(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1絶縁膜の膜厚増大部分は、前記基板表面とのなす角度が30°から60°の傾斜を有する順テーパー形状である、請求項1または2に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
前記工程(g)において、前記第1絶縁膜は基板全面に形成され、前記第1ソース領域を形成する不純物導入がイオン注入によってなされる、請求項1から3のいずれか1項に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
前記工程(g1)において、前記第1絶縁膜のエッチバックが、ドライエッチングまたはウエットエッチングによりなされる、請求項5に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
前記工程(i)において、前記エッチングは、前記第2ボディー領域の形成予定領域上に形成された前記積層絶縁膜のエッチングレートが、前記ゲート電極上に形成された前記積層絶縁膜のエッチングレートよりも大きくなる条件で実施される、請求項8又は9に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
前記工程(j)において、前記第2ボディー領域を形成する不純物導入がイオン注入によってなされる、請求項8から10のいずれか1項に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
前記工程(j)と前記工程(k)との間に、前記ゲート電極上に残存する前記積層絶縁膜の一部をエッチング除去し、前記トレンチ側壁に前記第2ソース領域を露出させる工程をさらに有する、請求項8から11のいずれか1項に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
前記トレンチ側壁に前記第2ソース領域を露出させる工程のエッチングが、前記第2ソース領域の前記トレンチ側壁の上端部が曲面に加工される条件で実施される、請求項12に記載の縦型ゲート半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス機器における低消費電力化、高機能化および動作速度の高速化の要求に伴って、それに付随する半導体装置も低消費電力化および動作速度の高速化が要求されている。この要求に対応するため、エレクトロニクス機器のDC−DCコンバータ等に使用されるパワーMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等の半導体装置でも、そのオン抵抗を小さくすることが必要になっている。
【0003】
この種のパワー半導体装置では、半導体装置のゲート電極を半導体基板主面に対して垂直な方向(以下、縦方向という。)に配置する縦型ゲート構造が採用されている。例えば、縦型ゲートMOSトランジスタでは、縦方向に配置されたゲート電極の上部にソース領域、ゲート電極の中間部にボディ領域、ゲート電極の底部にドレイン領域が、それぞれ対向して配置される。このような縦型ゲート半導体装置のオン抵抗をさらに小さくするためには、単位面積あたりに配置するユニットセルの密度を大きくすることが求められる。
【0004】
上述の縦型ゲートMOSトランジスタでは、ゲート電極に隣接する半導体基板の表面部にソース領域およびボディーコンタクト領域が形成される。さらに、半導体基板表面にソース領域およびボディーコンタクト領域に電気的に接続するソース電極が形成される。また、ゲート電極の上面には、ゲート電極とソース電極とを電気的に分離するための絶縁膜が形成される。この構造において、ゲート電極上の絶縁膜が半導体基板表面から突出した状態にあると、単位面積あたりに配置するユニットセルの密度をより大きくするために縦型ゲート電極を狭ピッチで配列した場合、絶縁膜が近接することにより凹部が構成される。凹部は、凹部に埋め込まれるソース電極中にボイドを発生させる等の問題を生じさせる。
【0005】
この対策として、例えば、特許文献1では、並行して配置された複数の縦型ゲート電極を有する縦型ゲート半導体装置において、縦型ゲート電極上の絶縁膜の最上面とソース領域が存在するシリコン基板表面とを同一平面上(略同一平面状も含む)に形成する技術が提案されている。この技術では、縦型ゲート電極の最上面がシリコン基板表面より下方に後退させられた後、シリコン基板表面にソース領域が形成される。そして、縦型ゲート電極上方に絶縁膜が充填された後、マスクパターン(リソグラフィ技術)を使用してボディーコンタクト領域が形成される。
【0006】
以下、
図30を参照しながら、特許文献1が開示する縦型ゲート半導体装置およびその製造方法について説明する。
図30は、従来の縦型ゲート半導体装置の断面構造を示す図である。
【0007】
図30に示すように、縦型ゲート半導体装置は、高濃度のN型シリコン基板101と、シリコン基板101上に設けられた、低濃度のN型エピタキシャル層からなるドレイン領域102とを有する。ドレイン領域102の表面部には、P型の不純物領域からなるボディー領域103が形成される。ボディー領域103が形成された基板に、ボディー領域103を貫通しドレイン領域102に到達する深さで、複数のトレンチ105が形成される。トレンチ105の内壁にはゲート絶縁膜106が形成される。
【0008】
さらに、基板全面にポリシリコンが堆積された後、ドライエッチングが実施され、トレンチ105の内部にポリシリコンからなるゲート電極107が形成される。このとき、ゲート電極107の上面はトレンチ105の上端(基板表面)よりも下方に位置するように加工される。この状態で、第1導電型の不純物を斜めイオン注入することにより、露出したトレンチ105上部の側壁およびボディー領域103の表面部にソース領域112が形成される。その後、基板全面に絶縁膜を堆積して絶縁膜をエッチバックすることにより、ゲート電極107の上方でトレンチ105に埋め込まれた層間絶縁膜110が形成される。
【0009】
続いて、隣接するトレンチ105の間に、ボディー領域103の表面部に形成されたソース領域112を分割するトレンチ111が形成される。トレンチ111は、マスクパターンを使用したリソグラフィ技術およびエッチング技術により形成される。トレンチ111の底部には、第2導電型のボディーコンタクト領域113が形成される。その後、導体膜からなるソース電極114が、ソース領域112およびボディーコンタクト領域113と電気的に接続する状態で形成される。
【0010】
以上のような特許文献1の技術では、層間絶縁膜110の形成工程、ソース領域112およびボディーコンタクト領域113の形成工程において使用するマスク枚数が1枚になる。そのため、製造工程では1枚分のマスク合わせずれのみを考慮すればよく、マスク合わせマージンを小さくすることができる。すなわち、1枚のマスク使用によりボディーコンタクト領域113を形成できる範囲内であれば、可能な限りゲート電極ピッチをシュリンクすることができる。その結果、縦型ゲート半導体装置のオン抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における半導体装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【
図20】
図20は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図22】
図22は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図23】
図23は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図24】
図24は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図25】
図25は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図26】
図26は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図27】
図27は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図28】
図28は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図29】
図29は、本発明の一実施形態における半導体装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態における半導体装置を、図面を参照しながらその製造方法とともに説明する。以下の実施形態では、Nチャネル型の縦型ゲートトランジスタにより本発明を具体化している。この事例では、本発明にいう第1導電型がN型であり、第2導電型がP型である。なお、Pチャネル型の縦型ゲートトランジスタに対しても、素子内の各不純物領域の導電型を反対にすることで、以下の説明が同様に適用できる。
【0027】
図1は、本発明の半導体装置を示す概略図である。なお、
図1では、ソース電極およびその上層の構造を省略している。また、
図1は概略図であり、各部の寸法比はこれに限られるものではない。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の縦型ゲート半導体装置は、半導体基板であるN型シリコン基板1と、N型シリコン基板1上に設けられたN型エピタキシャルシリコン層からなるドレイン領域2を有する。ドレイン領域2の不純物濃度は、シリコン基板1の不純物濃度より低く設定されている。ドレイン領域2の上方には、比較的低濃度のP型不純物領域からなるボディー領域3(第1ボディー領域)が設けられる。
【0029】
N型シリコン基板1、ドレイン領域2、ボディー領域3からなる基板の表面部には、ボディー領域3を貫通してドレイン領域2に達する複数のトレンチ6が、互いに平行に設けられている。ポリシリコンからなるゲート電極12は、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜8を介して各トレンチ6内に埋め込まれている。各ゲート電極12の上面は、各トレンチ6の上端より低くなっている。なお、この例では、トレンチ6の幅は0.18μm程度、深さは0.8μm程度であり、0.6μmピッチで配列されている。
【0030】
各トレンチ6に隣接する基板の表面部(ボディー領域3の表面部)には、N型不純物領域からなるソース領域17が設けられている。ソース領域17は、第1ソース領域15および第2ソース領域16から構成され、トレンチ6に沿って、かつゲート電極12の上部およびトレンチ6と隣接する状態で配置されている。
【0031】
第1ソース領域15は、表面からトレンチ6の深さ方向の距離が増大するにつれてトレンチ6の側壁に垂直な方向の不純物領域幅が減少する構成になっており、ゲート電極12の上部に隣接する深さにわたるまで設けられている。第2ソース領域16は、第1ソース領域15の上部に、トレンチ6に沿う状態で設けられている。第2ソース領域16は、第1ソース領域15よりも高い不純物濃度を有する。
図1に示すように、第2ソース領域16は、ゲート電極12の上端よりも上方のトレンチ6の側壁に形成される。さらに具体的には、第2ソース領域16は、トレンチ6上端から所定深さにわたる領域(以下、側壁上部という。)、および基板表面において、トレンチ6端から所定距離にわたる領域に露出している。以下では、第2ソース領域16が形成される領域を、トレンチ6上端のコーナー部、と表現する。
【0032】
また、ボディー領域3の表面部には、ソース領域17(
図1の例では第2ソース領域16)と隣接し、かつソース領域17に沿って、P型不純物領域からなるボディーコンタクト領域21(第2ボディー領域)が設けられている。ボディーコンタクト領域21は、ボディー領域3よりも高い不純物濃度を有しており、ボディー領域3と電気的に接続している。
【0033】
なお、ソース領域17およびボディーコンタクト領域21は、その上面に形成された導電膜(図示省略)により電気的に接続されている。
【0034】
例えば、ボディー領域3は、1.5×10
17cm
−3程度の不純物濃度を有し、トレンチ6の側壁に沿って形成されるチャンネル領域の閾値を制御することを目的として形成される。また、ボディーコンタクト領域21は1.0×10
20cm
−3程度の不純物濃度を有し、導電膜とオーミックコンタクトを構成することを目的として形成される。第1ソース領域15は2.0×10
20cm
−3程度の不純物濃度を有し、トランジスタのソース領域を構成している。また、第2ソース領域16は1.0×10
21cm
−3程度の不純物濃度を有し、導電膜とオーミックコンタクトを構成することを目的として形成される。
【0035】
ゲート電極12の上側のトレンチ6内には埋込絶縁膜19が設けられている。埋込絶縁膜19は、ソース領域17およびボディーコンタクト領域21を接続する導電膜とゲート電極12とを電気的に分離する機能を有する。本実施形態の縦型ゲート半導体装置では、埋込絶縁膜19は、少なくとも下部に、第2ソース領域16を構成するN型不純物と同一種の不純物を含む。また、埋込絶縁膜19は、少なくとも上部にボディーコンタクト領域21を構成するP型不純物と同一種の不純物を含む。
【0036】
図2〜
図19は、上記構造を有する縦型ゲート半導体装置の形成過程を示す工程断面図である。
図2〜
図19では、左方にトランジスタ形成領域を示し、右方に、ゲート引き出し配線等の配線が形成されるトランジスタ形成領域の周辺領域(トランジスタ非形成領域)を示している。また、
図1と同様に、
図2〜
図19は概略図であり、各部の寸法比はこれに限られるものではない。なお、以下では、最表面に薄膜を形成する場合、基板上に膜を形成する、と表現する。
【0037】
図2に示すように、まず、N型シリコン基板1上に、エピタキシャル成長法によりN型エピタキシャルシリコン層が形成される。そして、エピタキシャルシリコン層の表面部にP型不純物を導入することにより、N型シリコン基板1上に、N型のドレイン領域2およびP型のボディー領域3が形成される。例えば、ドレイン領域2の厚さは1〜20μmとすることができ、ボディー領域3の厚さは0.5〜2μmとすることができる。なお、ドレイン領域2およびボディー領域3は、それぞれがエピタキシャル成長により形成されてもよい。
【0038】
次いで、ボディー領域3の表面に、熱酸化法により、50〜500nmの膜厚を有するシリコン酸化膜4が形成される。シリコン酸化膜4上には、
図3に示すように、公知のリソグラフィ技術により、以降の工程でトレンチ6が形成される領域に開口を有するレジストパターン5が形成される。そして、レジストパターン5をマスクとしたエッチングにより、
図3に示すように、トレンチ6が形成される領域上のシリコン酸化膜4が除去される。
【0039】
レジストパターン5が除去された後、
図4に示すように、パターンニングされたシリコン酸化膜4をマスクとしたドライエッチングにより、ボディー領域3を貫通してドレイン領域2に到達する深さ0.5〜3μmのトレンチ6が形成される。なお、トレンチ6の幅は0.15〜0.5μmとすることができ、ピッチは0.4〜1.5μmとすることができる。
【0040】
形成された各トレンチ6の内部表面には、
図5に示すように、熱酸化により、15〜100nm程度の膜厚を有するシリコン酸化膜7が形成される。シリコン酸化膜7は、
図6に示すように、ウエットエッチング等により除去される。このように、一旦形成したシリコン酸化膜7をその後に除去することにより、トレンチ6の内部表面の、ドライエッチングに起因するダメージを除去することができる。なお、シリコン酸化膜7を除去する際、基板表面のシリコン酸化膜4もエッチングされる。本実施形態では、シリコン酸化膜7のエッチング後にも、シリコン酸化膜4の一部は残存するように、シリコン酸化膜4の膜厚が設定される。
【0041】
続いて、
図7に示すように、各トレンチ6の内部表面に、8〜100nmの膜厚を有するゲート絶縁膜8が形成される。特に限定されないが、ここでは、ゲート絶縁膜8として、熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成している。
【0042】
その後、
図8に示すように、ゲート電極材料となる200〜800nmの導電性を有するポリシリコン膜9が全面に堆積される。ポリシリコン膜9には、導電性を付与したポリシリコン膜を使用することができる。例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されたリン等の不純物を導入したドープトポリシリコン膜を形成できる。他には、ノンドープポリシリコン膜を成膜後、N型不純物のイオン注入およびアニールを実施することにより形成することもできる。
【0043】
次いで、
図9に示すように、ゲート引き出し配線等のポリシリコン配線形成領域を被覆するレジストパターン11が形成される。レジストパターン11をマスクとしたポリシリコン膜9のエッチングにより、
図10に示すように、シリコン酸化膜4上およびトレンチ6上部のポリシリコン膜9が除去される。このエッチングでは、トレンチ6内のポリシリコン膜の最上面が、シリコン酸化膜4の表面よりも100〜500nm下方に位置するようにポリシリコン膜9が除去される。これにより、トレンチ6の上部に凹部が残る状態で、トレンチ6内にゲート電極12が形成される。同時に、トランジスタ非形成領域にポリシリコン配線13が形成される。なお、ここでは、ポリシリコン配線13はトレンチ6内のゲート電極12に、例えば、トレンチ6の長手方向の端部で接続するゲート引き出し配線を構成している。
【0044】
レジストパターン11が除去された後、
図11に示すように、基板上に第1絶縁膜14が形成される。第1絶縁膜14は、ゲート電極12上の凹部を充填するとともに、トレンチ6両側の基板表面において、トレンチ6端からの距離が離れるにつれて膜厚が増大する部分を有する。第1絶縁膜14は、ゲート電極12上の凹部に形成されていればよく、凹部が完全に満たされる必要はない。なお、第1絶縁膜14の膜厚増大部分は、基板表面とのなす角度が30°から60°の傾斜を有する順テーパー形状であることがより好ましい。これは、以降の工程で形成される、トレンチ6の上部側壁近傍においては深く、トレンチ6上端から水平方向に距離が離れるにつれて浅くなる構造を有する第1ソース領域15を良好に形成するためである。そのため、第1絶縁膜14の膜厚増大部分は、基板表面とのなす角度が30°より小さいと、隣接するトレンチ6間の中央部に比較的高濃度のn型不純物領域が形成されてしまうからである。また、第1絶縁膜14の膜厚増大部分は、基板表面とのなす角度が60°よりも大きいと、水平方向のソース領域幅が狭くなってソース電極とのコンタクト抵抗が増大するからである。
【0045】
このような第1絶縁膜14は、例えば、HDP−CVD(High Density Plasma−CVD)法を使用して、基板に高周波電力を印加した状態で堆積することができる。HDP−CVDによる成膜では、膜の堆積とスパッタエッチング(Arスパッタリング)とが同時に進行する。また、このスパッタエッチングの効率は膜に対する粒子の入射角度に依存し、基板表面とのなす角度が50°程度の傾斜面に対するエッチングレートが大きい。そして、このスパッタエッチングは、トレンチ6側壁のような垂直面(90°)や基板表面の平坦面(0°)に対してはエッチングレートが小さくなる。その結果、
図11に示すような、順テーパー形状の膜厚増大部分を有する第1絶縁膜14を良好に形成することができる。なお、第1絶縁膜14の堆積時に導入する材料ガス流量、堆積時に印加する高周波電力等を調整することで、成膜中における膜の堆積とスパッタエッチングとの関係(強弱)を変更することも可能である。ただし、エッチング効率に上述の傾向があるため、傾斜面と基板表面とのなす角度は処理時間の増大とともに50°に収束することになる。
【0046】
また、HDP−CVDによる成膜において、第1絶縁膜14の膜厚を、ゲート電極12上の凹部の深さ(基板表面からゲート電極表面までの距離)と同程度、もしくはトレンチ6の上端よりも下側になるような膜厚とすることができる。このようにすれば、傾斜面(膜厚増大部分の上面)を、トレンチ6の上端に接する状態にする、またはトレンチ6の上端近傍に配置された状態にすることができる。これにより、後述の工程において、第1ソース領域15を良好に形成することができる。本実施形態では、ゲート電極12上の凹部の深さが100〜500nm程度であるので、第1絶縁膜14の膜厚は、100〜500nm程度にすればよい。特に限定されないが、本実施形態では、シリコン酸化膜を第1絶縁膜14として堆積している。
【0047】
続いて、
図12に示すように、以上のようにして形成された第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4をマスクとしてN型の不純物を導入することにより、第1ソース領域15が形成される。不純物の導入はイオン注入により行うことができる。イオン注入において、不純物は、基板に対して垂直に入射されることが好ましい。このとき、イオン注入の加速電圧は、第1絶縁膜14の厚膜部および厚膜部下方のシリコン酸化膜4を不純物が貫通しない加速電圧であり、かつトレンチ6側壁近傍では、ゲート電極12の上部と隣接する領域に不純物が導入される加速電圧を採用することが好ましい。第1絶縁膜14の厚膜部とは、トレンチ6と隣接するトレンチ6の中間部分の平坦な基板表面に形成された第1絶縁膜14において、トレンチ6の影響を受けることなく形成された部分を意味する。厚膜部の膜厚は、上面が半導体基板と平行な水平面になっている部分に堆積された第1絶縁膜14の膜厚と概ね一致する。
【0048】
一例として、ゲート電極12の上面が基板表面から250nm下方に位置し、基板上に厚膜部の膜厚が180nmの第1絶縁膜14を堆積した事例について説明する。まず、N型不純物としてリンを使用して、第1絶縁膜14を通じたイオン注入を行う。注入エネルギーを70KeV、注入ドーズ量を8.0×10
15cm
−2とした場合、シリコン酸化膜中のリンイオンの投影飛程Rpは0.0688μmであり、分散σは0.0283μmである。すなわち、Rp+3σ=0.1537μmであり、180nmの膜厚を有する第1絶縁膜14の厚膜部直下のボディー領域3にはリンイオンはほとんど到達できない。一方、第1絶縁膜14の膜厚増大部では、膜厚が薄い部分ほどより多くのリンイオンが直下のボディー領域3に到達することになる。その結果、トレンチ6の側壁近傍においては深く、トレンチ6上端から水平方向の距離が離れるにつれて浅くなる構造を有する第1ソース領域15が形成される。より厳密には、トレンチ6の側壁近傍の、第1絶縁膜14の膜厚が極めて薄い部分では、第1ソース領域15の深さ方向の不純物濃度プロファイルは、基板表面よりも下方にピークを有するガウス分布になる。ピーク深さは、不純物イオンのシリコン基板中の投影飛程に応じた深さである。また、トレンチ6上端から水平方向の距離が離れるにつれて第1絶縁膜14が徐々に増大するため、第1ソース領域15の深さ方向の不純物プロファイルはピーク位置深さが次第に浅くなるとともに、そのピーク濃度が小さくなる。つまり、基板表面では、トレンチ6上端から水平方向の距離が離れるにつれて、徐々に不純物濃度が低下する不純物濃度プロファイルになる。すなわち、第1ソース領域15は、基板表面からトレンチ6の深さ方向の距離が増大するにつれてトレンチ6の側壁に垂直な方向の不純物領域幅が減少し、かつトレンチ6の側壁の上部に近づくにつれて不純物濃度が増大する形態になる。
【0049】
また、この事例では、第1ソース領域15とボディー領域3との界面は、トレンチ6の側壁に対して傾斜した平面状に構成される。なお、シリコン基板中に導入された不純物は活性化アニール時に拡散するため、活性化アニール後の不純物分布は厳密にはイオン注入直後の不純物分布と一致しない。ここでは、「トレンチ6の側壁に対して傾斜した平面状」は、第1ソース領域15のイオン注入直後の不純物分布が、第1絶縁膜14の、傾斜した平面状の膜厚増大部の形状を反映した不純物分布であることを意味する。
【0050】
リンのイオン注入が完了すると、
図13に示すように、シリコン酸化膜4および第1絶縁膜14から構成される積層膜をエッチバックしてトレンチ6上端のコーナー部を露出させる。このときのエッチバック量は、20〜100nm程度とすることができる。特に限定されないが、本実施形態では、当該エッチバック量は、シリコン酸化膜4および第1絶縁膜14からなる積層膜厚の1/3程度となるようになされる。例えば、トレンチ6が幅0.18μm、0.6μmピッチで配列されて、シリコン酸化膜4および第1絶縁膜14からなる積層膜の膜厚が250nmの場合、エッチバック量は約80nmとなる。このとき基板表面におけるトレンチ6端から水平方向の露出幅は、0.1μm程度となる。なお、エッチバックには、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずれを用いてもよい。
【0051】
次に、
図14に示すように、エッチバックされたシリコン酸化膜4および第1絶縁膜14の積層膜をマスクとしてN型の不純物を導入することにより、第2ソース領域16が形成される。不純物の導入はイオン注入により行うことができる。イオン注入において、不純物は、基板に対して垂直に入射されることが好ましい。ここでは、N型不純物として砒素を使用したイオン注入を行うことにより、第2ソース領域16を形成する。注入エネルギーを50KeV、注入ドーズ量を8.0×10
15cm
−2としてイオン注入を実施した場合、シリコン基板中の砒素イオンの投影飛程および分散は、リンイオンよりも小さくなる。そのため、イオン注入によりボディー領域3に形成される第2ソース領域16は、リンイオンのイオン注入により形成された第1ソース領域15に包含される。また、基板表面が露出した領域では、シリコン酸化膜4や第1絶縁膜14に阻害されることなく、基板中に不純物が導入される。その結果、砒素イオンの注入により、トレンチ6上端のコーナー部に、より高濃度の第2ソース領域16を形成することができる。なお、第2ソース領域16の底部には、露出した基板表面に対応する形状が現れることになるが、この例では、露出したトレンチ6の側壁を通じて導入された不純物等の影響がある。そのため、第2ソース領域16は、
図14に示すように、表面からトレンチ6の深さ方向の距離が増大するにつれてトレンチ6の側壁に垂直な方向の不純物領域幅が減少する形状になる。
【0052】
なお、以上のイオン注入において、トレンチ6内でゲート電極12上に形成されている第1絶縁膜14には、少なくとも、第2ソース領域16を構成するN型不純物が導入されることになる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、リソグラフィ技術を使用することなく、ゲート電極12の上部およびトレンチ6と隣接して、トレンチ6に沿って設けられたソース領域17を形成することができる。すなわち、形状としては、表面からトレンチ6の深さ方向の距離が増大するにつれてトレンチ6の側壁に垂直な方向の不純物領域幅が減少する。そして、不純物濃度としては、トレンチ6の側壁の上部に近づくにつれて不純物濃度が増大する。以上のような第1ソース領域15を自己整合的に形成することができる。また、第2のソース領域は、第1ソース領域15の上部であって、トレンチ6端から所定距離にわたるトレンチ6両側の基板表面と、第1ソース領域15の上部であって、トレンチ6上端から所定深さにわたるトレンチ6側壁とを含む領域に設けられている。以上のように、第1ソース領域15よりも高い不純物濃度を有する第2ソース領域16を自己整合的に形成することができる。
【0054】
なお、後述するP型不純物の導入により、P型のボディーコンタクト領域が形成可能であれば、ソース領域17の形成工程において形成される、隣り合う第1ソース領域15は、隣接するトレンチ6間において、互いに分離していてもよく、また、互いに接触していてもよい。また、第2ソース領域は、エッチバックされた第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4をマスクとした不純物導入により形成されるため、ボディーコンタクト領域が形成される領域に、高濃度のN型不純物領域が形成されることもない。
【0055】
上述のようにして、第1ソース領域15および第2ソース領域16から構成されるソース領域17が形成された後、
図15に示すように、基板上の凹凸を軽減する平坦化膜として機能する第2絶縁膜18が基板上に堆積される。特に限定されないが、本実施形態では、膜厚が500〜1500nm程度のシリコン酸化膜を第2絶縁膜18として堆積している。
【0056】
続いて、
図16に示すように、ボディー領域3およびソース領域17上の、第2絶縁膜18、第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4がドライエッチングにより除去される。エッチングは、トランジスタ非形成領域等のポリシリコン配線部分を被覆する第2絶縁膜18上に、レジストパターンからなるエッチングマスクが配置された状態で実施される。エッチングにおいて、ゲート電極12上に充填された第1絶縁膜14および第2絶縁膜18からなる積層絶縁膜は、トレンチ6の上端より下方に位置する状態にエッチングされる。ゲート電極12上に充填された積層絶縁膜は、トレンチ6内でゲート電極12の上方を充填する埋込絶縁膜19になる。それに対し、レジストパターンで被覆された積層絶縁膜は、層間絶縁膜20として基板上に残存する。また、レジストパターンが配置されていない半導体基板上の積層絶縁膜は除去され、基板表面が露出する。なお、レジストパターンは、基板上において、ポリシリコン配線部に限らず、層間絶縁膜20を形成すべき領域を被覆するように配置すればよい。
【0057】
また、上述のように、本実施形態では、ソース領域17は第1絶縁膜14を通じたイオン注入により形成される。したがって、積層絶縁膜のうち第1絶縁膜14であるシリコン酸化膜にはN型不純物が含まれ、第2絶縁膜18であるシリコン絶縁膜には、N型不純物は含まれない。また、
図15に示すように、トレンチ6間に形成された積層絶縁膜における第2絶縁膜18の膜厚は、ゲート電極12上に形成された積層絶縁膜における第2絶縁膜18の膜厚に比べて相対的に薄くなる。このため、N型不純物を含む第1絶縁膜14のエッチングレートが、N型不純物を含まない第2絶縁膜18のエッチングレートよりも大きくなるドライエッチング条件を上記積層絶縁膜のドライエッチングに適用すると、トレンチ6間に形成された積層絶縁膜のエッチングレートを、ゲート電極12上に形成された積層絶縁膜のエッチングレートよりも大きくすることができる。このようなドライエッチング条件を使用することにより、積層絶縁膜が同一のエッチングレートでエッチングされるドライエッチング条件に比べて、埋込絶縁膜19の膜厚を厚くすることができる。すなわち、以降で埋込絶縁膜19上に形成されるソース電極とゲート電極12との間により厚い絶縁膜を介在させることができるため、埋込絶縁膜19の膜厚減少に起因する絶縁耐圧の低下を抑制することができる。なお、本実施形態では、第1絶縁膜14および第2絶縁膜18はシリコン酸化膜からなり、第1絶縁膜14にリンおよび砒素がイオン注入されている。そのため、シリコン酸化膜のドライエッチングにおいて、第1絶縁膜14のエッチングレートは第2絶縁膜18のエッチングレートよりも自然に大きくなる。例えば、シリコン酸化膜のエッチングに一般的に使用されるフッ素系ガスでは、第1絶縁膜14のエッチングレートは第2絶縁膜18のエッチングレートより5%程度大きくなる。また、弗酸を用いたウエットエッチングでは、第1絶縁膜14のエッチングレートは第2絶縁膜18のエッチングレートより2倍程度大きくなる。
【0058】
また、第2絶縁膜18の堆積後、かつ上記積層絶縁膜のエッチング前に、第2絶縁膜18の表面を、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化してもよい。これにより、隣接するトレンチ6間に形成された積層絶縁膜における第2絶縁膜18の膜厚を、ゲート電極12上に形成された積層絶縁膜における第2絶縁膜18の膜厚よりも、より小さくすることができる。その結果、各トレンチ6内に、より容易に埋込絶縁膜19を形成することができる。また、CMPを適用することにより、CMP後にエッチングすべき積層絶縁膜の膜厚が小さくなるため、より膜厚ばらつきが少ない状態で埋込絶縁膜19を形成することが可能になる。
【0059】
なお、
図16に示すように、埋込絶縁膜19は、第1絶縁膜14によってその下部および側部が構成されるとともに第2絶縁膜18によってその上部が構成されている。層間絶縁膜20は、第1絶縁膜14によってその下部が構成されるとともに第2絶縁膜18によってその上部が構成されている。しかしながら、以降の図面では、便宜上1つの絶縁膜として表示する。
【0060】
埋込絶縁膜19の形成が完了すると、
図17に示すように、露出した基板表面からP型不純物を導入することにより、ボディーコンタクト領域21が形成される。不純物の導入は基板全面に対するイオン注入により行うことができる。イオン注入では、不純物は基板に対して垂直に入射されることが好ましい。イオン注入は、ソース領域17のトレンチ6近傍における不純物極性が反転することのない注入ドーズ量で実施される。これにより、ボディー領域3の上側に、ソース領域17と隣接して、P型のボディーコンタクト領域21が自己整合的に形成される。なお、イオン注入において、トレンチ6内でゲート電極12上に形成されている埋込絶縁膜19の少なくとも上部には、ボディーコンタクト領域21を構成するP型不純物が導入されることになる。
【0061】
例えば、ソース領域17が、上述のイオン注入条件でのイオン注入により形成され、第2導電型の不純物としてボロンを使用するときは、注入エネルギーを10KeV、注入ドーズ量4.0×10
15cm
−2としてボディーコンタクト領域21を形成することができる。
【0062】
以上のようにして、ボディーコンタクト領域21の形成が完了すると、ソース領域17とボディーコンタクト領域21とを電気的に接続する導電膜(ソース電極)が形成される。特に限定されないが、本実施形態では、当該導電膜は、チタン膜(Ti)および窒化チタン膜(TiN)等からなるバリアメタル膜22とアルミニウム膜からなる金属膜23との積層膜により構成されている。
【0063】
まず、
図18に示すように、ボディーコンタクト領域21が形成された基板上に、スパッタリング法等により、20〜150nm程度の膜厚を有するバリアメタル膜22が形成される。そして、
図19に示すように、バリアメタル膜22上に、スパッタリング法等により、1000〜5000nm程度の膜厚を有する金属膜23が形成される。バリアメタル膜22および金属膜23にリソグラフィ技術およびエッチング技術を適用することにより、所望形状の導電体パターンが形成され、縦型ゲートトランジスタが完成する。
【0064】
以上のように、本実施形態の縦型ゲート半導体装置は、リソグラフィ技術を使用することなく、第1ソース領域15および第2ソース領域16から構成されるソース領域17並びにボディーコンタクト領域21を形成することができる。そのため、マスク重ね合わせ用のマージンを確保する必要がなく、リソグラフィ設備の能力とも無関係に、微細なボディーコンタクト領域を形成することができる。すなわち、従来技術に比べてゲート電極ピッチをより小さくすることが可能になる。また、ゲート電極ピッチをより小さくする場合、ソース領域とソース電極との間のコンタクト抵抗が上昇する可能性があるが、本実施形態では、トレンチ上端のコーナー部に高濃度の第2ソース領域を配置することができる。そのため、コンタクト抵抗の上昇を抑制することができる。その結果、従来に比べてオン抵抗の小さい縦型ゲート半導体装置を低コストで実現することができる。
【0065】
なお、
図30の従来の縦型ゲート半導体装置では、マスクを使用することなく全面イオン注入によりソース領域を形成している。そのため、トレンチ105が形成されたトランジスタ形成領域の外周部のシリコン基板表面部にもソース領域112を構成する不純物が注入される場合も想定される。この場合、トランジスタ形成領域の外周部には、不純物領域をソース領域とし、ボディー領域103およびドレイン領域102を含む寄生バイポーラトランジスタが形成される。この寄生バイポーラトランジスタが動作することによってデバイス破壊が発生することもある。
【0066】
これに対し、本実施形態の縦型ゲート半導体装置では、
図11に示すように、ソース領域17を形成するためのN型イオン注入工程において、第1絶縁膜14が基板全面を被覆している。そのため、トランジスタ形成領域の外周部にはN型不純物が導入されない。また、仮に導入されたとしても低濃度の不純物領域しか形成されないため、後述のP型不純物の全面注入により、低濃度のN型不純物領域は、P型不純物領域に反転する。したがって、本実施形態の縦型ゲート半導体装置では、トランジスタ形成領域の外周部の半導体基板表面部にN型不純物領域が形成される場合はなく、寄生バイポーラトランジスタが形成されることもない。その結果、従来の縦型ゲート半導体装置のような、寄生バイポーラトランジスタの動作に起因するデバイス破壊が発生する可能性を低減することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、エッチバック前の第1絶縁膜14を介した不純物導入により第1ソース領域15を形成し、エッチバック後の第1絶縁膜14を介した不純物導入により第2ソース領域16を形成した。この構成では、第1ソース領域15の水平方向の広がり(ボディーコンタクト領域21が形成される領域への広がり)を抑制しつつ、トレンチ6上端のコーナー部に高濃度の第2ソース領域16を形成できるため、特に好ましいといえる。
【0068】
しかしながら、第1ソース領域15は、エッチバック前の第1絶縁膜14を介した不純物導入に代えて、エッチバック後の第1絶縁膜14を介した不純物導入により自己整合的に形成することも可能である。この場合、第1ソース領域15および第2ソース領域16は、いずれも、エッチバック後の第1絶縁膜14を介した不純物導入により形成されることになり、第1ソース領域15の一部も露出した基板表面を通じて基板中に導入される。この場合、第1絶縁膜14の膜厚増大部分の膜厚が薄くなるため、エッチバック前の第1絶縁膜14を介した不純物導入に比べて、第1ソース領域15の水平方向の広がりは大きくなる。ボディーコンタクト領域21が形成される領域へのN型不純物の広がりが許容できる範囲内であれば、上述の構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
なお、第1ソース領域15および第2ソース領域16を、エッチバック後の第1絶縁膜14を介した不純物導入により形成する場合、第1絶縁膜14の成膜と、第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4の積層膜に対するエッチバックとの工程順は連続することになる。そのため、同一の装置において、第1絶縁膜14の成膜と、第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4の積層膜に対するエッチバックとを実施すれば、実質的に、工程数を削減することも可能である。
【0070】
ところで、以上説明した構成では、第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4の積層膜に対するエッチバックの工程(
図13)において、ゲート引き出し配線等を構成するポリシリコン配線13上に残存する第1絶縁膜14の膜厚が薄くなる場合がある。この場合、第2ソース領域16を形成するための不純物導入工程において、ポリシリコン配線13に当該不純物が導入される可能性がある。ポリシリコン配線13にこのような不純物が導入されると、ポリシリコン配線13のシート抵抗値が変動し、縦型ゲート半導体装置を構成する各ユニットセルの動作ばらつきや、製造された縦型ゲート半導体装置に特性ばらつきが発生する可能性がある。また、このようなポリシリコン配線13への不純物導入は、第1ソース領域15を形成するためのイオン注入において注入加速電圧を高めた場合にも発生し得る。
【0071】
そこで、以下のような工程を採用することもできる。すなわち、
図8に示す工程において、ゲート電極材料である、200〜800nmの導電性を有するポリシリコン膜9が基板上に堆積された後、
図20に示すように、50〜200nmのキャップ絶縁膜10が基板上に堆積される。特に限定されないが、ここでは、キャップ絶縁膜10として、以降で上層に積層される第1絶縁膜と同一の材質であるシリコン酸化膜を使用している。
【0072】
次いで、
図21に示すように、ゲート引き出し配線等のポリシリコン配線形成領域を被覆するレジストパターン11が形成され、レジストパターン11をマスクとしたキャップ絶縁膜10のエッチングが行われる。続いて、レジストパターン11を除去した後、パターニングされたキャップ絶縁膜10をマスクとしてポリシリコン膜9のエッチングが実施される。これにより、
図22に示すように、シリコン酸化膜4上およびトレンチ6上部のポリシリコン膜9が除去されて、トレンチ6内にゲート電極12が形成される。それと同時に、トランジスタ非形成領域に、上層にキャップ絶縁膜10が形成されたポリシリコン配線13が形成される。ポリシリコン配線13が形成された後、
図23に示すように、基板上に、上述した第1絶縁膜14が形成される。
【0073】
この構成では、ポリシリコン配線13は、キャップ絶縁膜10および第1絶縁膜14からなる厚い積層膜によって被覆される。したがって、その後に実施される第1ソース領域15を形成するためのイオン注入(
図24)や、第1絶縁膜14およびシリコン酸化膜4のエッチバック(
図25)後に実施される第2ソース領域16を形成するためのイオン注入(
図26)において注入加速電圧を高くした場合でも、N型不純物がポリシリコン配線13に導入されることはない。したがって、縦型ゲート半導体装置の動作ばらつきや特性ばらつきの発生を抑制することができる。加えて、ポリシリコン膜9が、例えば、ノンドープポリシリコン膜を成膜後、N型不純物のイオン注入およびアニールを実施することにより導電性を付与したポリシリコン膜である場合には、キャップ絶縁膜10を設けることにより、アニール時に、ポリシリコン膜9からの不純物の外方拡散を防止することもできる。なお、キャップ絶縁膜10の膜厚は、以上の効果が得られる範囲において適宜設定することができる。
【0074】
一方、上述の実施形態における、第1絶縁膜14、第2絶縁膜18およびシリコン酸化膜4のエッチング工程(
図16)において、ゲート電極12上に充填された第1絶縁膜14および第2絶縁膜18からなる積層絶縁膜は、その上面がトレンチ6の上端(基板表面)と実質的に一致する状態にエッチングされてもよい。この場合、
図27に示すように、トレンチ6内でゲート電極12の上方を充填する埋込絶縁膜19の上面がトレンチ6の上端と実質的に一致することになる。
【0075】
この場合、
図28に示すように、ボディーコンタクト領域21の形成工程において、トレンチ6の側壁が露出していないため、当該側壁からソース領域17へのP型不純物の導入が抑制される。すなわち、ソース抵抗の増大を防止することができる。
【0076】
また、この構成ではソース領域17とバリアメタル膜22とは、ソース領域17の上面のみで接触することになるため、ボディーコンタクト領域21の形成後、かつバリアメタル膜22の形成前に、全面ドライエッチングを実施することが好ましい。全面エッチングでは、
図29に示すように、埋込絶縁膜19の一部をエッチバックしてトレンチ6の側壁を構成するソース領域17を露出させる。これにより、ソース領域17とバリアメタル膜22との接触面積を増大させることができ、ソース領域17に対するコンタクト抵抗の増大を抑制することができる。なお、埋込絶縁膜19のエッチング量は、例えば、第1絶縁膜14の膜厚より小さい50〜300nmとすることができる。また、特に限定されないが、層間絶縁膜20の膜減りを防止する観点では、層間絶縁膜20上にレジストパターンを形成した状態で当該エッチングを実施してもよい。
【0077】
また、トレンチ6の側壁に第1ソース領域15を露出させるドライエッチングは、
図29に示すように、ソース領域17のトレンチ6側壁上端部が曲面に加工される条件で実施されることが好ましい。このような曲面は、例えば、埋込絶縁膜19のエッチングレートに比べて、シリコン(エピタキシャルシリコン層)のエッチングレートが大きくなるエッチング条件(例えば、埋込絶縁膜19のエッチングレートがシリコンのエッチングレートの2〜5倍程度)を採用することにより実現可能である。もしくは、全面ドライエッチングの最後に、Ar等の不活性ガスを導入してスパッタエッチングを実施すればよい。これにより、埋込絶縁膜19直上に構成される凹部が金属膜23等により埋め込まれやすくなる。以降のバリアメタル膜および金属膜の形成は、上述のとおりである。なお、トレンチ6側壁上端部の曲面加工は、
図16に示す、埋込絶縁膜19を形成するためのエッチング工程に適用されてもよい。
【0078】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、ゲート電極12の材料としてポリシリコン膜を使用しているが、アモルファスシリコン等の他の導電性材料を使用することもできる。同様に、シリコン酸化膜4、キャップ絶縁膜10、第1絶縁膜14、第2絶縁膜18、バリアメタル膜22および金属膜23の材質も、上述の材質に限定されるものではなく適宜変更可能である。さらに、上記実施形態において説明したプロセスは、本発明の効果を奏する範囲において等価な公知プロセスに置換可能である。
【0079】
また、本発明では複数のトレンチ6が、互いに平行に配置された縦型ゲート電極を有する縦型ゲート半導体装置で記載しているが、トレンチが互いに交差する、格子状および千鳥格子状に配置された縦型ゲート電極を有する縦型ゲート半導体装置でも適用可能である。