(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記末端が開いた剥離終端ハーフカット線の形状は、円弧状、楕円弧状、台形状、矩形状、三角形状のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の湯切り機能付き蓋体。
前記剥離終端ハーフカット線は、先端から開いた末端までの深さが1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湯切り機能付き蓋体。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装容器として用いられるカップ容器の開口部を封止する蓋体として、紙や樹脂フィルムとアルミニウム箔とを積層した構成の製品が広く利用されている。
【0003】
アルミニウム箔は柔らかく折り曲げ自在であり、また形状保持能力にも優れる。このような性質を有する材料を用いることによって、カップ容器の蓋体を開封した際に、その開封状態を保持できる性質(以下、「デッドホールド性」という)を蓋体に付与することができ、容器内部に湯を注いだりする際の使用者の使い勝手を向上させることができる。
【0004】
アルミニウム箔には、上記デッドホールド性の他に、蓋体のガスバリア性や遮光性を向上させて内容物の変質を防ぐという重要な機能が含まれている。蓋体にデッドホールド性を付与するためには、ある程度厚いアルミニウム箔を使用する必要があるが、ガスバリア性や遮光性のためには、ごく薄いアルミニウム箔でも十分である。
【0005】
厚いアルミニウム箔を含む蓋体には、包材廃棄時に分別処理が困難であること、アルミニウム自体が焼却に適した材料ではないこと、金属探知機による製品の内部検査を困難にすること等の問題がある。
【0006】
そこで、近年では、上記のような厚いアルミニウム箔を用いた蓋体に代えて、より薄いアルミニウム箔や、アルミニウム箔を用いない紙又は樹脂フィルムの積層構造からなる蓋体が用いられる傾向がある。
【0007】
しかしながら、アルミニウム箔を用いない紙や樹脂フィルムの積層構造からなる蓋体や、薄いアルミニウム箔を用いた蓋体は、途中まで開いた状態の蓋体がその材料の反発力によって元に戻ろうとするため、デッドホールド性が不十分であるという問題がある。
【0008】
上記のような蓋体のデッドホールド性を向上させることを目的として、例えば、特許文献2の提案がされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
また、特許文献2に記載された蓋体は、カップ容器の開口部にシールされる裏面側の第1シートとこれに積層された表面側の第2シートとの2層から構成されている。この蓋体においては、第1シートを3つの領域に区分し、中央部の第2領域において第1シートと第2シートが剥離するようにしたことにより、剥離終点において、シート厚さが薄くなるようにしたものである。
【0011】
剥離終点においてシート厚さが薄くなることにより、元に戻ろうとするシートの力は、低減され、蓋体のデッドホールド性が向上するがそれだけでは十分とは言えない。
【0012】
特許文献2に記載された蓋体においては、さらに第2シートの剥離終点部分にミシン目を設け、剥離終点における第2シートの実質的な幅を削減することにより、さらなるデッドホールド性の向上を図ったものである。
【0013】
特許文献2に記載された蓋体は、第2領域における剥離性を発現させるために、第2シートの裏面の所定の箇所に剥離ニス層を形成しているが、この剥離ニス層とミシン目とを完全に一致させることは容易なことではない。このため通常は、剥離ニス層を多少大きめに形成することが行われるが、この場合、第2シートがミシン目を通り越して剥離してしまい、折角設けたミシン目の効果が発揮されないという問題が生じることがあった。
【0014】
本発明の解決しようとする課題は、厚いアルミニウム箔を使用しない湯切り用蓋体における、デッドホールド性の問題を解決し、安定して確実にデッドホールド性が発揮される湯切り用蓋体を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、カップ容器の開口部を封止する蓋体であって、
該開口部周縁のフランジ部にシールされる下層と、該下層に積層された上層とを備え、
湯切り用タブを含む第1領域と、該第1領域に隣接する帯状の第2領域と、該第2領域に隣接し、開封タブを含む第3領域とを有し、
前記第1領域及び第3領域において前記下層と上層とは接着されており、
前記第2領域において前記下層と上層とは剥離可能に積層されており、
前記第2領域内の、前記第1領域の近傍には、下層を貫通する1本の剥離開始ハーフカット線が前記フランジ部外縁位置に設けられており、
前記第2領域内には、閉じた形状を有し、下層を貫通する湯切り孔形成用ハーフカット線が複数設けられており、
さらに、前記第2領域内には、湯切り孔開封方向に対して末端が開いた形状を有し、上層を貫通する剥離終端ハーフカット線が、前記第2領域と第3領域の境界線に沿って複数配列されており、
前記剥離終端ハーフカット線の開いた末端は、前記第3領域にまで達して
おり、かつ、カップ容器のフランジ部にシールした蓋体の湯切り用タブを持って、前記第2領域の上シートを剥離終端まで剥離した時に、前記剥離終端ハーフカット線によって削減された剥離終端線の長さの合計は、削減される前の剥離終端線の長さの50%以下であることを特徴とする湯切り機能付き蓋体である。
【0016】
本発明に係る蓋体は、上層と下層との2層からなり、湯切り用タブを含む部分から順に第1領域から第3領域までの三つの領域に区分されており、中央の第2領域において上層と下層を剥離可能に積層し、第1領域、第3領域においては上層と下層とを接着したものである。第2領域には、第1領域の近傍に、下層を貫通する1本の剥離開始ハーフカット線を設けたので、湯切り用タブから蓋体の剥離を開始すると、第2領域の剥離開始ハーフカット線から以降は、下層と上層との間で剥離が進行する。
【0017】
第2領域には、閉じた形状を有し、下層を貫通する湯切り孔形成用ハーフカット線が複数設けられているため、この部分の下層は上層と共に除去され、湯切り孔が形成された下層が容器のフランジ部に残った状態となる。
【0018】
さらに剥離を進めると、下層と上層の間の剥離は、第2領域と第3領域の境界が剥離終端となってそれ以上は剥離が進行しないが、この時、第2領域内には、剥離方向に対して末端が開いた形状を有する、上層を貫通する剥離終端ハーフカット線が、第2領域と第3領域の境界線に沿って複数配列されているため、この剥離終端ハーフカット線の内側では、下層と上層とが付着した状態のまま残され、剥離した側の蓋体の上層には孔が開くことになる。このため剥離の終端である剥離終端線は、途切れ途切れの形となり、本来の剥離終端線の長さである第2領域と第3領域の境界線の長さよりも短くなる。
【0019】
このように、剥離終端ハーフカット線の働きによって、剥離終端線の長さが、本来の長さよりも削減されるため、蓋体が元に戻ろうとする力が弱まり、デッドホールド性が高まるのである。
【0020】
またこの時、剥離終端ハーフカット線の開いた末端は、第3領域にまで達しているため、蓋体の剥離は、第2領域と第3領域の境界線において停止し、剥離終端線は、途切れ途切れの状態のままとなり、これ以上剥離が進行することはない。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、前記第2領域が、前記下層と上層の界面に設けられた剥離ニス層によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の湯切り機能付き蓋体である。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、前記末端が開いた剥離終端ハーフカット線の形状が、円弧状、楕円弧状、台形状、矩形状、三角形状のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の湯切り機能付き蓋体である。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、前記剥離終端ハーフカット線の、先端から開いた末端までの深さが1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湯切り機能付き蓋体である。
【0025】
また、
請求項5に記載の発明は、前記剥離終端ハーフカット線に囲まれた領域内に非剥離領域を設けたことを特徴とする
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湯切り機能付き蓋体である。
【0026】
また、
請求項6に記載の発明は、前記湯切り孔形成用ハーフカット線に囲まれた領域内
に非剥離領域を設けたことを特徴とする
請求項1〜5のいずれか1項に記載の湯切り機能付き蓋体である。
【0027】
また、
請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の湯切り機能付き蓋体を用いたことを特徴とする包装容器である。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る蓋体は、カップ容器の開口部を封止する蓋体であるが、始めに蓋体を部分的に開封し、湯や水を注いでから再封止し、一定時間経過した後に、湯切り操作を行って湯や水を捨て、しかる後に蓋体を完全に剥離除去して喫食する用途に適した蓋体である。
【0029】
本発明に係る蓋体は、下層と上層とを備えた2層構造であり、剥離する順に第1領域、第2領域、第3領域の3つの領域に区分されており、第2領域のみ2層を剥離可能に積層し、第2領域の第1領域の近傍に下層を貫通する1本の剥離開始ハーフカット線を設けたので、湯切り用タブを持って剥離を開始すると、この剥離開始ハーフカット線を境にして、下層と上層の層間剥離が開始する。この時、第2領域内には、閉じた形状で下層を貫通する湯切り孔形成用ハーフカット線が複数設けられているため、この部分の下層は上層と共に除去され、残された下層には湯切り孔が形成される。
【0030】
また第2領域内には、剥離方向に対して末端が開いた形状を有する、上層を貫通する剥離終端ハーフカット線が、前記第2領域と第3領域の境界線に沿って複数配列されており、この剥離終端ハーフカット線の働きによって、剥離終端線の長さが、本来の長さよりも削減されるため、蓋体が元に戻ろうとする力が弱まり、デッドホールド性が高まる効果がある。すなわち、剥離終端ハーフカット線に沿って上層の一部が切断されることで、剥離終端ハーフカットに囲まれた領域が下層側に残ることになり、上層と下層とが接着されている部分が少なくなり、上層の反発力が低減されて、上層部分が折れ曲がり易くなり、デッドホールド性が向上する。
【0031】
またさらに、剥離終端ハーフカット線の開いた末端は、第3領域にまで達しているため、蓋体の剥離は、第2領域と第3領域の境界線において停止し、剥離終端線は、途切れ途切れの状態のままとなり、これ以上剥離が進行することがない。
【0032】
そして、この効果は、剥離終端ハーフカット線の末端が第3領域にまで達していさえすれば同様に働くため、剥離終端ハーフカット線の位置精度に関して、多少の位置ずれが発生したとしても、品質の問題が発生せず、従って製造面における困難性が減少する。
【0033】
本発明においては、剥離終端ハーフカットを表面側から上層を貫通する形で設けているが、裏面側から下層を貫通する形で設けても良い。但し、アルミ箔を有する下層の一部の上層側に残ることでアルミ箔が有するデッドホールド性を付与することが想定されるが、あくまで一部分でしかないことからデッドホールド性は不十分である。また、この場合、湯切り孔と同様に、下層側に穴があいた状態となる為、湯切り作業時において意図しない箇所からの湯こぼれにより火傷の恐れや蓋を開封する際に途中で破断してしまう恐れがある。
また、カップ容器のフランジ部にシールした蓋体を湯切り用タブを持って開封すると、剥離開始ハーフカット線の働きにより、前記第2領域の剥離が開始する。第2領域を終端まで剥離した時に、前記剥離終端ハーフカット線によって削減された剥離終端線の長さの合計が、削減される前の剥離終端線の長さの50%以下であるため、蓋体を開封した時のデッドホールド性が十分に発揮されるため、湯や水を注ぎ易くなる。
【0034】
また請求項2に記載の発明において、前記第2領域が、前記下層と上層の界面に設けられた剥離ニス層によって形成されている場合には、通常上層に施される印刷層を形成する時に同時に上層の裏面に剥離ニス層を形成することが可能となるため、蓋体を能率良く生産することが出来る。
【0035】
また請求項3に記載の発明において、前記末端が開いた剥離終端ハーフカット線の形状が、円弧状、楕円弧状、台形状、矩形状、三角形状のいずれかである場合には、ほぼ同様の効果を発揮するので、デザイン上の自由度が高まる。
【0036】
また請求項4に記載の発明において、前記剥離終端ハーフカット線の、先端から開いた末端までの深さが1mm以上10mm以下である場合には、剥離終端ハーフカット線の効果が、有効に発揮される。
【0038】
また
請求項5に記載の発明において、前記剥離終端ハーフカット線に囲まれた領域内に非剥離領域を設けた場合には、剥離終端ハーフカット線に囲まれた領域の上層が確実に下層に残るため、剥離エラーが発生することがない。
【0039】
また
請求項6に記載の発明において、前記湯切り孔形成用ハーフカット線に囲まれた領域内に非剥離領域を設けた場合には、同様にして、湯切り孔形成用ハーフカット線に囲まれた領域の下層が確実に上層と共に除去されるため、湯切り孔が確実に形成される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下図面を参照しながら、本発明に係る湯切り機能付き蓋体について、詳細に説明する。
図1は、本発明に係る湯切り機能付き蓋体の一実施態様における構造を示した平面説明図である。また
図2は、
図1のX−X’断面を示した断面模式図である。
図3は、
図1に示した湯切り機能付き蓋体の湯切り孔を形成する状態を示した斜視図である。また
図4は、
図3のY−Y’断面を示した断面模式図である。
【0042】
本発明に係る湯切り機能付き蓋体(1)(以下単に蓋体という)は、カップ容器(2)の開口部を封止する蓋体であって、開口部のフランジ部(17)にシールされる下層(12)と、下層(12)に積層された上層(11)とを備えている。
【0043】
蓋体(1)は、湯切り用タブ(4)を含む第1領域(5)と、第1領域に隣接する帯状の第2領域(6)と、第2領域に隣接し、開封タブ(3)を含む第3領域(7)とを有する。
【0044】
第1領域(5)及び第3領域(7)においては、下層(12)と上層(11)とは接着されており、第2領域(6)においては、下層(12)と上層(11)とは剥離可能に積層されている。
【0045】
第2領域(6)内の、第1領域(5)の近傍には、下層(12)を貫通する1本の剥離開始ハーフカット線(8)が設けられており、第2領域内には、閉じた形状を有し、下層
を貫通する湯切り孔形成用ハーフカット線(10)が複数設けられている。
【0046】
さらに第2領域(6)内には、剥離方向に対して末端が開いた形状を有する、上層(11)を貫通する剥離終端ハーフカット線(9)が、第2領域(6)と第3領域(7)の境界線に沿って複数配列されている。ここで、剥離終端ハーフカット線(9)の開いた末端は、第3領域(7)にまで達していることを特徴とする。
【0047】
図1に示した実施態様においては、第2領域(6)内に円形の湯切り孔形成用ハーフカット線(10)が11個配列されており、第2領域(6)と第3領域(7)の境界線に沿って円弧形状の剥離終端ハーフカット線(9)が4個配列されている。
【0048】
図3、
図4に示したように、カップ容器(2)にシールされた蓋体(1)の湯切り用タブ(4)を持って開封すると、蓋体(1)の第2領域(6)においては上層(11)と下層(12)とが剥離可能に積層されており、剥離開始ハーフカット線(8)においては、下層(12)が切断されているため、上層(11)と下層(12)の層間における剥離が直ちに開始する。
【0049】
この時、剥離開始ハーフカット線(8)は、第2領域(6)内の第1領域(5)の近傍に設けられているため、確実に層間剥離が開始する。その理由としては、上層(11)と下層(12)とを剥離可能に積層するための手段と、ハーフカット線を形成する手段とは、必ずしも同一の装置によって連続的になされるとは限らないことが挙げられる。従ってこの両者の位置合せを厳密に行うことは容易ではない。剥離開始ハーフカット線(8)と第1領域と第2領域との境界線が完全に一致していれば何の問題もないが、もし剥離開始ハーフカット線(8)が少しでも第1領域内にずれ込んだ場合、層間剥離が円滑に開始しない恐れがある。しかし、剥離開始ハーフカット線(8)を第2領域(6)内の第1領域(5)の近傍に設けることにより、厳密な位置合せが不要となり、製造上の困難性が減少する。
【0050】
第2領域(6)における剥離が進むにつれて、湯切り孔形成用ハーフカット線(10)に囲まれた部分の下層が上層と共に除去されて、湯切り孔(18)が形成されていく。
【0051】
次に、さらに蓋体(1)の剥離を進めると、第2領域(6)内において上層(11)と下層(12)の層間剥離が進行していくが、剥離位置が剥離終端ハーフカット線(9)の先端(13)に到達すると、ここでは上層(11)が切断されているため、剥離終端ハーフカット線(9)の内側の部分の上層(11)は下層(12)に付着したまま留まり、上層(11)のみが剥離される。
【0052】
このため、
図3に示したように、剥離終端ハーフカット線(9)に囲まれた部分においては、上層(11)に孔があいた状態となり、
図7の説明図に示したように、剥離終端線(16)の長さ(幅)の合計(L’)は、本来の剥離終端線の長さ(L)に対して、相当量削減されることになる。
【0053】
このことは、開封後の蓋体(1)の剥離終端(15)における腰の強さを弱める結果となり、このため蓋体(1)のデッドホールド性が向上するのである。
【0054】
この剥離終端ハーフカット線(9)によって削減された後の剥離終端線(16)の長さの合計(L’)の、本来の剥離終端線(16)の長さ(L)に対する比率が50%以下である場合には、デッドホールド性の向上効果が十分に期待できる。
【0055】
またこの時、蓋体(1)の剥離は、第2領域(6)と第3領域(7)の境界線において
停止するが、剥離終端ハーフカット線(9)の開いた末端(14)は、第3領域にまで達しているため、剥離終端線(16)は、途切れ途切れの状態のままとなり、これ以上剥離が進行することはない。
【0056】
もし剥離終端ハーフカット線(9)の末端(14)が、第2領域内に留まっていると、上層(11)と下層(12)の層間剥離は、第2領域と第3領域の境界線まで進行してしまい、折角削減された剥離終端線(16)の長さは、本来の剥離終端線の長さ(L)に戻ってしまう可能性がある。
【0057】
このことは、剥離終端ハーフカット線(9)の位置が多少ずれたとしても、問題が生じないことを意味しており、剥離開始ハーフカット線(8)の場合と同様に、製造時の困難性を減少させる効果を持つものである。
【0058】
図5は、本発明に係る蓋体(1)における剥離終端ハーフカット線(9)の形状の例を示した平面模式図である。
図1に示した実施態様における例では、半円形状であったが、
図5のaからdに示したように、剥離方向に対して末端が開いた形状でありさえすれば、どのような形状であっても差支えない。
【0059】
図6は、剥離終端ハーフカット線(9)の深さ(D)に関する説明図である。剥離終端ハーフカット線の深さ(D)は、剥離終端ハーフカット線の先端(13)から剥離終端ハーフカット線の末端(14)までの剥離方向に沿った距離として定義される。深さ(D)の値としては、通常1mm以上10mm以下が適当である。
【0060】
深さ(D)の値が1mmより小さい場合は、剥離終端ハーフカット線としての十分な機能が発揮されず、10mmより大きい場合は、剥離時に途中で切断されてしまうなどの不具合が生じる恐れがある。
【0061】
特に図示しないが、始めに水や湯を注入する場合には、開封タブ(3)を少し開いてここから水や湯を注入する。開封タブ(3)は、湯切り操作が終了して、最終的に蓋体(1)をすべて除去する際にも使用する。
【0062】
調理後には、開封タブ(3)を掴んで引き上げながら、第3領域(7)から第2領域(6)へと向かう方向(
図1及び3における左方向)に移動させる。第3領域(7)においては、上層(11)と下層(12)とは接着剤によって接着されているので、この開封動作によって、上層(11)と下層(12)とを一体的に開口部から剥離し、蓋体(1)をカップ容器(2)から完全に除去することができる。
【0063】
図8は、本発明に係る湯切り機能付き蓋体(1)の一実施態様における断面構造を示した断面模式図である。本発明に係る蓋体(1)は、上層(11)と下層(12)とを備えている。
【0064】
上層(11)および下層(12)は、紙若しくは樹脂フィルムの単体または紙及び合成樹脂フィルムの積層体により構成されている。上層(11)および下層(12)を構成する積層材料には、薄いアルミニウム箔が使用されることもある。尚、薄いアルミニウム箔の厚みとしては、5〜15μmであれば良く、より好ましくは7〜12μmである。さらに商品等の表示用の印刷や、蓋体(1)の遮光性を高めるための遮光印刷等が施されることもある。
【0065】
図8に示した実施態様においては、上層(11)は、上から順に合成樹脂フィルム(20)、絵柄インキ層(21)、紙(22)、目止ニス層(23)から構成されている。
【0066】
目止ニス層(23)は、剥離層(24)を形成するための剥離ニスが紙に浸透して剥離効果が減殺されないようにするための層である。
【0067】
紙(22)としては、例えば、両アート紙、片アート紙、両面コート紙、片面コート紙または合成紙等を利用できる。また、合成樹脂フィルム(20)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリエチレン(0PE)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等を利用できる。合成樹脂フィルム(20)の厚さは6〜40μmの範囲である。
【0068】
図8に示した実施態様においては、下層(12)は上から順にラミネート樹脂層(25)、合成樹脂フィルム(26)、アルミニウム箔(27)、接着樹脂層(28)から構成されている。これらの各層の間には、必要に応じて接着剤層やアンカー層が設けられる場合があるが、図では省略されている。
【0069】
下層(12)の最下面側には、蓋体(1)をカップ容器(2)の開口部のフランジ部(17)にヒートシールするための接着樹脂層(28)が15〜100μmの厚さで設けられる。接着樹脂層(28)は、例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタアクリル酸共重合体(EMAA)等の合成樹脂製フィルムや、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/アクリル酸共重合樹脂等からなるホットメルト接着剤を塗布することによって形成できる。
【0070】
剥離開始ハーフカット線(8)は、少なくとも下層(12)を貫通するものであれば良く、上層(11)に達していても差支えない。また剥離終端ハーフカット線(9)は、少なくとも上層(11)を貫通するものであれば良く、下層(12)に達していても差支えない。
【0071】
剥離ニス層(24)は、上層(11)と下層(12)とを剥離可能に積層するための層である。剥離ニス層(24)が形成された部分がすなわち、第2領域(6)となる。
【0072】
上層(11)と下層(12)は、何らかの手段によって接着され、剥離ニス層(24)は、この接着手段の働きを阻害する作用を有するものが用いられる。
図8に示した実施態様においては、ラミネート樹脂層(25)が接着手段であり、剥離ニス層(24)としては、ラミネート樹脂層(25)の接着性を阻害する例えばワックス系の剥離ニス等の剥離性材料が用いられる。
【0073】
図9は、本発明に係る湯切り機能付き蓋体(1)の他の実施態様を示した平面説明図である。
図9に示した実施態様においては、第2領域(6)と第3領域(7)の境界線が、剥離終端ハーフカット線(9)の内周に沿って第2領域側に膨らんで、非剥離領域(19)を形成している。このようにすることにより、剥離終端ハーフカット線(9)の内側の上層(11)が下層(12)に接着される結果となり、剥離終端において、何らかの原因で剥離終端ハーフカット線(9)の内側の上層(11)が下層(12)に残らずに剥離してしまうといった事故を防止することができる。剥離終端において上層(11)に確実に孔が形成され、その結果剥確実に離終端線の長さが削減される効果を発揮する。
【0074】
また
図9に示した実施態様においては、さらに湯切り孔形成用ハーフカット線(10)に囲まれた領域内にも非剥離領域(19)を設けてある。こうすることにより、湯切り孔形成用ハーフカット線(10)の内部の下層(12)が確実に上層(11)に付着して上
層と共に除去され、湯切り孔(18)が確実に形成される。
以下実施例に基づき、本発明に係る湯切り用蓋体について具体的に説明する。
【実施例1】
【0075】
図8に示したような層構成からなる蓋体を作成した。
上層(11)の合成樹脂フィルム(20)として、厚さ12μmのPET樹脂フィルム(一般品)を用いた。紙(22)として坪量79.1g/m
2の片アート紙を用いた。
【0076】
片アート紙の表面側に硝化綿ウレタン系のインキを用いて絵柄インキ層(21)を形成し、その上にPETフィルムをラミネートした。片アート紙の裏面側に硝化綿ウレタン系の目止ニスを塗布して目止ニス層(23)を形成し、次いで第2領域(6)となるべき部分に、ワックス系の剥離ニスを印刷し、剥離ニス層(24)とした。
【0077】
下層(12)の合成樹脂フィルム(27)として、厚さ12μmのPETフィルム(両面処理品)を用いた。このPETフィルムの表面側に厚さ9μmのアルミニウム箔(27)を貼り合せ、さらにイージーピール樹脂からなる接着樹脂層(28)を20μmの厚さに形成した。
【0078】
上層(11)の一部剥離層(24)が設けられた目止ニス層(23)面と、下層(12)のPETフィルム面とを低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)による押出ラミネート法によって貼り合せた。これにより、厚さ20μmのラミネート樹脂層(25)が形成された。
【0079】
貼り合わせた積層シートを金型により打ち抜き加工して、
図1に示したような形状の直径180mmの湯切り用蓋体(1)を形成した。打ち抜き加工と併せて、下層(12)には、上層(11)の片アート紙内部にまで達する剥離開始ハーフカット線(8)と湯切り孔形成用ハーフカット線(10)を形成し、上層(11)にはPETフィルムと紙(22)を貫通する剥離終端ハーフカット線(9)を形成した。
【0080】
剥離終端ハーフカット線(9)の形状は、楕円弧状であり、深さ(D)を約3mmとした。剥離終端ハーフカット線(9)の末端の幅は約20mmであり、この楕円弧状ハーフカット線を10mm間隔で4個並べた。剥離終端ハーフカット線(9)によって削減された剥離終端線の長さの合計(L’)は、削減される前の剥離終端線の長さ(L)の約40%になっている。
【0081】
こうして得られた蓋体(1)を発泡ポリスチレン製のカップ容器(2)のフランジ部に熱シールした。
【0082】
<比較例1>
剥離終端ハーフカット線(9)の替りに、第2領域(6)と第3領域(7)の境界線上に上層(11)を貫通するミシン目線を設けた他は、実施例1と同様にして蓋体を作成し、カップ容器のフランジ部に熱シールした。なおミシン目線の仕様は、カット部5mm、つなぎ部2mmの直線ミシンである。
【0083】
<比較例2>
剥離終端ハーフカット線を設けなかった以外は、実施例1と同様にして蓋体を作成し、カップ容器のフランジ部に熱シールした。
【0084】
上記3種類の蓋付容器を開封し、蓋体を剥離終端まで剥離した時のデッドホールド性、および湯切り操作適性を評価したところ、実施例1の蓋体では、剥離終端における折れ曲
り性が良好であり、湯切り孔部分を確認し易く、安全に湯切り操作を行うことができた。比較例2の蓋体が最も劣り、実施例1の蓋体が最も優れていた。比較例1の蓋体は、その中間的な性能であった。