特許第6031803号(P6031803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6031803光多重通信用の発信機および通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031803
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】光多重通信用の発信機および通信システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/313 20060101AFI20161114BHJP
   H04B 10/524 20130101ALI20161114BHJP
   G02F 1/055 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   G02F1/313
   H04B9/00 524
   G02F1/055 505
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-86048(P2012-86048)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217998(P2013-217998A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(72)【発明者】
【氏名】今岡 功
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−043504(JP,A)
【文献】 特開平03−145628(JP,A)
【文献】 特開平10−098439(JP,A)
【文献】 D. H. McMahon,"Multimode optical switching",LASER FOCUS with fiberoptic communicaions,1979年 3月,Vol.15, No.3,p.46-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02F 1/29−1/39
G02B 6/12−6/14
H04B 10/524
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放出する光源と、
前記光を導く主光路を形成する導光手段と、
前記主光路上に設けられ、第1の信号に応じて前記光を変調する、第1の変調手段と、
前記主光路上において、前記第1の変調手段よりも下流に設けられ、第2の信号に応じて前記光を変調する、第2の変調手段と
を備え、
前記第1の変調手段は、屈折率可変部を備える屈折変調手段であり、
前記屈折率可変部は、前記第1の信号として印加される電圧に応じて屈折率が変化し、
前記屈折変調手段は、前記屈折率可変部における屈折率の変化に応じて、前記光の一部を前記主光路から分岐させ、これによって前記光を変調し、
前記導光手段および前記第1の変調手段は、前記主光路を形成するコアと、前記主光路の外周に配置されるクラッドとを備え、
前記屈折率可変部は、前記コアまたは前記クラッドとして構成され、
前記電圧は、前記第1の信号に応じて所定の範囲内で変動し、
前記電圧が前記範囲内である場合、前記コアの屈折率は、前記クラッドの屈折率よりも大きく、
前記第1の変調手段は前記主光路に沿って延び、
前記第1の変調手段は、第1の曲率で湾曲する第1湾曲部を備え、
前記電圧が前記範囲の下限である場合、前記主光路を伝播する光は、前記第1湾曲部における前記コアと前記クラッドとの境界面において全反射を起こし、
前記電圧が前記範囲の上限である場合、前記主光路を伝播する光の一部が前記境界面を透過し、これによって前記主光路から分岐し、
前記導光手段は、前記第1の曲率よりも小さい第2の曲率で湾曲する第2湾曲部を備え、
前記第2湾曲部および前記第1の変調手段のコアは、同一平面内において互いに逆の向きに湾曲する、
光多重通信用の発信機。
【請求項2】
前記第1の変調手段は、前記第1の信号に応じて前記屈折率可変部に印加される電圧を変化させる電圧印加部を備える、請求項に記載の発信機。
【請求項3】
前記第2の変調手段は前記屈折変調手段である、請求項1または2に記載の発信機。
【請求項4】
前記光源は発光ダイオードであり、前記導光手段は光ファイバである、請求項1〜のいずれか一項に記載の発信機。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の発信機と、
前記第1の変調手段によって分岐させられた光を受光する光検出手段と、
前記光検出手段が受光した光を復調して前記第1の信号を再生する復調手段と
を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光多重通信用の発信機および通信システムに関し、とくに屈折率の変化によって光を変調するものに関する。
【背景技術】
【0002】
光多重通信システムとして、送信データに基づいて生成された駆動電流信号に基づいて光源を制御し、可視光信号を受信機に対して出力するものが提案されている。特許文献1には、光分岐回路を用いて複数の光源を準備し、これらの光源をそれぞれ対応する変調器で並列的に変調する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−123073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光多重通信システムでは、送信機に用いられる光源を複数準備する必要があった。このため、たとえば構成が複雑になったりコストが増加したりといった問題があった。なお、特許文献1のように単一の光源からの光を分岐させ、擬似的に複数の光源のように扱うことも可能であるが、そのような構成ではそれぞれの変調器に供給される光の強度が低くなる。また、分岐回路が必要になり構成が複雑になる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、光多重通信において、単一の光源を用いて複数の信号を送信することができる発信機および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題を解決するため、この発明に係る光多重通信用の発信機は、光を放出する光源と、光を導く主光路を形成する導光手段と、主光路上に設けられ、第1の信号に応じて光を変調する、第1の変調手段と、主光路上において、第1の変調手段よりも下流に設けられ、第2の信号に応じて光を変調する、第2の変調手段とを備え、第1の変調手段は、屈折率可変部を備える屈折変調手段であり、屈折率可変部は、第1の信号として印加される電圧に応じて屈折率が変化し、屈折変調手段は、屈折率可変部における屈折率の変化に応じて、光の一部を主光路から分岐させ、これによって光を変調し、導光手段および第1の変調手段は、主光路を形成するコアと、主光路の外周に配置されるクラッドとを備え、屈折率可変部は、コアまたはクラッドとして構成され、電圧は、第1の信号に応じて所定の範囲内で変動し、電圧が範囲内である場合、コアの屈折率は、クラッドの屈折率よりも大きく、第1の変調手段は主光路に沿って延び、第1の変調手段は、第1の曲率で湾曲する第1湾曲部を備え、電圧が範囲の下限である場合、主光路を伝播する光は、第1湾曲部におけるコアとクラッドとの境界面において全反射を起こし、電圧が範囲の上限である場合、主光路を伝播する光の一部が境界面を透過し、これによって主光路から分岐し、導光手段は、第1の曲率よりも小さい第2の曲率で湾曲する第2湾曲部を備え、第2湾曲部および第1の変調手段のコアは、同一平面内において互いに逆の向きに湾曲する。
【0007】
このような構成によれば、主光路に複数の変調手段を設け、上流に位置する変調手段が光の一部を主光路から分岐させ、これによって変調を行う。また、下流に位置する変調手段は、上流の変調手段が分岐させなかった光を利用して変調を行う。
【0008】
1の変調手段は、第1の信号に応じて屈折率可変部に印加される電圧を変化させてもよい。
第2の変調手段は屈折変調手段であってもよい。
光源はレーザーダイオードであり、導光手段は光ファイバであってもよい
【0009】
また、この発明に係る通信システムは、上述の発信機と、第1の変調手段によって分岐させられた光を受光する光検出手段と、光検出手段が受光した光を復調して第1の信号を再生する復調手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発信機および通信システムによれば、上流の変調手段が分岐させなかった光を利用して下流に位置する変調手段が変調を行うので、単一の光源によって複数の変調手段に光を供給することができる。このため、たとえば光源の構成が簡素になり、またコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る光多重通信システムの構成の概略を示す模式図である。
図2図1の光ファイバ部および変調手段に関連する構成を説明する拡大図である。
図3図2のコアに印加される電圧に対する屈折率の変化を表すグラフである。
図4図2に示す構成を、コアの軸を含む平面によって切断した断面図である。
図5図4において異なる電圧における光の反射および透過の様子を説明する図である。
図6】各変調手段の動作タイミングと、各変調手段において発生するパルスとの関係の例を示す図である。
図7】実施の形態2における時分割制御の例を示す図である。
図8】実施の形態3における位相制御の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る光多重通信システム1の構成の概略を示す模式図である。本発明に係る光多重通信システム1は、発信機10および受信機21〜23を備える。発信機10は、光ファイバ部11と、光ファイバ部11に設けられる複数の変調手段(第1の変調手段31、第2の変調手段32および第3の変調手段33)と、これらの変調手段にそれぞれ信号を供給する信号源(第1の信号源41、第2の信号源42および第3の信号源43)と、各信号源を制御する制御手段50と、光ファイバ部11に光を供給する光源60とを備える。
【0013】
光源60はたとえば発光ダイオード(LED)であり、光を放出して光ファイバ部11に入射させる。光ファイバ部11は、入射した光を軸方向に導く主光路Lを形成する導光手段として機能する。変調手段31〜33は、主光路L上に上流から下流に向かう順で設けられる。すなわち、主光路L上において、変調手段31が最も上流に設けられ、変調手段32は変調手段31よりも下流に設けられ、さらに変調手段33は変調手段32よりも下流に設けられる。また、変調手段31〜33は、それぞれ入力される信号(第1の信号、第2の信号および第3の信号)に応じて光を変調する。
【0014】
変調手段31〜33によって変調された光は、主光路Lからそれぞれ対応する分岐光路(第1の分岐光路L1、第2の分岐光路L2および第3の分岐光路L3)に分岐する(分岐の動作については後述する)。受信機21〜23は、それぞれ、変調手段31〜33によって分岐光路L1〜L3に分岐させられた光を受光する。たとえば受信機21は分岐光路L1を伝播する光を受光する第1の光検出手段を備える。この光検出手段は、公知のMOSやCCDを用いた受光素子等によって構成することができる。また、受信機21は、受光した光を復調して第1の信号を再生する第1の復調手段を備える。
【0015】
受信機22および受信機23も、受信機21と同様の構成を備える。このような構成により、光多重通信システム1は、単一の光源60からの光を利用し、複数の変調手段31〜33と複数の受信機21〜23との間で多重通信を行う。
【0016】
図2は、光ファイバ部11および変調手段31〜33に関連する構成を説明する拡大図である。なお、図2には変調手段31のみを示すが、本実施形態では変調手段32および変調手段33も変調手段31と同様の構成を有する。
【0017】
光ファイバ部11は公知の光ファイバとしての構成を有する。たとえば、主光路Lを形成するコア101と、コア101の外周に配置されるクラッド102とを備える。また、変調手段31は主光路Lに沿って延びる形状を有し、主光路Lを形成するコア111と、コア111の外周に配置されるクラッド112とを備える。クラッド112はコア111を包むように存在する。
【0018】
変調手段31のコア111は、透明性(すなわち光伝導性)を持ち、電圧の印加により屈折率が変化する材料によって構成される。すなわち、本実施形態では、コア111は屈折率可変部であり、変調手段31は屈折変調手段である。このような材料としては、たとえばPLZTを用いることができる。また変調手段31のクラッド112は、コア111よりも屈折率が低い材料によって構成される。
【0019】
クラッド112には一対の電極140が設けられる。図2にはこのうち一方(たとえば陽極)のみを示すが、コア111およびクラッド112に対してこれと反対の位置にもう一方の電極(たとえば陰極)が同様の構成で設けられる。一対の電極140は信号源41に接続され、信号源41が発生する電圧をコア111およびクラッド112に印加する。このように、信号源41および電極140は、第1の信号に応じて、コア111およびクラッド112に印加される電圧を変化させる、電圧印加部として機能する。また、これに伴い、印加される電圧に応じてコア111およびクラッド112の屈折率が変化する。なお、電圧の印加による屈折率の変化量はコア111とクラッド112とでは異なる。本実施形態では上述のようにコア111の材料にPLZTが用いられており、コア111の屈折率変化はクラッド112よりも大きい。
なお、図2では電極140およびその周辺部分にはクラッド112が設けられず、コア
111に直接電極140が接触しているが、電極140はクラッド112を介して取り付けられてもよい。
【0020】
図3は、コア111に印加される電圧Vに対するコア111の屈折率nの変化を表すグラフである。第1の入力信号に応じて信号源41が発生する電圧(または電圧の絶対値)の下限をV0(たとえばV0=0)とし、上限をV1とする。すなわち、コア111に印加される電圧VはV0≦V≦V1の範囲内で変動する。
V=V0のときn=n0であり、V=V1のときn=n1である。V0<V<V1のときn0<n<n1であり、たとえばnはVに対して線形に変化する。また、クラッド112の屈折率をn2とすると、V0≦V≦V1であれば常にn>n2である。(なお、本実施形態ではn2は常に一定とするが、V0≦V≦V1においてn>n2を満たすものであればn2は一定でなくともよい。)
また、光ファイバ部11のコア101およびクラッド102は、たとえばそれぞれ変調手段31のコア111およびクラッド112と同一の材料によって構成することができる。
【0021】
図2に戻る。変調手段31は、第1湾曲部110を備える。第1湾曲部110は、一定の向きに一定の曲率1/R1(第1の曲率)で湾曲している(なお図2では曲率1/R1はコア111の中心軸における曲率を表す)。
図4は、図2に示す構成を、コア111の軸を含む平面によって切断した断面図である。コア111とクラッド112との境界面Bは、その外縁B1および内縁B2のみが現れている。
【0022】
図5は、図4の構造において、異なる電圧に応じた光の反射および透過の様子を説明する図である。図5(a)はV=V0の状態を示し、図5(b)はV=V1の状態を示す。主光路Lを伝播する光が外縁B1に入射する入射角θの最小値をθminとする(すなわち、主光路Lを伝播する光はすべてθmin以上の入射角θをもって外縁B1に入射する)。V=V0の場合、図3に示すようにコア111とクラッド112の屈折率の比n0/n2は比較的大きい。このため、図5(a)のように、主光路Lから外縁B1に入射角θminで入射した光が、外縁B1で全反射を起こし、分岐せずに主光路L内にとどまるように設計可能である。なおθ>θminとなる場合も同様であるので、主光路L内を伝播する光は外部に漏れず主光路L内を伝播し続けることになる。
【0023】
一方、V=V1の場合、図3に示すようにコア111とクラッド112の屈折率の比n1/n2は比較的小さい。このため、全反射の臨界角が広角側にシフトし、θminよりも大きくなる(なおθminは図5(a)の場合と図5(b)の場合とで同一の値である)。すなわち、図5(b)のように、主光路Lから外縁B1に入射角θminで入射した光の一部が外縁B1を透過し、これによって主光路Lから分岐光路L1へと分岐して漏れ出すように設計可能である。
【0024】
このように、変調手段31は、コア111における屈折率nの変化に応じて、光の一部を主光路Lから分岐させ、これによって光を変調する。たとえば、光を分岐させることによってパルスが存在することを表し、光を分岐させないことによってパルスが存在しないことを表すことができる。
【0025】
なお、変調手段31の曲率1/R1(図2参照)は、主光路Lの特性(コア111の屈折率nおよび電圧Vに対する変動、クラッド112の屈折率n2、入射角θの最小値θmin、等)によって決まる臨界曲率より若干大きめの角度(すなわち若干ゆるやかな曲率)として選択することができる。ここで、「臨界曲率」とは、電圧Vが上限V1である場合に、入射角θminで外縁B1に入射した光が全反射を起こす範囲内で最大の曲率である。
また、V=V1のときに主光路Lから分岐する光の割合は曲率および屈折率等の諸条件によって定まり、たとえば30%程度の光が分岐する構成とすることができる。
【0026】
以上は変調手段31の構成であるが、変調手段32および変調手段33も同様の構成を有する。したがって、図1に示すように、変調手段31において分岐しなかった光は主光路Lを伝播して変調手段32に達し、その一部は変調手段32において分岐して外部に漏れ出す。さらに、変調手段32でも分岐しなかった光は主光路Lを伝播して変調手段33に達し、その一部は変調手段33において分岐して外部に漏れ出す。すなわち、上流の変調手段(たとえば変調手段31)は、下流の変調手段(たとえば変調手段32および変調手段33)までの主光路Lの一部を構成する。このように、単一の光源60から複数の信号を取り出すことが可能となる。
【0027】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る発信機10および光多重通信システム1によれば、上流の変調手段が分岐させなかった光を利用して下流に位置する変調手段が変調を行うので、単一の光源60によって複数の変調手段に光を供給することができる。このため、たとえば光源の構成が簡素になり、またコストを低減できる。
【0028】
また、図1に示すように、光ファイバ部11は複数の第2湾曲部120を備える。第2湾曲部120は、主光路Lにおいて、変調手段31と変調手段32の間の位置、変調手段32と変調手段33との間の位置、および変調手段33よりも下流の位置に設けられる。 第2湾曲部120は、第1湾曲部110と同一の平面において、第1湾曲部110とは反対の向きに、一定の曲率1/R2(第2の曲率)で湾曲している(なお図1では曲率1/R2は光ファイバ部11の中心軸における曲率を表す)。なお、本実施形態では第2湾曲部120の曲率は第1湾曲部110の曲率よりもゆるやかである(R1<R2)が、主光路Lを伝播する光が第2湾曲部120から外部に漏れ出さない範囲であればこの条件を満たさないものであってもよい。すなわち、コア111およびクラッド112の屈折率差から求められる最小曲率よりも大きな曲率であればよい。最小曲率よりも大きな曲率であればコア111を伝播する光が全反射するからである。
【0029】
また、第2湾曲部120は、各変調手段からの分岐光路L1〜L3が互いに平行となるように構成される。たとえば、変調手段31に入射する光の伝播方向と、変調手段32に入射する光の伝播方向と、変調手段33に入射する光の伝播方向とがすべて平行となるように第1湾曲部110および第2湾曲部120を構成し、さらに変調手段31〜33をすべて同じ向きに配置する。このような構成によれば、受信機21〜23をすべて同じ向きに配置できるので、分岐光路L1〜L3の構造および受信機21〜受信機23の配置を簡素にすることができる。
【0030】
上述の実施の形態1において、以下のような変形を施すことができる。
最下流の変調手段(第3の変調手段33)よりも下流では主光路Lを維持する必要がないので、最下流の変調手段は、屈折率が変化する材料によって構成されたものでなくともよい。たとえば、印加される電圧に応じて光を透過または遮蔽することによって変調を行う変調手段であってもよい。また、第3の変調手段33を設けない場合には、同様に第2の変調手段32をそのような変調手段としてもよい。
【0031】
光ファイバ部11は、第2湾曲部120を備えないものであってもよい。この場合には、各変調手段から分岐する光がそのままでは互いに平行とならないが、実施の形態1と同様に単一の光源60によって複数の変調手段に光を供給することができる。
【0032】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1において、各変調手段の動作タイミングを特定するものである。
図6は、各変調手段の動作タイミングに制限を設けない場合(上述の実施の形態1の一例)において、各変調手段の動作タイミングと、各変調手段において発生するパルス(すなわち各変調手段において分岐する光の強度)との関係の例を示す。この例では、説明の便宜上、各変調手段はいずれも光の50%を分岐させるように示しているが、実際に分岐する光はたとえば30%程度である。
【0033】
図6(a)は光源60が放出する光の強度であり、理想的には一定である。図6(b)〜(d)は、第1の変調手段31、第2の変調手段32および第3の変調手段33が発生するパルスの時間幅および強度を示す。このパルスは、各変調手段が主光路Lから分岐させる光に対応する。この例では各パルスは理想的な矩形であるものとする。図6(e)は、主光路Lにおいて最下流の変調手段(すなわち変調手段33)よりも下流まで伝播する光、すなわち残光の強度である。
【0034】
図6(b)のように、最上流に位置する第1の変調手段31ではパルスの波形および強度は均一であるが、下流に進むにつれ、図6(c)および(d)のように、上流での分岐の影響を受けてパルスの波形および強度が変化する。たとえばパルスP1とパルスP2は時間的に重複しており、主光路Lの光の50%が第1の変調手段31においてパルスP1として分岐し、このため第2の変調手段32には到達しないので、第2変調手段32のパルスP2は強度が落ちる。同様に、パルスP3とパルスP4は一部が時間的に重複しているので、重複している部分について下流のパルスP4の強度が落ち、波形が歪む。
【0035】
このように、各変調手段の動作タイミングに制限を設けない場合には、単一の光源60からの光が主光路Lに直列に配置された変調手段31〜33において取り出されるので、後段になるに従って主光路L内の光強度のばらつきが大きくなり、信号伝達の信頼性を考慮した設計が必要となる。
【0036】
これに対し、実施の形態2では、各変調手段の動作タイミングを制御する。たとえば、各変調手段を同期させ時分割で制御する。
図7は、実施の形態2における時分割制御の例を示す。各変調手段は、制御手段50(図1)の制御に応じ、それぞれ異なるタイミングで主光路Lの光を分岐させる。制御の単位となる時間帯として、第1の時間帯T1、第2の時間帯T2および第3の時間帯T3が設けられ、この順に、互いに重複しないように配置される。
各時間帯は互いに等しい長さを有し、また、等しい周期で繰り返される。本実施形態では、第3の時間帯T3の直後に次の第1の時間帯T1が配置されている。
【0037】
各変調手段は、それぞれ対応する時間帯においてのみ光を分岐させる。すなわち、第1の変調手段31は第1の時間帯T1においてのみ光を分岐させ、第2の変調手段32は第2の時間帯T2においてのみ光を分岐させ、第3の変調手段33は第3の時間帯T3においてのみ光を分岐させる。したがって、ある変調手段(たとえば第2の変調手段32)が主光路Lの光の一部を分岐させている間は、他の変調手段(たとえば第1の変調手段31および第3の変調手段33)は光を分岐させないことになる。
【0038】
以上のように、実施の形態2では、変調手段31〜33を同期させ、信号を送るタイミングを時分割制御する。よって、下流の変調手段(たとえば第3の変調手段33)は、上流の変調手段(たとえば第1の変調手段31および第2の変調手段32)によって影響を受けず、図7(b)〜(d)に示すように各変調手段からの信号の品質を維持することができる。すなわち、変調手段31〜33から送信される光信号を、主光路Lの上流・下流を問わず同等の品質で送信することが可能になる。
【0039】
なお、上述の実施の形態2では各時間帯が隙間なく連続しているが、各時間帯の間には余裕時間帯が設けられても良い。この余裕時間にはいずれの変調手段も光を分岐させない制御とすれば、隣接する時間帯の重複をより確実に防止することができる。
【0040】
また、実施の形態2では各時間帯の長さが互いに等しいが、各時間帯の長さが互いに異なっていてもよい。たとえば、時間帯T1の長さが時間帯T2の長さより大きくなるよう制御してもよい。このようにすると、異なるレートの信号を並列して送信することができる。
【0041】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態2において、各変調手段の動作タイミングを変更するものである。
図8は、実施の形態3における位相制御の例を示す。各変調手段は、制御手段50(図1)の制御に応じ、それぞれ異なるタイミングで主光路Lの光を分岐させる。制御の周期はTであり、この周期Tが繰り返される。この周期Tは、すべての変調手段について共通である。
【0042】
各変調手段は、周期Tにおける特定の位相に対応する時刻においてのみ光を分岐させる。すなわち、第1の変調手段31は周期Tにおける位相θ1に相当する時刻においてのみ光を分岐させ、第2の変調手段32は周期Tにおける位相θ2に相当する時刻においてのみ光を分岐させ、第3の変調手段33は周期Tにおける位相θ3に相当する時刻においてのみ光を分岐させる。なお、図8ではパルスの時間的位置はパルスの中央を基準として決められるが、これはパルスの開始時点等を基準として決めてもよい。また、パルスの幅は、同一の周期Tにおける隣接する周期のパルス(たとえば位相θ1およびθ2に対応する2つのパルス)が互いに干渉しないよう設計される。
【0043】
したがって、実施の形態2と同様に、ある変調手段(たとえば第2の変調手段32)が主光路Lの光の一部を分岐させている間は、他の変調手段(たとえば第1の変調手段31および第3の変調手段33)は光を分岐させないことになる。
【0044】
以上のように、実施の形態3では、変調手段31〜33を同期させ、信号を送るタイミングを位相シフト制御する。よって、実施の形態2と同様に、下流の変調手段は上流の変調手段によって影響を受けず、図8(b)〜(d)に示すように各変調手段からの信号の品質を維持することができる。すなわち、変調手段31〜33から送信される光信号を、主光路Lの上流・下流を問わず同等の品質で送信することが可能になる。
【0045】
また、実施の形態3では、各変調手段は周期Tのうち特定の位相に対応する時刻においてのみパルスを発生させるので、ひとつの変調手段から連続してパルスが発生することがない。たとえば図8(b)〜(d)から明らかなように、ひとつの変調手段から送信されるパルスの間には少なくとも周期Tに等しい時間間隔が存在することになる。したがって、受光側の受信分解能を高める必要がない。たとえば図8に示す場合では、送信側の制御手段50は1つの周期Tにおいて最大で3つのパルスを発生させる必要があるが、受信側の受信機21、受信機22および受信機23はそれぞれ周期Tにおいて最大で1つのパルスを検出できればよい。
【0046】
実施の形態1〜3において、光源としての発光ダイオード(LED)はたとえば非レーザーの発光ダイオードであるが、レーザーダイオードであってもよく、その他の光源であってもよい。
【0047】
実施の形態1〜3では、コアが屈折率可変部であり、コアの屈折率を電圧に応じて変化させることで変調を行っている。たとえば、図3の例では、印加される電圧Vの増加に応じてコアの屈折率nがn0からn1に減少する一方、クラッドの屈折率はn2で一定である。
変形例として、クラッドを屈折率可変部とし、クラッドの屈折率を電圧に応じて変化させることで変調を行ってもよい。たとえば、クラッドの材料にPLZTを用いて、電圧の増加に応じて屈折率が増加するよう構成し、コアの材料にはクラッドより屈折率が大きくクラッドより屈折率変化量が小さい材料を用いることで、このような構成を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 光多重通信システム、10 発信機、11 光ファイバ部、21〜23 受信機、31 第1の変調手段(屈折変調手段)、32 第2の変調手段(屈折変調手段)、33 第3の変調手段、41〜43 信号源、50 制御手段、60 光源、101 コア、102 クラッド、110 第1の湾曲部、111 コア(屈折率可変部)、112 クラッド、120 第2の湾曲部、140 電極、B 境界面(B1 外縁、B2 内縁)、L 主光路、L1〜L3 分岐光路、T1 第1の時間帯、T2 第2の時間帯、T3 第3の時間帯、V 電圧(V0 下限、V1 上限)、θ1 位相(第1の位相時刻)、θ2 位相(第2の位相時刻)、θ3 位相。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8