(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最後の前記ジャムに対する回復動作が完了してから、前記第2液体吐出ヘッドの対向領域を通過した記録媒体に付与された前記第1液体の付与量の和を計数する付与量計数手段をさらに備えており、
前記計数値補正手段は、前記付与量の和が第3閾値を超える毎に、前記ジャム回数計数手段が計数した計数値を増加させる補正を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
対向部材と、前記対向部材が前記第2液体吐出面に隙間を挟んで対向したとき、前記対向部材及び前記第2液体吐出面と共に前記開口を内包して外部空間から前記隙間を区画する区画部材とを有していると共に、前記区画部材が前記隙間を外部空間から区画した区画状態と、前記区画部材が前記隙間を外部空間に開放した開放状態とを取り得るキャップ機構と、
前記区画状態の前記キャップ機構内に加湿空気を供給する加湿動作を行う加湿機構と、
前記ジャム検知手段によりジャムが検知されてから当該ジャムに係る記録媒体が前記搬送経路から取り除かれるまでの経過時間を計数する経過時間計数手段と、
湿度を検出する湿度検出センサと、
前記湿度検出センサにより検出された湿度が基準湿度に比べて高い場合には、前記検出湿度と前記基準湿度との差が大きくなるほど前記経過時間が大きく減少するように補正を行い、前記湿度検出センサにより検出された湿度が基準湿度に比べて低い場合には、前記検出湿度と前記基準湿度との差が大きくなるほど前記経過時間が大きく増加するように補正を行う経過時間補正手段とを備えており、
前記制御手段は、
前記経過時間補正手段により補正された前記経過時間が第4閾値未満の場合、前記加湿動作を行うことなく前記回復動作を行うように、前記ヘッド回復機構を制御し、
前記経過時間補正手段により補正された前記経過時間が前記第4閾値以上の場合、前記加湿動作の後に前記回復動作を行うように、前記キャップ機構、前記加湿機構及び前記ヘッド回復機構を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
前記経過時間補正手段は、前記基準湿度の属する区画を含んで複数の第5閾値で区画された湿度領域において、前記検出湿度が前記基準湿度の属する区画である基準区画に含まれる湿度に比べて高い場合には、前記基準区画と前記検出湿度が属する区画である検出区画との間の湿度差が大きいほど前記経過時間を大きく減少する補正を行い、前記検出湿度が前記基準区画に含まれる湿度に比べて低い場合には、前記基準区画と前記検出区画との間の湿度差が大きいほど前記経過時間を大きく増加する補正を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
前記経過時間補正手段は、前記湿度検出センサにより検出された湿度から平均湿度を算出し、当該平均湿度と前記基準湿度とに基づいて前記経過時間の補正を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の画像記録装置。
前記区画部材が、弾性材料からなり前記第2液体吐出ヘッドを取り囲む環状のリップ部材と、弾性材料からなり前記リップ部材と前記第2液体吐出ヘッドとの間を繋ぐダイアフラムとを有しており、
前記キャップ機構は、前記リップ部材を、前記対向部材に当接する当接位置と前記対向部材から離隔する離隔位置との間を移動させる移動機構を含んでいることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<第1実施形態>
本発明の実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。用紙搬送経路に沿って、図示しない複数のジャム検知センサ81が配置されている(
図9参照)。空間Cには、ヘッド10に対する液体供給源としてのカートリッジ39が収容されている。
【0025】
空間Aには、2つのヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット、加湿動作に用いられる加湿機構50(
図5参照)、ワイパー移動機構60(
図8参照)等が配置されている。空間Aの上部には、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司るコントローラ1pが配置されている。
【0026】
コントローラ1pは、外部装置から供給された画像データに基づいて、プリンタ1各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復・維持に係るメンテナンス動作等を制御する。メンテナンス動作には、フラッシング動作、パージ動作、払拭動作、加湿動作等が含まれる。フラッシング動作は、吐出口14aの全て又は一部に対するインク排出動作であって、対応するアクチュエータが駆動される。フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて、吐出口14aから所定数のインク滴が吐出される。パージ動作は、吐出口14aの全てに対するインク排出動作であって、パージポンプ69(
図9参照)が駆動される。パージポンプ69からの印加圧力により、吐出口14aから所定量のインクが排出される。払拭動作は、吐出面10aの清浄化動作であって、ワイパー61により吐出面10aが払拭される。この動作は、各インク排出動作後に行われる。加湿動作は、吐出口14aへの水分補給動作であって、吐出面10aと対向する吐出空間S1(
図5参照)内に加湿空気が供給される。
【0027】
搬送ユニット21は、プラテン9と、搬送ニップローラ対5、6等を有する。搬送ニップローラ対5、6は、プラテン9を挟んで、搬送方向両側に配置されている。それぞれ、一対のローラ部材で構成され、用紙Pを上下に挟持して、搬送方向に用紙Pを搬送する。搬送ニップローラ対5は、用紙Pをプラテン9上に供給する。搬送ニップローラ対6は、用紙Pをプラテン9上から排紙部31に向けて送り出す。
【0028】
プラテン9は、印刷時に吐出面10aと所定間隔を介して対向配置されて、用紙搬送経路を構成する。
図1に示すように、プラテン9は、反転機構7及びガラステーブル8とともに、対向部材切替機構も構成する。メンテナンス動作時には、反転機構7が駆動されて、ガラステーブル8がプラテン9の代わりに対向配置される。対向部材切替機構は、昇降可能であり、下降されて対向部材の切り替えが行われる。
【0029】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(
図3及び
図4参照)が開口した吐出面10aである。搬送経路に沿って、上流側にはヘッド10(P)が配置され、下流側にはヘッド10(K)が配置されている。印刷時には、用紙Pの画像形成領域に対して、ヘッド10(P)からプレコート液滴が吐出され、これにヘッド10(K)からのインク滴が重ねられる。
【0030】
プレコート液としては、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等が用いられ、インクの着色剤から不溶性又は難溶性の金属複合体等が生成される。顔料インクでは、顔料色素の凝集が生じる。染料インクでは、染料色素の析出が生じる。これにより、インクの滲みが抑制される。また、インクが用紙P内へ浸透しにくくなり、表面への定着が向上する。この結果、画質が向上する。
【0031】
2つのヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。このとき、吐出面10aは、所定の間隙を介して、プラテン9又はガラステーブル8と対向する。また、ヘッドホルダ3には、ヘッド10毎に環状のキャップ40及び一対のジョイント51が設置されている。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの用紙搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0032】
ヘッドホルダ3は、ホルダ昇降モータ68(
図9参照)を動力源とするホルダ昇降機構により昇降される。ヘッドホルダ3は、3つの位置(下から順に、印刷位置、払拭位置、退避位置:
図10参照)に配置可能である。印刷位置は、ヘッド10が用紙Pに対して液滴を吐出する位置である。払拭位置は、ワイパー61が吐出面10aを払拭する位置である。退避位置は、ワイパー61が吐出面10aに接触しない位置である。
【0033】
ガイドユニットは、搬送経路に沿って、搬送ユニット21を挟んで配置されている。上流側のガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1bと搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側のガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0034】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25から構成され、給紙トレイ23が筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口した箱体であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0035】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した印刷指令に基づいて、コントローラ1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ(図示せず)、搬送モータ等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、プレコート液及びインクが順に吐出されて、用紙P上に画像が形成される。用紙Pは、その後、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0036】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、トレイ35内に並んで収納された2つのカートリッジ39、及び、図示しない水タンク54(
図5参照)を有する。各カートリッジ39は、チューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド10にプレコート液又はインクを供給する。
【0037】
次に、
図2〜
図4及び
図7を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、
図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0038】
図2〜
図4に示すように、ヘッド10は、下から順に、アクチュエータユニット17を搭載した流路ユニット12、リザーバユニット11、回路基板等が積層された積層体である。流路ユニット12の上面に、8つのアクチュエータユニット17が固定されている。ドライバICが実装されたFPCが、アクチュエータユニット17と回路基板とを接続している。
【0039】
流路ユニット12は、
図4に示すように、9枚の金属プレート12a〜12iが順に積層された積層体で、平面視で矩形状である。上面12xの開口12yを一端として、内部にはマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14が形成されている。個別インク流路14は吐出口14a毎に形成され、アパーチャ(流路抵抗調整用に絞り)15を含む。上面12xのアクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16が開口する。吐出面10aの接着領域と対向する領域には、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
【0040】
アクチュエータユニット17は、開口12yを避けて、2列の千鳥状に配置されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎のユニモルフ型アクチュエータを含み、各圧力室16を覆っている。アクチュエータは、複数の積層された圧電層、最外層表面で圧力室16と対向した個別電極、個別電極と最外層を挟む共通電極とで構成されている。
【0041】
リザーバユニット11は、内部に、リザーバを含むインク流路が形成されている。リザーバには、カートリッジ39からのインクが、一時的に貯留される。下面は、凹凸面である。凸部とは、インク流路の一端が開口し、流路ユニット12の開口12yと連通している。凹部は、上面12xとの間に隙間を形成する。隙間内にアクチュエータユニット17が収容され、凹部との間には若干の隙間がある。
【0042】
回路基板では、コントローラ1pからの各種駆動信号が調整され、ドライバICを介して各アクチュエータに伝達される。駆動信号が出力されると、アクチュエータは、圧力室16の容積を変化させ、対応する吐出口14aから液滴が吐出されることになる。
【0043】
次に、
図2、
図5、及び
図6を参照し、ヘッドホルダ3を取り巻く構成について説明する。
【0044】
ヘッドホルダ3は、金属等からなるフレームであり、対向部材(ガラステーブル8及びプラテン9)に対して吐出面10aを所定の位置関係に支持する。メンテナンス関連部材も、ヘッド10毎に支持されている。例えば、加湿機構50の一部、キャップ40等である。加湿機構50の一部としては、加湿空気の供給口及び排出口(一対のジョイント51)が相当する。キャップ40は、吐出面10aの外周を覆う環状部材である。
【0045】
一対のジョイント51は、ヘッド10の主走査方向両端部に近接配置されている。加湿動作において、
図5に示すように、右側のジョイント51が加湿空気を吐出空間S1に供給する。下面の開口51bは、加湿空気の供給口である。左側のジョイント51が空気を吐出空間S1から回収する。下面の開口51aは、排出口である。ジョイント51は、
図6に示すように、基端部51xと円筒部51yとを含む。中空空間51zが、両部51x、51yを上下に貫通している。円筒部51yは、ヘッドホルダ3の貫通孔3aに挿通され、先細りの先端部がチューブ55と接続されている。円筒部51yと貫通孔3aとの間には若干の隙間があるが、シール材等が充填されている。
【0046】
キャップ40は、弾性体41及び昇降可能な可動部42を含む。弾性体41は、ゴム等の弾性材料からなり、
図6に示すように、4つの部分(基部41x、突出部41a、固定部41c、接続部41d)から構成される。
【0047】
このうち、固定部41cは、断面視T字形状を有する。平らな上端面は、ヘッドホルダ3に接着されて、ヘッド10(吐出面10a)を全周に亘って包囲している。貫通孔3a近傍では、固定部41cの一部が、ヘッドホルダ3及びジョイント51(基端部51x)に挟持されている。接続部41dは、内側の固定部41cと外側の基部41xとを接続する。この間を、接続部41dは、湾曲しつつ延びている。接続部41dの湾曲は、可動部42による基部41xの昇降を可能にする。突出部(リップ)41aは、基部41xの下面から先細りに突出して、断面が三角形状である。基部41xの上面には、凹部41bが形成され、可動部42の下端が嵌合されている。
【0048】
可動部42は、環状の金属部材で、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に移動できる。可動部42は、複数のギヤ43を介して、リップ昇降モータ44(
図9参照)と接続されている。コントローラ1pの制御の下、リップ昇降モータ44が駆動されると、可動部42が基部51xを伴って昇降する。可動部42の昇降により、突出部41aは、先端41a1がガラステーブル8(表面8a)に当接する当接位置(
図5参照)と、表面8aから離隔した離隔位置(
図6参照)とを選択的に取る。例えば、ヘッド10が印刷位置にあれば、当接位置で先端41a1が表面8aに当接して、吐出空間S1が外部空間S2から区画される。このとき、吐出空間S1は、封止状態となる。離隔位置では、吐出空間S1が、外部空間S2に開放されて非封止状態となる。
【0049】
次に、
図5及び
図7を参照し、加湿機構50の構成について説明する。
【0050】
加湿機構50は、
図5に示すように、ジョイント51、チューブ55,56,57、ポンプ53、及びタンク54を含む。ジョイント51は各ヘッド10に2つずつ設けられているが、ポンプ53及びタンク54は、
図7に示すように、各ヘッド10に共有されている。チューブ55,57はそれぞれ、各ヘッド10に共通の主部55a,57a、及び、主部55a,57aから分岐してジョイント51まで延在した2つの分岐部55b,57bを含む。
【0051】
チューブ55は、一端(各分岐部55bの先端)が一方(
図5の左側)のジョイント51に嵌合し、他端(主部55aの分岐部55bと反対側の端部)がポンプ53に接続されている。チューブ56は、ポンプ53とタンク54とを接続している。チューブ57は、一端(各分岐部57bの先端)が他方(
図5の右側)のジョイント51に嵌合し、他端(主部57aの分岐部57bと反対側の端部)がタンク54に接続されている。
【0052】
タンク54は、下部空間に水を貯留し、上部空間に加湿空気を貯蔵している。チューブ56は、タンク54内の水面よりも下方(下部空間)に接続し、チューブ57は、タンク54内の水面よりも上方(上部空間)に接続している。なお、チューブ56には、図示しない逆止弁が取り付けられており、
図5の矢印方向にのみ空気が流れるようになっている。
【0053】
次に、
図8を参照しつつワイパー移動機構60について説明する。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、ワイパー移動機構60は、ヘッド10毎に設けられており、ワイパー61、ワイパーホルダ60a、一対のガイド60b及びワイパー移動モータ63(
図9参照)を有している。ワイパーホルダ60aは、ワイパー61を支持し、ガイド60bに沿って移動可能である。ガイド60bは、ヘッド10を副走査方向に挟んで、主走査方向に延びている。ワイパー61は、弾性材料からなる板状部材であり、長手方向を副走査方向に配置されている。ワイパー移動モータ63が駆動されると、ワイパーホルダ60aがガイド60bに沿って往復移動する。払拭動作が行われなければ、ワイパー61は、待機位置に配置されている。待機位置は、
図8においてヘッド10の左端近傍の位置である。
【0054】
図8(c)に示すように、ワイパー61の上端部は、吐出面10aに直交する方向に関する高さが、用紙搬送方向に関する上流側端部が最も高くなるように傾斜している。払拭動作において、ワイパー61の吐出面10aに対する押圧力は、上流側の方が下流側より大きくなり、インクとプレコート液との凝集物の除去に効果的である。
【0055】
次に、コントローラ1pについて説明する。コントローラ1pは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。コントローラ1pを構成する各機能部は、これらハードウェアと不揮発メモリ内のソフトウェアとが協働して構築されている。
図9に示すように、コントローラ1pは、ヘッド制御部71と、メンテナンス制御部72と、ジャム検知部73と、ジャム回数計数部74と、通過数計数部75と、塗布量計数部76と、経過時間計数部77と、経過時間補正部78と、ジャム回数補正部79とを有している。
【0056】
ヘッド制御部71は、画像形成動作及びフラッシング動作でアクチュエータユニット17を制御する。画像形成動作では、画像データに基づいて、各液滴(インク滴及びプレコート液滴)の吐出が行われる。この吐出は、用紙Pの搬送と同期しており、用紙センサからの出力信号(先端検出信号)に基づく所定タイミングで行われる。フラッシング動作では、フラッシングデータに基づく各液滴の吐出が行われる。
【0057】
ジャム検知部73は、用紙搬送経路に沿って配置された複数のジャム検知センサ81からの検知信号を受信する。このうち、本発明に関与する2つのジャム検知センサ81は、2つのヘッド10を挟んで、用紙搬送経路に関する上流側直前の位置と、下流側直後の位置とにそれぞれ配置されている。各ジャム検知センサ81は、搬送された用紙Pの先端を検出し、その検知信号をコントローラ1pのジャム検知部73に出力する。ジャム検知部73は、両センサ81間の離隔距離と用紙Pの搬送速度との関係から、所定の時間間隔で信号が得られないとき、用紙Pへのプレコート液の吐出が開始された後であって、当該用紙Pがヘッド10(K)と対向する領域を通過するまでにジャムが発生したと判断する。この場合のジャムは、プレコート液がヘッド10(K)側面に付着する可能性がある。なお、上流側直前のジャム検知センサ81は、用紙センサでもあり、その先端検知信号により液滴の吐出タイミングが決められる。
【0058】
ジャム回数計数部74は、ジャム検知部73が問題のジャムを検知したときに、ジャム回数を計数(インクリメント)する。なお、ジャム回数計数部74は、後述するジャムパージ動作群が実行されたときは、計数したジャム回数を0にリセットする。
【0059】
通過数計数部75は、最後に発生した問題となるジャムに対する回復動作(後に詳述)が完了してから、ヘッド10(K)の下方(対向領域)を通過した用紙Pの数である通過数を計数する。
【0060】
塗布量計数部76は、最後に発生した問題となるジャムに対する回復動作(後に詳述)が完了してから、ヘッド10(K)の下方を通過した用紙Pに塗布(吐出)されたプレコート液の塗布量の和を計数する。
【0061】
経過時間計数部77は、ジャム検知部73により問題となるジャムが検知されてから当該ジャムに係る用紙Pが用紙搬送経路から取り除かれるまでの経過時間を計数する。なお、経過時間計数部77は、全てのジャム検知センサ81が用紙Pを検出しなくなった後に、図示しないメンテナンスカバーが閉じられたことを検知したときに、当該ジャムに係る用紙Pが用紙搬送経路から取り除かれたと判断する。
【0062】
経過時間補正部78は、ジャム検知部73によりジャムが検知されてから当該ジャムに係る用紙Pが用紙搬送経路から取り除かれたとき、ヘッド10近傍に設置されている湿度検出センサ82の検出結果(以下、検出湿度)に基づいて、経過時間計数部77が計数した経過時間を補正する。経過時間補正部78は、検出湿度が基準湿度に比べて高い場合には、検出湿度と基準湿度との差が大きくなるほど大きく減少するように経過時間を補正し、検出湿度が基準湿度に比べて低い場合には、検出湿度と基準湿度との差が大きくなるほど大きく増加するように経過時間を補正する。これにより、ヘッド10に付着した液体の増粘度と経過時間との相関性が高くなる。ここで、検出湿度は、検出結果の単位時間当たりの平均湿度となっている。
【0063】
なお、経過時間の補正については、6つの閾値で5つに区画された湿度領域(0%〜20%、21%〜40%、41%〜60%、61%〜80%、81%〜100%)を画定し、検出湿度が基準湿度の属する区画である基準区画(21%〜40%)に含まれる湿度に比べて高い場合には、基準区画と検出湿度が属する区画である検出区画との間の湿度差が大きいほど大きく減少するように経過時間を補正し、検出湿度が基準区画に含まれる湿度に比べて低い場合には、基準区画と検出区画との間の湿度差が大きいほど大きく増加するように経過時間を補正してもよい。このように、区画単位で経過時間を補正することで、補正が容易となる。区画する湿度領域の幅は同じであっても少なくとも2つの区画同士で互いに異なっていてもよい。また、区画する温度領域の数は2つ以上であれば任意の数であってよい。
【0064】
ジャム回数補正部79は、通過数計数部75が計数した通過数が所定の閾値(第1閾値:本実施形態においては100枚)を超える毎に、ジャム回数計数部74が計数したジャム回数を増加させる(本実施形態においては1回増加させる)補正を行う。さらに、ジャム回数補正部79は、塗布量計数部76が計数した塗布量の和が所定の閾値(第3閾値:本実施形態においては100ml)を超える毎に、ジャム回数計数部74が計数したジャム回数を増加させる(本実施形態においては1回増加させる)補正を行う。
【0065】
メンテナンス制御部72は、メンテナンス動作であるフラッシング動作、パージ動作、払拭動作及び加湿動作がそれぞれ行われるように、ホルダ昇降モータ68、ヘッド制御部71を介してヘッド10、パージポンプ69、ワイパー移動モータ63、リップ昇降モータ44、加湿機構50のポンプ53、反転機構7を制御する。以下、動作毎に説明する。
【0066】
フラッシング動作は、印刷開始直前、及び印刷開始後一定時間毎に開始される。メンテナンス制御部72は、フラッシング動作が開始されると、ヘッド10のアクチュエータユニット17を駆動して、吐出口14aから各液滴を強制的に吐出させる。液滴の吐出先は、ガラステーブル8上の場合もあれば、印刷中の用紙P上の場合もある。後者の場合、画品質の観点から、最小液滴(例えば、4pl)が用いられ、画像用画素を避けた吐出である。
【0067】
パージ動作は、用紙搬送経路内においてジャムした用紙Pが除去された後、印刷開始直前等に開始される。メンテナンス制御部72は、パージ動作が開始されると、ホルダ昇降モータ68を制御してヘッド10を退避位置に配置し、反転機構7を制御してガラステーブル8を吐出面10aに対面させる。この後、メンテナンス制御部72は、パージポンプ69を制御して、ヘッド10に液体(インク又はプレコート液)を圧送する。各吐出口14aからは、液体が強制排出される。排液は、ガラステーブル8を介して、図示しない廃液タンクに収容される。
【0068】
払拭動作は、フラッシング動作又はパージ動作に続いて行われる。払拭動作の直前では、
図10(a)に示すように、ヘッド10は印刷位置にある。払拭動作の指令により、メンテナンス制御部72は、ホルダ昇降モータ68を制御して、ヘッド10を
図10(b)に示す退避位置に配置し、リップ昇降モータ44を制御して、突出部41aを離隔位置に配置する。この状態で、ワイパー移動機構60が駆動されて、ワイパー61が、突出部41a直下を通過して吐出面10aの直前まで移動する。ここで、メンテナンス制御部72は、ヘッド10を下降して
図10(c)の払拭位置に配置する。さらに、ワイパー移動機構60が駆動されて、ワイパー61が、吐出面10aに接触しつつ移動する。払拭方向は、
図8(b)に示すように、左の待機位置から右方である。メンテナンス制御部72は、吐出面10aが払拭された後に、ヘッド10を一旦退避位置に配置して、ワイパー61を待機位置に移動させた後、ヘッド10を印刷位置に戻すことで、払拭動作を完了する。
【0069】
また、メンテナンス制御部72は、用紙搬送経路において用紙Pがジャムしたとき(ジャム検知部73が用紙Pのジャムを検知したとき)、ユーザによって当該用紙Pが除去された後に、パージ動作及び払拭動作が連続する回復動作を実行させる。回復動作におけるパージ動作及び払拭動作の組み合わせとその回数は、
図11に例示される。
図11(a)には、ノーマルパージ群が示され、パージ動作及び払拭動作が各1回ずつである。
図11(b)には、ジャムパージ群が示され、パージ動作及び払拭動作の組み合わせが、計3回繰り返される。
【0070】
通常、ジャム処理が完了すると、回復動作としてノーマルパージ動作群が採用される。パージ動作では、吐出口14a全体から約2ml(大)の液体が強制排出される。ジャムパージ動作群は、ジャム回数補正部79によって補正されたジャム回数が所定の閾値(第2閾値:本実施形態においては3回)になっているときに採用される回復動作で、ノーマルパージ動作群に加えて、さらに2組のパージ動作及び払拭動作が実行される。2回目及び3回目のパージ動作は、1回目より液体排出量が少なく、約1ml(小)である。さらに、液体の強制排出量の減少に合わせて、1回目に比べて、2回目及び3回目のワイパー61による払拭速度(ワイパー61の移動速度)が下げられている。本実施形態では、パージ回数が増えると、払拭速度が下げられる点に特徴がある。
【0071】
このように、本実施形態では、回復動作において、ジャム回数補正部79によって補正された計数値が3回となったときに、それ以外のときよりも、パージ動作及び払拭動作の回数が多くなる。
【0072】
また、メンテナンス制御部72は、経過時間補正部78により補正された経過時間が所定の閾値(第4閾値:本実施形態においては4時間)未満の場合、加湿動作を行わずに回復動作のみを行い、当該経過時間が4時間以上の場合、加湿動作の後に回復動作を行う。
【0073】
ここで、用紙Pが、プレコート液の塗布後、記録用ヘッド10(K)を完全に横切るまでにジャムを起こすと、プレコート液が記録用ヘッド10(K)の上流側側面に付着する虞がある。ジャムが複数回重なると、プレコート液の蓄積と吐出面10aへの拡散(吐出不良の要因)が心配される。本実施形態では、ジャム処理3回毎に1回のジャムパージ動作群が実行されることにより、プレコート液の広がりによる不具合が未然に防がれている。
【0074】
加湿動作は、キャップ状態(封止状態)にある吐出空間S1内を加湿する動作であり、印刷が完了した後やジャム処理完了後に開始される。なお、加湿動作時における下記一連の動作の間、ヘッド10は印刷位置に配置されている。また、反転機構7によりガラステーブル8が吐出面10aと対面している。
【0075】
メンテナンス制御部72は、加湿動作を開始すると、先ず、ギヤ43の回転により可動部42を下方に移動させる。突出部41aは、印刷時の離隔位置(
図6参照)から、当接位置(
図5参照)に移動する。これにより、突出部41aは、ガラステーブル8に当接して、吐出空間S1を封止状態とする。なお、メンテナンス制御部72は、印刷時以外の待機状態又は休止状態においても、突出部41aを当接位置に移動させてキャップ状態とする。
【0076】
メンテナンス制御部72は、ポンプ53を駆動し、加湿空気の循環を行う。吐出空間S1に対して、ポンプ53が駆動されると、開口51aから空気が回収され、開口51bから加湿空気が供給される。このとき、回収された空気は、チューブ55、56を介して、タンク54の下部空間に至る。空気は、下部空間の水で加湿され、上部空間に溜まる。貯留された加湿空気は、湿度がほぼ100%である。上部空間の加湿空気は、さらに、チューブ57を介して、開口51bに至る。メンテナンス制御部72は、所定時間経過すると、ポンプ53を停止する。この加湿空気の供給により、キャップ40内のインクが加湿され、吐出口14aのインク増粘が抑制される。また、吐出面10aに生じる凝集物も加湿され、払拭動作で除去されやすくなる。
【0077】
図5中、黒塗りの矢印は加湿前の空気の流れを示し、白抜きの矢印は加湿後の空気の流れを示す。メンテナンス制御部72は、上記のポンプ53の駆動と共に、
図7に示す各分岐部55b,57bに設けられた切換弁等(図示せず)を制御することにより、分岐部55b,57bにおける空気の流れを選択的に調節する。
【0078】
図12を参照しつつ、用紙搬送時のメンテナンス動作について説明する。
図12に示すように、用紙Pがヘッド10(K)の下方(対向領域)を通過したとき(S101:YES)、通過数計数部75が通過数を計数すると共に塗布量計数部76が用紙Pに塗布されたプレコート液の塗布量の和を計数する。そして、ジャム回数補正部79が、当該通過数が閾値(第1閾値:本実施形態においては100枚)を超えたと判断したときのみ(S102:YES)、ジャム回数を単位回数(例えば、1回)だけインクリメントする(S103)。さらに、ジャム回数補正部79が、当該塗布量の和が閾値(第3閾値:本実施形態においては100ml)を超えたと判断したときのみ(S104:YES)、ジャム回数を単位回数(例えば、1回)だけインクリメントする(S105)。
【0079】
ジャム検知部73が用紙Pのジャムが発生したか否かを判断する(S106)。ジャムが発生したとジャム検知部73が判断すると(S106:YES)、メンテナンス制御部72は、ユーザによって当該用紙Pを除去するジャム処理が完了するまで待機する(S107:NO)。また、経過時間計数部77は、ジャム検知後の経過時間の計数を開始する。時間の計数は、ジャム処理完了まで続く。この間も、経過時間補正部78は、湿度検出センサ82からの出力を単位時間毎にサンプリングし、平均湿度(検出湿度)を算出していく。ジャム処理が完了すると(S107:YES)、経過時間補正部78が、検出湿度が基準湿度に比べて高い場合には、検出湿度と基準湿度との差が大きくなるほど大きく減少するように経過時間を補正し、検出湿度が基準湿度に比べて低い場合には、検出湿度と基準湿度との差が大きくなるほど大きく増加するように経過時間を補正する(S108)。そして、メンテナンス制御部72は、経過時間が4時間以上経過しているか否かを判断する(S109)。
【0080】
メンテナンス制御部72は、経過時間が4時間以上経過していると判断すれば(S109:YES)、加湿動作を行ってから(S110)、
図11(b)に示すジャムパージ動作群を実行させる(S112)。経過時間が4時間未満とメンテナンス制御部72が判断しとき(S109:NO)、メンテナンス制御部72は、ジャム回数が3回以上となっているか否かを判断する(S111)。メンテナンス制御部72は、ジャム回数が3回以上となっていなければ(S111:NO)、
図11(a)に示すノーマルパージ動作群を実行させる(S114)。そして、ジャム回数計数部74がジャム回数を現時の総ジャム回数に設定して(S115)、S101に戻る。現時の総ジャム回数とは、通過数及び塗布量で導出された総インクリメント数とノーマルパージ動作群の実行直前のジャム回数との和である。メンテナンス制御部72は、ジャム回数が3回以上となっていれば(S111:YES)、ジャムパージ動作群を実行させる(S112)。そして、ジャム回数計数部74がジャム回数を0にリセットして(S113)、S101に戻る。
【0081】
ここで、ジャム検知部73が、S106において用紙Pのジャムは無いと判断すると(S106:NO)、メンテナンス制御部72は、用紙Pの通過数及び用紙Pへの塗布量によって、ジャム回数に対する単位回数以上の補正があったか否かを判定する(S116)。補正量(総インクリメント数)が、単位回数(例えば、1回)以上であればS111に進み、単位回数未満であればS101に戻る。各ステップ以降の手順は、上述の通りである。
【0082】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、通過数及び塗布量に基づいて補正されたジャム回数によって回復動作の開始タイミングが決定されるため、ジャムによるヘッド10(K)の吐出面10aへのプレコート液の直接付着のみならず、用紙Pの通過によるヘッド10(K)側面へのプレコート液の蓄積を考慮して回復動作が行われることになる。これにより、吐出口14a近傍でのプレコート液とインクとの反応やこれに伴う吐出特性の低下を効率よく抑制することができる。
【0083】
また、ジャム回数補正部79によって補正された計数値が3回以上となったときに、回復動作において、ジャムパージ動作群が実行されるため、それ以外のノーマルパージ動作群が実行されるときよりも、パージ動作及び払拭動作の回数が多くなり、ヘッド10(P)に残存したプレコート液やプレコート液による生成物をより確実に除去することができる。
【0084】
このとき、ジャムパージ動作群においては、パージ動作の順番が進むにつれて、全吐出口14aからの液体の排出量を漸減させるため、パージ動作に係る液体の消費量が大きくなるのを抑制することができる。加えて、払拭動作の前にパージ動作によって吐出面10aが濡らされることで、吐出面10aが払拭動作によって損傷するのが抑制される。
【0085】
さらに、ジャムパージ動作群を実行させるときは、1回目の払拭動作におけるワイパー61の移動速度よりも、2回目及び3回目の払拭動作にけるワイパー61の移動速度を低くすることで、各吐出面10aの損傷を抑制しつつ効率よく吐出面10aを払拭することができる。
【0086】
さらに、プレコート液に係る塗布量の和によって、ジャム回数が補正されるため、プレコート液滴の吐出頻度に応じて適切なタイミングで回復動作を行うことができる。
【0087】
さらに、経過時間補正部78により補正された経過時間が4時間未満の場合、回復動作のみを行い、当該経過時間が4時間以上の場合、加湿動作の後に回復動作を行う。このとき、経過時間補正部78は、検出湿度に基づいて計数時間を補正するため、ジャムが発生してからの経過時間に応じて適切な回復動作を行うことができる。
【0088】
さらに、このとき、検出湿度を検出結果の平均湿度とすることで、経過時間を補正するための制御が容易となる。
【0089】
また、キャップ40が吐出面10a及び側面の一部を被覆することができるため、ヘッド10(K)の側面に残存したプレコート液が乾燥して固着するのを抑制することができる。
【0090】
このとき、加湿動作を行うことで、ヘッド10(K)の側面に残存したプレコート液が乾燥して固着するのを確実に抑制することができる。
【0091】
さらに、ワイパー61の上端部が、吐出面10aに直交する方向に関する高さが払拭動作を行っているとき用紙搬送方向に関する上流側端部が最も高くなるように傾斜している。ヘッド10(K)の上流側側面は、通過する用紙P上のプレコート液が蓄積しやすい場所であり、吐出面10aに広がるプレコート液を効率よく除去することができる。
【0092】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態は、キャップ機構の構成のみが上述の第1実施形態と異なるため、キャップ機構の構成についてのみ説明する。他の部材及び機能部については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0093】
上述の第1実施形態のキャップ40は、対応するヘッド10の吐出面10a全域をそれぞれ包囲する構成となっているが、第2実施形態に係るキャップ240は、
図13に示すように、ヘッド10から独立した底板と底板から突出する弾性材料製の環状突起とを有している。キャップ240は、環状突起の先端が吐出面10aに当接する当接位置と吐出面10aから離隔する離隔位置との間において、図示しないキャップ移動機構により移動可能となっている。キャップ240が当接位置に移動されたとき、キャップ240は、吐出面10aに係る吐出口14aが形成された領域のみを被覆する。このとき、吐出面10aの縁部はキャップ240外に露出することになる。
【0094】
ここで、ヘッド10(K)の側面には、ジャムや通過数等に応じたプレコート液に加え、各パージ動作に伴う払拭動作により移動してくるインクの蓄積が生じる。このとき、インクの増粘やプレコート液との反応生成物の乾燥は、第1実施形態の構成に比べて早く進む。そのため、ジャム等による側面の蓄積物の吐出面10aへの広がりは、起こりにくい。本実施形態の構成では、例えば、
図12におけるステップS111が指示するジャム回数は、5回以上とされ、第1実施形態(ジャム回数≧3回以上)よりも閾値を大きくしている。また、一旦、蓄積物の広がりが生じると、第1実施形態の場合よりも増粘の進んだ蓄積物が移動することになる。特に、高湿環境下では、十分の乾燥が進まない分、粘着性の高い増粘物が吐出面10a上に存在することになる。そこで、本実施形態のメンテナンス制御部は、湿度検出センサ82に検出された湿度が高くなるに連れて排出量が多くなるようにジャムパージ動作群の内容を変えている。
【0095】
なお、加湿動作を行う構成としては、加湿空気に対する入口及び出口をキャップ240側に設けても良いし、ヘッド側に設けても良い。
【0096】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、通過数及び塗布量に基づいて補正されたジャム回数によってジャムからの回復動作の開始タイミングが決定されるため、ジャムによりヘッド10(K)の側面に付着したプレコート液の量のみならず、用紙Pの通過によりヘッド10(K)に付着したプレコート液の量を考慮して回復動作が実行され、プレコート液がその後のジャム等によって吐出口14a近傍に移動するのを効率よく抑制することができる。
【0097】
また、キャップ240が吐出面10aの一部のみを被覆する構成となっているため、キャップ機構の小型化を図ることができる。
【0098】
<変形例>
上述の第1及び第2実施形態では、回復動作に係るジャムパージ動作群において、パージ動作と払拭動作とが同じ回数実行される構成であるが、払拭動作の回数がパージ動作の回数よりも多くなってもよい。例えば、
図14に示すように、パージ動作及び払拭動作の組み合わせが、計3回繰り返された後に、さらに払拭動作が実行されてもよい。最終の払拭動作では、払拭速度が最も低いことが好適である。これによると、吐出面10aにこびりついた凝集物や析出物を効率よく除去することができる。
【0099】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0100】
例えば、上述の第1実施形態においては、ジャム回数が3回となったとき、ジャムパージ動作群を行う構成であるが、ジャム回数が2回以上の任意の回数となったときにジャムパージ動作群を実行する構成であってもよい。また、ジャムパージ動作群を行う度にジャム回数が0にリセットされる構成であるが、ジャム回数を0にリセットしない構成であってもよい。この場合、ジャムパージ動作群開始の有無を決定するための閾値を複数有していればよい。この閾値は、最小値が2以上、且つ、互いに隣り合う閾値同士の差が2以上であればよい。
【0101】
さらに、上述の第1実施形態においては、ジャムパージ動作群ではパージ動作及び払拭動作の組が複数回行われる構成であるが、ジャムパージ動作群において2回目以降のパージ動作の少なくとも一部が行われない構成であってもよい。
【0102】
また、上述の第1実施形態では、ジャムパージ動作群においてパージ動作の順番が進むにつれて、液体の排出量を漸減させる構成であるが、ジャムパージ動作群においてパージ動作に係る液体の排出量は任意の値であってよい。例えば、パージ動作の順番が進む毎に、液体の排出量を順次多くしてもよい。
【0103】
さらに、上述の第1実施形態では、ジャムパージ動作群を実行させるときは、1回目の払拭動作におけるワイパー61の移動速度よりも、2回目及び3回目の移動速度を低くする構成であるが、ジャムパージ動作群の各払拭動作に係るワイパー61の移動速度は任意の速度であってよい。例えば、払拭動作の順番が進むにつれて、移動速度を一定に維持してもよい。
【0104】
加えて、上述の第1実施形態においては、プリンタ1が加湿機能を有する構成であるが、このような加湿機能を有していなくてもよい。
【0105】
さらに、上述の第1実施形態においては、プレコート液に係る塗布量の和によって、ジャム回数が補正される構成であるが、このような補正を行わない構成であってもよい。
【0106】
加えて、上述の第1実施形態においては、検出湿度により補正された経過時間によって加湿動作を実行するか否かを決定する構成であるが、経過時間を補正しない構成であってもよいし、経過時間によって加湿動作を実行するか否か決定しない構成であってもよい。
【0107】
なお、検出湿度を検出結果の平均湿度とする構成であるが、ジャム処理完了直後の検出結果をそのまま使用してもよい。
【0108】
さらに、上述の第1実施形態においては、ワイパー61の上端部が、吐出面10aに直交する方向に関する高さが払拭動作を行っているとき用紙搬送方向に関する上流側端部が最も高くなるように傾斜している構成であるが、吐出面10aを払拭することができるのであればワイパーの形状は任意のものであってよい。例えば、ワイパーの上端部が吐出面10aに対して平行になっていてもよい。
【0109】
加えて、上述の第1実施形態においては、プリンタ1が2つのヘッド10を有する構成であるが、プリンタが3つ以上のヘッド10を有する構成であってもよい。
【0110】
また、上述の第1実施形態においては、プレコート液を吐出するヘッド10が用紙搬送方向に関する最も上流側に位置する構成であるが、当該ヘッド10がインク滴を吐出するヘッド10であってもよいし、ローラ等でプレコート液を塗布する塗布手段であってもよい。
【0111】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、インク以外の液体を吐出するものであってもよい。