特許第6031512号(P6031512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031512
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】歯科インプラントにおける骨増強
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-517834(P2014-517834)
(86)(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公表番号】特表2014-520582(P2014-520582A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012063311
(87)【国際公開番号】WO2013007657
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】102011051713.8
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513321939
【氏名又は名称】ベルンド ギーゼンハゲン
【氏名又は名称原語表記】GIESENHAGEN,Bernd
(73)【特許権者】
【識別番号】513321940
【氏名又は名称】オルカン ユクセル
【氏名又は名称原語表記】YUEKSEL,Orcan
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ベルンド ギーゼンハゲン
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102009028824(DE,A1)
【文献】 特開昭59−139249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種または異種間骨インプラント(102;502)であって、
a)インプラントをその中に埋入することが可能な孔(106)を有し、
b)前記骨インプラントは増強のために顎骨(104)に挿入可能に形成され、
c)前記インプラントの外形が前記孔の内径より大きく、
d)前記骨インプラント(102;502)は、前記インプラントを前記孔(106)に埋入することによって拡張可能に設計されることを特徴とする、同種または異種間骨インプラント(102;502)。
【請求項2】
少なくとも1つの拡張接合部(402;504)を有し、
前記拡張接合部(402;504)は、前記インプラントを前記孔(106)に埋入することによって前記骨インプラント(102;502)が拡張できるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の骨インプラント(102;502)。
【請求項3】
前記拡張接合部(402)は、前記インプラントが埋入される方向に沿って前記骨インプラント(102)の1領域を完全に分離するものであることを特徴とする、請求項2に記載の骨インプラント(102)。
【請求項4】
4つの拡張接合部(504)を有し、
前記4つの拡張接合部(504)は、前記骨インプラント(502)の全体の長さに沿って伸長せず、前記拡張接合部(504)は、前記インプラントを埋入するための開口と対向する一端を始点とすることを特徴とする、請求項2に記載の骨インプラント(502)。
【請求項5】
前記孔(106)は前記インプラントが埋入される方向に先細くなる領域(802)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の骨インプラント(502)。
【請求項6】
少なくとも1つの拡張接合部(504)は前記インプラントを埋入するための前記開口に対向する一端から、少なくとも部分的に前記先細り領域(802)において始まるように形成されることを特徴とする、請求項5に記載の骨インプラント(502)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の複数の同種骨インプラントまたは異種間骨インプラント(102;502)のセットであって、
前記骨インプラント(102;502)のうちの少なくとも第1の骨インプラントの幾何学的形状が、前記骨インプラント(102;502)のうちの少なくとも第2の骨インプラントの幾何学的形状と異なることを特徴とする、複数の同種骨インプラントまたは異種間骨インプラント(102;502)のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はインプラントの分野で使用される。インプラントは、インプラントまたは歯科インプラントの埋入に関係する歯科学の部門である。インプラントは、顎骨に埋入される異物として理解される。歯科インプラントは、歯代替物の支持体として使用可能であることによって、人口歯根の機能を担う。これは概して、人工歯根を顎骨にねじ込むことまたは埋入することを伴う。3〜6か月以内に、それら人工歯根は周りの骨と結合し、荷重に耐え得る堅固な支持体ユニットを形成する。
【0003】
しかしながら、インプラントを埋入する際の必須条件は、顎骨が完全な状態であるか、少なくとも十分に残存していることである。重大な事故後は、この条件は当てはまらない場合がある。そのような場合、インプラントを埋入前に、顎骨が再形成されなければならない(このことを増強という)。この目的のために骨材料が移植される。骨インプラントによって顎骨は局所的に復元されるため、その後、顎骨における骨インプラントにインプラントを固定することができる。
【0004】
したがって、近年、かなり損傷した顎骨の場合の歯代替物処置のために従うべき手順は次に示すとおりである。
【0005】
インプラントを受けるための骨の環(より正確には骨の中空柱体)の形の骨インプラントが準備される。顎骨において骨の環を受けるために、顎骨に円筒状で適切なサイズに穴をあける。骨の環はその穴をあけられた場所に挿入される。
【0006】
マルチパート歯科インプラントが最も広く使用されている。マルチパートインプラントは、骨に固着する本体と、口の粘膜の領域にある首部分と、上部構造(例えば、歯代替物としての歯冠)を受ける頭部分とから成る。これら3つの部分は概して互いに螺合される。
【0007】
インプラントの本体は、その後、首部分と共に、骨の環にねじ込まれる。インプラントの本体がねじ込まれる時に、骨の環がインプラントの本体と共に回らないように、骨の環は保持器具によって短時間保持される。
【0008】
骨の環における穴をあけられた場所は、ねじ込まれるべきインプラントの本体よりわずかに小さい直径を有する。これにより、骨の環においてインプラントの本体の高い一次安定性が生じる。
【0009】
その後、歯肉の外傷は縫合される。
【0010】
10日後、歯肉の外傷は多くの場合完全に治癒する。骨質によって、この後は荷重無しで結合の段階に入る。この段階には、下顎で平均2〜3か月を要し、上顎で平均5〜6ヶ月を要するが、この理由は、下顎と上顎とでは骨密度が異なるからである。この移行期間においては、一時的な歯代替物が使用される。
【0011】
マルチパートインプラントの場合、結合の段階後、インプラント本体のねじ山が再び露出し、インプラントの首部分および頭部分がねじ込まれて、上部構造がもたらされかつ適合する。
【0012】
次のタイプのインプラントの間には差異がある:
(1)自己または自家移植:ドナーおよび受容者は同一人物であり、この場合の移植は自家移植術として知られている。
(2)同系または同系内移植:ドナーは一卵性双生児の1人、すなわち、ドナーおよび受容者は遺伝学的に同一である。
(3)同種移植:ドナーは異なる個体であるが、同一種に属し、当該移植は同種異系移植として知られている。
(4)異種間移植:ドナーは異種(例えば、牛骨)であり、当該移植は異種移植として知られている。
【0013】
顎骨の増強のために、患者自体から、例えば、顎骨の異なる場所から骨の環を調達することは、現在までは通例であった。このような手順は、例えば、Khouryの文献(International Journal of Oral & Maxillofacial Implants、1999 Jul-Aug;14(4):557-64)に記載されている。これにより患者にはさらなる外傷が生じる。
【非特許文献1】Khoury F.: "Augmentation of the sinus floor with mandibular bone block and simultaneous implantation: a 6-year clinical investigation." in Int. J. Oral Maxillofac. Implants 1999 Jul-Aug; 14 (4) :557-64
【0014】
これを回避するために、場合によっては、増強に異種の骨を使用することもある。異種の骨を得るための基礎として、例えば、人工関節(同種異系インプラント)の内移植中に抽出される骨構造が適している。このような同種異系インプラントの使用は、Novellらの文献(Implant Dent、2012 Apr;21(2):129-35)に記載されている。しかしながら、例えば、Aldredge & Nejatの文献(Compendium of Continuing Education in Dentistry、2011 May;32(4):66-71)によって報告されるように、出発物質(異種インプラント)として獣骨も考慮に入れる。
【非特許文献2】Novell J., Novell-Costa F., Ivorra C, Farinas 0., Munilla A., Martinez C: "Five-year results of implants inserted into freeze-dried block allografts." in Implant. Dent. 2012 Apr; 21 (2) : 129-35
【非特許文献3】Aldredge W. A., Nejat R. : "Delayed implant procedure using de-proteinized bovine bone mineral: A report of 109 consecutive cases." in Compend. Contin. Educ. Dent. 2011 May; 32(4): 66-71
【0015】
骨インプラントの内移植中の受容者からの拒絶反応を回避するために、骨構造に含まれるタンパク質をできる限り抽出する。骨にはコラーゲンがいくらか残るだけであるため、所望の弾性が維持されることになる。その他の場合の残存物は鉱物マトリックスである(例えば、Gapskiらの文献:The International Journal of Periodontics and Restorative Dentistry、2006 Feb;26(1):59-69を参照)。
【非特許文献4】Gapski R., Neiva R., Oh T. J., Wang H. L.: "Histologic analyses of human mineralized bone grafting material in sinus elevation procedures: a case series." in Int. J. Periodontics Restorative Dent. 2006 Feb; 26(l):59-69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明によって対処される課題は、インプラントにおける顎骨形成の可能性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、独立請求項の特徴と共に本発明によって解決される。本発明の有利な展開は従属請求項に特徴付けられる。請求項すべてにおける表現は参照によりここで本明細書に取り込まれる。本発明はまた、有意義かつ詳細に、述べられるすべての独立請求項および/または従属請求項の組み合わせをすべて含む。
【0018】
この課題を解決するために、その中にインプラントを埋入可能な孔を有する同種または異種間骨インプラントが提案される。増強のために顎骨に挿入できるような骨インプラントが形成される。この場合、インプラントを孔に差し込むことによって拡張可能であるように、骨インプラントを設計する。
【0019】
例えば、孔の軸に対して、中空円筒形状、円錐台形状または回転対称であるように、骨インプラントを形成することができる。孔の軸はインプラントを差し込む際の軸である。孔は骨インプラントを貫通することができるが、必ずしもそうである必要はない。
【0020】
商業上、このような骨インプラントを事前に作製し、提供可能である。これにより、治療を行う医者が、手術中に、患者の骨、または同種異系インプラントもしくは異種インプラントから骨の環を得なれければならないか、そういった骨の環を成形しなければならないといった事前の骨増強の不利が回避される。このような場合、医者はかなりの時間的制約下に置かれることが多かった。さらに、これらの条件下では、ここで提案されるようなより複雑な形状は苦労してやっと実現することが可能であった。ここで本発明が必要になってくる。
【0021】
骨インプラントが少なくとも1つの拡張接合部を有する場合、骨インプラントと切除された顎骨との間のより迅速かつ良好な連結が達成される。この場合、インプラントを孔に埋入することによって骨インプラントを拡張させることができるように、拡張接合部が配置される。
【0022】
拡張接合部は、接合することによって骨インプラントが拡張できるよう、形成されなければならない。したがって、インプラントが外部から孔に至るまで差し込まれ、骨インプラントの少なくとも一端の方へ開く方向に対して、拡張接合部は横方向に伸長することになる。拡張接合部は一般に、孔の少なくとも一部に沿って、インプラントが差し込まれる方向(縦軸)と概して平行に、伸長することになる。
【0023】
拡張接合部は、骨インプラントを、その縦軸に完全にまたは部分的に沿って、1点で分離することができる。
【0024】
最初に述べた場合において、外径が孔の内径よりわずかに大きいインプラントのねじ込みには、骨インプラントを拡張させるという効果がある。したがって、骨インプラントは周囲の顎骨により良好に結合する。
【0025】
この場合の拡張接合部は1点だけで形成され、骨インプラントは一片のままとされる。
【0026】
さらなる展開では、4つの拡張接合部を形成することができ、それらは骨インプラントの全長に沿って伸長せず、拡張接合部は、インプラントを差し込むための開口と対向する一端を始点とする。
【0027】
インプラントが差し込まれる方向に先細くなる領域を孔が有する場合、骨インプラントと顎骨との間の結合のさらなる向上が達成される。多くの場合そうであるが、孔が円形の断面を有して円柱状に形成される場合、この例では、インプラントが差し込まれる方向に断面積は先細くなる。そして、実質的に円柱状のインプラントの埋入によって、骨インプラントは拡張し、顎骨の被粉砕領域の壁に対して骨インプラントが押し付けられる。
【0028】
この展開において、少なくとも部分的に先細り領域が始まるように、少なくとも1つの拡張接合部はインプラントを埋入するための開口に対向する一端から形成可能である。これはストラドリングダウエル(straddling dowel)のように作用する骨インプラントをもたらすが、この理由は、実質的に円柱形のインプラントを埋入することによって骨インプラントが効果的に押し広げられるからである。
【0029】
説明した骨インプラントは顎骨の増強に使用される。
【0030】
本課題はまた、複数の同種骨インプラントまたは異種間骨インプラントのセットよっても解決される。骨インプラントはそれぞれ、インプラントを埋入できる孔を有する。それら骨インプラントは、増強のために顎骨に挿入できるように形成される。骨インプラントのうちの少なくとも第1の骨インプラントの幾何学的形状は、骨インプラントのうちの少なくとも第2の骨インプラントの幾何学的形状と異なる。
【0031】
骨インプラントが中空柱体の形を有する場合、セットは種々の中空柱体を含むことができ、この場合、中空柱体を示すための3つの典型的なパラメータは変化する。これらのパラメータは、中空柱体の長さ、孔の内径および中空柱体の外径である。例えば、さまざまな長さの中空柱体またはさまざまな外径の中空柱体が提供可能である。
【0032】
このように、治療を行う医者には、一般に必要とされるサイズの骨インプラント、特に骨の環が、任意でより複雑な形状を有するものも含め、手術用にあらかじめ用意された上で提供される。治療を行う医者にとって、仕事量を低減させ、手術の手順を速める。
【0033】
あらかじめ作られた骨インプラントのこのようなセットによって、治療を行う医者には、特に、上述された、顎骨における向上した結合と共に特殊な形態の骨インプラントを提供することもできる。そして、医者は、必要とされるサイズの骨インプラントだけでなく、手術中に医者自身では作り出すことができないであろう、特に有利な形状の骨インプラントも確保できる。
【0034】
概して、骨インプラントのうちの少なくとも第1の骨インプラントの幾何学的形状が骨インプラントのうちの少なくとも第2の骨インプラントの幾何学的形状の大きさを表す場合、すなわち、セットにさまざまなサイズの骨インプラントが含まれる場合は注目に値する。この場合の大きさは比例するサイズ変更に言及する。
【0035】
種々の骨インプラントのセットが顎骨の増強に使用される。
【0036】
本発明の目的はまた、顎骨を増強するための方法によって達成される。以下では、この方法の個々のステップをより詳細に説明する。当該ステップを、必ずしも本文に示される順序で行う必要はない。また、明確に記述されていないさらなるステップを本方法の一部とすることができる。顎骨を増強するための方法は以下のステップを含む。
【0037】
上述した同種または異種間骨インプラントを提供する。骨インプラントを顎骨に挿入するのに適したサイズの円筒形の凹所を前記顎骨に穴をあけて作る。その後、顎骨においてあけられた凹所に骨インプラントを挿入する。歯科インプラントが骨インプラントの孔に差し込まれ、それによって骨インプラントを拡張する。そうすることで、骨インプラントは周囲の顎骨により良好に結合する。
【0038】
従属請求項と併せて好ましい例示的な実施形態の以下の説明から、さらなる詳細および特徴が明らかになる。それぞれの特徴を、それぞれ自体でまたはそれらを組み合わせることによって、ここで実現することができる。課題を解決する可能性は例示的な実施形態に制限されない。
【0039】
例示的な実施形態は、図に概略的に表されている。それに関して、個々の図における同一の参照符号は、同一もしくは機能的に同一である、または、それらの機能に対して互いに対応する要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】骨インプラントの縦断面図である。
図2】透視画法における第1の骨インプラントを示す図である。
図3】第1の骨インプラントのA−AおよびB−Bにおける断面図である。
図4】第2の骨インプラントのA−AおよびB−Bにおける断面図である。
図5】第3の骨インプラントを示す図である。
図6】第3の骨インプラントのA−Aにおける断面図である。
図7】第3の骨インプラントのB−Bにおける断面図である。
図8】第3の骨インプラントの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は中空円筒形状の骨インプラント102の縦断面図を示す。骨インプラント102は顎骨104に差し込まれている。孔106は、骨インプラント102の中央で、その縦軸に沿って伸長し、インプラントを受ける目的を担う。
【0042】
図1に表されるタイプのインプラント102を、複数の骨インプラント102のセットの一部としてよい。顎骨104の損傷場所の増強にそれぞれ適した骨インプラント102を与えるために、セットに含まれる骨インプラント102の高さ108および/または外径110は変化する。特に、当該セットは、さまざまな外径110を有する骨インプラント102を含むことができる。これにより、さまざまな程度の損傷場所を増強することができる。損傷場所の深さに適応させるために、セットに含まれる骨インプラント102の高さ108も変えることができる。
【0043】
図1に表されている縦断面図を有する第1の中空円筒形状の骨インプラント102が図2に示されている。
【0044】
第1の骨インプラント102のA−AおよびB−B(図1を参照)における断面図が図3に表されている。ここで骨インプラント102の固形の壁を見ることができる。これによって、インプラントが埋入される時に第1の骨インプラント102を拡張させることができない。このような場合、骨インプラント102の外径は変わらない。したがって、骨インプラント102と顎骨104とが1つになった時にだけ、骨インプラント102と顎骨104との間の十分な耐荷重連結が生じる。
【0045】
第2の骨インプラント102のA−AおよびB−B(図1を参照)における断面図が図4に表されている。この場合の縦断面図は、第1の骨インプラント102の縦断面図と同様である。したがって、図1の縦断面の描写は第2の骨インプラント102にも適用される。
【0046】
第1の骨インプラント102との差異として、第2の骨インプラント102は拡張接合部402を有する。これは、骨インプラント102の全体の高さ108にわたって縦軸に沿って伸長する。したがって、拡張接合部402の長さは骨インプラント102の高さ108に対応する。拡張接合部402は、例示として選択されたA−AおよびB−Bにおける断面図においてだけでなく、第2の骨インプラント102の断面図全てにおいて、対応して提示される。
【0047】
拡張接合部402は、縦軸に対して直交して、または、図4の描写の平面図内で、孔106から顎骨104まで伸長する。
【0048】
外科医がインプラントを孔106に差し込む際に、拡張接合部402は骨インプラント102を拡張させることができる。こうして拡張されると、骨インプラント102の外径110が大きくなる。同様に、拡張接合部402の幅が大きくなる。これは、拡張接合部402を形成する骨インプラント102の側面が離れていくことによって生じる。
【0049】
その拡張によって、骨インプラント102が顎骨104に対して押し付けられるといった効果がもたらされる。この結果、骨インプラント102と顎骨104との間の摩擦連結が形成される。これによって、顎骨104における骨インプラント102の固定化が向上し、その結果、結合時間、すなわち、骨インプラント102が確実に荷重に耐えるようになるまでの時間を短縮する。
【0050】
図5図7に表されている第3の骨インプラント502は4つの拡張接合部504を有する。しかしながら、これらは、例えば、第2の骨インプラント102の場合(骨インプラント102はその後4片になる)のように、骨インプラント102の全体の高さ108にわたって伸長しない。むしろ、拡張接合部504の長さは骨インプラント502の高さより短い。
【0051】
図6および図7はこれを図示している。A−Aにおける断面において、その縦断面が図8に示されているが、この場合の骨インプラント502は堅固である。それ故に、A−Aにおける断面の高さには拡張接合部は存在しない。
【0052】
一方で、図7において見ることができるように、2つの拡張接合部504はB−Bにおける断面を通って伸長する(図8を参照)。拡張接合部504はA−Aにおける断面とB−Bにおける断面との間に位置する領域内で終止する(図8を参照)。その結果、拡張接合部504はまた、この領域より下の骨インプラント502の全ての断面を通って伸長する。それに応じて、この領域より上の骨インプラント502の断面において拡張接合部は存在しない。
【0053】
短くした拡張接合部504によって、骨インプラント502の上部は拡張不可能である。その結果、インプラントの直径は、骨インプラント102の上部において孔106の直径によって制限される。それにもかかわらず、骨インプラント102を下部において拡張させることができるように、孔106は、図8に表されるように、先細り領域802を有する。この領域802では、孔106の直径は(図8の描写に関連して)上から下へと低減する。そして、ねじ込まれたインプラントによって、骨インプラント502の下領域はストラドリングダウエル(開脚型ダウエル)のように拡張する。
【符号の説明】
【0054】
102 骨インプラント
104 顎骨
106 孔
108 高さ
110 外径
502 骨インプラント
504 拡張接合部
802 先細り領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8