特許第6031829号(P6031829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031829
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】包装材料及びそれよりなる紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20161114BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20161114BHJP
   B65D 5/40 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/10
   B65D5/40
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-122950(P2012-122950)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249069(P2013-249069A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克伸
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸伸
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−162598(JP,A)
【文献】 特開2011−121628(JP,A)
【文献】 特開2008−221606(JP,A)
【文献】 特開2006−137149(JP,A)
【文献】 特開2006−205592(JP,A)
【文献】 特開2008−162599(JP,A)
【文献】 特開2012−086856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/10
B65D 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、紙基材層、バリア層、該バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層された中間層、及び該中間層上に隣接して積層されたシーラント層を有する、液体用紙容器に用いる包装材料であって、
該アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散し、つ不揮発性水性化助剤を実質的に含まない水性分散液による、乾燥時の厚みが0.1〜2μmの層であり
該中間層は、ポリエチレン樹脂からなる層であり、
該シーラント層は、該中間層面に配置されてなるサンドイッチラミネート又は共押出コーティング層であり、且つ、
該シーラント層は、第一の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、環状ポリオレフィン系樹脂層、第二の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、及び無機系フィラー含有直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層をこの順に設けた4層からなる層であり、該第一の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が、中間層と隣接しており、該無機系フィラー含有直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層は、10〜20質量%の量で、低密度ポリエチレン樹脂を含有することを特徴とする、上記包装材料。
【請求項2】
前記バリア層が、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、酸化珪素蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル系樹脂フィルム及びアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムからなる群より選択される少なくとも1種からなる層であることを特徴とする、請求項に記載の包装材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装材料を、シーラント層が最内層となるように製函してなる液体用紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、食品等の内容物に含有される有機化合物の吸着量が低減された非吸着性のシーラント層と紙基材層とを有する包装材料、及びそれよりなる紙容器に関し、より詳細には、内容物の品質保持に優れ、且つ、ガスバリア性とヒートシール性に優れた包装材料、及びそれよりなる紙容器であって、特に液体用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙容器は、紙基材層とシーラント層とを有する包装材料からなる。これらのシーラント層としては、熱可塑性樹脂が用いられ、特にラミネート加工性及びヒートシール性に優れる点から、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(LDPE、密度0.910〜0.925g/cm3)等が使用されている。
【0003】
LDPEは、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができるが、有機化合物成分を吸着し易いことやガスバリア性に劣ることが知られている。したがって、LDPEからなるシーラント層を最内層、すなわち内容物と接する層として有する紙容器は、内容物中に含まれる有機化合物成分を吸着して、内容物を変質又は劣化させ易い。また、ガスバリア性を付与するため、例えば、LDPE上にアルミニウム箔などを設けると両層間に層間剥離(デラミネーション)が生じ、実用に耐えることができない。
【0004】
これに対し、シーラント層として、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE、密度0.926〜0.940g/cm3)を使用するケースもある。しかしながら、MDPEは、十分な密着強度を得るために、製函(紙容器の成型)時のヒートシール温度をLDPEより高く設定しなければならないため、安定したシール温度巾が得られないという欠点を有する。更に、そのような高温でヒートシールすると、MDPEが酸化し、酸化臭が発生するため、MDPEからなるシーラント層を最内層として有する紙容器は、内容物中に樹脂の酸化臭が移行し易いといった欠点を有する。
【0005】
また、シーラント層としてポリエステル系樹脂を使用するケースもある(特許文献1)。しかしながら、ポリエステル系樹脂は、ヒートシール性が悪く、製函時にシール不良が発生し易いため、これよりなるシーラント層を有する紙容器は、内容物が漏れる等の欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−162737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決して、有機化合物成分を吸着しにくくした、すなわち非吸着性に優れ、且つ、良好なガスバリア性とヒートシール性を有する包装材料、及びそれよりなる紙容器、特に液体用紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、紙基材層、バリア層、該バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層された中間層、及び該中間層上に隣接して積層されたシーラント層を有する、液体用紙容器に用いる包装材料であって、該アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01〜5
質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリア層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、該中間層は、ポリエチレン樹脂(PE)からなる層であり、該シーラント層は、該中間層を介してサンドイッチラミネート法又は共押出コーティング法により積層されており、且つ、該シーラント層は、該中間層に隣接する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE、密度0.900〜0.940g/cm3)層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とをこの順に設けた層であることを特徴とする、上記包装材料、及びそれよりなる紙容器、特に液体用紙容器が、上記の目的を達成することを見出した。
【0009】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、紙基材層、バリア層、該バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層された中間層、及び該中間層上に隣接して積層されたシーラント層を有する、液体用紙容器に用いる包装材料であって、
該アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリア層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、
該中間層は、ポリエチレン樹脂からなる層であり、
該シーラント層は、該中間層を介してサンドイッチラミネート法又は共押出コーティング法により積層されており、且つ、
該シーラント層は、該中間層に隣接する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とをこの順に設けた層であることを特徴とする、上記包装材料。
2.前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層であることを特徴とする、上記1に記載の包装材料。
3.前記シーラント層は、第一の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、環状ポリオレフィン系樹脂層、及び第二の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層をこの順に設けた3層からなる層であることを特徴とする、上記1に記載の包装材料。
4.前記シーラント層は、第一の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、環状ポリオレフィン系樹脂層、第二の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、及び無機系フィラー含有直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層をこの順に設けた4層からなる層であり、該第一の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が、中間層と隣接していることを特徴とする、上記1に記載の包装材料。
5.前記バリア層が、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、酸化珪素蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル系樹脂フィルム及びアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムからなる群より選択される少なくとも1種からなる層であることを特徴とする、上記1〜4のいずれかに記載の包装材料。
6.上記1〜5のいずれかに記載の包装材料を、シーラント層が最内層となるように製函してなる液体用紙容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装材料は、PEからなる中間層と、シーラント層を形成するLLDPE層及び環状ポリオレフィン系樹脂層とを隣接して有するものである。
一般的に、環状ポリオレフィン系樹脂は、その溶融製膜時に、高い分子間力が働き、ポリマー間で凝集を引き起こすことが知られている。その結果、膜の至る所で樹脂が凝集して瘤状のゲル塊を形成し、均一な膜表面を得ることが難しい。そして、この傾向は、イン
フレーション法による製膜時には一層顕著になり、該法により得られる環状ポリオレフィン系樹脂膜は、その表面全体に無数のゲル塊が発生する。
【0011】
しかしながら、本発明に従って、環状ポリオレフィン系樹脂層をLLDPE層と隣接させて一緒に製膜することによって、環状ポリオレフィン系樹脂の分子同士の不均一な凝集が抑制される。したがって、本発明の包装材料のシーラント層は、製膜が容易であり、均質で、良好な透明性を有する美麗な層を形成することができる。また、インフレーション法による高速製膜時にも、ゲル塊の発生を抑えることができる。
【0012】
このような本発明の包装材料において、環状ポリオレフィン系樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂の高い分子間力に基づいて、分子間の距離が近い密な表面構造を形成しており、またLLDPE層は、該環状ポリオレフィン系樹脂層と高い層間密着性を発揮し、該環状ポリオレフィン系樹脂層に良好な製膜安定性を付与している。このような構造を有する本発明の包装材料は、内容物中の成分を吸着しにくく、すなわち非吸着性に優れている。
【0013】
また、本発明の包装材料を形成するシーラント層は、良好なヒートシール性を示し、幅広いシール温度範囲でヒートシールが可能であり、低温でのヒートシール時にも製函に際して十分なシール強度を発揮する。したがって、加工が容易であり、樹脂酸化臭等の発生が少ない。
【0014】
さらに、本発明の包装材料は、シーラント層を、PEからなる中間層(接着層)を介して、バリア層上のアンカーコート層とサンドイッチラミネートするか、又は、バリア層上のアンカーコート層上に共押出コーティングすることにより積層するものである。したがって、本発明の包装材料は、優れた非吸着性及びヒートシール性を維持したまま、簡便かつ低コストで製造することができる。
【0015】
また、本発明の包装材料において使用するアンカーコート剤は、水性分散液であり、アンカーコート剤中に含まれる微量成分は、PEからなる中間層やシーラント層を通過しないことから、内容物中に漏出することがない。また、上記アンカーコート剤は、水性分散体の製造工程において水性化促進や水性分散体の安定化の目的で乳化剤等の不揮発性水性化助剤は添加されていない。このため、バリア層との接着性に優れると共に熱可塑性樹脂層との接着性にも優れ、層間剥離(デラミネーション)が生ずることがない。
また、PEからなる中間層は、接着層として機能するだけでなく、製函時のヒートシールにより溶融し、紙容器の段差部に生じる空隙を埋めて安定した密封性に寄与し、紙容器への液体の充填を可能にする。
【0016】
さらに、本発明の包装材料はバリア層を有する。ここで、バリア層は、優れたガスバリア性を有すると共に低分子量成分を透過させないことから、前記包装材料を使用した紙容器は外部からの酸素ガスや水蒸気ガスなどの進入や、バリア層より外側に存在する層由来(例えば、印刷層)の低分子量物質の内容物中への漏出を防止することができる。そのため、本発明の包装材料は、酸素ガスや水蒸気ガス、あるいは包装材料中の層由来の低分子量物質に起因する内容物の変性を有効に防止することができる。
したがって、本発明の包装材料は、紙容器、特に内容物の品質保持性が要求される液体用紙容器を形成するのに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
図2】本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
図3】本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
<1>本発明の包装材料を形成する積層体の層構成
図1〜3は、本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
図1〜3に示されるように、本発明の包装材料は、紙基材層1、バリア層2、アンカーコート層3、中間層4、及びシーラント層5をこの順に積層した構成を基本とする。ここで、シーラント層5は、LLDPE層(a、a1、a2)と環状ポリオレフィン系樹脂層(b)と、場合により無機系フィラー含有LLDPE層(c)とを有する。
【0019】
本発明の包装材料の一態様として、図1に示されるように、シーラント層5は、LLDPE層(a)と環状ポリオレフィン系樹脂層(b)との2層からなる層である。
本発明の包装材料の別の態様として、図2に示されるように、シーラント層5は、第一のLLDPE層(a1)、環状ポリオレフィン系樹脂層(b)及び第二のLLDPE層(a2)をこの順に設けた3層からなる層である。
本発明の包装材料のさらに別の態様として、図3に示されるように、シーラント層5は、第一のLLDPE層(a1)、環状ポリオレフィン系樹脂層(b)、第二のLLDPE層(a2)、及び無機系フィラー含有LLDPE層(c)をこの順に設けた4層からなる層である。
【0020】
また、本発明の包装材料は、紙容器の最外層となる表面保護層として、任意のポリエチレン樹脂(PE)からなる層を、シーラント層と反対側の表面に有してもよい。表面保護層は、包装材料の表面に、溶融PE樹脂を押出コーティングすることによって、又はPEフィルムを任意の方法によりラミネートすることによって積層することができる。
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定したものをいう。
【0021】
<2>紙基材層
本発明の紙基材層を構成する紙基材としては、適用する紙容器の用途に応じて、種々の賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有する任意の紙を使用することができ、例えば、主強度材であり、強サイズ性の晒又は未晒の紙、あるいは、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種の紙を使用することができる。紙基材層は、これらの紙を複数層重ねてラミネートしたものであってもよい。紙基材層は、坪量80〜600g/m2、好ましくは坪量100〜450g/m2であり、厚さ110〜860μm、好ましくは140〜640μmの範囲である。これより薄いと、容器としての強度が不足し、またこれより厚いと、剛性が高くなりすぎて、加工が困難になり得る。なお、紙基材には、例えば、文字、図形、記号、その他の所望の絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
【0022】
<3>バリア層
本発明において、バリア層は、外部への内容物のにおい漏れや、外部からの酸素及び水蒸気ガス、あるいは、バリア層より外側に存在する層由来(例えば、印刷層)の低分子量物質の内容物中への浸入を抑え、内容物の変質を防ぐためのものであり、適用する紙容器の用途に応じて任意のバリア性フィルムを使用することができる。
例えば、バリア性フィルムとして、アルミニウム箔等の金属箔、又は金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルムを用いることができ、この場合には、優れたガスバリア性が得られ、また遮光性を有することとなる。上記のプラスチックフィルムとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等からなる樹脂フィルムを用いることができる。好適に使用される金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルムとしては、アルミニウム箔とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムが挙げられる。好適に使用
される金属箔、又は金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルムの厚さは、6〜30μm程度である。
【0023】
また、バリア性フィルムとして、無機酸化物や金属の蒸着層を有する蒸着フィルムを用いてもよい。ここで、好適に使用される無機酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、好適に使用される金属としては、アルミニウム等が挙げられる。また、蒸着層を担持する基材フィルムとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等からなる樹脂フィルムを用いることができる。好適に使用される蒸着フィルムの厚さは、9〜40μm程度である。なお、バリア層が蒸着フィルムからなる場合は、加工時の取り扱い等の観点から、蒸着膜の側が紙基材層と接するように積層することが好ましい。
【0024】
さらに、バリア性フィルムとして、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂又はポリアクリロニトリル系樹脂の少なくともいずれか一種からなるバリア性フィルムを用いることもできる。好適に使用されるこれらのバリア性フィルムの厚さは、5〜30μm程度である。
また、バリア層は、上記の各種ガスバリア性フィルムの中から2種以上を選択して用いてもよい。
【0025】
本発明の包装材料において、バリア層と紙基材層とは、製造コスト及び要求される耐内容物性等を考慮して、熱可塑性樹脂を介するサンドイッチラミネート法や、ドライラミネート用接着剤を介するドライラミネート法等の任意の方法により積層することができる。この際に、紙基材層の表面には、コロナ処理、火炎処理、アンカーコート処理等の表面処理を行ってもよく、またバリア層の表面にはインラインでコロナ処理、オゾン処理等を行ってもよい。サンドイッチラミネートに用いられる熱可塑性樹脂としては、熱によって溶融し、相互に融着し得る任意の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を使用することができ、例えば、LDPE、MDPE、LLDPE、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体等を使用することができる。
【0026】
<4>アンカーコート層
本発明において、アンカーコート層は、ポリエチレン樹脂(PE)からなる中間層と共同して、シーラント層とバリア層とを接着するためのものである。
本発明において使用するアンカーコート層は、不飽和カルボン酸、又はその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含有し、かつ、数平均粒子径が1μm以下、例えば50nm〜200nmのポリオレフィン樹脂粒子からなり、乳化剤等の不揮発性水性化助剤を実質的に含まない水性分散体を塗布、乾燥したものである。この水性分散液は、特開2004−9504号公報に記載されるものであり、不飽和カルボン酸又はその無水物とオレフィン化合物と(メタ)アクリル酸エステルとから構成されるポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と陰イオン性基が20〜700(当量/106g)のポリエステル樹脂(B)の水性分散体とを、それぞれの水性分散体中の樹脂分の質量比が(A)/(B)=90/10〜20/80となるように混合して製造されるものである。上記において、不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられ、陰イオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基等が挙げられる。上記の水性分散液の具体例としては、ユニチカ(株)からアローベースSA−1200、SB−1200、SE−1200、TB−2010等として市販されるものが例示される。
【0027】
アンカーコート層は、乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように薄く塗布することにより、アルミニウム箔等のバリア層を塗布面とし、ポリエチレンからなる中間層に対しての接着性に優れるものとできる。
【0028】
乳化剤等の不揮発性水性化助剤は、乾燥後も塗膜中に残存し、たとえ少量であっても接着界面に大きな影響を与え、接着性や耐水性を低下させるが、上記のアンカーコート層にあっては、水性分散体の製造工程において水性化促進や水性分散体の安定化の目的で乳化剤等の不揮発性水性化助剤は添加されていない。このため、層間剥離が起こることなく、バリア層との接着性に優れると共に中間層との接着性にも優れるものとできる。
【0029】
また、アンカーコート層の形成に使用する上記水性分散液の塗布量は、0.1g/m2以下、より好ましくは、0.05〜0.1g/m2である。これは通常の接着剤の使用量と比較して1/10以下であり、しかも、前記水性分散体中に含まれる低分子量の微量成分は、シーラント層をほとんど通過しないことから、水性分散体に含まれる微量成分は、内容物中に漏出せず、内容物の劣化を防止することができる。
【0030】
<5>中間層
本発明において、中間層は、ポリエチレン樹脂(PE)からなる。この中間層は、アンカーコート層と共同してシーラント層とバリア層とを接着すると共に、製函時のヒートシールにより溶融して、層間の接着強度を高め、さらに紙容器の段差部に生じる空隙を埋めて、容器の密封性を高める。
本発明の中間層を形成するPEとしては、任意のポリエチレンを使用することができるが、空隙を埋めるのに好適な溶融粘度(流動性)を示し、且つ製膜適性及び加工適性を有することから、密度0.910〜0.925g/cm3、メルトフローレート(MFR)1〜10g/10分(190℃)の高圧法低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を特に好ましく使用することができる。
【0031】
中間層の厚さは、10〜50μm、好ましくは15〜40μmである。これより薄いと、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがある。逆に、これより厚いと、低温シール性が劣り、好ましくない。
【0032】
<6>シーラント層
本発明において、シーラント層は、LLDPE層と環状ポリオレフィン系樹脂層とを有する。本発明の包装材料において、該LLDPE層は、シーラント層の表面(貼合面)に位置し、中間層と隣接する。
【0033】
(1)シーラント層の構造
本発明の一態様において、シーラント層は、LLDPE層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層のみからなる層である。この構成を有するシーラント層は、環状ポリオレフィン系樹脂層が、本発明の包装材料の最表層、すなわち紙容器の最内層となるため、優れた非吸着性を示すことができる。
当該構成において、シーラント層の総厚及び各層の厚さは、適用する紙容器の用途に応じて適宜に設定することができるが、製函に必要なシール強度を得るために、また安定した製膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、例えば、総厚は20〜80μm、より好ましくは30〜60μmであり、これより厚いと紙容器の剛度が高くなり成形不良を引起し、またこれより薄いと十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがある。また、LLDPE層と環状ポリオレフィン系樹脂層との層厚の比は、LLDPE層:環状ポリオレフィン系樹脂層=1:1〜10:1の範囲が適当である。LLDPE層の層厚が薄過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。また、環状ポリオレフィン系樹脂層の層厚が厚い程、非吸着性が高まるが、厚過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため、好ましくない。
【0034】
本発明の別の態様において、シーラント層は、第一のLLDPE層、環状ポリオレフィン系樹脂層及び第二のLLDPE層をこの順に設けた3層からなる層である。この構成を有するシーラント層は、優れたラミネート強度及び耐内容物性を有し、且つ、良好な非吸着性を維持しながらも、高いシール強度を発揮することができる。
当該構成において、シーラント層の総厚及び各層の厚さは、適用する紙容器の用途に応じて適宜に設定することができるが、製函に必要なシール強度を得るために、また安定した製膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、例えば、総厚は20〜80μm、より好ましくは30〜60μmであり、これより厚いと紙容器の剛度が高くなり成形不良を引起し、またこれより薄いと十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがある。また、各層厚の比は、第一のLLDPE層(ドライラミネート用接着剤層と接する側の層):環状ポリオレフィン系樹脂層:第二のLLDPE層(最内層となる層)=1:1:1〜10:1:10の範囲が適当である。第一のLLDPE層の層厚が薄過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。また、環状ポリオレフィン系樹脂層の層厚が厚い程、非吸着性が高まるが、厚過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため、好ましくない。同様に、第二のLLDPE層の層厚が薄過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。
【0035】
本発明のさらに別の態様において、シーラント層は、第一のLLDPE層、環状ポリオレフィン系樹脂層、第二のLLDPE層、及び無機系フィラー含有LLDPE層をこの順に設けた4層からなる層である。この構成を有するシーラント層は、優れたラミネート強度及び耐内容物性を有し、且つ、良好な非吸着性を維持しながらも、高いシール強度を発揮することができる。さらに、包装材料の最表層となる無機系フィラー含有LLDPE層は、層表面の滑りがよいため、紙容器の製造工程におけるフレームシーラーにおいて、ブランクの供給をスムーズに行うことができ、取り扱いが容易である。
【0036】
当該構成において、シーラント層の総厚及び各層の厚さは、適用する紙容器の用途に応じて適宜に設定することができるが、製函に必要なシール強度を得るために、また安定した製膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、例えば、総厚は20〜80μm、より好ましくは30〜60μmであり、これより厚いと紙容器の剛度が高くなり成形不良を引起し、またこれより薄いと十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがある。また、各層厚の比は、第一のLLDPE層:環状ポリオレフィン系樹脂層:第二のLLDPE層:無機系フィラー含有LLDPE層=1:1:1:1〜10:1:10:1の範囲が適当である。第一のLLDPE層の層厚が薄過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。また、環状ポリオレフィン系樹脂層の層厚が厚い程、非吸着性が高まるが、厚過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため、好ましくない。さらに、第二のLLDPE層の層厚が薄過ぎると、十分な接着強度が得られず、また、紙容器の密封性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。また、無機系フィラー含有LLDPE層の層厚が厚過ぎると、無機系フィラーの絶対量が多くなり、シール性・官能等に悪影響を与えると同時に、コストアップとなるため、好ましくない。更に、薄過ぎると無機系フィラーの効果が得られにくくなり、滑り性が劣るため好ましくない。
【0037】
(2)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)層
本発明において、シーラント層中のLLDPE層を構成するLLDPEは、密度0.900〜0.940g/cm3の直鎖状ポリエチレンであって、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒又はチーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト系触媒を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを低温、低圧で共重合させて得られるコポリマーである。
【0038】
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
また、共重合方法としては、エチレン及びα−オレフィンを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法が挙げられる。
【0039】
本発明のLLDPEは、短鎖分岐として炭素数1000個あたり、3〜25個の短鎖分岐を有するが、炭素数約20個を超える長鎖分岐を有しない点で、LDPEと区別される。通常、LLDPEにおいて、エチレン由来の構造単位は約99.9〜90モル%であり、α−オレフィン由来の構造単位は約0.1〜10モル%である。本発明では、構造均一性に優れる点で、メタロセン触媒で調製されたLLDPEを好適に使用することができる。
本発明において使用するのに好適なLLDPEとしては、住友化学(株)社製の「スミカセン」、株式会社プライムポリマー製の「ウルトゼックス」等が挙げられる。
さらに、上記のようなLLDPEを主成分とし、これに、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0040】
(3)環状ポリオレフィン系樹脂層
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂層を構成する環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合した開環メタセシス重合体(COP)、及び、環状オレフィンとα−オレフィン(鎖状オレフィン)との共重合体、すなわち環状オレフィンコポリマー(COC)を包含する。
【0041】
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができるが、特にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5 ]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。環状オレフィンは、置換基として、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基等の極性基を有していてもよい。
【0042】
環状オレフィンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンを使用することができ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくはエチレンである。
【0043】
本発明において、開環メタセシス重合体の製造は、公知の開環メタセシス重合反応であれば特に限定されず、上記の環状オレフィンを、重合触媒を用いて開環重合させることによって製造することができる。
また、環状オレフィンコポリマーの製造は、25〜45モル%のα−オレフィンと、55〜75モル%の環状オレフィンとを、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることによりなされる。
【0044】
本発明において好適に使用される開環メタセシス重合体及び環状オレフィンコポリマーは、いくつか市販されており、例えば日本ゼオン(株)社製の「ZEONOR(R)」やポリプラスチック(株)社製の「TOPAS(R)」等が挙げられる。
【0045】
なお、上記環状ポリオレフィン系樹脂には、製膜時の環状ポリオレフィン系樹脂同士の凝集によるゲル塊の発生を抑制して、一層均一な膜表面を得るために、高流度のオレフィン系樹脂を、非吸着性を損なわない範囲で任意に添加することができる。該オレフィン系樹脂としては、任意のポリエチレン及びポリプロピレン等であって、190℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10分、好ましくは15〜30g/10分のものを使用することができる。また、添加量としては、全体の3〜50質量%、好ましくは5〜10質量%の比率でオレフィン系樹脂を配合するとよい。
また、さらに必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0046】
(4)無機系フィラー含有LLDPE層
本発明において、無機系フィラー含有LLDPE層は、LLDPE中に、無機系フィラーをマスターバッチ式のブレンド方法により分散させてなる樹脂組成物からなる層である。
この樹脂組成物において、好適に使用できるLLDPEとしては、上記LLDPE層について記載したものと同じ樹脂を使用することができる。
【0047】
また、好適に使用できる無機系フィラーとしては、SiO2、Al23、TiO2、ZnO、Fe23、SnO2、CeO2、NiO、PbO、S2Cl2、ZnCl2、FeCl2、CaCO3、B23等からなり、平均粒径が2〜15μmのフィラーを使用することができ、好ましくは、酸化珪素SiO2のフィラーが用いられる。無機系フィラーの平均粒径が2μm未満の場合は滑り性の改良に効果がなく、また、前記平均粒径が15μmを超えると、製膜フィルムの表面に突出する無機系フィラーにより容器表面を摩擦し、傷つけることがある。なお、本発明において、平均粒径とは、粒度分布測定より、最も多く存在する粒子の粒径を意味する。粒度分布は、コールターカウンター法により計測できる。
【0048】
この樹脂組成物において、無機系フィラーは、全体の2.0〜5.0質量%となる量で添加される。樹脂組成物中の無機系フィラーの含有量が2.0質量%未満であると、シーラント層表面上にフィラーが出にくく、滑り不良を改善する効果が少なく、また、5.0質量%を超えた場合、シーラント層表面において、フィラーが飽和状態になるため、それ以上フィラーを添加しても、かかるコストに見合う効果は得られない。また、飽和状態になることにより、シール阻害が生じ、逆に、シール開始温度を上げる恐れがある。
上記樹脂組成物には、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0049】
また、製膜安定性及び紙容器のシール時における樹脂の流動性を改善させるために、上記樹脂組成物中に0〜20質量%の量で、LDPEを添加してもよい。しかしながら、20質量%を超えてLDPEを添加すると、非吸着性が損なわれるため好ましくない。
【0050】
無機系フィラー含有LLDPE層を、シーラント層の最表層部分に薄く設けることにより、シーラント層内部を構成するヒートシール樹脂の流動性を損なわずに、滑り特性を向上させることができる。したがって、この無機系フィラー含有LLDPE層を有する本発明の包装材料は、良好なヒートシール性を維持し、且つ、製膜及び製函加工に好適な滑り特性を示す。
【0051】
(5)シーラント層の製造方法
本発明の一態様において、シーラント層は、シーラントフィルムからなる層であってよい。この場合、シーラント層は、中間層とアンカーコート層を介してサンドイッチラミネート法により、バリア層とラミネートされる。
本発明において、シーラントフィルムは、好ましくは、各層を構成する樹脂及び樹脂組成物を用いて、共押出法によって製膜される。共押出法により製膜することにより、高い層間密着性及び良好な製膜安定性が得られ、非吸着性及びヒートシール性が一層向上され、また美麗な膜が得られる。また本発明において、シーラントフィルムは、特に好ましくは、共押出インフレーション法により製膜される。共押出インフレーション法により製膜することにより、低温にて製膜加工が可能であり、加熱による樹脂臭によるトラブルが減少し、また層間密着性が一層向上する。
【0052】
本発明の別の態様において、シーラント層は、中間層と共に、バリア層上のアンカーコート層上に共押出コーティングすることにより積層される層である。中間層を構成するPEと、シーラント層中の各層を構成する樹脂とを用いて、これらをアンカーコート層上に一緒に共押出コーティングすることにより、高い層間密着性及び良好な製膜安定性が得られ、非吸着性及びヒートシール性が一層向上され、また美麗な膜が得られる。
【0053】
<7>表面保護層
本発明の包装材料は、製函時に最外層となる表面保護層として、任意のポリエチレン樹脂(PE)からなる層を、シーラント層と反対側の表面に有してもよい。
表面保護層は、紙基材層の外部を保護すると共に、包装材料の端の部分においては、シーラント層と加熱により貼り合わせられる。ポリエチレンとしては、LDPE、LLDPE、MDPE、高密度ポリエチレン(HDPE)等が用いられ、特に限定されないが、本発明の包装材料のシーラント層とのシール性及び加工適性の観点から、LDPE及びLLDPEが好ましく用いられる。
【0054】
表面保護層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、紙基材層の一方の面に溶融ポリエチレン樹脂を押出コーティングすることにより形成される。表面保護層は、容器の表面となる層であるが、さらに表面に印刷層を設けることができ、印刷層に用いられる印刷インキの密着性の向上を図るために表面に例えばコロナ処理等の表面処理を施すこともできる。表面保護層の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜60μm程度である。
【0055】
<8>包装材料の使用
本発明の包装材料は、紙容器、特に内容物の品質保持性が要求される紙容器を形成するために、好適に使用することができる。
本発明の包装材料からの紙容器の製造は、通常、次のようにして行われる。すなわち、本発明の包装材料の表面に、必要に応じて印刷を行った後、打ち抜き、端面をスカイブ・ヘミングして内容物が端面に接触しないようにし、充填機内でボトム部及びトップ部を熱風加熱、火炎加熱等によりヒートシールして紙容器とする。
【0056】
この紙容器の形状については、用途・目的等に応じて適宜に決定すればよく、例えばゲーブルトップタイプ、ブリックタイプ、フラットタイプ等が挙げられ、また、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等が挙げられる。この紙容器の注出口には、たとえばポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜に設けてもよい。
【0057】
紙容器の内容物も、特に限定されず、固体又はゲル状のものであっても、液体、例えば酒、果汁飲料等のジュース、ミネラルウォーター等の各種の飲料品、醤油、ソース、スープ等の液体調味料、あるいは、カレー、シチュー、スープ等の種々の液体飲食物、食用油
、機械用油、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、その他シャンプー、リンス、洗剤等の化成品等であってもよい。
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
(1)LLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製、ユメリット 0520F)をベースレジンとして、これにシリカ(平均粒径4.9μ)を全体の10wt%となる量で添加し、マスターバッチを作成した。該マスターバッチ45wt%、LLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製、ユメリット 0520F)45wt%及びLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 ノバテックLC522)10wt%をブレンドして、無機系フィラー含有LLDPE層用樹脂組成物を調製した。
(2)LLDPE(株式会社プライムポリマー製、ウルトゼックス 1520L)、環状オレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)社製 TOPAS 8007F−500)、及び上記(1)に記載の無機系フィラー含有LLDPE層用樹脂組成物を用いて、共押出インフレーション法により、第一のLLDPE層20μm/環状オレフィンコポリマー層5μm/第二のLLDPE層10μm/無機系フィラー含有LLDPE層5μmの4層からなる厚さ40μmのシーラントフィルムを製膜した。得られたシーラントフィルムは、ゲル塊のない、美麗な膜表面を有していた。なお、本願明細書の積層体の記載において、「/」はその左右の層が積層一体化されていることを示す。
(3)2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、厚さ6μmのアルミニウム箔を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにドライラミネーション法により積層して、ガスバリア性フィルムを製膜した。このときの接着剤の塗布量は、接着剤の厚さが乾燥皮膜として3g/m2となる量とした。
(4)一方、坪量340g/m2の板紙の一方の表面に、表面保護層として厚さ20μmのLDPEを押出コーティング法により積層した。また、板紙の他方の表面を、上記(3)で作製したガスバリア性フィルムのPETの面と対向させ、その間に厚さ20μmのエチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体を押出してサンドイッチラミネートし、表面保護層/紙基材層/接着樹脂層/バリア層(PETフィルム/ドライラミネート用接着剤層/アルミニウム箔)からなるラミネートフィルムを作製した。
(5)上記(4)で作製したラミネートフィルムのアルミニウム箔側の面に、アンカーコート剤(ユニチカ(株)社製 アローベースSE−1200)を塗布し、加熱乾燥して、アンカーコート層を形成した。このときの接着剤の塗布量は、アンカーコート剤の厚さが乾燥皮膜として0.2g/m2となる量とした。
(6)上記(5)で製造したラミネートフィルムのアンカーコート層側の表面を、上記(2)で製膜したシーラントフィルムの第一のLLDPE層側の面と対向させ、その間に厚さ20μmのLDPE(中間層)を押出してサンドイッチラミネートし、表面保護層/紙基材層/接着樹脂層/バリア層(PETフィルム/ドライラミネート用接着剤層/アルミニウム箔)/アンカーコート層/中間層/シーラント層(第一のLLDPE層/環状ポリオレフィン系樹脂層/第二のLLDPE層/無機系フィラー含有LLDPE層)の層構成からなる本発明の包装材料を得た。
【0059】
[比較例1]
環状オレフィンコポリマーの代わりにLLDPEを使用した以外は、実施例1と同様にして包装材料を作製した。
【0060】
[吸着性試験]
実施例1及び比較例1の包装材料を用いて、一辺が70mm角の容量1Lのゲーブルトップタイプの紙容器を作成し、メントール濃度が5μm/mlとなるように調製したメントール−エタノール溶液1Lを充填した。
50℃の雰囲気下で2週間保存した後、溶液中のメントール含有量をGC/MS法により測定した。測定値と保存前のメントール含有量との差から、紙容器の内壁1cm2当たりのメントール吸着量を求めた。結果を以下の表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1の包装材料からなる紙容器では、メントールの吸着量は低い値に抑えられていた。これに対し、比較例1の包装材料からなる紙容器は、多量のメントールを吸着していた。
【0063】
[ヒートシール性試験]
実施例1及び比較例1の包装材料を用いて、その表面保護層の面にオフセット印刷法により所望の絵柄・表示等の印刷を行った後、所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランクシートとした。次いで、フレームシール法により胴部を貼り合わせて筒状スリーブとし、この筒状スリーブを充填機(株式会社ディー・エヌ・ケー製、DR−10)に供給した。充填機のホットエアーによりボトム部をヒートシールし、次いで内容物(ミネラルウォーター)を充填し、最後にトップ部をヒートシールして、ゲーブルトップタイプの紙容器(1.8L容量)を作製した。
充填機のホットエアー温度が低すぎると、加熱不足により接着強度が不十分となる。逆に、該温度が高すぎると、過加熱によりシール部にバブリングが発生し、いずれの場合も内容物の漏れ、若しくは容器の胴膨れが生じる。
各実施例及び比較例の包装材量のボトム部及びトップ部のヒートシールに際し、充填機のホットエアー温度を10℃おきに変化させて、内容物が漏れることなくしっかりと接着したホットエアー温度の範囲を測定した。結果を以下の表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
実施例1の包装材料はいずれも、比較例1と同様に、幅広い温度範囲でヒートシールが可能であり、また320〜340℃の低温でも十分なシール強度を示し、良好なヒートシール性を示した。
【符号の説明】
【0066】
1:紙基材層
2:バリア層
3:アンカーコート層
4:中間層
5:シーラント層
a:LLDPE層
1:第一のLLDPE層
2:第二のLLDPE層
b:環状ポリオレフィン系樹脂層
c:無機系フィラー含有直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
図1
図2
図3