【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
露点−50℃のグローブボックス中で1000ml三口フラスコに水分10質量ppmに脱水したジエチルカーボネート(DEC)460gを加え、攪拌しながら、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)76.0gを加えて溶解した。次いで、水分150質量ppmに乾燥させたシュウ酸45.0gを加えた。前記三口フラスコをグローブボックスの外に出し、25℃に設定したウォーターバスに漬け、十分に攪拌した。次に、四塩化ケイ素42.5gをコック付きフラスコに入れ、口にはセプタムを付けた。セプタムにキャニューラーを刺し、コックを開き窒素ガスを入れることで、ヘキサフルオロリン酸リチウム・シュウ酸・ジエチルカーボネートの混合液にキャニューラーを用いて四塩化ケイ素を圧送し、1時間かけて滴下した。滴下開始と同時に四フッ化ケイ素及び塩化水素ガスが発生した。発生したガスはソーダ石灰を充填した缶に流して、吸収させた。未溶解のシュウ酸が溶解し、反応が進行した。添加終了後、1時間攪拌を続け反応終了とした。なお、本実施例において、四塩化ケイ素1モル量に対する、ヘキサフルオロリン酸リチウムの添加比(表1中で「ヘキサフルオロリン酸塩の添加比」と表記する)は2.00モル量であり、四塩化ケイ素1モル量に対する、シュウ酸の添加比(表1中で「シュウ酸の添加比」と表記する)は2.00モル量である。得られた反応液から50℃、133Paの減圧条件でジエチルカーボネートを留去した。この後、三口フラスコをグローブボックスに入れ、ジエチルカーボネート溶液をメンブレンフィルターでろ過した。ろ液をNMR管に数滴取り、内部標準を添加して、アセトニトリル−d3を加えて溶解させた後、NMR測定した。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが30質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.2質量%含まれていた。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムの収率はヘキサフルオロリン酸リチウムの仕込み量基準で99%であった。
【0032】
含まれる塩素イオン濃度を測定するため、蛍光X線測定を行った。ろ液中の塩素イオン濃度を求め、該濃度をテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム濃度で割り、1質量%あたりに換算したところ、0.4質量ppmとなった。前記濃度を表1において「塩素イオン濃度」として示す。
【0033】
滴定法で含まれる遊離酸の濃度を測定した。ろ液中の遊離酸の濃度をテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム濃度で割り、1質量%あたりに換算したところ、フッ酸換算で20質量ppmであることが分かった。前記濃度を表1において「遊離酸濃度」として示す。
【0034】
【表1】
【0035】
[実施例2]
シュウ酸46.8gを用い、四塩化ケイ素に対しシュウ酸をモル比で1:2.08とした他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが31質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.2質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0036】
[実施例3]
シュウ酸43.2gを用い、四塩化ケイ素に対しシュウ酸をモル比で1:1.92としたことと、非水溶媒にエチルメチルカーボネート(EMC)を用いたこと以外は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが29質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが1.4質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0037】
[実施例4]
ヘキサフルオロリン酸リチウム73.0gを用い、四塩化ケイ素に対しヘキサフルオロリン酸リチウムをモル比で1:1.92としたことと、非水溶媒に酢酸エチル(AcOEt)を用いたこと以外は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが30質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.1質量%、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムが0.1質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0038】
[実施例5]
ヘキサフルオロリン酸リチウム190.0gを用い、四塩化ケイ素に対しヘキサフルオロリン酸リチウムをモル比で1:5.00とした他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが23質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0039】
[実施例6]
実施例1のジエチルカーボネート(DEC)に代えて、ジメチルカーボネート(DMC)460gを、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)に代えて、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF
6)84.0gを加え、ウォーターバスの温度を45℃に設定した他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸ナトリウムが31質量%、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムが0.6質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0040】
[実施例7]
実施例1のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)に代えて、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF
6)92.0gを加え、ウォーターバスの温度を0℃に設定した他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸カリウムが29質量%、ヘキサフルオロリン酸カリウムが1.2質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0041】
[実施例8]
実施例1のジエチルカーボネート(DEC)に代えて、水分30質量ppmに脱水したテトラヒドロフラン(THF)450gを、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)に代えて、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム((Et)
4NPF
6)137.6gを加え、ウォーターバスの温度を20℃に設定した他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸テトラエチルアンモニウムが33質量%、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウムが0.3質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0042】
[実施例9]
実施例1のジエチルカーボネート(DEC)に代えて、水分30質量ppmに脱水した酢酸メチル(AcOMe)450gを、ヘキサフルオロリン酸リチウム114.1gを、シュウ酸67.6gを、四塩化ケイ素63.8gを加えた他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが32質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.2質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0043】
[実施例10]
非水溶媒として水分30質量ppmに脱水したアセトニトリル(MeCN)を用いたこと以外は実施例9と同様に合成し、実施例9と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが31質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.2質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0044】
[実施例11]
反応温度を−15℃とした他は実施例1と同様に合成したが、反応性が低いため、四塩化ケイ素を添加した後、96時間反応させた。実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが30質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが3質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0045】
[実施例12]
反応温度を60℃とした他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが30質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが2質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。
【0046】
[比較例1]
シュウ酸56.3gを用い、四塩化ケイ素1モル量に対する、シュウ酸の添加比を2.50モル量とした他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが32質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.2質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。このように、四塩化ケイ素1モル量に対するシュウ酸の添加比が2.10モル量を超えるほど、シュウ酸を過剰に加えた場合、得られる溶液中の遊離酸濃度が高くなり過ぎて非水電解液電池の添加剤として用いることが困難となる。
【0047】
[比較例2]
シュウ酸40.5gを用い、四塩化ケイ素1モル量に対する、シュウ酸の添加比を1.80モル量とした他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが31質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが3.1質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。このように、四塩化ケイ素1モル量に対するシュウ酸の添加比が1.90モル量未満となるようにした場合、四塩化ケイ素が過剰になり副生成物として不揮発性の塩素化合物が多く生成することにより、得られる溶液中の塩素イオン濃度が高くなり過ぎて非水電解液電池の添加剤として用いることが困難となる。
【0048】
[比較例3]
ヘキサフルオロリン酸リチウム70.3gを用い、四塩化ケイ素1モル量に対する、ヘキサフルオロリン酸リチウムの添加比を1.85モル量とした他は実施例1と同様に合成し、実施例1と同様にNMR測定、塩素イオン濃度測定、遊離酸濃度測定をした。NMRの積分比から、ろ液に含まれる化合物の含有率を計算した。テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムが30質量%、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムが2.8質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムが0.1質量%含まれていた。収率、塩素イオン濃度、遊離酸濃度の測定結果を表1に示す。このように、四塩化ケイ素1モル量に対するヘキサフルオロリン酸塩の添加比が1.90モル量未満となるようにした場合、シュウ酸及び四塩化ケイ素が過剰になり、得られる溶液中に副生成物としてジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩が多く含まれてしまう。