(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1〜
図3を参照して、本実施形態に係るコモンモードフィルタCMF1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。
図2は、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図3は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0015】
コモンモードフィルタCMF1は、素体2と、素体2の外表面に配置される第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、第一接続導体7、及び第二接続導体8と、を備えている。
【0016】
素体2は、
図1に示されるように、略直方体形状を呈しており、その外表面として、互いに対向する略長方形状の第一及び第二主面2a,2bと、互いに対向する第一及び第二側面2c,2dと、互いに対向する第三及び第四側面2e,2fと、を有している。第一及び第二側面2c,2dは、第一及び第二主面2a,2bの間を連結するように第一及び第二主面2a,2bの長辺方向に伸びている。第三及び第四側面2e,2fは、第一及び第二主面2a,2b間を連結するように第一及び第二主面2a,2bの短辺方向に伸びている。
【0017】
素体2は、
図2にも示されるように、第一及び第二主面2a,2bの対向方向に複数の絶縁体層10が積層されて構成されている。素体2では、複数の絶縁体層10の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)が第一及び第二主面2a,2bの対向方向と一致する。各絶縁体層10は、たとえば誘電体材料(BaTiO
3系、Ba(Ti,Zr)O
3系、又は(Ba,Ca)TiO
3系などの誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各絶縁体層10の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0018】
第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第一接続導体7は、素体2の第一側面2c側に配置されている。第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第一接続導体7は、第一側面2cの一部を第一及び第二主面2a,2bの対向方向に沿って覆うように、第一及び第二主面2a,2bにわたって形成されている。第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第一接続導体7は、素体2の第一側面2cにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第一入力端子電極3、第一接続導体7、第一出力端子電極4の順で配置されている。
【0019】
第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8は、素体2の第二側面2d側に配置されている。第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8は、第二側面2dの一部を第一及び第二主面2a,2bの対向方向に沿って覆うように、第一及び第二主面2a,2bにわたって形成されている。第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8は、素体2の第二側面2dにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第二入力端子電極5、第二接続導体8、第二出力端子電極6の順で配置されている。
【0020】
第一入力端子電極3と第二入力端子電極5とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で互いに対向して配置されている。第一出力端子電極4と第二出力端子電極6とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で互いに対向して配置されている。第一接続導体7と第二接続導体8とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で互いに対向して配置されている。
【0021】
各端子電極3〜6と各接続導体7,8とは、たとえば導電性金属粉末及びガラスフリットを含む導電性ペーストを素体2の外表面に付与し、焼き付けることによって形成される。必要に応じて、焼き付けられた端子電極の上にめっき層が形成されることもある。
【0022】
コモンモードフィルタCMF1は、
図2及び
図3に示されるように、複数の第一導体11,12と複数の第二導体21,22とを備えている。コモンモードフィルタCMF1は、本実施形態では、二つの第一導体11,12と二つの第二導体21,22とを備えている。各導体11,12,21,22は、素体2内に配置されている。各導体11,12,21,22は、積層方向において異なる層に位置している。各導体11,12,21,22は、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。各導体11,12,21,22は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0023】
第一導体11と第一導体12とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体11と第一導体12との間に位置する絶縁体層10の数は、少なくとも一層あればよい。第二導体21と第二導体22は、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体21と第二導体22との間に位置する絶縁体層10の数も、少なくとも一層あればよい。
【0024】
第一導体11,12は、素体2内において、第一主面2a寄りに位置している。第二導体21,22は、素体2内において、第二主面2b寄りに位置している。第一導体11,12からなる導体群と、第二導体21,22からなる導体群と、の積層方向での間隔は、第一導体11,12同士の積層方向での間隔及び第二導体21,22同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されている。すなわち、第一導体11,12からなる導体群と第二導体21,22からなる導体群とは、積層方向において、離されている。
【0025】
第一導体11は、
図3の(a)にも示されるように、引出部11a,11b及びコイル部11cを有している。引出部11aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部11aは、第一側面2cに露出している一端で第一入力端子電極3に接続されている。引出部11bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部11bは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。
【0026】
コイル部11cは、一端が引出部11aの他端に接続され、他端が引出部11bの他端に接続されている。コイル部11cは、素体2の長手方向(第三及び第四側面2e,2fの対向方向)に延びる部分と、素体2の短手方向(第一及び第二側面2c,2dの対向方向)に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0027】
第一導体12は、
図3の(b)にも示されるように、引出部12a,12b及びコイル部12cを有している。引出部12aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部12aは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。引出部12bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部12bは、第一側面2cに露出している一端で第一出力端子電極4に接続されている。
【0028】
コイル部12cは、一端が引出部12aの他端に接続され、他端が引出部12bの他端に接続されている。コイル部12cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0029】
第一導体11,12同士は、第一接続導体7により直列に接続されている。第一入力端子電極3と第一出力端子電極4とは、第一導体11,12と第一接続導体7とを介して、電気的に接続されている。これにより、第一導体11,12と第一接続導体7とは、第一コイルC1を構成し、第一コイルC1が、一端が第一入力端子電極3に接続され、他端が第一出力端子電極4に接続されることとなる。第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第一側面2c寄りに位置している。
【0030】
第二導体21は、
図3の(c)にも示されるように、引出部21a,21b及びコイル部21cを有している。引出部21aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部21aは、第二側面2dに露出している一端で第二入力端子電極5に接続されている。引出部21bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部21bは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。
【0031】
コイル部21cは、一端が引出部21aの他端に接続され、他端が引出部21bの他端に接続されている。コイル部21cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0032】
第二導体22は、
図3の(d)にも示されるように、引出部22a,22b及びコイル部22cを有している。引出部22aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部22aは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。引出部22bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部22bは、第二側面2dに露出している一端で第二出力端子電極6に接続されている。
【0033】
コイル部22cは、一端が引出部22aの他端に接続され、他端が引出部22bの他端に接続されている。コイル部22cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0034】
第二導体21,22同士は、第二接続導体8により直列に接続されている。第二入力端子電極5と第二出力端子電極6とは、第二導体21,22と第二接続導体8とを介して、電気的に接続されている。これにより、第二導体21,22と第二接続導体8とは、第二コイルC2を構成し、第二コイルC2が、一端が第二入力端子電極5に接続され、他端が第二出力端子電極6に接続されることとなる。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第二側面2d寄りに位置している。
【0035】
第一導体11,12と第二導体21,22とは、積層方向で隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体11,12と第二導体21,22とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の長手方向に延びる部分が積層方向で対向し且つ重なっている。各導体11,12,21,22において積層方向で重なる部分には、同じ方向(
図3中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
図3では、説明のため、各導体11,12,21,22において積層方向で重なる部分にハッチングが付されている。
【0036】
したがって、第一導体11,12及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体21,22及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、積層方向において隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の長手方向に延びている。
【0037】
コモンモードフィルタCMF1では、第二主面2bが、他の電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品など)に対向する実装面となる。すなわち、コモンモードフィルタCMF1は、
図4に示されるように、第二主面2bが電子機器ED1(たとえば、回路基板又は電子部品など)と対向するように、はんだ付けなどにより実装される。コモンモードフィルタCMF1では、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、及び第二出力端子電極6が、電子機器ED1の対応するランド電極LEに接続される。第一及び第二接続導体7,8は、電子機器ED1のランド電極には接続されない。
【0038】
以上のように、本実施形態では、第一コイルC1と第二コイルC2とが、積層方向で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有しているので、当該部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。第一コイルC1を構成することとなる第一導体11,12が、素体2の第一側面2cに配置された第一接続導体7により直列に接続され、第二コイルC2を構成することとなる第二導体21,22が、素体2の第二側面2dに配置された第二接続導体8により直列に接続されている。このように、コモンモードフィルタCMF1では、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0039】
第一導体11,12は、積層方向に隣り合うように配置され、第二導体21,22は、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体11,12からなる導体群と第二導体21,22からなる導体群との積層方向での間隔は、第一導体11,12同士の積層方向での間隔及び第二導体21,22同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されており、第一導体11,12からなる導体群と第二導体21,22からなる導体群とは、積層方向において離されている。すなわち、第一コイルC1と第二コイルC2とは、積層方向に離れるように位置している。これにより、第一コイルC1と第二コイルC2とが積層方向に離れて位置することとなるので、ディファレンシャルモードでの特性悪化を抑制することができる。
【0040】
素体2は、略直方体形状を呈しており、第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分は、素体2の長手方向に延びている。これにより、コモンモードフィルタCMF1では、発生するインダクタンスが大きく、コモンモードノイズの通過をより一層確実に阻止できる。
【0041】
第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第一接続導体7は、第一側面2c側に位置し、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8は、第二側面2d側に位置している。すなわち、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第一接続導体7が素体2の同じ面側に位置すると共に、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8が素体2の同じ面側に位置する。このため、各端子電極3〜6及び各接続導体7,8の形成が容易となり、コモンモードフィルタCMF1の製造コストの上昇をより一層抑制することができる。
【0042】
続いて、
図5及び
図6を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタの構成を説明する。本変形例は、各導体11,12,21,22の積層方向における位置が上述した実施形態に係るコモンモードフィルタCMF1と相違する。
図5は、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図6は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0043】
本変形例に係るコモンモードフィルタは、図示は省略するが、上述したコモンモードフィルタCMF1と同じく、素体2、各端子電極3〜6、及び各接続導体7,8を備えている。本変形例に係るコモンモードフィルタは、
図5及び
図6に示されるように、第一導体11,12と第二導体21,22とを備えている。
【0044】
第一導体11と第二導体21とは、積層方向において同じ層に位置する。第一導体12と第二導体22とは、積層方向において同じ層に位置する。第一導体11と第一導体12とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体21と第二導体22は、積層方向に隣り合うように配置されている。
【0045】
第一導体11,12と第二導体21,22とは、同一層において隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体11,12と第二導体21,22とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の長手方向に延びる部分が同一層で隣り合っている。各導体11,12,21,22において同一層で隣り合っている部分には、同じ方向(
図6中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
【0046】
したがって、第一導体11,12及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体21,22及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、同一層で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の長手方向に延びている。
【0047】
以上のように、本変形例では、第一コイルC1と第二コイルC2とが、同一層で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有しているので、当該部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。本変形例では、上述した実施形態と同様に、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0048】
本変形例でも、第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分は、素体2の長手方向に延びている。これにより、発生するインダクタンスが大きく、コモンモードノイズの通過をより一層確実に阻止できる。
【0049】
次に、
図7〜
図9を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタCMF2の構成を説明する。
図7は、変形例に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。
図8は、変形例における、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図9は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0050】
コモンモードフィルタCMF2は、
図7に示されるように、素体2、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、第一接続導体7、及び第二接続導体8を備えている。
【0051】
第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第二接続導体8は、素体2の第一側面2c側に配置されている。第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、及び第二接続導体8は、素体2の第一側面2cにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第一入力端子電極3、第二接続導体8、第一出力端子電極4の順で配置されている。第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第一接続導体7は、素体2の第二側面2d側に配置されている。第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、及び第一接続導体7は、素体2の第二側面2dにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第二入力端子電極5、第一接続導体7、第二出力端子電極6の順で配置されている。
【0052】
コモンモードフィルタCMF2は、
図8及び
図9に示されるように、複数の第一導体31,32と複数の第二導体41,42とを備えている。コモンモードフィルタCMF2は、本実施形態では、二つの第一導体31,32と二つの第二導体41,42とを備えている。各導体31,32,41,42は、素体2内に配置されている。各導体31,32,41,42は、積層方向において異なる層に位置している。各導体31,32,41,42も、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。各導体31,32,41,42は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0053】
第一導体31と第一導体32とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体31と第一導体32との間に位置する絶縁体層10の数は、少なくとも一層あればよい。第二導体41と第二導体42は、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体41と第二導体42との間に位置する絶縁体層10の数も、少なくとも一層あればよい。
【0054】
第一導体31,32からなる導体群と、第二導体41,42からなる導体群と、の積層方向での間隔は、第一導体31,32同士の積層方向での間隔及び第二導体41,42同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されている。すなわち、第一導体31,32からなる導体群と第二導体41,42からなる導体群とは、積層方向において、離されている。
【0055】
第一導体31は、
図9の(a)にも示されるように、引出部31a,31b及びコイル部31cを有している。引出部31aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部31aは、第一側面2cに露出している一端で第一入力端子電極3に接続されている。引出部31bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部31bは、第二側面2dに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。
【0056】
コイル部31cは、一端が引出部31aの他端に接続され、他端が引出部31bの他端に接続されている。コイル部31cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0057】
第一導体32は、
図9の(b)に示されるように、引出部32a,32b及びコイル部32cを有している。引出部32aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部32aは、第二側面2dに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。引出部32bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部32bは、第一側面2cに露出している一端で第一出力端子電極4に接続されている。
【0058】
コイル部32cは、一端が引出部32aの他端に接続され、他端が引出部32bの他端に接続されている。コイル部32cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0059】
第一導体31,32同士は、第一接続導体7により直列に接続されている。第一入力端子電極3と第一出力端子電極4とは、第一導体31,32と第一接続導体7とを介して、電気的に接続されている。これにより、第一導体31,32と第一接続導体7とは、第一コイルC1を構成し、第一コイルC1が、一端が第一入力端子電極3に接続され、他端が第一出力端子電極4に接続されることとなる。第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第一側面2c寄りに位置している。
【0060】
第二導体41は、
図9の(c)にも示されるように、引出部41a,41b及びコイル部41cを有している。引出部41aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部41aは、第二側面2dに露出している一端で第二入力端子電極5に接続されている。引出部41bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部41bは、第一側面2cに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。
【0061】
コイル部41cは、一端が引出部41aの他端に接続され、他端が引出部41bの他端に接続されている。コイル部41cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0062】
第二導体42は、
図9の(d)に示されるように、引出部42a,42b及びコイル部42cを有している。引出部42aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部42aは、第一側面2cに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。引出部42bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部22bは、第二側面2dに露出している一端で第二出力端子電極6に接続されている。
【0063】
コイル部42cは、一端が引出部42aの他端に接続され、他端が引出部42bの他端に接続されている。コイル部42cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0064】
第二導体41,42同士は、第二接続導体8により直列に接続されている。第二入力端子電極5と第二出力端子電極6とは、第二導体41,42と第二接続導体8とを介して、電気的に接続されている。これにより、第二導体41,42と第二接続導体8とは、第二コイルC2を構成し、第二コイルC2が、一端が第二入力端子電極5に接続され、他端が第二出力端子電極6に接続されることとなる。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第二側面2d寄りに位置している。
【0065】
第一導体31,32と第二導体41,42とは、積層方向で隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体31,32と第二導体41,42とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の長手方向に延びる部分が積層方向で対向し且つ重なっている。各導体31,32,41,42において積層方向で重なる部分には、同じ方向(
図9中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
図9では、説明のため、各導体31,32,41,42において積層方向で重なる部分にハッチングが付されている。
【0066】
したがって、第一導体31,32及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体41,42及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、積層方向において隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の長手方向に延びている。
【0067】
以上のように、本変形例でも、第一コイルC1と第二コイルC2とがそれぞれ有する、積層方向で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。第一コイルC1を構成することとなる第一導体31,32が、素体2の第二側面2dに配置された第一接続導体7により直列に接続され、第二コイルC2を構成することとなる第二導体41,42が、素体2の第一側面2cに配置された第二接続導体8により直列に接続されている。このように、コモンモードフィルタCMF2では、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0068】
第一導体31,32は、積層方向に隣り合うように配置され、第二導体41,42は、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体31,32からなる導体群と第二導体41,42からなる導体群との積層方向での間隔は、第一導体31,32同士の積層方向での間隔及び第二導体41,42同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されており、第一導体31,32からなる導体群と第二導体41,42からなる導体群とは、積層方向において離されている。すなわち、第一コイルC1と第二コイルC2とは、積層方向に離れるように位置している。これにより、第一コイルC1と第二コイルC2とが積層方向に離れて位置することとなるので、ディファレンシャルモードでの特性悪化を抑制することができる。
【0069】
素体2は、第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分は、素体2の長手方向に延びている。これにより、コモンモードフィルタCMF2では、発生するインダクタンスが大きく、コモンモードノイズの通過をより一層確実に阻止できる。
【0070】
続いて、
図10及び
図11を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタの構成を説明する。本変形例は、各導体11,12,21,22の形状が上述した変形例に係るコモンモードフィルタCMF2と相違する。
図10は、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図11は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0071】
本変形例に係るコモンモードフィルタは、図示は省略するが、上述したコモンモードフィルタCMF2と同じく、素体2、各端子電極3〜6、及び各接続導体7,8を備えている。本変形例に係るコモンモードフィルタは、
図10及び
図11に示されるように、第一導体31,32と第二導体41,42とを備えている。
【0072】
第一導体31は、
図11の(a)にも示されるように、引出部31a,31b及びコイル部31cを有している。コイル部31cは、一端が引出部31aの他端に接続され、他端が引出部31bの他端に接続されている。コイル部31cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0073】
第一導体32は、
図11の(b)にも示されるように、引出部32a,32b及びコイル部32cを有している。コイル部32cは、一端が引出部32aの他端に接続され、他端が引出部32bの他端に接続されている。コイル部32cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0074】
第二導体41は、
図11の(c)にも示されるように、引出部41a,41b及びコイル部41cを有している。コイル部41cは、一端が引出部31aの他端に接続され、他端が引出部31bの他端に接続されている。コイル部31cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0075】
第二導体42は、
図11の(d)にも示されるように、引出部42a,42b及びコイル部42cを有している。コイル部42cは、一端が引出部42aの他端に接続され、他端が引出部42bの他端に接続されている。コイル部42cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0076】
第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第四側面2f寄りに位置している。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第三側面2e寄りに位置している。
【0077】
本変形例でも、第一導体32と第二導体41とは、積層方向で隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体32と第二導体41とは、第三及び第四側面2e,2fの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の短手方向に延びる部分が積層方向で対向し且つ重なっている。各導体32,41において積層方向で重なる部分には、同じ方向(
図11中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
図11では、説明のため、各導体32,41において積層方向で重なる部分にハッチングが付されている。
【0078】
したがって、第一導体31,32及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体41,42及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、積層方向において隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の短手方向に延びている。
【0079】
以上のように、本変形例では、第一コイルC1と第二コイルC2とが、積層方向で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有しているので、当該部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。本変形例では、上述したように、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0080】
次に、
図12〜
図14を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタCMF2の構成を説明する。
図12は、変形例に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。
図13は、変形例における、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図14は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0081】
コモンモードフィルタCMF3は、
図12に示されるように、素体2、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、第一接続導体7、及び第二接続導体8を備えている。
【0082】
第一入力端子電極3、第二入力端子電極5、及び第一接続導体7は、素体2の第一側面2c側に配置されている。第一入力端子電極3、第二入力端子電極5、及び第一接続導体7は、素体2の第一側面2cにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第一入力端子電極3、第一接続導体7、第二入力端子電極5の順で配置されている。第一出力端子電極4、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8は、素体2の第二側面2d側に配置されている。第一出力端子電極4、第二出力端子電極6、及び第二接続導体8は、素体2の第二側面2dにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第一出力端子電極4、第二接続導体8、第二出力端子電極6の順で配置されている。
【0083】
コモンモードフィルタCMF3は、
図13及び
図14に示されるように、複数の第一導体51,52と複数の第二導体61,62とを備えている。コモンモードフィルタCMF3は、本実施形態では、二つの第一導体51,52と二つの第二導体61,62とを備えている。各導体51,52,61,62は、素体2内に配置されている。各導体51,52,61,62は、積層方向において異なる層に位置している。各導体51,52,61,62も、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。各導体51,52,61,62は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0084】
第一導体51と第一導体52とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体51と第一導体52との間に位置する絶縁体層10の数は、少なくとも一層あればよい。第二導体61と第二導体62は、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体61と第二導体62との間に位置する絶縁体層10の数も、少なくとも一層あればよい。
【0085】
第一導体51,52からなる導体群と、第二導体61,62からなる導体群と、の積層方向での間隔は、第一導体51,52同士の積層方向での間隔及び第二導体61,62同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されている。すなわち、第一導体51,52からなる導体群と第二導体61,62からなる導体群とは、積層方向において、離されている。
【0086】
第一導体51は、
図14の(b)にも示されるように、引出部51a,51b及びコイル部51cを有している。引出部51aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部51aは、第一側面2cに露出している一端で第一入力端子電極3に接続されている。引出部51bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部51bは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。
【0087】
コイル部51cは、一端が引出部51aの他端に接続され、他端が引出部51bの他端に接続されている。コイル部51cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0088】
第一導体52は、
図14の(a)に示されるように、引出部52a,52b及びコイル部52cを有している。引出部52aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部52aは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。引出部52bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部52bは、第二側面2dに露出している一端で第一出力端子電極4に接続されている。
【0089】
コイル部52cは、一端が引出部52aの他端に接続され、他端が引出部52bの他端に接続されている。コイル部52cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0090】
第一導体51,52同士は、第一接続導体7により直列に接続されている。第一入力端子電極3と第一出力端子電極4とは、第一導体51,52と第一接続導体7とを介して、電気的に接続されている。これにより、第一導体51,52と第一接続導体7とは、第一コイルC1を構成し、第一コイルC1が、一端が第一入力端子電極3に接続され、他端が第一出力端子電極4に接続されることとなる。第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第三側面2e寄りに位置している。
【0091】
第二導体61は、
図14の(d)にも示されるように、引出部61a,61b及びコイル部61cを有している。引出部61aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部61aは、第一側面2cに露出している一端で第二入力端子電極5に接続されている。引出部61bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部61bは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。
【0092】
コイル部61cは、一端が引出部61aの他端に接続され、他端が引出部61bの他端に接続されている。コイル部61cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0093】
第二導体62は、
図14の(c)に示されるように、引出部62a,62b及びコイル部62cを有している。引出部62aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部62aは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。引出部62bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部62bは、第二側面2dに露出している一端で第二出力端子電極6に接続されている。
【0094】
コイル部62cは、一端が引出部62aの他端に接続され、他端が引出部62bの他端に接続されている。コイル部62cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0095】
第二導体61,62同士は、第二接続導体8により直列に接続されている。第二入力端子電極5と第二出力端子電極6とは、第二導体61,62と第二接続導体8とを介して、電気的に接続されている。これにより、第二導体61,62と第二接続導体8とは、第二コイルC2を構成し、第二コイルC2が、一端が第二入力端子電極5に接続され、他端が第二出力端子電極6に接続されることとなる。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第四側面2f寄りに位置している。
【0096】
第一導体51と第二導体62とは、積層方向で隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体51と第二導体62とは、第三及び第四側面2e,2fの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の短手方向に延びる部分が積層方向で対向し且つ重なっている。各導体51,62において積層方向で重なる部分には、同じ方向(
図14中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
図14では、説明のため、各導体51,62において積層方向で重なる部分にハッチングが付されている。
【0097】
したがって、第一導体51,52及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体61,62及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、積層方向において隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の短手方向に延びている。
【0098】
コモンモードフィルタCMF3でも、第二主面2bが、他の電子機器に対向する実装面となる。すなわち、コモンモードフィルタCMF3は、
図15に示されるように、第二主面2bが電子機器ED1と対向するように、はんだ付けなどにより実装される。コモンモードフィルタCMF3では、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、及び第二出力端子電極6が、電子機器ED1の対応するランド電極LEに接続される。第一及び第二接続導体7,8は、電子機器ED1のランド電極には接続されない。
【0099】
以上のように、本変形例でも、第一コイルC1と第二コイルC2とがそれぞれ有する、積層方向で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。第一コイルC1を構成することとなる第一導体51,52が、素体2の第一側面2cに配置された第一接続導体7により直列に接続され、第二コイルC2を構成することとなる第二導体61,62が、素体2の第二側面2dに配置された第二接続導体8により直列に接続されている。このように、コモンモードフィルタCMF3でも、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0100】
第一導体51,52は、積層方向に隣り合うように配置され、第二導体61,62は、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体51,52からなる導体群と第二導体61,62からなる導体群との積層方向での間隔は、第一導体51,52同士の積層方向での間隔及び第二導体61,62同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されており、第一導体51,52からなる導体群と第二導体61,62からなる導体群とは、積層方向において離されている。すなわち、第一コイルC1と第二コイルC2とは、積層方向に離れるように位置している。これにより、第一コイルC1と第二コイルC2とが積層方向に離れて位置することとなるので、ディファレンシャルモードでの特性悪化を抑制することができる。
【0101】
本変形例では、第一導体52と第二導体61とは、積層方向から見て、互いに重なり合う部分を有していない。このため、第一導体52と第二導体61とは、同じ層に位置させてもよい。
【0102】
次に、
図16〜
図18を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタCMF4の構成を説明する。
図16は、変形例に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。
図17は、変形例における、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図18は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0103】
コモンモードフィルタCMF4は、
図16に示されるように、素体2、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、第一接続導体7、及び第二接続導体8を備えている。
【0104】
第一入力端子電極3、第二入力端子電極5、及び第二接続導体8は、素体2の第一側面2c側に配置されている。第一入力端子電極3、第二入力端子電極5、及び第二接続導体8は、素体2の第一側面2cにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第一入力端子電極3、第二接続導体8、第二入力端子電極5の順で配置されている。第一出力端子電極4、第二出力端子電極6、及び第一接続導体7は、素体2の第二側面2d側に配置されている。第一出力端子電極4、第二出力端子電極6、及び第一接続導体7は、素体2の第二側面2dにおいて、第三側面2eから第四側面2fに向かう方向で、第一出力端子電極4、第一接続導体7、第二出力端子電極6の順で配置されている。
【0105】
コモンモードフィルタCMF4は、
図17及び
図18に示されるように、複数の第一導体71,72と複数の第二導体81,82とを備えている。コモンモードフィルタCMF4は、本実施形態では、二つの第一導体71,72と二つの第二導体81,82とを備えている。各導体71,72,81,82は、素体2内に配置されている。第一導体71と第二導体82とが積層方向において同じ層に位置し、第一導体72と第二導体81とが積層方向において同じ層に位置している。各導体71,72,81,82も、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。各導体71,72,81,82は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0106】
第一導体71と第一導体72とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体71と第一導体72との間に位置する絶縁体層10の数は、少なくとも一層あればよい。第二導体81と第二導体82は、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体81と第二導体82との間に位置する絶縁体層10の数も、少なくとも一層あればよい。
【0107】
第一導体71は、
図18の(a)にも示されるように、引出部71a,71b及びコイル部71cを有している。引出部71aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部71aは、第一側面2cに露出している一端で第一入力端子電極3に接続されている。引出部71bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部71bは、第二側面2dに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。
【0108】
コイル部71cは、一端が引出部71aの他端に接続され、他端が引出部71bの他端に接続されている。コイル部71cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0109】
第一導体72は、
図18の(b)に示されるように、引出部72a,72b及びコイル部72cを有している。引出部72aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部72aは、第二側面2dに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。引出部72bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部72bは、第二側面2dに露出している一端で第一出力端子電極4に接続されている。
【0110】
コイル部72cは、一端が引出部72aの他端に接続され、他端が引出部72bの他端に接続されている。コイル部72cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0111】
第一導体71,72同士は、第一接続導体7により直列に接続されている。第一入力端子電極3と第一出力端子電極4とは、第一導体71,72と第一接続導体7とを介して、電気的に接続されている。これにより、第一導体71,72と第一接続導体7とは、第一コイルC1を構成し、第一コイルC1が、一端が第一入力端子電極3に接続され、他端が第一出力端子電極4に接続されることとなる。第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第二側面2d寄りに位置している。
【0112】
第二導体81は、
図18の(b)にも示されるように、引出部81a,81b及びコイル部81cを有している。引出部81aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部81aは、第一側面2cに露出している一端で第二入力端子電極5に接続されている。引出部81bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部81bは、第一側面2cに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。
【0113】
コイル部81cは、一端が引出部81aの他端に接続され、他端が引出部81bの他端に接続されている。コイル部81cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0114】
第二導体82は、
図18の(a)に示されるように、引出部82a,82b及びコイル部82cを有している。引出部82aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部82aは、第一側面2cに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。引出部82bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部82bは、第二側面2dに露出している一端で第二出力端子電極6に接続されている。
【0115】
コイル部82cは、一端が引出部82aの他端に接続され、他端が引出部82bの他端に接続されている。コイル部82cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0116】
第二導体81,82同士は、第二接続導体8により直列に接続されている。第二入力端子電極5と第二出力端子電極6とは、第二導体81,82と第二接続導体8とを介して、電気的に接続されている。これにより、第二導体81,82と第二接続導体8とは、第二コイルC2を構成し、第二コイルC2が、一端が第二入力端子電極5に接続され、他端が第二出力端子電極6に接続されることとなる。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第一側面2c寄りに位置している。
【0117】
第一導体72と第二導体81とは、同一層において隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体72と第二導体81とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の長手方向に延びる部分が同一層で隣り合っている。第一導体72と第二導体81において同一層で隣り合っている部分には、同じ方向(
図18中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
【0118】
したがって、第一導体71,72及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体81,82及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、同一層で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の長手方向に延びている。
【0119】
以上のように、本変形例では、第一コイルC1と第二コイルC2とが、同一層で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有しているので、当該部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。本変形例では、上述した実施形態と同様に、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0120】
コモンモードフィルタCMF4でも、第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分は、素体2の長手方向に延びている。これにより、発生するインダクタンスが大きく、コモンモードノイズの通過をより一層確実に阻止できる。
【0121】
次に、
図19〜
図21を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタCMF5の構成を説明する。
図19は、変形例に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。
図20は、変形例における、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図21は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0122】
コモンモードフィルタCMF5は、
図19に示されるように、素体2、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、第一接続導体7、及び第二接続導体8を備えている。
【0123】
第一入力端子電極3及び第二入力端子電極5は、素体2の第三側面2e側に配置されている。第一出力端子電極4及び第二出力端子電極6は、素体2の第四側面2f側に配置されている。第一接続導体7は、素体2の第一側面2c側に配置されている。第二接続導体8は、素体2の第二側面2d側に配置されている。
【0124】
コモンモードフィルタCMF5は、
図20及び
図21に示されるように、複数の第一導体91,92と複数の第二導体101,102とを備えている。コモンモードフィルタCMF5は、本実施形態では、二つの第一導体91,92と二つの第二導体101,102とを備えている。各導体91,92,101,102は、素体2内に配置されている。各導体91,92,101,102は、積層方向において異なる層に位置している。各導体91,92,101,102も、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。各導体91,92,101,102は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0125】
第一導体91と第一導体92とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体91と第一導体92との間に位置する絶縁体層10の数は、少なくとも一層あればよい。第二導体101と第二導体102は、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体101と第二導体102との間に位置する絶縁体層10の数も、少なくとも一層あればよい。
【0126】
第一導体91,92からなる導体群と、第二導体101,102からなる導体群と、の積層方向での間隔は、第一導体91,92同士の積層方向での間隔及び第二導体101,102同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されている。すなわち、第一導体91,92からなる導体群と第二導体101,102からなる導体群とは、積層方向において、離されている。
【0127】
第一導体91は、
図21の(a)にも示されるように、引出部91a,91b及びコイル部91cを有している。引出部91aは、その一端が第三側面2eに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部91aは、第三側面2eに露出している一端で第一入力端子電極3に接続されている。引出部91bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部91bは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。
【0128】
コイル部91cは、一端が引出部91aの他端に接続され、他端が引出部91bの他端に接続されている。コイル部91cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0129】
第一導体92は、
図21の(b)に示されるように、引出部92a,92b及びコイル部92cを有している。引出部92aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部92aは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。引出部92bは、その一端が第四側面2fに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部92bは、第四側面2fに露出している一端で第一出力端子電極4に接続されている。
【0130】
コイル部92cは、一端が引出部92aの他端に接続され、他端が引出部92bの他端に接続されている。コイル部92cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0131】
第一導体91,92同士は、第一接続導体7により直列に接続されている。第一入力端子電極3と第一出力端子電極4とは、第一導体91,92と第一接続導体7とを介して、電気的に接続されている。これにより、第一導体91,92と第一接続導体7とは、第一コイルC1を構成し、第一コイルC1が、一端が第一入力端子電極3に接続され、他端が第一出力端子電極4に接続されることとなる。第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第三側面2e寄りに位置している。
【0132】
第二導体101は、
図21の(c)にも示されるように、引出部101a,101b及びコイル部101cを有している。引出部101aは、その一端が第三側面2eに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部101aは、第三側面2eに露出している一端で第二入力端子電極5に接続されている。引出部101bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部101bは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。
【0133】
コイル部101cは、一端が引出部101aの他端に接続され、他端が引出部101bの他端に接続されている。コイル部101cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0134】
第二導体102は、
図21の(d)に示されるように、引出部102a,102b及びコイル部102cを有している。引出部102aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部102aは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。引出部102bは、その一端が第四側面2fに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部102bは、第四側面2fに露出している一端で第二出力端子電極6に接続されている。
【0135】
コイル部102cは、一端が引出部102aの他端に接続され、他端が引出部102bの他端に接続されている。コイル部102cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略1/2ターンのパターンとされている。
【0136】
第二導体101,102同士は、第二接続導体8により直列に接続されている。第二入力端子電極5と第二出力端子電極6とは、第二導体101,102と第二接続導体8とを介して、電気的に接続されている。これにより、第二導体101,102と第二接続導体8とは、第二コイルC2を構成し、第二コイルC2が、一端が第二入力端子電極5に接続され、他端が第二出力端子電極6に接続されることとなる。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第四側面2f寄りに位置している。
【0137】
第一導体91と第二導体102とは、積層方向で隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体91と第二導体102とは、第三及び第四側面2e,2fの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の短手方向に延びる部分が積層方向で対向し且つ重なっている。各導体91,102において積層方向で重なる部分には、同じ方向(
図21中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
図21でも、説明のため、各導体91,102において積層方向で重なる部分にハッチングが付されている。
【0138】
したがって、第一導体91,92及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体101,102及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、積層方向において隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の短手方向に延びている。
【0139】
コモンモードフィルタCMF5でも、第二主面2bが、他の電子機器に対向する実装面となる。すなわち、コモンモードフィルタCMF5は、
図22に示されるように、第二主面2bが電子機器ED1と対向するように、はんだ付けなどにより実装される。コモンモードフィルタCMF5では、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、及び第二出力端子電極6が、電子機器ED1の対応するランド電極LEに接続される。第一及び第二接続導体7,8は、電子機器ED1のランド電極には接続されない。
【0140】
以上のように、本変形例でも、第一コイルC1と第二コイルC2とがそれぞれ有する、積層方向で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。第一コイルC1を構成することとなる第一導体91,92が、素体2の第一側面2cに配置された第一接続導体7により直列に接続され、第二コイルC2を構成することとなる第二導体101,102が、素体2の第二側面2dに配置された第二接続導体8により直列に接続されている。このように、コモンモードフィルタCMF5でも、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0141】
第一導体91,92は、積層方向に隣り合うように配置され、第二導体101,102は、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体91,92からなる導体群と第二導体101,102からなる導体群との積層方向での間隔は、第一導体91,92同士の積層方向での間隔及び第二導体101,102同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されており、第一導体91,92からなる導体群と第二導体101,102からなる導体群とは、積層方向において離されている。すなわち、第一コイルC1と第二コイルC2とは、積層方向に離れるように位置している。これにより、第一コイルC1と第二コイルC2とが積層方向に離れて位置することとなるので、ディファレンシャルモードでの特性悪化を抑制することができる。
【0142】
次に、
図23〜
図25を参照して、本実施形態の変形例に係るコモンモードフィルタCMF6の構成を説明する。
図23は、変形例に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。
図24は、変形例における、素体並びに第一及び第二導体の構成を示す分解斜視図である。
図25は、第一及び第二導体を示す平面図である。
【0143】
コモンモードフィルタCMF6は、
図23に示されるように、素体2、第一入力端子電極3、第一出力端子電極4、第二入力端子電極5、第二出力端子電極6、第一接続導体7、及び第二接続導体8を備えている。
【0144】
コモンモードフィルタCMF6は、
図24及び
図25に示されるように、複数の第一導体111,112と複数の第二導体121,122とを備えている。コモンモードフィルタCMF6は、本実施形態では、二つの第一導体111,112と二つの第二導体121,122とを備えている。各導体111,112,121,122は、素体2内に配置されている。各導体111,112,121,122は、積層方向において異なる層に位置している。各導体111,112,121,122も、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。各導体111,112,121,122は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0145】
第一導体111と第一導体112とは、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体111と第一導体112との間に位置する絶縁体層10の数は、少なくとも一層あればよい。第二導体121と第二導体122は、積層方向に隣り合うように配置されている。第二導体121と第二導体122との間に位置する絶縁体層10の数も、少なくとも一層あればよい。
【0146】
第一導体111,112からなる導体群と、第二導体121,122からなる導体群と、の積層方向での間隔は、第一導体111,112同士の積層方向での間隔及び第二導体121,122同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されている。すなわち、第一導体111,112からなる導体群と第二導体121,122からなる導体群とは、積層方向において、離されている。
【0147】
第一導体111は、
図25の(a)にも示されるように、引出部111a,111b及びコイル部111cを有している。引出部111aは、その一端が第三側面2eに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部111aは、第三側面2eに露出している一端で第一入力端子電極3に接続されている。引出部111bは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部111bは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。
【0148】
コイル部111cは、一端が引出部111aの他端に接続され、他端が引出部111bの他端に接続されている。コイル部111cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0149】
第一導体112は、
図25の(b)に示されるように、引出部112a,112b及びコイル部112cを有している。引出部112aは、その一端が第一側面2cに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部112aは、第一側面2cに露出している一端で第一接続導体7に接続されている。引出部112bは、その一端が第四側面2fに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部112bは、第四側面2fに露出している一端で第一出力端子電極4に接続されている。
【0150】
コイル部112cは、一端が引出部112aの他端に接続され、他端が引出部112bの他端に接続されている。コイル部112cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0151】
第一導体111,112同士は、第一接続導体7により直列に接続されている。第一入力端子電極3と第一出力端子電極4とは、第一導体111,112と第一接続導体7とを介して、電気的に接続されている。これにより、第一導体111,112と第一接続導体7とは、第一コイルC1を構成し、第一コイルC1が、一端が第一入力端子電極3に接続され、他端が第一出力端子電極4に接続されることとなる。第一コイルC1は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第一側面2c寄りに位置している。
【0152】
第二導体121は、
図25の(c)にも示されるように、引出部121a,121b及びコイル部121cを有している。引出部121aは、その一端が第三側面2eに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部121aは、第三側面2eに露出している一端で第二入力端子電極5に接続されている。引出部121bは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部121bは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。
【0153】
コイル部121cは、一端が引出部121aの他端に接続され、他端が引出部121bの他端に接続されている。コイル部121cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0154】
第二導体122は、
図25の(d)に示されるように、引出部122a,122b及びコイル部122cを有している。引出部122aは、その一端が第二側面2dに露出し、当該一端から第一及び第二側面2c,2dの対向方向に延びるように形成されている。引出部122aは、第二側面2dに露出している一端で第二接続導体8に接続されている。引出部122bは、その一端が第四側面2fに露出し、当該一端から第三及び第四側面2e,2fの対向方向に延びるように形成されている。引出部122bは、第四側面2fに露出している一端で第二出力端子電極6に接続されている。
【0155】
コイル部122cは、一端が引出部122aの他端に接続され、他端が引出部122bの他端に接続されている。コイル部122cは、素体2の長手方向に延びる部分と、素体2の短手方向に延びる部分と、を含んでおり、略3/4ターンのパターンとされている。
【0156】
第二導体121,122同士は、第二接続導体8により直列に接続されている。第二入力端子電極5と第二出力端子電極6とは、第二導体121,122と第二接続導体8とを介して、電気的に接続されている。これにより、第二導体121,122と第二接続導体8とは、第二コイルC2を構成し、第二コイルC2が、一端が第二入力端子電極5に接続され、他端が第二出力端子電極6に接続されることとなる。第二コイルC2は、素体2内において、第一主面2a(第二主面2b)に直交する方向、すなわち積層方向から見て、第二側面2d寄りに位置している。
【0157】
第一導体111,112と第二導体121,122とは、積層方向で隣り合う部分を含んでいる。すなわち、第一導体111,112と第二導体121,122とは、第一及び第二側面2c,2dの対向方向で中央領域に位置し且つ素体2の短手方向に延びる部分が積層方向で対向し且つ重なっている。各導体111,112,121,122において積層方向で重なる部分には、同じ方向(
図25中、矢印方向)に電流(コモンモードの電流成分)が流れる。
図25でも、説明のため、各導体111,112,121,122において積層方向で重なる部分にハッチングが付されている。
【0158】
したがって、第一導体111,112及び第一接続導体7を含んで構成される第一コイルC1と第二導体121,122及び第二接続導体8を含んで構成される第二コイルC2とは、積層方向において隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分をそれぞれ有することとなる。第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる上記部分は、素体2の短手方向に延びている。
【0159】
以上のように、本変形例でも、第一コイルC1と第二コイルC2とがそれぞれ有する、積層方向で隣り合うように位置し且つ電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分によりコモンモードノイズに対してインダクタンスが発生し、コモンモードノイズの通過が阻止される。本変形例でも、上述したように、スルーホール導体(スルーホール)を形成する必要がないため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0160】
第一導体111,112は、積層方向に隣り合うように配置され、第二導体121,122は、積層方向に隣り合うように配置されている。第一導体111,112からなる導体群と第二導体121,122からなる導体群との積層方向での間隔は、第一導体111,112同士の積層方向での間隔及び第二導体121,122同士の積層方向での間隔よりも大きく設定されており、第一導体111,112からなる導体群と第二導体121,122からなる導体群とは、積層方向において離されている。すなわち、第一コイルC1と第二コイルC2とは、積層方向に離れるように位置している。これにより、第一コイルC1と第二コイルC2とが積層方向に離れて位置することとなるので、ディファレンシャルモードでの特性悪化を抑制することができる。
【0161】
コモンモードフィルタCMF6でも、第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分は、素体2の長手方向に延びている。これにより、発生するインダクタンスが大きく、コモンモードノイズの通過をより一層確実に阻止できる。
【0162】
ここで、本実施形態によって、コモンモードノイズの抑制効果が確保されることを、実施例によって、具体的に示す。実施例では、上述した本実施形態に係るコモンモードフィルタCMF1を用い、コモンモードノイズに対する減衰特性を測定した。
【0163】
測定結果を
図26に示す。
図26は、実施例におけるコモンモードノイズに対する減衰特性を示す線図である。
図26中、横軸は周波数(MHz)を対数で表示し、縦軸は減衰量(dB)を線形表示している。
図26に示されるように、実施例では、5GHzでの減衰が深くなっており、コモンモードノイズの抑制効果が確保されることが確認された。
【0164】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0165】
素体2(絶縁体層10)を構成する材料は、上述した誘電体材料に限られない。たとえば、素体2(絶縁体層10)を構成する材料は、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、又はNi−Cu系フェライトなどの磁性体材料若しくはCu−Zn系フェライトなどの非磁性体材料であってもよい。ディファレンシャルモードでの特性悪化を抑制するためには、素体2(絶縁体層10)を構成する材料は、誘電体材料などの非磁性体材料であることが好ましい。
【0166】
第一導体、第二導体、第一接続導体、及び第二接続導体の数は、上述した実施形態及び変形例での数に限られない。たとえば、第一及び第二導体の数がそれぞれ3つであり、第一及び第二接続導体の数が2つでもよい。
【0167】
第一コイルC1と第二コイルC2とが有する、電流(コモンモードの電流成分)の向きが同一となる部分は、素体2の対角線方向に延びていてもよい。これによっても、発生するインダクタンスが大きく、コモンモードノイズの通過をより一層確実に阻止できる。