(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルコール系溶媒が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、メチルプロパンジオール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選ばれる1種類以上の溶媒を含む、請求項8に記載の製造方法。
前記50質量%以上の水を含む溶媒が、水および理論水酸基価が700mgKOH/g以上であるアルコール系溶媒以外の溶媒を実質的に含まないことを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の凝集体は、ポリイミドパウダーの粒子同士をポリイミド前駆体が結合して造粒されていることを特徴とし、この凝集体において、ポリイミド前駆体はバインダーとしてはたらく。まず、本発明の凝集体の製造において、原料として用いるポリイミド前駆体溶液とポリイミドパウダーについてそれぞれ説明する。
【0025】
<ポリイミド前駆体溶液>
本発明に用いるポリイミド前駆体溶液は、水および/またはアルコール系溶媒を反応溶媒として、pKaが7.5以上である塩基性化合物の存在下に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて製造する。
【0026】
本出願において、用語「ポリイミド前駆体」が、本発明に関連して使用されるとき、「ポリアミック酸」を意味し、モノマーの塩が溶解しただけの水溶液を含まない。
【0027】
「水および/またはアルコール系溶媒を反応溶媒として」とは、溶媒の主成分として水および/またはアルコール系溶媒を用いることを意味する。したがって、水およびアルコール系溶媒以外の有機溶媒を全溶媒中50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下の割合で用いてもよい。なお、ここで言う有機溶媒には、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分、ジアミン成分、ポリアミック酸等のポリイミド前駆体、及び触媒として用いる塩基性化合物は含まれない。また、本出願において、「水およびアルコール系溶媒以外の有機溶媒」、「アルコール系溶媒以外の有機溶媒」とは、いずれも「アルコール系溶媒を除く有機溶媒」を意味する。
【0028】
後述するように、本発明の凝集体の製造においては、造粒中または造粒した後、乾燥して原料中の溶媒を除去する工程を含む。この工程において、本発明に用いる原料中の溶媒は、水および/またはアルコール系溶媒を主成分とすることから、環境適応性が良好である。
【0029】
本発明において、アルコール系溶媒とは、1以上の水酸基末端を有する化合物のことをいい、その理論水酸基価が700mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0030】
本発明に用いるアルコール系溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、プロピレングリコール(理論水酸基価は1474.8mgKOH/g、以下同様)、ジプロピレングリコール(836.4mgKOH/g)、エチレングリコール(1808.0mgKOH/g)、ジエチレングリコール(1057.5mgKOH/g)、トリエチレングリコール(747.3mgKOH/g)、グリセリン(1827.8mgKOH/g)、メチルプロパンジオール(1245.2mgKOH/g)、エタノール(1217.9mgKOH/g)、プロパノール(933.6mgKOH/g)およびブタノール(757.2mgKOH/g)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明に用いるポリイミド前駆体溶液の製造においては、反応溶媒として、水単独、アルコール系溶媒単独、またはアルコール系溶媒と水との混合溶媒を用いることが好ましい。また、水およびアルコール系溶媒以外の有機溶媒を含んでもよいが、環境適応性が高いので、反応溶媒中、アルコール系溶媒以外の有機溶媒は5質量%未満であることが好ましく、含まないことがより好ましい。
【0032】
アルコール系溶媒と水との混合溶媒を用いる場合、混合割合は適宜調整することができる。反応溶媒の組成は、製造するポリイミド前駆体溶液組成物の所望の溶媒組成に応じて適宜選択することができ、ポリイミド前駆体溶液組成物の所望の溶媒組成と同一であることが好ましい場合がある。
【0033】
前記アルコール系溶媒以外の有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0034】
本発明において使用される塩基性化合物(以下、単に塩基性化合物という場合もある)は、7.5以上のpKaを有するものである。本発明で使用される塩基性化合物は、溶媒中において、ポリアミック酸の重合促進に寄与する。これは、原料のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって生成するポリアミック酸(ポリイミド前駆体)のカルボキシル基と塩を形成して水および/またはアルコール系溶媒に対する溶解性が高められるためと推定される。これに対して、含窒素化合物であっても、例えばN−メチルピロリドンのようなpKaの小さい化合物を水および/またはアルコール系溶媒に添加しても、ポリアミック酸が得られない。従って、7.5以上程度のpKaを有することが重要であると考えられる。
【0035】
塩基性化合物は、有機化合物であっても、無機化合物であってもよい。但し、無機塩は、イミド化した後も製品中に残ることがあるので、用途によっては好まれない場合もある。使用可能な塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、pKaが7.5以上の含窒素有機化合物、pKaが7.5以上の金属塩を挙げることができる。
【0036】
含窒素有機化合物としては、分子内に少なくとも1つの1〜3級アミノ基を有する化合物(以下、1〜3級アミンという)が好ましい。本出願において、1〜3級アミノ基は中心窒素原子に対する3つの結合がすべて単結合である構造を意味する。このような1〜3級アミノ基を1つ有していれば、分子内にその他の窒素原子を有していてもよく、その他の窒素原子は1〜3級アミノ基であっても、2重結合を有するイミノ基を構成してもよい。分子内にその他の窒素原子を有する場合、アミノ基の窒素原子と隣接しないことが好ましい。
【0037】
1〜3級アミンとしては、脂肪族アミンが好ましく、鎖状(分岐、直鎖)であっても環状であってもよい。環状アミンの場合、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、脂肪族アミンの炭化水素基部分は、OH、アミノ基、COOH等で置換されていてもよい。また、脂肪族基の中の−CH
2−が、Oで置き換えられていてもよく、このときアミノ基の窒素原子と隣接しない方が好ましい。
【0038】
例えば、イミダゾール類、ピペラジン類、グアニジンおよびグアニジン塩類、アルキルアミン類、アミノ基含有アルコール類(OH置換アルキルアミン類)、カルボキシル置換アルキルアミン類、ピペリジン類、ピロリジン類を挙げることができる。
【0039】
本発明で用いるイミダゾール類(化合物)としては、下記化学式(10)の化合物を好適に挙げることができる。
【0040】
【化3】
化学式(10)において、X
1〜X
4は、それぞれ独立に、水素原子、或いは炭素数が
1〜5のアルキル基である。
【0041】
本発明で用いるイミダゾール類としては、25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上、特に1g/L以上であることが好ましい。
【0042】
さらに、化学式(10)のイミダゾール類においては、X
1〜X
4が、それぞれ独立に、水素原子、或いは炭素数が1〜5のアルキル基であって、X
1〜X
4のうち少なくとも2個が、炭素数が1〜5のアルキル基であるイミダゾール類、すなわち置換基として2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類がより好ましい。
【0043】
置換基として2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類は水に対する溶解性が高いので、それらを用いることによって、ポリイミド前駆体水溶液組成物を容易に製造することができる。これらのイミダゾール類としては、1,2−ジメチルイミダゾール(25℃における水に対する溶解度は239g/L、以下同様)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(1000g/L)、4−エチル−2−メチルイミダゾール(1000g/L)、及び1−メチル−4−エチルイミダゾール(54g/L)などが好適である。
【0044】
なお、25℃における水に対する溶解度は、当該物質が、25℃の水1L(リットル)に溶解する限界量(g)を意味する。この値は、ケミカル・アブストラクトなどのベータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することができる。ここでは、種々の条件下での溶解度のうち、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって算出されたpHが7における値を採用した。
【0045】
ピペラジン類としては、無置換、またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)で置換されたピペラジンが好ましく、ここでアルキル基は、さらにアミノ基を有していてもよい。アルキル基の置換位置は、ピペラジン環中の任意の位置でよく、窒素原子上であっても、炭素原子上であってもよい。
【0046】
具体的には、ピペラジン、1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジン、1−プロピルピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジエチルピペラジン、1,4−ジプロピルピペラジン、2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、3−プロピルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,6−ジエチルピペラジン、2,6−ジプロピルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,5−ジプロピルピペラジン等を挙げることができる。また、1−アミノエチルピペラジンのような、アミノアルキル基で置換されたピペラジンも好ましい。
【0047】
グアニジンおよびグアニジン塩類としては、グアニジンの他、グアニジンと弱酸との塩が挙げられ、炭酸グアニジン、シュウ酸グアニジン、酢酸グアニジン等が挙げられる。
【0048】
アルキルアミンとしては、存在するアルキル基が互いに独立して、炭素数1〜6、特に炭素数1〜4の分岐または直鎖アルキル基、または炭素数3〜6、特に炭素数6の脂環式基を有する1〜3級アミンが好ましく、より好ましくは分子中の炭素数の合計が9以下となるようにアルキル基を有する。具体的には、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、N−プロピルエチルアミン、N−ブチルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等を挙げることができる。
【0049】
また、アルキル基はアミノ基で置換されていてもよく、その場合2以上の1〜3級アミノ基を含有することになり、例えばエチレンジアミン、ジエチレンジアミントリアミン等のジまたはトリアミンを挙げることができる。
【0050】
アミノ基含有アルコール類としては、上記のアルキルアミンにおいて、アルキル基の水素がOHで置換された化合物が好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−ブチルアミノエタノール、2−(メチルアミノ)エタノール等を挙げることができる。
【0051】
カルボキシル置換アルキルアミン類としては、上記のアルキルアミンにおいて、アルキル基の水素がCOOHで置換された化合物が挙げられ、エチレンジアミン四酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,2−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランス1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ジカルボキシメチルアスパラギン酸、S,S−エチレンジアミン二コハク酸、エチレンジアミン二(o−ヒドキシフェニル)酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、メチルグリシン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等が挙げられる。また、カルボキシル基の一部または全部が、Na等のアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
【0052】
ピペリジン類としては、無置換、またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)で置換されたピペリジンが好ましく、ここでアルキル基は、さらにアミノ基を有していてもよい。アルキル基の置換位置は、ピペリジン環中の任意の位置でよく、窒素原子上であっても、炭素原子上であってもよい。
【0053】
具体的には、ピペリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1−プロピルピペリジン、2、3または4−メチルピペリジン、2、3または4−エチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,6−ジエチルピペリジン、2,6−ジプロピルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、2,4−ジエチルピペリジン等を挙げることができる。また、1−アミノエチルピペリジンのような、アミノアルキル基で置換されたピペリジンも好ましい。また、モルホリンのような、隣接しない−CH
2−がOで置き換えられた化合物も好ましい。
【0054】
ピロリジン類としては、無置換、またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)で置換されたピロリジンが好ましく、ここでアルキル基は、さらにアミノ基を有していてもよい。アルキル基の置換位置は、ピロリジン環中の任意の位置でよく、窒素原子上であっても、炭素原子上であってもよい。
【0055】
具体的には、ピロリジン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、1−プロピルピロリジン、2または3−メチルピロリジン、2または3−エチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、2,5−ジエチルピロリジン、2,5−ジプロピルピロリジン、2,4−ジメチルピロリジン、2,4−ジエチルピロリジン等を挙げることができる。また、1−アミノエチルピロリジンのような、アミノアルキル基で置換されたピロリジンも好ましい。
【0056】
pKaが7.5以上の金属塩としては、アルカリ金属と弱酸との塩が好ましく、アルカリ金属はNaおよびKが好ましく、弱酸としては炭酸、シュウ酸、酢酸、リン酸および炭素数4以下のカルボン酸が好ましく、特に炭酸、シュウ酸、酢酸、リン酸が好ましい。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等を挙げることができる。
【0057】
以上の他にも、pKaが7.5以上の塩基性化合物であれば使用が可能であるが、pKaとして2つ以上の値を有する化合物の場合、全てのpKa値が7.5以上を有することが好ましい。但し、エチレンジアミン四酢酸のように、全てのpKa値が7.5以上でない化合物であっても使用可能な場合がある。
【0058】
尚、pKaの値は、ケミカル・アブストラクトなどのベータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することができる。ここでは、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって算出された値を採用した。
【0059】
用いる塩基性化合物は一種であっても、複数種の混合物であってもよい。
【0060】
なお、ポリイミド前駆体溶液の溶媒が、アルコール系溶媒を好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有する場合、さらに好ましくは理論水酸基価が700mgKOH/g以上のアルコール系溶媒を40質量%以上含有する場合、塩基性化合物(触媒)は、3級アミンを含むことが好ましい。触媒として3級アミンを用いることにより、触媒がテトラカルボン酸成分と反応することなく、アルコール系溶媒にテトラカルボン酸成分およびジアミン成分が特に溶解しやすくなり、固形分濃度が高いポリイミド前駆体アルコール溶液を得ることができる。この場合、好適な触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジエチルピペラジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン四酢酸、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリメチルアミン等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
全溶媒中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上のアルコール系溶媒を含有する場合、塩基性化合物として、本発明の目的を達成することができる範囲において他の化合物を併用してもよいが、−NH基を有する化合物(例えば、1級アミンや2級アミン)は除かれることが好ましい。
【0062】
本発明で用いる塩基性化合物の使用量は、原料のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって生成するポリアミック酸のカルボキシル基に対して、好ましくは0.8倍当量以上、より好ましくは1.0倍当量以上、さらに好ましくは1.2倍当量以上である。塩基性化合物の使用量がポリアミック酸のカルボキシル基に対して0.8倍当量未満では、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液組成物を得るのが容易でなくなる場合がある。また、塩基性化合物の使用量の上限は、特に限定されないが、通常は10倍当量未満、好ましくは5倍当量未満、より好ましくは3倍当量未満である。塩基性化合物の使用量が多過ぎると、非経済的になるし、且つポリイミド前駆体溶液組成物の保存安定性が悪くなることがある。
【0063】
本発明において、塩基性化合物の量を規定するポリアミック酸のカルボキシル基に対する倍当量とは、ポリアミック酸のアミド酸基を形成するカルボキシル基1個に対して何個(何分子)の割合で塩基性化合物を用いるかを表す。なお、ポリアミック酸のアミド酸基を形成するカルボキシル基の数は、原料のテトラカルボン酸成分1分子当たり2個のカルボキシル基を形成するものとして計算される。
【0064】
したがって、本発明で用いる塩基性化合物の使用量は、原料のテトラカルボン酸二無水物に対して(ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して)、好ましくは1.6倍モル以上、より好ましくは2.0倍モル以上、さらに好ましくは2.4倍モル以上である。
【0065】
本発明に用いるポリイミド前駆体溶液組成物は、好ましくは、アルコール系溶媒および/または水を反応溶媒として、塩基性化合物の存在下に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることによって、ポリイミド前駆体溶液組成物を極めて簡便に(直接的に)製造することが可能である。
【0066】
この反応は、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)とジアミン成分とを略等モル用い、イミド化反応を抑制するために100℃以下、好ましくは80℃以下の比較的低温で行なわれる。限定するものではないが、通常、反応温度は25℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜80℃であり、反応時間は0.1〜48時間程度、好ましくは2〜18時間程度であることが好ましい。反応温度及び反応時間を前記範囲内とすることによって、生産効率よく充分な分子量のポリアミック酸を含有する溶液組成物を容易に得ることができる。なお、反応は、空気雰囲気下でも行うことができるが、通常は不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素ガス雰囲気下で好適に行われる。
【0067】
反応の具体的手順は特に限定されないが、塩基性化合物とジアミンが存在する反応溶媒中に、テトラカルボン酸二無水物を添加して反応させることが、分子量の高いポリアミック酸を得るために好ましい。
【0068】
また、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)とジアミン成分とを略等モルとは、具体的にはモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]で0.90〜1.10程度、好ましくは0.95〜1.05程度である。
【0069】
本発明で用いるテトラカルボン酸二無水物は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物および芳香族テトラカルボン酸二無水物から選ばれ、芳香族テトラカルボン酸二無水物はフッ素基を含有していてもよい。
【0070】
本発明で用いるフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物は、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するものが好ましく、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物などを好適に挙げることができる。
【0071】
本発明で用いる脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’ −テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3;5,6−テトラカルボン酸二無水物などを好適に挙げることができる。
【0072】
本発明で用いるフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5,5’−[2,2,2−トリフルオロ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン]ジフタル酸無水物、5,5’−[2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピリデン]ジフタル酸無水物、1H−ジフロ[3,4−b:3’,4’−i]キサンテン−1,3,7,9(11H)−テトロン、5,5’−オキシビス[4,6,7−トリフルオロ−ピロメリット酸無水物]、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4−(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,4−ジフルオロピロメリット酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物などを好適に挙げることができる。
【0073】
本発明で用いるテトラカルボン酸二無水物は、(i)フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物、(ii)脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及び(iii)フッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物に分類されるが、3つのカテゴリ中の1つのカテゴリのみから選ばれる化合物を使用する必要はなく、例えば(i)の化合物と(ii)の化合物の組み合わせというように2つ以上のカテゴリの混合物でもよい。また、1つのカテゴリの中から、複数種の化合物を選んで、それ自体で、または他のカテゴリから選ばれる化合物との混合物として用いることもできる。
【0074】
本発明で用いるジアミンは、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジアミンから選ばれ、芳香族ジアミンはフッ素基を含有していてもよい。
【0075】
本発明で用いるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンとしては、全溶媒中、水を50質量%以上含む場合は、25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上の化合物が好ましく、1〜2個の芳香族環を有する芳香族ジアミンが好ましい。25℃の水に対する溶解度が0.1g/L未満の芳香族ジアミンを用いた場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。また、芳香族ジアミンが2個を越える芳香族環を持つ場合には、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L未満になる場合があり、その結果、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0076】
本発明で用いる脂肪族ジアミンとしては、分子量(モノマーの場合は分子量、ポリマーの場合は重量平均分子量を示す)が500以下の化合物が好ましく、全溶媒中、水を50質量%以上含む場合は、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上である脂肪族ジアミン、又は、1〜2個の脂環を有する脂環式ジアミンが特に好ましい。分子量が500を超える脂肪族ジアミンを用いた場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0077】
本発明で用いるフッ素基を含有する芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンが好ましい。フッ素基を含有する芳香族ジアミンが2個を越える芳香族環を持つ場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0078】
本発明で用いる好ましいフッ素基を含有しない芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度は120g/L、以下同様)、メタフェニレンジアミン(77g/L)、4,4’−オキシジアニリン(0.19g/L)、3,4’−オキシジアニリン(0.24g/L)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(0.54g/L)、2,4−トルエンジアミン(62g/L)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(1.3g/L)、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン(200g/L)、2,4−ジアミノトルエン(62g/L)などを例示できるが、水溶性が高く、得られるポリイミドが優れた特性を有するので、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、及びそれらの混合物が好ましく、さらにパラフェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、及びそれらの混合物がより好ましい。
【0079】
本発明で用いる好ましい脂肪族ジアミンとしては、trans−1,4−ジアミノシクロへキサン(1000g/L、分子量:114)、cis−1,4−ジアミノシクロへキサン(1000g/L、分子量:114)、1,6−ヘキサメチレンジアミン(1000g/L、分子量:116)、1,10−デカメチレンジアミン(1000g/L、分子量:172)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1000g/L、分子量:142)、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(999g/L、分子量:142)、重量平均分子量が500以下のポリオキシプロピレンジアミンなどを挙げることができる。
【0080】
本発明で用いるフッ素基を含有する芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンが好ましい。例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ベンゼン(ジメタンアミン)、2,2’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、2,2’,6,6’−テトラフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−オキシビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)であることが好ましい。フッ素基を含有する芳香族ジアミンが2個を越える芳香族環を持つ場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0081】
本発明で用いるジアミンは、(i)フッ素基を含有しない芳香族ジアミン、(ii)脂肪族ジアミン、及び(iii)フッ素基を含有する芳香族ジアミンに分類されるが、3つのカテゴリ中の1つのカテゴリのみから選ばれる化合物を使用する必要はなく、例えば(i)の化合物と(ii)の化合物の組み合わせというように2つ以上のカテゴリの混合物でもよい。また、1つのカテゴリの中から、複数種の化合物を選んで、それ自体で、または他のカテゴリから選ばれる化合物との混合物として用いることもできる。全溶媒中、水を50質量%以上含む場合、フッ素基を含有しない芳香族ジアミンは、これらの水に対する溶解度が高いジアミンと他のジアミンとを組み合わせて、ジアミン成分全体として25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上になるようにして用いることもできる。
【0082】
なお、25℃における水に対する溶解度(25℃の水に対する溶解度)が0.1g/L以上のジアミンとは、当該ジアミンが25℃の水1L(1000ml)に0.1g以上溶解することを意味する。25℃における水に対する溶解度は、当該物質が、25℃の水1L(リットル)に溶解する限界量(g)を意味する。この値は、ケミカル・アブストラクトなどのデータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することができる。ここでは、種々の条件下での溶解度のうち、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって算出されたpHが7における値を採用した。
【0083】
本発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、非常に好ましくは以上説明した製造方法によって得られるものである。従って、ポリイミド前駆体溶液組成物は、下記化学式(1)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸が、前記ポリアミック酸のカルボキシル基に対して1.6倍モル以上の、pKaが7.5以上である塩基性化合物と共に、水および/またはアルコール系溶媒中に均一に溶解してなるポリイミド前駆体溶液組成物に関する。
【0084】
【化4】
化学式(1)において、Aは、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であって、Bは、
芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又は脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
【0085】
化学式(1)のAは、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又は脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基である。
【0086】
化学式(1)のAは、得られるポリアミック酸が水および/またはアルコール系溶媒に対して十分な溶解性を有すると共に、得られるポリイミドが所望の特性を有するように適宜選択される。本発明においては、50モル%超(100%を含む)が2〜3個の芳香族環を有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%未満(0%を含む)が脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基および/またはフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であることが好ましい。
【0087】
本発明においては、得られるポリイミドの特性から、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位である前記化学式(1)のAが、下記化学式(2)〜(7)のいずれか一種以上であることが好ましく、主として下記化学式(2)、(3)及び(5)のいずれか一種以上であることが特に好ましく、下記化学式(2)〜(3)のいずれか一種以上であることがさらに好ましい。
【0089】
化学式(1)のBは、ポリアミック酸のジアミン成分に由来する化学構造であって、好ましくは1〜2個の芳香族環を有し、フッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又は分子量が500以下である脂肪族ジアミン、好ましくは水に対する溶解度が0.1g/L以上である脂肪族ジアミン、あるいは、1〜2個の脂環を有する脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
【0090】
本発明においては、得られるポリイミドの特性から、フッ素基を含有しない芳香族ジアミンに由来する構成単位である前記化学式(1)のBが、下記化学式(8)〜(9)のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0092】
本発明に用いるポリイミド前駆体溶液組成物においては、ポリイミド前駆体(実質的にポリアミック酸)に起因する固形分濃度に基づいて温度30℃、濃度0.5g/100mL(水および/またはNMP溶解)で測定した対数粘度が、好ましくは0.1以上である。用途によっては、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上の高分子量であることが好適である場合がある。対数粘度が前記範囲よりも低い場合、例えば、0.07程度以下では、反応生成物の分子量が低く、実質的にはポリアミック酸が生成しているとは言えない。対数粘度の低い溶液組成物は、バインダー用途として不適当である。
【0093】
本発明に用いるポリイミド前駆体溶液組成物は、ポリイミド前駆体(実質的にポリアミック酸)に起因する固形分濃度が、特に限定されるものではないが、ポリイミド前駆体と溶媒との合計量に対して、好ましくは4質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜40質量%、さらに好ましくは7質量%〜30質量%であることが好適である。固形分濃度が4質量%より低いと生産性、及び使用時の取り扱いが悪くなることがあり、50質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。
【0094】
また、本発明に用いるポリイミド前駆体溶液組成物の30℃における溶液粘度は、特に限定されないが、好ましくは35000poise以下、より好ましくは5〜5000poise、さらに好ましくは10〜3000poise、特に好ましくは30〜2000poiseであることが取り扱い上好適な場合がある。なお、本発明に用いるポリイミド前駆体溶液組成物は水やアルコール系溶媒により容易に希釈できるので、粘度調整の自由度が高い。
【0095】
本発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、水および/またはアルコール系溶媒を用いるが、アルコール系溶媒以外の有機溶媒、例えばポリアミック酸を調製する際に用いられる公知の有機溶媒を全溶媒中50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%未満の割合で用いてもよい。すなわち、本発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸が、pKaが7.5以上の塩基性化合物と共に、水単独、アルコール系溶媒単独、または水とアルコール溶媒との混合溶媒(それぞれ、好ましくは5質量%未満でアルコール系溶媒以外の溶媒を用いてよい。)中に溶解しているものである。
【0096】
前記アルコール系溶媒以外の有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0097】
本発明のポリイミド前駆体アルコール溶液組成物は、特開平8−59832号公報および特開2002−226582号公報などに記載されている方法に準じ、
(i) アルコール系溶媒や水以外の有機溶媒を反応溶媒とし、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応して得られたポリアミド酸をアルコール系溶媒中に投入してポリアミド酸粉末を得、そのポリアミド酸粉末をアルコール系溶媒中で含窒素化合物と共に混合溶解してアルコール溶液組成物を得る方法、
(ii) アルコール系溶媒や水以外の有機溶媒を反応溶媒とし、含窒素化合物の存在下にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応してポリイミド前駆体を得、それを分離後、アルコール系溶媒に溶解する方法、或いは、
(iii) アルコール系溶媒や水以外の有機溶媒を反応溶媒とし、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応してポリアミック酸を得、そのポリアミック酸を、有機溶媒を反応溶媒として、含窒素化合物と反応してポリイミド前駆体を得、それを分離後、アルコール系溶媒に溶解する方法
などでも得ることができる。但し、前述の通り、アルコール系溶媒や水以外の有機溶媒の含有量が極めて少ないか含まないポリイミド前駆体溶液組成物を得るためには、ポリイミド前駆体をアルコール系溶媒、水溶媒、またはアルコール系溶媒と水との混合溶媒中で調製することが好ましい。
【0098】
<ポリイミドパウダー>
本発明に用いられるポリイミドパウダーは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られたポリイミドの粉末である。本発明に用いるポリイミドパウダーは、特に限定はされないが、例えば平均粒径が、1〜25μmであることが好ましい。
【0099】
ポリイミドパウダーの製造に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分は、用途に応じて適宜選択できる。テトラカルボン酸成分およびジアミン成分としては、例えば、上記ポリイミド前駆体溶液の説明で挙げた各化合物を使用することができる。ポリイミドパウダーの製造方法は、例えば、略等モルのテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、反応溶媒中で重合・イミド化を行い、ついで反応系から粉末を回収することにより得られる。このときの反応溶媒は、NMP等の通常用いられる有機溶媒でもよいし、上記ポリイミド前駆体溶液の製造に用いることができる水および/またはアルコール系溶媒であってもよい。重合・イミド化反応は、例えば、反応溶媒中に略等モルのテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを加え、不活性ガス存在下、好ましくは150℃〜260℃、より好ましくは180℃〜220℃の範囲の温度で行い、還流条件下で水を分離しながら、ポリイミド粉末を析出させる。この析出したポリイミド粉末を、必要により粉砕し、乾燥させてポリイミドパウダーを得ることができる。
【0100】
<凝集体>
次に、本発明の凝集体とその製造方法について説明する。本発明の凝集体は、上記ポリイミド前駆体溶液組成物とポリイミドパウダーとを用いて造粒することにより得られる。以下、造粒の際に用いるポリイミド前駆体溶液組成物を、バインダー溶液と記載することもある。
【0101】
造粒の際用いるバインダー溶液は、その全溶媒中、水が50質量%以上(100質量%を含む)含まれることが好ましい。すなわち、ポリイミド前駆体溶液の全溶媒中、水が50質量%未満のときは、水で希釈して水が50質量%以上となるようにバインダー溶液を調製することが好ましい。なお、本発明に用いるポリイミド前駆体溶液は、水で容易に希釈することができる。
【0102】
造粒の際、ポリイミドパウダーとバインダー溶液との混合割合は、任意の量にて決定することができるが、例えば、凝集体の全重量(溶媒の重量を除く)のうち、ポリイミド前駆体の重量が7重量%以上、50重量%以下の範囲となるように混合することが好ましい。
【0103】
本発明の凝集体は、さらに充填剤を含んでもよい。充填剤は用途に応じて適宜選択することができる。充填剤としては、例えば、凝集体に高強度特性を付与する充填剤、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、ボロン繊維、ガラスビーズ、ウィスカーまたはダイヤモンド粉末;熱放散特性を付与する充填剤、例えば、アルミナまたはシリカ;耐コロナ性を付与する充填剤、例えば、天然マイカ、合成マイカ、アルミナ;導電性を付与する充填剤、例えば、カーボンブラック、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉;耐熱性を付与する充填剤、例えば、アラミド繊維、金属繊維、セラミック繊維、ウィスカー、炭化珪素、酸化珪素、アルミナ、マグネシウム粉、チタニウム粉;低い熱膨張係数を付与する充填剤、例えば、炭素繊維;低い磨耗または摩擦係数を付与する充填剤、例えば、グラファイト、弗素含有微細粉末、およびカオリナイトなどの層状珪酸塩などの種々の充填剤が挙げられる。これらの充填剤は、単独、または二種以上の充填剤の組み合わせで用いてもよい。
【0104】
充填剤の使用量は、用途に応じて選択できるが、例えば、ポリイミドパウダーとバインダー溶液との合計重量を基準として、1〜50重量%の範囲で用いることができる。
【0105】
造粒方法としては、例えば、流動層造粒法、撹拌混合造粒法、噴霧乾燥(スプレードライ)法、押出成型法等、公知の方法を挙げることができる。
【0106】
例えば、撹拌混合造粒法で造粒を行う場合は、ポリイミドパウダーと、ポリイミド前駆体溶液(好ましくは水を50%以上含む溶媒にポリイミド前駆体が溶解しているバインダー溶液)とを装置に投入し、装置内でこれらを撹拌・混合することにより造粒する。流動層造粒法の場合は、装置内でポリイミドパウダーを熱風により巻き上げているところにバインダー溶液を散布することにより造粒する。
【0107】
また、例えば、噴霧乾燥法で造粒を行う場合は、あらかじめポリイミドパウダーとバインダー溶液を混合してポリイミドスラリーを調製し、これを装置内の気流の中に噴霧することにより造粒する。押出成形法の場合は、ポリイミドスラリーに圧力を加えて有穴板等から押し出すことにより造粒する。
【0108】
さらに充填剤を用いるときは、上記バインダー溶液中またはスラリー中に分散させて造粒することが好ましい。
【0109】
造粒された凝集体は、必要に応じて熱風により乾燥処理される。その際、バインダー溶液に含有されていた溶媒が除去されるが、本発明のバインダー溶液(ポリイミド前駆体溶液を含む)の溶媒は、水および/またはアルコール系溶媒を主成分とするので、環境適応性が良好である。
【0110】
上記製造方法により得られた凝集体は、ポリイミド前駆体がバインダーとしてはたらき、ポリイミドパウダーの粒子同士を、ポリイミド前駆体が結合している。凝集体の平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは1mm以下、より好ましくは70〜800μmである。
【0111】
本発明のポリイミド成形体は、上記のようにして得られる凝集体を成形して仮成形体とし、これを加熱処理することにより得られる。これら成形体の形状は特に限定されるものではなく、シート、円筒、立方体等どのような形状でも良い。成形方法としては、加圧成形が好ましく、例えば、ホットプレス、打錠成形、ホットスタンピング等により成形することができる。仮成形体の加熱処理は加圧成形と同時に行うこともでき、別に行うこともできる。
【0112】
加圧成形時の圧力は1〜280MPa/cm
2であることが好ましく、10〜250MPa/cm
2であることがより好ましく、特に20〜220MPa/cm
2であることが好ましい。本発明の凝集体を用いることで、従来よりも低い圧力で成形しても、十分な強度等を持ったポリイミド成形体が得られる。
【0113】
加熱処理は、少なくとも凝集体の製造に用いたポリイミド前駆体溶液組成物のイミド化が完了する条件で行うのが好ましい。例えば、加熱処理時の温度は150℃から400℃であることが好ましく、加熱処理時間は5から60分であることが好ましい。また最終的に、凝集体の製造に用いたポリイミド前駆体から得られるポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱するのが好ましい。
【0114】
本発明のポリイミド成形体の密度は、好ましくは、1.00〜1.50g/cm
3であり、より好ましくは、1.19〜1.42g/cm
3である。密度が小さすぎると得られたポリイミド成形体の強度が十分でないことがある。また、破断点ひずみは、好ましくは、2%以上、より好ましくは、5%以上が良い。破断点ひずみが小さすぎると、用途によっては靭性が十分でないことがある。
【0115】
本発明のポリイミド成形体は、例えば、半導体製造関連装置のピン、ガイド等として、また、自動車・航空宇宙用途のバルブシール、ブレーキパッド、ワッシャー、オイルシール等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0117】
以下の例で用いた測定方法を示す。安息角、崩壊角、ゆるみ見かけ比重、固め見掛け比重の測定にはパウダーテスターPT−E(細川鉄工所製)を用いた。
【0118】
<安息角>(JIS R 9301−2−2に準処)
パウダーテスターPT−Eを用いて、目開き710μmの篩を装置に装着し、その下に出口内径8mmのガラス製ロートを装着し、その下にφ80mmの測定用の円形テーブルを設置した。測定したい試料を篩に投入し、篩とロートに振動を与えて試料をテーブル上に中心に落下させ、テーブルの端がすべて隠れるまで試料を落下させて降り積もらせた。この降り積もった試料の最も高い点と円形テーブルの端とを結ぶ法線角を分度器にて測定することにより安息角を測定した。
【0119】
<崩壊角>
安息角の測定を終了した後、測定テーブルの直ぐ傍に自由落下が出来る重さ200gの錘が付いた衝撃装置を設置し、錘を30cmの高さから3回落下させて円形テーブルに震動による衝撃を加えて試料の山を崩した。このときの試料の最も高い点と円形テーブルの端とを結ぶ法線角を分度器にて測定することにより崩壊角を測定した。
【0120】
<ゆるみ見かけ比重>(JIS K 7365に準処)
パウダーテスターPT−Eを用いて、目開き710μmの篩を装置に装着し、その下にステンレス製のストレーナーを装着し、その下に100ccの比重測定用のカップを設置した。測定したい試料を篩に投入し、篩に振動を与えて試料をカップ上に落下させ、カップの口の端がすべて隠れるまで試料を落下させて降り積もらせた。この降り積もった試料をカップの口で擦り切り板を用いて軽量カップ外の試料を擦り切り、100ccの試料を得た。得られた試料の重量を測定することによりゆるみ見かけ比重(ρa)を測定した。
【0121】
<固め見かけ比重>
ゆるみ見かけ比重を測定後の試料が充填された計量カップに継ぎ足しキャップを装着し、試料をキャップの中に充填したのち、これをパウダーテスターPTEに装着し上下に180回タッピングさせることにより試料を圧密した。継ぎ足しキャップを外した後、カップの口で擦り切り板を用いて軽量カップ外の資料を擦り切り、100ccの試料を得た。得られた試料の重量を測定することにより固め見掛け比重(ρp)を測定した。
【0122】
<圧縮度>
ゆるみ見かけ比重と固め見かけ比重とから、次式により求めた。
圧縮度=(ρp−ρa)/ρp×100
【0123】
<平均粒径>(JIS K 0069に準処)
振とう機として、ミニふるい振とう機 MSV−1(アズワン製)を用いて、下から目開きが30μm、63μm、106μm、180μm、300μm、500μm、710μm、1000μmのJIS Z 8801に準処した篩を装着し一番上の篩に試料を20g投入したのち、篩に2000rpm付近で10分間振動を与えた。装置を止めた後、各篩に残っている試料の重量を測定することにより、粒径の累積分布表を求めた。累積分布表より得られた累積重量50%の値を平均粒径とした。
【0124】
<破断点応力>
オートグラフAG−G250kN(株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K 7181に準処してサンプル面積より十分大きい円盤型圧縮治具上にサンプルを乗せて円盤型圧縮冶具で押しつぶすように圧縮して破断点応力を測定した。
【0125】
<破断点ひずみ>
オートグラフAG−G250kN(株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K 7181に準処してサンプル面積より十分大きい円盤型圧縮治具上にサンプルを乗せて円盤型圧縮冶具で押しつぶすように圧縮して破断点ひずみを測定した。
【0126】
<密度>
マイクロメーターを用いて直径、高さを求めることにより体積を求め、ポリイミド成形体の重量を測定して、重量÷体積にて密度(g/cm
3)を求めた。
【0127】
以下の例で使用した化合物の略号は下記のとおりである。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD:パラフェニレンジアミン
ODA:4,4’−オキシジアニリン
【0128】
<ポリイミドパウダーの調製1>
攪拌機、還流冷却器(水分離器付き)、温度計、窒素導入管を備えた容量500mLの円筒形フラスコに、溶媒としてNMP343.00gを入れ、s−BPDA90.00g(0.31モル)とPPD33.10g(0.31モル)を加えて撹拌溶解した。次いで、200℃に昇温させて、水を分離しながら、イミド化反応を行わせ、ポリイミド粉末を析出させた。析出したポリイミド粉末を濾別し、熱水洗浄及び脱水乾燥させた。得られたポリイミド粉末を粉砕した後、真空乾燥させ、平均粒径12μmポリイミドパウダーAを得た。
【0129】
<ポリイミドパウダーの調製2>
s−BPDA50.00g(0.17モル)とODA34.00g(0.17モル)を用い、溶媒のNMP等の量を調節した以外はポリイミドパウダーの調製1と同様にして、平均粒径12μmポリイミドパウダーBを得た。
【0130】
<ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液の調製1>
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積5000mlのガラス製の反応容器に、水600g、パラフェニレンジアミン193.5g、トリエチレンジアミン421.5g、ジプロピレングリコール1080gを秤取り、50℃の温度で攪拌して溶解させた。次いで、この反応容器へ3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物526.5gを添加して、反応温度50℃で10時間攪拌して、ポリアミック酸溶液Aを得た。
【0131】
<ポリアミック酸溶液の調製2>
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積5000mlガラス製の反応容器に、水600g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル291.6g、トリエチレンジアミン343.0g、ジプロピレングリコール1080gを秤取り、50℃の温度で攪拌して溶解させた。次いで、この反応容器へ3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物428.4gを添加して、反応温度50℃で10時間攪拌して、ポリアミック酸溶液Bを得た。
【0132】
<ポリイミドスラリーの調製1>
5000mlの容器にポリイミドパウダーAを944gとポリアミック酸溶液A315gと水3240gを投入した後、攪拌混合しポリイミドスラリーAを得た。
【0133】
<ポリイミドスラリーの調製2>
5000mlの容器にポリイミドパウダーBを944gとポリアミック酸溶液B315gと水3240gを投入した後、攪拌混合しポリイミドスラリーBを得た。
【0134】
<実施例1>
攪拌混合造粒装置として、トリプルマスターTMGV−5(品川工業所製)を用いて、攪拌混合造粒装置のポットに上記で調製したポリイミドパウダーAを500g投入した。その後、装置を公転速度85rpm、混練翼速度1000rpm、チョッパー速度3940rpmにて運転させ、この中で、ポリアミック酸溶液A165gを精製水165gに溶解させてバインダー溶液を得た。得られたバインダ−溶液の全量を、4分かけて攪拌混合造粒装置のポット内部に噴射させることによりバインダー溶液を投入した。投入後、同じ条件にて2分間更に攪拌、造粒したところで装置を止め、未乾燥の造粒された凝集体を取り出した。取り出した凝集体を棚式乾燥機にて80℃にて3時間乾燥させ、乾燥した凝集体Aを得た。
【0135】
得られた凝集体A2gを、プレス機として標準型油圧ジャッキ MH-15(マサダ製作所製)、ダイスとして、直径80mm 穴径12.7mm 高さ(深さ)61mm 鋼製(冨士ダイス株式会社製)にリボン状ポリイミドヒーター(幅1cm 長さ100cm)をダイスの外周に巻きつけたて加温できるようにしたもの、上パンチとして 直径12.7mm 長さ65mm 鋼製(冨士ダイス株式会社製)、下パンチとして 直径12.7mm 長さ25mm 鋼製(冨士ダイス株式会社製)、を用いて、ダイス温度250℃、プレス圧75MPaにて10分間加圧して圧縮成形した後、得られた仮成形体を120℃にて30分、150℃にて10分、200℃にて10分、250℃にて10分、350℃にて10分オーブンにて焼成しポリイミド成形体Aを得た。ポリイミド成形体Aの大きさは、高さ11.82mm、直径12.46mmであった。
【0136】
<実施例2>
スプレー乾燥装置として、L−8i(大川原化工機製)を用いて条件をアトマイザー回転速度20000rpm、入り口温度250℃、出口温度100℃に設定し、上記にて調製したポリイミドスラリーAを3.7kg/hの速さで投入することでスプレー乾燥して造粒し、乾燥した凝集体Bを得た。
【0137】
凝集体Aに代えて得られた凝集体B2gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行いポリイミド成形体Bを得た。ポリイミド成形体Bの大きさは、高さ12.61mm、直径12.53mmであった。
【0138】
<実施例3>
スプレー乾燥装置として、L−8i(大川原化工機製)を用いて条件をアトマイザー回転速度20000rpm、入り口温度250℃、出口温度100℃に設定し、上記にて調製したポリイミドスラリーBを3.5kg/hの速さで投入することでスプレー乾燥にて造粒し、乾燥した凝集体Cを得た。
【0139】
凝集体Aに代えて得られた凝集体C2gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行いポリイミド成形体Cを得た。ポリイミド成形体Cの大きさは、高さ11.90mm、直径12.36mmであった。
【0140】
<実施例4>
流動層造粒装置として転動流動コーティング装置MP−01(パウレック製)を用いて、上記にて調製したポリイミドパウダーB400gを内部に投入し、給気温度80℃、給気風量35m
3/hになるように装置の条件を設定した。この中に上記にて調製したポリアミック酸溶液B135gを純水135gで希釈したバインダー溶液の全量を13分かけて流動層内に噴射した後、排気温度が40℃になった時点で装置を停止し、造粒され、乾燥した凝集体Dを得た。
【0141】
凝集体Aに代えて得られた凝集体D2gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行いポリイミド成形体Dを得た。ポリイミド成形体Dの大きさは、高さ11.45mm、直径12.27mmであった。
【0142】
<実施例5>
攪拌混合造粒装置として、バーチカルグラニュレーターVG−01(パウレック製)を用いて、攪拌混合造粒装置のポットに上記にて調製したポリイミドパウダーB410gを投入した。その後、混練翼速度350rpm、クロススクリュウー速度3060rpmにて運転させ、この中で、上記にて得られたポリアミック酸溶液B135gを精製水135gに溶解させてバインダー溶液を得た。得られたバインダー溶液の全量を、4分かけて攪拌混合造粒装置のポット内部に滴下させることによりバインダー溶液を投入した。投入後、同じ条件にて14分間更に攪拌、造粒したところで装置を止め、未乾燥の造粒された凝集体を取り出した。取り出した凝集体を転動流動コーティング装置MP−01(パウレック製)にて給気温度80℃、給気風量40m
3/hにて24分乾燥させることにより、乾燥した凝集体Eを得た。
【0143】
<実施例6>
攪拌混合造粒装置として、バーチカルグラニュレーターVG−01(パウレック製)を用いて、攪拌混合造粒装置のポットに上記にて調製したポリイミドパウダーAを500g投入した。続いて、混練翼速度350rpm、クロススクリュウ−速度3060rpmにて運転させ、この中で、上記にて得られたポリアミック酸溶液Aを165gを精製水165gに溶解させてバインダー溶液を得た。得られたバインダー溶液の全量を、4分かけて攪拌混合造粒装置のポット内部に滴下させることにより、バインダー溶液を投入した。投入後、同じ条件にて14分間更に攪拌造粒したところで装置を止め、未乾燥の造粒された凝集体を取り出した。取り出した凝集体を転動流動コーティング装置MP−01(パウレック製)にて給気温度80℃、給気風量40m
3/hにて30分乾燥させることにより、乾燥した凝集体Fを得た。
【0144】
凝集体Aに代えて得られた凝集体F2gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行いポリイミド成形体Fを得た。ポリイミド成形体Fの大きさは、高さ11.77mm、直径12.48mmであった。
【0145】
<比較例1>
上記にて得られたポリイミドパウダーAをそのまま用いて各測定を行った。
【0146】
また、凝集体Aに代えて、ポリイミドパウダーA2gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行いポリイミド成形体Gを得た。
【0147】
<比較例2>
上記にて得られたポリイミドパウダーBをそのまま用いて各測定を行った。
【0148】
また、凝集体Aに代えて、ポリイミドパウダーB2gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行いポリイミド成形体Hを得た。
【0149】
<比較例3>
流動層造粒装置として転動流動コーティング装置MP−01(パウレック製)を用いて、上記にて調製したポリイミドパウダーA500gを内部に投入し、給気温度80℃、給気風量35m
3/hになるように装置の条件を設定した。この中に純水330gを13分かけて流動層内に噴射した後、排気温度が40℃になった時点で装置を停止して、乾燥したところ凝集体は得られなかった。
【0150】
<比較例4>
流動層造粒装置として転動流動コーティング装置MP−01(パウレック製)を用いて、上記にて調製したポリイミドパウダーB400gを内部に投入し、給気温度80℃、給気風量35m
3/hになるように装置の条件を設定した。この中に純水270gを13分かけて流動層内に噴射した後、排気温度が40℃になった時点で装置を停止して、乾燥したところ凝集体は得られなかった。
【0151】
<凝集体の特性の測定>
実施例1〜実施例6で得られた凝集体、比較例1および比較例2のポリイミドパウダー、比較例3および比較例4の操作後得られたパウダーの安息角、崩壊角、ゆるみ見かけ比重、固め見かけ比重、圧縮度、平均粒径の測定結果を表1に示す。なお、比較例1〜4においては、パウダーの静電気が大きく、安息角、崩壊角は測定できなかった。
【0152】
<成形体の特性の測定>
実施例1〜4、6で得られた成形体、および比較例1、2で得られた成形体の破断点応力、密度、破断点ひずみの測定結果を表1に示す。なお、実施例1、2、6で得られた成形体と比較例1で得られた成形体とを比較すると、どの結果においても実施例の方が良かった。また、実施例3、4で得られた成形体は、比較例2で得られた成形体と比べて、より高密度であった。
【0153】
【表1】