用語は、身体の腔又は小室に加圧下で空気、気体又は粉末をデリバーする行為を指す。例えば鼻吹送は、加圧下で鼻から空気、気体又は粉末をデリバーする行為に関する。
本明細書で用いられる“吸入デリバリー装置”という用語は、例えば溶液、粉末などの状態の医薬の肺投与を達成するために、液体処方物又は乾燥粉末エーロゾル処方物から小滴又はエーロゾルを生成して経口投与に用いる機械/装置又は成分を指す。吸入デリバリー装置の例にはネブライザー、計量吸入装置及び乾燥粉末吸入装置(DPI)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本明細書で用いられる“ネブライザー”という用語は、肺に吸引される霧の形態として液体医薬を投与するために用いられる装置を指す。
【0077】
本明細書で用いられる“計量吸入装置”、“MDI”又は“パッファー”という用語は、特定量(“計量”)の医薬を患者の肺へデリバーするために発射薬を用いる、手で保持される加圧装置を指す。本明細書で用いられる“発射薬”という用語は、通常は気体の圧力によって集中、分岐ノズルから物質を発射するために用いられる成分を指す。圧力は圧縮気体又は化学反応によって生じる気体から得ることができる。使用済み成分は気体、液体、プラズマであるか、又は化学反応前は個体、液体又はゲルであり得る。加圧計量吸入装置で使用される発射薬は、液化ガス(伝統的にはクロロフルオロカーボン(CFC)であるがヒドロフルオロアルカン(HFA)が増えつつある)である。適切な発射薬には例えば以下が含まれる:クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばトリクロロフルオロメタン(発射薬11とも称される)、ジクロロフルオロメタン(発射薬12とも称される)、及び1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン(発射薬114とも称される)、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、例えば1,1,1,2-テトラフルオロエタン(発射薬134a、HFC-134a又はHFA-134aとも称される)及び1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(発射薬227、HFC-227又はHFA-227とも称される)、二酸化炭素、ジメチルエーテル、ブタン、プロパン、又は前記の混合物。他の実施態様では、発射薬には以下が含まれる:クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又は前記の混合物。他の実施態様では、ヒドロフルオロカーボンが発射薬として用いられる。他の実施態様では、HFC-227及び/又はHFC-134aが発射薬として用いられる。
【0078】
本明細書で用いられる“乾燥粉末吸入装置”又は“DPI”という用語は、計量吸入装置と類似するが医薬が粉末形である装置を指す。患者は完全に息を吐き出しマウスピースに唇を置き、続いて迅速に粉末を吸い込む。乾燥粉末吸入装置では、MDIで必要なタイミング及び一致協調は要求されない。
本明細書で用いられる“粒子”という用語は、その上に又はその中に本明細書に記載の組成物が含まれる極めて小さな成分(例えばナノ粒子、ミクロ粒子又はいくつかの事例では前記より大きい)を指す。
本明細書で用いられる“肺線維症”、“特発性肺線維症”及び“特発性線維形成性肺胞炎”という用語は、正常な肺組織構造を再造形してその機能を損なう異常な線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスタンパク質の沈着を特徴とする間質性肺疾患の主要な成分を指す。特発性肺線維症の認証的病巣は線維芽細胞病巣である。これらの部位の特色は間葉細胞の激しい複製及び新しい細胞外マトリックスの大量沈着である。
本明細書で互換的に用いられる“線維症斑”又は“線維症病巣”という用語は、高線維性組織によって形成された又は生じた組織内の特異的部位を指す。
本明細書で用いられる“融合タンパク質”という用語は、本来のタンパク質又はポリペプチドの各々に由来する機能的特性を有する1つのポリペプチド又はタンパク質を作製するために、複数のタンパク質ドメイン又はポリペプチドを結合させて構築したタンパク質又はポリペプチドを指す。融合タンパク質の作製は、各タンパク質ドメイン又はポリペプチドをコードする2つの異なるヌクレオチド配列を作動できるように結合又は連結し、それによって所望の融合タンパク質をコードする新規なポリヌクレオチド配列を作製することによって達成できる。また別には、融合タンパク質は所望のタンパク質ドメインを化学的に結合させることによって作製できる。
【0079】
本明細書で用いられる“特発性”という用語は、偶発的に又は不確実な若しくは不明の原因から生じることを意味する。
本明細書で用いられる“炎症”という用語は、脈管が形成されている組織が損傷に応答する生理学的プロセスを指す。例えば以下を参照されたい:FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY, 4th Ed., William E. Paul, ed. Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia (1999) at 1051-1053(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。炎症プロセスの間、解毒及び修復に関与した細胞は炎症媒介因子によって損傷部位に動員される。炎症はしばしば炎症部位における白血球、特に好中球(多形核細胞)の強い浸潤を特徴とする。これらの細胞は、血管壁又は非損傷組織で有害物質を放出することによって組織の損傷を促進する。慣習的に炎症は急性及び慢性応答に分類されている。
本明細書で用いられる“急性炎症”という用語は、急性損傷に対する迅速で短期間の(数分から数日)比較的均質な応答を指し、前記は液体、血漿タンパク質及び好中球系白血球の蓄積を特徴とする。急性炎症を引き起こす傷害性物質の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):病原体(例えば細菌、ウイルス、寄生虫)、外因性(例えばアスベスト)又は内因性(例えば尿酸結晶、免疫複合体)供給源に由来する外来物質、及び物理的(例えば熱傷)又は化学的(例えば腐食性薬剤)因子。
本明細書で用いられる“慢性炎症”という用語は、より長期間の、終結が不明確及び不定である炎症を指す。慢性炎症は、最初の炎症物質(例えば喫煙)の不完全な除去により又は同じ場所で生じた複数の急性事象の結果として急性炎症が持続するときに引き継がれる。慢性炎症(リンパ球及びマクロファージの流入並びに線維芽細胞の増殖を含む)は、長期化する又は繰り返される炎症性活性を示す部位で組織の瘢痕形成をもたらし得る。
【0080】
本明細書で用いられる“炎症媒介因子”という用語は、炎症及び免疫プロセスの分子性媒介物質を指す。これらの可溶性、拡散性分子は、組織損傷及び感染部位で局所的に及びより離れた部位の両方で作用する。いくつかの炎症性媒介因子は炎症プロセスによって活性化されるが、他の媒介因子は、急性炎症に応答して又は他の可溶性炎症媒介因子によって、細胞性供給源から合成及び/又は放出され、さらにまた他の媒介因子は抗炎症特性を示す。当該炎症応答の炎症媒介因子の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):血漿プロテアーゼ、補体、キニン、凝固及びフィブリン溶解性タンパク質、脂質媒介因子、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、ペプチド、ホルモン(例えばグルココルチコイドのようなステロイドホルモン)、及びアミン(ヒスタミン、セロトニン及び神経ペプチドを含むが、ただしこれらに限定されない)、並びに前炎症性サイトカイン(インターロイキン-1-ベータ(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターフェロン-ガンマ(IF-γ)インターロイキン-12(IL-12)及びインターロイキン-17(IL-17)を含むが、ただしこれらに限定されない)。
【0081】
前炎症媒介因子の中で、とりわけIL-1、IL-6及びTNF-αは、補体を活性化する急性期タンパク質を合成するために急性期応答で肝細胞を活性化することが知られている。補体は、病原体と相互作用し食細胞による破壊のためにそれらに目印を付ける血漿タンパク質の1つの系である。補体は病原体により直接又は病原体結合抗体によって間接的に活性化され、病原体の表面で生じる反応カスケードをもたらし、多様なエフェクター機能を有する活性成分を生成する。IL-1、IL-6及びTNF-αはまた骨髄内皮を活性化して好中球を動員し、さらに内因性発熱因子として機能して体温を上昇させる(これは感染体を身体から排除するために役立つ)。サイトカインの主要な作用は、視床下部で作用して体温調節を改変すること、筋肉及び脂肪細胞で作用して筋肉及び脂肪細胞の異化作用を刺激して体温を上昇させることである。体温上昇で、細菌及びウイルスの複製は低下するが、順応した免疫系はより効率的に作動する。
本明細書で用いられる“腫瘍壊死因子”という用語は、抗原又は感染に応答する白血球によって生成されるサイトカインを指す。腫瘍壊死因子は、腫瘍の壊死(死)を誘発し、広域の前炎症作用を有する。腫瘍壊死因子はまた、脂質代謝、凝固、インスリン耐性及び血管を裏打ちする内皮細胞の機能に対する作用を示す多機能性サイトカインである。
【0082】
本明細書で用いられる“インターロイキン(IL)”という用語は、相同関係にあるタンパク質で、白血球によって分泌され白血球に作用することがまず初めに観察されたタンパク質を指す。その後インターロイキンは広範囲の体細胞によって生成されることが判明した。インターロイキンは、細胞増殖、分化及び自動運動性を調節し、さらに免疫応答(例えば炎症)を刺激する。インターロイキンの例には、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(IL-12)及びインターロイキン-17(IL-17)が含まれる。
本明細書では“阻害する”又は“阻害”という用語は、プロセスの量又は速度の低下、プロセスの完全な停止、又はその作用若しくは機能の低下、制限若しくは遮断を指すために用いられる。阻害は、プロセス又は物質の量、速度、作用、機能の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の低下若しくは減少を含むことができる。
【0083】
本明細書で用いられる“阻害物質”という用語は、第一の分子と結合しそれによって第一の分子の活性を低下させる第二の分子を指す。酵素阻害物質は、酵素と結合しそれによって酵素活性を低下させる分子である。阻害物質の結合は、基質が酵素の活性部位に進入するのを停止させるか、及び/又は酵素がその反応を触媒するのを妨げることができる。阻害物質の結合は可逆的又は不可逆的である。不可逆的阻害物質は通常酵素と反応して、例えば酵素活性に必要な主要アミノ酸残基を改変することによって酵素を化学的に変化させる。対照的に、可逆性阻害物質は非共有結合により結合して、これらの阻害物質が酵素、酵素-基質複合体、又はその両方と結合するか否かに応じて異なるタイプの阻害を生じる。酵素阻害物質はしばしばそれらの特異性及び能力によって評価される。
本明細書で用いられる“損傷”という用語は、外的因子又は力(物理的又は化学的であり得る)によって引き起こされる身体の構造又は機能に対する傷害又は損害を指す。
【0084】
本明細書で用いられる“単離された”という用語は、物質、例えば核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質(ただし前記に限定されない)であって、(1)当該物質の天然に存在する環境で見出される、当該物質に通常付随するか又は当該物質と相互作用する成分が当該物質から実質的に又は本質的に取り除かれてある、前記物質を指す。“実質的に取り除かれてある”又は“本質的に取り除かれてある”という用語は、そのような成分が相当に若しくは顕著に、又は約95%以上、又は約99%以上取り除かれてあることを指すために本明細書では用いられる。当該単離された物質は、当該物質の天然の環境で当該物質と一緒には見出されることがない物質を場合によって含み、(2)当該物質がその天然の環境にある場合は、当該物質は組成物に対する人間の意図的な介入によって合成的態様で(天然ではない態様で)改変されてあるか、及び/又は当該環境で見出されるある物質にとって本来でない細胞のある場所(例えばゲノム又は細胞内小器官)に配置されてある。当該合成的改変物質を得るための改変は、当該物質の天然の状態内の当該物質において実施されるか、又は当該物質の天然の状態から取り出した当該物質において実施され得る。例えば、天然に存在する核酸は、前記核酸が改変されているならば、又は前記核酸が由来した細胞内で実施される人間の介入手段によって改変されたDNAから転写されるならば、単離された核酸になる。例えば以下を参照されたい:Eukaryotic Cells, Kmiec, U.S. Pat. No. 5,565,350;In Vivo Homologous Sequence Targeting in Eukaryotic Cells(Zarling et al.)PCT/US93/03868(前記文献は各々参照によりその全体が本明細書に含まれる)。同様に、天然に存在する核酸(例えばプロモーター)が、天然には存在しない手段によって、当該核酸にとって本来のものではないゲノムの遺伝子座に導入されるならば、前記核酸は単離されてあることになる。本明細書に規定する“単離された”核酸はまた“異種”核酸と称される。
【0085】
本明細書で用いられる“キナーゼ”という用語は、リン酸基を高エネルギードナー分子から特異的な標的分子へ又は基質へ移転する酵素の1つのタイプを指す。高エネルギードナー群にはATPが含まれるが、ただし前記に限定されない。
本明細書で用いられる“白血球(leucocyte;white Blood cell(WBC))” という用語は免疫細胞の1つのタイプを指す。ほとんどの白血球は骨髄で作られ、血液及びリンパ組織で見出される。白血球は体が感染及び他の疾患と戦うのを助ける。顆粒球、単球及びリンパ球は白血球である。
本明細書で用いられる“リンパ球”という用語は、疾患に対する身体の防御において大きな役割を果たす小さな白血球を指す。2つの主要なタイプの白血球(B細胞及びT細胞)が存在する。B細胞は細菌及び毒素を攻撃する抗体を作るが、一方、T細胞自体はウイルスに接収されたとき又は癌性になったとき、身体の細胞を攻撃する。リンパ球は、多くの他のタイプの細胞の機能的活性を調節し、さらにしばしば慢性炎症部位に存在する生成物(リンホカイン)を産生する。
本明細書で用いられる“マクロファージ”という用語は、微生物を取り巻いてこれを死滅させ、死細胞を除去し、さらに他の免疫系細胞の作用を刺激する白血球の1つのタイプを指す。病原体を消化した後、マクロファージは、当該病原体の抗原(分子、もっとも頻繁には病原体の表面で見出されるタンパク質で、識別のために免疫系によって利用される)を対応するヘルパーT細胞に提示する。前記提示は、細胞膜に前記抗原を組み込み、MHCクラスII分子に結合させたものを展示して、当該マクロファージの表面に抗原を有しているにもかかわらず当該マクロファージは病原体ではないことを他の白血球に示すことによって実施される。最終的に、当該抗原提示は病原体の抗原に結合する抗体の生成をもたらし、マクロファージの細胞膜及び食作用によりマクロファージが病原体に粘着するのを容易にする。
【0086】
本明細書で用いられる“間葉細胞”又は“間葉”という用語は、3つの胚葉の全てから誘導される細胞を指し、これらは結合組織、骨、軟骨、リンパ系及び循環系に発達することができる。
本明細書で用いられる“MK2キナーゼ”又は“MK2”という用語は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(“MAPKAPK2”、“MAPKAP-K2”、“MK2”とも称される)を指し、前記はセリン/スレオニン(Ser/Thr)タンパク質キナーゼファミリーのメンバーである。
本明細書で用いられる“空気力学的質量中央径”又は“MMAD”という用語は、空気力学的直径に関する風媒粒子の質量分布の中央値を指す。MMADは、通常幾何学的標準偏差(g又はシグマg)が添付され、前記は粒子サイズ分布の多様性を特徴とする。
本明細書で用いられる“調節する”という用語は、一定の測定値又は比率に対する調整、改変、順応、適合を指す。
本明細書で用いられる“単球”という用語は、骨髄で形成され血液を介して身体の組織(そこで前記はマクロファージになる)へ遊走する免疫細胞の1つのタイプを指す。単球は白血球の1つのタイプであり食細胞の1つのタイプである。
本明細書で用いられる“好中球”又は“多形核好中球(PMS)”という用語は、哺乳動物のもっとも豊富なタイプの白血球を指し、前記は生来の免疫系の本質的部分を構成する。それらは、好塩基球及び好酸球と一緒に多形核細胞ファミリー(PMN)の部分を構成する。好中球は通常血流中で見出される。炎症(特に細菌感染及びいくつかの癌の結果としての炎症)の開始期(急性期)の間、好中球は炎症部位へ遊走する炎症細胞の最初の応答細胞の1つである。それらは、走化性(自動性細胞の誘導性移動)と呼ばれるプロセスで化学物質シグナル(例えばインターロイキン-8(IL-8)及びC5a)にしたがって、又は部分的には化学物質の濃度勾配にしたがって好ましいとみなされる環球条件に向かい及び/又は忌避物質とみなされる周囲環境から遠ざかりながら血管を通過し続いて間質組織を遊走する。
【0087】
本明細書で用いられる“正常で健康なコントロール対象”という用語は、気道又は肺組織の疾患に関する症状又は他の臨床的証拠をもたない対象を指す。
本明細書で用いられる“核酸”という用語は、一本鎖若しくは二本鎖形のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを指し、特段に限定されなければ、天然に存在するヌクレオチドと同様な態様で一本鎖核酸とハイブリダイズするという天然のヌクレオチドの本質的な性質を有する公知のアナローグ(例えばペプチド核酸)も包含する。
本明細書で用いられる“ヌクレオチド”という用語は、複素環塩基、糖及び1つ以上のリン酸基から成る。もっとも一般的なヌクレオチドでは、塩基はプリン又はピリミジンの誘導体であり、糖はペントースデオキシリボース又はリボースである。ヌクレオチドは核酸のモノマーであり、3つ以上が一緒に結合して核酸を形成する。ヌクレオチドは、RNA、DNA及びいくつかの補助因子(CoA、FAD、DMN、NAD及びNADPを含むが、ただしこれらに限定されない)の構造的単位である。プリンはアデニン(A)及びグアニン(G)を含み、ピリミジンはシトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)を含む。
以下の用語は、2つ以上の核酸又はポリヌクレオチド間の配列の関係を記述するために本明細書で用いられる:(a)“参照配列”、(b)“比較ウィンドウ”、(c)“配列同一性”、(d)“配列同一性のパーセンテージ”、及び(e)“実質的同一性”。
(a)“参照配列”という用語は配列比較の基準として用いられる配列を指す。参照配列は特定した配列のサブセット又は全体であり得る(例えば完全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列として)。
【0088】
(b)“比較ウィンドウ”という用語はポリヌクレオチド配列の連続した特定のセグメントを指し、ここで当該ポリヌクレオチド配列は参照配列と比較され、比較ウィンドウ内の当該ポリヌクレオチド配列の部分は、この2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわちギャップ)を含むことができる。一般的には、比較ウィンドウは長さが連続する少なくとも20ヌクレオチドであり、場合によって長さが連続する少なくとも30ヌクレオチド、長さが連続する少なくとも40ヌクレオチド、長さが連続する少なくとも50ヌクレオチド、長さが連続する少なくとも100ヌクレオチドであるか又はそれより長い。ポリヌクレオチド配列にギャップを含ませることによる参照配列に対する高度な類似性を回避するために、典型的にはギャップペナルティーを導入してマッチ数から差し引くことは当業者には理解されよう。
比較のための配列アラインメントの方法は当業界では周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、局所相同アルゴリズム(Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981)によって、相同アラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970)によって、類似性のための検索方法(Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444, 1988)によって、これらアルゴリズムのコンピュータ化手段によって実施できる。後者には以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:PC/遺伝子プログラムのCLUSTAL(Intelligenetics, Mountain View, Calif.);Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTA(Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, Wis., USA)。CLUSTALプログラムは以下の文献に詳しく記載されている:Higgins and Sharp, Gene 73:237-244 (1988);Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153 (1989);Corpet, et al., Nucleic Acids Research 16:10881-90 (1988);Huang, et al., Computer Applications in the Biosciences, 8:155-65 (1992)、及びPearson, et al., Methods in Molecular Biology, 24:307-331, 1994。プログラムのBLASTファミリー(前記はデータベースの類似性検索に用いることができる)には以下が含まれる:ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクェリー配列のためのBLASTN;タンパク質データベース配列に対するヌクレオチドクェリー配列のためのBLASTX;タンパク質データベース配列に対するタンパク質クェリー配列のためのBLASTP;ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質クェリー配列のためのTBLASTN;及びヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクェリー配列のためのTBLASTX。以下を参照されたい:Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 19, Ausubel, et al., Eds., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1995。
【0089】
特段の記載がなければ、本明細書で提供する配列同一性/類似性の値は、規定値パラメータを利用するBLAST2.0一式を用いて得られた値を指す(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997)。BLAST分析を実施するソフトウェアは、例えばNational Center for Biotechnology-Informationから公開されている。このアルゴリズムは、クェリー配列内で長さWの短いワードを認定することによって高スコア配列ペア(HSP)をまず初めに認定する工程を含む。前記は、データベース内の同じ長さのワードを用いてアラインメントを実施したとき、いくつかの正の値の閾値スコアTとマッチするか又は満足させる。Tは、近傍ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.上掲書)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するために検索を開始するためのシードとして機能する。このワードヒットをさらに、累積的アラインメントスコアが増加するかぎり、各配列に沿って両方向に伸ばしていく。累積スコアは、ヌクレオチド配列についてはパラメータM(マッチ残基ペアの褒章スコア;常に>0)及びN(ミスマッチ残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸残基については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの伸長は以下の時点で停止される:累積スコアが、負のスコアを与える1つ以上の残基アラインメントのために0以下になったとき;又はいずれかの配列の末端に達したとき。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXはアラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、規定値として11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、規定値として3のワード長(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(以下を参照されたい:Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)。
【0090】
パーセント配列同一性の計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた2つの配列間の類似性の統計分析を実施する(以下を参照されたい:Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787, 1993)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定値は、最小合計確率(P(N))である。前記は2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列が偶然によって生じる確率の指標を提供する。BLAST検索は、タンパク質はランダム配列として形成できると仮定する。しかしながら、多くの現実のタンパク質は非ランダム配列を含み、前記はホモポリマー域、短区間リピート、又は1つ以上のアミノ酸に富む領域であり得る。そのような低コンプレキシティー領域は、当該タンパク質の他の領域が完全に非類似性であったとしても、無関係のタンパク質間でアラインメントされ得る。多数の低コンプレキシティーフィルタープログラムを用いてそのような低コンプレキシティーアラインメントを減少させることができる。例えば、SEG(Wooten and Federhen, Comput. Chem., 17:149-163, 1993)及びXNU(Claverie and States, Comput. Chem., 17:191-201, 1993)低コンプレキシティーフィルターを単独で又は組み合わせて利用してもよい。
【0091】
(c)2つの核酸又はポリペプチド配列の関係で“配列同一性”又は“同一性”という用語は、特定の比較ウィンドウの全体にわたって最大一致のアラインメントを実施したときに同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性のパーセンテージがタンパク質に対して用いられるとき、同一ではない残基位置が保存的アミノ酸置換によってしばしば相違することに気付く(すなわち、アミノ酸残基が類似する化学的特性(例えば荷電又は疎水性)を有するアミノ酸のために代用され、したがって当該分子の機能的特性に変化を与えない場合)。配列が保存的置換で相違する場合、パーセント配列同一性を上方修正して、保存的性質の置換のために調整することができる。そのような保存的置換により相違する配列は、“配列類似性”又は“類似性”を有すると称される。この調整を実施する手段は当業者には周知である。典型的には、前記は、保存的置換を完全ミスマッチではなく部分的ミスマッチとして評価し、それによってパーセント配列同一性を高める工程を含む。したがって、例えば同一スコアが1のスコアを与えられ、非保存的置換が0のスコアを与えられるとき、保存的置換は0から1の間のスコアが与えられる。保存的置換の評価は、例えばMeyersとMiller(Computer Applic. Biol. Sci., 4:11-17, 1988)のアルゴリズムにしたがって計算される。前記アルゴリズムは、例えばPC/GENEプログラム(Intelligenetics, Mountain View, Calif., USA)で提供される。
(d)“配列同一性のパーセンテージ”という用語は、最適にアラインメントされた2つの配列を、比較ウィンドウをくまなく比較することによって決定した値を意味し、ここで比較ウィンドウ内の当該ポリヌクレオチド配列の部分は、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、当該2つの配列の最適なアラインメントのために付加又は欠失(すなわちギャップ)を含むことができる。パーセンテージは、マッチする位置の数を得るために同一核酸塩基又はアミノ酸残基が両配列に存在する位置の数を決定し、当該マッチ数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、前記結果を100倍して配列同一性のパーセンテージを得る。
【0092】
(e)ポリヌクレオチド配列の“実質的同一性”という用語は、ポリヌクレオチドが、前記記載のアラインメントプログラムの1つを用い標準的なパラメータにより参照配列と比較して、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、及び少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。これらの値を適切に調整して、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を、コドンの縮重、アミノ酸類似性、読み枠の位置などを考慮に入れながら決定することができる。これらの目的のためのアミノ酸配列の実質的同一性は、少なくとも60%、又は少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を意味する。ヌクレオチド配列が実質的に同一であることのもう1つの指標は、ストリンジェントな条件下で2つの分子が互いにハイブリダイズするか否かということである。しかしながら、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸も、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならばやはり実質的に同一である。このようなことは、例えば核酸のコピーが遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮重を用いて作製されるときに生じ得る。2つの核酸配列が実質的に同一であることの1つの指標は、第一の核酸がコードするポリペプチドが、第二の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応することである。
本明細書で用いられる“作動できるように連結される”という語句は、2つ以上のタンパク質ドメイン又はポリペプチドが、生じた融合タンパク質のタンパク質ドメイン又はポリペプチドの各々がその本来の機能を保持できるように、組換えDNA技術又は化学反応により連結又は合体される結合を指す。例えば、配列番号:1は、細胞貫通ペプチド(配列番号:11)を治療ドメイン(配列番号:2)と作動できるように連結し、それによって配列番号:11の細胞貫通機能及び配列番号:2のキナーゼ阻害因子機能の両方を保有する融合ペプチドを作製することによって構築される。
【0093】
本明細書で用いられる“実質”という用語は、結合組織又は血管と対比して、器官の本質的部分を構成する動物の組織を指す。“実質の”という用語は器官の実質と関係があることを意味する。
本明細書で用いられる“非経口的”という用語は、注射の方法によって身体に導入すること(すなわち注射による投与)を指す。注射には、例えば皮下(すなわち皮下注射)、筋肉内(すなわち筋肉注射)、静脈内(すなわち静脈内注射)、硬膜下腔内(すなわち脊髄周囲間隙内又は脳のクモ膜下への注射)、胸骨内注射又は輸液技術が含まれ、さらに腹腔内注射又は体腔(例えば腹腔)への輸液が含まれる。非経口的に投与される組成物は、針(例えば外科針)又は他の身体アクセス用装置を用いてデリバーされる。本明細書で用いられる“外科針”という用語は、液体(すなわち流動できる)組成物を選択した解剖学的構造にデリバーするために適合させた任意のアクセス用装置を指す。注射可能な調製物(例えば無菌的注射用水性又は油性懸濁物)は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知の技術にしたがって処方することができる。
本明細書で用いられる“微粒子”という用語は、気体又は液体中に懸濁された固体又は流動物質の微粒子を指す。
本明細書で用いられるように“医薬的に許容できる担体”という用語は、本発明の単離ポリペプチドが安定で生物利用性のまま存続する医薬の投与に通常的に使用できる、実質的に無毒な任意の担体を指す。前記医薬的に許容できる担体は、治療される哺乳動物への投与に適切であるように十分に純度が高く、十分に毒性が低くなければならない。前記はさらに、活性物質の安定性及び生物利用性を維持しなければならない。前記医薬的に許容できる担体は液体でも固体でもよく、さらに予定の投与態様を念頭に置いて、活性物質及び与えられた組成物の他の成分と一緒にしたとき所望の体積、濃度などを提供するように選択される。
【0094】
“医薬的に許容できる塩”という用語は、適切な医学的判定の範囲内で、ヒト及びより下等な動物の組織と接触する使用に適切であり、不都合な毒性、刺激性、アレルギー性応答などがなく、合理的な利益/リスク比に関して釣合いがとれている塩を意味する。
“ポリペプチド”、“ペプチド”及び“タンパク質”という用語は、本明細書では互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。前記用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーだけでなく、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的アナローグであるアミノ酸ポリマーにも適用される。天然に存在するアミノ酸のそのようなアナローグの本質的な性質は、タンパク質に取り込まれたとき、当該タンパク質は、同じタンパク質であるが完全に天然に存在するアミノ酸から成るタンパク質に対して誘引された抗体に対して特異的に反応するということである。
“ポリペプチド”及び“タンパク質”という用語はまたそれらのもっとも広い意味で本明細書では用いられ、サブユニットアミノ酸、アミノ酸アナローグ又はペプチド模倣体の配列を指す。サブユニットは、特記された場合を除きペプチド結合によって連結される。本明細書に記載したポリペプチドは化学的に合成されるか、又は組換えにより発現され得る。本発明に記載のポリペプチドはまた化学的に合成できる。合成ポリペプチド(周知の固相、液相技術又はペプチド濃縮技術、又は前記の任意の組合せを用いて調製される)は、天然又は非天然アミノ酸を含むことができる。ペプチド合成に用いられるアミノ酸は、標準的なBoc(N-α-保護N-α-t-ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂(Merrifield(1963, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154)が初めて実施した固相方法の標準的脱保護、中和、カップリング及び洗浄プロトコルを用いる)、又は塩基不安定性N-α-アミノ保護9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸(最初CarpinoとHan(1972, J. Org. Chem. 37:3403-3409)が記載した)であり得る。Fmoc及びBoc N-α-アミノ保護アミノ酸は両方ともシグマ(Sigma, Cambridge Research Biochemical)又は当業者に馴染みのある他の化学品会社から入手できる。さらにまた、ポリペプチドは、他のN-α-保護基(当業者には周知である)を用いて合成できる。固相ペプチド合成は当業者に周知の技術によって達成でき、さらに例えば以下の文献に提供されてあり(Stewart and Young, 1984, Solid Phase Synthesis, Second Edition, Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.;Fields and Noble, 1990, Int. J. Pept. Protein Res. 35:161-214)、又は自動合成装置を用いることができる。本発明のポリペプチドは、特殊な特性を伝えるために、D-アミノ酸(L-アミノ酸特異的プロテアーゼにin vivoで耐性である)、D-及びL-アミノ酸の組合せ、及び多様な“デザイナー”アミノ酸(例えばβ-メチルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、及びN-α-メチルアミノ酸など)を含むことができる。合成アミノ酸には、リジンのためのオルニチン、及びロイシン又はイソロイシンのためのノルロイシンが含まれる。さらにまた、ポリペプチドは、新規な特性を有するペプチドの調製のためにペプチド模倣結合(例えばエステル結合)を有することができる。例えば、還元ペプチド結合を取り込んだペプチドを作製することができる。すなわちR1-CH
2-NH-R2であり、式中R1及びR2はアミノ酸残基又は配列である。還元ペプチド結合はジペプチドサブユニットとして導入できる。そのようなポリペプチドはプロテアーゼ活性に耐性であり、in vivoで延長半減期を有する。したがって、これらの用語はまた、天然に存在するポリマーだけでなく、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的アナローグであるアミノ酸ポリマーにも適用される。天然に存在するアミノ酸のそのようなアナローグの本質的な性質は、タンパク質に取り込まれたとき、当該タンパク質は、同じタンパク質であるが完全に天然に存在するアミノ酸から成るタンパク質に対して誘引された抗体に対して特異的に反応するということである。
【0095】
“ポリペプチド”、“ペプチド”及び“タンパク質”という用語はまた改変にも含められる。前記改変は以下を含む(ただしこれらに限定されない):グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADP-リボシル化。周知であり上記にも特記されているように、ポリペプチドは完全に線状でなくてもよいことは理解されよう。例えば、ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝し、さらにそれらは、一般的に翻訳後事象の結果として環状(分枝又は非分枝)であり得る(翻訳後事象には天然のプロセッシング事象及び人間の操作による事象(天然には存在しない)が含まれる)。同様に、環状、分枝、及び分枝環状ポリペプチドも、非翻訳天然プロセスによって及び完全に合成的方法によって合成することができる。いくつかの実施態様では、ペプチドは任意の長さ又はサイズである。
本明細書で用いられる“前酵素”又は“ザイモゲン”という用語は、不活性な酵素前駆体を指す。ザイモゲンは、それが活性酵素となるために生化学的変化(例えば活性部位を暴露する加水分解反応又は活性部位曝露のための立体構造の変更)を要求する。前記生化学的変化は通常リソゾームで生じ、ここで前駆体酵素の特異的部分が切断されて前駆体を活性化する。活性化に際して遊離されるアミノ酸鎖は活性化ペプチドと称される。
本明細書で用いられる“増殖”という用語は、単一の細胞が同一の娘細胞に持続的に分裂することによる細胞集団の拡大を指す。
【0096】
本明細書で用いられる“肺間隙”という用語は、肺の気嚢周囲の組織及び間隙を指す。
本明細書で用いられる“肺胞”という用語は、中空腔の形態を有する解剖学的構造を指す。肺胞は、肺の呼吸帯で肺胞管及び肺胞房の遠位端に位置し、呼吸管の終末端を形成する。肺胞は血液とのガス交換を行う呼吸部位の球状露頭部であり、哺乳動物の肺でのみ見出される。肺胞膜はガス交換表面である。血液は、肺胞に放出するために身体の残りの部分から二酸化炭素をもちこみ、肺胞内酸素は肺胞血管中の血液によって取り込まれ身体の全細胞に輸送される。肺胞はいくらかのコラーゲン及び弾性線維を含む。弾性線維は、肺胞が吸気時に空気で満たされるときに拡張するのを可能にする。続いて肺胞は呼気時に急激に復元し、二酸化炭素に富む空気を排出する。肺胞壁には3つの主要な肺胞細胞タイプが存在する:(1)肺胞壁の構造を形成する肺胞扁平上皮細胞、(2)水の表面張力を低下させて膜を分離させ、それによってガス交換能力を高めるために肺界面活性剤を分泌する肺胞巨細胞、(3)外来病原体(例えば細菌)を破壊するマクロファージ。
“類似の(similar)”という用語は、類似する(analogous)、匹敵する(comparable)、又は似る(resembling)という用語と互換的に用いられ、共通の特質又は特徴を有することを意味する。
【0097】
本明細書で用いられる“溶液”という用語は2つ以上の物質の均質な混合物を指す。前記はしばしば液体である(ただし必ずというわけではない)。溶液では、当該溶質分子(又は溶解された物質)は当該溶媒分子間に均一に分布する。
“可溶性の”又は“溶解性”という用語は、特定の液体(溶媒)に溶解されやすい特性を指す。“不溶性”という用語は、特定の溶媒には最小の又は限定的な可溶性を有する物質の特性を指す。溶液では、当該溶質分子(又は溶解された物質)は溶媒分子間に均一に分布する。
本明細書で用いられる“ストレス線維”という用語は細胞内の高次構造物を指し、前記は、アクチンフィラメント、架橋タンパク質(2つ以上のフィラメントを一緒に結合させるタンパク質)、及びミオシンIIモーターから成る。アクチンは球状タンパク質(約43kDa)であり、前記は重合して秩序だったフィラメント構造(互いに周囲を包みあう2つのプロトフィラメントを有する)を形成し、単体 “アクチンフィラメント”(“ミクロフィラメント”とも称される)を形成する。ストレス線維中のミオシンモーターは、アクチンフィラメントを互いに滑らせて移動し、したがって線維は収縮できる。収縮が力を発生するには、線維は何かに固着されなければならない。ストレス線維は細胞膜に固着することができ、さらにこの固着が発生する部位はまたしばしば細胞外構造物(細胞外マトリックス又は他のいくつかの基質)に結合される。これらの結合部位は巣状粘着と称される。多くのタンパク質が適切な巣状粘着の発生及び維持に要求される。これらの固定された外部基質に対する収縮は、ミオシンモーター並びにフィラメント増殖及び再編成によって発生した力が細胞の遊走及び再形成を可能にするものである。
【0098】
本明細書で用いられる“懸濁物”という用語は、微細に分割された物質種が別の物質種と一緒にされた分散物(混合物)を指し、ここで前者は、迅速に沈殿しないように微細に分割され混合される。日常的にもっとも一般的な分散物は液体中の固体分散物である。
“対象”又は“個体”又は“患者”という用語は互換的に用いられ、哺乳動物起源の動物種のメンバー(マウス、ラット、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ハムスター、イタチ、カモノハシ、ブタ、イヌ、モルモット、ウサギ及び霊長類(例えばサル、ヒヒ又はヒト)を含むが、ただしこれらに限定されない)を指す。
本明細書で用いられる“そのような治療を必要とする対象”という語句は、疾患、異常、症状又は病理学的プロセスに冒されている患者を指す。いくつかの実施態様では、“そのような治療を必要とする対象”という用語はまた、文脈及びこの語句の使用が特段に指定していない限り、(i)本発明の少なくとも1つのポリペプチドを将来投与される患者、(ii)本発明の少なくとも1つのポリペプチドを投与されている患者、又は(iii)本発明の少なくとも1つのポリペプチドを既に投与されている患者を指す。
“置換”という用語は、1つの塩基又は複数の塩基がDNA配列中の別の1つの塩基又は複数の塩基のために交換される状況を指すために用いられる。置換は同義的置換又は非同義的置換であり得る。本明細書で用いられるように、“同義的置換”は、生成されるアミノ酸配列が改変されない、タンパク質をコードする遺伝子のエクソンにおける1つの塩基の別の塩基による置換を指す。本明細書で用いられる“非同義的置換”という用語は、生成されるアミノ酸配列が改変される、タンパク質をコードする遺伝子のエクソンにおける1つの塩基の別の塩基による置換を指す。
【0099】
活性物質の“治療量”、“有効量”又は“医薬的に有効な量”という用語は互換的に用いられ、意図する治療の利点を提供するために十分な量を指す。例えば、本発明のキナーゼ阻害組成物の“治療量”には、(1)少なくとも1つの線維症病巣を除去するか又はそのサイズを低下させるため;又は(2)肺線維症患者の肺間質における細胞外マトリックス(コラーゲン及びフィブロネクチンを含む)の沈着速度を低下させるために十分な量が含まれる(ただし前記に限定されない)。前記用語はまた、肺線維症患者の少なくとも1つの症状を抑制するか又は軽減するための十分な量を包含し、ここで前記症状には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):酸素飽和、呼吸困難(呼吸が困難になること)、痰が排出されない咳(おそらく刺激及び炎症の可能性がある肺から突然音高く空気が排出され、呼吸管からの痰の除去がないことを意味する)、撥指形成(指が球根状外観を呈し外観が損なわれること)、及びパチパチという音(吸気時に肺で生じるパチパチという音で、時にラ音又は捻髪音と称される)。
本発明にしたがって用いることができる活性物質の有効量は、一般的に約0.001mg/kg体重から約10g/kg体重の範囲である。しかしながら投薬レベルは、以下を含む多様な因子を基準にする:損傷のタイプ、年齢、体重、性別、患者の医学的状態、症状の重篤度、投与経路及び頻度、及び用いられる個々の活性物質。したがって投薬レジメンは広範囲に変動し得るが、臨床医は標準的な方法を用いて日常的にこれを決定することができる。
【0100】
“治療”又は“治療する”という用語には、疾患、症状又は異常の停止、実質的抑制、その速度の低下又は逆転、症状の臨床的又は感覚的徴候の緩和、疾患、症状又は異常の臨床的又は感覚的徴候の出現の実質的予防、及び有害又は不愉快な徴候の防御が含まれる。治療はさらに以下の1つ以上の達成を指す:(a)当該異常の重篤度の軽減、(b)治療される異常に特徴的な症状の進行の制限、(c)治療される異常に特徴的な症状の悪化の制限、(d)以前に当該異常を示した患者での当該異常の再発の制限、及び(e)以前に当該異常に対して無症状であった患者での症状の再発の制限。
“変種”、“変異体”及び“誘導体”という用語は、本明細書では参照ヌクレオチド又はポリペプチド配列に対して実質的な同一性を有するヌクレオチド又はポリペプチド配列を指すために用いられる。当該配列における相違は、配列又は構造における天然の又は意図的な変更の結果であり得る。天然の変更は、自然界における個々の核酸配列の通常の複製又は複写過程で生じ得る。意図的な変更は特別に設計され、特定の目的のために当該配列に導入できる。そのような特別な変更は、多様な変異導入技術を用いてin vitroで実施できる。特別に作製されたそのような配列変種は本来の配列の“変異体”又は“誘導体”と称することができる。
【0101】
当業者は、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のポリペプチド変種を生成することができる。前記はただ1つの又は複数のアミノ酸置換、欠失、付加又は置き換えを有するが、配列番号:1と機能的に等価である。これらの変種にはとりわけ以下が含まれる:(a)1つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸で置換される変種;(b)1つ以上のアミノ酸が付加される変種;(c)少なくとも1つのアミノ酸が置換基を含むアミノ酸;(d)ある種のアミノ酸残基が別の種の対応する残基のために保存的又は非保存的な位置で置換される変種;及び(d)標的タンパク質が別のペプチド又はポリペプチド(例えば融合パートナー、タンパク質タグ、又は他の化学的成分)と融合される変種(前記別のペプチド又はポリペプチドは標的タンパク質に有用な特性(例えば抗体のためのエピトープ)を付与できる)。そのような変種を得る技術(遺伝的技術(サプレッション、欠失、変異など)、化学的技術及び酵素的技術が含まれるが、ただしこれらに限定されない)は当業者には公知である。本明細書で用いられるように、“変異”という用語は、親のタイプには見出されない新規な特徴又は特質の創出をもたらす、ある生物の遺伝子又は染色体内のDNA配列の変化、又はそのような変化が、遺伝子をコードするDNAのヌクレオチド配列の変異を介して若しくは染色体の物理的編成における変化を介して染色体内に生じるプロセスを指す。変異の3つのメカニズムは、置換(1つの塩基対の別の塩基対のための交換)、付加(配列への1つ以上の塩基の挿入)、及び欠失(1つ以上の塩基対の消失)を含む。
本明細書で用いられる“ベヒクル”という用語は、医薬の使用を容易にする物質又は医薬と混合される他の物質を指す。
本明細書で用いられる“創傷治癒”又は“創傷修復”という用語は、一般的には外傷後に組織を修復する身体の自然なプロセスを指す。個体が傷ついたとき、傷害を修復するために、止血、炎症、増殖及び再造形を含む、一組の複雑な生化学的事象が発生する。
【0102】
I.組成物:異常な線維芽細胞の増殖及びコラーゲン沈着を特徴とする疾患を予防又は治療するための治療ペプチド
ある特徴にしたがえば、本発明は、対象の組織における異常な線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を特徴とする疾患、症状又はプロセスの治療で使用される医薬組成物を提供し、
ここで、前記医薬組成物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のポリペプチド又はその機能的等価物の治療量及び医薬的に許容できるその担体を含み、
ここで、前記治療量は、対象の組織における線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を低下させるために有効である。
ある実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は放射線誘発線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は移植片拒絶である。
別の実施態様にしたがえば、当該組織は肺組織である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は間質性肺疾患である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は肺線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は特発性肺線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症はブレオマイシンの投与により生じる。
【0103】
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、アレルギー反応、環境性粒子の吸引、喫煙、細菌感染、ウイルス感染、対象の肺の機械的損傷、肺移植片拒絶、自己免疫疾患、遺伝性疾患、又はそれらの組合せから生じる。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状はさらに組織の炎症を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該炎症は急性又は慢性炎症である。
別の実施態様にしたがえば、当該炎症は、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、及びインターロイキン-1β(IL-1β)から成る群から選択される少なくとも1つのサイトカインによって媒介される。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、当該肺における筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の活性と比較して、当該組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な活性を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織における活性化マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の量又は分布と比較して、当該組織における活性化(リン酸化)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な量又は分布によって立証される。
【0104】
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、本明細書の表1に列挙するグループから選択されるキナーゼのキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、この阻害は、例えば対象の組織における線維芽細胞増殖、細胞外マトリックス沈着、又はそれらの組合せを低下させるために有効である。
別の実施態様にしたがえば、この阻害は、例えば、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を低下させるために有効である。
別の実施態様にしたがえば、MMI阻害物質のin vivoにおける阻害プロフィールは、投薬量、投与ルート、及び当該阻害物質に応答する細胞タイプに左右される。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0105】
いくつかの実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2キナーゼ)のキナーゼ活性を阻害する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3キナーゼ)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0106】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0107】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びカルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
【0108】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
【0109】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びカルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、MK2、MK3、CaMKI、TrkBの群から選択される少なくとも1つのキナーゼのキナーゼ活性を、本明細書の表1に挙げた残りの群から選択される1つ以上の他のキナーゼの活性を実質的に阻害することなく阻害する。
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI阻害物質のin vivoにおける阻害プロフィールは、投薬量、投与経路、及び当該阻害物質に応答する細胞タイプに左右される。
【0110】
そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の50%未満を阻害する。そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の65%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の50%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の40%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の20%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の15%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の10%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の5%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性を上昇させる。
直前のパラグラフの実施態様にしたがえば、実質的に阻害されない1つ以上の選択されるその他のキナーゼは、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼII(CaMKII、そのサブユニットCaMKIIδを含む)、プロトオンコジーンセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(PIM-1)、細胞性肉腫(c-SRC)、脾臓チロシンキナーゼ、(SYK)、C-srcチロシンキナーゼ、及びインスリン様増殖因子1レセプター(IGF-1R)の群から選択される。
いくつかの実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに少なくとも1つの追加される治療薬剤を含む。
【0111】
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤は以下から成る群から選択される:精製ウシV型コラーゲン(例えばIW-001;ImmuneWorks;United Therapeutics)、IL-13レセプターアンタゴニスト(例えばQAX576;Novartis)、タンパク質チロシンキナーゼ(例えばイマチニブ(Gleevec(商標));Craig Daniels/Novartis)、内皮レセプターアンタゴニスト(例えばACT-064992(マシテンタン);Actelion)、二重エンドセリンレセプターアンタゴニスト(例えばボセンタン(Tracleer(商標));Actelion)、プロスタサイクリンアナローグ(吸入イロプロスト(例えばVentavis(商標));Actelion)、抗CTGFモノクローナル抗体(例えばFG-3019)、エンドセリンレセプターアンタゴニスト(A-選択性)(例えばアンブリセンタン(Letairis(商標))、Gilead)、AB0024(アレスト(Arresto))、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)モノクローナル抗体(例えばGS-6624(以前にはAB0024);Gilead)、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)阻害剤(例えばCC-930;Celgene)、パーフェニドン(例えばEsbriet(商標)(InterMune)、Pirespa(商標)(Shionogi))、IFN-γ1b(例えばActimmune(商標);InterMune)、3つのTGF-βアイソフォーム全てに対する汎中和IgG4ヒト抗体(例えばGC1008;Genzyme)、TGF-β活性化阻害剤(例えばStromedix (STX-100))、 組換えヒトペントラキシン-2タンパク質(rhPTX-2)(例えばPRM151;Promedior)、二特異性IL4/IL13抗体(例えばSAR156597;Sanofi)、インテグリンαvβ6を標的とするヒト化モノクローナル抗体(BIBF 1120;Boehringer Ingelheim)、N-アセチルシステイン(Zambon SpA)、、シルデナフィル(Viagra(商標))、TNFアンタゴニスト(例えばエタネルセプト(Enbrel(商標));Pfizer)、グルココルチコイド(例えばプレドニゾン、ブデソニドモメタゾンフルオレート、フルチカゾンプロピオネート、及びフルチカゾンフロエート)、気管支拡張剤(例えばロイコトリエン改変剤(例えばMontelukast(SINGUAIR(商標)))、抗コリン作動性気管支拡張剤(例えばイプラトロピウムブロミド及びチオトロピウム)、短時間作用性β2-アゴニスト(例えばイソエタリンメシレート(Bronkometer(商標))、アドレナリン、サルブタノール/アルブテロール、及びテルブタリン)、長時間作用性β2-アゴニスト(例えばサルメテロール、フォルモテロール、インデカテロール(Onbrez(商標))、及びそれらの組合せ。
【0112】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はコルチコステロイドを含み、前記にはプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
いくつかの他の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は抗炎症剤である。
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、抗炎症剤は非ステロイド系抗炎症剤である。本明細書で用いられる“非ステロイド系抗炎症剤”という用語は、それらの作用がアスピリン様である大きな薬剤群を指し、イブプロフェン(Advil(商標))、ナプロキセンナトリウム(Aleve(商標))、及びアセトアミノフェン(Tylenol(商標))が含まれるが、ただしこれらに限定されない。本発明の関係で有用な非ステロイド系抗炎症剤のさらに別の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):オキシカム、例えばピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム、及びCP-14,304;ジサルシド、ベノリレート、トリリセート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサール及びフェンドサール;酢酸誘導体、例えばジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、及びケトロラク;フェナメート、例えばメフェナミク、メクロフェナミク、フルフェナミク、ニフルミク、及びトルフェナミン酸;プロピオン酸誘導体、例えばベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、パープロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、及びチアプロフェニク;ピラゾール、例えばフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、及びトリメタゾン。これらの非ステロイド系抗炎症剤の混合物もまた、これらの薬剤の皮膚学的に許容できる塩及びエステルと同様に利用することができる。例えば、エトフェナメート、フルフェナミン酸誘導体は局所適用に特に有用である。
別の実施態様にしたがえば、非ステロイド系抗炎症剤は、形質転換増殖因子-β3(TGF-β3)、抗腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)剤又はそれらの組合せを含む。
【0113】
別の実施態様にしたがえば、抗炎症剤はステロイド系抗炎症剤である。本明細書で用いられる“ステロイド系抗炎症剤”という用語は、17-炭素4-環系を含む多数の化合物の任意の1つを指し、ステロール、多様なホルモン(例えば同化作用促進性ステロイド)及びグリコシドが含まれる。ステロイド系抗炎症薬の代表的な例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):コルチコステロイド、例えばヒドロコーチゾン、ヒドロキシルトリアンシノロン、アルファ-メチルデキサメタゾン、デキサメタゾン-ホスフェート、ベクロメタゾンジプロピオネート、クロベタゾールベレエート、デソニド、デソキシメタゾン、デソキシコルチコステロンアセテート、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフルコートロンバレエート、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルメタゾンピバレート、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコーチンブチルエステル、フルオコートロン、フルプレドニデン(フルプレドニリデン)アセテート、フルルアンドレノロン、ハルシノニド、ヒドロコーチゾンアセテート、ヒドロコーチゾンブチレート、メチルプレドニゾロン、トリアンシノロンアセトニド、コーチゾン、コートドキソン、フルセトニド、フルドロコーチゾン、ジフルオロゾンジアセテート、フルルアドレノロン、フルドロコーチゾン、ジフロロゾンジアセテート、フルルアドレノロンアセトニド、メドリゾン、アンシナフェル、アンシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステルのバランス、クロロプレドニゾン、クロロプレドニゾンアセテート、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルルプレドネート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコーチゾンバレレート、ヒドロコーチゾンシクロペンチルプロピオネート、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、トリアンシノロン、及び前記の混合物。
【0114】
別の実施態様にしたがえば、ステロイド系抗炎症剤は、プレドニソン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン、及びそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1つのコルチコステロイドを含む。
別の実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤はキサンチン又はキサンチン誘導体、例えばメチルキサンチンを含む。
別の実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤は好中球エラスターゼ阻害剤を含む。
別の実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤は少なくとも1つの好中球エステラーゼ阻害剤である。前記には、ICI 200355、ONO-5046、MR-889、L-694,458、CE-1037、GW-311616、TEI-8362、ONO-6818、AE-3763、FK-706、ICI-200,880、ZD-0892、ZD-8321及びそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は少なくとも1つのホスホジエステラーゼ阻害剤を含み、前記阻害剤にはホスホジエステラーゼ4阻害剤が含まれるが、ただしこれに限定されない。ホスホジエステラーゼ4阻害剤の例にはロフルミラスト、シロミラスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0115】
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は鎮痛剤である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該鎮痛剤は、意識を妨害することなく又は他の第一次感覚形式を変更させることなく疼痛閾値を上昇させることによって痛みを緩和する。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、鎮痛剤は非オピオイド鎮痛剤である。“非オピオイド鎮痛剤は”、痛みを軽減するがオピオイド鎮痛剤ではない天然又は合成物質である。非オピオイド鎮痛剤の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、アスピリン、コロンマグネシウムトリサリチレート、ジフルニサール、メクロフェナミン酸、メフェナミン酸、及びフェニルブタゾン。いくつかの他の実施態様にしたがえば、鎮痛剤はオピオイド鎮痛剤である。“オピオイド鎮痛剤”、“オピオイド”又は“催眠性鎮痛剤”は、中枢神経系のオピオイドレセプターと結合し、アゴニスト作用を生じる天然又は合成物質である。オピオイド鎮痛剤の例には、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、及びペンタゾシンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0116】
別の実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤は抗感染薬である。別の実施態様にしたがえば、抗感染薬は抗生物質である。本明細書で用いられる“抗生物質”という用語は、主に感染症の治療に用いられる、細菌及び他の微生物の増殖を阻害するか、又はこれらを破壊する能力を有する一群の化学物質のいずれかを意味する。抗生物質の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ペニシリンG、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシリン、チカルシリン、カルベニシリン、メズロシリン、アズロシリン、ピペラシリン、イミペネム、アズトレオナム、セファロシン、セファクロル、セフォキシチン、セフロキシム、セフォニシド、セフメタゾール、セフォテタン、セフプロジル、ロラカルベフ、セフェタメト、セフォペラゾーン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフェピム、セフィキシム、セフポドキシム、デフスロジン、フレロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、シノキサシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、アミカシン、ゲンタミシン、カナマイシン、ネチルミシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンエチルスクシネート、エリスロマイシングルコヘプトネート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンステアレート、バンコマイシン、テイコプラニン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、ニトロフラントイン、リファンピン、ムピロシン、メトロニダゾール、セファレキシン、ロキシスロマイシン、コアモキシクラヴァネート、ペニシリンとタゾバクタムの組合せ、並びに前記の多様な塩、酸、塩基、及び他の誘導体。抗菌性抗生物質には、ペニシリン、セファロスポリン、カルバセフェム、セファマイシン、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、糖ペプチド、キノロン、テトラサイクリン、マクロライド、及びフルオロキノロンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0117】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は対象の肺に生じる炎症を阻害する。別の実施態様にしたがえば、炎症は急性炎症である。別の実施態様にしたがえば、炎症は慢性炎症である。別の実施態様にしたがえば、炎症は腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)によって媒介される。別の実施態様にしたがえば、炎症はインターロイキン-6(IL-6)によって媒介される。別の実施態様にしたがえば、炎症はインターロイキン-1β(IL-1β)によって媒介される。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、コントロールと比較して肺の腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)の量を調節する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、コントロールと比較して肺のインターロイキン-6(IL-6)の量を調節する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、コントロールと比較して肺のインターロイキン-1β(IL-1β)の量を調節する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、熱ショック27kDaタンパク質1(HSPB1)の活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、線維芽細胞増殖の異常な誘発である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、筋線維芽細胞の分化の異常な誘発である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、肺間質への細胞外マトリックスタンパク質の沈着である。別の実施態様にしたがえば、細胞外マトリックスタンパク質はコラーゲンである。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は線維症巣形成の促進である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、筋線維芽細胞の収縮活性の増進である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、細胞外マトリックスへの筋線維芽細胞結合の促進である。
【0118】
いくつかの実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と実質的な配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも70%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも80%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLAVA(配列番号:5)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVA(配列番号:6)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7)である。
【0119】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで第一のポリペプチドはアミノ酸配列YARAAARQARA(配列番号:11)であり、第二のポリペプチドは、その配列がアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と実質的同一性を有する治療ドメインを含む。
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも70%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも80%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
いくつかの実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLAVA(配列番号:8)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVA(配列番号:9)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:10)のポリペプチドである。
【0120】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで第一のポリペプチドはYARAAARQARA(配列番号:11)と機能的に等価の細胞貫通ペプチドを含み、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)である。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKAWLRRIKA(配列番号:12)のポリペプチドである。別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKA(配列番号:13)のポリペプチドである。別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:14)のポリペプチドである。別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKAWLRRI(配列番号:15)のポリペプチドである。別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列FAKLAARLYR(配列番号:16)のポリペプチドである。別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列KAFAKLAARLYR(配列番号:17)のポリペプチドである。別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列HRRIKAWLKKI(配列番号:18)のポリペプチドである。
別の特徴にしたがえば、本発明はまた、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする単離核酸を提供する。いくつかの実施態様にしたがえば、当該単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。いくつかの他の実施態様にしたがえば、単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。いくつかの他の実施態様にしたがえば、単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。
【0121】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.00001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.0001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.001mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.01mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.1mg/kg(又は100μg/kg)体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約1mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約10mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約2mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約3mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約4mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約5mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約60mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約70mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約80mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約90mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約90mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約80mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約70mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約60mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約50mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約40mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約30mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約20mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.01mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.001mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.0001mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.00001mg/kg体重の量である。
【0122】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から25μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から2μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、2μg/kg/日から3μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、3μg/kg/日から4μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、4μg/kg/日から5μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、5μg/kg/日から6μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、6μg/kg/日から7μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、7μg/kg/日から8μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、8μg/kg/日から9μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、9μg/kg/日から10μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から5μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、5μg/kg/日から10μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、10μg/kg/日から15μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、15μg/kg/日から20μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、25μg/kg/日から30μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、30μg/kg/日から35μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、35μg/kg/日から40μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、40μg/kg/日から45μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、45μg/kg/日から50μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、50μg/kg/日から55μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、55μg/kg/日から60μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、60μg/kg/日から65μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、65μg/kg/日から70μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、70μg/kg/日から75μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、80μg/kg/日から85μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、85μg/kg/日から90μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、90μg/kg/日から95μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、95μg/kg/日から100μg/kg/日の範囲である。
【0123】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は1μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は2μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は5μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は10μg/kg/日である。
【0124】
いくつかの実施態様にしたがえば、本発明のポリペプチドは、D-アミノ酸(L-アミノ酸特異的なプロテアーゼに対しin vivoで耐性を有する)、D-及びL-アミノ酸の組合せ、並びに特殊な特性を伝える多様な“デザイナー”アミノ酸(例えばβ-メチルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、及びN-α-メチルアミノ酸など)を含む。合成アミノ酸置換の例には、リジンの代わりのオルニチン、及びロイシン又はイソロイシンの代わりのノルロイシンが含まれる。
いくつかの実施態様にしたがえば、当該ポリペプチドを他の化合物(例えばポリエチレングリコール又はデキストラン)と連結してin vivoでの半減期の延長を促進できる。そのような連結は、当業者には理解されるところであるが共有結合でも非共有結合でもよい。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該ポリペプチドはミセル中に被包化することができる。ミセルは例えばポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ポリプロピレングリコール)、又はポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチドで構成される。いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドは分解性ナノ粒子又はミクロ粒子中に被包化でき、前記粒子は分解性ポリエステル(ポリ酢酸、ポリグリコリド及びポリカプロラクトンが含まれるが、ただしこれらに限定されない)で構成される。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドは固体形として(顆粒、粉末又は座薬を含む)又は液体形として(例えば溶液、懸濁液又は乳濁液)調製できる。
【0125】
別の実施態様にしたがえば、本発明の組成物は、吸入又は吹送(それぞれ口又は鼻を通して)によってデリバーされる分散性乾燥粉末の形であり得る。乾燥粉末組成物は当業界で公知のプロセス、例えば凍結乾燥及びジェットミル形成によって調製できる(前記技術は、国際特許公開公報No. WO 91/16038及び米国特許第6,921,527号に開示されてあり、前記文献の内容は参照により本明細書に含まれる)。本発明の組成物は、ユニット調剤処置を対象に提供するために十分な量で適切な投薬容器に配置される。前記投薬容器は適切な吸入装置内にフィットするものである。この吸入装置は、気流中に乾燥粉末組成物を分散させてエーロゾルを形成することによってエーロゾル化を可能にし、そのようにして生成されたエーロゾルは続いて、治療を必要とする対象のその後の吸入のために付けられたマウスピースを有するチャンバー内に捕捉される。そのような投薬容器には、当業界で公知の当該組成物を封入する任意の容器が含まれる。例えば、前記容器は、気体(例えば空気)流が容器に流れ込み乾燥粉末組成物を分散させる、取り外し可能な部分を有するゼラチン又はプラスチックカプセルである。そのような容器の具体例は、米国特許第4,227,522号、米国特許第4,192,309号、及び米国特許第4,105,027号に示されたものである。適切な容器にはまた、グラクソ(Glaxo)の商品名ベントリン(商標)ロトヘーラー(Ventolin(商標)Rotohaler)の粉末吸入装置又はフィソン(Fison)の商品名スピンヘーラー(商標)(Spinhaler(商標))の粉末吸入装置で一緒に使用されているものが含まれる。優れた湿気障壁を提供する別のユニット用量容器はアルミホイルプラスチックラミネートから形成される。当該医薬を基剤とする粉末を、成型可能ホイルのくぼみの中に重量又は体積により充填し、カバーホイル-プラスチックラミネートで密閉する。粉末吸入装置で使用されるそのような容器は米国特許第4,778,054に記載されてあり、グラクソのDiskhaler(商標)(米国特許第4,627,432号、4,811,731号及び5,035,237号)で使用される(これらの参考文献のいずれも参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0126】
別の実施態様にしたがえば、本発明の組成物の担体には、放出剤(例えば持続放出又は遅延放出担体)が含まれる。そのような実施態様では、担体は、より効率的な投与(例えばより少ない頻度及び/又はポリペプチドの投薬量の削減、操作の容易さの改善、及び治療、予防又は促進される疾患、異常、症状、徴候などにおける作用の引き延ばし又は延長をもたらす)を提供するために、当該ポリペプチドを持続又は延長放出できる任意の物質であり得る。そのような担体の非限定的な例には、リポソーム、ミクロスポンジ、微小球、又は天然及び合成ポリマーの微小カプセルなどが含まれる。リポソームは多様なリン脂質(コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンが含まれるが、ただしこれらに限定されない)から生成できる。
小ペプチドの合成及び調製の方法は当業界で周知であり、例えば米国特許第5,352,461号、5,503,852号、6,071,497号、6,331,318号、6,428,771号、及び米国公開公報No. 20060040953に開示されている。米国特許第6,444,226号及び6,652,885号は、水性懸濁液でのジケトピペラジンの微粒子の調製及び提供を記載する(活性薬剤の溶液を前記に添加し当該粒子に薬剤が結合される)。活性薬剤と粒子との結合を促進するために、そのような懸濁液の溶媒条件の変更が以下に開示されている:米国特許出願No.60/717,524、No.11/532,063及びNo.11/532,065、米国特許第6,440,463号並びに米国特許出願No.11/210,709及びNo.11/208,087(これらの特許及び特許出願の各々は参照により本明細書に含まれる)。
【0127】
いくつかの実施態様では、本発明のMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA;配列番号:1)及びその機能的等価物は、例えば米国特許出願No.11/678,046(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に開示されているように噴霧乾燥の方法によって乾燥させることができる。
さらに別の実施態様では、本発明のポリペプチドは多様な溶液に適用できる。適切な処方物は無菌的であり、十分な量の当該ポリペプチドを溶解し、推奨される適用について有害ではない。例えば、本発明の組成物は、活性成分が水性懸濁物の製造のために適した賦形剤との混合物中に存在する水性懸濁物として処方できる。
そのような賦形剤には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):懸濁剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアラビアゴム)、分散又は湿潤剤(天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)を含む)、又は脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、又は長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物(例えばヘプタデカエチル-エンオキシセタノール)、又は脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又は脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート)。
【0128】
本発明の組成物はまた、活性成分を植物油(例えばピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油)又は鉱物油(例えば流動パラフィン)に懸濁させることによって油性懸濁物として処方できる。油性懸濁物は膨張剤(例えば蜜蝋、ハードパラフィン又はセチルアルコール)を含むことができる。
本発明の組成物はまた、水を添加して水性懸濁物を調製するために適切な分散性粉末又は顆粒の形態として処方できる。そのような粉末及び顆粒中の活性成分は、分散又は湿潤剤、懸濁剤及び1つ以上の保存料との混合物として提供される。適切な分散又は湿潤剤及び懸濁剤の具体例は既に上記に記載したものである。また別の賦形剤もまた存在し得る。
いくつかの実施態様にしたがえば、乾燥粉末は噴霧乾燥プロセスによって製造される。
いくつかの他の実施態様にしたがえば、乾燥粉末は微小化によって製造される。
別の実施態様にしたがえば、当該乾燥粉末は、1から5ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む。
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、吸入装置(例えばネブライザー、計量吸入装置(MDI)及び乾燥粉末吸入装置(DPI)が含まれるが、ただしこれらに限定されない)中に一括される。
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物はネブライザーを用いるエーロゾル化デリバリー用液体である。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、医薬組成物の流速は少なくとも0.3mL/分であり、当該医薬組成物は2mm粒子としてデリバーされ最深部肺胞に分配される。
【0129】
本発明の組成物はまた乳濁液の形態として存在し得る。乳濁液は、2つの非混合性流動担体(それらの一方は他方の全体にわたって均一に分配され、最大コロイド粒子以上の直径を有する小球体から成る)を結合させることによって調製される二相系である。小球体のサイズは重要であり、当該系が最大の安定性を達成するようなものでなければならない。通常は、この2つの相の分離は、第三の物質(乳化剤)が取り込まれない限り生じないであろう。したがって、基本的な乳濁液は少なくとも3つの成分(2つの非混合性流動担体及び乳化剤)を活性成分とともに含む。ほとんどの乳濁液は非水性相に水性相を取り込む(又はその逆)。しかしながら、基本的に非水性の乳濁液(例えば非水性で非混合性の系(グリセリン及びオリーブ油))を陰イオン性及び陽イオン性界面活性剤を用いて調製することが可能である。したがって、本発明の組成物は水中油乳濁液の形態で存在し得る。油性相は、植物油(例えばオリーブ油又はピーナッツ油)又は鉱物油(例えば流動パラフィン)又は前記の混合物であり得る。適切な乳化剤は天然に存在するゴム(例えばアラビアゴム又はトラガカントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えばダイズレシチン)、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導されるエステル又は部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)、並びに前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。
【0130】
いくつかの実施態様にしたがえば、本発明のポリペプチドは化学的に合成される。そのような合成ポリペプチド(周知の固相、液相技術又はペプチド縮合技術又は前記の任意の組合せを用いて調製される)は、天然又は非天然のアミノ酸を含むことができる。ペプチド合成に用いられるアミノ酸は、標準的なBoc(N-α-保護N-α-t-ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂(Merrifield(1963, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154)の最初の固相方法の標準的脱保護、中和、カップリング及び洗浄プロトコルを用いる)、又は塩基不安定性N-α-アミノ保護9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸(最初CarpinoとHan(1972, J. Org. Chem. 37:3403-3409)が記載した)であり得る。Fmoc及びBoc N-α-アミノ保護アミノ酸は両方ともシグマ(Sigma, Cambridge Research Biochemical)又は当業者に馴染みのある他の化学品会社から入手できる。さらにまた、ポリペプチドは、他のN-α-保護基(当業者には周知である)を用いて合成できる。固相ペプチド合成は当業者に周知の技術によって達成でき、さらに例えば以下の文献に提供されてあり(Stewart and Young, 1984, Solid Phase Synthesis, Second Edition, Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.;Fields and Noble, 1990, Int. J. Pept. Protein Res. 35:161-214)、又は自動合成装置を用いることができる(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0131】
II.異常な線維芽細胞の増殖及びコラーゲン沈着を特徴とする疾患を予防又は治療する方法
別の特徴にしたがえば、本発明は、対象の組織における異常な線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を特徴とする疾患、症状又はプロセスを治療する方法を提供し、前記方法は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のポリペプチド又はその機能的等価物の治療量及び医薬的に許容できるその担体を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、ここで、前記治療量は、対象の組織における線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を低下させるために有効である。
本方法のある実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は放射線誘発線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は移植片拒絶である。
別の実施態様にしたがえば、当該組織は肺組織である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は間質性肺疾患である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は肺線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は特発性肺線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症はブレオマイシンの投与により生じる。
【0132】
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、アレルギー反応、環境性粒子の吸引、喫煙、細菌感染、ウイルス感染、対象の肺の機械的損傷、肺移植片拒絶、自己免疫疾患、遺伝性疾患、又はそれらの組合せから生じる。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状はさらに組織の炎症を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該炎症は急性又は慢性炎症である。
別の実施態様にしたがえば、当該炎症は、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、及びインターロイキン-1β(IL-1β)から成る群から選択される少なくとも1つのサイトカインによって媒介される。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、当該肺における筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の活性と比較して、当該組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な活性を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織における活性化マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の量又は分布と比較して、当該組織における活性化(リン酸化)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な量又は分布によって立証される。
【0133】
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、当該肺における線維芽細胞集団の筋線維芽細胞集団への異常な分化誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は異常は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の実施態様にしたがえば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙によって引き起こされる。別の実施態様にしたがえば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は環境性粒子によって引き起こされる。別の実施態様にしたがえば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)はアルファ-1アンチトリプシン欠損によって引き起こされる。別の実施態様にしたがえば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は小児の呼吸器感染によって引き起こされる。
別の実施態様にしたがえば、肺線維症は、正常で健康なコントロール対象と比較して対象の肺の熱ショック27kDaタンパク質1(HSPB1)の異常な活性を特徴とする。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して、対象の肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着である。別の実施態様にしたがえば、当該細胞外マトリックスタンパク質はコラーゲンである。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺における線維芽細胞増殖の異常な促進である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺における筋線維芽細胞分化の異常な誘発である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺における線維症巣形成の促進である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺における筋線維芽細胞の収縮活性の増進である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺における細胞外マトリックスへの筋線維芽細胞結合の異常な促進である。
【0134】
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は対象の肺で発生する炎症を阻害する。別の実施態様にしたがえば、炎症は急性炎症である。別の実施態様にしたがえば、炎症は慢性炎症である。別の実施態様にしたがえば、炎症は腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)によって媒介される。別の実施態様にしたがえば、炎症はインターロイキン-1β(IL-1β)によって媒介される。別の実施態様にしたがえば、炎症はインターロイキン-6(IL-6)によって媒介される。
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、未処置のコントロールと比較して対象の肺の腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)の量を調節する。別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、コントロールと比較して対象の肺のインターロイキン-1β(IL-1β)の量を調節する。別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、コントロールと比較して対象の肺のインターロイキン-6(IL-6)の量を調節する。
【0135】
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、正常で健康なコントロール対象と比較して、対象の肺におけるHSPB1の異常な活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着である。別の実施態様にしたがえば、細胞外マトリックスタンパク質はコラーゲンである。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺における線維芽細胞増殖の異常な促進である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して肺における線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化の異常な誘発である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して線維症巣形成の異常な促進である。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して筋線維芽細胞の収縮活性の異常な増進である。別の実施態様にしたがえば、筋線維芽細胞の収縮活性は、正常で健康なコントロール対象と比較してアルファ平滑筋アクチン(α-SMA)のレベル上昇を特徴とする。別の実施態様にしたがえば、筋線維芽細胞の収縮活性は、正常で健康なコントロール対象と比較してストレス線維形成の増進を特徴とする。別の実施態様にしたがえば、HSPB1の異常な活性は、正常で健康なコントロール対象と比較して、細胞外マトリックスへの筋線維芽細胞結合の異常な促進である。
【0136】
ある実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2キナーゼ)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3キナーゼ)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0137】
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0138】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びカルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
【0139】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びカルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
【0140】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、MK2、MK3、CaMKI、TrkBの群から選択される少なくとも1つのキナーゼのキナーゼ活性を、本明細書の表1に挙げた残りの群から選択される1つ以上の他のキナーゼの活性を実質的に阻害することなく阻害する。
別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物は、本明細書の表1に挙げるグループから選択されるキナーゼのキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、この阻害は、例えば対象の組織における線維芽細胞増殖、細胞外マトリックス沈着、又はそれらの組合せを低下させるために有効である。
別の実施態様にしたがえば、この阻害は、例えば、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を低下させるために有効であり得る。
【0141】
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI阻害物質のin vivoにおける阻害プロフィールは、投薬量、投与ルート、及び当該阻害物質に応答する細胞タイプに左右される。
そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の50%未満を阻害する。そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の65%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の50%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の40%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の20%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の15%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の10%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の5%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性を上昇させる。
直前のパラグラフの実施態様にしたがえば、実質的に阻害されない1つ以上の選択されるその他のキナーゼは、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼII(CaMKII、そのサブユニットCaMKIIδを含む)、プロトオンコジーンセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(PIM-1)、細胞性肉腫(c-SRC)、脾臓チロシンキナーゼ、(SYK)、C-srcチロシンキナーゼ(CSK)、及びインスリン様増殖因子1レセプター(IGF-1R)の群から選択される。
いくつかの実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに追加される治療薬剤を含む。
【0142】
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤は以下から成る群から選択される:精製ウシV型コラーゲン(例えばIW-001;ImmuneWorks;United Therapeutics)、IL-13レセプターアンタゴニスト(例えばQAX576;Novartis)、タンパク質チロシンキナーゼ(例えばイマチニブ(Gleevec(商標));Craig Daniels/Novartis)、内皮レセプターアンタゴニスト(例えばACT-064992(マシテンタン);Actelion)、二重エンドセリンレセプターアンタゴニスト(例えばボセンタン(Tracleer(商標));Actelion)、プロスタサイクリンアナローグ(吸入イロプロスト(例えばVentavis(商標));Actelion)、抗CTGFモノクローナル抗体(例えばFG-3019)、エンドセリンレセプターアンタゴニスト(A-選択性)(例えばアンブリセンタン(Letairis(商標))、Gilead)、AB0024(アレスト(Arresto))、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)モノクローナル抗体(例えばGS-6624(以前にはAB0024);Gilead)、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)阻害剤(例えばCC-930;Celgene)、パーフェニドン(例えばEsbriet(商標)(InterMune)、Pirespa(商標)(Shionogi))、IFN-γ1b(例えばActimmune(商標);InterMune)、3つのTGF-βアイソフォーム全てに対する汎中和IgG4ヒト抗体(例えばGC1008;Genzyme)、TGF-β活性化阻害剤(例えばStromedix (STX-100))、 組換えヒトペントラキシン-2タンパク質(rhPTX-2)(例えばPRM151;Promedior)、二特異性IL4/IL13抗体(例えばSAR156597;Sanofi)、インテグリンαvβ6を標的とするヒト化モノクローナル抗体(BIBF 1120;Boehringer Ingelheim)、N-アセチルシステイン(Zambon SpA)、、シルデナフィル(Viagra(商標))、TNFアンタゴニスト(例えばエタネルセプト(Enbrel(商標));Pfizer)、グルココルチコイド(例えばプレドニゾン、ブデソニドモメタゾンフルオレート、フルチカゾンプロピオネート、及びフルチカゾンフロエート)、気管支拡張剤(例えばロイコトリエン改変剤(例えばMontelukast(SINGUAIR(商標)))、抗コリン作動性気管支拡張剤(例えばイプラトロピウムブロミド及びチオトロピウム)、短時間作用性β2-アゴニスト(例えばイソエタリンメシレート(Bronkometer(商標))、アドレナリン、サルブタノール/アルブテロール、及びテルブタリン)、長時間作用性β2-アゴニスト(例えばサルメテロール、フォルモテロール、インデカテロール(Onbrez(商標))、及びそれらの組合せ。
【0143】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は気管支拡張剤を含み、前記にはロイコトリエン改変薬剤、抗コリン作動性気管支拡張剤、β2-アゴニスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はコルチコステロイドを含み、前記にはプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
いくつかの他の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は気管支拡張剤を含み、前記にはロイコトリエン改変薬剤、抗コリン作動性気管支拡張剤、β2-アゴニスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はコルチコステロイドを含み、前記にはプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は抗炎症剤である。
別の実施態様にしたがえば、抗炎症剤は非ステロイド系抗炎症剤である。非ステロイド系抗炎症剤の混合物もまた、これらの薬剤の皮膚学的に許容できる塩及びエステルと同様に利用することができる。例えば、エトフェナメート、フルフェナミン酸誘導体は局所適用に特に有用である。
別の実施態様にしたがえば、非ステロイド系抗炎症剤は、形質転換増殖因子-β3(TGF-β3)、抗腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)剤又はそれらの組合せを含む。
【0144】
別の実施態様にしたがえば、抗炎症剤はステロイド系抗炎症剤である。別の実施態様にしたがえば、ステロイド系抗炎症剤は、プレドニソン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン、及びそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1つのコルチコステロイドを含む。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はメチルキサンチンを含む。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は好中球エラスターゼ阻害剤を含む。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は少なくとも1つの好中球エステラーゼ阻害剤であり、前記には、ICI 200355、ONO-5046、MR-889、L-694,458、CE-1037、GW-311616、TEI-8362、ONO-6818、AE-3763、FK-706、ICI-200,880、ZD-0892、ZD-8321及びそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は少なくとも1つのホスホジエステラーゼ阻害剤を含み、前記にはホスホジエステラーゼ4阻害剤が含まれるが、ただしこれに限定されない。ホスホジエステラーゼ4阻害剤の例にはロフルミラスト、シロミラスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は鎮痛剤である。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、鎮痛剤は非オピオイド鎮痛剤である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、鎮痛剤はオピオイド鎮痛剤である。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は抗感染薬である。別の実施態様にしたがえば、抗感染薬は抗生物質である。
【0145】
いくつかの実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と実質的な配列同一性を有する。
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも70%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも80%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLAVA(配列番号:5)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVA(配列番号:6)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7)である。
【0146】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで第一のポリペプチドはアミノ酸配列YARAAARQARA(配列番号:11)であり、第二のポリペプチドは、その配列がアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と実質的同一性を有する治療ドメインを含む。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも70%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも80%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLAVA(配列番号:8)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVA(配列番号:9)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:10)のポリペプチドである。
【0147】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで第一のポリペプチドはYARAAARQARA(配列番号:11)と機能的に等価の細胞貫通ペプチドを含み、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)であり、当該医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の両方を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKAWLRRIKA(配列番号:12)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKA(配列番号:13)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:14)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKAWLRRI(配列番号:15)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列FAKLAARLYR(配列番号:16)のポリペプチドである。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列KAFAKLAARLYR(配列番号:17)のポリペプチドである。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列HRRIKAWLKKI(配列番号:18)のポリペプチドである。
【0148】
別の特徴にしたがえば、本発明はまた、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする単離核酸を提供する。
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、当該単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。いくつかの他の実施態様にしたがえば、単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。いくつかの他の実施態様にしたがえば、単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。
別の実施態様にしたがえば、投与工程は、全身的に(経口、頬側、非経口、局部、吸入又は吹送又は直腸のいずれかによる)実施するか、又は特定部位に(例えば注射、インプラント、移植、局部適用の手段による(ただし前記に限定されない))又は非経口的に実施できる。追加の投与は、例えば静脈内に、経粘膜的に、経皮的に、筋肉内に、皮下に、気管内に(肺吸入を含む)、腹腔内に、硬膜下腔内に、リンパ内に、病巣内に、硬膜外に実施できる。投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1つ以上の長い期間に及ぶ個々のユニット用量として又は複数の医薬及び/又は物質のマルチユニット用量を含む治療レジメンの形で実施できる。
【0149】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、投与工程は単一用量として1回実施される。いくつかの他の実施態様では、投与工程は1期間にわたって複数用量として実施される。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、当該1期間は1日、1週間、1ヶ月、1年、又はその数倍である。いくつかの実施態様にしたがえば、投与工程は少なくとも1週間の期間毎日実施される。いくつかの実施態様にしたがえば、投与工程は少なくとも1ヶ月の期間毎週実施される。いくつかの実施態様にしたがえば、投与工程は少なくとも2ヶ月の期間毎月実施される。別の実施態様にしたがえば、投与工程は少なくとも1年の期間にわたって繰り返し実施される。別の実施態様にしたがえば、投与工程は少なくとも毎月1回実施される。別の実施態様にしたがえば、投与工程は毎週1回実施される。別の実施態様にしたがえば、投与工程は1日1回実施される。
いくつかの他の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療量は吸入装置を介して投与される。医薬組成物の投与に用いることができる吸入装置の例には、ネブライザー、計量吸入装置(MDI)、乾燥粉末吸入装置(DPI)及び乾燥粉末ネブライザーが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、当該乾燥粉末は、1から5ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む。別の実施態様にしたがえば、乾燥粉末は、約2ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む。
【0150】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.00001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.0001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.001mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.01mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.1mg/kg(又は100μg/kg)体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約1mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約10mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約2mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約3mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約4mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約5mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約60mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約70mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約80mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約90mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約90mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約80mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約70mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約60mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約50mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約40mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約30mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約20mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.01mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.001mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.0001mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.00001mg/kg体重の量である。
【0151】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から25μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から2μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、2μg/kg/日から3μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、3μg/kg/日から4μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、4μg/kg/日から5μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、5μg/kg/日から6μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、6μg/kg/日から7μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、7μg/kg/日から8μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、8μg/kg/日から9μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、9μg/kg/日から10μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から5μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、5μg/kg/日から10μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、10μg/kg/日から15μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、15μg/kg/日から20μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、25μg/kg/日から30μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、30μg/kg/日から35μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、35μg/kg/日から40μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、40μg/kg/日から45μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、45μg/kg/日から50μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、50μg/kg/日から55μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、55μg/kg/日から60μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、60μg/kg/日から65μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、65μg/kg/日から70μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、70μg/kg/日から75μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、80μg/kg/日から85μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、85μg/kg/日から90μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、90μg/kg/日から95μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、95μg/kg/日から100μg/kg/日の範囲である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は1μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は2μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は5μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は10μg/kg/日である。
【0152】
III.異常な線維芽細胞の増殖及びコラーゲン沈着を特徴とする疾患を予防又は治療する系
別の特徴にしたがえば、本発明は、対象の組織における異常な線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を特徴とする疾患、症状又はプロセスを治療する系を提供し、
ここで、前記医薬組成物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のポリペプチド又はその機能的等価物の治療量及び医薬的に許容できるその担体を含み、
ここで、前記治療量は、対象の組織における線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を低下させるために有効である。
当該方法のある実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は放射線誘発線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は移植片拒絶である。
別の実施態様にしたがえば、当該組織は肺組織である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は間質性肺疾患である。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状は肺線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は特発性肺線維症である。
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症はブレオマイシンの投与により生じる。
【0153】
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、アレルギー反応、環境性粒子の吸引、喫煙、細菌感染、ウイルス感染、対象の肺の機械的損傷、肺移植片拒絶、自己免疫疾患、遺伝性疾患、又はそれらの組合せから生じる。
別の実施態様にしたがえば、当該疾患又は症状はさらに組織の炎症を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該炎症は急性又は慢性炎症である。
別の実施態様にしたがえば、当該炎症は、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、及びインターロイキン-1β(IL-1β)から成る群から選択される少なくとも1つのサイトカインによって媒介される。
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の活性と比較して、当該組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な活性を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織における活性化マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の量又は分布と比較して、当該組織における活性化(リン酸化)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な量又は分布によって立証される。
【0154】
別の実施態様にしたがえば、当該肺線維症は、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺の線維芽細胞増殖の異常な促進、当該肺の線維芽細胞集団の筋線維芽細胞集団への分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスとの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を特徴とする。
別の実施態様にしたがえば、医薬的に許容できる担体には、制御放出担体、遅延放出担体、持続放出担体、及び長時間放出担体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、吸入装置はネブライザーである。
別の実施態様にしたがえば、吸入装置は計量吸入装置(MDI)である。
別の実施態様にしたがえば、吸入装置は乾燥粉末吸入装置(DPI)である。
別の実施態様にしたがえば、吸入装置は乾燥粉末ネブライザーである。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は乾燥粉末の形態である。
別の実施態様にしたがえば、乾燥粉末は、1から5ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む。
別の実施態様にしたがえば、乾燥粉末は、約2ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む。
いくつかの実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに追加の治療薬剤を含む。
【0155】
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、追加される治療薬剤は以下から成る群から選択される:精製ウシV型コラーゲン(例えばIW-001;ImmuneWorks;United Therapeutics)、IL-13レセプターアンタゴニスト(例えばQAX576;Novartis)、タンパク質チロシンキナーゼ(例えばイマチニブ(Gleevec(商標));Craig Daniels/Novartis)、内皮レセプターアンタゴニスト(例えばACT-064992(マシテンタン);Actelion)、二重エンドセリンレセプターアンタゴニスト(例えばボセンタン(Tracleer(商標));Actelion)、プロスタサイクリンアナローグ(吸入イロプロスト(例えばVentavis(商標));Actelion)、抗CTGFモノクローナル抗体(例えばFG-3019)、エンドセリンレセプターアンタゴニスト(A-選択性)(例えばアンブリセンタン(Letairis(商標))、Gilead)、AB0024(アレスト(Arresto))、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)モノクローナル抗体(例えばGS-6624(以前にはAB0024);Gilead)、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)阻害剤(例えばCC-930;Celgene)、パーフェニドン(例えばEsbriet(商標)(InterMune)、Pirespa(商標)(Shionogi))、IFN-γ1b(例えばActimmune(商標);InterMune)、3つのTGF-βアイソフォーム全てに対する汎中和IgG4ヒト抗体(例えばGC1008;Genzyme)、TGF-β活性化阻害剤(例えばStromedix (STX-100))、 組換えヒトペントラキシン-2タンパク質(rhPTX-2)(例えばPRM151;Promedior)、二特異性IL4/IL13抗体(例えばSAR156597;Sanofi)、インテグリンαvβ6を標的とするヒト化モノクローナル抗体(BIBF 1120;Boehringer Ingelheim)、N-アセチルシステイン(Zambon SpA)、、シルデナフィル(Viagra(商標))、TNFアンタゴニスト(例えばエタネルセプト(Enbrel(商標));Pfizer)、グルココルチコイド(例えばプレドニゾン、ブデソニドモメタゾンフルオレート、フルチカゾンプロピオネート、及びフルチカゾンフロエート)、気管支拡張剤(例えばロイコトリエン改変剤(例えばMontelukast(SINGUAIR(商標)))、抗コリン作動性気管支拡張剤(例えばイプラトロピウムブロミド及びチオトロピウム)、短時間作用性β2-アゴニスト(例えばイソエタリンメシレート(Bronkometer(商標))、アドレナリン、サルブタノール/アルブテロール、及びテルブタリン)、長時間作用性β2-アゴニスト(例えばサルメテロール、フォルモテロール、インデカテロール(Onbrez(商標))、及びそれらの組合せ。
【0156】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は気管支拡張剤を含み、前記にはロイコトリエン改変薬剤、抗コリン作動性気管支拡張剤、β2-アゴニスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はコルチコステロイドを含み、前記にはプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
いくつかのそのような実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は気管支拡張剤を含み、前記にはロイコトリエン改変薬剤、抗コリン作動性気管支拡張剤、β2-アゴニスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はコルチコステロイドを含み、前記にはプレドニゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は抗炎症剤である。
別の実施態様にしたがえば、抗炎症剤は非ステロイド系抗炎症剤である。非ステロイド系抗炎症剤の混合物もまた、これらの薬剤の皮膚学的に許容できる塩及びエステルと同様に利用することができる。例えば、エトフェナメート、フルフェナミン酸誘導体は局所適用に特に有用である。
別の実施態様にしたがえば、非ステロイド系抗炎症剤は、形質転換増殖因子-β3(TGF-β3)、抗腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)剤又はそれらの組合せを含む。
【0157】
別の実施態様にしたがえば、抗炎症剤はステロイド系抗炎症剤である。別の実施態様にしたがえば、ステロイド系抗炎症剤は、プレドニソン、ブデソニド、モメタゾン、ベクレメタゾン、及びそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1つのコルチコステロイドを含む。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤はメチルキサンチンを含む。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は好中球エラスターゼ阻害剤を含む。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は少なくとも1つの好中球エステラーゼ阻害剤であり、前記には、ICI 200355、ONO-5046、MR-889、L-694,458、CE-1037、GW-311616、TEI-8362、ONO-6818、AE-3763、FK-706、ICI-200,880、ZD-0892、ZD-8321及びそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は少なくとも1つのホスホジエステラーゼ阻害剤を含み、前記にはホスホジエステラーゼ4阻害剤が含まれるが、ただしこれに限定されない。ホスホジエステラーゼ4阻害剤の例にはロフルミラスト、シロミラスト又はそれらの組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は鎮痛剤である。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、鎮痛剤は非オピオイド鎮痛剤である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、鎮痛剤はオピオイド鎮痛剤である。
別の実施態様にしたがえば、追加の治療薬剤は抗感染薬である。別の実施態様にしたがえば、抗感染薬は抗生物質である。
【0158】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は対象の肺に生じる炎症を阻害する。別の実施態様にしたがえば、炎症は急性炎症である。別の実施態様にしたがえば、炎症は慢性炎症である。別の実施態様にしたがえば、炎症は上昇レベルの腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)によって媒介される。別の実施態様にしたがえば、炎症は上昇レベルのインターロイキン-6(IL-6)によって媒介される。別の実施態様にしたがえば、炎症は上昇レベルのインターロイキン-1β(IL-1β)によって媒介される。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、コントロールと比較して肺の腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)の量を調節する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、コントロールと比較して肺のインターロイキン-6(IL-6)の量を調節する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、コントロールと比較して肺のインターロイキン-1β(IL-1β)の量を調節する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はHSPB1の活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、線維芽細胞増殖の異常な誘発である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、線維芽細胞集団の筋線維芽細胞集団への分化の異常な誘発である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、肺間質への細胞外マトリックスタンパク質の沈着である。別の実施態様にしたがえば、細胞外マトリックスタンパク質はコラーゲンである。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は線維症巣形成の促進である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、筋線維芽細胞の収縮活性の増進である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物によって阻害されるHSPB1の活性は、細胞外マトリックスへの筋線維芽細胞結合の促進である。
【0159】
別の実施態様にしたがえば、当該組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着は、正常で健康なコントロール対象の組織における活性化マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の量又は分布と比較して、当該組織における活性化(リン酸化)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な量又は分布によって立証される。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、本明細書の表1に列挙するグループから選択されるキナーゼのキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI阻害物質のin vivoにおける阻害プロフィールは、投薬量、投与ルート、及び当該阻害物質に応答する細胞タイプに左右される。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は当該キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0160】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2キナーゼ)のキナーゼ活性を阻害する。別の他の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の他の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はMK2キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3キナーゼ)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらにMK3キナーゼのキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0161】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも80%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも85%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも90%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも95%を阻害する。
【0162】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも50%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも70%を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物はさらに、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも75%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びカルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
【0163】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、BDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びカルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
【0164】
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)のキナーゼ活性の少なくとも65%、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)のキナーゼ活性の少なくとも65%、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI)のキナーゼ活性の少なくとも65%、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB)のキナーゼ活性の少なくとも65%を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、MK2、MK3、CaMKI、TrkBの群から選択される少なくとも1つのキナーゼのキナーゼ活性を、本明細書の表1に挙げた残りの群から選択される1つ以上の他のキナーゼの活性を実質的に阻害することなく阻害する。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、本明細書の表1に列挙される群から選択されるキナーゼのキナーゼ活性を阻害する。
別の実施態様にしたがえば、この阻害は、例えば対象の組織における線維芽細胞増殖、細胞外マトリックス沈着、又はそれらの組合せを低下させるために有効である。
別の実施態様にしたがえば、この阻害は、例えば、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、当該肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を低下させるために有効である。
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI阻害物質のin vivoにおける阻害プロフィールは、投薬量、投与経路、及び当該阻害物質に応答する細胞タイプに左右される。
【0165】
そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の50%未満を阻害する。そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の65%未満を阻害する。そのような実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の50%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の40%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の20%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の15%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の10%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性の5%未満を阻害する。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物は、選択されるその他のキナーゼのキナーゼ活性を上昇させる。
直前のパラグラフの実施態様にしたがえば、実質的に阻害されない1つ以上の選択されるその他のキナーゼは、Ca
2+/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼII(CaMKII、そのサブユニットCaMKIIδを含む)、プロトオンコジーンセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(PIM-1)、細胞性肉腫(c-SRC)、脾臓チロシンキナーゼ、(SYK)、C-srcチロシンキナーゼ、及びインスリン様増殖因子1レセプター(IGF-1R)の群から選択される。
【0166】
いくつかの実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と実質的な配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも70%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも80%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLAVA(配列番号:5)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVA(配列番号:6)である。
別の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、アミノ酸配列HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7)である。
【0167】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで第一のポリペプチドはアミノ酸配列YARAAARQARA(配列番号:11)であり、第二のポリペプチドは、その配列がアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と実質的同一性を有する治療ドメインを含む。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも70%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも80%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの他の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLAVA(配列番号:8)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVA(配列番号:9)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:10)のポリペプチドである。
【0168】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物は、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで第一のポリペプチドはYARAAARQARA(配列番号:11)と機能的に等価の細胞貫通ペプチドを含み、第二のポリペプチドはアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)である。
さらに別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKAWLRRIKA(配列番号:12)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKA(配列番号:13)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:14)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列WLRRIKAWLRRI(配列番号:15)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列FAKLAARLYR(配列番号:16)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列KAFAKLAARLYR(配列番号:17)のポリペプチドである。
別の実施態様にしたがえば、第一のポリペプチドはアミノ酸配列HRRIKAWLKKI(配列番号:18)のポリペプチドである。
別の特徴にしたがえば、本発明はまた、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする単離核酸を提供する。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、当該単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。いくつかのそのような実施態様にしたがえば、単離核酸は、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質配列をコードする。
【0169】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.00001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.0001mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.001mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.01mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約0.1mg/kg(又は100μg/kg)体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約1mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約10mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約2mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約3mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約4mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約5mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約60mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約70mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約80mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害ペプチドの治療量は、約90mg/kg体重から約100mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約90mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約80mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約70mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約60mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約50mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約40mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約30mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約20mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約10mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.1mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.01mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.001mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.0001mg/kg体重の量である。別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療量は、約0.000001mg/kg体重から約0.00001mg/kg体重の量である。
【0170】
いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から25μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から2μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、2μg/kg/日から3μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、3μg/kg/日から4μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、4μg/kg/日から5μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、5μg/kg/日から6μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、6μg/kg/日から7μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、7μg/kg/日から8μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、8μg/kg/日から9μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、9μg/kg/日から10μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、1μg/kg/日から5μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、5μg/kg/日から10μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、10μg/kg/日から15μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、15μg/kg/日から20μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、25μg/kg/日から30μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、30μg/kg/日から35μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、35μg/kg/日から40μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、40μg/kg/日から45μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、45μg/kg/日から50μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、50μg/kg/日から55μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、55μg/kg/日から60μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、60μg/kg/日から65μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、65μg/kg/日から70μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、70μg/kg/日から75μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、80μg/kg/日から85μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、85μg/kg/日から90μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、90μg/kg/日から95μg/kg/日の範囲である。いくつかの他の実施態様にしたがえば、当該医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は、95μg/kg/日から100μg/kg/日の範囲である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は1μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は2μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は5μg/kg/日である。
別の実施態様にしたがえば、医薬組成物の治療用阻害物質ペプチドの治療用量は10μg/kg/日である。
【0171】
本出願において特段の記載がなければ、利用した技術は例えば以下のよく知られたいくつかの参考文献で見出すことができる:Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook, et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press);Gene Expression Technology (Methods in Enzymology, Vol. 185, edited by D. Goeddel, 1991. Academic Press, San Diego, CA);“Guide to Protein Purification” in Methods in Enzymology (M.P. Deutshcer, ed., (1990) Academic Press, Inc.);PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis, et al. 1990. Academic Press, San Diego, CA);Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 2nd Ed. (R.I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, NY);及びGene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E.J. Murray, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.(前記文献はいずれも参照により本明細書に含まれる)。
特段の規定がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、本発明が属する業界の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載した方法及び材料と類似するか又は等価であるいずれの方法及び材料もまた本発明の実施又は試験に用いることができるが、好ましい方法及び材料をこれから述べる。本明細書に記載した全ての刊行物が参照により本明細書に含まれ、当該刊行物との関係で当該方法及び/又は材料が開示及び記述される。
【0172】
ある範囲の値が提供される場合、当該範囲の上限及び下限の間に介在する各値(文脈が明らかにそうでないことを記載していない限り当該下限の小数点一位までの各値)及び任意の他の表記された値又は当該表記範囲中に介在する値が本発明に包含されることは理解されよう。これらより小さな範囲に独立して含まれ得る当該より小さな範囲の上限及び下限もまた本発明に包含されるが、ただし表記範囲中の特に排除された任意の限界は除かれる。表記の範囲が一方又は両方の限界を含む場合、それら一方又は両方を排除した範囲がまた本発明に含まれる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形“an”及び“the”は、文脈が明らかにそうでないことを記載していない限り複数の対応物を含むこともまた特記する必要がある。本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は同じ意味を有する。
本明細書で考察される刊行物は参照によりその全体が本明細書に含まれ、前記は本出願の出願日前のそれらの開示内容を示すためにのみ提供される。それらのいずれも、本発明が先行発明を理由にそのような刊行物に先行しないということを容認するものと解されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なることが有り、前記は別個に確認されるべきであろう。
多様な変更を実施することが可能であり、本発明の真髄から外れることなく等価物を代用することができることは当業者には理解されよう。さらにまた、具体的な状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程又は複数の工程を本発明の目的及び真髄に適用させるために、多くの改変が実施され得る。そのような全ての改変は本明細書に添付した特許請求の範囲内に包含される。
【0173】
実施例
以下の実施例は本発明の実施及び使用の仕方を当業者に提供するために提示されるものであり、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を制限しようとするものでもなく、また下記の実験が全てであると或いは実施される唯一の実験であると言おうとするものでもない。使用する数値(例えば数、温度など)に関して正確を担保しようとする努力を払ったが、いくらかの実験誤差及び偏差を報告しなければならない。特段の指定がなければ、割合は重量比であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧は大気圧又は大気圧近辺である。
【0174】
I.材料と方法
MMI-0100薬の開発
医薬品の製造及び品質管理に関する基準を遵守するMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の製造のために、機械的攪拌装置を備えた50Lの固相反応合成ガラス容器に約1kgのFmoc-Ala-Wang樹脂を移す。前記樹脂をジメチルホルミド(DMF)中でDMFの排出前に2時間より長く(NLT)膨潤させる。続いて、樹脂をDMFの連続リンスにより洗浄する。N-末端保護基(すなわちFmoc)をDMF中の20%ピペリジンで処理することによって除去し(脱ブロック工程)、前記樹脂をDMFで洗浄する。配列中の次のアミノ酸を1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びジイソプロピルカルボジイミド(DIC)の存在下でカップリングさせる。一般的には、合成スケールに対し2.5−3.5モル等価物のFmoc-アミノ酸(Fmoc-AA)をカップリングに用いる。。Fmoc-AAをDMFに溶解し、HOBt及びDICの添加によって活性化させる。各カップリングの終了はニンヒドリン試験によってモニターする。カップリングが不完全である場合、同じアミノ酸による第二のカップリングを、対照無水物法を用いて実施する。一般的には、合成スケールに対し3.0−6.0モル等価物のFmoc-AAをカップリングに用いる。前記Fmoc-AAをジクロロメタン(DCM)及び最小体積のDMF中で溶解し、1.0/0.5のFmoc-AA/DICモル比でDICを添加することにより活性化させる。完全なペプチド配列が完成したとき、ペプチド樹脂をDMF及びMeOHの連続洗浄で十分にリンスする。続いてこの樹脂をNLT3時間真空下で乾燥させる。全乾燥ペプチド樹脂の典型的な回収は約2800グラムであり、約65%のペプチド樹脂収量を示す。
続いて機械的攪拌装置を備えた適切なサイズを有するガラス瓶に、約370−500グラムのペプチド樹脂を移す。このペプチド樹脂を入れたフラスコを氷/水浴中で又は冷蔵庫で30分以上冷却する。トリフルオロ酢酸(TFA)カクテル(95mL:2.5mL:2.5mLの比のTFA、TIS及び水の混合物)を氷/水浴中で30分以上前冷却する。樹脂1グラムにつき約8−12mLのTFA切断カクテルをこの容器に加える。ペプチド樹脂及びTFAカクテルを混合したら直ちに、氷/水浴を取り除き、反応混合物を2−3時間室温で攪拌する。続いて反応混合物を粗い硝子フィルターでろ過し、樹脂1グラム及び各洗浄につき0.5−1.0mLのTFAで2回、前記樹脂を洗浄する。一緒にしたろ液を収集し樹脂を廃棄する。冷蔵庫で30分以上前冷却したエーテルを、前記ろ液にエーテル10mLに対してろ液1mLの割合で添加し、切断ペプチドを沈殿させる。ペプチド-エーテル混合物を30分以上室温で平衡させる。沈殿ペプチドを中等度硝子フィルター上に収集する。フィルター上の全沈殿物を少なくとも覆うために十分な量の冷エーテルを用い、前記沈殿物を3回十分に洗浄する。このエーテルを同じ中等度硝子フィルターから溶出させる。粗ペプチドをプラスチック瓶に移し、機械真空ポンプと連結させたデシケーターに置き、12時間以上乾燥させる。乾燥後、粗ペプチドを5+/-3℃で保存する。全ペプチド樹脂が切断されるまで、前記切断工程を何度も繰り返す。全乾燥粗ペプチドの典型的なバッチ回収は約1250グラムであり、約110%の切断収量を示す。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製のために、HPLC緩衝液に20mg/mLの最終粗ペプチド濃度で前記ペプチドを溶解させることによって切断粗ペプチドを調製する。前記ペプチド溶液を1μmの硝子フィルター膜でろ過し、C18逆相カラムにロードし、前記カラムを調製用HPLC系で操作する。前記カラムを洗浄し平衡化させる。線状勾配を用いて粗ペプチドをカラムから溶離させる。各粗ペプチド精製に続いて、Kromasil C18(5μm、100Å)4.6x250mmカラムを用いて分析用HPLC系によって前記分画を分析する。最初の精製から生じた分画を、各分画のHPLC純度及び不純度プロフィールを基準にプールする。更なるプロセッシングまでペプチドプールを2−8℃で保存する。粗ペプチドの全てをHPLCカラムで精製し主要プール純度基準に適合するまで、前記のプロセスを繰り返す。酢酸塩に対する塩交換をHPLCで実施する。最終ペプチド溶液を0.22μmのフィルターに通し、凍結乾燥装置トレーに置く。凍結乾燥サイクルを開始する前に720分以上40℃で前記ペプチドを前凍結する。凍結乾燥には約5日を要する。約50−55%の最終収量が精製及び凍結乾燥工程からもたらされる。
【0175】
放射能測定によるIC50の決定
IC
50は1/2 log稀釈の10ポイント曲線から概算した。ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に供給した。具体的には、ヒト組換えMK2(h)(5−10mU)を以下の試薬とともに40分間室温でインキュベートした:50mMの3-グリセロリン酸ナトリウム(pH=7.5)、0.1mM EGTA、30μMの基質ペプチド(KKLNRTLSVA(配列番号:21))、10mM酢酸マグネシウム及び90uMのγ-33
P-ATP(最終体積25μL)。続いて前記反応を3%リン酸で停止させた。この混合物の10μLをP30フィルターマットにスポットし、75mMのリン酸で5分間3回、メタノールで1回洗浄した。最後にこの膜を乾燥させ、シンチレーションカウンターを用いた。ATPに対する見かけのKmの15μM以内のATP濃度を選択した。なぜならばHayessとBenndorf(Biochem Pharmacol, 1997, 53(9): 1239-47)が、それらの本来の阻害物質ペプチド(すなわちペプチドKKKALNRQLGVAA(配列番号:22))のメカニズムはATP結合と競合的ではないことを示したからである。
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))に対するIC
50値の決定に加えて、266のヒトキナーゼに対する阻害活性を、ミリポア社のIC
50プロファイラーエクスプレスサービス(Millipore, Billerica, MA)を用いて試験した。
特異性分析のために、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した以下のMMIの各々100μMを用いた:MMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))、MMI-0300(FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3))、MMI-0400(KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4))及びMMI-0500(HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7))。100μMの濃度を用いた理由は、この濃度がin vivo試験で粘着形成を阻害したからであった(米国特許出願No.12/582,516(2009年10月20日出願)に開示、前記文献の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。全てのキナーゼ活性測定はデュープリケートで実施した。
【0176】
組織化学及び免疫組織化学
マウスの肺線維症はC57BL/6マウスへの0.025Uのブレオマイシン/PBSの気管内投与によって発生させた。MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))又はMMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))(毎日50μg/kg、75μg/kg及び100μg/kgの投薬量)を、ブレオマイシン損傷後7日目から開始するか(炎症後/前線維症期の分析用、予防モデル)、又はブレオマイシン損傷後14日目に開始し(線維症後病期の分析用、治療モデル)、腹腔内又は霧状化によりブレオマイシンデリバリー後21日又は28日まで毎日投与した。ブレオマイシンデリバリー後21日目(予防モデル)又は28日目(治療モデル)に、マウスのグループをペントバルビタールナトリウム注射(120mg/kg)で安楽死させ、胸腔を開いた。右の主気管支を結紮し右肺を除去した。気管にカニューレを挿入し、4%ホルムアルデヒドを21cmの水圧で左肺に灌流させた。続いて組織ブロックをパラフィンに包埋し、4mm切片を染色のために調製した。各動物の切片を細胞可視化のためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色するか、又はコラーゲン沈着を強調するためにメーソントリクロム染色で染色した。インキュベーション後に切片を0.2%酢酸で洗浄し、95%アルコールに浸漬して脱水し、さらに染色皿中でキシレン(3−4回)により澄明化させた。染色切片をラベル付きのガラススライドに有機マウント剤を用いてマウントした。
II.結果
【実施例1】
【0177】
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))のIC50及び特異性
MK2阻害物質ペプチド、MMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))のIC
50(1/2最大阻害濃度)値をミリポア社のIC
50プロファイラーエクスプレスサービスを用いて決定した。この定量的アッセイは、ある生物学的プロセス又はプロセスの成分(すなわち酵素、細胞又は細胞レセプター)の50%を阻害するためにどれほど多くの阻害物質が必要とされるか([IC
50])を測定する。具体的には、このアッセイでは、キナーゼが阻害物質ペプチドによって阻害されない場合、正に荷電した基質がATPの放射能標識リン酸基でリン酸化される。続いて正に荷電した基質は負に荷電したフィルター膜に引きつけられ、シンチレーションカウンターで定量され、100%の活性をもつコントロールと比較される。
ATPに対して見かけのKmが15μM以内のATP濃度を選択した。なぜならば、Km近くのATP濃度は、キナーゼが同じ相対量のリン酸化活性を有することを可能にし得るからである。MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))のIC
50は22μMと決定された。
前記化合物のIC
50を決定することに加えて、MK2阻害性ペプチドの特異性をミリポアキナーゼプロファイリングサービスの試験で利用可能な266のヒトキナーゼ(表1)の全ての活性を試験することによって評価した。分析のために、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))、MMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))、MMI-0300(FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3))、MMI-0400(KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4))及びMMI-0500(HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7))によって65%を超えて阻害されるキナーゼを決定した。
表1に示すように、100μMで、MK2阻害性ペプチドMMI-0100(配列番号:1)、MMI-0200(配列番号:19)、MMI-0300(配列番号:3)、MMI-0400(配列番号:4)及びMMI-0500(配列番号:7)は特異的なキナーゼグループを阻害し、非常に限定されたオフターゲットキナーゼ阻害を示した。より具体的には、MK2阻害性ペプチドMMI-0100(配列番号:1)、MMI-0200(配列番号:19)、MMI-0300(配列番号:3)、MMI-0400(配列番号:4)及びMMI-0500(配列番号:7)は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ3(MK3)、カルシウム/カルモジュリン依存タンパク質キナーゼI(CaMKI、セリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼ)、及びBDNF/NT-3増殖因子レセプター(TrkB、チロシンキナーゼ)のキナーゼ活性を、65%を超えてin vitroで阻害した。
【0178】
表1:キナーゼプロファイリングアッセイ
【実施例2】
【0179】
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物は、噴霧乾燥、微小化(例えばジェットミル形成)を介する凍結乾燥粉末として、又は霧状化用液体処方物として処方される。
噴霧乾燥
いくつかの実施態様では、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物の調製には、以下の因子を考慮して噴霧乾燥が利用される:
(a)タンパク質及びペプチドは変性しやすい(すなわち三次元及び時には二次元構造が破壊されやすい);
(b)当該変性は可逆性又は不可逆性で、多様な条件(例えば温度上昇、温度低下、極端なpH、溶媒の添加、圧、及び剪断変性(前記は微小化に適用される))によって引き起こされ得る:
(c)変性タンパク質の活性は低下し、治療性がなく、時には完全に失活する;
(d)噴霧乾燥は、これらの非晶質で大きな分子を特定の粒子サイズ分布を有する別個の球状粒子にすることができ、プロセッシングパラメータによって制御し得る;
噴霧乾燥粒子は、非常に球状で、ドーナツ形を有し、典型的には中空であり、このことは、5μmを超える粒子はなお呼吸可能であるが肺のクリアランスメカニズムに耐性を有し得ることを意味する;さらに
(e)噴霧乾燥は、賦形剤があってもなくても一般的にタンパク質の安定性を改善する。
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物の凍結乾燥処方物を、噴霧乾燥プロセスとの潜在的相乗作用性(例えば最適水分レベル、緩衝液濃度/pHの適合性、賦形剤選択など)について評価し、ペプチド安定性の保護を確認する。
最初の噴霧乾燥運転は、噴霧乾燥操作のためのプロセスパラメータを規定する目的で共通承認許容基準を目標とする。吸入生成物については、粒子サイズは重要な基準と考えられる。問題領域の肺胞への沈積のために、1−5ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)が、肺胞間隙における末梢性沈積に適切であると是認される(Heyder, J. Proc Am Thorac Soc, 1(4): 315-320, 2004、前記文献は参照により本明細書に含まれる)。他の研究は、1−3ミクロンのMMADが噴霧乾燥プロセスに所望される開始目標粒子サイズであると提唱している。MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の蓋然性の高い生体間隙標的は肺胞領域であるので、約2ミクロンの範囲のMMADが、肺胞間隙への沈積を担保するために最初の目標とされる。許容基準には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):(1)粒子サイズ(すなわちD
90が約2μm);(2)水分レベル(すなわち水分は3%w/w未満);(3)粉末密度;及び(4)表面外観(球状、粗雑、トロイダル)。
続いてプロセス設計実験を実施して噴霧乾燥プロセスのパラメータを最適化する。前記パラメータには例えば以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:(1)入口圧及び乾燥温度;(2)供給材料濃度及び供給速度;及び(3)ペプチド/賦形剤比(賦形剤は例えば緩衝塩及び単糖類である)。
【実施例3】
【0180】
エーロゾル連続性の性能評価のためのMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))バッチ製造
上記に記載した規定のプロセスパラメータで2−3回の噴霧乾燥運転を実施し、エーロゾル性能評価用の材料を製造する。
噴霧乾燥粉末は、吸入装置(例えばマイクロドース(MicroDose)吸入装置であるが、ただし前記に限定されない)からのデリバリーに良好に適合する。マイクロドース(MicroDose)吸入装置は、高放出用量及び高微細粒子分画、並びにこの処方アプローチ(ニートブレンド及び同時噴霧乾燥ブレンドの両ブレンドのためのアプローチ)による用量の両方を日常的に達成する。噴霧乾燥インスリンの例示的エーロゾル性能は
図1及び2に示される。
乾燥微小化は、肺デリバリー小分子のために好ましい粉末製造法ではあるが、噴霧乾燥とは対照的に、前記はストレスの多い(高い剪断力を用いる)方法である。高剪断力の使用はタンパク質及びペプチドの破砕をもたらし得るので、乾燥微小化は大きな分子にとって日常的には用いられない。さらにまた、用量サイズが小さい場合、流動性を改善し、充填操作時の粉末の正確な測定を可能にするために膨張剤が必要である。主要賦形剤及びこの目的のために肺デリバリーに承認された唯一の賦形剤の1つを、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))又はその機能的等価物との化学的適合性について試験する必要がある。なぜならば、ある種のペプチドにとってラクトースは不適切だからである。
微小化プロセスはそこそこ容易で当業界でも周知である。略記すれば、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物の凍結乾燥粉末を、予め決定した目標の粒子サイズ分布が達成されるまで(すなわちMMAD、D10、D50、D90)粉砕ステージに通す。この微小化ニート粉末を微小化後の活性担保能力について試験し、吸入装置からのデリバリーを最適化し、さらにその化学的及び物理的安定性を基本(熱封入ブリスター)パッケージで試験する。続いて、承認されている肺ラクトースグレードのうちから目標に対し優先順位にしたがって選択して前記ニート粉末とブレンドし、ブレンドの均質性について試験し、同じ吸入装置最適化試験及び安定性試験を実施する。
【0181】
マイクロドース(MicroDose)乾燥粉末吸入装置(DPI)
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物は乾燥粉末吸入装置(DPI)を用いて投与できる。例えば、マイクロドース(MicroDose)乾燥粉末吸入装置(DPI)は、“能動的”な圧駆動エーロゾル発生装置を有し、前記は呼吸により駆動され、患者の吸入流速及び吸入体積とは無関係に高効率肺デリバリーを達成する。効率的な肺デリバリーに40−60リットル/分(LPM)の規模の気流による強く効果的な吸入を必要とする“受動的”DPIとは異なり、マイクロドース(MicroDose)DPIでは巧妙な呼吸術は要求されない。なぜならば、前記は、わずか10LPMから90LPMまでの非常に広い範囲にわたって同等な性能を示し効率的なデリバリーが可能だからである(
図3及び4の性能例を参照されたい)。
いくつかの実施態様にしたがえば、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物は、潮汐呼吸適用物(例えば“乾燥粉末ネブライザー” (DPN))を用いて投与することができる。DPNは、わずか2リットル/分(LPM)を引き起こす(ピーク流は5から15LPMの間で一回呼吸気量はわずか30mLと予想され、前記は成人IPF患者で予想される条件よりもはるかに困難な条件である)潮汐呼吸の吸入とシンクロナイズされた乾燥粉末用量をデリバーする。この新規なDPNは第二回目の成人臨床試験が成功のうちに完了し、その第一回目の試験は2011年11月に終了している。これらの結果は以下のURLのワールドワイドウェブ(www)でインターネットを介してアクセスできる:“clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01489306?spons=Microdose&rank=1.”
マイクロドース(MicroDose)電子吸入装置システムは極めて融通の利く構成であり、上記の両処方物様式を正確かつ効率的に(噴霧乾燥生成物に関して特に高い効率で)デリバーすることができ、30を超える小分子及び大分子に関してこの性能の能力を示した。基本パッケージの噴霧乾燥インスリンは例えば少なくとも18カ月もちこたえることができる。噴霧乾燥ペプチド及び微小化小分子のデリバリー性能の例は
図5−8に示される。
肺膜に対する乾燥粉末処方物の影響(例えば過敏化)に関して、乾燥粉末デリバリーは(特に粉末負荷が低いとき(<4−5mg))、それが活性分子の本質的な特性でない限り肺膜に影響を及ぼしたり又は過敏化を引き起こしたりすることはほとんどないであろう(我々は動物実験ではそれらを観察していない)。既に肺について承認され、肺における優れた生体適合性を有する賦形剤が選択され、非常に小量(すなわち低いmg範囲)で存在する。例えば、少量のマンニトールは影響を与えることはほとんどない。
【0182】
液体の霧状化
また別に、、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物は、液体の霧状化を介して投与できる。以前の前臨床試験は、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物は、動物での使用に適合させたアエロゲン(商標)(AeroGen(商標))ネブライザーシステムを介してげっ歯類にデリバーすることができる。
特にMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))をデリバーして機能低下の肺に有益な影響を与えるその能力をブレオマイシン動物モデルの有効性実験で示すために、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の溶液を効率的にエーロゾル化させる。MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の肺局所投与は、アエロゲン(商標)(www.aerogen.com)が設計及び製造したげっ歯類用ネブライザーにより達成される。エーロネブ(商標)ラブマイクロポンプネブライザー(Aeroneb(商標) Lab Micropump Nebulizer)は、前臨床エーロゾル研究及び吸入試験(前臨床と臨床製品開発との間の貴重な連携を提供する)で使用される高効率エーロゾル化技術を用いる。流速は>0.3mL/分であり、2mmサイズの粒子をデリバーして肺胞最深部に分布させるように設計される。霧状化MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の有効性及び肺全体の細胞における取り込みが、ブレオマイシン肺線維症マウスモデルで明示された(
図16参照)。局所的な臨床対応吸入投与は、減弱したMK2を活性化させるときの通常的な全身性注射と同じ有効性を示す。
【実施例4】
【0183】
活性化MK2のレベルは特発性肺線維症(IPF)患者の肺の線維症病巣で増加する
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)は、p38MAPK-α及びβによってストレス時に活性化される。p38MAPKのこれら2つのアイソフォームはMK2のカルボキシ末端の塩基性ドッキングモチーフと結合し、前記は続いてその調節部位でリン酸化される。活性化の結果として、MK2は核から細胞質へ移送され、この区画へ活性なp38MAPKを同時に輸送する。MK2はp38MAPKの局在を安定化させ、分化、遊走及びサイトカイン生成に必須である(Kotlyarov, A., Mol Cell Biol. 22(13): 4827-4835, 2002)。
したがって、IPF罹患肺でp38MAPK-MK2シグナリング経路が活性化されるか否かを調べるために、正常者及びIPF患者から得た肺切片をMK2の活性化型に対するホスホ特異的抗体(抗ホスホThr
334-MAPKAPK2)で染色した。DABを用いて正常肺及びIPF肺の組織を免疫染色し、さらに核をヘマトキシリンで対比染色した。
図9に示すように、正常肺生検組織(左)と比較して、IPF患者由来の肺組織外移植片の線維症巣の細胞で活性化MK2の発現増加が観察された。これらの結果は、IPF患者の肺の線維症形成はp38MAPK-MK2シグナリング経路の異常な活性化を特徴とすることを提唱している。
【実施例5】
【0184】
霧状化して全身投与したMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))はブレオマイシン誘発肺線維症からマウスを防御する
特発性肺線維症(IPF)の認証の1つは、間葉細胞の活性化及びマトリックス(特にコラーゲン)の旺盛な沈着である。生じた肺のコラーゲン蓄積は、組織学的技術及び生化学的技術の両技術によって測定できる。もっとも顕著にはヒドロキシプロリンの蓄積から測定できるが、ヒドロキシプロリンはほぼ全てが肺のコラーゲンに由来し、したがって全肺コラーゲン含有量の代用として供される(Umezawa H. et al., Cancer, 20(5):891-895, 1967)。
したがって、肺線維症治療におけるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の治療有効性を、ブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルを用いて評価した。前記評価は、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))ペプチドを全身的に(腹腔内)又は局所的に(霧状化投薬により)、予防段階又は前線維症段階(すなわち薬剤投与はブレオマイシン損傷後7日目に開始する;
図10参照)でデリバーし、ブレオマイシンマウスの線維症インデックスとしてコラーゲンレベルを測定することによって実施された。
略記すれば、マウスの肺線維症巣は、気管内に約0.025Uのブレオマイシン(PBSに溶解)をC57BL/6マウスにデリバーすることによって誘発した。ブレオマイシン損傷肺の予防/前線維症期治療におけるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の有効性を試験するために、コントロール(PBS)又はMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))を、腹腔内又は霧状化を介してブレオマイシンデリバリー後7日目(このとき炎症が沈静化し線維症メカニズムが活性化される)から開始しブレオマイシンデリバリー後21日目まで(このとき顕著な線維症が観察される)毎日投与した(
図10)。ブレオマイシンデリバリー後21日目に、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))又はコントロール(PBS)処置ブレオマイシンマウスから肺組織を単離し、固定し、パラフィン包埋し、染色のために切片を作成した。略記すれば、ペントバルビタールナトリウム注射(120mg/kg)によりマウスを安楽死させ、胸腔を開いた。右の主気管支を結紮し右肺を除去した。気管にカニューレを挿入し、4%ホルムアルデヒドを21cmの水圧で左肺に灌流させた。続いて組織ブロックをパラフィンに包埋し、4mm切片を調製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E、病理学的試験用)又はメーソントリクロム(コラーゲン染色用)で染色した。
図11に示すように、PBS処置マウスの肺切片は正常な肺構造(NL)及び気道(AW)を示した。対照的に、ブレオマイシンマウスの肺切片(21日目)では線維症巣(FF)の形成を示す狭窄気道(AW)が明瞭で(上段パネル:ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色)、肺組織ではコラーゲンの蓄積が増加し(下段パネルの矢印;メーソントリクロム染色)、これらはIPF患者のものを思い出させる。しかしながらMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の投与は(霧状化又は腹腔内を介して)、ブレオマイシンマウスの肺で線維症巣形成の進行を顕著に低下させ(上段パネル、MMI-0100(NEB)及びMMI-0100(IP))、さらにコラーゲン蓄積を低下させた(下段パネル、MMI-0100(NEB)及びMMI-0100(IP))。
次に、ブレオマイシン損傷マウスの肺の総コラーゲンレベル(
図12)を、ヒドロキシプロリン濃度からコラーゲンに対する定常変換係数(7.5)を用いてコンピュータ処理することによって定量的に分析した(Neuman R. and Logan M, J Biol Chem., 186(2):549-56, 1950)。
図12に示すように、炎症後/前線維症期におけるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の霧状化投与(BLEO+霧状化)及び全身投与(BLEO+IP)は、ブレオマイシンコントロールと比較して両投与とも顕著にコラーゲン沈着を低下させた。
【実施例6】
【0185】
特発性肺線維症予防モデルにおけるMK2ペプチド阻害物質の用量応答データ
次に、コラーゲン沈着に対するMK2ペプチド阻害物質の用量増加の影響を、特発性肺線維症のブレオマイシンマウスモデル(予防モデル)を用いてin vivoで調べた。略記すれば、C57BL/6マウスを0日目にブレオマイシン損傷に付した。7日目に開始し21日目まで、25、50又は75μg/kgのMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))又はMMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))を毎日腹腔内(IP)注射により投与した。
図13に示すように、メーソン青色トリクロム染色は、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))で処置したブレオマイシン損傷マウスの肺におけるコラーゲンレベルの低下を明らかにし、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))は、ブレオマイシン損傷による肺線維症を用量依存態様で防ぐことができることを示唆した。これらのデータは、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))はより高用量でさえ線維症防止化合物としてのその潜在能力を保持することを提唱している。
対照的に、MMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))によるブレオマイシン損傷マウスの処置は、試験した用量では肺のコラーゲン沈着を低下させずむしろ増加させた。この結果はしかしながら、MK2ノックアウトマウス及びMK2-/-マウス胎児線維芽細胞(MEF)を含む以前の研究と一致する(前記研究では全てのMK2活性は失われ、線維症表現型の悪化を示した)(Liu et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 37: 507-517, 2007)。
理論に拘束されないが、これらの結果は以下を提唱する:(1)本発明のMK2阻害ペプチドはキナーゼの特異的グループに対する阻害活性スペクトルを示すことができる;(2)MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びMMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))は、MK2及び他のキナーゼを弁別的に阻害することができ、前記は適用される用量に応じてこの阻害活性スペクトルに寄与する;(3)筋線維芽細胞形成及び/又は遊走はまた、活性な損傷の部分ではなく線維症の修復期の部分かもしれない;及び(4)したがって、一定レベルのMK2活性は発生する当該プロセスに必要である(Liu et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 37: 507-517, 2007)。
さらにまた、本発明のMK2阻害ペプチドは、MK2の下流の標的HSPB1の基質結合部位から誘導された。したがって、それらは、HSPB1に対するMK2のキナーゼ活性を競合的に阻害することができる。理論に拘束されないが、線維症に対するMMI-0200(YARAAARQARAKALNRQLGVA(配列番号:19))の弁別的作用は、その配列の相違、HSPB1結合部位に対するその相同性、個々の標的タンパク質結合部位に対するMK2キナーゼ活性のその弁別的阻害、又はそれらの組合せに帰することができる。
【実施例7】
【0186】
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の投与は特発性肺線維症予防モデルで全身的なT細胞活性化を効率的に遮断する
最近の研究はブレオマイシン誘発線維症におけるT細胞の重要な役割に重点を置いていた(Wilson, M. et al., The Journal of Experimental Medicine, 207(3): 535-552, 2010)。したがって、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))で処置したブレオマイシン誘発線維症マウスにおける脾臓T細胞(全T細胞)の機能的役割を究明するために、自己混成リンパ球反応(MLR)を以前に報告されたように実施した(Wilkes, D. et al., Journal of Leukocyte Biology, 64(5):578-586, 1998;前記文献は参照により本明細書に含まれる)。具体的には、C57BL/6の精製抗原提示細胞のC57BL/6-Tリンパ球増殖誘発能力を前記アッセイで試験した。
C57BL/6マウスを0日目にブレオマイシン損傷に付した。7日目に、マウスに50μg/kg/日のMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))を、腹腔内(IP)注射又はネブライザー(NEB)により21日目まで毎日投与した。脾臓T細胞を単離し、単独で又は自己抗原提示細胞(C57BL/6マウスのAPC)の存在下で培養するか、又はCD3(α-CD3)に対する抗体で48時間刺激した。続いて、細胞を
3Hチミジンで16時間放射能標識し、増殖速度について評価した。
図14に示すように、T細胞単独は処置に関係なく非常に低い増殖能力を示した。しかしながら、T細胞を自己抗原提示細胞(すなわちC57BL/6マウスから単離したAPC)と一緒に共培養したとき、増殖能力はコントロールマウスの場合よりもブレオマイシン損傷マウスについて顕著に高かった。興味深いことには、抗原提示細胞の存在下で観察された、ブレオマイシン処置マウス由来T細胞の増殖は、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の全身投与によって顕著に低下したが、しかしながら予測したように吸入態様の場合には低下は顕著ではなかった。これらのデータは、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))による脾臓T細胞活性化の抑制を示唆し、ペプチドMK2阻害物質は線維症を防止することを示している。
T細胞の生存能力もまた、これらの細胞をα-CD3(ポリクローナルT細胞アクチベーター)に対する抗体で刺激することによって確認された。α-CD3は処置グループに関係なく激しい細胞増殖を誘発した。ポリクローナルアクチベーターに対する増殖応答は、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))ペプチド阻害物質は、脾臓T細胞の機能的特性に影響を与えないこと、及びこの具体的用量ではMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の投与に関して毒性は存在しないことを提唱している。さらにまた、霧状化MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))に対して脾臓T細胞応答が存在しないことは、このペプチドデリバリー態様では全身性分布はほとんど生じないことを示唆している。
【実施例8】
【0187】
全身性又は霧状化MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置は線維症後病期におけるブレオマイシン損傷肺を保護する
図10に示すように、古典的ブレオマイシンモデルは文献では、任意の介入の有効性を検査するために前線維症病期で広く用いられてきた。MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の霧状化及び全身性投与はともに、ブレオマイシン誘発線維症から肺を顕著に保護するので、ブレオマイシン損傷肺の治療におけるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の全身(腹腔内)投与又は局所(霧状化)投与の影響を線維症後病期において(薬剤介入を14日目(肺が顕著な線維症を示す時点)に開始して)さらに試験した(
図15)(Pottier, N. et al., American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 176(11): 1098-1107, 2007;前記文献は参照により本明細書に含まれる)。このモデルで示される瘢痕化肺の救済は、IPF患者の肺が診断時点で瘢痕化していることを条件にして臨床的に相関性がある。
より具体的には、約0.25Uのブレオマイシン(PBSに溶解)をC57BL/6マウスに気管内デリバリーすることによって肺の線維症巣を誘発した。線維症後病期時のブレオマイシン損傷肺の治療におけるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の有効性を調べるために、PBS(コントロール)又はMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))を、腹腔内又は霧状化を介して当該マウスにブレオマイシンデリバリー後14日目に開始しブレオマイシンデリバリー後28日まで毎日投与した。ブレオマイシンデリバリー8日目に、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置又はコントロール(PBS)のブレオマイシンマウスの肺組織を単離し、固定し、パラフィン包埋し、染色のために切片を作成した。マウスをペントバルビタールナトリウム注射(120mg/kg)により安楽死させ、胸腔を開いた。右の主気管支を結紮し右肺を除去した。気管にカニューレを挿入し、4%ホルムアルデヒドを21cmの水圧で左肺に灌流させた。続いて組織ブロックをパラフィンに包埋し、4mm切片を調製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E、病理学的試験用)又はメーソントリクロム(コラーゲン染色用)で染色した。
図16に示すように、薬剤の投与態様に関係なく(すなわち腹腔内デリバリーであれ又は肺への局所適用であれ)、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置は、重篤な瘢痕形成肺を“救済”した。組織学的評価を用いて、肺構造(ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色、上パネル)及びコラーゲン分布(メーソン青色トリクロム染色、下パネル)を調べた。組織化学試験の結果は、ブレオマイシン損傷肺は重篤な瘢痕形成を示すが、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置マウスはよりきれいな肺実質を有することを示している。
次に、全左肺による標準的なヒドロキシプロリンアッセイを用いてコラーゲン沈着を定量的に測定した。ブレオマイシン損傷後28日目にネズミ肺のヒドロキシプロリン濃度を分析することによって、総コラーゲン(可溶性及び不溶性)沈着を評価した。MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))は、ブレオマイシン損傷後14日目に開始して腹腔内注射(IP)又はネブライザー(NEB)によって50μg/kg/日の用量で投与された。
図17に示すように、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置は、ベースライン(ブレオマイシン損傷後28日目及びMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置開始時)と比較してコラーゲン沈着の更なる進行を停止させた。このことは注目に値する。なぜならば、これまでの文献は薬剤開発において有効な予防薬を提示するが、IPF患者に診断が下される時には既存の線維症が存在しているからである。これらの結果はまた、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))は、本疾患の更なる進行を効率的に停止させ生活の質を改善する潜在能力を有すること、及びMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))ペプチドは、より高濃度で及び/又はより長期の治療期間で使用されるならば、肺の組織学及び生理学に大きな改善すらもたらし、線維症を減少させ得ることを提唱している。
【実施例9】
【0188】
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の全身投与又は局所投与は特発性肺線維症のブレオマイシンマウスモデルにおける活性化MK2の低下と相関する
上記で考察したように、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))及びその機能的等価物の肺における主要標的の1つはMK2キナーゼである(MK2は罹患肺で炎症及び線維症応答を誘引する)。したがって、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))のin vivoにおける効果をさらに立証するために、活性化MK2(ホスホ-Thr
334-MAPKAPK2)のレベルを未処置ブレオマイシン損傷マウスとともにMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置マウスで調べた。
略記すれば、C57BL/6マウスを0日目にブレオマイシン損傷に付した。14日目に前記マウスに50μg/kgのMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))を、ブレオマイシン損傷後28日まで毎日腹腔内(IP)注射又はネブライザー(NEB)により投与した。ホルマリン固定肺組織切片をホスホ-Thr
334-MK2に対して免疫染色した。コントロール染色にはビオチン化二次IgG抗体を用いた。ストレプトアビジン結合セイヨウワサビペルオキシダーゼを基質としての3,3’-ジアミノベンジデンとともに用い、さらに核をヘマトキシリンで対比染色した。ブレオマイシンマウスは、未処置の場合には活性化MK2の存在(暗色の結節)の目に見える増加(ほとんどが特に顕著なコラーゲン沈着領域で)を示したが、MMI-0100処置マウスは正常組織と類似する活性化MK2の存在を示し、そのような分布は気道周囲及び血管領域に集中していた。
図18に示すように、デリバリー態様に関係なく(すなわち全身投与であれ又は局所投与であれ)、コントロールと対比して、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の霧状化又は腹腔内投与は、ブレオマイシンマウスモデルでホスホ-Thr
334-MAPKAPK2染色の減少を伴った。
【実施例10】
【0189】
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))は特発性肺線維症治療モデルで炎症性サイトカインをダウンレギュレートする
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))が肺における線維症形成を阻害することができる1つのあり得るメカニズムは、炎症後サイトカインの局所濃度が低下し、それによって単球補充及び肺マクロファージによる異常な細胞外再造形(例えばコラーゲン沈着の増加、細胞粘着及び遊走の増加、マトリックス分解の低下)が妨害されることによる。この可能性を究明するために、炎症後サイトカインの生成を阻害するMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の能力を、腹腔内又は液状化によるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置時におけるインターロイキン-6(IL-6)及び腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)レベルの変化を測定することによって試験した。
インターロイキン-6(IL-6)は多機能性サイトカインであり、その主要な作用には、免疫グロブリン合成の強化、T細胞の活性化、及び急性期タンパク質合成の調節が含まれる。多くの異なるタイプの細胞(単球、マクロファージ、内皮細胞及び線維芽細胞を含む)がIL-6を生成することが知られている。さらに、これらの細胞におけるIL-6遺伝子の発現は多様な誘導物質によって調節される。インターロイキン-1β(IL-1β)及び腫瘍壊死因子(TNF-α)はIL-6遺伝子の公知の重要な2つの誘導物質である。他の誘導物質には、タンパク質キナーゼのアクチベーター、カルシウムイノフォアA23187、及び細胞内環状AMP(cAMP)レベルの上昇を引き起こす多様な薬剤が含まれる。
腫瘍壊死因子(TNF、TNF-αとも称される)は全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激するサイトカイングループのメンバーである。複数の研究が、TNF-αは、細胞内の3つの別個のシグナリング経路(すなわち1)NF-κB経路、2)MAPK経路及び3)死のシグナリング経路)を介してIL-6の発現を誘発することを示した。
図20に示すように、腹腔内(BLEO+(IP))又は霧状化(BLEO+MMI-0100(NEB))MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の投与は、特発性肺線維症のブレオマイシンマウスモデルのTNF-α(A、上段パネル)及びIL-6(B、下段パネル)の両方の血中レベルを顕著に低下させた。
【実施例11】
【0190】
MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の全身投与又は局所投与は、ブレオマイシン損傷による顕著な瘢痕化を示すネズミ肺の筋線維芽細胞活性化蓄積を効率的に阻止する
特発性肺線維症(IPF)の認証は、線維症病巣の筋線維芽細胞の蓄積及び大量のアルファ-平滑筋アクチン(α-SMA)(筋線維芽細胞活性化のマーカー)の発現である。さらにまた、活性化筋線維芽細胞は、部分的には肺実質の剛直性及び肺機能悪化の原因である。
したがって、ブレオマイシン損傷肺のα-SMAの発現レベルを、全身的に(腹腔内投与による)又は局所的に(霧状化による)MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))で処置したブレオマイシン損傷マウスの肺で評価した。
図21に示すように、α-SMAのレベルは、未処置ブレオマイシン損傷肺のα-SMAのレベルと比較して、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))処置肺で顕著に減弱した。
【実施例12】
【0191】
in vitroのTGF-β1誘発筋線維芽細胞活性化調節におけるMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の用量応答実験
特発性肺線維症(IPF)の主要な認証は、極めて大量のマトリックスタンパク質(コラーゲン、フィブロネクチン及びマトリックスメタロプロテイナーゼを含む)を分泌する活性化筋線維芽細胞に加えて、非定形的でアポトーシスの上皮細胞の存在である(Horowitz, J and Thannickal, V., Treatments in Respiratory Medicine, 5(5):325-42, 2006)。正常な創傷治癒プロセス下では、一時的足場として臨時のマトリックスが筋線維芽細胞によって形成される。この臨時のマトリックスの収縮がその後の再上皮形成及び最終的創傷治癒をもたらす。しかしながら、活性化筋線維芽細胞がアポトーシスに耐性であるとき、生じた極めて大量のコラーゲン沈着はマトリックスの安定化をもたらす(Tomasek, J. et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology, 3(5): 349-63, 2002)。抑制されない筋線維芽細胞増殖、活性化及びアポトーシス耐性の帰結は、コラーゲン沈着のために安定化したマトリックスを有する線維症病巣であり、したがって最終的には肺構造のねじれをもたらす(Yamashita, C. et al., The American Journal of Pathology, 179(4): 1733-45, 2011)。
したがって、線維芽細胞は瘢痕形成に必要とされる重要な細胞であるので、筋線維芽細胞活性化に対するMMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))の影響を、TGF-βで処理したヒト胎児肺線維芽細胞(IMR-90細胞)培養でα-平滑筋アクチン(α-SMA)及びフィブロネクチンのタンパク質レベルを試験することによって評価した。α-平滑筋アクチン(α-SMA)(
図22)及びフィブロネクチン(
図23)の両レベルの低下によって示されるように、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))は、TGF-βによって誘発された筋線維芽細胞活性化を用量依存態様で
図22及び23に示すように効率的に妨げた。
対照的に、MMI-0100(YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1))は、筋線維芽細胞活性化マーカーのα-平滑筋アクチン(α-SMA)(
図21)及びフィブロネクチン(
図23)のタンパク質レベルに変化がないことによって示されるように、検査した用量ではTGF-β媒介筋線維芽細胞活性化に影響を与えなかった。理論に拘束されないが、これらの結果は以下の事柄を提唱している:(1)本発明のMK2阻害性ペプチドは特定のキナーゼグループに対して阻害活性スペクトルを示し得る;(2)MMI-0100(配列番号:1)及びMMI-0200(配列番号:19)はMK2及び他のキナーゼを弁別的に阻害することができ、前記は適用する用量に応じてこの阻害活性スペクトルに寄与する;(3)α-平滑筋アクチンを調節する代償性経路が存在するかもしれない;(4)筋線維芽細胞形成及び/又は遊走はまた、活発な傷害の部分ではなくむしろ線維症の修復期の部分であるのかも知れない;さらに(5)一定レベルのMK2活性はしたがって生じるべきプロセスのために必要である(Liu et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 37: 507-517, 2007)。
さらにまた、本発明のMK2阻害性ペプチドは、MK2下流の標的HSPB1の基質結合部位から誘導された。したがって、それら阻害性ペプチドはHSPB1に対しMK2のキナーゼ活性を競合的に阻害することができる。理論に拘束されないが、線維症に対するMMI-0200(配列番号:19)の弁別的作用は、その配列相違、HSPB1結合部位に対するその相同性、及び別個の標的タンパク質結合部位に対するMK2キナーゼ活性のその弁別的阻害に帰することができよう。
本発明をその具体的な実施態様を参照しながら記載してきたが、本発明の真の範囲を外れることなく多様な変更を実施することが可能であり、等価物で代用することもできることは当業者には理解されるところである。さらに、本発明の目的とする趣旨及び範囲に対して、多くの改変を実施して、個々の状況、材料、物質組成、プロセス、プロセス工程又は複数の工程に適合させることができる。全てのそのような改変は添付の特許請求の範囲内であると考える。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕対象の組織における異常な線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を特徴とする疾患、症状又は病理学的プロセスの治療で使用される医薬組成物であって、前記医薬組成物が、治療量のアミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のポリペプチド又はその機能的等価物、及びその医薬的に許容できる担体を含み、前記治療量が、対象の組織における線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を低下させるために有効である、前記医薬組成物。
〔2〕前記疾患又は症状が、急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕前記疾患又は症状が放射線誘発線維症である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔4〕前記疾患又は症状が移植片拒絶である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔5〕前記組織が肺組織である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔6〕前記疾患又は症状が間質性肺疾患である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔7〕前記疾患又は症状が肺線維症である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔8〕前記肺線維症が特発性肺線維症である、前記〔7〕に記載の医薬組成物。
〔9〕前記肺線維症がブレオマイシンの投与により生じる、前記〔7〕に記載の医薬組成物。
〔10〕前記肺線維症が、アレルギー反応、環境性粒子の吸引、喫煙、細菌感染、ウイルス感染、対象の肺の機械的損傷、肺移植片拒絶、自己免疫疾患、遺伝性疾患、又はそれらの組合せから生じる、前記〔7〕に記載の医薬組成物。
〔11〕前記疾患又は症状がさらに組織の炎症を特徴とする、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔12〕前記炎症が急性又は慢性炎症である、前記〔11〕に記載の医薬組成物。
〔13〕前記炎症が、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、及びインターロイキン-1β(IL-1β)から成る群から選択される少なくとも1つのサイトカインによって媒介される、前記〔11〕に記載の医薬組成物。
〔14〕前記組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着が、正常で健康なコントロール対象の組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の活性と比較して、前記組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な活性を特徴とする、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔15〕前記肺線維症が、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、前記肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、前記肺における筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を特徴とする、前記〔7〕に記載の医薬組成物。
〔16〕前記医薬組成物が気管内に、非経口的に、静脈内に又は腹腔内に投与される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔17〕前記医薬組成物が気管内に投与される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔18〕前記医薬組成物が1用量として一度に投与される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔19〕前記医薬組成物がある期間にわたって複数の用量として投与される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔20〕前記期間が1日、1週間、1ヶ月、1年又はそれらの何倍かである、前記〔19〕に記載の医薬組成物。
〔21〕前記医薬組成物が少なくとも毎月1回、少なくとも毎週1回、又は少なくとも毎日1回投与される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔22〕前記医薬組成物がさらに少なくとも1つの追加の治療薬剤を含む、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔23〕前記追加の治療薬剤が、精製ウシV型コラーゲン、IL-13レセプターアンタゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、内皮レセプターアンタゴニスト、二重エンドセリンレセプターアンタゴニスト、プロスタサイクリンアナローグ、抗CTGFモノクローナル抗体、エンドセリンレセプターアンタゴニスト(A-選択性)、AB0024、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)モノクローナル抗体、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)阻害剤、パーフェニドン、IFN-γ1b、3つのTGF-βアイソフォーム全てに対する汎中和IgG4ヒト抗体、TGF-β活性化阻害剤、組換えヒトペントラキシン-2-タンパク質(rhPTX-2)、二特異性IL-4/IL-13抗体、インテグリンαvβ6を標的とするヒト化モノクローナル抗体、N-アセチルシステイン、シルデナフィル、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト(エタネルセプト)、及びそれらの組合せから成る群から選択される、前記〔22〕に記載の医薬組成物。
〔24〕前記追加の治療薬剤が、プレドニゾン、ブデソニド、モメタゾンフロエート、フルチカゾンプロピオネート、フルチカゾンフロエート、及びそれらの組合せから成る群から選択されるグルココルチコイドである、前記〔22〕に記載の医薬組成物。
〔25〕前記追加の治療薬剤が、ロイコトリエン改変薬剤、抗コリン作動性気管支拡張剤、短時間作用性β2アゴニスト及び長時間作用性β2アゴニスト、並びにそれらの組合せから成る群から選択される気管支拡張剤である、前記〔22〕に記載の医薬組成物。
〔26〕前記追加の治療薬剤が鎮痛薬である、前記〔22〕に記載の医薬組成物。
〔27〕前記追加の治療薬剤が抗感染薬である、前記〔22〕に記載の医薬組成物。
〔28〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも85%の配列同一性を有する、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔29〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔30〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔31〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLAVA(配列番号:5)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔32〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVA(配列番号:6)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔33〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔34〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列YARAAARQARA(配列番号:11)であり、前記第二のポリペプチドが、その配列がアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と実質的同一性を有する治療ドメインを含む、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔35〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも70%の配列同一性を有する、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔36〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも80%の配列同一性を有する、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔37〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも90%の配列同一性を有する、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔38〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも95%の配列同一性を有する、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔39〕前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLAVA(配列番号:8)のポリペプチドである、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔40〕前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLGVA(配列番号:9)のポリペプチドである、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔41〕前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:10)のポリペプチドである、前記〔34〕に記載の医薬組成物。
〔42〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで前記第一のポリペプチドがYARAAARQARA(配列番号:11)と機能的に等価の細胞貫通ペプチドを含み、前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔43〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列WLRRIKAWLRRIKA(配列番号:12)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔44〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列WLRRIKA(配列番号:13)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔45〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:14)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔46〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列WLRRIKAWLRRI(配列番号:15)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔47〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列FAKLAARLYR(配列番号:16)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔48〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列KAFAKLAARLYR(配列番号:17)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔49〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列HRRIKAWLKKI(配列番号:18)のポリペプチドである、前記〔42〕に記載の医薬組成物。
〔50〕前記担体が、制御放出担体、遅延放出担体、持続放出担体、及び長時間放出担体から成る群から選択される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔51〕前記医薬組成物が乾燥粉末の形態である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔52〕前記乾燥粉末が、1から5ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む、前記〔51〕に記載の医薬組成物。
〔53〕前記治療量の医薬組成物が吸入装置により投与される、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔54〕前記吸入装置がネブライザーである、前記〔53〕に記載の医薬組成物。
〔55〕前記吸入装置が計量吸入装置(MDI)である、前記〔53〕に記載の医薬組成物。
〔56〕前記吸入装置が乾燥粉末吸入装置(DPI)である、前記〔53〕に記載の医薬組成物。
〔57〕前記吸入装置が乾燥粉末ネブライザーである、前記〔53〕に記載の医薬組成物。
〔58〕対象の組織における異常な線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を特徴とする疾患、症状又は病理学的プロセスを治療する医薬の製造における医薬組成物の使用であって、ここで前記医薬組成物が、治療量のアミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)のポリペプチド又はその機能的等価物、及び医薬的に許容できるその担体を含み、前記治療量が、対象の組織における線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの沈着を低下させるために有効である、前記医薬組成物の使用。
〔59〕前記疾患又は症状が、急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔60〕前記疾患又は症状が放射線誘発線維症である、前記〔58〕に記載の使用。
〔61〕前記疾患又は症状が移植片拒絶である、前記〔58〕に記載の使用。
〔62〕前記組織が肺組織である、前記〔58〕に記載の使用。
〔63〕前記疾患又は症状が間質性肺疾患である、前記〔58〕に記載の使用。
〔64〕前記疾患又は症状が肺線維症である、前記〔58〕に記載の使用。
〔65〕前記肺線維症が特発性肺線維症である、前記〔64〕に記載の使用。
〔66〕前記肺線維症がブレオマイシンの投与により生じる、前記〔64〕に記載の使用。
〔67〕前記肺線維症が、アレルギー反応、環境性粒子の吸引、喫煙、細菌感染、ウイルス感染、対象の肺の機械的損傷、肺移植片拒絶、自己免疫疾患、遺伝性疾患、又はそれらの組合せから生じる、前記〔64〕に記載の使用。
〔68〕前記疾患又は症状がさらに組織の炎症を特徴とする、前記〔58〕に記載の使用。
〔69〕前記炎症が急性又は慢性炎症である、前記〔68〕に記載の使用。
〔70〕前記炎症が、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、及びインターロイキン-1β(IL-1β)から成る群から選択される少なくとも1つのサイトカインによって媒介される、前記〔68〕に記載の使用。
〔71〕前記組織における異常な線維芽細胞増殖及び細胞外マトリックス沈着が、正常で健康なコントロール対象の組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の活性と比較して、前記組織におけるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)の異常な活性を特徴とする、前記〔58〕に記載の使用。
〔72〕前記肺線維症が、正常で健康なコントロール対象と比較して、肺間質における細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着、前記肺における線維芽細胞増殖の異常な促進、前記肺における筋線維芽細胞分化の異常な誘発、及び筋線維芽細胞の細胞外マトリックスへの結合の異常な促進から成る群から選択される少なくとも1つの病変を特徴とする、前記〔64〕に記載の使用。
〔73〕前記医薬組成物が気管内に、非経口的に、静脈内に又は腹腔内に投与される、前記〔58〕に記載の使用。
〔74〕前記医薬組成物が気管内に投与される、前記〔58〕に記載の使用。
〔75〕前記医薬組成物が1用量として一度に投与される、前記〔58〕に記載の使用。
〔76〕前記医薬組成物がある期間にわたって複数の用量として投与される、前記〔58〕に記載の使用。
〔77〕前記期間が1日、1週間、1ヶ月、1年又はそれらの何倍かである、前記〔76〕に記載の使用。
〔78〕前記医薬組成物が少なくとも毎月1回、少なくとも毎週1回、又は少なくとも毎日1回投与される、前記〔58〕に記載の使用。
〔79〕前記医薬組成物がさらに少なくとも1つの追加の治療薬剤を含む、前記〔58〕に記載の使用。
〔80〕前記追加の治療薬剤が、精製ウシV型コラーゲン、IL-13レセプターアンタゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、内皮レセプターアンタゴニスト、二重エンドセリンレセプターアンタゴニスト、プロスタサイクリンアナローグ、抗CTGFモノクローナル抗体、エンドセリンレセプターアンタゴニスト(A-選択性)、AB0024、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)モノクローナル抗体、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)阻害剤、パーフェニドン、IFN-γ1b、3つのTGF-βアイソフォーム全てに対する汎中和IgG4ヒト抗体、TGF-β活性化阻害剤、組換えヒトペントラキシン-2-タンパク質(rhPTX-2)、二特異性IL-4/IL-13抗体、インテグリンαvβ6を標的とするヒト化モノクローナル抗体、N-アセチルシステイン、シルデナフィル、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト(エタネルセプト)、及びそれらの組合せから成る群から選択される、前記〔79〕に記載の使用。
〔81〕前記追加の治療薬剤が、プレドニゾン、ブデソニド、モメタゾンフロエート、フルチカゾンプロピオネート、フルチカゾンフロエート、及びそれらの組合せから成る群から選択されるグルココルチコイドである、前記〔79〕に記載の使用。
〔82〕前記追加の治療薬剤が、ロイコトリエン改変薬剤、抗コリン作動性気管支拡張剤、短時間作用性β2アゴニスト及び長時間作用性β2アゴニスト、並びにそれらの組合せから成る群から選択される気管支拡張剤である、前記〔79〕に記載の使用。
〔83〕前記追加の治療薬剤が鎮痛薬である、前記〔79〕に記載の使用。
〔84〕前記追加の治療薬剤が抗感染薬である、前記〔79〕に記載の使用。
〔85〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)と少なくとも85%の配列同一性を有する、前記〔58〕に記載の使用。
〔86〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列FAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:3)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔87〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列KAFAKLAARLYRKALARQLGVAA(配列番号:4)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔88〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLAVA(配列番号:5)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔89〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列YARAAARQARAKALARQLGVA(配列番号:6)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔90〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、アミノ酸配列HRRIKAWLKKIKALARQLGVAA(配列番号:7)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔91〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列YARAAARQARA(配列番号:11)であり、前記第二のポリペプチドが、その配列がアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と実質的同一性を有する治療ドメインを含む、前記〔58〕に記載の使用。
〔92〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも70%の配列同一性を有する、前記〔91〕に記載の使用。
〔93〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも80%の配列同一性を有する、前記〔91〕に記載の使用。
〔94〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも90%の配列同一性を有する、前記〔91〕に記載の使用。
〔95〕前記第二のポリペプチドが、アミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)と少なくとも95%の配列同一性を有する、前記〔91〕に記載の使用。
〔96〕前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLAVA(配列番号:8)のポリペプチドである、前記〔91〕に記載の使用。
〔97〕前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLGVA(配列番号:9)のポリペプチドである、前記〔91〕に記載の使用。
〔98〕前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:10)のポリペプチドである、前記〔91〕に記載の使用。
〔99〕前記ポリペプチドYARAAARQARAKALARQLGVAA(配列番号:1)の機能的等価物が、第二のポリペプチドと作動できるように連結された第一のポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで前記第一のポリペプチドがYARAAARQARA(配列番号:11)と機能的に等価の細胞貫通ペプチドを含み、前記第二のポリペプチドがアミノ酸配列KALARQLGVAA(配列番号:2)である、前記〔58〕に記載の使用。
〔100〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列WLRRIKAWLRRIKA(配列番号:12)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔101〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列WLRRIKA(配列番号:13)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔102〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:14)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔103〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列WLRRIKAWLRRI(配列番号:15)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔104〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列FAKLAARLYR(配列番号:16)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔105〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列KAFAKLAARLYR(配列番号:17)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔106〕前記第一のポリペプチドがアミノ酸配列HRRIKAWLKKI(配列番号:18)のポリペプチドである、前記〔99〕に記載の使用。
〔107〕前記担体が、制御放出担体、遅延放出担体、持続放出担体、及び長時間放出担体から成る群から選択される、前記〔58〕に記載の使用。
〔108〕前記医薬組成物が乾燥粉末の形態である、前記〔58〕に記載の使用。
〔109〕前記乾燥粉末が、1から5ミクロンの空気力学的質量中央径(MMAD)を有する微粒子を含む、前記〔108〕に記載の使用。
〔110〕前記治療量の医薬組成物が吸入装置により投与される、前記〔58〕に記載の使用。
〔111〕前記吸入装置がネブライザーである、前記〔110〕に記載の使用。
〔112〕前記吸入装置が計量吸入装置(MDI)である、前記〔110〕に記載の使用。
〔113〕前記吸入装置が乾燥粉末吸入装置(DPI)である、前記〔110〕に記載の使用。
〔114〕前記吸入装置が乾燥粉末ネブライザーである、前記〔110〕に記載の使用。