特許第6031672号(P6031672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6031672車載用電源装置およびこれを用いた車載電源ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031672
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車載用電源装置およびこれを用いた車載電源ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20161114BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20161114BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
   H02J7/00 T
   H01M2/10 S
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-102216(P2012-102216)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-232995(P2013-232995A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】河野 仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 政富美
(72)【発明者】
【氏名】高松 和義
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山之内 辰一
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−237501(JP,A)
【文献】 特開2003−037933(JP,A)
【文献】 特開2011−056971(JP,A)
【文献】 特開2001−231254(JP,A)
【文献】 特開平11−285258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00− 3/44
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極側入力端子と、
前記正電極側入力端子へ第1のスイッチ素子を介して接続させた出力端子と、
負電極側入力端子と、
正電極側入力部へ前記正電極側入力端子が接続されるとともに、
負電極側入力部へ第2のスイッチ素子を介して前記負電極側入力端子が接続され、
かつ、出力部が前記出力端子へ接続される電圧変換部とを備え、
前記第1のスイッチ素子の制御端子は前記負電極側入力端子へ接続されるとともに、
前記第2のスイッチ素子の制御端子は、前記正電極側入力端子へ第1のダイオードを介して接続されるとともに前記出力端子へ第3のスイッチ素子と第2のダイオードを介して接続され、
前記正電極側入力端子へ負電位および前記負電極側入力端子へ正電位が印加された際に、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子をそれぞれオフ状態とさせる車載用電源装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチ素子はPチャンネルFETとするとともに、前記第2のスイッチ素子はNチャンネルFETとした、請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項3】
前記第3のスイッチ素子は暗電流防止スイッチとした、請求項2に記載の車載用電源装置。
【請求項4】
前記暗電流防止スイッチは、この電源装置を搭載した車両の動作状態で接続し、あるいは前記車両の非動作状態で非接続となるように同期させた、請求項3に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチ素子のドレイン・ソース間にバイパスダイオードを接続した、請求項2に記載の車載用電源装置。
【請求項6】
アイドリングストップ対応用電源として用いた、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の車載用電源装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の車載用電源装置と、
前記車載用電源装置から電力が供給される電子機器とを一体化させた、車載電源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種車両に使用される車載用電源装置およびこれを用いた車載電源ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の車載用電源装置について図面を用いて説明する。図3は従来の、アイドリングストップ機能を有した車両における車載用電源装置の構成を示す回路図であり、蓄電池1は蓄電池1の正極側を接続する正電極側端子1aと負極側を接続する負電極側端子1bとに接続されており、正電極側端子1aと負電極側端子1bとに対しては電圧変換部2と負荷3とが並列に接続されている。
【0003】
この回路図に示すように、通常の蓄電池1に対する電源装置の接続状態においては、正電極側端子1aと負荷3との間にはリレー4が配置されており、車両におけるエンジンの動作中あるいは非動作中にかかわらず、リレー4は接続状態となっており、蓄電池1から負荷3へと電力が供給される状態となっている。
【0004】
ここで、車両がアイドリングストップ状態からエンジンの再始動を行う際には、リレー4を開放状態とし、負荷3へ印加する電圧を維持するために蓄電池1から電圧変換部2へ印加した電圧を電圧変換部2で昇圧して必要な所望の電圧としたうえで電圧変換部2から負荷3へと電力が供給されるものであった。
【0005】
上記の通常動作に対し、蓄電池1が誤ってその負極側を正電極側端子1aへ、正極側を負電極側端子1bへ接続された場合、主として電圧変換部2や電解コンデンサ5やリレー制御部6あるいはスイッチ制御部7を保護するために逆接防止FET8をオフ状態とし、蓄電池1と電圧変換部2や電解コンデンサ5やリレー制御部6あるいはスイッチ制御部7とを電気的に切り離したうえで、蓄電池1から供給される電流を負荷3に設けた逆接続保護ダイオード9を通じ、車両が完全な動作停止状態では接続状態のリレー4を通じてヒューズ10へと流し、ここでヒューズ10が溶断されることによって回路全体が保護されるものであった。
【0006】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−315306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら従来の車載用電源装置では、一旦蓄電池1を逆極性で接続するとヒューズ10が溶断されるために、回路全体の保護は可能であるもののヒューズ10の交換を行わなければ蓄電池1を正しい極性へと接続をやり直したとしても回路は作動しないこととなる。すなわち、ヒューズ10の交換を行わなければ電源装置のみならず車両自体が始動しなくなってしまうものであった。
【0009】
そこで本発明は、蓄電池を逆接続しても回路が保護された状態とするとともに、それに伴う補修を不要とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために、正電極側入力端子と、この正電極側入力端子へ第1のスイッチ素子を介して接続させた出力端子と、負電極側入力端子と、正電極側入力部へ前記正電極側入力端子が接続されるとともに、負電極側入力部へ第2のスイッチ素子を介して前記負電極側入力端子が接続され、かつ、出力部が前記出力端子へ接続される電圧変換部とを備え、前記第1のスイッチ素子の制御端子は前記負電極側入力端子へ接続されるとともに、前記第2のスイッチ素子の制御端子は、前記正電極側入力端子へ第1のダイオードを介して接続されるとともに前記出力端子へ第3のスイッチ素子と第2のダイオードを介して接続され、前記正電極側入力端子へ負電位および前記負電極側入力端子へ正電位が印加された際に、前記第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子をそれぞれオフ状態とさせることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓄電池を逆接続しても電源回路が保護された状態とするとともに、それに伴う補修を不要とすることができ、接続を修正することにより直ちに車両を始動可能な状態とすることができるものである。また、蓄電池が正しく接続されているときには、蓄電池の消耗を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の車載用電源装置の回路図
図2】本発明の車載電源ユニットのブロック図
図3】従来の車載用電源装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態における車載用電源装置の構成を示す回路図であり、アイドリングストップ適用車両に用いた場合の各要素の接続および動作について説明を行う。
【0015】
まず蓄電池11を適正な極性で接続した場合について説明する。蓄電池11の正極側は電源装置12の正電極側入力端子13に接続され、この正電極側入力端子13は第1のスイッチ素子14を介して電源装置12の出力端子15へ接続されている。また、蓄電池11の負極側は電源装置12の負電極側入力端子16に接続されている。そして、電圧変換部17の正電極側入力部18には正電極側入力端子13が接続され、電圧変換部17の負電極側入力部19には第2のスイッチ素子20を介して負電極側入力端子16が接続され、電圧変換部17の出力部21が出力端子15に接続されている。
【0016】
ここで、スイッチ素子の接続はそれぞれ、第1のスイッチ素子14の制御端子14Gは負電極側入力端子16に抵抗R14を介して接続されており、第2のスイッチ素子20の制御端子20Gは第1のダイオード22を介して正電極側入力端子13に接続されるとともに、第3のスイッチ23と第2のダイオード24とを介して出力端子15へ接続されている。
【0017】
次に、この電源装置12の動作を説明する。この電源装置12を搭載する車両(図示せず)のエンジン(図示せず)の動作状態あるいは非動作状態にかかわらず第1のスイッチ14はオン状態とさせられ、ここでは図として省略しているがアクセサリー入力が行われた際には常に蓄電池11と負荷25とは第1のスイッチ素子14を介して接続された状態とされる。このとき、第1のスイッチ素子14にはPチャンネルFETを適用し、制御端子14Gには蓄電池11の負電極が接続されるとともに、そのソース側端子14Sに蓄電池11の正電極が電圧変換部17を通じて供給されることとなるため、第1のスイッチ素子14は常に順バイアスでオン状態とされている。
【0018】
ここで、一旦車両(図示せず)がアイドリングストップ状態となり、次にアイドリング再開(エンジンの再始動)を行う際には先ず、車両(図示せず)がエンジン始動を指示する信号を発信すると第2の制御回路27からモード切り替スイッチ28がオンされるように指示が行われることとなる。これにより制御端子14Gとソース側端子14Sとを同電位とさせ、第1のスイッチ素子14は順バイアスでない状態とされて第1のスイッチ素子14がオフ状態となる。次に、第1の制御回路26から電圧変換部17に対して昇圧動作の指示や制御が行われて昇圧が行われる。
【0019】
さらにその後にエンジン始動が行われるが、この時には蓄電池11から供給される電圧を補償するための電圧が上記の電圧変換部17からの昇圧電圧によって供給されていることとなる。
【0020】
そして、第1の制御回路26はエンジンの再始動が完了したことを確認した後に、電圧変換部17での昇圧動作を停止させ、さらに第2の制御回路27からモード切り替スイッチ28へモード切り替スイッチ28をオフするように指示が行われる。この時点で第1のスイッチ素子14がオン状態となり、蓄電池11から出力端子15へと第1のスイッチ素子14を通じて電圧が供給されることとなる。つまり、第1のスイッチ素子14がオフ状態の短時間において、昇圧された電圧が電圧変換部17から出力端子15へ供給されることとなる。
【0021】
上記のように、電源装置12が電圧変換部17によって昇圧および昇圧電圧の供給を行う動作は、アイドリングストップ状態から再始動へと移行する際には車両(図示せず)の電装品などにあたる負荷25に電力を供給しつつエンジンの始動を行う必要があることに伴ってエンジン始動時には一時的に低下する恐れのある蓄電池11から負荷25へ供給する電圧を補償するためのものである。これは、蓄電池11から負荷25へ供給する電圧が限度(下限)を超えて低下してしまった場合は、たとえば走行系の制御装置(図示せず)やナビゲーションシステム(図示せず)や音響システム(図示せず)などが一時停止する、あるいはリセット状態となることが生じる恐れがあるため、これらの障害を防止することとなるものである。
【0022】
ここでは図示していないが、出力端子15における出力電圧であるところの電圧変換部17によって昇圧された電圧は、その昇圧時にはモニターされており、出力端子15における規定の出力電圧が得られるように出力端子15から第1の制御回路26へフィードバックが行われるとともに、第1の制御回路26が電圧変換部17の昇圧動作の状態を制御している。
【0023】
またここで、第2のスイッチ素子20にはNチャンネルFETを適用し、先にも述べたように第2のスイッチ素子20の制御端子20Gは、制御端子20G側をカソード側として接続した第1のダイオード22を介して正電位の正電極側入力端子13に接続され、そしてそのソース端子20Sは電圧変換部17の負電極側入力部19から電位が供給されない接続となっている。つまり、ソース端子20Sは制御端子20Gに比較して常に低い電位となっている。よって、蓄電池11が適正な極性で接続されている場合、第2のスイッチ素子20は常に順バイアス方向の動作でオン状態となり、常に電圧変換部17は第1の制御回路26の指示に応じての昇圧動作が可能な状態となっている。
【0024】
また同時に、第2のスイッチ素子20にはソース端子20Sをアノード側、ドレイン端子20Dをカソード側とした寄生ダイオード(図示せず)が存在し、この寄生ダイオード(図示せず)はソース端子20Sが接続された負電極側入力部19から順方向電圧が加えられることとなるため、第2のスイッチ素子20はソース端子20Sとドレイン端子20Dとの間で常に導通状態となる。従って、電圧変換部17は第1の制御回路26の指示に応じての昇圧の動作が可能な状態ともなっている。
【0025】
さらに、第2のスイッチ素子20の制御端子20Gには、制御端子20G側をカソード側として接続した第2のダイオード24と第3のスイッチ素子23とが直列に、出力端子15へと接続されている。この第3のスイッチ素子23は主に暗電流の防止を行う機能を有するものであり、この車載用電源装置を搭載した車両(図示せず)の非動作状態で第3のスイッチ素子23はオフ状態となり、車両(図示せず)が動作状態となるとオン状態となるものであり、これは第3の制御回路29によって制御されている。ここでの動作状態とはイグニションキー(図示せず)により一旦エンジンの始動を行った後に、イグニションキー(図示せず)によりエンジンの停止を行うまでの状態を指し、この始動から停止までの間に存在することとなるアイドリングストップ状態を含めたうえで、動作状態としている。
【0026】
この暗電流の防止は、第3のスイッチ素子23と第2のダイオード24との間の接続点と接地(図示せず)との間に、ここでは図示していないものの電流を消費する回路が接続されており、この回路(図示せず)に車両(図示せず)の非動作状態における通電の防止、すなわち蓄電池11の消耗を抑制するためのものである。そして、車両(図示せず)の動作状態では第3のスイッチ素子23は常にオン状態とさせているため、エンジン(図示せず)がアイドリングストップ状態から再始動へと移行する際には出力端子15からの電圧を第2のスイッチ素子20の制御端子20Gに対して常に供給が可能な状態としており、エンジン始動時においても安定して第2のスイッチ素子20を制御することを可能としている。
【0027】
またここでは、第1のスイッチ素子14および第2のスイッチ素子20は蓄電池11を適正な極性として接続させた場合、電圧変換部17や負荷25への電力供給や或いは一時的な電力供給の遮断を行うこととして機能させているが、アイドリングストップ機能を動作させない際、つまり電圧変換部17を動作させない際には、ここまでで述べたように蓄電池11と負荷25とは常に接続状態であることが求められる。これに対しては、バイパスダイオード14aを第1のスイッチ素子14のドレイン側端子14Dとソース側端子14Sとの間に付加することが望ましい。バイパスダイオード14aの方向としては、ドレイン側端子14Dにバイパスダイオード14aのアノード側を、ソース側端子14Sにバイパスダイオード14aのカソード側をそれぞれ接続すればよい。
【0028】
これは、第2の制御回路27やモード切り替スイッチ28あるいは第1のスイッチ素子14が何らかの理由により動作異常を生じた際にも、常に負荷25への電力供給を途絶えさせないためのものであり、仮に負荷25が走行のために用いるものや或いは制動のために用いるものであっても、車両(図示せず)の走行や停止などの動作においての制御不能状態へ陥ることを防止するものである。
【0029】
また、バイパスダイオード14aは先に述べたように、非常時において動作すればよいものであり、通常状態で第1のスイッチ素子14が動作している場合には第1のスイッチ素子14のドレイン側端子14Dとソース側端子14Sとの間の電気抵抗は非常に小さな値であるため、バイパスダイオード14aへの通電はほとんど無く、電力損失もまた存在しない。
【0030】
ここで、第1のスイッチ素子14としてFETを適用する場合には、その寄生ダイオードをバイパスダイオード14aとして用いても構わないが、第1のスイッチ素子14に対するフェイルセーフ機能となるように、バイパスダイオード14aを個別に設けることが望ましい。
【0031】
ここまでの説明では、第1のダイオード22と第2のダイオード24を蓄電池11の電圧が変動(低下)した際への補償対応として設けているが、第1のダイオード22と第2のダイオード24および第3のスイッチ素子23を取り除いても構わない。つまり、このときは第2のスイッチ素子20の制御端子20Gを電圧変換部17の正電極側入力部18と正電極側入力端子13とへ直接に接続することとなり、部品点数を削減しても車載用電源装置としての機能を果たすことができる。
【0032】
また、第1のダイオード22と第2のダイオード24を設けた場合、先に述べたように蓄電池11の電圧が変動(低下)した際への補償対応として機能させている。そしてここでは、第2のダイオード24のアノード側を電圧変換部17の出力部21へ接続させている。これにより、仮に蓄電池11の電圧が低下した場合であっても、第1の制御回路26を通じて電圧変換部17を動作させることで、第2のスイッチ素子20の制御端子20Gへ第2のスイッチ素子20の動作が可能な電圧を供給させることができるようにするものである。また、第1のダイオード22は電圧変換部17の出力部21からの供給された電圧が正電極側入力部18や正電極側入力端子13へと流入することを防止するものである。
【0033】
次に、蓄電池11を逆方向の極性で接続した場合について説明する。このとき、蓄電池11の負極側は電源装置12の正電極側入力端子13に接続され、蓄電池11の正極側は電源装置12の負電極側入力端子16に接続されていることとなる。これは、蓄電池11の交換などの際に誤った接続を行った場合に生じるケースであり、車両(図示せず)の状態としてはイグニションキー(図示せず)での始動がなされることもなく、当然ながら非動作状態でエンジンも停止した状態である。
【0034】
ここでまず、第1のスイッチ素子14の制御端子14Gには負電極側入力端子16を通じて正電位が供給され、同時に負荷25もしくはこれに並列接続の整流素子30あるいは並列接続として負荷25に包含された整流素子30を通じて第1のスイッチ素子14のソース側端子14Sにも同等の正電位が供給されることとなる。ここでは、第1のスイッチ素子14にはPチャンネルFETを用いているため逆バイアス状態とすることで第1のスイッチ素子14はオフ状態となるが、この電源装置12では制御端子14Gへ供給する正電位とソース側端子14Sへ供給する正電位がほぼ同等となるため順バイアスでのオン状態とはならずに、逆バイアスと同等のオフ状態となる。またこの時点では、モード切り替スイッチ28は第2の制御回路27からの指示を受ける状態とはなっていないため、デフォルト状態であるオフ状態で何ら機能を有さないこととなる。
【0035】
また、第2のスイッチ素子20の制御端子20Gには、第1のダイオード22が存在するために負電位が接続された正電極側入力端子13からは電圧の供給はない。あるいは、仮に第1のダイオードが存在せずに制御端子20Gが直接に正電極側入力端子13に接続されていても、制御端子20Gには負電圧が供給されるので第2のスイッチ素子20は逆バイアスでオフ状態となる。また、蓄電池11の正電位側が接続された負電極側入力端子16から負荷25および出力端子15を介しての正電位は、蓄電池11の交換時等では車両(図示せず)は非動作状態に該当し第3のスイッチ素子23は暗電流防止素子であることで車両(図示せず)が非動作状態に対応するオフ状態のため、制御端子20Gには供給されない。そして、第2のスイッチ素子20のソース側端子20Sとドレイン側端子20Dには何ら電圧の供給は行われない状態であるため、NチャンネルFETを適用した第2のスイッチ素子20は順バイアスの状態とならず、オフ状態となる。従って、第2のスイッチ素子20は蓄電池11を逆極性で接続した場合にはオフ状態となる。
【0036】
以上のように、蓄電池11を逆方向の極性で接続した場合には、第1のスイッチ素子14および第2のスイッチ素子20が共に非接続のオフ状態として機能することとなるため、電源装置12を構成するいずれの素子に対しても、あるいは負荷25に対しても、極性の逆接続に起因する電流は流れることが無い。これは、蓄電池11が極性を誤って接続されても、電源装置12および負荷25へ何ら損傷を与えることもなく、あるいは劣化を生じさせるものではないことともなる。
【0037】
そして同時に、先に述べたバイパスダイオード14aを設けた場合において、仮に第2の制御回路27やモード切り替スイッチ28あるいは第1のスイッチ素子14に異常が生じ第1のスイッチ素子14がオフ状態となった状況であっても、蓄電池11を逆方向の極性で接続した際に流れようとする電流を遮断する接続となっているため、極性の逆接続に起因する電流は流れることが無い。
【0038】
また、蓄電池11が極性を誤って接続されても、その接続による電流が流れないため蓄電池11、電源装置12および負荷25に対する保護素子として接続しているヒューズ31もまた溶断されることがない。よって、蓄電池11の接続における極性が逆であることが判明した時点で正しい極性の接続へと修正する際にはヒューズ31をはじめとして蓄電池11、電源装置12、負荷25およびその周辺に接続したデバイスに対して何ら破損による交換のような作業は伴わなく、即座に修正、車両(図示せず)の起動を行うことが可能となるものである。
【0039】
そして、第1のスイッチ素子14はリレーを適用せずに半導体スイッチであり、特にFETを適用することにより、機械的な接点を用いる場合に比較してスイッチングにかかわる反応が速く、かつ、反応する時間のばらつきが小さいため、電圧変換部17の起動あるいは停止に際して生じる、出力端子15における出力電圧の谷間を小さくすることができる。よって、アイドリングストップ状態からの再始動時に負荷25へ供給する電圧の降下を防止することが可能となる。これに加え、機械的接点を用いないことで長期間の使用での接点の劣化を生じることもなく、高い信頼性を維持することが可能となる。
【0040】
ここまでは、電源装置12自身において逆極性の接続に対する保護機能として限定して説明したが、当然ながら図2の車載電源ユニットのブロック図に示すように蓄電池11や負荷25に接続した、電源装置12や電子制御ユニット32を含んで一体化した車載電源ユニット33として用いて、他の素子や他の装置に対する保護機能を兼ねた形として機能させても構わない。ここでは車載電源ユニット33へ電子制御ユニット32を搭載することとしているが、電子制御ユニット32に限ったものでなく、直流電源を必要とする機能部であれば車載電源ユニット33へ搭載し、電源装置12からの直流電圧を受けて構わないものである。
【0041】
そして電源装置12の下流側、すなわち図1に示す出力端子15よりも下流側へ図2に示す電子制御ユニット32を接続することにより、蓄電池11を逆接続した場合であっても電子制御ユニット32へは全くその影響を無いものとすることができる。
【0042】
よって、電子制御ユニット32において蓄電池11の逆接続などによる逆電圧に対する保護装置(図示せず)は不要となり、車載電源ユニット33の部品点数抑制による小型化のみならず、原価低減も可能となる。これは電子制御ユニット32に加えて他の電子ユニット(図示せず)あるいは電子機器(図示せず)を車載電源ユニット33に搭載することで、電源装置12によって車載電源ユニット33における他の複数の構成要素に対する保護機能を持たせることが可能となるものである。よって、先に述べたように部品点数抑制による小型化のみならず、原価低減についての効果を一層大きなものとすることができる。
【0043】
また同時に上記の効果については、図1において電源装置12よりも下流側に接続している負荷25に関しても同様であり、図2に示すように一般的には電源装置12に対して複数が並列に接続されている負荷25においても電源装置12の下流側であることから、蓄電池11の逆接続などによる逆電圧に対する保護装置(図示せず)は不要となり、個々の負荷25における部品点数抑制による小型化のみならず、原価低減も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の車載用電源装置は、バッテリー極性の接続を逆に行っても電源および負荷に何らの悪影響を及ぼすことが無いという効果、および、バッテリーの極性が正しく接続されているときには、バッテリーの消耗を抑制することができるという効果を有し、各種車両において有用である。

【符号の説明】
【0045】
11 蓄電池
12 電源装置
13 正電極側入力端子
14 第1のスイッチ素子
14a バイパスダイオード
14G 制御端子
14S ソース側端子
14D ドレイン側端子
15 出力端子
16 負電極側入力端子
17 電圧変換部
18 正電極側入力部
19 負電極側入力部
20 第2のスイッチ素子
20G 制御端子
20S ソース側端子
20D ドレイン側端子
21 出力部
22 第1のダイオード
23 第3のスイッチ素子
24 第2のダイオード
25 負荷
26 第1の制御回路
27 第2の制御回路
28 モード切り替スイッチ
29 第3の制御回路
30 整流素子
31 ヒューズ
32 電子制御ユニット
33 車載電源ユニット
図1
図2
図3