(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抵抗発熱層を含む定着ベルトの外周面に加圧部材を押圧して定着ニップを形成し、未定着画像の形成されたシートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、
ベルト幅方向における前記抵抗発熱層の両側端部に、一部が導電状態で積層された積層部と当該積層部からベルト幅方向の外側に延出された非積層部とを含む一対の筒状をした受電部材と、
各受電部材の前記非積層部に対応する外周面部分もしくは内周面部分に摺接する給電部材と、
各受電部材の前記非積層部の外縁に当接して、定着ベルトの幅方向の移動を規制する蛇行規制部材と、
を備え、
前記受電部材は、
その外周面と内周面の両方に、前記ベルト幅方向に延びた凹条部が周方向に列設されており、当該受電部材の横断面において、周方向に隣接する前記外周面の凹条部部分と前記内周面の凹条部部分とで1周期分の波形状となるよう、当該外周面の凹条部と当該内周面の凹条部とが、前記周方向にずらして設けられていることを特徴とする定着装置。
抵抗発熱層を含む定着ベルトの外周面に加圧部材を押圧して定着ニップを形成し、未定着画像の形成されたシートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、
ベルト幅方向における前記抵抗発熱層の両側端部に、一部が導電状態で積層された積層部と当該積層部からベルト幅方向の外側に延出された非積層部とを含む一対の筒状をした受電部材と、
各受電部材の前記非積層部に対応する外周面部分もしくは内周面部分に摺接する給電部材と、
各受電部材の前記非積層部の外縁に当接して、定着ベルトの幅方向の移動を規制する蛇行規制部材と、
を備え、
前記受電部材は、その縦断面における面積が第1の大きさとなる第1の部分と、当該面積が第1の大きさよりも小さな第2の大きさとなる第2の部分とが、周方向において交互に形成されてなり、
前記受電部材の前記第2の部分は、受光部材の厚み方向における、貫通穴もしくは非貫通穴が、前記ベルト幅方向に列状に複数開設された部分であることを特徴とする定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る定着装置の実施の形態を、プリンターに用いた例に基づいて図面を参照しながら説明する。なお、各図において、部材間の尺度は統一していない。
<実施の形態1>
図1は、タンデム型フルカラープリンター10(以下、単に「プリンター10」と言う。)の概略構成を示す図である。
【0020】
プリンター10は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであって、転写ベルト12と、転写ベルト12を張架する駆動ローラー14、従動ローラー16、転写ベルト12に対向し転写ベルト12の走行方向に沿って所定間隔で配置されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の作像ユニット18Y,18M,18C,18Kと、記録シートを給送する給紙装置20と、定着装置22とが、筐体24に収納された構成を有している。
【0021】
各作像ユニット18Y,…,18Kは、像担持体である感光体ドラム26Y,26M,26C,26Kと当該感光体ドラム表面を露光走査するための露光装置28Y,28M,28C,28Kの他に、帯電器30Y,30M,30C,30K、現像装置32Y,32M,32C,32K、クリーナー34Y,34M、34C,34K、および1次転写ローラー36Y,36M,36C,36Kなどを有している。
【0022】
給紙装置20は、記録シートを収納する給紙カセット38と、この記録シートを給紙カセット38から繰り出すためのピックアップローラー40、後述する2次転写ローラー42に送り出すタイミングをとるためのレジストローラー44などからなる。
各感光体ドラム26Y,…,26Kは、露光装置28Y,…,28Kによる露光を受ける前にクリーナー34Y,…,34Kで表面の残存トナーが除去された後、帯電器30Y,…,30Kにより一様に帯電されており、このように一様に帯電した状態で上記露光を受けると、感光体ドラム26Y,…,26Kの表面に静電潜像が形成される。
【0023】
各静電潜像は、それぞれ各色の現像装置32Y,…,32Kにより現像され、これにより感光体ドラム26Y,…,26K表面にY,M,C,Kのトナー像が形成され、各転写位置において転写ベルト12の裏面側に配設された1次転写ローラー36Y,…,36Kの静電的作用により、転写ベルト12の表面上に順次転写されていく。
この際、各色の作像動作は、そのトナー像が、走行する転写ベルト12の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにすべく、上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。
【0024】
一方、給紙装置20では、上記した転写ベルト12への作像タイミングに合わせて、給紙カセット38から記録シートが給紙され、2次転写ローラー42と駆動ローラー14とが対向する位置(以下、「2次転写位置」と言う。)へと搬送される。
当該2次転写位置において、2次転写ローラー42の静電的作用により、転写ベルト12上のトナー像が記録シートへ再転写(2次転写)される。
【0025】
トナー像が転写された記録シートは、さらに、定着装置22にまで搬送される。記録シートは、定着装置22において高熱下で加圧され、その表面のトナー粒子がシート表面に融着して定着(熱定着)された後、排紙ローラー46によって排紙トレイ48上に排出される。
<定着装置>
図2は、定着装置22の概略構成を示す斜視図である。
【0026】
定着装置22は、抵抗発熱層70(
図3)を有し細長い円筒状をした定着ベルト50と、定着ベルト50の内側に定着ベルト50に平行に遊挿された弾性体ローラー52と、定着ベルト50の外側に定着ベルト50と平行に配された加圧部材である加圧ローラー54と、定着ベルト50に電力を供給するための一対の給電部材56,58と、温度センサー60,62などを備えている。
【0027】
上記部材を有する定着装置22において、加圧ローラー54が、定着ベルト50を介して弾性体ローラー52を押圧していて、これにより定着ベルト50の一部が円弧状に凹んで、定着ベルト50と加圧ローラー54との間で定着ニップN(
図5)が形成されている。
また、加圧ローラー54は、不図示のモーターを動力源とし、不図示の動力伝達機構を介して矢印Aの方向に回転駆動される。定着ベルト50と弾性体ローラー52とは、加圧ローラー54の回転に従動して、矢印Bの方向に走行あるいは回転する。
【0028】
以下、定着装置22における各構成要素について詳しく説明する。
(定着ベルト)
定着ベルト50は、その幅方向(軸心方向)における両端部に、給電部材56,58と接触して、電源64からの電力供給を受ける受電部材である筒状電極66,68を有している。
【0029】
図3は、定着ベルト50の積層構造を説明するための、筒状電極68側の端部を含む部分における縦断面図である。
図3に示すように、筒状電極68が設けられていない領域では、内側から抵抗発熱層70、補強層72、弾性層74、および離型層76がこの順で積層された構造をしている。
筒状電極68は、抵抗発熱層70の端部周面(本例では、内周面)に幅方向(軸心方向)における一部が重なった状態(積層状態)で接合されている(導電状態で積層されている)。この積層部から前記幅方向の外側(
図3における左側)に延出された部分は、
図3に示すように、筒状電極68の単層構造(非積層部)になっている。なお、定着ベルト50の筒状電極66側の端部も上記と同様の構成である。
【0030】
ここで、定着ベルト50において、抵抗発熱層70、補強層72、弾性層74、離型層76および筒状電極68が積層されている領域を「電極領域50A」と称し、抵抗発熱層70、補強層72、弾性層74、離型層76のみが積層されている領域を「非電極領域50B」と称することとする。
抵抗発熱層70は、合成樹脂に導電フィラーを分散させたものであり、所定の電気抵抗率に調整されている。
【0031】
合成樹脂には、PI(ポリイミド)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の耐熱性を有するものを用いることができるが、この中でも最も高い耐熱性を有するPIが好ましい。
導電フィラーには、Ag、Cu、Al、Mg、Ni等の金属粉末や、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素化合物粉末を用いることができる。これらは、1種類単体で用いても構わないし、2種種類以上を混合させて用いても構わない。導電フィラーの形状は、少ない含有量でフィラー同士の接触確率を高くし、パーコレーションしやすくするため、繊維状が好ましい。
【0032】
合成樹脂中に分散させるフィラーの量は、炭素化合物の場合は、体積分率で40〜50[vol%]が好ましい。これは、分散させるフィラーの量が多すぎると、抵抗値が小さくなり過ぎて、電流・電力が電源の許容範囲を超えてしまい、少なすぎると、抵抗値が大きくなり過ぎて、発熱に必要な所望の電力が得られないからである。
抵抗発熱層70の厚みは、30〜150[μm]が好ましい。
【0033】
抵抗発熱層70の電気抵抗率は、電圧、電力に応じ、抵抗発熱層70の厚み、径、長さ等で設定されるが、その大きさは、1.0×10
-6〜1.0×10
-2[Ω・m]程度であり、好ましい範囲は、1.0×10
-5〜5.0×10
-3[Ω・m]である。
なお、電気抵抗率の調整を目的として、金属合金や金属間化合物などの導電性粒子を適度に混入しても構わないし、機械的強度の向上のためにガラスファイバー、ウィスカ、酸化チタン、チタン酸カリウムなどを混入しても構わないし、熱伝導率の向上のために窒化アルミ、アルミナなどを混入しても構わない。
【0034】
また、製造安定性を考慮して、イミド化剤、カップリング剤、界面活性剤、消泡剤を入れても構わない。
抵抗発熱層70は、芳香族テトラカルボン酸ニ無水物と芳香族ジアミンとを有機溶媒中で重合して得られるポリイミドワニスに導電フィラーを均一に分散させてから、金型に塗布しイミド転化させて製造される。
【0035】
補強層72は、導電フィラーが分散されている分、強度が低下している抵抗発熱層70を補強する役割を担っている。よって、抵抗発熱層70の強度が十分確保されている場合には、補強層72は必ずしも設ける必要はない。補強層72を構成する材料としては、PI、PPS、PEEK等の耐熱樹脂を用いることができる。この場合に、抵抗発熱層70との接着性を一層確保するため、抵抗発熱層70と同じ合成樹脂の組み合わせとするのが好ましい。補強層72の厚みは、5〜100[μm]程度が好ましい。
【0036】
弾性層74は、形成されるカラー画像に光沢ムラが生じるのを防止するために設けられている。弾性層74は、シリコーンゴム、フッ素ゴムその他の耐熱性の高いゴム材料で形成されている。
離型層76は、熱定着後における記録シートとの離型性を高めるために設けられており、水との接触角は90度以上、好ましくは110度以上であり、表面粗さは、Ra:0.01〜50[μm]の範囲が好ましい。離型層76は、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)で形成され、フッ素系チューブまたはフッ素系コーティング等で構成される。これらは、絶縁性材料であるが、導電性材料で形成する場合もある。フッ素系チューブには、例えば、三井・デュポン フロロケミカル(株)製の銘柄:P
FA350−J、451HP−J、951HP Plus等を用いることができる。離型層76の厚みは、5〜100[μm]の範囲が好ましい。
【0037】
筒状電極68は、定着ベルト50のベルト幅方向における抵抗発熱層70の端部に、一部が導電状態で積層された積層部と当該積層部からベルト幅方向の外側に延出された非積層部とを含む筒状をしている。なお、もう一方の筒状電極66も筒状電極68と同じ構成であり、抵抗発熱層70との接合態様も同様なので、筒状電極68を代表に説明する。
筒状電極68は、導電性を有する材料で形成されている。具体的には、銅、アルミ、ニッケル、ステンレス、真鍮、リン青銅などで形成されるが、この中でも、電気抵抗率が低く耐熱性、耐酸化性に優れたニッケル、ステンレス、アルミ等を用いるのが好ましい。
【0038】
筒状電極68の横断面を
図4(a)に、斜視図を
図4(b)に示す。なお、
図4は、筒状電極68単体を外力が働いていない状態で表した図である。
筒状電極68は、内周面にその幅方向に延びる凹条部68Aが周方向に所定の間隔で(本例では、等間隔で)で列設されてなる形状を有している。凹条部68Aの形成により、隣接する凹条部68A間には、幅方向に延びる凸条部68Bが形成されている。
【0039】
筒状電極68の外径は、20〜40[mm]の範囲で設定される。また、凹条部68Aにおける最も薄い部分の厚みは、20〜40[μm]の範囲で設定され、凸条部68Bにおける最も厚い部分の厚みは、60〜80[μm]の範囲で設定される。また、隣接する凹条部68Aと凸条部68Bの周方向における間隔は、500〜2000[μm]の範囲で設定される。筒状電極66,68に関し、上記のような形状にした理由等については後述する。
【0040】
筒状電極66,68は、絞り加工により得られる上記横断面形状をしたシームレスパイプを必要な長さに切断して製造される。あるいは、絞り加工または電気鋳造法により円形断面を有するシームレスパイプを得た後、これに、凸条部68Bとなる部分をマスキングし、これをブラスト加工やエッチング加工により、マスキングされていない部分の厚みを薄くする(凹条部68Aを形成する)ことにより製造しても構わない。
【0041】
筒状電極66,68と抵抗発熱層70とは、例えば、以下の方法により接合される。
円筒状をした金型に筒状電極66を外挿し、筒状電極66の抵抗発熱層70との接合予定領域以外の領域をマスキングした状態で、抵抗発熱層70となる材料を、前記接合予定領域および金型の外周面に塗布し、これを乾燥させて固化させることにより接合させる。
あるいは、先ず、抵抗発熱層70、補強層72、弾性層74、および離型層76が内側からこの順で積層されてなる筒状体を形成した後、筒状電極66を当該筒状体に挿入して、導電性接着剤により接合することとしても構わない。
(弾性体ローラー)
図5に、定着ベルト50の幅方向(軸心方向)における中央位置で、定着ベルト50、弾性体ローラー52、および加圧ローラー54を切断した横断面図を示す。
【0042】
弾性体ローラー52は、芯金78外周に、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどからなる発泡弾性体で形成され耐熱性を有した弾性層80が設けられてなるものである。
芯金78は、例えば、アルミニウム、鉄等の金属からなる。芯金78は、
図5では中実の丸棒を例に示しているが、中空の丸棒(パイプ)でも構わない。
(加圧ローラー)
加圧ローラー54は、芯金82の外周に弾性層84、離型層86がこの順で形成されてなるものであり、外径が20〜100[mm]である。
【0043】
芯金82は、例えば、アルミニウム、鉄等の金属からなる。芯金82は、
図5では中実の丸棒を例に示しているが、中空の丸棒(パイプ)でも構わない。パイプで構成する場合には、その厚み(肉厚)が1〜10[mm]のものが用いられる。
弾性層84は、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性の高い弾性体で形成され、厚みが1〜20[mm]である。
【0044】
離型層86は、離型層76は、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などで形成され、フッ素系チューブまたはフッ素系コーティング等で構成される。これらは、絶縁性材料であるが、導電性材料で形成する場合もある。離型層76の厚みは、5〜100[μm]である。
(給電部材)
図2に戻り、給電部材56,58は、例えば、直方体状をしたカーボンブラシであり、摺動性および導電性を有する銅黒鉛質や炭素黒鉛質等の材料からなる。給電部材56,58の各々は、圧縮コイルばね88,90の付勢力によって、筒状電極66,68の外周面に押圧されている。また、給電部材56,58は、リード線92によって電源64に接続されている。
(蛇行規制部材)
蛇行規制部材94,100は、定着ベルト50の幅方向(軸心方向)における両端部に設けられていて(
図2では、一方の蛇行規制部材94のみを図示)、従動する定着ベルト50が許容範囲を超えて蛇行する(その幅方向に移動する)のを防止するために設けられている。
【0045】
図6に、定着ベルト50、弾性体ローラー52、および蛇行規制部材94,100の縦断面図を示す。なお、
図6では、加圧ローラー54の図示は省略している。
蛇行規制部材94,100は、それぞれ、リング部材96,102と案内板98,104を有している。
リング部材96,102は、径方向に所定の幅を有する円環状をしている。当該所定の幅の部分が、筒状電極66,68の走行経路と対向する位置になるように、案内板98,104に支持されている。
【0046】
案内板98.104は、それぞれ、大径部98A,104Aと小径部98B,104Bを有する円板状をしている。小径部98A,104Aがそれぞれ、リング部材96,102に遊挿されていて、案内板98,104は、それぞれ、リング部材96,102を回転自在に支持している。案内板98,104の各々は、不図示の固定手段により筐体に固定されている。
【0047】
前記所定の幅は、リング部材96,102の各々が、筒状電極66,68の走行経路の全周に渡って必ず対向する状態となるのに十分な径方向の幅である。
上記の構成からなる蛇行規制部材94,100によれば、定着ベルト50がその幅方向(軸心方向)に移動しても、当該移動方向側の筒状電極66または筒状電極68の端縁が、リング部材96またはリング部材102に当接して、それ以上の移動が規制される。
【0048】
この場合に、筒状電極66または筒状電極68が当接したリング部材96またはリング部材102は、両者間の摩擦力によって、筒状電極66または68(定着ベルト50)に従動回転する。これにより、筒状をした定着ベルト50に、その周方向に無理なねじり力が加わるのが低減される。その結果、定着ベルト50の耐久性が向上する。
図2に戻り、上記の構成からなる定着装置22において、定着の実行中、加圧ローラー54が回転駆動され、定着ベルト50がこれに従動して周回走行する。定着ベルト50の外周面に加圧ローラー54を押圧して形成された定着ニップN(
図5)に、未定着画像の形成された記録シートが通紙されて熱定着される。
【0049】
この際、定着ベルト50が、その幅方向両端部に有する筒状電極66,68の少なくとも、抵抗発熱層70(
図3)と重なっている領域は、加圧ローラー54による押圧力の影響を受け、本例では、円弧状に変形する。この場合、筒状電極66(68)は、
図4を用いて上記したように、凹条部68Aを設けて、径方向における外力(すなわち、加圧ローラーから受ける押圧力)に対する剛性を弱めている。これにより、電極領域50Aの径方向における外力に対する剛性を非電極領域50Bのそれに近づけることができるため、定着ニップNにおける両領域50A,50Bの変形量の差を小さくできる。その結果、両領域50A,50Bの境界、およびその近傍で抵抗発熱層70、補強層72、弾性層74、および離型層76の積層体に生じる応力が緩和され、当該応力が繰り返して表れることによる当該積層体部分での破断を可能な限り抑制することができる。
【0050】
また、定着ベルト50がその幅方向に移動して、筒状電極66,68が対応する蛇行規制部材94,100に当接した場合でも、筒状電極66,68の横断面形状が、凹条部68Aが存する凹部と凸条部68Bが存する凸部とが連続する凹凸形状になっている関係上、当該凹凸を有しない厚み一様の単純円筒形をした従来よりも、蛇行規制部材94,100から受ける外力に対する剛性が高くなっているため、可能な限り筒状電極66,68の座屈による変形を抑制することができる。
【0051】
なお、蛇行規制部材94,100から受ける外力に対する剛性に関し、本例では、筒状電極66,68の縦断面における凸条部68B部分の面積が大きくなっている(大きくすることができる)ため、当該外力に対する剛性を高くすることができるということも言える。
以上説明したように、実施の形態1における筒状電極66,68は、外周面にベルト幅方向に延びた凹条部68Aが周方向に列設されてなるものとしたことにより、換言すると、その縦断面における面積が第1の大きさとなる凸条部68Bと、当該面積が第1の大きさよりも小さな第2の大きさとなる凹条部68Aとが、周方向において交互に形成したことにより、構造的に、幅方向における外力に対する剛性が、径方向における外力に対する剛性よりも相対的に増加する形状となっているため、上述した破断や変形を可能な限り抑制することができる。
【0052】
なお、凹条部68Aと凸条部68Bにおける上記した厚みは適宜設定される。定着ニップNにおける定着ベルトの変形が大きいほど、凹条部68Aにおける厚みを薄く、また凹条部68Aの周方向における間隔を小さくする。また、定着ベルトの幅方向(軸心方向)における移動力(蛇行規制部材から受ける反力)が大きいほど、凸条部の厚みを厚くする。
<実施の形態2>
実施の形態2に係る定着装置は、実施の形態1の定着装置とは、筒状電極の形状が異なる以外は、同じ構成である。よって、異なる部分を中心に説明する。
【0053】
実施の形態2における筒状電極106の横断面を
図7(a)に、斜視図を
図7(b)にそれぞれ示す。
図7は、
図4と同様に図示したものである。
実施の形態1の筒状電極68は、その内周面に凹条部68Aと凸条部68Bを形成したが、実施の形態2の筒状電極106では、外周面に凹条部106Aと凸条部106Bを形成している。
【0054】
凹条部106Aにおける厚み、凸条部106Bにおける厚み、および凹条部106Aと凸条部106Bの周方向における間隔は、実施の形態1と同様なのでその説明については省略する。
なお、給電部材56,58(
図2)が摺接する外周面に凹凸が形成されているが、凹凸差が数十μm、周方向の間隔が500〜2000[μm]程度なので、当該凹凸を設けたことに起因し、給電部材56,58が筒状電極106外周面から離間してスパークが生じる等の不具合は発生しない。
<実施の形態3>
実施の形態3に係る定着装置も、実施の形態1,2の定着装置とは、筒状電極の形状が異なる以外は、同じ構成である。よって、異なる部分を中心に説明する。
【0055】
図8に、実施の形態3における筒状電極108の斜視図を示す。
実施の形態1,2では、構造的に、幅方向における外力に対する剛性が、径方向における外力に対する剛性よりも相対的に増加する形状とするため、その縦断面における面積が第1の大きさとなる第1の部分(凸条部)と、当該面積が第1の大きさよりも小さな第2の大きさとなる第2の部分(凹条部)とを、周方向において交互に形成した。すなわち、厚みの厚い部分と薄い部分とを設けることとしたが、実施の形態3では、厚みを一様とし、複数の穴108Hを、幅方向に列状に開設することにより、上記第2の部分を創設することとした。
【0056】
これによれば、縦断面において、幅方向に穴108Hが開設されていない第2の領域108Bよりも、穴108Hが開設されている第1の領域108Aの面積が小さくなるため、当該筒状電極108が、構造的に、幅方向における外力に対する剛性が、径方向における外力に対する剛性よりも相対的に増加する形状となっている。
なお、幅方向において、穴108Hは、少なくとも、筒状電極108が、抵抗発熱層70(
図3)と重なる領域に設けられるが、給電部材56,58(
図2)が摺接する領域には、給電の安定性を確保する観点から、設けない方が好ましい。
【0057】
ここで、筒状電極108の厚みは、60〜80[μm]、穴108Hの直径は、50〜100[μm]、穴108Hの周方向のピッチは、200〜1000[μm]、幅方向(軸心方向)のピッチは、100〜200[μm]の範囲でそれぞれ設定される。
<実施の形態4>
実施の形態4に係る定着装置も、実施の形態1、2の定着装置とは、筒状電極の形状が異なる以外は、同じ構成である。よって、異なる部分を中心に説明する。
【0058】
実施の形態4における筒状電極110の横断面を
図9(a)に、斜視図を
図9(b)にそれぞれ示す。
図9は、
図4と同様に図示したものである。
実施の形態1、2の筒状電極は、外周面と内周面のいずれか一方に、凹条部を形成して、上記所定の効果を得ることとした。換言すると、実施の形態1、2の筒状電極は、厚みが異なる領域を設けることによって、上記所定の効果を得ることとした。
【0059】
これに対し、実施の形態4の筒状電極110は、厚みを一様とし、その横断面の形状を波状とすることとした。換言すると、筒状電極110は、凹条部を外周面と内周面の両方に形成すると共に、横断面において、周方向に隣接する前記外周面の凹条部部分と前記内周面の凹条部部分とで1周期分の波形状となるよう、当該外周面の凹条部と当該内周面の凹条部とが、前記周方向にずらして設けることとした。
【0060】
これにより、厚みが薄くとも、幅方向における外力(すなわち、蛇行規制部材94,100から受ける反力)に対する剛性を高くすることができ(すなわち、座屈を生じにくくすることができ)、薄いが故に、径方向における外力(すなわち、加圧ローラーから受ける押圧力)に対する剛性を弱めることができる。
なお、この場合の厚みとは、外周面または内周面における法線方向の厚みである。
【0061】
筒状電極110の厚みは、40〜60[μm]、横断面形状を形成する波の振幅は、10〜20[μm]、波長は、100〜500[μm]の範囲で、それぞれ設定される。
なお、給電部材56,58(
図2)が摺接する外周面に凹凸が形成されているが、凹凸差が上記の程度なので、実施の形態2の場合と同様、当該凹凸を設けたことに起因し、給電部材56,58が筒状電極110外周面から離間してスパークが生じる等の不具合は発生しない。
【0062】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記実施の形態1,2(
図4、
図7)では、凹条部の横断面を、弧状をした滑らかな曲線形状としたが、これに限らず、矩形状としても構わない。
(2)上記実施の形態3(
図8)では、筒状電極108に開設した穴108Hは貫通穴としたが、これに限らず、非貫通穴(有底穴)としても構わない。これによっても、厚みの薄い部分が形成されるため、同様の効果が得られるからである。
【0063】
(3)上記実施の形態4(
図9)では、横断面を正弦波様の波形状としたが、これに限らず、矩形波状としても構わない。
(4)上記実施の形態では、給電部材を筒状電極の外周面に摺接させたが、これに限らず、内周面側に設けて当該内周面に摺接させても構わない。
(5)上記実施の形態では、加圧ローラーは定着ベルトをその全長に渡って押圧したが、押圧範囲は、必ずしも全長に渡る必要はない。通紙領域に適切な定着ニップが形成できる範囲を押圧すれば良いのである。
【0064】
(6)上記実施の形態では、蛇行規制部材を案内板とリング部材とで構成し、筒状電極が回転中にリング部材に当接すると当該リング部材をこれに従動して回転する構成としたが、蛇行規制部材は、必ずしも従動する構成のものでなくても構わず、単なる固定板としても良い。
(7)上記実施の形態では、プリンターを例に説明したが、本発明に係る画像形成装置は、プリンターに限らず他の画像形成装置、例えば複写機やファクシミリ、あるいはこれらの機能を有する複合機などに適用可能である。すなわち、電子写真方式によって記録シートに画像を形成する画像形成装置であって、前記記録シートに形成されたトナー像の定着装置として、ここまで説明した定着装置を備えている画像形成装置に適用できるのである。